「先輩。……先輩!」
「んぁ……?」
目が覚めると、目の前には見慣れた後輩の姿がある。そういえば昨日璃奈とセックスした後、帰ったらかすみに説教されたんだっけ……。
そんな風に記憶を思い出していると、彼女の手が俺の首筋に触れる。その手はひんやり心地よく、思わず身を委ねてしまいそうになるが、俺はハッとなって飛び起きる。
「先輩の寝顔、可愛かったですよ」
かすみは俺の様子にクスリと笑ってからそう言った。その表情はどこか悪戯っぽく、それに楽しげだ。
「俺の寝顔なんて、見てても楽しくないだろ」
「いやいや、すっごく楽しいし目の保養になりますよ。写真撮って売れば、かすみんお金持ちになれるかもしれません」
「するなよ…?」
流石にそこまで俺の顔に需要はないと思うのだが…。とにかく、まずは頭を覚醒させようと体を起こして居間に向かう。するとそこには色とりどりのパンが並んだ朝食が出来ていた。
「美味そうだな」
「えへへ、今日は頑張っちゃいました。さっそく食べてみてください」
かすみから皿を受け取り、卵が挟んであるコッペパンを頬張る。サクッとした食感と共に中に入っていた玉子クリームの甘さが口に広がり、とても幸せな気分になる。
「うん。美味いなこれ。どうやって作ったんだ?」
「今は企業秘密です。いつか先輩とかすみんが結婚したら教えてあげます」
「それは楽しみだな」
俺はそう言いながらコッペパンを食べ進める。それにしても、本当にこれは美味しい。おそらく市販の物よりも数倍も。
「ところで先輩。今日は何の日か知っていますよね?」
「ん?……ああ、あれだろ。遊園地に行く日だ」
「はい、正解です! ということで、早く準備しましょう!」
「わかったから引っ付くなって……」
かすみは俺の腕にしがみつきながら急かすように言ってくる。まだご飯食べてる途中だからあまり急がせないで欲しい。
「それで、どこの遊園地に行くんだ?」
この世界の遊園地事情はよくわからないが、恐らく前世と基本は変わらないはずだ。
「どこって……東京に遊園地は門前仲町にしかありませんよ?」
「……マジで?」
「もしかして、他の県をまたぐつもりだったんじゃ……」
「いや、それはないから安心しろ……」
都市部なのに遊園地が一つしかないのは大丈夫なのだろうか。いくらカップルと金持ちしか入れないとはいえ、少し心配になってくる。
「それでは、行きましょう!」
俺は少し不安になりながらも私服に着替え、かすみと一緒に家を出る。そして駅に向かって歩き始めていると、彼女が俺の手を握ってきた。
「先輩はかっこいいので、かすみんが悪い虫が付かないように守ります!」
驚いた様子で彼女を見ると、彼女は照れたようにそう言って顔を背ける。この世界に来てまだ日が浅いため女性の怖さはよくわからないが、せっかくかすみと手を繋げるのは役得だし、このまま手を繋いでおくとしよう。
「駅は痴漢が多いので、かすみんの側から離れないでくださいね!」
「了解。頼りにしてるぜ」
「……ッ!はい!」
俺が笑顔でそう答えると、かすみは顔を赤くする。すると歩いていた通行人の女性達がこちらを見始め、ニヤニヤしながら俺達を見ていた。
「あの子彼氏持ちかぁ…。いいなぁ……」
「絶対チンポでっかいよあの人……」
「あー、犯したい」
そんな声が聞こえてくると、俺はなんというか少し恥ずかしくなってくる。自分の顔が朱色に染まったことを悟った俺は、かすみを急かして足早に駅まで向かうのであった。
「わぁ……凄いですね!」
電車に乗ってしばらくすると、かすみは窓の外を見て目を輝かせている。俺もそれに倣って外を見てみると、巨大な観覧車が目に入った。
「先輩、せっかくですし写真撮りません?」
「そうだな。撮るか」
そう言うとかすみはスマホを取り出してカメラアプリを起動させる。俺は彼女の肩に手を置き抱き寄せ、自撮りをした。
「はい、チーズ」
「ありがとうございます!……ふむ、良い感じに撮れてます」
そう言いながらかすみは写真を確認してから満足げに微笑んでいる。そんな彼女を見ていると、俺の方も自然と笑みがこぼれる。
「どうしたんですか?」
「いや、かすみが可愛くてついな」
「ッ……! ズルいですよ先輩……」
俺の言葉を聞いて、かすみの顔はさらに赤くなる。そんな反応が可愛らしくてさらに愛おしく思っていると、いつの間にか目的の駅に到着していた。
駅から出ると目の前には大きなテーマパークが見える。ここが日本で一番有名なデートスポットであり、多くのカップルが訪れる場所だ。前世でグルメが有名だった門前仲町に唯一の遊園地ができているというのはなんというか複雑な気分だが、きっと何か複雑な理由があるのだろう。
