聖槍に選ばれたマクギリスはハーレム王になるそうです 作:生死郎
「何だよ、レラジェ眷属と何人も遭遇するとはよぉ。運が無えなあ、オイ」
アスキンを見据えながら
「これは……」
「ええ、ご明察。これはあの方が放った毒です」
「しのぶ!」
「彼女が倒れるほどの毒というのは私たちにとっても脅威です。……彼はギフトと呼んでいました」
「
「その通り! ギフト・バルって言うんだよ。毒入りボールって意味さ」
アスキンは飄然と笑いながら友子の推量を肯定した。
「吸血姫様、小さい頃教わらなかったのかねぇ。知らない人から飴貰っちゃいけませんってな。ママの言いつけ守れないなんて、致命的だぜ」
しのぶと友子は背筋に走る、百足が這うような悪寒を感じる。彼女たちは斜め後方へ跳んだ。距離にして四〇メートル。友子はアルクェイドを抱えてしのぶとともに、一歩で跳び越えた。彼女らがいた場所にボールが飛来する。
「毒使いとわかっているのですから、用心くらいはしますよ」
陽炎のように姿を消えるほど速さで移動したしのぶが、アスキンを加速と体重移動で威力が増して突く。
カウンターで攻撃を受けたしのぶは吹き飛ばされる。地面に何度も転がる。身体中を強く打ちつけて、しのぶは苦痛に呻く。咄嗟の回避行動がなければ、アスキンが身体能力を強化させる
そして───
死角から振るわれる友子の剣戟。
友子が
「……本当はこういう腕力でものを言わすってのは好きじゃないんだよなぁ」
(それにあの二人の不意打ち、ぎりぎりでカウンターできなかったら、下手な上級悪魔ならそのままやられていたぞ。中々興味深い女たちじゃないか)
嘯きながらも彼女たちを冷静に分析するアスキンの眼は、冷徹な戦闘者のものとなっていた。
「うう……っ」
「これは……」
友子としのぶは土気色の顔色となり、起き上がるのが困難になっている。重力が何倍にもなったように身体が重く、背骨が皮膚を突き破って出てきそうな激痛が身体中を苛む。
「立っていられないだろ?
「中毒……? それがあなたの能力?」
しのぶの問いにアスキンは鷹揚に頷いた。アスキンが持つ
これを使うことで指定したものの致死量を操り、敵を死に至らしめることができる。アスキンはこの能力で敵を討つことを自身の戦闘スタイルとしている。
「でも、これって結構めんどくさいところもあってよ、指定したものを大量に取り込まなきゃいけないんだよね。でさぁ、これが空きっ腹で取り込むのも何か気持ち悪いんだよな。だから、カフェオレ飲みに行くから、そのまま待ってて欲しいんだよ」
そう言ってしのぶたちにアスキンは背を向けて歩きだず。
「逃げるのですか」
「逃げるってのは、負けそうな相手がするもんだぜ。これはな、『帰る』って言うのさ」
好き放題言ってアスキンは立ち去った。だが……
「せぇーの……とりゃあー!」
巨大な瓦礫がアスキン目がけて飛来して、彼は慌てて避けた。瓦礫はアルクェイドが投擲したものだった。
「マジかよ、あんた何で元気なの?」
「今も元気なんかじゃないわよ。すっごく気持ち悪くてしょうがない。これが人間で言うところの二日酔いってものなのね」
「オイオイ、致命的だな。自信無くすぜ」
特製の毒で二日酔い程度にしか害せないのか、アスキンは内心ショックだった。アルクェイドには友子やしのぶ以上なギフト・ボールを与えたのだが……それも解毒されたようだ。
「不思議なんだけど、相手が動けないそのまま首をもいだり、締めてもいいんじゃない? どうしてやらないの?」
