※この作品はR-18です。

裏短編置き場   作:鈴名ひまり

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──おかしい。
この話のラストでハイライトの消えたリビアが見られるはずだったのに、各シーンが長くなりすぎて分割しなきゃいけなくなっちゃった…
何でR18なのにバトルシーンの方が充実してるんだろ


波乱の夜 ──リオン×エステルⅡ──

 夜。

 

 明かりの消えた部屋にうっすらと月の光が差し込み、中をおぼろげに照らす。

 

 青白い薄明かりに満たされた部屋に、肌と肌がぶつかる音と艶を帯びた吐息とベッドの軋む音が響く。

 

 そして──声を抑えて密やかに行われていた情事は唐突に終わりを迎えた。

 

「──もう出るッ!抜かないと──」

「ッ!今更ッ!そんなことッ!気にしてんじゃ、ねえッ!勝手に抜いたらッ!ぶん殴るからな!」

「いやお前、さすがに中には──ひぐッ!」

 

 目の前で喘ぐエステルの長くしなやかな脚が腰に巻き付き、同時に彼女の締め付けが一段と強くなる。

 このまま彼女の中に呑み込まれてしまうのではないかと思うほどの吸引に思わず悲鳴を上げて──そして次の瞬間にはもう痙攣が始まってしまった。

 

 腕できつく抱きしめられ、脚で腰を固められ、どこにも逃げ場がないまま、自分の意思とは無関係に快楽が弾けて迸る。

 

 痙攣が終わった後も、エステルは中に吐き出された情欲の塊を味わうようにしばらくの間腕と脚でリオンの身体を抱きしめていた。

 

 その顔は痛みに耐えているようでもあり、快楽に恍惚としているようでもあった。

 見たことのないその表情とちっとも弱まる気配のない締め付けとうねりが、離れるという選択肢を奪い、二人は無言で密着状態を続ける。

 

 どれくらいそうして密着していたのか忘れそうになってきた頃、ようやくエステルは脱力した。

 

 ようやく彼女から離れることに成功したリオンは青褪めた顔でエステルを問い詰めようとするが、彼女の表情を見て言葉を失った。

 

「お前、何で──」

 

 瞳から光が消えて死人のような形相になったエステルの姿がそこにあった。

 その表情から彼女が激しい後悔と自己嫌悪の中にいることが分かった。

 

 エステルが目だけ動かしてリオンの方を見る。

 

 そしてすぐに目を逸らして悪態をついた。

 

「ああクソ。何で今更お前のことなんか──」

 

 シーツを掴んで再び嗚咽を漏らし始めたエステルにリオンは掛ける言葉を思いつかなかった。

 ただ黙って掛け布団を掛けてやるだけで精一杯だった。

 

「シャワー、浴びてくるから」

 

 居た堪れなさから逃げたいのをそう言い訳して、リオンは部屋を出た。

 

 取り残されたエステルは、飲み過ぎた時のような浮遊感とも痺れともつかない脱力でしばし動けないまま横たわっていた。

 リオンが掛け布団を掛けてくれたおかげで冷えずに済んでいるが、大量に水分を放出した身体は渇きを訴えている。それにさっき注ぎ込まれた生温かい粘液が溢れて尻の方に垂れてきているのが気持ち悪い。

 

「紙と水くらい持ってこいよクソが」

 

 毒づいて、力の入らない身体に鞭打ってベッドを降り、脇の小さなテーブルに置かれた塵紙の箱から何枚かむしり取って股に当てる。

 

 終わって冷静になってみるとどうかしていたと思う。

 感情的に泣き喚き、抵抗する彼を力づくで押さえつけて行為に及び、挙句の果てには彼が最後に残った理性を振り絞って外に出そうとしたのを拒否して無理矢理中に出させてしまった。

 ──クソなのは自分だ。

 

「これっきりだ。もう二度とこんなことするか」

 

 エステルは自分に言い聞かせるように呟くと、キッチンに向かった。

 

 蛇口を捻って流れ出した水を両手ですくって喉を潤すと、床に散らばった衣服をかき集めて身につけていく。

 この部屋に長居は無用だ。速やかに──リオンがシャワーから上がってくるまでにお暇したい。

 

 満足に動いてくれない指に苛立ちながらシャツのボタンをとめていると、浴室の扉が開く音が聞こえてきた。

 

 シャツのボタンは上半分で諦めて上着を羽織り、全速力で部屋を飛び出した。

 

 ほぼ入れ違いにリオンが浴室を出て部屋に戻ってくる。

 

「あ、空いたぞ。お前もシャワー浴びて──あれ?エステル?」

 

 努めて優しく声をかけようとしたリオンだったが、ベッドはもぬけの殻だった。

 

 もしやと思って玄関に行くと案の定、鍵は掛かっていなかった。

 

 扉を施錠すると、リオンはその場に座り込んで頭を抱える。

 

