※この作品はR-18です。

ランスが女の世界で魔人アイゼルに転生〜洗脳能力と原作知識で魔王を目指す〜   作:斧池 数馬

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vs第三軍

 ヘルマン第三軍、帝都の守護を任務とするこの軍は必然的にヘルマンの中枢との距離が近い。

 かつては人類最強と謳われた将軍、トーマ・リプトンによって率いられヘルマンに忠義を尽くす者たちが多くいたが、彼の死とヘルマンの腐敗によって現在では違った様相を呈している。

 

 端的に言って現在のヘルマン第三軍は、将軍であるミネバ・マーガレットに支配されている。

 強烈な野心を持つミネバはヘルマンの評議会に取り入ることで、下剋上の機会を虎視眈々と狙っていた。

 そのため評議会やステッセルの命により、汚れ仕事を行うことも多く、それに抗えばミネバにより粛清される。

 そのような構図になっていた。

 

 ミネバの戦闘力と何より手段を選ばない冷徹さは、ヘルマン第三軍で最も恐れられていた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 それは第三軍が詰める拠点に浮要塞を使って、進軍しているときのことだった。

 城の防衛機能をほとんど無視して、強力な戦士たちを送り込む浮要塞に対処できずに拠点を落とし、帝都への侵攻のための足かがりにする。

 そのはずだった。

 

「ぐわっ!?なっ……自爆しやがった!!」

 

「何だと……!?正気かよこいつら!」

 

「しかも……立ちあがってきおるぞ!おい!浮要塞を守れ!こんな爆発を何度も食らっては保たんぞ!!」

 

「冗談だろ……?不死身かよ、こいつら」

 

 ヘルマン第三軍の兵の自爆をもろに受けてぴんぴんしているパットン・ミスナルジが、ぷちハニー爆弾を起爆させておきながら立ち上がってきた兵士を見て驚く。

 

 パットンはともかく、兵士たちのタフさの理由は魂の汚染だ。

 文字通り神に見逃され、天に召されにくくなっている。

 汚染人間による自爆特攻、非道で合理的。間違いなくミネバの発想だろう。

 恐らくは汚染人間の死に辛さを見越して、自爆してもギリギリで命を繋いでまだ戦闘を続行出来るように威力を調整している。

 そのためなかなか敵の数が減っていかない。こちらはそもそも少数精鋭、ならばいかに効率的に敵の数を減らしていくのが重要になる。

 その泣きどころを突いてきていた。

 

「眠るが良い!スリープ!」

 

「粘着地面」

 

 とはいえ汚染人間の行動原理は単純だ。

 真っ直ぐ浮要塞を目指し、途中で倒されたり取り押さえられたりしたら自爆する。

 ならば魔法によって拘束することで、そもそも自爆させなければいい。

 ミラクルと志津香の魔法によっては兵たちが無力化されていく。

 わたしも、人間として行使出来る範疇の魔法で兵に対処する。

 

「ヤー・ワルキューレ」

 

「バリアー!なんて威力……!それにこの魔法……」

 

「ふむ、なかなかの威力だな。そしてオリジナルの魔法か、興味深い」

 

 拘束は魔法使いに任せて、他の者は投石でも何でもして少しでも進軍速度を抑え詠唱時間を稼ぐ。

 これを繰り返せば流れ作業で第三軍の兵たちを無力化できる。

 そう思った瞬間、範囲型の氷結魔法がこちらに飛来する。

 志津香がバリアーによって防ぐものの、その隙に兵たちが近づいて前衛と交戦を始める。

 その魔法は途中参加のミラクルは知らなくとも、最初期から革命軍に所属していた志津香には見知ったものだった。

 

「マイトレイア!……いや、ミネバの弟のマハって言ったか」

 

 ヒューバートが乱入者の名前を叫ぶ。

 かつて姉の命令のもと、革命軍にスパイとして潜入していた少年だった。

 シーラが隠し持っていたMMルーンの魂を盗むのに失敗して馬脚を現し、逃避したはずだった。

 

「様子がおかしいですね。魂の汚染による凶暴化に加えて、魔力そのものが大幅に増強しています」

 

「その通り。リクチェル殿の呪いによってこの少年は強化されている」

 

 クルックーが見て取った通り、魔法レベル1であるはずのマハの魔法は、魔法レベル3の志津香に匹敵するレベルに強化されていた。

 

「殺す殺す殺す殺す殺す……!」

 

 正気を失って殺意を呟くだけの様子で、その呪いの正体にも見当が付いた。

 恐らくはリーザス紫の軍の副将、メルフェイス・プロムナードが受けたものと同様のもの。

 魔力のブーストによってこの威力が実現している。

 彼女の呪いはある条件を満たさなくては狂死するリスクが存在したが、マハのものは恐らくこの条件が違う。

 

