この作品は、Dead by Daylightの世界にもしも杉本達が迷い込んでしまったら……?
というコンセプトのクロスオーバー作品です。
・Dead by Daylightとは?
一人の迷える仔羊(殺人鬼)が四人の悪魔達(生存者)に妨害されながら、個性豊かなフィールドで血涙を流しつつ脱出されない様に処刑する(???)非対称型対戦サバイバルホラーゲームです。
このお話の中では、ゲーム状のメタファーも含まれ、しばしばシステム的な事を発言してます。
何でもありな人向け。
流血、猟奇的表現が含まれますので、閲覧に注意してください。
[人物紹介]
・尾形百之助
今作の語り部
杉元達を追っていたはずなのに、いつの間にやら霧の森へ囚われた。
腰を痛めていた老人の代わりに、儀式に参加する事になった。
元々の隠密力が霧の森では、脅威範囲の変則性を生んだ。
今作で能力の借りるデススリンガーの基本能力は(速さ4.4m/脅威範囲32m)に対して、尾形は(速さ4.4m/脅威範囲 銃を構えていない時0m、銃を構えた時32m)となる。
・デススリンガー
エンティティに圧倒的嫌がらせで、頻繁に儀式を当てられていたが、ぎっくり腰で動けなくなっていた所に尾形に儀式を代わってもらった。
ビールと機械いじり、女性が好きなおじさん
・谷垣源次郎
いつの間にか霧の森に囚われた。
右も左も分からないまま儀式に参加させられている。
寡黙さ故に、霧の森では一部のキラーの能力を儀式中4回まで無効にする。
おかしい。
さっきまで雪に覆われた森を杉元達の後を一定間隔を保ち追跡していたはずなのに。
いつの間に、雪も無い薄暗い廃墟が佇んだ開けた場所に出てしまった。
更には、ここが大屋敷の敷地であるように見え、その広い庭には謎の機械と思しき輪郭が何故か遠巻きにでも見て取れる。
何だ?これは?
「……お、おい。……そこの……若いの……。」
足元から虫が鳴く程のしわがれた声が聞こえてくる。
声の方向を見ると、四つん這いの姿勢から微動だにしない老人が見える。
土色のトレンチコート、ズボンの左膝部位は鉄の固定器具が取り付けられていて、足が悪いようだ。深く唾の広い帽子を被り、表情が見えないが、声から男だと推測する。
一瞬土方の爺かと思ったが、肌身離さず所持している「和泉守兼定」を持っていない。
傍で屈んで、相手の顔を確認した。
口髭に覆われた口元は苦痛を耐えるかのように、真一文字に食い縛っている。
「爺さん。どうした?……足でも痛むのかい?」
「……腰だ……。エンティティめ……。他にキラーは居るってのに、オレばかり儀式に出させやがって……。ここから動けん……。
お前……。バグだか何だか知んねぇけど……。新しいキラー何だろ?
悪ぃけど、これ使っていいから儀式替わってくんねぇか?」
傍らに転がった銃を取り上げ、此方へ向け差し出してくる。その間にも、痛みが口から漏れ聞こえてきた。
「代われって言われてもな…。俺は許諾も何もして無い。」
「……そんな事言って、お前の持ってるその銃は何だ?サバイバーを狩る為の物じゃないのか?……全く、オレなんて調整されてから舐め切られてるってのに、射撃系の新キラーかよ……。キャラが被ってんだよなぁ…。」
「何を言ってるんだ?」
ため息混じりに爺さんが、この場所の説明を長ったらしくし始めた。
殆ど受け流して聞いてもいないが、俺はどうやら異質な場所へ潜り込んじまった様だ。
脱出する手立ては、どうやらこの爺さんの代わりに儀式とやらを進めればいい。
「郷に入っては郷に従え」という言葉がある。
とりあえず、爺さんに言われた通りに「キラー」とやらを演じねばならない。
ここに来て見えていた機械の輪郭は、「発電機」でこれを5つ付け切られる前に4人の「サバイバー」を至る所に設置されている柱に銛の様な物が刺さっている『肉フック』というものに一人計3回(乃至2回)吊るすと処刑される。との事だ。
(俺の常識からは離れた構造を取っている。木製の部分は組み建てられているが、この銛の部分だけは木から『生えて』いるように、何処からともなく、先端から鉤状に吊り下がっている。)
爺さんから銃を受け取ると、驚いた事に銃口に装填されているのは、漁船などで使われてるであろう銛だった。
上手く改造されている。これは、この爺さんのオリジナルなのだろう。
「ほほぉ。これは……!面白そうだ。」
「よし、オレはもう少し休んで動けるようになったら様子を見てやるから……。気楽にやってこい……。」