「明日からどんな顔して会えばいいんだよ──」

 

 

◇◇◇

 

 

 それから一ヶ月ばかりが過ぎた。

 

 新入生たちが学園での生活にも慣れ、お茶会が開かれるようになった頃。

 

 リオンはオリヴィアと二人で図書室にいた。

 

 ここ最近頻発する不可解な事件の背後にいると思われる人物の出身国【ヴォルデノワ神聖魔法帝国】に関する情報収集を行っていたのだが──不意にリビアが口を開く。

 

「リオンさん、また無茶をしているそうですね」

 

 曖昧な質問にリオンは当たり障りのない答えを返す。

 

「面倒が多いから大変だよ。一年の馬鹿共は説教しないといけないし、フィンリーのお茶会も手伝わないといけないからな」

 

 嘘ではない。

 

 一年生の男子の問題行動は後を絶たず、それで被害を被った女子が助けを求めれば、巡り巡ってリオンが召喚されるのである。

 三年生のまとめ役にして公爵令嬢であるアンジェリカですら、世間知らずの男子たちを黙らせられない状況は目を覆いたくなる嘆かわしさだ。

 

 妹フィンリーのお茶会にしても、これまで女子がお茶会を開く側ではなかったせいもあるのだろうが、リオンから見れば駄目駄目だ。

 何なら師匠と出会う前の自分よりも酷いのではあるまいか。

 せっかく師匠がお茶を広めようという崇高な目的のために邁進されているというのに、弟子たる自分の妹がそのような体たらくでは申し訳が立たない。

 

 だが聡明なオリヴィアはそのようなのらりくらりには惑わされてくれなかった。

 

「毎晩のように出歩いているそうですね?」

「──誰から聞いた?」

「頻繁に出かけていれば、学園の生徒だって気付きますよ。噂になっていますからね」

 

 僅かに目を細めながら淡々と指摘してくるオリヴィア。

 

 彼女の視線が怖くて、リオンは目を逸らした。そしてそのままなおもはぐらかそうと試みる。

 

「べ、別にやましいことはしていないよ。──うん、本当に」

 

 一瞬、ほんの一瞬だけ一ヶ月ほど前の夜を思い出してしまったが、あれ以来エステルとは何もないので嘘ではない。

 というか、あれ以来エステルには明らかに避けられている。同じ教室にいても以前のように話すことはなく、視線すらも合うことはない。

 

 オリヴィアはそれを知ってか知らずか、それは心配していないと言った。

 

「でも、危険なことをしていますよね?」

「え?ま、まあ──その、多少は、ね」

 

 どこまで話したものか少し考えてから、観念して正直に事情を説明しようと決めた。

 ただし、知られると厄介ごとになりそうな都合の悪い部分は伏せておく。

 

「いや〜、これはあれだよ。最近増えている連続殺人事件を追っているんだ。まだ犯人は捕まっていないし、安心できないだろ?」

「それはリオンさんの仕事じゃないと思います。それに、危ないですよ」

 

 オリヴィアが不安そうな顔をするが、リオンは押し切る。

 

「そうかもしれないけど、リビアたちに何かあってからじゃ遅いだろ?もう何件も同じような事件が続いて、憲兵も血眼になって探しているのに捕まらないんだし、任せっきりってわけにもいかないよ」

「でも──」

「大丈夫、目星はもう付けてあるんだ。後は尻尾を掴むだけ。色々と片付いたら説明するから。それまで待って欲しい」

 

 安心させようと思って言った言葉だったが、オリヴィアはそれが気に障ったようだった。

 

「──そんなに私たちが頼りないですか?」

「いや、そんなことはないけど」

 

 たじろぐと、オリヴィアは身体を乗り出し、語気を強めて訴えてくる。

 

「リオンさんが大事に想ってくれているのは知っています。でも、私たちをもっと頼ってください。私もアンジェもリオンさんの役に立ちたくて──エステルさんみたいに、リオンさんの隣に並び立てるようになりたくて頑張ってきたんです。もう、以前とは違うんですよ」

 

 唐突にオリヴィアの口から出てきたエステルの名前に思わず心臓が跳ねた。

 

「リオンさん?」

 

 オリヴィアが怪訝な顔をする。

 

「い、いや、何でもない。そうか、あいつみたいにか──」

 

 自分が留学していた間に自分のために頑張ってくれていたと聞いて、思わず嬉しさが湧き起こるが、それ以上に罪悪感が大きかった。

 

 一応事前に許可を取っていたとはいえ、エステルと自室で二人きりになり、そして肉体関係を持ってしまった。

 

 襲ってきたのはエステルの方で、抵抗してもまるで歯が立たなかったとはいえ、元はといえば自分の迂闊さが原因──それになんだかんだでエステルの美しい肉体と、普段ふてぶてしい彼女が情欲と嫉妬を剥き出しにして激しく求めてくるというギャップに興奮して、自分も楽しんでいた。