その半神的な美貌は冷ややかなものだが、本心から気になっていると言うようにアルクェイドは問うた。
「それマジで言ってんの? 野蛮過ぎてヒクわ。全くデリカシーが無いったら無えな。あくまで致死量を操作するのが俺のスタイル。首を捥ぐとか締めるなんてのは、俺のスタイルじゃねえよ」
アルクェイドが不思議そうに首を傾げながら、そうなんだ、と返す。自由奔放に見えて合理性の塊である彼女には、アスキンの回答は胡乱なものだったのかもしれない。
「そういうアンタは、どうなんだ?もぐのか、首を」
「わたし、そんな野蛮なことしませーん」
アルクェイドは不貞腐れたように言うと、滅却師へと迫る。
迎え撃つアスキンは腕輪を変形させてメカニカルな形状の
だが、それも爪の一振りで蹴散らされた。大気が悲鳴をあげた。アルクェイドの腕の動きに合わせて発生した気流は
アルクェイドは次元が違うとアスキンは感得した。白い女はどんな怪物であれ出遭えば死ぬしかない怪物だった。
細く強靭な四肢。しなやかな、しかし鉄骨のような筋肉。人体と似ているフォルムだが、そこに宿った殺戮性能は脅威である。矢の雨を一身に受けながら、吸血鬼は笑みを浮かべたまま滅却師に肉薄する。
「うおっ、やべぇ!?」
時間にしてわずか五秒。繰り出されるアルクェイドの鋭利な利刀の如き五指がアスキンに振るわれる数はおよそ一〇合。アスキンは
しかし──
「死ぬほど霊圧をブチ込んでくれてありがとうよ」
起き上がるアスキンは衣装に傷はあっても無傷で起き上がる。
アルクェイドは瞠目する。全て
「あんたには言ってなかったか? 俺は対象にとったものを取り込むことで、その致死量を操作するのが俺の能力。あんたの霊圧、魔力を取り込み、致死量を上げれば免疫がついてあんたは俺に
油断なくアルクェイドを見据えつつ、それでも口調だけは軽剽にアスキンがアルクェイドを揶揄する。
◇◆◇
優れた錬金術師ラヴァルが作り出した錬金生物は実験的な意味合いがある個体は多い。例えば城の上空を守る魔鳥は、天使を生み出そうとした実験の成れの果てであり、城内を彷徨う爬虫類に似た醜悪な見た目の錬金生物は実験の副産物であり、騎士の姿をした錬金生命体、金属の身体を持つ四つ足の錬金生命体もラヴァルの何かしらの実験から生まれたものだった。
そして、主戦力として用意された
剣士──八重垣の身体から轟と吹き荒れた魔力の奔流が巻き上がり、身体は次第に輪郭が揺らぎ、魔力が収束し凝固して形を成し、先程のよりもずっと大きく、屈強な人影として実体化を果たす。
その長身は甲冑に覆われていた。騎士道物語に登場するような、諸人の賞賛や憧憬を集めるような煌びやかなものではない。無骨で禍々しい意匠の甲冑だった。放つ気配も人間のものではなくなった。
「……っ!」
「恐らく、創造主に魔性へと変貌することは最初から仕組まれていたのでしょう」
絶句するカナヲに頼光は顔を顰めながら言う。耀子も沈黙しながらも、八重垣の造物主の悪意に鼻白んだ。
八重垣から放たれるのは、掛け値なしの妖気であった。魔力から生じた旋風すらもが、禍々しい。
兜のスリットの奥に茫洋と光る双眸は、獲物たちを見定めて、ふたたび爛々と燃え盛った。殺意の色だけに染まった視線に見据えられてカナヲたちの背筋を悪寒が奔り抜けた。
「……lia……」
奈落から響くような、呪うような、怨嗟の呻き。八重垣の音声だった。
「……Cle……lia……ッ!」
まるで呪いの具現であるかのように総身に殺意を漲らせたまま、八重垣は頼光たちを目掛けて突進した。