「先輩、行きましょう!」
「ああ」
元気よく腕を組んでくるかすみに返事をして、俺達は入口へと向かう。そして前もって買ってあるチケットを渡して中に入ると、そこはまるで別世界のようだった。
「おぉ、すげぇな……」
「これがカップルしか入れない夢の国……! かすみん感動です!」
この施設は『夢の国』と豪語されるだけあって、とにかく広い。『ランド』と称されるテーマを彩るエリアは、全部で2桁もあり歩くだけでも一日はかかりそうだ。
ちなみに入場口で貰った分厚いパンフレットによると、様々なアトラクションで特に人気なのはジェットコースターらしい。なんでも最高速度が日本一のものもあるとのことだ。まあ、この世界の遊園地なんてたかがしれてるのだが…。しかしそれでも、男ならば日本一という謳い文句には心惹かれるものがある。もっとも、この世界のひ弱な男性は微塵もそれに興味がないのだろうが。
「先輩、まずは何に乗りたいですか?」
「ん? そうだな……じゃあとりあえずジェットコースターだな」
「わかりました! では早速向かいましょう!」
かすみは嬉しそうな表情を浮かべると、俺の腕を引いて歩き出す。幸いなことに今日は人が少なく、すぐに乗り場までたどり着くことができた。ていうか、全体的に高齢者が多い…。高校生で彼女持ちの男性はいないのだろうか。いや、いても行く気がないだけか。
「何名様ですか?」
「二名で」
「かしこまりました。それではこちらへどうぞ」
案内されるがままに席に着くと、係員が安全装置の説明を始める。この世界の遊園地も流石に安全面は前世と変わらず、事故防止のために必ずシートベルトを着用する必要があった。
「楽しみですね!」
「ああ。ワクワクするな」
「はい!」
そして、ついに俺たちの乗った乗り物が動き始める。ゆっくりと上昇していき、徐々にスピードを上げていくと、景色が急に流れ始める。
「うわぁ……!?」
「これは……なかなかの迫力だな……!」
所詮この世界のジェットコースターだと舐めていたが、予想以上の加速力に驚く。そして急降下していった後、またもや上昇して今度は一回転し始めた。
「きゃぁあ!」
「おっと……」
悲鳴を上げるかすみを抱き寄せ、彼女の頭を撫でて落ち着かせる。数十秒経ってジェットコースターが止まった後、彼女は俺の胸に顔を埋めたまま荒くなった息を整え始めた。
「怖かったか?」
「はい……少し……」
「悪いな、我儘に付き合わせたみたいで」
「いえ、いいんですよ。楽しかったですから!」
そう言ってかすみは俺から離れようとするも、俺はそれを許さず抱きしめ続ける。彼女は驚いた様子で俺を見た後、ぎゅっと抱き返してきた。
「先輩、好き……」
「俺も好きだよ」
そう言って俺たちはキスをし始める。
「あの、次のお客さまがお待ちしていますので……」
「あ……」
「あー、すみませんね」
すると頬を赤くした係員が申し訳なさそうに声をかけてきて、かすみは慌てて俺から離れる。俺は苦笑いしながら係委員に謝り、次のアトラクションへと向かった。
「次はこれですね!」
「おう」
次に俺達が向かったのは、いわゆるお化け屋敷と呼ばれる施設だ。おどろおどろしい雰囲気を醸し出している建物を見て正直気後れする気持ちもあるが、せっかく来たのだから楽しむとしよう。
「先輩……大丈夫でしょうか?」
「平気だよ。……多分」
「……なら良かったです」
不安そうにしているかすみを安心させるために笑顔を作ってそう答えると、彼女はほっとしたような表情になる。俺は彼女の手を握り、そのまま建物の中へと入っていった。
「暗いな……」
「はい……。先輩、離さないでくださいね」
「わかってるさ」
そう言うとかすみは俺の腕を強く抱き締める。俺は彼女の温もりを感じながらゆっくりと進んでいき、少しずつ前へと進んでいく。そこにはおどろおどろしいBGMが流れており、なんだか本当にお化けが出てきそうな気がしてくる。
「キャァア!!」
「うぉっ!?」
突然聞こえてきた女性の叫び声に驚き、思わず情けない声を出してしまう。
「ふふっ、ふふふ……先輩可愛いですよ」
「うるせぇ……。それより出口まであとどれくらいだ?」
「もうすぐですよ」
かすみの言葉通り、しばらく進むと前方に光が見えた。
「あそこだな……」
「えぇ……」
俺達は早足になって光に向かって進み、扉を開けようとする。しかし、出口まで後数十メートルというところでお化けが飛び出してきてしきた。