 あの夜のあれは婚約者たちに対する明白な裏切りである。

 

 そんなことをしでかした自分が何も知らない婚約者たちの助けを借りて楽をするなど、自分が許さない。

 

 それに相手が悪過ぎる。

 

 オリヴィアやアンジェリカの魔法の力が凄まじいことはリオンもよく知るところだ。

 それが努力を重ねて更なる高みに至った今、どれほどのものになっているか想像もつかないが──いくら強大な力を有していたところで、それだけで勝てるわけではないのが戦いというものだ。

 そのことはかつてアロガンツという強力無比なロストアイテムの鎧があってなお、黒騎士相手に大苦戦したことで思い知っている。

 

 まして彼女たちは戦いに関しては素人だ。

 人間と殺し合いをした経験などないし、その訓練すらも受けていない。

 

 対して相手は要人の護衛を任されるほどの精鋭で、しかも強力なロストアイテムまで持っている可能性がある危険人物。

 

 そんな相手との危険な駆け引きに彼女たちを巻き込みたくはなかった。

 

「でも今追っている相手は危険過ぎる。リビアたちの実力を疑うわけじゃないけど、そんな奴には近づけたくないんだよ」

「だったら尚更リオンさんだけじゃ危ないですよ。私たちはリオンさんが思っているよりも──」

「男の子にも意地があるからね。今まで散々やらかしてきたから、そろそろ挽回したいんだ。たまには漢見せなきゃ、愛想尽かされて捨てられるだろ?」

 

 食い下がるオリヴィアを遮って自虐気味に放った言葉に、彼女は怒って視線を本に戻してしまう。

 

「私もアンジェも絶対に捨てません」

 

 しまった、もっと上手い言い方をするべきだったと思ってリオンは溜息を吐いた。

 

「絶対に捨てませんけど──捨てられたらどこまでも追いかけてまた振り向かせて見せますから」

 

 ゾクっとした。

 

 オリヴィアの姿は普段と何ら変わらないにも関わらず、その言葉は妙な重みがあった。

 

「あ、あの、本当にすみませんでした」

 

 思わず謝罪してしまうリオンだったが、オリヴィアは怒った様子もなく微笑みを向けてくる。

 

「何を謝っているんですか?」

 

 だがその微笑みが怖い。

 

「──何でもないです」

 

 気のせいだ、優しい彼女がそんな怖い女のはずがないと自分に言い聞かせながら、かろうじてそれだけ言うと、オリヴィアは小さく溜息を吐く。

 

「漢見せるなら他のことで見せて欲しいんですけどね。──それともう一つ。エステルさんと何かあったんですか?」

 

 ぎくり、と身体が強張る。

 

「え、な、何で?」

「ここ最近様子がおかしいんです。エステルさん、リオンさんが留学から帰ってくるの楽しみにしていたんですよ。なのに新学期が始まってから学園で会っても近づこうともしないし、私たちとも殆ど話さなくなりました。何があったのか訊いても何でもない、忙しいって言うだけで答えてくれないんです」

 

 悲しそうに視線を落として言うオリヴィア。

 

 彼女にとってエステルは、一年生の序盤の右も左も分からない時期に声をかけてくれて、その後も何かと世話を焼いてくれた恩人であり、アンジェリカに並ぶ親友でもある。

 そんなエステルが突然口を利いてくれなくなるというのは、とても辛いことだろう。

 

 そしてリオンにとっては不味い。

 

 エステルの態度と、一ヶ月前にリオンの部屋で二人きりの時間があったことをオリヴィアは間違いなく結びつけている。

 勘の鋭いオリヴィアのことだ、下手なことを言えばすぐに肉体関係を持ったことに勘付くだろう。というか、もう勘付いていて反応を見られているのかもしれない。

 

 ──本当に不味い。言い方一つでも間違えたら、そこからどんどん怪しまれて、追及されて、共和国にいた時とは比べ物にならない超ド修羅場になりかねない。

 

(お前何してくれてんだエステル!俺だけならともかくリビアやアンジェまで避けるなよおおお!露骨すぎるだろうがあああ!)

