聖槍に選ばれたマクギリスはハーレム王になるそうです 作:生死郎
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免疫を獲得するたびに死から遠退いている実感をアスキン・ナックルヴァールはいつも得ていた。彼は人間の尺度で測ればほとんど不死身の怪物だ。
逆に死に近づいている。目の前のアルクェイドからは感じていた。一度は復活したものの再び、彼女は地面でうずくまっている。発汗、荒い息、熱に魘されるようにうっすらと赤い肌。彼女の身体に異常が起きているのは明らかだった。
「アンタにゃ、霊子・酸素・魔力のハイブリッド
「そう言っておいて、致死量の操作をしておいて即死させないだなんて随分と悪趣味じゃない……」
白い女は髪をすくような動作で、アスキンが射る
「そいつは違うぜ。俺なら充分に頑張っているさ。これがただの悪魔や吸血鬼ならばとっくに死んでる」
アスキンは嘆息して肩をすくめてみせる。彼としても怠慢と責めるようなアルクェイドの皮肉めいた言葉は心外である。
「最も強いというのは千変にして偏らねぇもの。あらゆる呪い、あらゆる状況に対応する原初の一───俺がヌルいみたいに言うのヤメてくんねぇか? ヘコむぜ」
アスキンには死が近づいているはずの女に、ある種の予感めいたものを感じていた。それは闇の向こうから捕食者に狙われる被捕食者が感じる予感なのかもしれない。気温にかかわりなく、汗腺が冷たい湿気にみたされるのをアスキンは自覚していた。
そして悪い予感とは往々にして、当たるものである。
大気が震える。白いスカートが翻る。その出で立ちの変貌に、アスキンは瞠目する。
アルクェイドが対策と考えて身体を作り替えたその結果、アスキンの毒をものともしない優美な
今の彼女に毒は通じない。金の髪が流星のように駆けていく。
「嘘だろっ!?」
アスキンの腕には骨まで見える傷がひとつ。緊張は光の速さでアスキンの精神回路をみたした。反射的に使用した
アスキンが咄嗟に振るわれた腕の軌跡をずらして、力を受け流していなければより深手を負っていたことだろう。
飛翔し、振り下ろされる爪の威力は今までの比ではない。たまらず後退するアスキンに、第二第三の爪が繰り出される。
「あいつの霊圧も魔力も、すべて免疫獲得したはずだ! 同じ悪魔の霊圧も魔力も途中で変わるなんてあり得ねえ! いや、あいつの対応力は俺の想定以上なのか!?」
アスキンの免疫獲得速度は極めて速い。敵の攻撃を受けると霊圧や魔力を解析して、即座に免疫を作り上げる。一分もあればどんな攻撃でも無効化してしまう。
「スーパー真祖キーック!」
「ぼへっ!」
だが、アスキンの免疫獲得速度が間に合うことなく、アルクェイドは新たな魔力と霊圧を以て、アスキンを蹴り飛ばす。まるで人間水切りとなって地面を五回続けてはねた。
まるで別人のように霊圧や魔力を変化させる者など、前例のない強大な敵と戦わねばならないのだ。戦慄が全身の神経回路を音もなく駆け抜け、皮膚には鳥肌が生じ、冷たい汗が内側から衣服を湿らせるのも当然であった。
「捕まえた……。そこまでよ?」
蹴り飛ばしたアスキンに向けて、アルクェイドは突き上げた腕を振り下ろす。圧し潰された床ごとアスキンは深い深い穴へ落ちていった。
「ああ、何だって俺の相手はこんなめんどくさいんだ……」
飛翔して穴から上がって来たアスキンの姿は変わっていた。分子を想起した形の翼、サイバーパンクな映画にでも出てきそうなバイザー、そして武装は薄紫色の光体で作られている。
腕の負傷も既に消えたいる。アルクェイドへの免疫獲得が完了している証左だった。
「何、あなたもイメチェン?」
「あんたほどおしゃれじゃねえがな。
滅却師