八重垣は野獣の如き勢いで、石床を蹴散らして突進する。手にする剣を両手に構えて、八重垣は凄まじい圧力でカナヲの刀を圧迫してくる。フゥゥゥとカナヲの呼吸音が凄まじい妖気の中に混じる。
八重垣の剣戟を捌き、受け流す。返す刀で斬撃を繰り出す。
──花の呼吸 弐ノ型
振るった刀の軌跡が花の様に見える精緻可憐な太刀捌きを、二撃、三撃──豪快な剣戟でもって、八重垣はカナヲに応戦する。死角から斬りつける耀子の刀を剣で迎え撃つ。彼女の刀を払い、剣を振りかぶる。
「せいっ!」
頼光がカナヲたちを援護するために矢を放つ。見た目は通常の和弓で、矢も同じく普通のものに見える。それでも、その破壊力は絶大であった。まるで発破をかけられたかのように床面が吹き飛び、木端微塵に砕け散った石材が粉塵となる。
「……っ!」
彼女たち全員が息を呑んだ。八重垣は健在だったのだ。床がクレーター状にごっそり抉られている。頼光が射た矢を手にする剣で打ち払ったのだ。
「やりますねっ……」
「頼光さん、耀子さん。あの鎧を壊してください。少しでも亀裂があれば、頸を刎ねます」
珍しく提案するカナヲに、二人は意外そうな様子だが、すぐに頷いた。
「あらあら、承知いたしました」
「ええ、異論はないわ」
頼光は両手の虚空にかざす。
「牛頭天王、東方神、帝釈天の金剛杵。すなわち聖仙骨より作られし神の槍」
頼光は手元に大きな金剛杵を出現させる。その形は槍状の刃が柄の上下に一つずつ付いており、密教において万有の本体である一真如を示すという独鈷杵。
「今こそ来たりて、あらゆる敵を撃滅せん。──釈提垣因・金剛杵!!」
金剛杵はバチバチと爆ぜるような放電させながら雷気を纏わせる。
頼光が投擲した金剛杵は迸る雷気を纏わせ、眩い閃光とともに迅雷の勢いを以て、虚空を走って敵に襲いかかった。金剛杵と剣が衝突し、めくるめく光芒となって炸裂する。
滾る雷気を纏った金剛杵にとって八重垣の持つ剣はガラスのように砕け散る。それだけでは収まらず奔る金剛杵が容赦なく衝突して大打撃を与える。地を転がる八重垣に向けて間合いを超えて迫る耀子の斬撃が、甲冑に深刻なまでに傷めつける。破損して崩れた甲冑から、八重垣の首は露わになる。
間髪入れずに追撃するカナヲ。
カナヲは空中で体を大きく捻る。呼吸によって脈拍が跳ねあがる。大量に取り込んだ酸素を運ぶため血流が高速化して、
──陸ノ型
捻らせた身体を反転しながら八重垣の首を斬り付ける。御影石の柱よりも硬い首は可憐な少女剣士によって断ち切られた。
八重垣の身体が崩壊して消滅したことを確認して、カナヲたちはようやく緊張を解いた。他の怪物たちは既に絶命しており、生あるものは彼女たちだけだった。
「ありがどうございます。まだ私にはあの甲冑ほどの強度を斬ることは難しかったので、助かりました」
「構いませんよ、カナヲ。あなたも鍛錬を続ければいずれ斬ることもできるでしょう」
頼光が先程までの厳しい表情から一転、穏やかに微笑んでいる。
「こうして三人いるのだから、助け合うのは当然よ」
耀子もカナヲへ気にするなと言っていると、自分の身体に起きた変化に気づいた。戦闘で負った傷が癒えて、身体に澱のように蓄積されつつあった疲労が消えていた。
変化には頼光もカナヲも気づいた。特に未知の体験であるカナヲは困惑している。
「皆さん、
マクギリスが
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