 

 オリヴィアにこんな疑いを抱かせたエステルに対して思わず内心叫んだが、今はエステルを責めるよりもやらねばならないことがある。

 考えろ。沈黙が不自然ではない時間で何としても、オリヴィアが納得してくれそうな言い訳を──

 

「そ、そうなんだ。──うん、俺もずっと避けられているってのは感じていたんだけど、そうか、リビアたちともね──」

 

 ひとまず共感するふりをして時間稼ぎを試みるリオンだったが、それも虚しくオリヴィアの追及が飛んでくる。

 

「リオンさん、一ヶ月くらい前に相談したいことがあるって言って、エステルさんを部屋に呼んでいましたよね?」

「う、うん。そうだった、ね?」

 

 噴き出した冷や汗が首筋を伝い落ちる。

 

 ──ここが運命の分かれ道だ。

 ここで間違えれば、オリヴィアの瞳が底知れない闇で満ちることを確信しながら、リオンは待つ。

 オリヴィアの次の問いかけを──

 

「喧嘩でもしたんですか?」

 

 心配の中に微かな呆れを含んだ微妙な表情でオリヴィアは問うてきた。

 

「ッ!」

 

 リオンの脳裏にあの時の光景が蘇る。

 

『お前、本当に能天気だよな』

『うるせえ!お前はいつも呑気にヘラヘラし過ぎなんだよ!他の奴がどれだけ気を揉んでいるかも知らないで!』

 

 エステルが必要以上に気に病むこともない、という意味で言ったのであろうことに対して、自らが置かれた状況と周囲の気苦労をまるで理解していない楽観論を口走った自分にエステルが怒った──それは傍から見れば喧嘩と言えなくもない。

 

 よし、その後起こったことは伏せて、その部分だけ話して喧嘩ということで収めよう。

 

「──そうだな。喧嘩といえば、喧嘩かな」

「何があったんですか?」

「あの時あいつには今の俺の影響力について相談したんだよ。ほら、その日新入生が喧嘩していて、男男子の方が退学処分にしてやるって息巻いていただろ?そんなこと俺にできるわけないって思ったけど、もしかしたらって思ってさ。そしたらあいつやり方次第じゃできるって言ったんだ。それで気が重くなった俺にあいつ──そこまで心配いらないって、俺があの時女子を庇ったから、男子も少しは大人しくなるだろうって、言ってくれたんだ。なのに俺、それが俺が心配し過ぎないようにっていうあいつの気配りだって気付かずに、心配して損したとか、平穏な学園生活が送れるとか、空気読まないこと言って──今まで堪えていた分全部爆発させちまったんだ」

 

 思い出して、言葉にしてみると、なぜか胸が詰まった。

 涙が一筋溢れ出て頬を伝った。

 

 あんなことを言ったせいでエステルとの関係は完全に壊れた。

 もちろん原因となることはもっと以前からいくつも知らず知らず積み重ねていたが、決定打になったのはやはりあの時の自分の失言だ。

 あれが彼女の怒りと情欲に火を点けて、今まで築いてきたかけがえのない友情を木っ端微塵に吹き飛ばしてしまった。

 

 きっともう何をどうしても、彼女と元のような関係には戻れない。

 

 そしてそう遠からず──学園を卒業したあたりで彼女との縁は切れる。

 時に同じ話題で笑い、時に小狡い悪巧みを練り、時に圧倒的な強敵を相手に共闘し、時に同年代らしからぬ懐の深さを見せて慰め励ましてくれた彼女が──人生からいなくなる。

 

 今更のようにそれが酷く恐ろしくなった。

 どうしても弱みを見せられずに、背伸びして虚勢を張って、嘘と秘密で塗り固めた仮面を被って接してしまう婚約者たちと違って、本音を隠さず自然体でいられて、それで軽蔑も罵倒もせずに気持ちよく笑ってくれる、居心地の良い女友達を失ったら──その先の人生がおそろしく窮屈で寂しいものになりそうな予感がする。

 

 ──嫌だ。

 ──そんなの、嫌だ。

 ──エステルを失うのは、嫌だ。

 

(はは、最低だ。俺)

 

 自分の身を心配してくれる婚約者が目の前にいて、なのに他の女のことを失いたくないと考えるなんて。

 そう内心で自嘲する。

 

 オリヴィアが背中をさすってくれているが、そうしてもらう資格なんて本当は自分にはないのだ。

 

「──そんなことがあったんですね」

 

 そう言ってオリヴィアは取り出したハンカチでリオンの涙を拭う。

 

 そしてハンカチをしまうと、リオンの手を握って力強く宣言した。

 

「分かりました。私に任せてください。私がリオンさんとエステルさんを仲直りできるようにしますから!」

「え?でもこれは──」

 

 俺の問題、と言う前にオリヴィアがそれを遮る。

 

「私、リオンさんの婚約者ですよ。リオンさんの問題や悩みは私にとっても問題で、悩みです。それにエステルさんのことは私もよく知っています。リオンさんも迂闊でしたけど、エステルさんもリオンさんが辛いことにも耐えながら頑張ってきたってこと、ちゃんと分かっています。そんな風に怒っちゃったこと、絶対悔やんでいます。きっと初めてのことでどうしたらいいのか分からないだけなんです。だから──」

 

 オリヴィアの両手がリオンの両肩を捉えて握り締める。

 

 彼女の双眸が涙ぐんだリオンの顔を映す。

 

「これ以上ほっとかないでちゃんと仲直りしてください」

 

 その言葉と眼光には有無を言わせない妙な迫力があった。

 

