聖槍に選ばれたマクギリスはハーレム王になるそうです 作:生死郎
「さて、どうするマクギリス?」
考えた末に最初の試合は彼なりに堅実と思える組み合わせを作った。マクギリスは眷属たちへ指示を出す。
「はっ」
三人は迷いなく命令を受諾する。それぞれ準備をして立ち上がる。耀子も刀を腰に差して転移の魔法陣へ進んだ。
耀子が戦闘装束を身に着けているのは、ボディラインがよく分かるピッチリとしたラバースーツ。胸元をザックリと開けて強調した、挑発的な格好だ。歩くたびにユサユサと揺れる乳肉は一〇〇センチを超える。
そして臀部には肉が乗っており濃艶、生地を押し上げて存在を主張していた。それに比べて刀を携える腰周りは細く美しい括れを生み出している。
魔法使いのオフェリアの姿は戦闘装束のようなものではない。魔法使いらしく自然体を心がけて、礼服のような姿だ。パリッとした白いシャツに黒いスーツを合わせており、タイトなミニスカートと黒のストッキングという服装で、それは魔術協会でもよくしていたものだ。
仲間たちに激励されながらオフェリアたちは転移用魔法陣へ向かい。フィールドへ転移された。
マクギリスは前衛として卓抜した剣士である友子と耀子。そして後衛に優れた魔法使いであるオフェンスを置くという手堅い選択をした。またオフェリアよりも実戦での経験則が豊富な友子たちの戦いにおける判断力に期待してもいた。
オフェリアたちが転移された先は、広大な荒野だった。
そしてファルネウス側から転移してきたのは、一〇代くらいの少年。見た目こそ、オフェリアよりも年下に見えるが鋭利な刃物を連想させるような風貌で、美形ながら剣呑な雰囲気がある。
少年については事前に入手した資料でオフェリアは把握している。
「セプティ・アミィ。確か
オフェリアの言葉に耀子は頷き、彼女も資料でアミィについて知っている。
「断絶した元七二柱五八位アミィ家の末裔。神器使いといい、マクギリス様に似た経歴の持ち主ね」
耀子の言葉が聞こえたのか、アミィは不愉快そうに顔を顰める。
「あのような奴と一緒にするな。俺は先代当主の直系男子。奴のような薄い血縁でしかなく魔王様のお情けで当主の座を継承した者とは違う!」
アミィの傲岸な物言いに耀子たちの表情は険しくなる。言い返したくなるものの、堪えて試合に集中する。
試合が開始された。その瞬間、轟音が鳴り響き、灼熱の衝撃が友子の頬を撫でた。敏捷な身のこなしで飛来するものの直撃は免れた。
「さあ、翔けよっ!」
冷ややかに響くアミィの声とともに、閃光に包まれた巨大な猛禽が現れる。翼長数メートルに達するその巨体が、上空より降下して、友子たちを吹き飛ばしたのだ。
間一髪で直撃を逃れた彼女たちのいた場所が、高熱に炙られて一瞬で融解する。
「これも
「ええ、あれは独立具現型というものです。神器そのものが意思を持ち、使い手が遠隔操作することが可能な神器です」
猛禽の正体はセプティの神器だった。摂氏数万度にも達する高密度のプラズマによって作られた猛禽だ。
アミィが右手を振った。灼熱の猛禽が、閃光と化して数百メートルの距離を駆け抜ける。
オフェリアが魔力弾を放ち、灼熱の猛禽を弾き突進の軌道を逸らす。オフェリアは結界で守りつつ、魔力弾で猛禽へ牽制して攻めあぐねさせる。
「
宣言通り友子が騎士の速力を獲得する。元来の彼女の剽悍な敏捷さ、剣術の縮地法も極まり、友子の姿がかき消えた。悪魔の反応速度でも追い切れない、凄まじい速度での移動だ。
アミィの背後に現れた友子の刀は迅雷の勢いを以て、アミィに迫る。
独立具現型は所有者が戦場から離れた安全なところから指示を出せる利点があるが、同時に所有者が無防備になってしまうリスクが他の神器よりも大きい弱点がある。
「嘗めるな!」
アミィの手元には青色の鮮やかな陽炎を放つ剣を出現させた。その陽炎に触れた地面が一瞬で炭化した。
神器の力を利用して、灼熱の陽炎を剣として生み出して斬ったものを消し炭の塵へと変える武器。アミィが自身の弱点を補うために考えた手段だった。
