ランスが女の世界で魔人アイゼルに転生〜洗脳能力と原作知識で魔王を目指す〜 作:斧池 数馬
「おはよう、目が覚めたかしら?」
「あ、う、おはようございます?」
目の前に紫色の髪の女性が立っている。大胆に露出した衣装から覗く肉体は美しさと強さを感じさせる。
そしてわたしを見下ろす視線からは冷酷さと悪意に満ちていた。
「わたしの名前はカチューシャ・ボッシュ。あなたの調教を担当するわ」
「えっ、調教ってどういうことですか」
「あら、薬が効きすぎたのかしら?まあいいわ、仕込むなら余計な記憶なんてない方がいいもの。自分が人間だった記憶なんて奴隷にはない方が幸せだわ」
奴隷、その言葉でわたしに首輪が付けられていることに気づく。纏っている衣服も、生地の質自体はいいものの簡素な作りの貫頭衣で、下半身は太ももの上の方までしか隠せていない。
「あなたは悪い男に騙されて負わされた借金のカタで、奴隷になったの。これから、あなたはさるお方への贈呈品になってもらうわ。まずは礼儀作法から、服をすべて脱いでもう一度ご挨拶なさい」
「どれい?な、なんでわたしがっ?いぎっ!い、痛い!」
「これもよく覚えておきなさい。所有者からの命令は即座に実行。出来なければ罰を与えるわ」
「お、おはようございます……」
首輪から全身へと激痛が走る。その苦痛と一切の容赦を感じさせない彼女の言葉に、命の危険を感じる。羞恥心など覚える余裕もなく、貫頭衣を脱ぎ捨てる。下着は着ていなかったおかげで、すぐに苦痛は止まってくれた。
まるで雷が落ちてきたような衝撃だというのに、わたしの肉体には傷一つない。商品としての価値を落とさずに、奴隷を調教できるマジックアイテム。そんなおぞましいものであることがそれだけで分かってしまった。
「ふふ、次からは体を腕で隠してもダメよ。よく覚えておきなさい」
「は、はい……」
その後はご飯を食べさせてもらって、お風呂にも入らせてもらった。ご飯は裸で食べる前提なのか冷たく、恥ずかしさもあって味が良く分からなかった。
食事が出てくる小型のエレベータも、浴室に繋がる扉も、彼女の持つ鍵が無ければ開かない。唯一自由に出入り出来る部屋は小さなトイレくらい、それすらも扉はガラス製で外から丸見えになってしまっている。
わたしは生殺与奪を完全に彼女に握られていることを悟った。
◆ ◆ ◆
「おはよう、昨日はよく眠れた?」
「おはようございます。は、はい、おかげさまで──いぎぃぃぃ!」
「あらあら、あいさつするときは裸になる。忘れてしまったのかしら」
その言葉で思い出す。カチューシャの、命令に従わなければ、苦痛を与えられることを、そしてカチューシャに全裸で挨拶をしろと命じられていたことを。
急いで服を脱ぐ、どうやらこの貫頭衣は激痛に悶える中でも脱ぎやすいようにという
苦痛が止まり、落ち着いた頭が今度は不安で支配される。
「あら、そう怖がることはないのよ。わたしはあなたを苦しめたいわけじゃないの。ただ立派な性奴隷になって欲しいだけ」
「いえ、カチューシャ様──」
「カチューシャさんでいいわ」
「分かりました……カチューシャさんが怖いんじゃないんです。どうして一晩寝ただけで忘れてしまったんだろうって」
わたしはこんな物覚えが悪い人間だったのか?記憶がないというのに自分への信頼が揺らいでいく恐怖は耐え難いものがあった。
「そうね、きっと慣れない環境で疲れていたのね。もしくは薬の副作用かしら。そうだわ、あなたにこれをあげる」
そうして渡されたのは革張りの手帳と万年筆だった。どちらもカチューシャさんに相応しい高級品だと分かる。
「これにわたしが命令したこと、忘れてはいけない大事なことを書いておきなさい」
「あ、ありがとうございます!」
本心からわたしはそう言っていた。奴隷にされることに納得したわけではない。だが移動の、食事の、衣服、生活の自由を奪われたことでわたしはそういうものだと理解してしまっていた。
そんな中でわたしが所有出来るものがあるというのは、どうしようもないくらいに嬉しかったのだ。
早速メモをする。そして書いたものを何度も何度も読み込んだ。
「おやすみなさい」