 

◇◇◇

 

 

「くそっ!くそっ!」

 

 強い怒りと嫌悪感で口から悪態が漏れ出しながらも、腰の動きは止まらない。

 

 机の角がそ(・)こ(・)に擦れる度に冬の静電気のような鋭さを持った快感が身体中を走り抜ける。

 

 その快感は下半身から一気に脳へ駆け上り、やがてじわりじわりと全身に広がって鼓動を早め、顔を火照らせる。それがまた興奮を呼び起こし、理性は侵食され、情欲に支配された脳は更なる快感を求めて身体を駆り立てる。

 

 抗おうなど無駄なことだった。

 それは人間として、否、獣としての根源的な欲求だったから。

 

 そして本来その欲求を解消するのに今使っている机の角では不足だった。

 もっと弾力があって、長くて、太くて、熱いものに身体の中の奥深くまで貫かれたかった。

 

 だがそれはもうしないと決めた。

 故に解消の手段は変わらず、そのための回数が増えていく。

 

 やがて興奮が臨界に達して情欲が脳内を完全に塗りつぶし、弾けた快感の電流が全身を駆け巡る。

 

 しばらくして快感が落ち着くと、入れ違いに腰が砕けたような脱力感がやって来る。

 

(クソ──またやっちまった)

 

 机に突っ伏したまま内心で毒づく。

 

 一ヶ月前のあの夜以来、リオンとはなるべく接触しないようにしてきた。

 もはや何もなかったようにこれまで通り接するというのは不可能だと思い知ったからだ。

 それにしばらく顔を合わせずにいれば、少しずつ記憶が薄れてこの気持ちも冷めてくれるのではないかという期待もあった。

 

 だが──意図的に避けるということは意識しているということでもある。

 あの夜とその前の初めての夜のことを思い出す頻度は日を追って増え、肚の切ない疼きは強くなる一方だった。

 

 それを何とか振り払おうと日々の鍛錬に一層精を出した。

 自分の肉体を虐め抜いて、リオンのことから意識を逸らそうと試みた。

 

 だが、幼少期から鍛えに鍛え抜かれた鋼のような肉体を何も考えられないほどに追い込むのは容易なことではなく、少なくともリオンへの気持ちを冷ますという目的は全く達成できなかった。

 

 それどころか、自分はどうしてこんなことをしているのだろうかという虚しさと、誰もいない駄々っ広い部屋で一人で寝起きすることへの寂しさが膨らんでいった。

 

 そしてあの夜から二週間ほど経った日の夜、遂に情欲に負けて股間に手が伸びた。

 

 以来、募る情欲を発散するための作(・)業(・)をほぼ毎日のように行なっている。

 最近では手では物足りず、机の角に敏感な所を擦り付けてするようになった。

 

 完全に逆効果だが、かと言って会えば更に渇望が酷くなるのは目に見えている。

 

 そうなればすぐにリオンの婚約者たちが勘付くだろう。

 アンジェリカやノエルも大概だが、特にオリヴィアの勘の鋭さは尋常ではない。

 今まで嘘を言って見破られなかったことはほぼないし、今回だって自分とリオンの間に何かあったことにはもう気付いているだろう。

 それを確信に変えるわけにはいかない。

 

 故に、一時凌ぎに過ぎないと分かっていても、する度に下着を濡らして机を汚してしまっても、そんなみっともない自分に怒りが湧いても、自慰行為をやめられない。

 

 今日はこれでもう四回目だ。

 すっかり日が暮れて、部屋は暗くなっている。

 

 こんなこと続けてその先に何があるというのだろうか。

 一体いつになったらこの気持ちは消えてくれるのだろう。

 

 いつも通りそんなことを思いながら、替えの下着を取りに行こうと机を離れたその時、いくらか冷静さを取り戻して再び鋭敏になった第六感が窓の外へと視線を走らせた。

 

 そして見たのは──

 

「リオン!?」

 

 鮮やかなフレアを撒き散らしながら、黒騎士に似た禍々しい鎧と戦うアロガンツの姿だった。

 

 

◇◇◇

 

 

 その少し前。

 

 王都の連なる建物の間にできた小さな十字路にリオンは立っていた。

 

「──遅かったか」

 

 惨たらしい死体となって地面に横たわる役人と用心棒たちを見下ろして、思わず顔を顰める。

 

『ええ。ですが今回は犯行直後を押さえられました。今度こそ逃すことはありませんよ』

 

 ここまで導いてくれた使い魔の言葉に気を取り直す。

 

「ああ、そうだな。──ここ最近役人を殺して回っていた犯人はお前か」

 

 死体と血痕の連なる先に立っていたロングコートの男に近づき、声をかける。

 

 すると、男はグリン!と首だけ回してリオンの方を向いた。

 

