この作品は、Dead by Daylightの世界にもしも杉本達が迷い込んでしまったら……?というコンセプトのクロスオーバー作品です。
※DbDのDLCキャラも登場しているので、多重クロスオーバーとなってます。
・Dead by Daylightとは?
一人の迷える仔羊(殺人鬼)が四人の悪魔達(生存者)に妨害されながら、個性豊かなフィールドで血涙を流しつつ脱出されない様に処刑する(???)非対称型対戦サバイバルホラーゲームです。
ゲーム内のメタ発言や流血、猟奇的表現が含まれますので、閲覧に注意してください。
[人物紹介]
・ハントレス
邪神の気まぐれで幼児化してる。彼女の投げる雪玉には、断じて石は混ざっていない。攻撃しているという自覚は一切無い。
・デモゴルゴン
裏側にいる生物。普段はハントレスが飼い慣らしてる。ポータルから落ちてきたものを、大事に裏世界のお気に入りの場所にしまってる。
・スピリット
ピッチピチのJD。本名は山岡 凛。得意のPWで背後、側面に歩み寄る。ブチ切れたら誰にも止められない。
・鬼
山岡家のご先祖さま。スピリットは遠い血脈関係がある。いつも怒ってるように見えて、結構繊細。スピリットに甘々。
・ローリー・ストロード
居るだけで決死持ってそうと思わせられるタイプのサバイバー。
・フェリックス・リクター
自分の事をイケてるって分かってるタイプのセクシーな建築家。
・クローデット・モレル
唯一無二、完全無欠の最強オブ最凶隠密サバイバー。
・エース・ヴィスコンティ
お茶目なイベント大好きおじさん。特別イベントに浮かれきっている。
霧の森にも季節感が微妙に存在している。凍てつく風は北海道の大地で暮らす自分達にはそこまで厳しく感じなかったが、ここの生活が長いもの達はこの寒さも体に堪える寒さだ。
「アシㇼパ。ここに来て随分経つが杉本はどうだ?最近は出口を探してさ迷っては居ないみたいだが……?」
「その事だが、月島……。シェリルという者が、興味深い話を聞かしてくれた。私たちは現実世界を真似て作られたレプリカント???という物なのでは無いかとか何とか……」
「"replicant"……。模造人間という事か?それなら今の現状……と、言うか。この世界の説明も付くな。」
「うん。……ところで、月島。今度の特別な遊戯とやらには参加するのか?」
「?……何だそれは?」
黒くまるで意思がある様に蠢く霧は足元にいつの間にか立ち込め、エンティティが珍しく姿を表した。
「ハイハァーーーイ!!楽しい楽しい冬のお祭り祭典!キラー合同雪合戦トーナメント大会の始まり始まり〜〜!!」
「……」
「うぅぅん……。軍曹ノリ悪〜!お祭りなんだから派手に!楽しく!騒がなきゃ!」
「イッエェェェーーーィ!!雪がっせーーーん!!へぇい!グンソー!ハァーイ?アッシリパ!!楽しもうぜぇ〜〜ぃ!!ヘェイ!!」
「エースは浮かれ過ぎじゃない?何そのスキン!滅茶苦茶オーラが煩いんだけどっ!」
「エンテテ〜!見て見て!オイちゃんのこのシューズ!リボンが可愛いでしょー!クリスマスたのしーー!」
「やれやれ……。さて、冬の祭典といえば雪合戦ダヨネ〜!今回は特別な儀式だから、ルールをよぉく聞いてね!優勝チームには、なんと!エンティティから100万BPプレゼントしちゃう!」
エンティティが皆を呼び寄せた。普段見ないキラーの姿もあり、一気に場が満員となる。
一同は各々がそれぞれに違う反応を示している。不安げな者。期待の視線を注ぐ者。呆れた顔をする者。だが、揃ってエンティティの次なる言葉を待ち侘びている。ここにいる者全てが、この邪神の気まぐれに付き合わねば、望む物を手にする事は無いからだ。