その日はおしおきということでご飯もお風呂も貰えなかった。仕方ないので早めにベッドに潜り込んで寝た。
◆ ◆ ◆
「おはよう」
カチューシャさんが部屋に入ってきた。手には金色の懐中時計を持っている。ベッドの上から、扉の方に視線を向けるとテーブルの上に置いてある手帳と万年筆が視界に入る。
大丈夫だ。覚えている。急いで服を脱ぐ、裾を掴んで、思い切り捲り上げて頭を抜いて、ベッドの上に投げ捨てる。
そしてベッドから降りて、うっかり隠してしまわないように、手を後ろでがっしりと組んでから口を開いた。
「おはようございます。カチューシャさん」
「よく出来ました。いい子いい子」
カチューシャさんがわたしの頭を撫でる。わんわんにするような行為にわたしが人間以下の存在だと思われていることを意識してしまう。
羞恥と屈辱から反発心らしきものが浮かんでくるが、首輪の苦痛を思い出して霧散してしまう。
もし、仮に、ここを逃げ出そうとしたら、もっと酷いお仕置きが待っているだろう。殺されてしまっても何もおかしくはない。
「今日はあなたにプレゼントがあるのよ。この鍵をあそこに使ってみて」
鍵を受け取り、カチューシャさんが指差す方を見るもただの壁で鍵穴の類は見つからない。
だけどなんとなく頭にこれの使い方が浮かんだ気がした。
壁に強く手を押し付けながら上に動かす。すると摩擦で引っ張られた壁の一部がスライドして、鍵穴が現れた。
「これは……」
「ふふ、いつまでも女の子がそんな格好じゃ可哀想だものね」
そこにあったのは陳列されたまともな服だった。
カチューシャさんのもカッコ良くはあるがまともとは言いがたいので久しぶりに見るまともな服といえた。
「あの……」
「どうかしたかしら?喜んでくれないの?」
「えっと、その、ちゃんと着込んじゃうとご挨拶のときに、すぐに脱げないんじゃないかなって」
今日のカチューシャさんは懐中時計を見ていた。ということは恐らくカチューシャさんがこの部屋に入ってきて挨拶するまでには時間制限がある。
「ああ、あなた本当に偉いわ。ただ命令に漫然と従うだけじゃなくて、ちゃんと自分の頭で考えられている。そうね、だったらわたしの足音が聞こえてきたら、服を脱ぐのはどうかしら」
「分かりました……」
「そして、今日から本格的な調教を始めるわ」
「ひゃっ、なんで、カチューシャさんも裸に」
「ふふ、女の体を教えるのだもの。女の体を使うのが一番でしょう?」
その日は、女の体を気持ちよくする方法を教えてもらった。
性的なことに慣れる一環として、カチューシャさんの体も触らせて貰った。弱い自分とはまるで違う、鉄の意思と覚悟で磨き上げられた強靭な肉体。しなやかな筋肉の感触を女性らしい柔肉の下に感じてドキドキした。
寝る前に、忘れないように聞き耳を立てることについて、手帳に書いた。
◆ ◆ ◆
かつん、かつん、と足音がする。規則的な音、階段を降りているのだと推測する。
それでわたしが監禁されている施設に上の階層があることを初めて知った。勝手なイメージだが、地下にあるのかもしれない。
急いで服を脱ぐ。一応、すぐに全裸になれる薄手のネグリジェとショーツだけを着ていたせいで、全裸のまま手持ち無沙汰になってしまった。
「おはよう、ちゃんとわたしの言いつけを守ったのね。偉いわ」
「おはようございます。は、はい、ありがとうございます」
「今日から暖かいご飯を出してあげる。ちゃんと服を着て食べなさいね?あなたの体は大切なものなんだから」
「あっ、ありがとうございます」
服を着て、人間らしい食事を取れる。それだけで思わず涙ぐんでしまうほど嬉しく感じてしまった。
「ああ、それから、脱いだ服、汚した服はわたしが回収するから、今度からこの籠に入れておきなさい」
そう言って彼女はわたしがベッドの上に脱ぎ捨てたネグリジェを拾って籠に入れた。
持ち帰る籠と置いておく籠、冷酷な悪女である彼女が籠を抱えている姿はなんだかおかしかった。
「それじゃあ、今日はわたしをイかせられるところまで頑張ってみましょうか」
そう言ってカチューシャさんも全裸になる。目の前でこうも堂々と脱がれてしまうと人前で裸になるのは恥ずかしいことという常識が揺らいでしまいそうになる。
