この作品は、Dead by Daylightの世界にもしも杉元達が迷い込んでしまったら……?
というコンセプトのクロスオーバー作品です。
・Dead by Daylightとは?
一人の迷える仔羊(殺人鬼)が四人の悪魔達(生存者)に妨害されながら、個性豊かなフィールドで血涙を流しつつ脱出されない様に処刑する(???)非対称型対戦サバイバルホラーゲームです。
このお話の中では、ゲーム状のメタファーも含まれ、しばしばシステム的な事を発言してます。
何でもありな人向け。
流血、猟奇的表現が含まれますので、閲覧に注意してください。
[人物紹介]
・杉元佐一
今作の語り部
アイヌの金塊の謎を追うアシリパさんを相棒に、幼馴染みの治療費に金塊の分け前を追う。
驚異的な回復力は霧の森でも健在で、他者は能力として備えなければならない「執念」の効果を永続的に発揮している。
今回、杉元が備えている能力は 「
・アシリパ
金塊の暗号の鍵を追う鶴見中尉率いる第七師団から逃れる為に、杉元、白石と共に樺太から流氷を渡って北海道へ戻ってきているはずだった。
豊富な狩猟の知識は、霧の森では永続的な「
・白石由竹
刺青人皮の囚人。脱獄王の異名は霧の森での脱出にも一役買っている。
「ツルツルした肉体」「開放」を永続的に効果を得ている。
・ウィリアム・ビル・オーバーベック
「Left 4 Dead 2」と言うゲーム内からDead by Daylightに出張してきた。みんな「ビル」「ビル爺」などと呼ぶ。
ビル爺のパーク「
・トラッパー
Dead by Daylightの顔
トラバサミをフィールドに設置して罠に掛かったサバイバーを処刑する。罠は自分も引っかかるので…ちょっとドジっ子属性な面があるが、本人は決して認めない。
スタンボイスが超絶イケボである。
キラー陣の中では話が分かるまともなタイプ
「……おい、おい。生きとるか?」
「……ふがっ!?………あーーー?あっ!?」
「おぉ!良かった杉元!」
眼前に見えた光景は、見ず知らずのジジイと、心配顔で覗き見ているアシリパさんと……。そこに広がる、見知らぬ森。
ゆっくりと周りの様子も伺うと、隣には白石がまだ意識を失っていた。
「さて、ここも直に危なくなる。……もう儀式は始まっちまってるからな……。とりあえずあの小屋に入って説明するから、お前さんそいつを背負って後に着いてこい。」
「……は?」
「杉元……。ここはどうやら北海道でもロシアでも無い……。私達は変な所へ迷い込んでしまったみたいだ。
……さっき、このビルに出会う前に、巨体の鉈を持った奴がウロウロしていた。ビルは私達を助けてくれたんだ。」
全く状況を理解できないが、とりあえずこの爺さんはこれが何なのか知っているという事だ。アシリパさんや俺達を助けたという事だから、少なからず危害を加えるつもりは無い様子だし、着いていく他に今は出来ることは無いだろう。
爺さんは、使い古された抹茶色のセーターを纏い、擦り切れた深緑のスラックス姿で、全体的に泥と油汚れが目立つ。
更には、ズボンには所々出血痕も見られ、ただの爺さんでは無い事は確かだ。
爺さんの後を白石を引きずりながら着いて行くと、アシリパさんが爺さんの裾を掴んで、道中を妨げる。
「ビル!見ろ!足元に罠だ!……だが、私の知っている罠じゃない……。何だこの鉄の塊は……?」
「おぉ…。嬢ちゃん。ありがたい…。こいつは、トラバサミと言って、本来は熊や猪の様な大きな獣に使う為の罠だ。こいつが置いてあるとすると……。今回の儀式のキラーはトラッパーか……。」
「トラッパー?」
「罠に足を取られたワシらサバイバーを狩るキラーだ。」
「サバイバー?」
「お前さん達が、迷い込んで間も無い事はその様子で察しがついておる。これからワシが言う事をよく聞け。この儀式から生き延びて脱出するには協力が必要だ…。」
そうして、爺さんは簡単に現状どうすればいいかを俺達に語り始めた。
まず、自分たちは「エンティティ」というこの森の理に現実世界から取り込まれてしまった事。
ここから出る為には、どうすればいいかは爺さん自身もこの「エンティティ」に囚われている身であり、分からないと。
囚われているだけならまだしも、ここには、ここのルールがある。
自分たち「サバイバー」と呼ばれる存在と、「キラー」と呼ばれる存在が居て、「儀式」というものを「エンティティ」に強制されている。
儀式は「サバイバー」である自分たちは開始後に出現したフィールドの何処かに7台の発電機の内5台を直し、2ヵ所に出現している脱出口からフィールドを出ればいい。
と言う事だ。
「なんだ。案外簡単じゃないか。4人も居るんだし、直ぐに出れるかもしれない。」
「ワシは、この儀式を何度も行っている。その間に何度も脱出し、何度も処刑されて、最後には必ずサバイバーの待機場へ戻ってくる。もう何度もだ。これだけは言っておく。お前さん達がこの儀式から脱出出来ても元の世界に戻れるか迄は保証できない。」
「……ふぅん?……アレ?杉元にアシリパちゃん?そのじーさんダレ?