月島とアシㇼパは人が集まるに連れ、部屋の中央へと移動しようと動き出した。アシㇼパは月島の足元に小さな人型を見つけ慌ててその物体を引き寄せる。
月島が蹴飛ばしかけたものは、しばらく前に顔を合わせた事のある
否、もっと正確に表現するとすれば年齢操作でも行ったかのように、幼児化している見た目に変貌していた。
アシㇼパが足元で呆気にとられているレイスを抱き上げると、裾をしっかりと握りしめて身を寄せてきた。完全なる甘えた幼児の反応にアシㇼパも扱いに困惑しつつ、取り敢えずそのまま抱っこしていると、ふわりふわりと小柄な白色のワンピース姿、顔をピローで覆った女性がレイスの様子を見ると、口許を手で押えアシㇼパの元に近付いてきた。
「あら、レイス…なの?……あなた達は、最近来た子達だったわね?レイスの事ありがとう。後は私が様子を見るわ」
「ブモ、ブモモッ!ブモーーー!」
「あらあら、言葉も不自由なのね…。どうしましょ。トラッパーに相談しなくちゃね……」
その女性はアシㇼパからレイスを受け取り、レイスは何やら身振り手振りで何かを伝えようと必死に訴えているが、女性は頬の部分に手のひらを当て小首を傾げるだけだった。
スゥーっと滑るように女性はその場を去っていく。
辺りがざわつき始めた所で、ゴーンと鐘の音のようなものがその場に大きく響いた。その場にいた者は次々にエンティティの方へ注意を向ける。エンティティがゲームの説明を始めた。
「先ず、君たちはキラー、サバイバー合同のチームに分かれてもらうよ。キラー諸君の能力は少し調整しているから戦略はチームで練るんだよ〜?
雪玉が3回当たったら退場!ただし、顔は狙っちゃダメだよ!相手チーム全員を退場させるか、時間内迄に残っているチームメイトが多い方が勝ちだよ!」
「……ふむ。……私の死の突進はこの遊戯には向いとらんと見えるな」
「雪玉に当たらなければ良いのね。フフ。子供の頃に戻ったみたいね」
そこに、右脇にレイスを抱え、左脇にはレイスと同じ位の背丈となったハントレスを抱えたトラッパーが怒気を纏ってゆっくりエンティティの前へやってくる。低く怒りで震えた声が発せられた。
「エンティティ……。ゲームの内容は分かった。次は……これの説明をしろ!!!レイスとハントレスが小さくなってんぞ!!?どうなってんだこれは!!?」
「あぁ、コレ?ごめんごめん!
このゲームでは、レイスの能力がかなり厄介だと思ったから調整しようと色々とやってる間に、うっかり手違いで幼児化しちゃったんだ☆ハントレスは……エンティティの気まぐれだよ☆」
「……おめぇ、一辺殴って良いか?何をどう調整したら、こうなるんだよ!!?」
拳を戦慄かせ、エンティティに詰め寄るトラッパーをデススリンガーが間を割って静止した。
「んまぁ、それ位にしとけよトラッパー……。
それよりもお前……俺と組まないか?お前も俺もテメェの能力が結構いい感じじゃないか?お前は罠であぶり出して、俺は相手チームを引き寄せる……。カンペキ優勝間違いなしじゃねぇか!」
「はいはいはーい。チームはエンティティが分けてまーす!悪巧みは通用しませーん」
「……っけ、そうかよ。そりゃねーぜ……。俺はトラッパーと当たりたくねぇなぁ……」
デススリンガーは贖い主を胸に引き寄せて、ハットを被り直してトラッパーから離れた。
