聖槍に選ばれたマクギリスはハーレム王になるそうです 作:生死郎
マクギリス・レラジェは自身が治めている人間界の領地へやって来た。余暇ではなく仕事としてである。
そしてマクギリスがやって来たのは、彼の管理下に置かれた病院だった。病院には彼が手配した患者が入院していた。
「やあアスキン・ナックルヴァール。よくもまああの負傷で生きていたものだよ」
「……あんたがマクギリス・レラジェか」
ベッドから起き上がったアスキンが、いかにも歓迎していなかったと言いたげに顔を顰めていた。
ラヴァル司祭が錬金術で作り出した複製人間である滅却師。その中でも最強の男だ。彼は戦闘不能になりながらも辛うじて生き延びて、友子の応急手当としのぶによって解毒されて保護されていた。
今の彼は
余談ながら、アスキンが入院している病棟は特別病棟として一般病棟から隔離されていて、アスキン以外は入院していない。
「本当に、死ぬかと思ったが生き延びるとは思わなかったぜ」
「高度な治療を行える者が私のもとにいるから、彼女らに頼んだのだ」
マクギリスが庇護下に置いている井上織姫のことは、詳しいことを教えずにいた。織姫や二条秋など癒しのすべに長けた情人たちも病棟に待機させているが、アスキンに教える必要をマクギリスは感じなかった。
アスキンの視線がマクギリスの後ろに控えるピンク色の髪の滅却師へ移る。
「ミニーか……。もしかして眷属になったのか」
「そうです、アスキンさん。私はご主人様の眷属にして頂きました」
「なるほど……上手くやっているようだな」
「幸せですよ。寿命もかなり伸びましたし、今までよりもずっと自由ですし、ご主人様に愛してもらえています」
「へえ、そう」
頬を朱に染めるミニーニャは本気で言っているのだろうと、アスキンにもわかった。ラヴァルにも言わなかったご主人様などと言う辺り、随分とマクギリスに心酔しているようだと思いながら、かつての同胞の様子を見ていた。
「バンビや蒼都はどうした?」
「蒼都さんは戦死しました。バンビちゃんは……」
「彼女は私とともにいる。これからも消滅することはない」
「───」
意味深なマクギリスの言葉にアスキンは微かな緊張を感じ、掌がうっすらと汗が浮かぶ。
「それで何の用事だ? 俺にトドメを刺しにでも来たのか?」
「殺すならばあのまま放置しておけばいいだろう。心臓を壊されて、毒を盛られて、アルクェイドにしこたぶちのめされたんだ。殺すならばそのまま異界の崩壊に巻き込んだほうがいいだろう」
「まあ、それもそうだな……」
「余程アルクェイドに嫌われているようだな。君を平面にして一六分割してやろうとしていたぞ」
「マジか、致命的だなぁそれは」
敵対していたとは言え面倒な相手に嫌われてしまった、アスキンは頭痛がする思いだ。
マクギリスが眷属たちを部屋の外へ出てもらい、アスキンと二人きりになる。
「マクギリス・レラジェ。あんたは何故俺を助けた? 敵だったんだ放っておいてもよかったはずだろう」
「何も死ぬことはない、そう思っただけだ」
「……お前、敵に塩を送るとは致命的じゃねぇか?」
「なに。これも打算あってのことだ。例えばお前と友誼を結べばその強力な力を借りることが、いつかできるかもしれんだろう?」
「…………─────」
「どうした?」
マクギリスが胡乱げに見ていると、アスキンは何でもねえと言って息を吐いて頭を掻いた。
「助けた相手をこのまま放り出すのも気分が悪い。しばらく生活を見よう」
「心遣いに涙が出るねぇ」
話の裏を見逃さない。そう言いたげなアスキン。飄然とした振る舞いは鳴りを潜めて、鋭い視線をマクギリスに向けている。
「勘ぐるなよ。私としては命を助けた責任を取ろうというだけだ。まあ、欲を言えば必要なときに力を貸してもらえればそれでいい」
アスキンは考え込んだ。マクギリスの提案は魅力的だった。自分の寿命は短い。その僅かな時間を身ひとつで世界に放り出されては、路傍で野垂れ死にすることは想像できた。しかし、この提案に乗っていいものか、選択しようと思うと言いようのない不安と焦燥を感じて選択ができないでいた。
「まあ、よく考えてくれて構わないが、ひとまずリフレッシュしてみないか?」
「リフレッシュ?」