 まるで狂犬のように口から舌をだらりと出して涎を垂らし、目を血のような赤い色に光らせたその男はリオンの姿を捉えると、醜悪な笑みを浮かべてにじり寄ってきた。

 

「うぁ──バルト──ファルト──み、見つけ──た」

 

 男の腹部は大きく裂けており、裂け目から鋭い刃の付いた触手が三本伸びて蠢いていた。

 その真上、胸部には無数の肉眼が出現し、その全てがリオンを凝視している。

 

「──魔装。セルジュと同じ奴か」

 

 共和国で目にした悍ましい化け物がまたしても目の前に現れたことに、気分が悪くなる。

 

「生憎お前に会った覚えはないんだけどな」

 

 吐き捨てて、懐から拳銃を取り出して構えると、男は立ち止まり、目の輝きを強めて、吠える。

 

「お前の目的は何だ?そいつをどこで取り込みやがった?」

 

 詰問すると、男はブツブツと聞き取りづらい声で呟く。

 

「バルトファルトは──敵──我々の──敵──殺す」

「話が通じない感じ?」

『そうでしょうね。黒騎士の時も、セルジュの時もそうでした。やはり魔装を取り込んでは正常な意識を保てないのでしょう。──手遅れかと』

 

 使い魔の残酷な分析を聞いてリオンは目の前の男に見切りをつけた。

 

「ならこいつらの背後に誰かいるな。次はそいつが誰かを調べないと」

 

 拳銃の狙いを男の頭部に定める。

 

 男の腹部から生えていた触手が迫ってきたが、引き金を引いて男の眉間を撃ち抜くと、力尽きたように地面に落ちた。

 

 すぐに触手と肉眼は黒い液体となって消え、残ったのは腹部が裂けた男の死体だけだった。

 

「とりあえず、手がかりは掴めたな。こいつの身元を調べて、関係者から情報を集めるか」

 

 呟いて男の死体を探ろうとしたその時、人の気配を感じた。

 

『どうやら黒幕は近くにいたようですね』

 

 使い魔が警戒した声音で言う。

 

「ああ──そうだな」

 

 現れた銀髪の男──ヴォルデノワ神聖魔法帝国からの留学生ミリアリスの守護騎士【フィン・ルタ・ヘリング】を睨みつけて、リオンは呟く。

 

 睨みつけられたヘリングは地面に転がる死体とリオンの持つ拳銃を見て剣呑な空気を纏い、そして──

 

「何が目的だ?」

 

 脅しの込もった口調で質問してきた。

 

 身の危険を感じたリオンは素早く拳銃を構え、眉間に狙いを定めて訊き返した。

 

「動くな。質問するのはこっちの方だ。お前こそなぜここに現れた?」

 

 だが──

 

『マスター!』

 

 使い魔が叫び、リオンを守るように障壁を展開した。

 その障壁にいくつもの魔法の電撃が着弾し、けたたましい音と光を発して弾ける。

 

「俺の質問が先だ。武器を下ろしてさっさと答えろ」

 

 なおも高圧的に問うてくるヘリングの右腕には電光が踊っていた。

 

 次の瞬間、リオンは迷わず拳銃の引き金を引いた。

 

 だが弾丸はヘリングの眉間に風穴を空けることはなかった。

 身体の表面に障壁が張られているようで、弾き返されてしまう。

 

 ヘリングは煙を上げる銃口を見て目を細め、低い声で言った。

 

「それが答えか」

 

 そしてヘリングの身体に先ほど見たのと同じ黒い液体が瞬時に纏わりついたかと思うと、巨大な蝙蝠のような翼を出現させる。

 

 分が悪いと悟ったリオンは一先ず退却を選択した。

 

「待ちやがれ!」

 

 ヘリングが叫んで追いかけてくるが、リオンは一目散に狭い路地に逃げ込む。

 

「待てって言われて待つ馬鹿がいるかよバーカ!」

 

 自分への喝も兼ねて思いっ切り挑発し、積まれていた木箱やガラクタを崩しながらひた走り、道を塞いでいた荷車を踏み台にして屋根の上へと飛び上がる。

 

 そこへ翼を生やしたヘリングが飛んできて前上方に立ちはだかった。

 

「逃げたって無駄だ。お前には訊きたいことがある。大人しくしてもらおうか」

 

 電光を纏った右手を突きつけて言ってくるヘリング。

 

 だがリオンはニヤリと笑って返してやる。

 

「悪いが、大人しくするのはお前だよ」

 

 ヘリングが怪訝な顔をした直後、猛スピードで突っ込んできたアロガンツがヘリングを体当たりで吹き飛ばした。

 

 素早く開いたハッチからアロガンツに飛び乗るリオンだったが、早くもヘリングの反撃が飛んできた。

 閉じたハッチに電撃がぶつかり、アロガンツは揺れる。

 

「危なっ!」

 

 毒づいて操縦桿を引き、アロガンツを離昇させる。

 