トラッパーはと言うと両脇に抱えた幼児2人に目配せして地に下ろす。ハントレスはジタジタと落ち着き無く足をばたつかせながらやっとの思いで引き離された。地に降りた途端、ハントレスは水を得た魚の様に思うままにちょろちょろと動き出した。
「はぁーーー……。どうすんだよコレ……。おい、ハントレス!勝手に歩き回るな!レイスちょっとそのままじっとしてろよ?ハントレス!!戻ってこい!!」
「ブモモー!」
「レイス!!着いてくるな!!そこで!待ってろ!!あ゛ぁ゛っ!!クソッ!!」
どう見てもそこにいる殺人鬼は、殺人鬼としての側面がこぞり落とされ、子守りしている父親の様相であった。
「トラッパー、大変そうね?レイスは私が見ててあげるわ。ハントレスを宜しくね?」
「……あぁ。悪ぃが頼んだぞ」
「ウフフ。大丈夫よレイス。パパは直ぐに戻って来るわ」
「オイ、ナース。……なんか楽しんでねぇか?」
「そんな事無いわよ?フフフ」
「……何か手伝うか?……子守りなら慣れてるぞ」
振り回されげっそりしている様子を見て、人間味を感じてしまう。つい、声を掛けてしまったが月島も手のかかる上官がいた事をふと思い出した。そう言えば、今日はやたら静かだが、どこに居るのやら……。鯉登少尉の姿を視線で探すが近くには見当たらない。
アシㇼパは、杉本と白石が合流しトラッパーもレイスを抱えて三人の話に応じている姿を見ると、あの五人で1チームの様だ。
何故か、ハントレスは月島に懐いて自らよじ登り背部から肩へ移動して来た為、肩車してやった。流れでハントレスを引き受ける事になった月島は、レイスが言葉が不自由になっている所を見ると意思疎通が出来るか期待は出来ないが、取り敢えずハントレスに声を掛けてみた。
「え、っと。ハントレス……。アナって言ったか?じっとしてないと、あの男が困るぞ」
「わたし、デモゴンを連れてこないとっ!同じチームだったの!」
「デモゴン……?」
「うんっ!!とっても賢くていい子なの!!」
ハントレスの言う《デモゴン》は同じチームらしいという事で、今回の雪合戦に選出されているメンバーだという事と、サバイバー内に《デモゴン》という名前、愛称の人物が居ないことから、キラーである事が分かった。
何者なのかを知る為、トラッパーに協力を頼もうとハントレスとの話を要約して伝えた。
「あぁ……。デモゴルゴンか。そういやお前とコイト、エースがチームメイトだった様だぞ。お前もデモゴルゴンに会っておけ。お前らのレーディングだと、会う事が無いだろうからな」
「……そうか。分かった。それと、鯉登少尉を見たらこの部屋から出ないように言っておいてくれないか?」
「……あぁ。分かった」
トラッパーと別れて、頭の上からハントレスが右へ左へと往く方向を指示する。指示された通りに月島は進んだ。進んだ先には、床に見たことの無い塚が出来ている。生き物のように鼓動する様に動く塚に恐る恐る近付いた。
ハントレスがズルズルと背から降りてきて塚に手を添えて塚に向かってデモゴルゴンの名を叫んだ。
「デモゴーーン!!イベントだよーーー!!出て来て!!」
塚の中から、犬の唸り声に似た声と共に、ぬらぬらと粘質した肌色の頭部がゆっくりと這い出て来た。続く胴は細く、異様に四肢は細長く手足が大きかった。頭部には、耳や目等の感覚器官は見当たらず、中心部から対に側部に向けて放射線状に切れ目が走り、細かく蠢く隙間から無数の鋭い牙が見えた。
正真正銘の異形の物に、月島でさえも言葉を失う。
これと同じチームだと?
意思疎通は?――はっきり言ってこんな異形に言葉が通じるとは思えない。
チームを一緒に組んでるはずの他の生存者は何処なんだ……?朝から鯉登少尉は何処に?
