ランスが女の世界で魔人アイゼルに転生〜洗脳能力と原作知識で魔王を目指す〜 作:斧池 数馬
戦闘シーンを書いた経験が少ないので、普段よりさらに拙い文章ではありますが、楽しんでいただければ幸いです。
長き眠りを経て鋼鉄の巨神が蘇る。
闘神都市を統べる最強兵器、闘神ユプシロンは聖魔教団の創始者ルーンの狂気による命令ではなく魔人の撃破という本来の使命によって動き出した。
「これは……。目覚めさせてしまいましたか……」
闘神の目は強烈な敵意を宿して私を見ている。恐らく逃げ出したとしても追いかけてくることだろう。少なくとも彼そのものと言える闘神都市の上には逃げ場はあるまい。
みすみす彼の復活を見過ごしてしまったのは、うかつだったとしか言いようがない。
聖魔教団の不俱戴天の敵である魔人が闘神都市を訪れることについて考えが及んでいなかった。
生きていた警戒システムにより、私が訪れたことが闘神都市中に知れ渡ってしまったのだ。
魔人の来訪を知った闘将ディオ・カルミスの、原作での態度が噓のような積極的な協力により、ビッチ・ゴルチが起動キーを集め、闘神を起動してしまったのだ。
恐らくディオは、ビッチ・ゴルチが魔人と遭遇し、仕掛けられたぷちハニー爆弾を脅しに勝ち目のない戦いを挑まされることを避けたかったのだろう。
急いで闘神を復活させてしまえばルーンの命令によってビッチ・ゴルチは殺され、自身は自由の身になれる。魔人も闘神をぶつければ十分に自身が逃げのびる目が出てくる。
その狙いはほとんど成功しているといって良かった。
闘神を前にしてディオを追いかける余裕はない。魔法無効の特性のせいでガーネットたちに任せることもできない。
彼を仕留めるならば闘神が倒してからとなるが、闘神を倒せば闘神都市は浮力を失う。
急いで逃れなくてはならない中で、逃げ回る彼を見つけて倒すことは不可能に近い。
「闘将退治は黒髪のカラーに託す他ありませんか」
闘神の復活が原作より早まった影響が出なければいいのだが。
「とにかくまずは闘神をどうにかしなくてはですね。私が前に出ます」
巨体を活かした闘神の一撃を剣で受け止める。
ダメージは無敵結界によってゼロだが質量の差は如何ともし難い。
闘神自体はただの操り人形な以上洗脳も効果はない。
「喰らえ闘神!!」
「ここで得た力、試させてもらうわ」
ガーネットたちと志津香から二本の黒色破壊光線が放たれる。巨体に過たず命中し、その体に穴をあけるもしばらくすると塞がってしまう。
魔力による修復。無機物が再生していく、有り得ない光景に戦慄を禁じ得ない。
「ボディがリペアしました……。アンビリバボ-」
「再生には限界があるはずです。それまで攻撃を続ければ……」
「それしかありませんか……」
魔力の供給源である魔気柱を破壊する方法は難しい。ディオによる妨害が予想されるためだ。私が行けば戦線が崩壊してしまうし、私以外が行けばディオに殺されてしまう恐れがある。
「魔人。死ねぇい!!スーパーティーゲル!!」
「やあっ!!」
ランスが飛び上がり闘神の腕に剣を叩き付ける。太い腕に刻まれた傷はすぐに修復されてしまったが、巨大な魔力の砲弾を逸らすことには成功する。
「おのれ蛮族めっ」
「はぁぁああああ!!」
闘神の注意がランスに向いた隙に無数の剣閃が走るがやはり修復されてしまう。
「一斉に攻撃を仕掛けましょう。ユプシロンが私に攻撃を放った隙に畳み掛けてください」
そう言って闘神の足元を斬りつける。闘神の巨体にとっては大したことのない傷だが、やはり闘神にとって最優先の攻撃対象は魔神なのだろう。魔法の砲撃の照準が私に向く。
「スーパーティーゲル!!」
巨大な砲弾が私に当たる。強烈な衝撃によって吹き飛ばされてしまうがダメージはない。