銛銃を抱え、「サバイバー」とやらを狩りに霧と暗闇に紛れた。
程なくして、爺さんの説明を聞き流していたことを悔いた。
そこそこフィールドが広い上に、時間的制限がある中では、待ち伏せる何時ものやり方では、時間をかけすぎるし、土壁の遮蔽物が所々点在している為、相手に気づかれると途端に遮蔽物に入られ逃げられてしまう。
発電機とやらを巡回して相手を見つけるのが効率的かつ、巡回する距離を縮める為に、ある程度の場所に逃れるもの、発電機の発電は無視する。
そう決め込んで、改めてフィールド全体に目をやると、真ん中の家屋の右側に発電機が4台点々と設置されている様子である為、家屋から右を攻めることにした。
すると、驚く事に見知った顔を遠目で視認する。相手が遠目でも分かる巨体である事と、この異様な場所に似つかわしく無い格好である事と、自分が良く知る人物であるが故に、直ぐに相手が誰かを確信できた。
『……間違いない。だが、なぜここに谷垣が?あいつも紛れ込んでるのか?』
33,4m先の谷垣からは自分の位置も気付かれては居ないだろうが、やたらと辺りを気にしながら発電機を弄っている。
しばらくすると等間隔で、爆発音がやたらと聞こえてき始めた。
その度に、火花を散らして谷垣が修理している発電機が爆発する様子が見える。修理は全くもって進んでいなそうだ。
『煩いな、あいつをぶち抜くか…。』
あまりに連発する爆発音にうんざりして、銛銃を谷垣に向け構える。
こんな所から、狙うなんて問題外だ。
一発で谷垣に銛が着弾した。爺に習った通り、横のハンドルで銛を手繰り寄せていく。
近付くと共に谷垣が目を見開いて驚愕している様子だった。
「……!尾形…上、…等兵…!」
「あぁ、谷垣。……奇遇だな。こんな所まで一緒なんてなぁ…。」
引き寄せきった所で、銃で殴りつけようと銃を自身に引き寄せた時に谷垣との間に一人割って入る人影が現れ、殴打はそちらが横っ腹に受けた。
「新人!早く逃げて!」
「……!」
谷垣はその女に促されるように、距離を離して行く。土壁の遮蔽物に身を隠された。
「ケイト!チェイスはアタシに任せて!キングが新人の治療してる!」
「わかった…!そいつ、デススリと違って射程距離長いから気をつけて!」
「オッケー!」
横から現れた別のおかっぱ頭が、今度は間に割ってきた。殴りつけようと武器を振るうが、しなやかに避けられる。
儀式に慣れている様子だった。
(訳の分からない内に谷垣をどうにかするのも良いが、あいつを放っておいても余裕がある。……先ずは手練を始末するか。)
距離を取り始めるおかっぱ頭に向けて照準を合わせ遮蔽物に入り込むであろうタイミングで引き金を引いたが、おかっぱ頭はそれを予測して一泊置いてから遮蔽物へ侵入する。
「ひゃあ〜!めっちゃくちゃ勘良すぎ!天才か!」
おかっぱ頭はこちらを気にしながら、ギリギリこの銛銃の射程に入るか入らない一定の間隔を保って距離を置かれる。
(この銃の射程距離はせいぜい30mって所だ。こう動きながら狙うのも楽じゃあ無いな。)
自身が担ぐ三八式歩兵銃に意識が向く。
そもそも、銛銃だから射程距離が短いのだ。
(爺さんは、この儀式でこいつらをフィールドから脱出させなけりゃ良いって言ったんだったな。)
銛銃を構えるのをやめて、地に放り投げた。代わりに、三八式歩兵銃を手に取る。
様子を見ながら距離を置いていたおかっぱ頭は、何かを察したのか別の遮蔽物へ向けて走り出していた。
「FPSゲーで見かけたヤバいやつ!距離取ればこっちのもん!」
残念ながら、それぐらいの距離を逃げていても俺ならば…。
引き金を引いたと同時に、次の一手を考え始める。おかっぱ頭は他の3人とは逆の屋敷の左に向けて逃げようとしていたから、元々の巡回予定の発電機に向けて戻る事にする。
戻りながら辺りを索敵していると、遮蔽物の影に一瞬ハーフロングに刈り上げた彫りの深い体躯のいい男の姿を確認した。
おかっぱ頭が口にしていた「キング」と言うのはこの男の事だろう。
気付かれないよう視界から外れながら、跡を捜索すると、男は警戒心が薄いのか開けた道を一気に突き抜け始めた。全くこちらに気づいていない様子だ。
ひと呼吸入れてから、銃を構える。
息をするように一発。
また辺りに静寂が走った。
目的の発電機の周りには人影は確認出来なかった。
それ所か、目星をつけた区画には人が入ってきていない様子だったので、谷垣と金髪の女は少なくとも、上手く俺と行き違った様だった。
(発電機ってやつは今どのくらい修理が進んでいるんだろうか?)