異形を前に悶々と考えを巡らしていると、最後の疑問は突如として解消された。
「デモゴン!!朝ポータルに落ちたコイトを取って来て!」
「クルルルル……」
異形はハントレスの言葉をまるで理解したかのように、塚の中へと体を沈めていく。
程なくして、見慣れた褐色肌の腕が塚から現れた。素早く塚へ近寄り、その腕を手に取り渾身の力で引き抜く。
「キエェェエエエェェェッ!!!」
「しょ、少尉!!」
直ぐに異形も塚から顔を出し、その姿を確認した鯉登少尉は目にも止まらぬ速さで月島の背後に身を隠そうと背後に体を回すが、鯉登の身体を隠す程の高さを月島は有してはいない。
「つ、つ、月島ぁぁんっ!!ば、化け物だっ!!口裂け妖怪だっ!!ソヤツ、私を一飲みにしようと私の頭にかぶりついたのだぞ!!」
頭を喰らわれたそうだが、その割には元気で在られる。
「
「グンソー!デモゴンはちゃんと私たちの言葉が分かるよ!コイトの事をちゃんと取ってきたでしょ?」
「……私は物では無いぞ!」
「……そいつと、ハントレス……。あと一人のメンバーは何処なんだ?」
「ハァーーーイッ!このでこぼこフレンズ達の最後のチームメイトは、オイちゃんでーーーーーすっ!!ピースピース!イエェーーイ!楽しくやろうぜー!」
一際目立つマゼンタ色のセーターと、青緑色でクリスマスの赤白黄のオーナメントがプリントされたスラックスの柄が賑やかさに一層拍車をかけ、シューズの背にはスラックスと同じ色のリボンが着いていた。
更に、サングラスの弦はトナカイの角形の突起が付いた、赤白のストライプときたもので、相当見た目が浮かれ切っている。
容姿も浮かれているかと思えば、こちらは意外にも小綺麗に整えられていて、ジェルで髪はしっかりと撫でられ、蓄えられた髭は綺麗に口許に整えられていた。
初対面の時よりも数千倍に胡散臭さが跳ね上がっている。
姿を見ただけで、非常に面倒臭い相手に大きな溜め息をこれ見よがしにと口から出すと、エースのコロコロとよく変わる表情が変わる。眉を一層下げて困り顔に変化させたエースは月島に向けて肩を竦ませて言った。
「そんなにガッカリしないでくれよぉ〜。オイちゃんこう見えて結構イケてんだから!」
前回、自分をフックから救助した無鉄砲な鯉登少尉の行動を、窘めるでもなく、止めるでもなく、危険と分かっていつつ、その後の鯉登のフォローまでもこなしたこの男の言葉には、根拠の無い説得力がある。
だが、人間の本性が現れるのは間違いなく、身なりと容姿だと月島は経験則から知っていた。
『口先の上手い奴だ。小綺麗に整え、人に漬け入り、言いくるめて世を渡ってきたんだろう。悪い奴では無いが、すっかり気を許していい相手じゃないな』
「頼りにはしているが、俺はお前を信用している訳じゃない。」
「グンソーはお堅いねぇ。……まぁいいや。コイト!足元には気をつけなよ?デモちゃんのポータルに落ちて無事に帰ってきて良かったよ!」
「……アヤツは何なのだ!!?……気味が悪くて近寄れんっ!」
「……えっとぉ、君らに分かりやすいかどうかは分からないけど、"怪物"って形容詞が一番しっくりくるんじゃないかな?」
「……つまり、化け物なのだなっ!?正真正銘の!化け物って事だn……」
ガポッと一被りでデモゴルゴンは鯉登の頭部を喰らうと同時に、凄まじい猿叫が響いた。
必死に鯉登の両上肢がデモゴルゴンの頭部を打ちのめす。デモゴルゴンも堪らず鯉登の頭部を吐き出した。明らかに青ざめた様子の鯉登は首を思いっ切り横に振りデモゴルゴンに人差し指を突き付けながら、強く懇願する。