恐らくこれを狙って彼女は自分の体を教材にしているのだろう。そう思いながらも、痛みへの恐怖と服従への安堵にわたしは命じられるままに動いてしまっていた。
今日は宿題として、朝起きたらオナニーで一度絶頂して、調教を待つことを命じられた。
当然、手帳に記しておく。書き終わってから手帳を読むと、淫らな命令が常識として染み付いてしまうような怖気がした。
◆ ◆ ◆
それから何日経っただろうか。カチューシャさんがやってくる度にわたしに淫らな知識と習慣が増えている。そしてそれに比例するようにわたしが自由にできるものが増えていった。最初に貰った手帳と万年筆、綺麗なお洋服、髪を整えるブラシ、化粧品に美容品。教養を身につけなさいということで、本まで用意して貰った。
単純な飴と鞭だというのは分かっているのだけれど、いまだに過去を思い出せない身ではそこから逃れようとする強い意思は出てこなかった。
調教も恥ずかしいのは変わらないのだけれどどんな行為も最初にカチューシャさんがお手本を見せてくれる。
あの恐ろしいDXの会の会長であるカチューシャさんがわたしなんかのために労力を割いてくれているというのに、調教を拒絶することは出来なかった。
極限状況と孤独からどんな相手であれ触れ合える他者に依存してしまう。そんな心理的な搦手を、自分のような存在に使ってもらえるということに、自分が認められているという感覚すら覚えてしまう。
「おはようございます。カチューシャさん」
「おはよう、今日からは戦闘訓練を始めるわ」
「戦闘訓練……ですか?」
「ええ、あなたはいざという時ご主人様を守れるようになってもらうの。誰でもベッドの上では無防備だもの」
そうして戦闘訓練が始まった。新しい鍵で小さな体育館が解放され、走り込みから始まって、体術から武器や毒の使い方まで教わった。
性奴隷(この言葉への抵抗もだいぶ薄まってしまっている)にこんな能力が必要だなんて思ってもみなかったのだが、自分でも驚くべきペースで人を効率良く壊す方法をわたしは学んでいった。
同時に色香で相手に隙を作る方法も教わって、今まで磨いて来た女としての技術と戦闘術が一つの技術として昇華されていくことに快感を覚えた。
「では今日はここまで、ふふ、立てそうにないわね。いいわ、ベッドまで連れていってあげる」
「あ、ありがとうございます……」
粥のような食事を食べさせてもらい、お風呂に入れて貰って、寝巻きへの着替えと添い寝までされてしまった。
わたしの体で彼女の指と舌が触れたことのない場所などほとんどないと言っていいのだけれど、なんだかやけに恥ずかしかった。
◆ ◆ ◆
目覚めるとベッドの上にはわたししかいなかった。まあ当然だろう。カチューシャさんが他人の前で無防備な寝姿を晒すはずがない。誰よりも遅く寝て、誰よりも早く目覚める。そうしてたくさんの仕事を熟す生活をずっと続けてきたはずだ。
机の上の手帳に手を伸ばす。同時にたまごの形をした玩具を手にしてテープでクリトリスの上にショーツ越しに固定する。スイッチを入れると確かな、それでいて正気を失うほどではない快感がもたらされる。
こうして朝のオナニーの義務を消化しながら手帳の内容を確認するのがわたしの最近の習慣だった。
「あれ、このページ。いつ書いたんだっけ?」
そこに書かれていたのはわたしがここで調教を受けるようになった経緯だった。
読み進めると
何も思い出せないが書いてある文字は紛れもなくわたしのものだ。どうやらこの人がわたしのご主人様になる人らしい。
「アイゼル、さん」
呟いてみたその名前に何の感慨も覚えなかった。いや、同時に絶頂を迎えてドキッとしたけど、それはローターのせいだし。
◆ ◆ ◆
「あんっ、そうよ、そうやって小刻みに舌先を使うの、男も女も、感じさせるコツは同じよ」
「はい、カチューシャさん」
わたしのベッドの上でカチューシャさんが大きく脚を広げて座り、わたしはベッドの前で跪いてその陰核に舌を伸ばす。
散々自分もイかされて覚えた力加減は完璧で、カチューシャさんにも満足して貰えたようだった。
くちゅくちゅと陰唇の中に入れて動かしていた指で絶頂を感じる。
カチューシャさんの股間から顔を離れさせると、ひくひくと震えて自分が彼女を気持ちよくさせたのだという達成感を覚えた。
