聖槍に選ばれたマクギリスはハーレム王になるそうです 作:生死郎
今回は短めの幕間ですが、内容的にはハーレム要員追加の前振りとなります。
「うーん、マクギリス君の側室か……」
冥界の首都リリス。魔王サーゼクス・ルシファーは執務室で側室選定作業を進めていた。
正妻となる婚約者は名家アスタロト家がラティアと婚約を成立させたが、貴族としての義務として側室を入れて他家との繋がりを強くしてもらいたいと考えるサーゼクスは業務の合間、マクギリスの側室の選定作業を行っていた。
しかし、サーゼクスの命令で側室候補の資料を持って来た
その理由は、親戚筋にも年頃の娘が居ないという問題のせいであった。もとより、子供が少ない悪魔社会である。完全な弾不足なのであった。
「みなさん、年頃の娘さんは婚姻済みです」
「やはりそうか……」
サーゼクスの妹リアスは既にフェニックス家との婚約がある。グレモリーの親戚や門家筋を辿ってもやはり婚姻済み。
「リアスを側室に……とはいかないな。次期当主が側室では外聞も悪い」
婚姻関係だった者が急遽当主に就任するようなイレギュラーならば兎も角、そのような婚姻はグレモリー家にもレラジェ家にも益はない。
「私の子供はミリキャスだけで娘はいない」
このような事態になれば家臣や親戚筋にサーゼクスやジオティクスが側室を入れろ、妾を作れと箴言忠言の類を受けることになるのだ。
「いっそのこと、キシス様とかルネアス様はどうだろうか?」
「ご自分でも無理だと思うことを提案しないでください」
言外に真面目にやれと叱れたサーゼクスは、すまんと詫びて赤毛の頭を掻いて誤魔化した。
流石にサーゼクスの祖母や初代グレモリーは論外するぎるが、貴族同士の婚姻なので嫁の方が年上過ぎるのは良くないとされている。稀に爵位が上の大貴族が、売れ残った年増の娘を下級貴族に押し付ける事がある。勿論、サーゼクスはそんなことをするつもりはないし、マクギリスにそのようなことをすれば批難が集中することは目に見えている。
「先の対旧魔王派との戦争の英雄に、子が生めるかどうかもわからない年増を押しつけるとはって袋叩きは間違いないな」
英雄と自分で言ってサーゼクスは思わず嘆息せざるを得なかった。少年を英雄にしてしまったのは他ならないサーゼクスたち現魔王だからだ。そのために、マクギリスは早くから子供であることを辞めざるえず、青春らしい青春もなく戦いに費やさなければならなかった。
「今もまた、彼には色々と求めたり課してしまったりしている。それでも私は彼には幸せになってもらいたい。……側室選びも頑張らないとな」
サーゼクスは決意を新たにするが、書簡に載っている情報を読むと溜息がこぼれる。
「私が魔法の壺を持っていれば、壺から年頃の娘は出せるんだがなぁ」
「寝言は寝て言うから許されるのですよ。ラティア嬢や眷属たちとも軋轢を起こすような女性を入れるわけにはいきません。慎重に選んでください」
「ああ、そうだね。まったく、アスタロトめ、いい札を持っているなぁ」
ラティアは高飛車そうで近寄りがたい雰囲気をまとっている美人だが、マクギリスがそれに臆することはないだろうとサーゼクスは思うし、ラティアの評判から推測するに彼女を側室入りさせて家内が荒れる原因となるような性格でもないだろう。
我が侭で気が強く浪費家な女性のような、問題人物を側室へとアスタロト家も寄越すことはあり得ない。
「それで、候補はどうします?」
「なるべく近縁から、養子を取るしか無いかな? いや、血縁を使わず繋がりを強くするならば、グレモリー次期当主であるリアス眷属からでもありかな」
候補となるのは
「それも結構なことですが、彼女たちは」
「そうだな、人間と堕天使のハーフ、そして猫又。純粋な悪魔ではないというのは何かと言われることだろうな」
純血の悪魔でもない側室をあてがったら、反サーゼクス派や一部大公派の貴族達に攻撃材料を作ることになるだろう。実際には悪魔ではない転生悪魔と夫婦となったり側室に入れたりする事例は多数存在している。要するに、サーゼクスにケチを付けるのが目的なので理由は何でも良いのだ。
「彼女たちはリアスお嬢様への忠誠心も強く、グレモリーから離れることもないでしょう。彼女らのうち誰かが側室となれば、レラジェ家とグレモリー家の繋がりを強くするという目的には叶うかと」
「せめて彼女らとマクギリス君が個人的に親しくなれば、それを口実に『これは彼らが望んだ恋愛結婚です』と言って側室へもっていけるんだかな」
「お見合いの場を設けますか?」
「うーん……それも、どうかな……」
元妖怪は兎も角、過去幾度も対立して争うこともあった堕天使の娘を名門貴族の当主に押しつけるとはもっての他と言う輩が出て来るだろう。成り上がりの混血の小僧と思いつつも、そう言ってくる者が現れるだろうとサーゼクスには予想ができた。
「わかっていると思いますが、あまり手をこまねいていると側室へと押しつけてくる他家の貴族が増えますよ」
「わかっているよ。とりあえず、オフィシャルでない場面でマクギリス君と彼女らを会わせてみるのもいいかもしれないな」
サーゼクスは疲労のような重みを両肩に感じながら、非公式でマクギリスと妹の眷属たちが知り合うきっかけを作ること、リアスや父への相談する機会を設けなければと計算を始めていた。