※この作品はR-18です。

聖槍に選ばれたマクギリスはハーレム王になるそうです   作:生死郎

12 / 94
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=281650&uid=283656で書いていたハイスクールD×Dの二次創作です。


本編:原作開始前(1年前)
聖槍の担い手は侯爵家当主


 元七二柱一四位レラジェ侯爵家の当主マクギリス・レラジェが彼の後見人であり師匠のヘクトールの屋敷に呼び出されたのは、珍しい出来事だった。

 

 現魔王派の政府内にはヘクトールが領袖を務める大きな派閥を持つ。現魔王派と貴族派、両派閥の橋渡し役を担当していて官僚を多く抱えているので実に多忙だ。

 何か仕事を任されることがあっても冥界の魔王政府会議室で話すことが殆どで、彼専用の執務室に入るのは片手で数える程度しかない。

 トロイア軍最強の戦士にして軍団長、さらに政治家ですらあったヘクトールだからこそ、一大派閥を作り出すことができた。

 

 転移魔法陣を使ってヘクトールの屋敷に移動すれば、マクギリスを使用人たちが出迎えてくれた。執務室へ案内される。

 

「ヘクトールさん。入ります」

「あいよ、入りな」

 

 執務室には、トロイア戦争においてトロイア側最高の英雄ヘクトールその人が待っていた。

 その目はいつになく真剣なものであったため、マクギリスは自然と姿勢を正していた。

 

「座りなさい」

 

 いつになく真剣な面持ちのヘクトールに促されるまま、マクギリスは近くに備え付けられたソファに座った。

 

 執務室では、形式的な礼儀と取り留めのさなを併せ持つ会話が五分以上続けたが、話の惰性が停止したあと、ヘクトールが話題を転じた。

 

「マクギリス、お前が新しく『王』になって暫く経つな。お前には一年後に魔王陛下を始めとした上級悪魔の御歴々にお目見えをしてもらう。これは要するに新任の挨拶だ。形式というのは必要なもので、これもお前には大袈裟で馬鹿らしいと思えるかもしれないがな」

「まあ、魔王様たちとは既に面識がありますからね。とは言え、形式が必要なのはわかりました」

 

 そのお目見えには四大魔王の血族や、大王家や大公家の次期当主も参加される。つまりは冥界の次世代を担うであろう若手達だ。表向きはただの顔見せと所信表明の場ということになっているが、実際には四大魔王と大王、大公家たちによる代理戦争に近い。四大魔王の内心はともかく、大多数の貴族はそう認識しているだろう。

 

「そしてお披露目会が始まる一年後までになんとしても余所に出しても恥ずかしくない眷属を揃えてもらう。お目見えの場に『王』が僅かな眷属を伴うだけでは大恥をかいてしまうからな」

「そこで眷属たちも魔王様方に見定められるわけですか」

「その通りだ。そして、若手たちの力量を観察や宣伝する意味も込めてレーティングゲームを行うから、そのためにも眷属の充実化は必要となる」

「レーティングゲーム……私も見たことはあってもやったことはないですね」

 

 同年代の悪魔と比べて戦場で戦った経験があるマクギリスだが、レーティングゲームは基本的に成人した悪魔しか参加することが出来ないこともあって、戦術書を読んだり、プロの試合を見たりはあっても実際のところは未経験だ。

 

「魔王様たちもお前個人の実力は既に把握しているだろう」

 

 冥界では二度の内乱があった。そして二度目の旧魔王派と現魔王派対立。最初の内戦で負傷しながらも生き延びて潜伏していたビドレイド・バシャルン・ベルゼブブを領袖として旧魔王派が再結成。

 貴族派たちの策謀により現魔王たちが戦線で活躍することが難しく戦況が拮抗することになった。

 しかし、貴族の子弟を中心に学徒動員された当時少年だったマクギリスが学友を率いて独断専行を行い、旧魔王派軍に特攻。総大将を討ち取ったことで、混乱した旧魔王派は一時撤退を余儀なくされ、最後は瓦解した。

 この武勲からマクギリスは最新の英雄として冥界では名の知れた少壮気鋭の上級悪魔として認知されている。

 

「勿論、あの聖槍についても、な」

 

 神器(セイクリッド・ギア)という聖書の神が作った異能が世界にはある。その効果は多種多様。それぞれ異なるものだ。

 神器を宿すのは人間、もしくは人間の血を引く者のみだが人間の母親を持つマクギリスは悪魔であるが神器を所有していた。そしてその神器こそが“神をも滅ぼす具現”を意味する、最上位の力を持つと言われる特殊な神器・神滅具(ロンギヌス)。

 マクギリスが持つ神滅具(ロンギヌス)は、神の子を貫きその血を浴びた、神滅具の代名詞となっている聖槍である。

 彼は聖槍を持ち前線に出て武勲を重ね、若手悪魔の中でも早々と頭角を現しているのだった。

 

「お披露目会ではお前個人の力よりも、お前の『王』としての資質を見定められるだろう」

「わかりました。今まで以上に眷属集めに尽力しましょう」

 

 現在、マクギリスが眷属としているのは女王(クイーン)、騎士(ナイト)が一人、兵士(ポーン)が二人。総勢四人だ。眷属はあと最大で十一人集めることができる。

 同世代の上級悪魔と比べても眷属集めの進捗は芳しくない。眷属集めを急がなければ、とマクギリスは思った。

 

