※この作品はR-18です。

聖槍に選ばれたマクギリスはハーレム王になるそうです   作:生死郎

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あと一話くらいで休暇編は終わりそうです。主人公は全然休んでいないですね。


先にネタバレしてはつまらないだろう

 異界に作られた城塞は深層から新たに出現した城によって崩壊させられた。

 マクギリスの禁手(バランス・ブレイカー)である『至高天(グラズヘイム・)・黄金冠す第五宇宙(グランカムビ・フュンフト・ヴェルトール)』によって破壊された。

 

 深層にいたマクギリスたちも異界の空の下に今はいる。倒れて伏した複製人間(ホムンクルス)ヴァスコ・ストラーダは既に生命が尽きかけていた。

 

「決死の覚悟の攻勢であっても、及ばぬか。無念だ。しかし礼を言おう。お陰で傀儡として生まれながらも最高の闘いの中で果てることができた。思い残すことなく死ねそうだ」

 

 マクギリスの口元に笑みを浮かべる。

 

「死ぬ? あなたは死にはしない。私にとってあなたもまた愛すべき輝きの一つなのだ。死という無へ帰する事を私は認めない。その魂は永久に私と共にあるのだ」

「………成程。こうして殺されて理解した。マクギリス・レラジェ、貴殿の……」

 

 最後まで言葉を残すことなくストラーダは死亡した。暫く誰も話すことがなかった間に、拍手の乾いた音が響いた。

 

「贋作とはいえ、かの老戦士を討ち取るとはな」

「っ、誰だ!?」

 

 典雅な洋服と洒脱な外套(マント)の青年が現れる。人間の姿でありながら、明らかに人間ではないもの。悪魔ではないことをマクギリスは直感した。

 

「複製人間という強者を失ったことを私は悲しむべきなのか、それともかの老人以上の強者が現れたことを喜ぶべきか。さて、私はどのように反応すればよいのだろうな」

「お前は誰だ? まさかずっとマクギリスの闘いを見ていたのか?」

 

 女王(クイーン)スカサハの言葉を青年は肯定する。

 

「私はこれでも城塞の食客。侵入してくる賊に注意を払うのは当然だ。これでも私は義理堅い性分なのでな」

「人を置いて話すな。無礼者。豚でなければ名を名乗れ。それとも貴様は最低限の礼儀(ことば)も知らぬ痴れ者か?」

 

 戦車(ルーク)アルクェイド・ブリュンスタッドの紅玉のごとき瞳は金色の光を迸らせて、闖入者を射抜くように見つめている。

 

「礼儀は知っている。謹んで応えよう。私はレッドライダー。鮮血の道を往く、紅き騎士である」

 

 レッドライダーの名乗りに、マクギリスたちに衝撃が奔る。ジャンヌが瞠目する。マクギリスは静かに闘争心を昂らせる。

 

「レッドライダー、だと……!? 死の天使の一人か!」

「そう殺意を出してくれるな。うっかり私も剣を抜きたくなるだろう」

 

 祭りに参加したがる子供のような笑みを浮かべ、レッドライダーは肩をすくめてみせる。

 

「それで、その死の天使が私たちに何用かな? まさか観戦に来ただけなどと言わないだろう?」

 

 マクギリスの問いにレッドライダーはただ笑う。

 

「実はその通りだ! 本当に観戦しにきただけなのだよ! 強者たちの戦いは私にとって娯楽だからな! ふふふふふ、ははははは、あははははははははははははははは!!」

 

スポーツ観戦程度の気分だったという自白にマクギリスたちは怒るよりも呆れが先に出た。

 レッドライダーのあとにやって来た法衣の男が嘆息を吐(つ)いた。

 

「人の戦いを観戦することが、こやつの数少ない趣味の一つなのだ。諦めろ」

「君たちの戦いは中々、見応えがあった。本当はマクギリス・レラジェがストラーダを討滅するシーンを見てから、しんみりとした余韻を味わいつつ帰るつもりが、つい君たちに声をかけたくなって台無しにしてしまった。不作法を許して欲しい」

「ラヴァル司祭!?」

 

 ジャンヌは法衣の男───ラヴァルの姿に瞠目する。

 

「ジャンヌ・ダルク。よくぞ生き延びてここまで来た。しかも聖槍使い達を味方につけてこうも盤面を引っ搔き回してくれるとはな」

 