「く……」
予期せぬアミィの魔剣の威力に、友子は表情を引き攣らせる。
刃が触れた対象の魔力的効果を打ち消す鬼哭神去であっても陽炎の攻撃範囲は広く、刃の触れた部分だけを触れている間だけ効果を打ち消すだけでは、友子は自身を守ることはできない。青色の輝きが友子に迫る──
そう思われた瞬間、前触れもなく奔る斬撃が青色の陽炎を斬り裂いて、斬撃が友子を救う。
耀子の科戸風で斬撃を飛ばして青色の陽炎を斬り裂いたのだ。陽炎を斬られて、アミィの顔色が変わる。
猛禽を呼び戻そうとするも、オフェリアが魔法で猛禽は縛り上げられて地上へ墜落させられていた。
「なに……!?」
「私たちのこと、侮り過ぎてない?」
迅雷の勢いをもって、友子の豪刀は、呆然として無防備なアミィの脳天へ振り下ろされていった。アミィは光となって消えた。
「ジャスアーノ・フォルネウス選手の
審判役のグレイフィアの声がフィールドに響き渡った。
「耀子ナイス、尻拭い!」
「その言い方はやめなさい」
第一回戦はマクギリス側の勝利となった。
◇◆◇
『シュート!』
友子、耀子、オフェリアとアミィの試合は友子たちの勝利と決着がついたが、レーティングゲームはまだ終了ではない。3セットマッチのうち2セットめのため、マクギリスとジャスアーノがダイスを振る。
マクギリスは『3』
ジャスアーノは『4』
「今度は駒価値七か……。相変わらず賽の出目が微妙だな」
「仮にダイスの出目が九でも、女王としては朱乃を出すつもりだから、君の出番はないと思うよ?」
「ええい、言われずともわかっておるわ」
スカサハはマクギリスのやや呆れたような顔で言われて、不機嫌そうにそっぽを向く。
「選手は決めた。次は」
「承知いたしました。お任せください」
「わたくしは貴方の刃ですもの」
マクギリスの指示を受けて、頼光たちが転移の魔法陣へと映る。転移した先にはあるのは、古代ギリシャ文明を思わせる遺跡だった。
遅れてフォルネウス眷属が転移した。現れたのは着物を着た武士、黒ずくめのコートとゴーグルやマスクに覆われた顔が特徴的な金剛力士みたいな巨大な男。それが方天画戟を担いでいる。
そしてもう一人は先日、マクギリスが注目していた神楽だった。
「
「伝説的な剣豪ご本人、英雄の末裔、強力な妖怪の転生悪魔たちと相手もなかなか人材が豊富ですね」
カナヲとしのぶは自分たちが対峙する敵手に警戒心を上げる。眷属トレードに意欲的で繰り返し眷属の充足に努めている。有能であればどんどん登用していくと言う、ジャスアーノの方針があるのだろう。決して知性に欠ける人物ではなかったのだが、敵を過小評価し味方を過大評価する傾向があり見識も人望も欠くところがレーティングゲームの戦績に影響を及ぼしているようである。
「二人とも気を引き締めてください。あの方々、いずれもお強いですよ。特に季重という方は駒を二つ消費して転生されたらしいです。その潜在能力は並外れています。お気を付けください」
頼光の警告に二人も頷き、抜刀する。
「凄い美人が三人も……! さっきの娘たちといい眷属として囲っているハーレム生活とは羨ましい! 妬ましいぃ! レラジェ侯爵……俺はあの人を絶対許さない!」
「……レーティングゲームの最中だ。私情を挟むな」
私怨丸出しの恨み節を溢す季重が持つ方天画戟からは、常にない鬼気迫る気配を漂わせていた。
俗物で好色な同僚に又右衛門は嘆息する。季重の先祖から受け継ぐ性なのか彼が持つ反骨心が、女性と縁が薄いからという理由で爆発しないで欲しいと、悪魔でありながらも神仏に祈りたい気分であった。ただでさえ、又右衛門が見たところ今の季重ははぐれ悪魔になりたくないから、主殺しをしないだけのように思えてならなかった。
沈毅重厚な面差しの通り、又右衛門はその内面も硬骨漢ではあるのだが、男女の痴情や色が絡んだ嫉妬となると、まるで専門外だ。
そのように考えながらも、ひとたび刀を抜けば意識が切り替わる。豪宕極まる剣気に頼光たちが圧倒感を覚えた。
レーティングゲーム第二回戦が開始した。