「わ、私はコヤツとだけは絶対に一緒に行動なぞせんぞ!!チームを分け直せ!!無理じゃ!こんな化け物と一緒なんて!絶対に嫌じゃ!」
「……。エンティティ。私もこの異形とは意思疎通を図れると到底思えない。このチームに他の生存者を宛がってくれないか?」
「坊っちゃんとおじさんのワガママは聞こえませーーん!エンティティは、公平にチームを分けたハズなので、そのまま一試合目行ってらっしゃい!!」
突如世界が暗転し、気が着くとオーモンド山のリゾート地へ一向は揃って到着していた。
明らかに怯えきった鯉登が月島にピッタリくっつき、デモゴルゴンに向けて威嚇のつもりかいつもの絶叫を上げている。
デモゴルゴンも応戦するように、頭部の口蓋を五星に広げ、そこから獣が上げる唸り声と同様の威嚇が発せられている。
ハントレスがデモゴルゴンに向けて、雪玉を放った。物凄い威力らしく、雪玉がぶつかった音にしては随分と重い音が耳に届く。デモゴルゴンも痛覚があるとみて、「キュピィィィ……」と弱々しく唸った。
「デモゴン!ダメだよ!!敵はコイトじゃない!!」
「……シャーーーーッ!」
「……お、気をつけてくれよ。早速向こうさんの登場の様だぜ?」
エースはひらりと身のこなし軽く、ペンションの2階からひらりと地上へ降りてしまった。2階の直前までエースがいた辺りには、どうやって四肢を動かしているのか、原理の理解出来ないバラバラ四足の女が現れた。
「気付かれてしまいましたか……!でも、ローリーさん!そちらにエースさんが行きましたよ!!」
「分かってるわよ!さ、喰らいなさい!えいっ!!」
「……っお、足元には注意しないとお嬢さん!」
「きぃやっっ!!?」
エースはスピリットの接近にも、ゲレンデ側で待機していたローリーも視認していた。伊達にその日の宿の為に女を口説いてきた訳では無い。長年の直感と言う奴は序盤の情報合戦や、中盤の手の打ち合い、後半の盤面整理等に一役買っている。雪玉をかわし、且つ離れ際にさり気なく尻を一撫でする余裕さえもあった。
意表を突かれたローリーが利き手と逆側で抱えていた雪玉を落として咄嗟に尻を覆う。
取りこぼした雪玉は地面へ落下する前に取り上げて、くるりとローリーに向き直った時に無防備な胴体目掛けて放っておいた。
これも、カードでペテンを働くエースには朝飯前の芸当だった。
「ちょ、ズルい!!変態!!クソジジイ!!」
「当たらなきゃどうって事無いってもんよ!!アデューーー!!」
月島は、鬼の面を被った巨漢から必死に逃げていた。肩にはハントレスが巨漢の様子を伺い逃げ先を指示してくれている。
時折り、雪を踏みしめる別の足音が聞こえるのは、ハントレスが言うにスピリットと言うキラーも一緒に追っているとの事だ。
「グンソー、逃げながら雪玉作って!!」
「そんな余裕は無いっ!!先ずは、巻いてからだっ!」
「グンソー!その辺に積もってるのでいいから!」
「……っ!!ムン!」
姿勢をこれでもかと屈め、両手で足元を掬う。雪を簡単に丸め、ハントレスがそれを引っつかみ、渾身の力で鬼面の巨漢へ投げた。石でも投擲したかの様な鋭い音が響く。
怯んだ様子を見て、これ幸いと足元の雪をかっさらって次々と雪玉を作ってハントレスへ渡した。
的確に投げ飛ばされていく雪玉が、巨漢へ三度当たり、更に遠方に見えた人影に当たった。
「っはぁ!?聞いてないぞ!?こんな遠投っ!?」
「キエェェエエエェェェッ!!」
鯉登はハントレスの援護射撃に救われ、あと一度当たれば失格という所を既でフェリックスを先に退場させた。背後に忍んでいたモレルには気付かず、フェリックスの仇討ちで沈んでしまう事となったが、ほくそ笑みながらロビーへ戻る。