 ヘリングはアロガンツの真後ろから追いかけてくる。

 

 その身体が黒い液体に覆われたかと思うと、巨大な鎧の姿へと変貌した。

 蝙蝠の翼と爬虫類を思わせる長い尻尾を持った刺々しい異形の鎧──目玉がないことを除けば見知った魔装の姿である。

 

『攻撃、来ます!』

 

 使い魔が叫んだ直後、ヘリングが鎧の両手に電撃を発生させ、球状に収束させて投げつけてきた。 

 

 回避機動を行うが、電撃は向きを変えて追ってくる。

 

「こいつも追尾機能付きかよ」

 

 素早く対魔法フレアを射出すると、電撃はそちらへと向かっていき、衝突して弾けた。

 

「ここで戦うのは危ないな」

 

 真下は市街地だ。

 もし逸れた魔法がだこかに落ちれば民間人に被害が出てしまう恐れがある。

 

 市街地から離れようと向きを変えると、ヘリングは翼を大きく羽ばたかせて追ってくる。

 

『逃がすかよ!』

 

 その声の迫力が恐ろしくて、気を紛らわせるためにリオンは軽口を叩く。

 

「しつこい男は女に嫌われるぞ」

 

 その挑発にすらヘリングは生真面目に返事してくる。

 

『別に困ってない』

 

 その答えに腹が立ち、操縦桿を握る手に力が入る。

 

「あーそうですか。イケメン様は女性に困った経験がないってか?──お前は絶対にぶん殴ってやる!」

 

 逃げてもすぐに追いつかれると判断し、アロガンツを反転させると、背部の兵器槽から誘導弾を発射。

 

 変則的な機動で迫る誘導弾にヘリングが気を取られている隙に大型ライフルを手に突進する。

 

 放たれた迎撃の電光を躱し、必中の距離から大口径魔弾を叩き込む。

 

 しかし、ヘリングは身を捩り、紙一重で直撃を避けた。

 

 魔弾が近接信管によって炸裂し、ヘリングの鎧が爆炎に包まれるが、すぐに無傷の状態で飛び出してきて、お返しとばかりに電撃弾を放ってくる。

 今度は十本の指の先端全てに生成し、左右で時間差をつけて投げつけてきた。

 

 先に放たれた五発をフレアで凌ぎ、後続の五発をライフルで撃ち落とす。

 

 だが、無傷でとはいかず、最後の電撃弾が至近距離で弾けた衝撃でアロガンツは吹っ飛ばされる。

 

 間髪入れずに追撃の電撃弾が飛んできて直撃し、アロガンツは爆発と電光に包まれる。

 

 たまらずバーニアを吹かして離脱し、距離を取る。

 

「いい気になるなよヘリング。テメエなんか黒騎士の爺さんに比べりゃまだまだだ!」

 

 追ってくるヘリング目掛けてライフルを連射する。

 

 敢えて単調な飛び方をして、チャンスと見て攻撃位置に着こうとする敵の周囲──鎧の機動で回避できる範囲全てをカバーするように弾丸を置(・)く(・)。

 黒騎士との戦い以来練習してきた火線の檻とでも言うべき戦法はヘリング相手にも通用した。

 

 殆どが回避される中、数発がヘリングに直撃し、その倍の数が至近距離で炸裂した。

 

 ──問題はいくら戦法が上手くいったところでそれで相手が墜ちてくれるわけではないということだった。

 

 普通の鎧なら塵も残さず消滅するような高威力の魔弾が直撃しても、少々ふらつくだけで、すぐに体勢を立て直して追ってくるヘリング相手には時間稼ぎくらいにしかならない。

 

 しかもヘリングはこちらの攻撃を見てパターンを読み取り、対処してくる。

 

 ばら撒いた魔弾が電撃弾で迎撃され、火線の檻が破られ始める。

 あまつさえ、こじ開けられた空隙から電撃弾が飛んでくる。

 

 激しい撃ち合いの末に遂にヘリングの電撃弾がライフルを直撃し、銃身を半分ほど消滅させた。

 

「やってくれたな!」

 

 役に立たなくなったライフルを放棄し、より手数に優れた機関銃と攻撃用の戦斧を取り出す。

 

 遠距離飽和攻撃はもはや通用しないため、多少の被弾は覚悟の上で肉薄して接近戦に持ち込むしかない。

 

「ルクシオン!ドローンを出せ!」

『了解』

 

 命じられた使い魔が兵器槽を開き、十数機の無人攻撃機を発進させる。

 

 無人攻撃機と機関銃で前方に弾幕を張り、向かってくる電撃弾を撃破しながらヘリングを追うが、無人攻撃機は弾けた電撃の余波だけで次々に撃墜され、何とか辿り着き突っ込もうとした機も尻尾でハエのように叩き落とされてしまった。

 

