聖槍に選ばれたマクギリスはハーレム王になるそうです 作:生死郎
前回のアンケートへのご協力ありがとうございます。アンケート実施して後で気づいた困ったことなのですが、人気トップ三人(ハリベル、乱菊、夜一)が眷属たちとキャラ属性で被っているところが多いということです。類似項が多いと書き分けが出来なくなる不安が……
構わず登場させて書いてしまうか。推しているミニーニャだと被りの心配はないんですけどね。やっぱり人気ないな~
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聖女ジャンヌ・ダルクは人間界にあるレラジェ領のホテルに滞在してもらうことになった。いつまでもザリガニ聖女でいてもらうのは忍びないという、しのぶからマクギリスへの箴言だった。
清貧を尊ぶジャンヌとしては高級なホテルに難色を示したが、レストランの食べ放題メニューをマクギリスのオーナー権限によって無料で利用できると知ってからは素直に受け入れた。
ジャンヌが滞在するホテルはしばしば人間界でのレラジェ眷属による会議場所に設定されることがある。そして今日もその例にならうこととなった。
「あなたたちがいながらマクギリスの行動をお諫めすることが出来なかったのですか。戦争状態ではないとはいえ、教会側勢力と契約を結ぶとは彼を快く思わない者たちが攻撃する材料を提供してしまうことになるではありませんか」
「すみません、マクギリス様がご懸念されることも理解できてしまい、止めきれませんでした」
「気持ちはわかりますが、次からはせめて私たちのほうへ相談する時間だけでもくださいね」
「ええ、必ず」
「そんなにしのぶを責めないでやってくれ」
マクギリスがオフェリアを宥めても、オフェリアの追及の矛先が彼に回るだけだった。
「好きでこんな事を言っているわけではありません」
「私としては聖女の魂を継承する神器所有者を眷属に迎え入れることができるので良しとしたい。元々、私は聖槍を持つことから教会勢力からは嫌われている。ジャンヌ・ダルクを配下に加えて恨まれたとしても今更なことだ。冥界側としても教会勢力に過干渉したくないというのは、彼らの都合であって宇宙開闢以来の法則ではない。冥界のお歴々がそう思い込むのは勝手だが、彼らと幻想を共有する義務はない。私は悪魔として契約を結ぶ、そしてそれを履行する。それでいいではないか」
一同を見渡し、彼の意思を浸透させてから彼は話を続けた。
「力ある神器所有者は害があると見なせば、それを殺すのは組織として当然である。それが悪魔、堕天使、天界共通の認識だ。私も未来でも安堵が約束されているわけではない。だからこそ、ただ恭順するだけではなく、私個人でも力をつけていきたい」
マクギリスの白皙の頬が上気している。こと戦闘に及ぶと快い高揚感が若き聖槍の担い手をとらえるのだ。
他人に運命を弄ばれるより、他人の運命を支配するほうに立つべきだ。ほんの少年のころ失うべからざるものを失う経験を経て、マクギリスはそう思い続けてきた。現在でもその考えは変わらない。ただ、そのこと自体を無条件で正当化することは、マクギリスには出来なかった。
「ラヴァルの拠点を襲撃して奴が保有する技術を流出させることなく潰す。かの大司教の知見や技術が悪意ある者たちに渡るのは阻止したい」
「仰る通りとは思いますが……」
「ラヴァル大司教の拠点は既に判明しているのでしょうか」
「それについては、私からご説明します。ラヴァル大司教が持つ
ジャンヌはマクギリスと契約を結んだのだ、彼女はマクギリスがラヴァル大司教に勝つために彼女自身ができる範囲で便宜を図るつもりだ。
「ラヴァル大司教は
「疑似空間に拠点があるため攻めるのが難しいと?」
レラジェ眷属の
「ですが流石に
ジャンヌは自分の右腕を掲げる。そこには濁った赤黒いオーラのようなものが憑りついていた。
「これは
「それは一体いつつけられたのだ?」
「私がはじめてラヴァル大司教と接触したときに、既に私を狙っていたようです。不覚にもそのときは気づきませんでした」
「気に病むこともない。相手のほうが悪知恵の効く奴だったというだけのことだ」
恥じ入るようなジャンヌにマクギリスがそう言ってこれ以上、ジャンヌが自己嫌悪の沼に沈まないように今後の方針を話こととなった。
「地上にあればもっと攻略は簡単なのですが……。いえ、向こうに持ち込めば使えないこともない……? むむ、いずれにせよ破壊力のある兵器が必要なのですが……クラスター爆弾……ミサイル……いえ、不遜な名称ですがいっそ『神の杖』あたりを……」
悩ましそうなジャンヌが呟く過激な戦術案にマクギリスや彼の眷属たちも動揺する。わかっていないのは浮世離れしているアルクェイド、魔術師であるため近代兵器には疎いオフェリアくらいなもので、彼女ら眷属たちに説明を求めていた。
「だ、大胆ね……」
と、友子は顔を引き攣らせているし、隣の耀子は絶句していた。
「大砲を人間に向けて撃った聖女様だ。面構えが違う」
マクギリスも呆れと感嘆が半々と言った笑みを浮かべていた。
◇◆◇
マクギリスたちが移動したのは都内にはある廃墟とかした建物だ。そこは刑場跡地に建てられたもので、土地の値段が暴落して建造途中で放置されたビルだ。
「うむ、ここならばちょうどよい」
スカサハは満足気に微笑み、原初のルーンを印す。スカサハが空間を繋いで門を形成して、オフェリアが道を作り舗装する。ジャンヌが持つ鍵によって疑似空間へ渡りゆくことになった。
「スカサハは武術だけでなく、魔術にも秀でているのですね」
「まあな。それに門を作ることなど、私にとって息をするかのように容易い」
「開け、異郷の帳──『
世界とは断絶された魔境にして異境。世界の外側たる影の国へと通じる巨大な門を召喚するスカサハの大秘法。それを応用してスカサハは神器によって作られた疑似空間に繋がる門を作り出した。
ジャンヌの鍵が縁となって門は無事に疑似空間と繋がった。そこでオフェリアが道を作り出した。
◇◆◇
「──あの聖女がまさか聖槍の担い手を呼び込むとはね」
血のように赤い髪の青年が、法衣を着た男に告げた。法衣の男は動揺もなく頷いた。
「彼女はジャンヌ・ダルクの影法師。私が行うことを決して看過することはない。だから備えはしている」
法衣の男──ラヴァル大司教が言うように城外には領域に引き入れた魔物たちや悪霊群。城内にも錬金術系の怪物や殺戮傀儡を警備として配備している。さらに言えば、複製人間たちにも警戒態勢を引き上げさせているのでいつでも迎撃が可能だ。
「運用試験中のサタナエル、ヴァスコ・ストラーダ、八重垣正臣も投入する。急ごしらえ故、稼働時間は六日しかないし、彼らに相応しい武装も用意出来なかったのは残念だ」
「武器はどうする? 聖剣計画からの流用品しかないのだろう? それで果たしてオルレアンの聖女や聖槍の担い手とその眷属に敵うかな?」
まるで遠足の日程を相談するように赤髪の青年は楽しそうに言うが、ラヴァル大司教は翳のある笑みを浮かべた。
「敵わなければ私が死ぬだけさ。運の悪い奴はただ死ぬ。当たり前じゃないか」
神器の名づけ方が難しい……。