アレェ?何か変なのも見える?何だ?置き物?箱?」
「……うるせぇなぁ!白石、今重要な事を聞いてんだ!目ぇ覚めんならもっと早く目ぇ覚めろ!」
「……くぅん。」
「待て、何が見えた?何処に何が見えたんだ?」
「……え? そこの小屋の所の…地下かな?箱が見えたのと、後は岩の向こうに何かの機械?後は向こうの太い木が生えてる辺りに小さい置き物が……。」
「こいつは……、『直感』だな……。お前たちに何かしらパークが付いてるのは、この兄ちゃん見た時から分かっちゃいたが、『直感』があるとなると、都合がいい。
よし、坊主頭。お前さんはトラッパーに見つからないように、光るトーテムを壊すんだ。ワシが持ってるこの地図をやるから……。念じるだけでトーテムの場所が目に浮かぶはずだ。」
「……へ?トーテム?トラッパー?」
「ずべこべ言わずにやれ!白石っ!」
「ひぃぃん……!」
白石が腰を落として辺りを警戒しながら巨木までを慎重に移動し始めた。
「よし、軍帽の兄ちゃん……。お前さんはワシと一緒に、お嬢ちゃんがトラッパーに捕まらんように立ち回る。どちらかが陽動に周り、どちらかが、お嬢ちゃんと一緒に発電する…。坊主頭が呪いのトーテム…光るトーテムを壊してくれれば、発電の効率も上がるだろう。」
「よし、分かった。……やろうアシリパさん!」
突如、白石の悲鳴が聞こえ何やら輪郭が向かった先の大木よりも離れた位置に見える。
何か足元を押さえているような体勢に、トラバサミに掛かってしまったと察した。
「ワシが行こう。トラッパーはあちらを優先するはずじゃ。」
「俺たちは発電機ってのを直せば良いんだな?」
「あぁ。ワシは上手くトラッパーを引き寄せる。」
さっさと爺さんは白石の元へ向かってしまった。
アシリパさんと共に、機械の下へ急ぐ。機械の傍らにつくと、自然と修理が出来てしまった。何だろう?不思議な感じだ。
ゲージのようなものが視認できているのだが、修理が進むとゲージがたまっていく。これを一杯にすればいいんだろうと、容易に理解できた。
アシリパさんがせっせと手を動かしている様子を覗き込んだその時、何か丸いゲージが現れ、如何にも「タイミングよく止めろ」と言わんばかりの秒針の様なものが回る。
分かっていても、止められない。反応した時には既にゲージからはみ出て止まる。
「えっ!?これナニ!?ナニこれぇ!?」
アシリパさんは、何ともないのか?微動だにせず修理を続けている。
「杉元!タイミングを見て「止まれ!」と念じろ。針はゲージの中の枠内で止めるんだ。」
「枠ぅ?……あっ!あった!……ひゃぁ!止まんない!」
「落ち着け杉元!集中だ……。集中…。」
「……よし!……あうっ!……今度こそ……!ひんっ!……あぁっ!」
「……下手くそ!」
オレが失敗させる度に進行したゲージが若干後退する為、修理は思いの外進まない。
更に、嫌な気配を感じる。
「…アシリパさんちょっとその岩陰に隠れてて…。」
察してか、アシリパさんは言われるよりも早く岩陰に身を潜めた。
石造りの壁が並び立つエリアに周りを警戒しつつ移動して、物陰から腰を落として、先程の発電機周辺の様子を伺うと、……やはり来た。鉈を持ったオーバーオール一丁という出で立ちの大柄な男。
発電機の周りをうろうろとオレ達の姿を探している様だ。
発電機の前で屈みこみ、何かを足で押し広げて、別の場所へ向かう様子を確認してから戻る。戻ってみると、発電機の脇にトラバサミが設置されていた。
そっと拾った木の枝を使って、中心部に力を込め押し込むと、バチンと音を立ててトラバサミは歯を閉じた。
修理を再開すると、また背筋にゾッと嫌な予感を感じる。
アシリパさんに目配せをすると、既にアシリパさんは岩陰にひっそり隠れていた。
オレよりも早くに退避している…。
自分も移動しようとその場に立ち上がった時、背後から風を斬る音と共に鉈が振り下ろされた。
ザクりと背中側を切られてその場に倒れてしまった。……普段なら、これぐらいの傷どうって事無いのに……。
またも、自身の視認出来る位置に値が溜まっていくメーターが現れている。
それに伴って、傷の痛みも弱まっている気がする。