「なるほど、恐らくは力と代償に定期的に自身より高レベルの存在を殺害しないと狂死する呪いと言ったところですか」

 

「その通り。リスクの分、その効果は絶大だ。革命軍諸君、君らに神の忘却があらんことを」

 

 それは導く者の祈りの言葉だった。

 そして参戦する五人の戦士たち。彼は導く者の、進撃の詰み手と呼ばれる者たちだった。

 アムの側近たる者たち。世界の真実を知ってアムの理想のために戦い続ける彼らの強さと執念は決して侮れるものではない。

 何より彼らは汚染率が低く、その分理性的だった。

 五人が一つの塊となってこちらの急所を突いてくる。当然そちらに手を割かれれば第三軍の自爆特攻を留められなくなる。

 

 強力な魔法使い、精鋭の戦士たち、そして何より第三軍の数と爆発の脅威。

 完全にこちらを殺しにかかっている布陣だった。

 

 そして恐らく、更に奥の手を用意しているはずだ。

 ラブクラフトン、あるいはそれを殺して作った神殺しの武器の類。

 わたしが魔剣猿の手を使って悪魔化したタイミングで、解放し悪魔の階級差による命令権を行使する。

 そうしてわたしを抹殺するのが狙いだろう。

 

「来なさい。恐れられ、封じられし戦士たち」

 

 ならば魂の黒化による力を使わないで戦うしかない。

 魔剣猿の手は論外、不死性の発現も悪魔相手だとむしろ魂を刈り取られやすくなる、ザビエルの使徒の力の解放も肉体から解放するには多少なりとも命を削るため、黒化による耐性がなければ使うのは躊躇われる。

 

 よって行使するのは純粋な人間の増援というシンプルなものになる。

 それは今の今まで、革命においても参戦させずに隠し続けていた戦力だった。

 

「アイゼル様には指一本触れさせん。そのまま身動き取れずに地に塗れているがいい」

 

 風に乗って薬が散布され、第三軍の兵たちの動きを鈍らせる。

 いくら汚染人間が死にづらくとも、物理的に神経を麻痺してしまえばどうしようもない。

 そしてそのまま、暗殺者パラライは咄嗟にマントで顔を覆い薬を吸い込むことを回避した強者、進撃の詰み手に直接麻痺毒を叩き込むために毒刃を持って襲いかかる。

 

「久しぶりの戦いだ」

 

 黄金の鎧を身に纏った戦士が果敢に兵士たちに切り込んでいく。

 一人で突出した結果、当然の理屈として背後を取られるも、剣も槍も彼を捉えることができない。

 

 技量が極めて優れている訳ではない。気配の察知能力に優れている訳でもない。

 しかし、それでも戦士ガジェルは死の危険を掻い潜るようにして人だかりを突破し、進撃の詰み手と切り結ぶ。

 

「我が雷を喰らえい!!」

 

 巨漢の魔術師が放つ雷魔法が、兵たちを痺れをもたらし、その動きを封じる。

 リスクを度外視して攻撃範囲を拡張した魔法は、自分自身をも巻き込んでいるが、その巨体ゆえに意に介していない。

 強力な魔法使いの介入を防ぐために進撃の詰み手の魔法使いが、彼に対して集中して魔法で攻撃するもそれすらも魔導士ヘルベルは肉体と装備の頑強さに任せて耐えきっていた。

 

 彼ら三人はAL教によって魂を封印されていたバランスブレイカーだ。

 その強さの理由は、法王の技能を見抜く力によって明らかになった。

 

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 例えばパラライ。彼女は忍者やくのいちの技能に加えて、短剣戦闘の技能を持ち、その上で更に科学の技能も持ち合わせることによって強力な薬品を生成し、武器にすることができる。

 

 ガジェルは、剣と盾の技能を兼ね備え、攻防に優れている。

 そこに高い幸運の技能も持ち合わせることで不意打ちや背後からの攻撃を運良く躱し、剣の一撃で運良くぷちハニー爆弾の起爆装置を破壊するといった事態を頻発させている。

 

 ヘルベルは分かりやすい。その身体の頑強さと強大な魔力の組み合わせが彼を唯一無二の強者たらしめている。

 ダメージを耐える、堪えることに長けたプロレスの技能によって、自分すら巻き込まれるような大規模な魔法を平然と連続で使用している。

 

 この世界の強さというのは技能レベルが大きく左右する。

 戦闘系の技能がなければいくらレベルが高くても、強力な存在にはなり得ない。

 当然、高い技能レベルほど稀になっている。

 そして自身がどのような技能を持っているか分からないため、自分の才能を知らずにいるということもままある。

 

 これは才能限界と同じく、神によるバランス調整の一環だろう。

 

