聖槍に選ばれたマクギリスはハーレム王になるそうです 作:生死郎
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聖槍に選ばれた悪魔マクギリス・レラジェは眷属を引き連れて人間界へ現れた。
場所はチェコ共和国の首都プラハ。中欧でも有数な世界都市である。そこに金髪の華麗な若者が美女を引き連れているのだから、否が応でも衆目を集めている。
「冥界から人間界へ移動は初めて経験しましたが、これって密入国者とかになりませんか?」
未だに日本人としての感覚が残る胡蝶しのぶが物珍しそうに欧州の街並みを見ながら、マクギリスに訊いた。
「それはこちらで対応済だ。悪魔が人間界へ渡るための手続きなども万全だ。とはいえ、司直に目をつけられるようなことは極力慎んでくれ給え」
「勿論ですよ、そんなことはしません。───やるとしてもバレないようにします」
しのぶがしている装いは蝶の髪飾りや天女のように髪を結い上げているものの、いつもの剣士としての装束ではなく、私服姿だ。カナヲも同じだがその姿だけ見れば海外旅行中の学生に見える。
「せっかくのヨーロッパだし、色々観光したいわ。ローマとかフィレンツェとかミラノとか」
「まあ、それはおいおいね」
狭霧友子が不満げに呟くがマクギリスはそれを宥めるように言った。眷属との旅行はやぶさかでないが、今回の目的ではなかった。
「さて、改めてここに来たことを説明しよう。僧侶となる人材を求めてのことだ」
マクギリスは眷属一同揃えて、今回の欧州訪問の理由を説明した。しのぶは感心したように頷く。
「なるほど、私も陰陽道に多少心得はありますが、専門の方には及びません」
「私は原初のルーンを習得しているが、より魔法に精通した専門家を取り入れるのは悪くない。出来れば、ルーンや陰陽道の使い手以外であるほうが多様性も増して好ましいな」
スカサハは大神オーディンから授かった原初のルーンを用いたルーン魔術の天才だ。彼女ほどの逸材がいれば、マクギリスとしても魔法使いにはルーン魔術以外の技量と知識を求めたくなる。
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アポイントを取っていたこともあり、メフィスト・フェレスには簡単に会うことができた。応接室へ通されたマクギリスたちにメフィスト・フェレスが対面した。
「久しぶりだなレラジェ候マクギリス殿。冥界の未来を担う少壮気鋭の貴方に我が協会の魔法使いが知遇を受けることはこの上なく光栄なことだよ」
占星術師、降霊術師、錬金術師として名をはせていたゲオルク・ファウストと契約していた伝説の悪魔とあって、眷属たちにも緊張する者は多い。
(これがメフィスト・フェレス……。初代魔王と同世代の最古参の悪魔であり、あの元六大龍王の一角を自らの
怪異殺しの魂を継承する
「かのメフィスト・フェレス卿にお褒め頂けるとは光栄の至り。未だ非才の身なれど、これからも励む所存だ」
眷属とは異なりマクギリスは礼節を守りつつも、いたって悠然としている。生まれながら支配階級で王者の気質を持つスカサハが主と認めた男は、相手がメフィスト・フェレスだろうとまるで物怖じせずに相談を続ける。
「してメフィスト・フェレス卿よ。以前にご相談したように優秀な魔法使いを眷属にスカウトしたいのだが紹介してはくれまいか?」
「ふむ、連絡を受けたように悪魔への転生に乗り気で優秀な者か。レラジェ侯爵直々にスカウトしていただいたオフェリアについては彼女も前向きに考えているようなので、後ほど本人と交渉してもらいたい」
それと、とメフィスト・フェレスは言葉を続ける。
「私のほうでも君から提示された条件に適う者がいるか確認したのだが一人だけいたよ。才能もあって悪魔への転生システムに興味をもっているのがな。君のような少壮気鋭の若手悪魔に誘われれば、彼女なら恐らく頷くだろう」
「それはありがたい。どうかその者を眷属にスカウトしたいのだが紹介してはくれまいか?」
「彼女は現在、外遊中で不在なんだ。私からも連絡しておくから彼女と話してみたまえ」