現在自分が位置する家屋から右側の発電機には全く動きが無い所を見ると逆側の発電機を修理しているのかもしれない。
推測が的中している確信があった。家屋の左側から頻繁に爆発音が聞こえてくる事と、そこの発電機が赤く光るように見え、視覚情報も入ってくる。
まず間違いなくそこに谷垣がいる。
修理に手間取っている様子は女も見ているし、もしかすると俺と同じように堪りかねて女が近くに来ているかもしれない。
その爆発音のする方まで慎重に移動した。
小高い丘を見つけ、辺りに気を配りながら丘を登り、そこから目的の場所を観察していると、予感は当たった。女も呆れた様子で谷垣に何か言いながら一緒に作業している。
女はすぐ後ろに土壁が点在し、よく辺りを警戒していた。谷垣は逃げようとするには遮蔽物まで少し距離がある。当初の通り、谷垣を後回しにして問題は無さそうだ。
丘からしっかりと照準を定めて一気に引き金を引く。
すぐ様谷垣はこちらに気付いた様子で、遮蔽物に走り出した。二発目を谷垣へ向けて撃つが、足元に外れた。
場所を離れ、急いで身を隠す。
谷垣が意識している方角と反対側へ回り込む。ゆっくり距離を縮めて32m……。谷垣ががむしゃらに遮蔽物に入り込んで距離を取り始めた。どうやら気付かれた。
あちらも気付いているなら、このまま追い掛けるか…。
追跡を始めると、血痕が続いている。
先程の銃弾はとりあえず命中していた様だ。自分の知る世界なら、傷付いた相手との距離は詰まっていくものだが、何故か直線でも離されていくように感じる。…と言うより、離されている。
(駄目だ。埒が明かない。谷垣は遮蔽物から出たくないだろう。先回りしよう。)
同じ様に遮蔽物に入り込むだけでは距離を詰めきれないと悟り、不意を付き回り込んだ。予想は当たり、谷垣と鉢会う形になる。
そのまま銃弾を発射した。
シンと鎮まる空間。
辺りの景色が歪み、一気に目の前を黒い霧が覆っていった。
次に目を開いた時には、辺りに空間は無かった。ただの暗闇に佇んでいる。
立っているのかそれすらも判断がつかない程の闇の中にいる。
闇の中から、声が語りかけてきた。
「コラコラ。新入り。こっちが許可もしない内にメメント・モリして……。君の銃の腕では脅威範囲外からメメント・モリ出来てしまうから、持ち込んだソレは回収させてもらうよ。おー怖。」
「何だお前?何処にいる?」
「エンティティ。私はどこにだって居る。」
「……そうか。お前がこの訳分からん世界の親玉だったな。早く元の世界に戻せ。」
「それは、私の気分次第だ。」
霧が晴れて、眼前に広がったのは薄暗い森に囲われた荒れた大地と無造作に投げ出された丸太。丸太に座っている人影の中にさっきの銛銃の爺……。他にも異様な奴らが品定めでもするように見つめていた。
ここから出るのは容易でない事を自覚した。