 憂う神学者のような眼差しで、ラヴァルはジャンヌを見ているが自分の計画を破綻させるきっかけとなった彼女には、憎んでいるわけでも怒っているわけでもないようだった。

 

「私は何か強い意志を持った者の運命に興味がある。ジャンヌ・ダルク。聖女の魂の継承者……。君の行く道が正しいのであれば、運命は君を活かすことだろう」

 

 ラヴァルが血液混じりの咳をして、口元から血が零れる。神器を破壊された反動で彼の身体には深刻なダメージを受けていた。

 

「ラヴァル司祭! あなたは何故このような事をしているのです! あなたの目的は何なのですか」

 

 ジャンヌの詰問に対して、ラヴァルは話し始めた。

 

「身の上話でも聞いてくれるか。それは雨の日だった……私は教会からの連絡を受けて私は家を出た」

 

 ラヴァルはジャンヌへの問いに答えているというよりも、ただ自分のうちにある気持ちを吐き出しているようだった。

 

「仕事が長引いてね、家族へ電話をしたときだった。電話の向こうで何か大きな音とともに妻や娘の悲鳴が聞こえて、通話は途絶えた。……雨のせいで川が氾濫して家族は家ごと流されてしまったよ」

「───」

 

 ジャンヌたちは言葉を挟むことなくラヴァルの言葉を聴いている。

 

「どうして妻や娘が選ばれたのか。どうして私ではなかったのか。どうして私も一緒ではなかったのか。彼女らは死ななければならないほどに罪深かったのか? 私のような人間を生き残らせるということは、神など存在しないのではないか?」

 

 ラヴァルの昏く淀んだ眼に一瞬の鋭利な光が現れ、すぐに消えた。

 

「だが、その探求も終わった。私には複製人間もジャンヌ、お前のような女にも興味は既にない」

「探求が終わったとはどういうことですか? あなたの複製人間にも興味はないとは」

「答えを得たということだよ。人の身で生命を弄び、彼らを従えさせている。そのような悪に塗れている私が、神の裁きを受けることがなかった。……その答えを今日、知ることができた!」

 

 ラヴァルは三日月のように裂けた笑みを浮かべている。その瞳は先程までにはなかった炯々とした輝きがある。

 

「君が聖槍使いを連れて来たことで気づくことができた。通常ではあり得ない禁手(バランス・ブレイカー)を行う最高峰の聖遺物(レリック)。聖と魔という反発しあう二つの要素を持つ魂を収めて、隷属できるというのは本来であれば起こりえない……」

「あなたは何を言っているのです……?」

 

 ジャンヌは何か微かに不安を抱きながら、ラヴァルに問いかけた。

 

「簡単なことだよ。何故実現したのか、という疑問への答えだ。聖と魔、それらを司る存在を失い、世界の均衡を崩しているからに他ならない。つまり、かつての大戦で滅んだのは初代の四大魔王だけではない、神もまた! 滅んでいたのだな!」

 

 ジャンヌが瞠目するが、その場に居合わせた者たちも驚愕している。しかしラヴァルは自分の話している言葉に徐々に高揚しているようで、興奮冷めやらぬままに叫ぶ。

 

「だから俺は……神に裁かれなかった! あの子たちに裁かれる罪(理由)などなかったんだ!」

「ふふふ、長年の追究していた答えを得られたな、ラヴァル」

「あなたは知っていたのか、レッドライダー?」

 

 マクギリスの問いにレッドライダーは肯定した。

 

「当然だ。私も天使に属する存在だからな。神の死を人間に知られるのは何かと事をなすためには塩梅が悪い。天使、堕天使、そして悪魔でさえも。人間、そして同胞にも軽々しく教えるわけにはいかなかった。三大勢力でもこの秘中の秘を知るのは各勢力とトップと一部の者たちだけだ」

 

 終戦した後、神を失った天使、四大魔王と多くの上級悪魔を失った悪魔、幹部以外の殆どを失った堕天使。各勢力が人的資源等を失い、衰退していった。種の存続も人間に頼らなければそれも望めなかった。悪魔たちはその数を減らし過ぎて純血種が稀少となった。天使は神が存在しなければ増えず、人間と交わらなければ種を残せない。堕天使は天使が堕落すれば数は増えるものの、純粋な天使は神を失ったいまでは増えることなどできない。

 