「あのウサギ仮面のチビッ子が居れば、私達のチームは良い所までゆくのでは無いか?中々強いぞ!!頑張れ月島ぁぁ!!」
オーモンド山を右に左に走る月島。雪玉を避けつつ、雪玉をハントレスへ供給する。
ゲームの結果は、ハントレスの雪玉遠投が常軌を逸するレベルの的確さかつ、月島の底知らない体力と機動力によってサクッと退散した鯉登とデモゴルゴンの分を取り返す、まくり上げ勝利といった形となった。
ロビーに戻ってきた一行は、他のチームの様子が観戦できる大きな黒い長方形の……薄い姿見の様な物で(後でテレビだと教えられ、またも後の時代の発明品に舌を巻く事となったが)様子を窺う事となった。
まだ月島達が出会ってもいない生存者や殺人鬼がモニター越しに映し出されていく中で、背筋をぞっと冷たいものが走る感覚を覚えた試合に目が行った。
この遊戯は、エンティティのお遊び。普段の儀式とは違うという事で和気あいあいと楽しんでいるチームがほとんどの中で、自身のチームメイト、相手のチーム関係なく殺戮を躊躇しない殺人鬼に目が奪われる。
同じモニターを見たのだろう鯉登少尉が声を大にエンティティへ訴える。
「お、おい。無茶苦茶な奴が居るぞ!エンティティ!公平にチームを分けたって言ってただろう!?公平とはどこの事を言うんだ!?」
「む、むぅ……。シェイプのやつ……。ルールは分かったって言っていたのに……。なんで雪玉そっちのけで立ちメメしてるの!?」
慌てた様子で、その試合に姿を現す邪神は、怒った様子でその殺人鬼に何やら文句を言っている様子だが、そいつは意に介していない様子だった。
そいつのチームが失格となり、相手になっていたチームの勝利という形でほとぼりが収まる。
ロビーへ戻ってきた、生存者達がげっそりとした様子だった。
「立ちメメなんて聞いてないし……。ミンがメメられた後なんて、普段キラーはキラー相手に立ちメメ出来ないからって意気込んでたデスおじがいきなりメメられるのにホントびっくりした……」
「メグ。アンタが逝った後なんて私三角頭と一緒だったんだよ?意思疎通どうしろってのよ?あいつも負けず劣らず、クエンティンやビルに懲罰当ててたし…。いつもの試合じゃないって理解してないでしょ?次どうすんの?次こそ私たちが失格になっちゃうでしょ。」
「デスおじに何とか説得してもらっとかないとね…。デスおじ、BP欲しがってたから、どうにか説得してくれるでしょ」
「お前たちは良いな…。俺なんて、チームメイトなのにいきなり立ちメメだぞ?どうなってんの?って感じで終わっちゃったよ」
「ジョナ。本当あんたお疲れ様。」
口々に試合結果を愚痴るメンバーが、ちらりとこちらに視線を寄越す。どの顔ぶれも、まだ会った事の無い顔ぶれだった。相手方も積極的に交流を求めるタイプの人間がいない様子で、軽く挨拶をして別々に別れた。
しばらくすると、杉本達がどかどかと戻ってきた。
賑やかになってきたロビーに聞き慣れない警報のような音が響く。
「ハーイ、みんなお疲れ様〜!まだまだ冬の大会は始まったばかりだよー!どんどん試合を進めて行こうね!じゃ、次の試合に行ってみようか!」
モニターには、試合の勝敗が映し出され次々と次の相手が表示され始める。
試合にならなかった先程のチームが、何やら敗者復活戦と題し、すぐに試合を始める様子だった。対戦相手の中に谷垣の姿がある。
自然とモニターに目が行った。杉本やアシㇼパも同じ様子で、まじまじとモニターに視線を送っていた。