 マクギリスには夢がある。それは眷属たちを美女で構成することである。しかし美しいだけで集めては、ただの愛妾でしかない。優れた能力を持ち、自分を支え補佐することができる優秀な能力を持ち、尚且つ美女で構成されたハーレムを作りたいのだ。

 

「来年は忙しくなるぞぉ。お前さんの婚約もあるしな。貴族同士の婚姻って面倒だから、頑張れよ」

「当主とはいえ、家名を継いだだけで親類や譜代の家臣がいるわけでもない名ばかり貴族ですから身軽なものですよ」

 

 戦功への報酬としてマクギリスが遠縁だが血を継いでいるということで、絶えていたレラジェの名跡を継ぐことになったのだ。

 かつて存在した純血の上級悪魔が連なる七二柱と呼ばれた名門の家系も、現在ではその半分以上が断絶している。

 そして名跡を絶やした貴族の家が、魔王の指示によって家系を復活させた例は、いくつかある。他種族との混血という形で存続していた末裔を発見した場合は保護するよう現政府から通達が出ていて、末裔に家を継がせることもあった。

 尤もマクギリスのように成年に達する前に元七二柱の家名を与えられるのは珍しいが。

 

「いやいや、つまりお前さんはこれら名家を立て直して盛り立ててくれると魔王様方は期待しているってことさ」

「箔をつけてもらえるとはいえ、歴とした元七二柱の家名を貰うというのは大変なことが多くなった気がします」

 

 過度な期待はしないで欲しいとマクギリスは渋い顔をする。ヘクトールの下で貴族としての嗜み等は学んでいるが、生粋の権門の子弟ではない自分が名門貴族として家を再興できる自信はなかった。

 

「貴族の方々からも不満があるのは知っているんですよ? 余計な恨みまで買ってしまいました」

 

 マクギリスが言う通り、貴族派元七二柱のバアル家中心の派閥、純血至上主義者達の一部は、マクギリスが名流の家門を継ぐという事態に盛大に噴火していた。

 

「レラジェ侯爵家は栄えある七二柱の名門閥族ではないか。その名跡を、混血の小僧に下賜するとは何事だ! いつから名誉ある七二柱の家門は、身分卑しきものどものへ与える安っぽい玩具に成り下がったのか!」

「たまたま神器もちでヘクトール殿に目をかけられたからと思い上がりおって!」

 

 と、マクギリスを罵倒し、事態の決定者である魔王を罵倒し、時勢を嘆いていた。

 

「全員が味方ってことはあり得ないからな。半分くらい味方がいれば儲けものさ」

「……そういうものですか」

「敵は誰かってはっきりしている分、気楽でいいぞ~」

 

 へらへらと笑うヘクトールに、やっぱり自分では敵わないなとマクギリスは内心嘆息する。人としての重みと厚みが段違いだ。

 

「と、いうわけでマクギリス君は味方との関係を密にするよう頑張ってくれよ。それと……件の婚約者ラティア嬢とはその後どうかね?」

 

 ラティアことラティア・アスタロト令嬢は、アスタロト分家出身で現魔王アジュカ・ベルゼブブの姪である。そして彼女の母親はアガレス大公家の出身である。ラティアはマクギリスにとって少し年下になる。

 

「とてもいいですよ。今度、会いに行く約束もしています」

「妻を迎えた最初の夜に何もできぬようでは話にならぬから、気に入った者で稽古をしなさいとは言ったが……順調なようで何よりだ」

 

 生真面目な顔は消え失せ、その表情は飄然とした少し好色な態度だった。

 ヘクトールが言う通り、マクギリスの女性関係は極彩色で彩られていた。眷属だけでなく、彼が住む屋敷のメイドなどとも関係を持っていた。

 そして他家の令嬢や眷属など、面倒ごとに繋がる相手を避けてそちらの方面での勉強は進んでいた。

 

「ヘクトールさんのお手を煩わせるような者は呼ばないよう、周りの者ともよく相談したいと思います」

「そうか、頑張り賜えよ~。あ、あと君が結婚する相手はアスタロトだけじゃないと思うからね」

「……は?」

「側室候補の話とかは既に上がっているんだな、これが! まあ、すぐにとはならないだろうが、側室は確定事項だと心得ておいたほうがいいぜ」

「貴族とは……本当に面倒だ。槍を振っていればいい戦場のほうが余程シンプルだ」

 

 尤もマクギリス本人も戦術や戦略を心得ているので、言うほど戦場が単純だとは思っていない。が、それでも軽口でも言いたくなる心境だった。

愚痴を言いたくはなるが、今の境遇を棄てようとはマクギリスは思わなかった。

 マクギリスは一歩ごとに経験を積み、能力を高めるとともに、周辺勢力を養わなくてはならない。そのための侯爵家の家名が利用しうるものであれば、利用したいのである。

 

「さてと、それじゃあ話は以上だ」

 

 マクギリスは頷き、部屋を辞去しようと立ち上がった。

 

「ではヘクトールさん、失礼します」

「……最後に一つだけ言っておこう」

 

 言おうか言うまいか考えているようだったが、ヘクトールは続けた。

 

「どこぞの歴とした貴族の家名を与えようというのは、魔王様方のお前に箔をつけてやろうというお考えだ。ただ、おじさん個人の考えで言えばよ、箔がつくのはお前ではなく、家名のほうかもしれないと思っている」

 

 ヘクトールの表情と眼差しは、名将が兵士を鼓舞するに相応しい勁(つよ)く、頼もしいものだった。




何故主人公の師匠がヘクトールなのかと言えば、私の趣味です。
兜輝くヘクトール、いいですよね……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。