「かつて神が滅び、その影響によって私という存在の在り様が大きく損なわれた。今の私があるのは、神の死による影響で私のシステムが孕んだバグのようなものだろう」

「そんなっ……!」

 

 ジャンヌが立ち眩みを起こし、マクギリスが彼女を支えた。流石の彼女でも受け止めるには衝撃が大き過ぎた。

 

「待ちなさい、あなたは神の死を知っていたのでしょう? 何故ラヴァルに教えなかったの?」

「先にネタバレしてはつまらないだろう」

「───」

 

 アルクェイドの問いの返答を訊いて、彼女は言葉を失う。尤も、ラヴァル当人はもはや気にしていないようだった。

 

「さて、答えを得られたのであれば私の人生は余暇のようなものだ。ジャンヌ、君が望むのであれば教会へ投降しても良い」

「私としては、このまま研究を続けて欲しいがね。これが世に出てくれば世が乱れることがさらに勢い増すだろうからね」

 

 スカサハが厳しい目でレッドライダーを見る。

 

「天使であるお前が、ラヴァル司祭のもとにいる理由はそれか?」

「彼の近くにいれば、より世の中の乱れを加速させてやれると思ってね。私は乱世が欲しいのだ。乱世はいい、死ぬまで延々と戦争ができる……つまらない有象無象相手のような一方的な虐殺ではない、殺し合いが!」

「四騎士でも赤の騎士は戦争を司り、地上の人間に戦争を起こさせる役目を担っていると聞くが、戦狂いになるとはな。聖書の神もろくでもないモノを遺したものだ」

 

 スカサハに呆れと侮蔑混じりの眼差しや言われようにも、レッドライダーには何の痛痒も感じないようだ。

 

「そうだな、私は戦を嗜み、闘争を愛する。生命を乱費する、あの救いようのなさが、たまらない……!」

 

 レッドライダーの闘いに対する返答。血色のおぞましい波動を感じるような、不気味さがあった。

 

「禍の団(カオス・ブリゲード)辺りにでも売り込ませるつもりか? だが私にはもう世を乱すつもりはない」

「そうだろうな。……だから、死体から情報を抜き取らせてもらおう」

「っがぁ!?」

 

 レッドライダーの手元に顕現した剣を振るい、ラヴァルを袈裟斬りに斬りつけた。距離があったとはいえ、マクギリスたちが反応できないほどの早業だった。ラヴァルの身体は真っ二つに切断され、泡沫となって遺体は消えていった。

 

「屍を泡沫に変える魔法か。予め情報抹消するために自分へ仕込んでいたのか。ぬかったな」

 

 レッドライダーは感心するように言いながら、剣を手元から消していた。

 

「何故……、そこまでして自分の研究成果を消失させようと?」

「不思議なことでもない。ラヴァルは元々、錬金術を扱っていても外法に傾倒はしていなかった。だが、自分の信仰心と妻子の理不尽な死に折り合いをつけようと、外法に手を染め、悪行をなすことで凶悪な自分を創り上げたのだ。魔道に堕ちた自分が罰せられないのは神が存在しないからだ、と証明して妻子の死に神の意志などなかったと信じたかったのだろう」

 

 オフェリアの疑問にレッドライダーは意外なことに推測を交えながらも律儀に答えていた。

 

「なんとも、不器用で愚かな男だった。……さて、私はこれからどうしたものか。聖槍使い、影の国の女王、吸血姫。歯応えの在りそうな強者が揃っているが、今日この余韻を塗りつぶすのも勿体ない……。うん、今日は帰ろう」

 

 独り言を呟き、最後には勝手に納得したレッドライダーは立ち去ろうとする。引き留めようかとスカサハは考えたが、マクギリスに制止されて危険な赤の騎士を追うことはしなかった。

 

 ふと、レッドライダーは立ち止まり、マクギリスに声をかけた。

 

「聞き忘れていた。サーゼクス君とアジュカ君は壮健かな?」

「……ええ、今も冥界のために働いていますよ」

「そうか。相変わらずお利口さんだな、彼らは」

 

 そう言い残して、今度こそ本当にレッドライダーは立ち去った。強烈な覇気が消えるまでマクギリスたちの緊張は残り続けていた。




退屈な会話パートばかりですみません……。最後まで楽しいと思ってもらいながら、話を終わらせるのは難しいですね。
今回は人化してますがレッドライダーの正体はペルソナや女神転生のアレをイメージしてます。
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