※この作品はR-18です。

聖槍に選ばれたマクギリスはハーレム王になるそうです   作:生死郎

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あなたの友人の魂のやすらぎのためにその願い受けよう

 マクギリスは奈瀬(なせ)歌織(かおり)をホテルの前まで送ってから、眷属の胡蝶(こちょう)しのぶを召喚した。場所は地方都市、夜の公園である。待ち合わせ場所に利用される休憩所にマクギリスとしのぶはベンチに腰掛ける。真夜中なのもあって公園の利用者は彼らだけだった。

 

 歌織には僧侶(ビショップ)のオフェリア・ファルムソローネの使い魔をやって見張らせている。念のため、依頼に見せかけて他家あるいは、他勢力から遣わされて、マクギリスやレラジェ家に接触するかもしれないという用心のためだった。

 

「普通の依頼が来たからと警戒するというのも、何だか変な話ですね」

「仕方がないじゃないか。こういう人助けやおつかいの依頼が、厄介な魔物退治や冒険に発展していくのだろう」

 

 マクギリスはしのぶに笑ってみせる。

 

「君だって、おつかい依頼かと思って他の眷属たちと請けてみれば、海外にダイヤの買い付けに行って現地のゲリラとダイヤの奪い合いをして、最後はゲリラを全滅させて彼らのケシ畑焼いて帰ってきたじゃないか」

「そ、そういえば」

 

 しのぶは柔和に笑いながらも目をマクギリスに合わせない。夜の公園の噴水にとても興味があるようだった。

 

「スカサハさんがとても治安が悪い国へ行ったときは、不埒な事を考えていた一六人の腕をへし折って、強盗を一五人半殺しにして、警察署に投げ込んでいましたね!」

「スカサハの仏心にみんな驚いていたな」

 

 露骨な話題の転換だったが、マクギリスはそれに乗った。ばつが悪そうな彼女へ配慮したとも言える。

 

「歌織さんの部屋にも、探しているご友人の部屋にも特に不審と思われるところはなかったそうです」

 

 しのぶは眷属たちからの報告をマクギリスに共有する。依頼を受けてから一時間もしないうちの迅速な対応だった。

 

「歌織さんの部屋にも死体を隠せそうなスペースや大型冷蔵庫もなかったそうですよ」

「……うん、なんか怖い想像している眷属がうちにいたようだね」

「その報告をしてきたのはアルクェイドさんです」

「そうか……まあ、慎重に、思い込みもなく調べるのも大切だな、うん」

「私たち、人探しの経験はありませんからね、地道に聞き込みとかをするしかないのでしょう」

「ジャンヌは聞き込み得意そうだな」

「そうですね、聞き込みは体力が必要ですから、その……体力自慢のジャンヌさんは得意そうです」

「───」

 

 マクギリスはジャンヌの人柄が相手の心を開きやすいと思ったから得意そうだと言ったのだが、しのぶには異なる受け取られ方をされてしまった。

 

 しかし、しのぶの見解にはなるほどとマクギリスも納得してしまうものがあったので、誤解を解く必要があるかなと暫し考えた。

 

 だが答えが出る前に事態の変化が起きたのだった。

 歌織が不審な男たちに襲われたという知らせを、マクギリスが受けたからだった。

 

 

 

 襲撃者はマクギリスが騎士のしのぶと源(みなもとの)頼光(らいこう)の騎士二人に他眷属数名を引き連れて瞬く間に鎮圧して歌織を保護することができた。襲撃者はあくまでも非力な一般人を狙う目的であり、上級悪魔たちへの対抗策などありはしなかった。

 

 歌織を拉致しようとしていたようだが、頼光が大太刀を振るいミニバンを両断してしまい走行不可能となっていた。襲撃者たちも気絶して縛られている。

 襲撃者たちとは離れたところに歌織を座らせた。

 

「早めに気づけて本当によかった。怪我もないみたいだな」

「は、はい」

 

 恐怖で血の気が失せた顔の歌織は返事をするものの、まだ怯えて震えている。

 

「怖いのも無理はない。私の魔法があれば心配しないで大丈夫だ。落ち着けるよう魔法を使うから」

「本当ですか?」

 