「あのカチューシャさん、アイゼルさんって誰ですか?」
「あら、思い出したのかしら?あなたのご主人様になる男よ」
「やっぱり……。あの、どんな人か聞かせて貰ってもいいですか?」
「そうね、あなたの調教のペースならお披露目も近いでしょうし、今のうちに色々教えてあげるわ」
そうしてわたしの私物にアイゼルさんの写真やプロフィールについて書かれた書類なんかが増えた。
それは彼の私生活を盗み撮りしたもののようで、DXの会の調査能力の凄まじさを感じさせた。
「アイゼル、姓は不明。孤児の身からゼスの貴族の家に養子に入り、魔法使いとして頭角を表す。ゼスの魔法学校で教員を務めたあと、回復魔法の使い手としてAL教に帰依、老衰死したローレ・エンロンの後を継ぎ現在司教の地位に付く」
客観的な報告書としての体裁のせいか、あまりどういう人なのか想像出来なかった。DXの会としては、自分たちにとって得になる人間なのか、そうでないかにしか興味がないのだろう。
ただ容姿は恐ろしいほどに整っており、孤児の身からここまで成り上がったのはこれを利用して来たからという推察には頷けてしまった。
新鋭の大商人、コパンドン・ドットの愛人であるらしい。このコパンドンという人物との繋がりが一番に書かれており、DXの会が関心を向けているのも、この人なのだろうということは容易に伺えた。
どうせ性奴隷にされるなら、お相手の顔が良いことに越したことはないだろう。顔が良くても特殊な性癖なんかがあったら困るが。
◆ ◆ ◆
「最後の調教よ。待て、が出来るようになってもらうわ」
「待て、ですか?」
「ええ、あなたにはいざという時にアイゼルの寝首を掻いて貰わないとだけど、こちらが命じてもいないのに勝手に動かれたら困るでしょう?」
なるほど、流石DXの会、悪どいことを平気で思いつくものだ。
どんな男であれ、ベッドの上では隙を作る。そこを突いて殺してしまうつもりらしい。
「あっ♡ああっ♡ああああっ♡」
「待て、待てよ。そのままの体勢でわたしが良しと言うまでずーっと」
その日の調教は過酷を極めた。陰核に一つ、陰唇に咥えるように一つ、両の乳房に一つずつ、ローターを取り付けて、脚を開いたまま立ち続ける訓練。両腕は頭の後ろで組むことを強制され、微弱な振動でいつまで経っても満足の行く絶頂を得られない肉体を掻きむしることが出来ない。
汗と、涙と、愛液で床がぐちゃぐちゃになって、意識も朦朧としだした頃、漸く倒れ込むことを許された。
熱った体に床の冷たさが心地いい。極限の疲労も、自分が流したむせかえるような淫臭も、無視して震える指を陰唇に掻いてようやく満足のいく絶頂を得られた。
その後のことは記憶にない。
◆ ◆ ◆
「うう、昨日は酷い目にあった」
目を覚まして声を出してみると枯れた喉の痛み全身の疲労も、おおかた抜けている。
この密閉された空間では時間の概念は曖昧だ。ただ寝て、起きてを一日の区切りにしているだけ。だから、丸一日寝ていたとしても不思議ではなかった。
条件反射的に手帳を手に取り、自慰を始める。
「なにこれ……」
自分で書いた覚えのない文章がそこにはあった。
「アイゼルさんはわたしの恩人?やつらはアイゼルさんの周囲にいたわたしを拐って、調教して、暗殺の駒にするつもり?」
字は自分のものとは思えないほどにぐちゃぐちゃなのに、何故か自分のものだと確信できる。
「記憶を消す薬……?」
昨日、朦朧とした意識の中で、絶頂の衝撃ですべてを思い出して、意識を失って薬で再び記憶を消される前になんとか手帳に書き記した。
辻褄は合う、カチューシャさんが最初の頃、薬が効きすぎた、なんて言っていたではないか。
元から知り合いだと言うのならば、ここまで手間をかけて調教する必要もないとも思ったが、恩人とまで呼ぶ人間を手にかけたところで記憶を蘇らせ、完全に心を破壊して暗殺者として完成させる計画なのかもしれないと思い至った。
DXの会ならばその程度の非道は平然と思いつく。
「どうしよう」
そのページの隅にたすけて、と書かれていたのが目に入った。どちらを助けて、なのだろうか、わたしなのか、アイゼルさんなのか。