メフィスト・フェレスとの対話を終えてマクギリスはオフェリアと会うため眷属たちには待機を命じて、一人彼女のもとへ向かった。
◇◆◇
灰色の魔術師内にある会議室にオフェリア・ファムルソローネはいた。右目を眼帯で覆った凛としてういういしく美しい少女だ。彼女がやって来たマクギリスのほうを向いたとき、長い茶髪がさらさらとして揺れる。
「久しぶりです、マクギリス。遅ればせながら、上級悪魔への昇格おめでとうございます」
「ありがとう、オフェリア。慢心せずこれからも励む所存だ」
───だが、すぐにオフェリアは視線をそらしマクギリスを見ようとしなかった。
「それで、貴方は眷属となる人材を探しているそうですね。前々から眷属でハーレムを作るだなんて堂々と公言していたことをついに実現させたのですか」
素っ気なく視線をすぐにそらされてしまったが、オフェリアの態度は実際のところ嫌悪とは対極にあるものだった。
(やってしまった……失礼なことだって分かっているのに、彼の顔が直視できない……)
自分の成長しなさに自己嫌悪の穴に沈んでしまうオフェリアは、挽回するため言葉を考える。久しぶりに会えて、わざわざ自分を求める連絡を受けて心浮き立つ思いだったものを、あんな言い方をしてしまうとは。
オフェリアとマクギリスの間には特別なことがあったわけでもない。悪魔として契約したことがあるだけだ。ごく普通の態度でまるで友人か同僚であるかのようにマクギリスはオフェリアのことを支えていた。
しかしながら、魔眼の忌み子として他人から忌避されたり、期待からくる父母からの特別扱いを苦痛に感じたりして、普通に扱われたことのなかったオフェリアには、その普通であることが嬉しく、心地よかった。
そのような相手から眷属にと求められ……ハーレムを形成することへの戸惑いこそあるが、マクギリスに求められるというのは嬉しいことだし断るつもりはなかった。
(特別扱いされないからこそ心魅かれたのに、だからこそ特別扱いされて悦ぶだなんておかしなものね)
オフェリアの態度で気圧される者は人間でなくとも多かったが、意中の相手が無神経ではないが物怖じしない男だったのは、不器用な彼女にとっては幸いだったかもしれない。
「オフェリア、君が言う通り私は大望を叶えようとしている。だが、それにはまだ必要なものが足りていない。君だオフェリア・ファルムソローネ」
「───!」
さりげない口調で、相手の精神回路に爆弾をしかけるのは、マクギリスの得手とするものである。オフェリアは一〇秒間ほど金髪の青年をながめ、その間に四回ほどまばたきを挟み込んだ。
「どうか私の
「……どうして、私を傘下にと望まれるのでしょうか。ここにはエーデルフェルト、遠坂など優秀な魔法使いは多くいますよ。重要な眷属の選定にはもっと慎重に取り組んだほうがよろしいかと」
「君の眼と魔導の才は勿論、人柄や識見、そして美貌。総てにおいて我が眷属に迎えるに相応しい魔法使いだと思っているよ。であるならば、オフェリアを眷属として欲する結論に至るのは、実に普通のことではないか?」
黄金の絹糸のような髪を、白い指ですきあげつつ、マクギリスは本心からの言葉を打ち明ける。
「『普通』、ですか」
オフェリアは表情を和らげさせた。
「まさか、ハーレムに入れと面と向かって頼まれるとは思いませんでした。ふ、ふふ……可笑しいヒト」
「可笑しいかな? 至極真剣なお願いなのだが……」
初めて見るようオフェリアの屈託のない笑顔にマクギリスはちょっと困り顔をするが、オフェリアはそれ以上言うこともなく、眷属になることを承諾して僧侶の駒を受け取った。
「これより貴方にお仕えしましょう。幾久しく」
思わず好き避けしてしまい系ヒロインのオフェリアです。突貫するマクギリスとの会話を考えるのが難しかった……。(進捗が停滞する一番の理由)
メフィスト・フェレスが紹介してくれる相手は2話目で採ったアンケート結果からアルクェイドになりました。まあ、いきなりルーマニアへマクギリスが行くよりかはあり得る流れかな?
後はアルクェイドの眷属入り→イベント発生の予定