 だが彼らは、自身の複数の技能を高度に融合した戦闘スタイルを自ずと見出していた。

 

 一つ一つの技能はレベル1だが、組み合わさることで極めて強力な力を発揮する。

 それは超希少な存在として、ある程度織り込み済みであろう技能レベル3の持ち主とはまた違った意味でバランスに反した存在だった。

 

L(ライトニング)・レーザー!」

 

「殺す殺す殺す殺す殺す!!」

 

 バランスブレイカーたちの投入で戦線が安定したのを見計らってマハへと魔法を撃ち込む。

 あらかじめ発動されていたバリアーによって防がれたものの、注意をわたしに引き付けることに成功する。

 マハを完全に暴走している。

 多少なりとも進撃の詰み手と連携しているのは彼らがマハよりレベルが低いためだろう。

 狂気に飲まれた状態でも、狂気に飲まれた状態だからこそ、飢餓感によって強者への嗅覚が研ぎ澄まされている。

 

 魔法での牽制を挟みつつ走り、マハの魔法の射線から浮要塞を外す。

 そのまま円状に戦場を回り込んで、剣帯から鞘ごと外した猿の手でマハに殴りかかる。

 

「死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇ!!」

 

「膂力まで強化されているのか……!ならば、ヒーリング9!」

 

 わたしの剣とマハの杖がぶつかる。悪魔の力も魔人の力も無いとはいえ、使徒としての力はあるはずのわたしとまともに撃ち合う膂力に驚く。

 高い才能限界に、魔法と槌、両方の技能。原作のように姉に使い潰されて死ぬ末路を迎えるのは少々勿体無い才能だった。

 

 呪いのパワーに対抗するため、身体への負担と引き換えに身体能力の向上と過剰な回復能力をもたらす神魔法を行使する。

 

「がぁぁぁぁぁぁあああああ!!さっさとくたばれ!!カルマー・レーゼツァイヒェン!!」

 

「ぐっ!!」

 

 痺れを切らしたマハが懐から魔導書を取り出す。

 魔力を収束する隙を狙って待ち構えていたわたしの意図を裏切るように、魔導書に挟まれていた何かが魔導書の魔力と関係なく飛来する。

 運良く剣で身体に突き刺さるのは防いだものの、致命的な隙を晒してしまっている。

 

「魔力をよこせアル・アジフ!!食らえ!火爆破!!」

 

 魔導書とマハの魔力が相まって、強化された爆発が至近距離で炸裂する。

 あまりの衝撃にわたしとマハ、両者の身体が吹き飛ぶ。

 

「これがラブクラフトンを殺して作った武器ですか?いや、これはただの抜け殻でそちらの魔導書が本命ですね」

 

 干しイカに成り果てたラブクラフトンに、思わず笑みが溢れる。

 ただ頑丈なだけで邪悪な気配は特に感じない。

 あの魔導書を作る際の搾りかすといったところだろう。

 

「何であの爆発で死んで無いんだ……!?だったらもっと強烈なのをくれてやる……」

 

「詠唱の隙を与えるとでも?」

 

 再び魔導書と自身の魔力を混合させて魔法を発動させるマハだったが、その腕にヘビが噛み付いて魔導書を取り落とす。

 真っ白なヘビを一面の雪景色に紛れさせていたのだ。

 鎧の下にもこれらを潜ませており、これが緩衝材の役目を果たしてヒーリング9の回復力と合わさって爆発をしのいでいた。

 

 更に長い身体を持つヘビによって麻痺毒だけでなく、物理的にもマハを拘束する。

 

 アル・アジフはいつの間にか消えていた。マハが敗れたならば手元に戻るように、あらかじめ仕込んでおいたのだろう。

 わたしの魔剣と同様、悪魔の能力を引き出すものならば悪魔の持つ転移能力が使えても不思議では無い。

 

 最大戦力を無力化した以上、あとは消化試合だった。

 順当に第三軍の兵たちは拘束され、進撃の詰み手たちも倒されていった。

 

 第三軍の兵士たちは、魂の汚染を浄化してから解放し、進撃の詰み手たちはわたしが拘束することとした。

 

 マハについてだが、呪いをわたしへの服従の呪いで上書きすることで何とか一命を取り留めた。

 聞いたところによると、アムの話術に誘導されて力を求めて自分からリクチェルの呪いを受け入れたらしい。

 レベルはモンスターを相手に上げたとのことだった。

 

 呪いによる魔力のブーストは失ったが、上がったレベルはそのままだ。

 思わぬ拾い物をしたと、わたしはほくそ笑むのであった。




カルマー・レーゼツァイヒェン
ドイツ語でカルマーはイカ、レーゼツァイヒェンは栞
やっぱりドイツ語は響きがカッコいいですね
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