アスキンの様子を観察して、マクギリスがそう言って話題提供した。アスキンは胡乱げに眼前の悪魔を見る。
「今までの経験から誰かに従うだけのことが多かったために、自分で考えて選択するというのは、難しいだろう。肩の力を抜いて心を解きほぐすならば女が一番の良薬だ!」
「女ぁ? だ、だけどよう、そう簡単に女を好きになるなんてできねえよ。俺もこだわりはあるんだぜ」
「ソープへ行け」
「───!?」
マクギリスの言葉は無形の弩となってアスキンに衝撃を与えた。彼は絶句していた。
「え、い、いや……、えっと、やっぱそういうのは好きなもの同士っていうか……だいたいそんなことでなにが変わるわけでもねえだろ!」
「ナニは変わる!」
ええ……と言うだけでアスキンは戸惑うままに、マクギリスは自分の領地にあるお店に予約を取りつけてしまった。
「さあ、行こう人間界のテクニックは素晴らしいのだと、君は知ることになるだろう」
「お、おう」
アスキンは押しに弱かった。
◇◆◇
アスキン・ナックルヴァールは童貞である。
官能小説の主人公やエロゲの主人公でもないのに、経験値ゼロの
「おめでとう。アスキン、君は童貞から素人童貞に進化できたな!」
「うるさいよ! うるさいよ!」
店から出て二人はカフェにいた。二人の声が周囲に伝わらないように魔法をかけてある。
「それでアスキン、どうだったかな?」
「……正直、あんなところに来るのは拒否感のほうが強かったが、なんつーか出すもん出したら、少しスッキリしたよ」
「なら良かった。まぁ、お金が出来れば、また行けばいいだろう。だけど気を付けるんだ。彼女らはいつ居なくなるか分からないからな」
「……え?」
「彼女たちは
「そうなの……?」
「まあ、お店はあの一軒だけではないし、冥界の領地にも妓楼はあるから、機会があればそちらへ行ってみるといい。ただ、彼女たちもそれでも年季が空けたり、身請けしたいって言う客が現れたりするかもしれないからいつまでもいるわけじゃないぞ」
マクギリスの言葉をアスキンは黙って聞きながら考え込んでいる。その表情は真剣そのものだ。
「まあ、身請けするにしても、結婚するにしても甲斐性は必要だな」
「甲斐性……金か!」
「うちの店では金だけでは身請けさせてくれないんだよな。人間界のほうだって金があっても身元がはっきりしていない奴は怪しまれてお付き合いするのも難しいだろう」
「う、うぅ……」
苦悩するアスキンの様子にマクギリスは思惑通りに進んだと内心ほくそ笑む。アスキンはまたお世話になりたいと願うくらいの堪能できたらしい。そして身請けという制度にも強い関心を持っているようだった。
「……あの、お金貸してくれません?」
「だめ!」
殊勝な態度でお願いするアスキンに、まるで子供のおねがりを断る大人のような口調でマクギリスは答えた。
「私は生活を面倒みるとは言ったが、そちら方面の事情までは世話できないね。第一にして、私の客分であったとしても君はどうやって身分を保証するんだ? 金があるからと言っても身元が明らかでない者など相手にされるわけがないだろう」
「そ、それは……」
アスキンは言葉に詰まった。店で楽しむだけならば金があればいいが、身請けする等それ以上を求めるならば、金だけではいけない。彼は葛藤するが答えが出せず思考が空回りするばかりである。
そこでマクギリスは助け船を出した。
「しかしだ、君が己の価値を示すことができれば、話は変わって来る。どうせなら悪魔へ転生してみないか? 私が信頼する悪魔の眷属候補として紹介してもいい。上級悪魔の眷属なら、身元も問題なくなるぞ」
マクギリスの様子はまるで禁断の果実を食べることを唆す蛇のようだった。アスキンの回答は明確だった。
「就活のお世話になります!」
マクギリスの婚約者。ラティア・アスタロトが
そして冥界の子供たちに「致命的」が口癖として流行ることになるのは、一年後のことである。
アスキンはラティアの眷属になりました。彼女の眷属は騎士しか判明してないし、自由に設定ができるなと思いましてアスキンを彼女の眷属にさせました。
悪魔の駒にあまり関心がなかったから現在は眷属がほとんどいない設定です。
織姫と秋をしれっとハーレム入り。ですがエロ以外だとあまり出番がないかもしれません。友子としのぶもそうですがヒーラーが充実してきました。