原作を壊したので独自ルートでハッピーエンドを目指す 作:悪の組織カルデア
ある日、自分がBLEACHの世界に転生していることに気が付いた。
否、気が付いたというのは語弊がある。正確には前世の記憶を取り戻したと言った方が良いだろう。そしてこの世界がBLEACHの世界だと気付いたのは胸に穴が空いた白い仮面を被った異形と胸に鎖が付いた人間だったものが居たからだ。
そんな特徴的な存在が跋扈する世界なんてBLEACHの世界しか無い。
幸いな事に自分には異能があった。それもこの世界のものじゃない力が。
――――その力とはサーヴァントの召喚。
こことは違う世界、TYPE-MOONの作品世界である過去の英霊を使い魔として呼び出す力である。
尤も呼び出すことが出来るのFate/Grand Order――――略してFGOの所有しているサーヴァントだけで、呼び出すサーヴァントは人格の無い影のようなものだ。
他にも手に入れたアイテムを使う事が出来るとか色々あるが、大体こんなものだろう。
転生特典とも言い換えて良いこの力のおかげで第二の人生はイージーモードである。
「と、言えれば良かったんだけどね」
残念な事に今の時代は江戸時代、現代日本に比べれば平和とは言い難い時代だ。
そんな世界で普通に生きていけるとは思ってもいない。と、いうか現在進行形で苦労している。
チート能力がある? 使いまくれば
ヨン様、陛下、全ての元凶に目をつけられるとか絶対に嫌でござる。
「こうなったら特異点でも作ってそこで暮らすか?」
聖杯も63個あるわけだし、尸魂界の干渉が無い世界を作ってそこで暮らすのもありかもしれない。と、いうかそうするべきだ。
「よし、そうしよう」
そう考えた僕は特異点を作ってそこで暮らす事にした。
※
特異点を作るとは言ってもすぐに作る訳では無い。
作る場所、条件等様々な問題がある以上すぐには作れない。尤も、作る予定の場所として断界か
誰も使っていない世界ならばバレないように新しく空間を作り利用しても文句はないだろう。
まぁ作るとしたら断界だ。あそこは時間の流れが変わってるし。
ただ拘突が厄介だ。特異点を作ろうとした瞬間に現れたら元も子もない。断界の狭間で拘突が特異点にぶつからないように作れば大丈夫だから、拘突が通り過ぎた日が望ましい。
「だから尸魂界に来たんだけど…………」
周囲に視線を向け、不審な視線を向けられてない事に安堵する。
呼び出したサーヴァントの単独顕現と気配遮断が無ければ旅禍として排除されていたから、本当に助かった。
一応今もアサシンクラスの気配遮断を使ってるからヨン様にも陛下にもバレてないだろうけど、用心しなきゃな。
「にしても、本当に酷いなここ」
周囲に居る住人は誰も彼もがピリピリしている。
それも当然といえば当然、ここの地区戌吊はあまり良い環境じゃないのだから。
「尸魂界も魂の調整者を名乗るならこういうのもちゃんとやれよ」
全ての死神がそうではないとはいえ、これはあまりにもあんまりだろうに。
やっぱり死後に尸魂界に行くのは嫌だな。虚園も嫌だし地獄はもっと嫌だが。
そう考えながら歩いていた時だった。
ふと、視界の端に赤子を連れた女性――――少女にしか見えない人が映ったのは。
「ん」
気になった僕はその少女の所まで移動する。
気配遮断のおかげで誰も僕に気付く事はなく、少女にも気付かれずに問題無く到着した。
その少女はとても儚気な雰囲気を纏った、美しい人だった。
この戌吊に居るにはあまりにも場違いな印象を覚えるくらいには美しかった。
そして僕は彼女に見覚えがあった。
「朽木…………緋真?」
確か、原作において朽木ルキアの実の姉にして、朽木白哉の妻だった人だ。
何でここに彼女が――――いや、彼女の胸の中で眠る赤ん坊を見るにまだ白哉と出会っていない、それどころか尸魂界に来たばっかりなのかもしれない。