 マクギリスがパチンと指を鳴らせば周囲がキラキラと光る。魔力光の千変万化の輝きは星屑にもダイヤモンドダストにも見えた。

 これはただ魔力光を放つだけで魔法でもない、魔力放出の一種に過ぎない。

 悪魔や魔法使いなどからすればこれがただのペテンだとわかるのだが、歌織のような魔法を見たこともなく知らない人間には、それが神秘の現象にでも見えた。

 

 周囲が星屑のように光が瞬き、歌織の目が奪われる。小さく「わぁ……」と感嘆の吐息を漏らしていた。

 

「魔法は初めて見ました……」

 

 うっとりした声音は、魔法によるインパクトで恐怖を忘れることができたようだった。

 呆けたように魔力光を見つめる歌織に、マクギリスは彼女へ探査用の魔法を使って状態を調べる。あとでしのぶにも診てもらおうと考える。

 

「ちなみに彼らとの面識は?」

「ありません! 知りません!」

「そうだよな……」

「なんで、私が狙われたのよ」

 

 歌織は昏倒した襲撃者が持っていた大振りのナイフが記憶に焼き付いていた。

 

「私は……死ななければ、ならなかったの?」

「それは違う! 死ななければならない理由など奈辺にもありはしない。奴らから目的をちゃんと聞き出すから。君は先にホテルに戻っていてくれ。眷属に送らせるから」

「ありがとう。……あいつら、話しますか?」

「まあ、頼んでみるよ」

 

 マクギリスが捕らえてある襲撃者のもとへ行こうしていると、頼光たちもマクギリスのもとへやって来た。

 

「マスター、ちょうどよかった」

「奴らは口を割ったか?」

 

 マクギリスの声音は歌織と話していたような朗らかさが消え、冷徹な響きだった。

 

「いいえ、まだ口を割りません。ですので彼らに抱えさせる石を用意させました」

「何枚で話すかというかのトトカルチョも締め切りました。準備はばっちりなので始めましょう」

 

 隣に佇むミニーニャの報告に頼光は悲しそうにしながら嘆息をして、賭博に興じるなど……と呟いている。

 

「やんちゃなのも……元気がないよりはよろしいのですが、身包み剥がされるような遊び方はいけませんよ」

「わかっているって。酒や賭博で失敗したことはないだろう。それでミニーニャ、オッズはどうなっているんだ?」

「一枚目が一.六倍、二枚目が三.二倍、四枚目が五.三倍。五枚目からは一〇〇倍以上ですぅ」

 

 自供を促すこともなく、ただ話さない意志を確認しただけですぐに拷問を行おうとすることに疑問を持たないマクギリスたちに、アルクェイドは悪魔の苛烈さに驚いたような呆れたような思いをした。

 

「いや……これは悪魔だからではなく、レラジェ眷属での気風、なのだろう」

 

 同じ悪魔として、ティア・ハリベルは悪魔総体への印象として認識されたくないと思い、苦々しげにアルクェイドへ抗弁する。残念ことに彼女の努力は報われる可能性は低そうだった。

 

 二〇分後、襲撃者たちは自分たちが知りえる限り、マクギリスたちの望む情報を吐き出した。

 

「まあまあ、淫祠邪教の類が下手人だったとは」

「異教徒狩りって、気持ち悪いですねぇ~」

 

 頼光やミニーニャの感想が、襲撃者たちから得た情報への所感である。

 

 彼らは新興宗教団体に所属する者たちで、教団に敵対、不利となる人物、組織に対しては暗殺など秘密裏な武力的行動を執る信奉者たちだった。

 

 そして歌織を狙う理由は、彼女が失踪した友人から譲り受けた指輪にあった。

 

 指輪の紋様は彼らの教団にシンボルであり、指輪の回収と歌織の暗殺を狙っていた。

 歌織の友人は不運にも、信奉者たちが「異教徒狩り」と称する犯行現場の近くに居合わせてしまった。その際、偶然にも彼らが身に着けていた紋様を見かけてしまったらしい。

 証拠隠滅のために歌織の友人を拉致して殺害したことを信奉者たちから自白させた。

 

「そんな……酷い!」

「っ、しっかり」

 

 マクギリスから伝えられた残酷な真実は、氷の針となって歌織へ植え込まれた。歌織は自分の周囲の空気だけが、早春の季節にまで時を逆行したように感じた。

 