致死量を極限まで高めて研ぎ澄まされた力。アルクェイドがどんなに魔力や霊圧を変化させたとしてもアルクェイドの
「
アルクェイドは眩暈を覚えた。
「
アスキンが苦虫を噛み潰したように顰める。デタラメな生き物だと承知していたが、改めて絶句する。
アルクェイドは片手を城塞の深層部の地面にめり込ませ、ショベルで地面をすくうように土塊を持ち上げた。
そのまま、意趣返し、と言わんばかりに岩盤をアスキンめがけて投げつける。
アルクェイドの
「あ~、イヤだねぇ。これじゃあ俺の嫌いな力対力の戦いじゃねぇかっ!」
アスキンは自分のペースに引き込んで戦おうとしていたが、圧倒的な性能差がそれを許してくれない。そう認めざるをえなかった。錬成された
しかし、アルクェイドはそれを悠長に待つつもりはなかった。
両手を地面にめり込ませ瓦礫を持ち上げる。片手に持つ瓦礫は三メートル近い床材の一部だった。それを投げつける。
空中を走る一トンの
二発目はアスキンから外れて後方へ飛んでいき、三発目がアスキンの上体めがけて飛んでいく。アスキンは巨大な瓦礫を打ち砕く。未だ底知れないアルクェイドを警戒して、
霊子を収束させて
「……あぁ?」
アスキンの胸から細剣のような刀身が生えていた。胡蝶しのぶの刀が
「動けるようになったんだな。大したもんだ……あんたのこと、見くびってたぜ」
滝のように汗を流し、身体が痺れながらアスキンはシニカルな笑みを浮かべている。彼なりの精一杯の強がりだ。
「あなたが私たちを早いうちに倒したと思って油断してくれて助かりました。治す時間を得ることができました」
鬼を殺す毒を独自に開発して五大宗家でも頭角を現した剣士だった。当然ながら剣士としても高い技量の持ち主なのだが、小柄な身体故に筋力が足りず妖魔と戦うには筋力や斬撃の重さが足りないために、突き技特化の型と彼女が独自に調合した毒を使って戦ってきた。
しのぶは何種類も調合して用意している。それを刀に仕込んで敵の強さや性質によって的確に使い分けている。
用意している多種多様な毒をその場で調合して、自分や友子の免疫強化する薬を急造したのだった。
「そうか……あんたらは……瓦礫に隠れていたのか……無茶するなぁ」
アスキンは呆れたように笑う。しのぶと友子も笑われても仕方ないと思った。
免疫強化で動けるまでに回復した、しのぶ、友子はアルクェイドとは無音声通信で連絡を取っていた。
アルクェイドは彼女らと協力するため投擲した一発目の瓦礫はアスキンの注意を引くため直接狙い、二発目はわざとアスキンから外して彼の後方に、三発目は再びアスキンを狙う。
しのぶ、友子が潜んでいるのは二発目だ。地面に落下する直前、瓦礫から離れて一秒とかからずにアスキンの背後を取ったのだ。
人であればアルクェイドも、彼女らの安全を取るため投擲に手心を加えてしまいアスキンに作戦を見抜かれたかもしれない。だが二人は悪魔。肉体も人間よりも遥かに強靭なのでアルクェイドも躊躇わず全力投擲ができた。そのためにアスキンも瓦礫に隠れながら飛んでくる襲撃者を見破れなかった。
友子が愛刀
「油断したわね。私やしのぶを完全に仕留めるか、私たちへの免疫を獲得しておけばよかったのに」
「油断……していた……つもりは、ねえよ……。真祖の姫さん相手で……余裕が……なかったんだ」
「わたしが
アルクェイドは豪奢な黄金の前髪を揺らした。目は細くなり、妖艶な眼差しは月光をたたえたようであった。
「はは……。悔しいから、致命的とは言いたくなかったんだけどなぁ……」
書く場面が多い!
本作のアスキンはまだまだ成長途中で原作のアスキン(陛下に強化蘇生された時点)ほどの実力がなかったという設定です。いやぁ、本当に親衛隊たちお強いです。攻略方法が思いつかないジェラルドやユーゴーと比べたら、まだアスキンが攻略難易度が優しいという悪夢。