 だがそれでも、無人攻撃機たちはリオンをヘリングに肉薄させるという目的は完全に果たした。

 

「くらえ!」

 

 叫んで魔法で強化された戦斧を全力で振り下ろす。

 

 しかし、頭をかち割るはずだった一撃はヘリングの鎧の左腕で受け止められてしまう。

 

 僅かに食い込みこそしたが、すぐに押し返され、その勢いのままに振るわれた右手の爪がアロガンツの胸部──コックピットを直撃する。

 

 大量の火花を散らしてアロガンツの装甲が抉り取られ、巨大な爪痕が刻まれる。

 何なら、そのうち二本ほどが装甲を完全に貫通してコックピットに風穴を空けていた。

 

「クソが!」

 

 機関銃の残弾を全てヘリングに叩き込んで、一瞬怯んだ隙に離脱する。

 それでも僅かに間に合わずに背部の兵器槽とバーニアの一つが爪で切り裂かれ、損傷してしまう。

 

「ルクシオン、ミサイル!」

 

 使い魔に命じて残りの誘導弾を発射して牽制し、距離を離す。

 

 僅かに期待した誘導弾はヘリングが生成したロングソードに斬り裂かれて全弾撃墜されていた。

 

 先程よりも手早く誘導弾を片付けたヘリングは電光を纏うロングソードを手に追ってくる。

 

 バーニアを全開にして上昇するが、距離は縮んでいく一方だ。

 

「ったく、こんだけ強いとかちょっと予想外だぞ」

 

 アロガンツが全力で振り下ろした近接武器すらも通らないとなると、いよいよ取れる手段は限られてくる。

 

「評価を訂正してやるよ。お前黒騎士の爺さん並みかそれ以上に厄介だな」

 

 吐き捨てて、壊れたり弾切れになったりして使えなくなった兵装を放棄して機体を軽量化する。

 残った武器はブレードだけ。

 

「あいつとまた接近戦なんてやりたくないんだけどな」

 

 アロガンツの装甲をいとも簡単に切り裂く切れ味とこちらを上回る速さを持つヘリング相手にブレードだけで勝てるイメージは全く湧かない。

 奥の手を使って良くて相打ちといったところか?

 

 分の悪い賭けだが、もはや腹を括るしかない。

 

 ブレードを左手に持たせ、アロガンツを反転させようとしたその時。

 

『ッ!』

 

 横合いから飛んできた三日月型の黒い斬撃がヘリングを直撃し、ロングソードを切断した。

 

『何ッ!?』

 

 ヘリングが初めて驚愕の声を上げる。

 

 彼にとっても予想外だったらしい桁外れの切れ味を誇る飛ぶ斬撃──そんなものの使い手はリオンが知る限り一人しかいない。

 

『無事か!?』

 

 果たして、リオンの予想通りの人物の声が通信機から響く。

 

 そしてアロガンツのすぐ隣にマゼンタ色の炎を噴射する翼を持った純白の鎧が現れた。

 

「エステル!?お前、なんで──」

 

 あの夜以来徹底的に自分を避けていたエステルが、今こうしてアヴァリスに乗って駆け付けてきたことに驚きを禁じ得なかった。

 それに彼女には言いたいことが一度に言葉にできないほど色々ある。

 

 だが、エステルは今そんなこと言ってる場合かとばかりに、苛立ちの込もった返事をしてくる。

 

『なんでも何もあの蝙蝠野郎を叩き落としに来たんだよ。お前が苦戦するとかどう考えてもヤバい奴だろうが』

 

 アヴァリスの視線の先には、新たなロングソードを生成しつつも警戒して距離を詰めあぐねているヘリングがいた。

 

『で、何かやろうとしていたみたいだが、作戦はあるのか?』

 

 エステルの問いかけにリオンは頷く。

 

 彼女が加わってくれた以上、作戦の成功率は劇的に上がった。

 ヘリングはかつてないほど厄介な強敵だし、その力の底はまだ見えないが、エステルと二人がかりならいける、という確信がある。

 

「奴は俺がやる!いつもの手だ。援護を頼む!」

 

 手短に伝えた具体性のない説明と要請だが、エステルは読み取ってくれた。

 

『了解だ』

 

 どちらが合図するでもなくピッタリのタイミングでアロガンツとアヴァリスは反転し、ヘリング目掛けて加速する。

 

 そして先行するアヴァリスが必殺の黒い斬撃を飛ばし──飛んできた迎撃の電撃弾をあっさりと切り裂き、防御しようとしたヘリングの両手首をロングソードごと切断した。

 

 ガラ空きになった本体目掛けてアロガンツが突入し、右拳で落下速の乗った渾身のボディーブローをお見舞いする。

 

 そして──

 

『インパクト!!』

 

 使い魔の掛け声と共にアロガンツの右拳が赤く発光し、フルパワーの衝撃波が叩き込まれた。

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