 歌織は脚の力が抜けてホテルの床に倒れ込みそうになるところを、マクギリスに支えられて椅子に座らせた。

 

「ごめんなさい、報告はまだ途中だったわね。続けてちょうだい」

「指輪と同じ紋様は奴らが身に着けていた装身具からも確認できた。あの信奉者たちの言っていることに間違いはないだろう」

「───」

 

 顔色の悪い歌織は沈黙をしている。残酷な知らせに暫くの間言葉を失ってしまった。マクギリスはそんな歌織の様子を窺いながら言葉を続ける。

 

「君の友人が自分たちのシンボルを模した指輪を作っていて、その指輪を君に渡していることも訊き出したんだ。そして歌織にも何か不都合なことを伝えられていないかと疑った」

「……許せない」

 

 歌織は悲痛そうな表情を浮かべていた。彼女は俯き、拳を握りしめる。教団や信奉者たちに対して怒りを感じていた。マクギリスはそんな彼女の手の上に自身の手を重ねた。

 暫くして、歌織は顔を上げる。

 

「調査して頂いてありがとうございます。まさか、こんなにも早く真相を知れるとは思いませんでした」

「それは私にも意外だったが、あの信奉者たちの襲撃があったから真相を突き止めることができた」

「これは、対価としての報酬です」

 

 そう言って、歌織はマクギリスの顔に手を添えてぎこちなくキスをする。いわゆるライト・キスというもので、歌織が不慣れなこともあり彼女の歯がマクギリスに当たりそうになった。

 

「……たしかに、報酬は受け取ったよ」

 

 ぎこちないキスだったが、唇の柔らかさと美女の照れている様子は充分に、マクギリスの気分を高揚させるものだった。

 

「そして、追加の依頼をしてもいいですか」

 

 夕陽のように顔を赤くして、羞恥を誤魔化しながら歌織は訴えてきた。

 

「訊こうか」

 

 歌織は眼に涙をためながら懇願するように、マクギリスを見た。その眼の中には、哀憐を請う弱さと共に、犯し難い決心の色が、浮んでいる。

 

「あなたにお願いしたいことはただ一つ。もう、私が言わなくてもわかっているでしょうけど──」

 

 黄金の絹糸のような髪を、白い指ですきあげつつ、マクギリスはうなずいた。

 

「その恐ろしい組織を滅ぼして、友人の無念を晴らして欲しいのです」

 

 歌織の端麗な唇のあいだから、怒気の塊を吐き出した。大きくて黒い虹彩に囲まれた瞳が炎を封じ込めているかのような輝きを発した。

 

「報復か、それで君は何を差し出す? 多くの者に流血を強いるその願いのために何を差し出すつもりだい」

「私のすべてを」

 

 間髪入れない返答に、マクギリスは虚を突かれてしまった。

 

「すべてか、友の報復のために全てを差し出すか。藺相如と廉頗のような仲だったんだね」

「刎頸の交わりはしてなかったけれどね。家族は不仲な父や姉しかいない私には、血の繋がりこそないけれどそれに勝るとも劣らない友人だったの」

 

 歌織の瞳をマクギリスは見つめた。その瞳の内にある決心の輝きを美しいと思った。マクギリスは計算されたものではない優美さでうなずいて承知した。

 

「あなたの友人の魂のやすらぎのためにその願い受けよう」

 

 マクギリスは微笑を浮かべながら、そう言った。

 

「ありがとう。あなたに全てをお渡しします。私が持てるもの全てを。どうか、よろしくお願いします」

 

 歌織はそう言うと、マクギリスの唇に唇を重ねた。やがて自らも歌織を抱きしめ、その柔らかな唇をむさぼった。

 

「ああ……」

 

 唇を離すと歌織は頰を染めて微笑した。その瞳には深い感謝の念が満ちている。

 

「では、これからの行動について相談しよう」

 

 マクギリスが言うと、歌織はうなずいた。二人は、熱い感情に満たされた視線を絡め合った。




歌織はオリキャラですが今後は彼女のような眷属ではない、オリキャラや版権キャラのコミュも書いていきたいと思います。非戦闘要員や日常・アイドル系の版権キャラを出していきたいです。
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