親友に敗北した退魔師が式神と融合させられてTS悪堕ちする話 作:ナメクジ次郎
月光が煌めく夜。繁華街を一望できるビルの屋上で目の前の男、芦屋九曜は興奮した様子で下界を見下ろしていた。
怨霊や妖魔、人の理を外れた人外のバケモノ共と、それを屠る年若い退魔師の集団。
霊力の奔流が力ある形へと変わり、その煌めきが邪悪なるものを滅ぼしていくその光景は、俺達もよく見慣れたものだった。
「
芦屋のその言葉通り、眼下に見える退魔師達は国際色豊かだ。
金髪碧眼の騎士はその剣から放たれる熱と光でもって敵を断ち。雪を思わせるような銀髪の少女はその眼に宿る魔性の力でもって妖魔を同士討ちさせ。炎のような赤い髪の青年がこの拳でもって妖魔を殴殺している。
その他にも様々な国の退魔師がこの汚染された東京で、持てる力を振りかざしている。
ここに集まっているほぼ全ての人間が出身や立場、出自が違えども芦屋九曜を殺さんとする意思を持っている者ばかり。
それらは全て、先日の宣戦布告によって各国から派遣された退魔師達だ。
首都東京での大規模テロ、それは芦屋九曜という災害の帰国を知らせるのには十二分に効果を発揮した。
これまで行っていた諸外国への行脚、その過程でこの男は多くの狼藉を犯している。
王室にて保管されていたはずの聖剣の強奪、強大な祓魔師組織を壊滅させたことによるパワーバランスの崩壊。奥地に住む少数民族の儀式への介入、謝肉祭を人々がお互いを喰らい合う地獄絵図へと変えた事もある。
それ故にこの男の命を亡き者にしようとする組織、国家は数知れず。一か所に留まっている今が勝機と精鋭たちが送り込まれているという訳だ。
そして退魔師達の中に一人、一際目を引く存在があった。
艶のある長い黒髪は風に靡き、一族相伝の礼装の白さをより際立たせている。
行使する術は俺も得意としていたもので、その威力は以前の自分のそれを大きく凌駕していた。
その少女の名前は鬼龍院桔梗——俺の、妹だった。
「なんじゃあ柳殿、物思いに耽りおって。なんぞ好みの退魔師でも……ああなるほど。そういえば妹がおったんじゃったのう。ククク、なんぞ柳殿より強いではないか、やはり次期当主は違うっちゅうことかのう」
次期当主、という言葉に胸がきゅっと締め付けられる。
別にその立場に執着していた訳ではないし、そのことで妹を恨んでいたわけでもない。
俺は代々一族に継承されている術と相性が悪く、妹は相性が良かった。たったそれだけのよくある理由だ。今更悔やむことも無い。
それに俺は既にこいつの式神。当主どころか退魔師に戻る事すら最早叶わないのだから、この感傷も無意味なものだ。
「それにしても女になった柳殿は随分とよう妹に似ておるな。血が繋がっとるんじゃから当然とはいえ……ふむ、しかし胸は全然似とらんのはどういうカラクリじゃ?」
戦闘中の妹と俺を見比べていた芦屋の手が、ふいにこちらへと伸びる。
迷いなくこちらへ伸ばされた手はその視線の先、ワイシャツを大きく押し上げボタンが留まらないほどに大きくなった俺の胸に向かい、そのまま触れた。
「んぅっ……芦屋、何を……」
「いやなに、柳殿の乳を見ておったらちいとばかしムラっときてのう。そういえば以前交合した時にそのデカチチ味わっておらんかったし。今からでも味おうておこうかと」
むにゅり。とでも音がしそうなほどに柔らかな乳房は、鷲掴みにしている芦屋のゴツゴツとしたオトコの手に程よい弾力を返しているのだろう。その証拠に手慰みをするかのように二度、三度と手を離さないままにもまれ続ける。
その度に俺の体には電流が駆け抜けるような快感が走り、正常な思考を奪っていく。