どっちにしろそれでわたしのやることは決まってしまった。
「カチューシャさん、わたしはあなたのおかげで戦闘情婦になりました。どんな命令にも従う、道具のような存在。でも、命令は早いもの勝ちです。わたしは、わたしの命令に従う」
◆ ◆ ◆
「ごめんなさい、オナニーを忘れてしまいました……」
「ああ、昨日は疲れていたものね。しょうがないわ。調教は昨日で終わりだし、許してあげる」
メモを千切って飲み込んで隠滅を図って、感情を落ち着かせるためにシャワーを浴びていたら、カチューシャさんが来てしまった。
ここの期に及んでさん付けで呼ぶのはおかしな話だが、憎悪や嫌悪から殺意を気取られるよりはマシだ。
「終わりですか?」
「ええ、わたしが良しと言うまて我慢出来ていたもの。あなたはわたしの可愛い可愛い奴隷として完成したの」
「ありがとうございます」
ありがとうございます。カチューシャさん、あなたのおかげでわたしはあなたを殺せます。
「これでお別れなんてちょっと寂しいわね。ねえ、最期の記念に抱いてあげるわ」
「お、お願いします」
願ってもいないことだった。このチャンスを逃したらまた薬で記憶を消されてしまうかもしれない。
ベッドの上で寝首を掻く戦闘情婦。その意義通りにあなたを殺してみせる。
「ああっ♡ああんっ♡」
「ふふ、底なしの体力ね。若いっていいわ」
何度も何度も、カチューシャさんのテクニックでわたしは絶頂を味合わされていた。朦朧とする意識、これならば殺気に気づかれることなんてないだろう。
「カチューシャさん♡カチューシャさん♡わたしにも、カチューシャさんを、気持ちよくさせてくださいっ♡」
「あら、あなたへの最期のご褒美だっていうのにいいの?」
「はいっ♡お礼をっ♡したいんですっ♡」
「ふふ、本当に可愛い子ね。売りに出すのが惜しいくらい。ね、殺しが済んだらここに帰って来なさい。そうしたらまた、可愛がってあげる」
「じゃあ早く♡早く殺させてくださいっ♡」
一言一句違わず本音だ。過去を奪われて代わりに詰め込まれた淫らなテクニックと意地で、カチューシャさんを気持ち良くして追い詰めていく。
「ああっ♡あんっ♡も、もうだめ♡だめよ♡これ以上はもうおしまい♡」
「だめっ♡もっと気持ち良くするのっ♡」
「もうっ、しょうがない子ね……」
不意を突いたところで、わたし程度の力ではカチューシャさんは殺せない。戦闘の訓練でそれは嫌というほど覚えさせられていた。
だから限界まで彼女の体力を絶頂で削る。彼女の言葉に惑わされて余力が残っていることを見逃すなどあってはならない。
「はぁっ、ああっ、はぁぁぁ、あぁぁぁぁ」
最後に一際大きく身を震わせて彼女は潮を吹いた。そしてカチューシャ・ボッシュは意識を失って無防備な姿をわたしに晒していた。
「やっと、殺せる」
カチューシャさんにプレゼントして貰った万年筆を手に取る。尖ったペン先は容易く皮膚を突き破ることだろう。
ただ場所によっては筋肉によって防がれる可能性もある。慎重にやらなければ。幸い、カチューシャさんが意識を取り戻す様子はない。
「あれ?」
カチューシャ・ボッシュが目の前で横たわっている。意識をなくして無防備に、その白い首筋に万年筆を突き立ててしまえばそれだけで殺してしまえそうで──
「違う、違うわ。カチューシャ・ボッシュがこんな、こんな風に他人に隙を晒す訳がないじゃない!!」
目の前の
「わたしだ……。わたしこそがカチューシャ・ボッシュなのよ!!!」
真実を叫ぶ。叫ばなければ自分でも信じられなくなってしまいそうだから。
目の前の女は間違いなくカチューシャ・ボッシュの肉体を持っていて、わたしは無力な奴隷の女。DXの会の会員すべてに尋ねたところで信じるものは一人もいないだろう。
「ふふ、お見事。よくぞ真実に気づかれましたね。その意思の強さ、賞賛に値します」
拍手の音、振り返るとそこにはアイゼルさんが──
違う、アイゼル、わたしが司教の地位やコパンドンとのコネクション、すべてを奪い取ろうと目論んでいた男がそこに立っていた。
◆ ◆ ◆
「さてカチューシャ。予定とは少し狂いましたが、抱かせてもらいましょうか」
「うぐっ、はい……」