そして強力な魔法を使った直後の僅かな隙に皆の攻撃が叩き込まれる。
「ランスアターーック!!」
「バイラウェイ!!」
ランスとリック、剣士二人の必殺技が闘神の足元に深い傷を作る。
「「氷雪吹雪!!」」
そこにシィルとイオの魔法により司令室の床が、氷に覆われる。亀裂の走った足で前進しようとした闘神は足を取られてバランスを崩す。
「いっけー!チューリップ!!」
そこにチューリップの砲撃が炸裂し、とうとう闘神が倒れる。
「今度は顔から食らわせてあげるよ!」
「黒色破壊光線!!」
顔、胴体、足、てっぺんから足元まで黒い破壊の光が襲う。先ほどの一撃より広い範囲にダメージをもたらされた闘神が動きを止める。
「まだ再生するの!?」
「リペアがストップしません……」
「いけません、追撃しなくては……」
だが顔に開いた大穴からぼこぼこと金属が泡立つように盛り上がり、傷をふさごうとしている。
もとより闘神は操り人形、当然急所の類もない。
損傷範囲の広さのせいか再生の速度は遅い。だが、強大な魔法を放った直後の硬直のせいで追撃の魔法が放てない。
「はぁ、復讐以外で使う気は無かったのだけれど。仕方ないわ」
志津香の意志に応え、エメラルドの嵌められた指輪から魔力が放出される。
「メタルライン!!」
その魔力を使って放たれたライトグリーンの電撃の束は、闘神の鉄の体を伝って全身にダメージを与えた。
空気の焼ける匂いが部屋中に漂う。強烈な電撃によって焼かれた闘神はとうとう動くことを止めた。
強烈な揺れが闘神都市を襲う。闘神を無くした闘神都市が浮力を失い墜落しつつある。
「闘神都市は堕ちます。揚陸艇を使って脱出しましょう」
「カサドの町の人たちにも早く伝えよう!!」
「はい!ランス様!」
急いで揚陸艇の置いてある場所へと向かう。小さいとはいえ町一つの移動は大仕事だ。
やはりこの状況でディオ・カルミスを探すことは不可能だった。
生粋の快楽殺人鬼。そんな危険人物が世に放たれてしまったことに魔人であるはずのこの身に悪寒が走った。
◆ ◆ ◆
「ごほっごほっ。ふう、危なかった。何なんだろうこれは」
「闘神都市ですね。闘神が倒されない限り落ちるはずはないんですけど」
その二人組は闘神都市の墜落を危ういところで回避した。強烈な砂煙が辺りに立ち込めている。
「くくく、いやあここまで運のない人間に会うのは初めてだよ。助かったと思った次の瞬間に殺されるなんてね……」
そんな彼らの様子を伺っているのは人の形をした鋼鉄の化身。闘将ディオ・カルミスだった。
その声は目覚めてから溜まっていた殺人欲求を存分に満たせる興奮に満ちていた。
鋼鉄の体を持ち、その特異な精神性から魔法も通じない彼を倒すことのできる人間はそうはいない。
そんな彼がとびきりの殺人嗜好を持ってしまったことは人類にとって不幸としか言いようがない。
「まずはちびを殺して、それからもう一人を嬲り殺しにしてやろう!」
そうしてディオは二人組に襲い掛かった。砂煙の中を疾駆し、獲物の姿がバイオメタル化された彼の目に映る。
銀髪の美しい少年。恐怖に歪む顔が見れないのはもったいないが、それはもう一人の少年に存分に見せてもらおう。突然相方を殺された絶望の表情もまた見物だろう。
そんな風に考えていた彼の視界から獲物の姿が消える。
「弐式・ショウキ」
視界のぶれは獲物が動いたからではなく彼の身体が胴から真横に真っ二つにされたせいだった。
落下する彼の目に切り裂かれた動力魔球が映る。
「モンスターかと思ったら、何だろう」
「闘将ですね」
こうして最強最悪の闘将ディオ・カルミスは、誰に知られることなく、あっさりと勇者に倒された。