「うぉおおおおおおおお!!!」
「うわぁぁっ!?」
「ひゃぁああああああ!!?」
パニックになった俺たちは一目散に出口へと向かって走り出す。数秒後、なんとか俺たちは脱出に成功することができたが、心臓が激しく鼓動しているせいで呼吸を整えるのにしばらく時間がかかってしまった。
「はぁ、はぁ……死ぬかと思ったぜ……。おい、かすみ……大丈夫か?」
「はい……。ただちょっとびっくりしちゃいましたけど……」
「ああ……。まさかあんなに驚かされるとはな……」
「本当です……。でも、先輩と一緒だったから不思議と安心できました」
「そりゃよかった。で、次はどこに行くんだ?」
「次は少し優しめのアトラクションで……って、先輩待ってくださーい!」
たとえお世辞でもそんなことを言われると嬉しくなってしまう。俺は照れた表情を隠すようにそっぽを向いて歩き始め、それを追うようにかすみが追いかけてくるのだった。
『そろそろ閉園のお時間です。荷物を整理して、ゲートに向かってください』
夢中になって楽しんでいたら、ふとした内に閉園のアナウンスが園内に流れ始める。気づけば日は沈みかけており、空はオレンジ色に染まっていた。
「楽しかったですね!」
「そうだな」
正直あまり期待していなかったが、この世界の遊園地は前世のそれと遜色ないレベルだった。久しぶりというのもあるが、この歳になって遊園地がここまで楽しめるとはな。
「じゃあ帰りましょうか」
「ああ」
そして、俺たちは駅へと向かうために遊園地のゲートを潜ろうとする。
「あ!」
「どうした?」
すると突然、かすみが何かを思い出したかのように声を上げる。忘れ物でもしたのだろうか。
「そういえばここの近くに、かすみんの先輩のご家族が経営しているもんじゃ屋さんがあるんです! せっかくですし、寄っていきませんか?」
「もんじゃ、か……」
そういえば前世でもんじゃ焼きは食べたことがない気がする。関東出身のため、もんじゃには縁がなかった。チラリと時計を見るとまだ五時だったが、小腹も空いてきていた。それにせっかくかすみが誘ってくれているのだ。断る理由はない。
「じゃあ行くか」
「はい!」
俺たちは手を繋いで歩き出し、数分後に目的の店へとたどり着いた。
「へぇ、なかなか良さげな感じの店だな」
「そうですね。では、入りましょう!」
『もんじゃ宮下』は外観を見た限りだと、高級感というか老舗感があって格式ある雰囲気を醸し出している。かすみに続いて店内に入ると店内は外と変わってお洒落なデザインとなっており、なんというかもんじゃ屋というよりカフェみたいだ。
「いらっしゃい! 愛、接客頼んだわよ!」
「うん、わかった。って……えっ!? かすみんと……男の人!?」
店長らしき風格ある女性がそう言うと、恐らくかすみの言っていた先輩だろう、少しギャルっぽい格好にもんじゃ屋の制服を着た金髪の少女が現れた。彼女は俺とかすみを見てかなり驚いている様子だったが、すぐに笑顔を浮かべて俺達を迎えてくれる。
「えっと……お二人様?」
「はい、お願いします」
「か、かしこまりました…。こちらにどうぞ」
店員に案内されて席に着くと、少女はすぐにメニューを持ってくる。
「ところで、なんで二人がここに…?」
「今日かすみんと先輩は、遊園地でデートしてきたんですっ!」
「へぇ〜。羨ましい……」
愛と呼ばれる少女が何かボソッと口走るのを耳にしたが、小さくてよく聞こえない。
「あの、ちょっといいですか?」
「は、はいっ! 何かな?」
俺が声をかけると、女性は慌てた様子で返事をする。どこか声が上ずっている気がするが、初対面だし仕方ないか。
「もんじゃを焼くのって初めてなんだけど、よかったら焼き方とかって教えてもらえる?」
「あ、愛さんが!?」
「ああ。
そもそも他の従業員が調理場にいる以上、他に誰がいるのだろうか。
「わ、わかった! 愛さんに任せて!」
なぜか急にやる気を出した女性―――愛さんの好意に甘えて、俺は彼女にもんじゃの焼き方を教えてもらうことにした。
スーパースター観れてないけどこの小説にluella !出したい。早く視聴しなくちゃ……
メスガキしずくを描いていたら投稿が送れました。
虹ヶ咲以外にグループ追加するとしたら何が見たい? ※今後の参考にするだけです。筆者の気分によって、出てくるアイドルグループは変わります。
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Liella!