だんだんと足腰は立たなくなっていき、顔は蕩けて呼吸が荒くなっているのが自分でもわかる。
今すぐにでもこの快楽に、衝動に身を任せてしまいそうになるが、しかし──
「ゃぁ……芦屋ぁ……ダメっ……」
あまりにも快感に弱くなってしまった体をなんとか制御しつつ、未だ胸から離れぬ芦屋の腕を掴んで力が入らないなりに静止する。
今すぐにでも交わってしまいたい衝動はまだ収まらない、だがしかし。それと同時に今はまずいと俺の経験が告げていた。
「きょ……は、目的が……ありゅん、だろっ……」
今日は本来、この場所には目的があって来ていたはずだ。それが今、こいつは勢いとその場のノリによって行ったセクハラで放り出そうとしているのだ。
こういう時の芦屋は大抵の場合、何かしらの見落としやミスを犯す。以前二人一緒に居た時もそうだった。
今や俺はこいつの式神、だからこそ快楽に負けずにサポートすることも必要だから……。気持ちよくても、ここは抗わなければ。
「ふぅむ、なるほど柳殿の言うとる事にも一理ある」
俺の思いが通じたのか、芦屋は一度手を止めて未だ戦闘を続けている退魔師達の方へと目を向けた。
ようやく止まった愛撫とそれによる快楽に一安心して肩の力を抜くが、その瞬間に目に入ってしまった。
何か悪い事を思いついた、悪戯をする子供のような笑みを浮かべた芦屋のその顔が──このパターンは、まずい。
「ならば柳殿の忠義に免じて、若い果実を放って交合するのは止めとこう。しかし俺は、こちらも放っておく気はない故な」
その言葉通り、胸に手をかけたまま止まっていた手は再び俺の乳を弄ぶ動きを再開する。
しかしてその目線は依然、先ほど向けた退魔師達の方を向いたままだ。
「クヒヒヒヒ、いやはやしかし雑魚では足らぬか。ならば追加で、式神送っちゃる!」
空いたもう片方の手で器用に形代を取り出せば、そのまま詠唱の類も無しに退魔師達の方へと式を飛ばす。たったそれだけで新たな脅威が彼らに向かっていくだろう。
乳を揉む片手間に。いやこの場合、こちらを一瞥すらしていないのだから術の片手間に揉まれているのか。
そんな異様な状況に。雑に扱われているというのにそれが更に俺の興奮を高めさせる。
(なんでこんな、こんな扱いされて気持ちいいなんてっ……)
俺の倒錯的な快感を知ってか知らずか、芦屋の手は止まることなく俺を攻め立てた。
いやむしろ、眼下で行われている戦闘がヒートアップしていく度にその動きは苛烈になり、快感はさらに深いところまで俺を追い詰めていく。
(あっ……ダメ、これ、イっ……)
「そうれイけ! そこじゃ、もっと殺せ! 俺の高みへ届く術者を選別せい!」
まずい、と。そう思った時にはもう遅く。
俺に向けて放たれたわけではない「イけ」という言葉、そのワードに快楽に惚け切った体は、脳は勝手に反応してしまう。
下腹部から脳みそまで突き抜けるような甘い快感。高まることしか知らない女の絶頂。
焦らされたものが命令の認識した言葉によって一気に開放されたことにより、それは一度では収まらず何度も体はビクビクと痙攣し脚に力が入らなくなる。
最早立っていることすらままならないその体を芦屋の腕にしなだれかかることで支えて貰うが、その手は止まることは無い。
終わらない快楽に目を潤ませながら、もうイったから。これ以上は無理だから、許して欲しいと懇願するように芦屋を見つめる。
しかし、俺のその目に映ったのは──狂気的な笑みを浮かべ、最早目の前の退魔師達から見出される可能性にしか興味がないとでも言うようにこちらを気にしすらしない。
芦屋九曜という、厄災の姿だった。