異様な男が、アシリパさんに気付き追跡をしようとした所で爺さんが上手く誘導してくれ、その男は爺さんを追って行った。
オレはと言うと浮かぶメーターが満杯になった途端に、身体を起こすことが出来る程に回復した。
アシリパさんと共に再び発電機を修理し始めた。しばらくすると、白石が丘の反対側から姿を現す。
「あ、白石!お前どこに行ってたんだよ!?」
「じーさんに言われるまま、トーテム?ってのを壊してたんだよ。その後は向こうの方で発電機一台修理したぞ。こっちはどうなんだよ?」
アシリパさんが含み笑いを顔面に称えながら、チラチラこちらを伺いつつ話す。
「…それがな、白石。杉元が下手くそでな……。いつ終わるのかな〜…?って思っていた所だ。」
「あ、違うんだってアシリパさん!もうコツは掴んだから!次は絶対大丈夫!それに3人も居るんだ、手分けして修理しよう!」
「…よし、じゃあ白石。お前、杉本と一緒に発電機を修理しろ。私はビルの様子を見てくる。あの罠に掛かれば、いくらビルが手練でもどうしようも無い。」
「あっ!ちょっと、アシリパさん!?」
直ぐにアシリパさんは駆け出して行ってしまった。
残されたオレと白石がその場で一瞬互いの顔を見合わせる。
「……。オレは数をこなさなきゃならねぇなら、別々にやった方が効率が良いと思うんだよな。」
「そうだな。後は4台。なるべくバラける様に修理していった方が固まって残るよりも向こうさんに不利になるだろ。オレはあっちの方で発電機を探すぜぇ。杉元はここのサッサと直せよ?」
「直してるっつの!」
白石が土壁の向こう側に向かって走って行ってしまうと、作業を再開させた。
(……上手く止める!上手く止める!上手く……!)
何とかタイミングを計って止めることに集中するが、どうしてもタイミングが合わない…。
どうしても上手くいかない…!
「うがぁぁぁぁぁっっ!!まどろっこしい!!こんなモノ叩きゃ直るんだよ!!!」
力の限り、上部を叩くと無慈悲にも火花が散るばかりで、一向に修理は進まない。
ボコスカ煙を吐き続ける発電機にしがみつくように取り付き、何とか修理しようと躍起になっていると、後ろで爺さんと敵であろうトラッパーがオレの様子をまじまじと見ていた。
「ぎゃああああっ!裸オーバーオール!」
「…俺を変な呼び名で呼ぶな…。あんまりにもスキルチェックがひでぇから、今回は見逃してやる事にしたんだよ。まともに動けるのがビルだけじゃ試合にならないからな。」
「だそうだ。酷いな…。1mmも進んでない。」
「おい、新人。コレの整備は大変なんだよ。叩いたり、蹴ったりするな。」
「蹴ってねぇぞ。」
「少し前にお前と同じ様な服装の奴らが霧の森へ来たんだ。小さい奴が、手に負えない下手くそで、あろう事か蹴りつけてライトを壊しやがった。お前も気をつけろよ。壊しやがったら処刑だ。」
あぐらをかいてその場にトラッパーは座り込んで様子を見ている。
「お前、その風貌で人間か?バケモンか?」
「元、人間だ。まぁ。そう良い人間だった訳じゃ無いけどな。」
「ふーん。……あぁっ!」
「……クソ。俺が修理した方が早そうだ。」
トラッパーが頭を抱えながら呟き。立ち上がって両手を中途半端に前へ伸ばして戦慄いている。
「ビル。何とか言ってやれよ。」
「むぅ。お嬢ちゃんがあらかたあの兄ちゃんには説明してるからなぁ。もうワシが説明することは無いだろうよ。」
「畜生! うるせぇなぁ…。」
その後も、失敗させる比率の方が高かったが、何とか5台の発電機の修理が完了した。
白石にアシリパさんも戻ってくる。
「よし。じゃあお前ら。後はビルに続いて出ていけ。」
「これで良いのか?」
「フン。今回俺は試合を放棄してやってたんだ。儀式はこんな簡単なもんじゃない。元の世界に帰りたいなら、せいぜいエンティティの気分を害さない様にするんだな。」
「もうここには戻らねぇよ。残念だったな。」
「…さぁ。どうだかな。」
トラッパーに背を向けて、何か言いたげなビル爺さんを促しながら、脱出口へ向かう。
大きな門の横にレバーが設置され電動式で開くようだ。
ビルがレバーを下に引き、しばらくして門が開いていく。
向こう側の世界へ、走り出した。暗い霧が足元から徐々に視界に広がって、気付けば辺りは黒く染まって見えなくなっていた。