カチューシャ・ボッシュ。すべてを奪われた哀れな女から、DXの会のボスにまで登り詰めた原動力は利用され、貶められてきた過去にこそある。
だからそれを奪ってやった。彼女の若い頃の姿を再現したぬへを用意して、パパイヤの魂を入れ替える装置で本人と入れ替える。
残った抜け殻の体を操り人形にして、彼女を調教した。
記憶を消して、効率良く行うために、一時間程度の睡眠で一晩経ったと誤認させて。
こんな結果になったのはある意味で悪趣味が過ぎたせいからかもしれない。
蛇の道は蛇。悪を為すにおいてこの世界の裏社会で頂点の彼女にわたしが敵うはずがなかったのだ。
完膚なきまでの敗北にどこか清々しい気持ちを感じながら、ぬへの肉体そのものに仕込まれているわたしへの絶対服従の機能を使って彼女を抱くことにした。
カチューシャ・ボッシュの若い頃の姿。水色の瞳にブラウンの髪を品よくカールさせた良家の子女そのものの姿。
そんな彼女を犯すことに強く征服欲を感じさせながら、遠い昔に失われたはずの処女を己の肉棒で突き破った。
「痛い……」
「大丈夫ですか?落ち着いて、深く息をしなさい」
「何を考えて、いるの」
「何ってあなたに幼い頃の純粋な気持ちを思い出して貰おうという、それだけの気持ちですよ」
「今更、今更戻れるわけがないじゃない!!」
激情を叫んだ彼女の唇を自らの唇で塞いだ。舌を入れると反射的に彼女も舌を絡めてくる。だがその動きはぎこちなく、見た目通りの幼さを感じさせた。
「嫌いっ、こんな、弱い、惨めな女なんか大っ嫌いだわ!」
「わたしは、あなたのように可愛らしい方は好きですよ」
ベッドの上に押し倒して腰を振る。両腕を掴んでしまえば、彼女には抵抗の術はない。涙目でわたしを睨みつけて罵倒の言葉を吐くのみだ。
それは、正直に言ってとても興奮させられた。
「あっ、ああっ、殺してやるっ、殺してやるわっ、絶対にあんたなんか殺してやるんだからっ」
「射精しますよ、カチューシャ。全部受け止めなさい」
憎悪の、ある意味で無垢な人間らしい感情に満ちた叫びを聞きながら、わたしは彼女の中に精を吐き出した。
「うう、うう……、どうして、くれるのよ。こんな、弱いわたしじゃ……、生きていけないじゃない」
「簡単なことです。わたしに服従し、わたしの庇護のもと、生きていきなさい。カチューシャ」
男根を引き抜くと破瓜の血と混じって白濁がシーツを汚した。
両腕で顔を隠して泣きじゃくる姿は凌辱を受けた少女そのものだった。
◆ ◆ ◆
「ふんっ!」
アイゼルの首筋に突き立てようとした万年筆は無敵結界とやらに阻まれた。
わたしの前で平然と寝ているこの男はただの馬鹿ではなく、人類の天敵たる魔人なのだ。
こいつはDXの会の長を奪うつもりはないらしい。わたしを傀儡にしていいように使うつもりのようだ。
なるほど絶対服従な奴隷に出来るならばそれが一番合理的だ。
「今にみてなさいよね」
ああダメだ。この体は感情の制限が効かない。秘めておくべき叛逆の意思が口に出てしまっている。
こいつに、惹かれてしまっている自分を自覚してしまう。
悪女の価値観で、こいつの強さと悪辣さを認め、少女の愚かさで尊敬の念を堪えきれなくなってしまっている。
「ううん、おはよう」
「おはよう」
「おや」
「何よ?」
「シーツで体が隠れてしまっていますね」
その言葉が、調教で挨拶するときは全裸でという命令のことだとすぐに気づいてしまって、急いでベッドから降りてしまいそうになったところで思い留まる。
「ふん、調教は終わりって聞いたわ」
「では、あなたはわたしの奴隷ということですね。なら、裸を見せてください。その後はいっしょにお風呂に入りましょう」
その言葉を聞いて、やっぱりこいつはただの変態野郎だと思い直した。
いつか絶対寝首を掻いてやる。
悪女いいですよね……
今回はかなり特殊な書き方だったと思います
自分ではなかなか上手く書けていたと思うのですがどうでしょう
鍵となるのはカチューシャの入れ替わりと手帳のギミックでしょうか?
書いててカチューシャはツンデレ気味にすると可愛いなと感じて来たのでまた出したいところです
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