試合が始まった刹那、又右衛門の重厚な顔に矢が飛んだ。開始の合図とともに頼光が咄嗟に矢を放ったのだ。
矢の前に風が吹いた。神楽が起こした風が矢を上空へと巻き上げた。頼光が込めた致死の威力は失われ、重力に従って墜落していく。
「そうら、お返しだ。風刃の舞」
神楽が舞うように扇を扇げば、風が無数の刃となって頼光に襲い掛かる。眩い紫電をまとい頼光が駆け抜けて風刃を避け続けて又右衛門への距離を詰める。
◇◆◇
「……!」
季重の無音の気合いとともに稲妻のごとく走った戟の前に、しのぶは宙に躍り上がった。みごと戟が外れたが、柄に取りつけられた三日月状の月牙と呼ばれる刃が僅かにしのぶの靴底を掠めた。
なんと恐ろしい膂力だ、しのぶは絶句する。彼の方天画戟は四メートルを越す長さがあり、穂先と柄に刃が取りつけられている重量も容易ならぬものがある。いかに彼が剛力であることがわかる。
カナヲは季重の方へ、抜刀しつつ疾風のように馳せ寄った。
その動きは寸分の無駄もない、むしろ流麗と形容していいほどであった。それはカナヲの持ち味でもあるが、鬼すら魅了する程の美しい剣技である花の呼吸の動作に違いない。
「フゥゥゥッ」
──花の呼吸 伍ノ型
カナヲの持つ刀がキラ、キラ、と鋭い光が動き瞬刻の動作で振るわれ、季重へ九連続の斬撃を放つ。
しかし季重は手元で拳を一捻りすれば、左右の月牙が回転してすべての斬撃を受けとめる。方天画戟は一つの精巧複雑な兵器であり、かつその操作は芸術的とさえいえる。
しのぶは電瞬の足さばきで季重の死角へ移動して、強烈な踏み込みにより一瞬で季重との距離を詰めて行うは、蜂の毒針の如く刺突。
──
「うおっ」
季重は叫びながら手元の石突を回らせて、間髪入れずに方天画戟は大きく閃いて、刺突を右側から薙ぎつけられた。しかも光の虹のごとく奔り、キラと反転してしのぶのほうへ来た。
まず月牙がしのぶの首へ閃き落ちた。それはしのぶの頸を蝋のごとく通過して光となり消えるが、季重は方天画戟をヒョイと引いて、こんどはカナヲへ月牙を向かわせる。
カナヲはしのぶが作った時間で決死の一撃を振るうことができた。迫る月牙を受け流し、そのまま雷光の如く走り斬撃を季重に振るう。
「うぅ……美少女に斬られるなら本望……」
「黙って消えなさい」
ゲームとは言え、しのぶの頸を刎ねた季重に、カナヲは冷然とあしらった。指文字による咄嗟の指示にカナヲは従ったものの、しのぶを犠牲にする作戦には反対だった。
強くならなければと、カナヲは意気込みを新たにする。
感情表現が得意とは言い難いがカナヲのマクギリスへの忠誠心は強い。彼は敬愛するしのぶにとって命の恩人であり、カナエの仇を討ってもらった。マクギリスがいなければカナヲは胡蝶姉妹を喪っていた。
マクギリスに会い、悪魔に転生してレラジェ家の一員として生活することは世界の広さを知ることができた。主への恩義に報いたい。転生悪魔となって芽生えた思いだった。
ほぼ同時に頼光の側も神楽や又右衛門と相討ちとなる形で決着がついた。牛頭天王の力を持って頼光四天王の武具を持った分身を作り出した。卜部季武の豪弓が放つ風を纏う矢は神楽の風の防壁を打ち破り、碓井貞光の長巻を持つ頼光が神楽を薙ぎ払った。
驚嘆すべきは又右衛門であろう。鬼火を纏う鬼切、巨大な斧を負傷しながらも潜り抜けて大刀を振るう頼光と刺し違えたのだった。
「これは油断、ですからね……!」
大技を使いこれで決着をつけられると思い、目の前の相手が鍵屋の辻の決闘で名を残した剣豪であるのに甘い見通しをしてしまったと頼光は自己嫌悪に陥りながら光に包まれ消えた。
「ジャスアーノ・フォルネウス選手の
季重の駒2はボーヴァ・タンニーンと同じ駒価値。人間としてはかなりの高評価です。
意外と人材が豊富なジャスアーノ眷属ですが、王がフレーゲル+フォークなのでうまく運用できるわけもない。これがシェーンコップならばマクギリスたちも危なかった。
又右衛門はアンスバッハ枠。本人がどういう反応しているかは次回ちょっぴり書きます。