と、いうことは彼女はこれから赤ん坊を、ルキアを捨てるのか。
「ごめんなさいルキア…………私じゃ貴女を育てられない」
涙を流しながらルキアを優しく地面に置こうとする。
残酷な事だけれど仕方がない話だ。現世でも口減らしに捨てるというのはよくある事で、こんな場所で赤ん坊を連れた弱々しい少女が生きていけるとは思えない。
それに現世でも似たような理由で姉妹揃って死んでいるのだろう。このままじゃ前の焼き直しになる。
本当、ろくでもない話だ。
でもこれは放置するしか無い。ルキアがここで捨てられなければ阿散井恋次との出会いが無くなる。
原作の事を考えると彼女を助けてはいけない――――。
「ごめんなさい……………ごめんなさい…………!」
「謝らなくて大丈夫だよ」
「…………えっ?」
はい、やっぱり無理でした。
ただでさえ色々とムカムカと来ているのに、こんなのを見せられて黙ってられるわけがない。
心の内で後悔しつつ、此方を見る緋真に告げる。
「ねぇ。お嬢さん。きみには二つ選択肢がある。一つは僕の提案に乗らないでこのままその子を捨てて生きる事。もしかしたら優しい人に拾われるかもしれないし、このまま二人で生きていくよりはずっと良いかもしれない」
緋真は急に現れた僕に困惑している。
だけれども話はしっかりと聞いていた。
「もう一つが僕の提案に乗る事。はっきり言ってお勧めはしない。間違いなく辛い目にあう。でも確実に二人で生きていける。もし断るなら、この記憶は失ってもらうけど――――」
「お願いします!」
緋真は僕の言葉を最後まで聞かずに頷いた。
「…………良いの? 提案に乗るってことは僕の共犯者になるってことで、場合によってはこの尸魂界を害する事になるけど」
「構いません! どうか、どうか…………力を貸して下さい」
此方に懇願する彼女の言葉を聞いて溜め息を吐きつつ、改めて決意を固める。
本当に我ながら単純な奴だ。
原作は間違いなく崩壊する。約束された結末には絶対に至らない。
ならばそれ以上のハッピーエンドを目指してやる。
「良いよ。じゃあ自己紹介といこうか。僕は天乃邦幸。この尸魂界の言葉でいうのなら旅禍という存在で、現世で生きている人間だよ」
僕の言葉を聞いて緋真は驚きつつも、決意を固めた表情になる。
「私は、緋真と言います。性はありません。そして、この娘はルキアと言います」
「緋真にルキアね。分かった。じゃあ早速この尸魂界から脱出しよっか」
そう言って緋真を抱えて尸魂界から断界に移動する。
幸いな事に拘突は既に通過し終わった後だったらしく、邪魔をする者は誰も居ない。
「じゃあ、始めようか」
聖杯を一つ取り出し願いを込める。
込めた願いは特異点の構築――――そしてこの特異点を成長させて新しい世界を創る事だ。
※
特異点を作り上げた僕達は生息圏を作ったり、二人の身体となる特殊な義骸を生み出したり、サーヴァントの力を借りて緋真の病弱を治したりした。
その際に聖杯を追加で3つくらい使ってしまったが、これから先の事を考えれば必要な事だった。とはいえ、無駄遣いし過ぎて無くなるなんて事になったら最悪だが。
――――でもまぁ、これである程度は問題無いかな?
作物や家畜はゴーレムに育てさせてるし暮らすだけなら問題は無いだろう。
そう考えながら隣の椅子に座り、赤子のルキアを抱える緋真に視線を向ける。
現世での着物を身に纏った彼女はとても穏やかな笑顔でルキアをあやしていた。
その笑顔を見て少しだけ罪悪感に包まれるも、しでかしてしまった事は仕方がないと自分に言い聞かせる。
原作はどうしようもないほどに崩壊した。ならば僕は原作よりも良い世界にしなくちゃならない。
「この世界、地獄はあるのに天国は無いからな…………僕が作ってやる」
天国と呼んでも良いぐらいの世界を。