※この作品はR-18です。

聖槍に選ばれたマクギリスはハーレム王になるそうです   作:生死郎

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オリジナル設定が盛りだくさんです。


逃した魚は大きい

 レラジェ侯爵家当主マクギリス・レラジェの女王(クイーン)スカサハは、戦車(ルーク)ジャンヌ・ダルクに主がどこにいるのかと尋ねた。

 

「まだ日本にある別邸から帰っていないようです」

 

 別邸とは領地に置いている愛妾たちを住まわせているマンションのことである。

 

「そうか。あの新たな愛妾のところか」

 

 つまらんな、と、スカサハのつぶやきは端麗な唇の奥に封じこめた。女性関係が極彩色で彩られているマクギリスなので夜となれば、複数の女性のベッドを狭くする夜課を怠らない。上級悪魔、侯爵家当主、戦争の英雄と彼を彩るステータスは多い。彼の積極性や手腕次第で、選り取り見取りである。スカサハにとっては現状、マクギリスを独り占めされているようで面白くはない。とは言っても、気力体力絶倫のマクギリスの相手を一人だけでするというのも難しいのだが。

 

 難しい顔をしていたスカサハは、ジャンヌの周囲にある聖剣を見て気づいた。

 

「そういえば今日は聖剣の数が増えているな」

「私の聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)は魔力が続けば作れる聖剣の数も増えますからね。日々鍛えてきた成果でしょう」

 

 ジャンヌは日課である聖剣の創造を行っていた。彼女の周囲に聖剣が現れるがどれも内包する聖なるオーラがかなり稀薄だった。それをメイドのソリュシャン・イプシロンが拾い上げて回収。それを家臣が受け取って退室していく。その工程を繰り返していた。

 

「聖剣の聖なるオーラを消失させて鉄資源として活用するとは、マスターの発想には驚かされます」

 

 ジャンヌは屈託なく笑っているが、スカサハは主がえげつないことを主は考えていると思う。

 

 ジャンヌの魔力の総量が増えれば作れる聖剣の数が増える。そしてそれを資源として人間界で作った架空企業を介して流通させているのだから、それは国家の鉄の総量を水増ししているということだ。

 

 神器所有者であるジャンヌの魔力がどれだけ増えるか、どれ位の効率で作れるのか、その効率性を追求すれば影響力は国家レベルになりかねない。

 

 魔力から作り出すのだから国家にとって大事な鉄を無から有を作っているともいえる。戦うためだけにあるような神器で、財を生み出すジャンヌ製鉄所にするマクギリスの発想力にはスカサハも感服している。

 

「仕方ない、あいつには連絡を入れるか」

「何かあったのですか?」

「急遽、食客として世話になりたいという面談の依頼があったんだ。そのための予定調整の話だ。それとこの前教団から回収したものでいくつか確認してもらいたいと思っている」

「そうでしたか。……私が保護した彼女たちは快復に向かっているようですよ」

 

 ジャンヌは教団内部を捜索していたときに、総大司教の隠し部屋に監禁されていた女性たちを保護していた。裸形で首輪と鎖で繋がれて虜囚となっていた彼女らは心が折れていて突然現れたジャンヌにもほとんど反応がなかった。

 

「あの人間たちのなかでご主人様のお眼鏡にかなった者がいれば、愛玩物として召し上げることになりますから。私たちも丁重に保護して、教育する準備をしております」

「──」

 

 ひともなげに話すソリュシャンをジャンヌは何か言いたげに見ている。

 元来、ソリュシャンは人類にとって敵性種である捕食型スライムだ。非抹殺対象に対しては完璧に演技ができるし、基本的に普段は感情を表に出さないので、分かりにくいが彼女は決して人類にとっての味方ではない。

 

「ああ、ご主人様に見初められてしまうと思うと……」

「おいおい、殺気が漏れているぞ」

「あら、大変失礼いたしました。スカサハ様」

 

 はしたないところを見せてしまった、というようにソリュシャンは赤面して照れ隠しに微笑んだ。

 

 完璧にメイドとしてマクギリスに仕えるソリュシャン・イプシロン。だが彼女には嫉妬深いという難儀なところがあった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 朝勃ちというものを性的興奮だと勘違いした歌織によって、マクギリスは寝起き早々に交合を果たした。

 二人で身体を洗い合い、その間にメイドに清掃された部屋で二人は朝食を作って食べた。彼女は芸能活動を休業中、大学も休学しているので自習を行うことにしていた。

 

 冥界へ帰還したマクギリスはスカサハからの連絡を受けた通り、訪問者と会うことになった。

 

「アジュカ・ベルゼブブの眷属モードレッド卿の副将として知られたこの私、妖精騎士タムリンに盗賊退治だろうが魔獣討伐だろうとお任せください!」

 

 そう言って端整な顔立ちの騎士は勢い込んでマクギリスと面談に臨んだ。

 妖精騎士タムリン。もとは人間でありがら妖精騎士へと任じられた者として冥界でも有名な騎士だった。

 

「モードレッドって、あのアーサー王伝説の?」

「そうか織姫は知らなかったか。女王(クイーン)の鬼女クレオパトラ、戦車(ルーク)の風翔龍クシャルダオラと恐暴竜イビルジョー。そして赤雷の騎士サー・モードレッドは魔王ベルゼブブの眷属として特にその実力も認められている有名な眷属だ」

「ああ、ベルゼブブ様の騎士(ナイト)はブリテンを滅ぼした叛逆の騎士として名高いサー・モードレッド卿なんだ! 格好良いよな」

「あくまでも、英霊本人ではなく再現体のホムンクルスですが、性能面は本人に限りなく近いらしいですよ。記憶の継承もされているかはわかりません」

「ホムンクルス、ですか……」

 

 スカサハとマクギリスの話をオフェリアは補足する。

 

話を訊きながら、ミニーニャが神妙な様子で呟いた。

 

「本人(オリジナル)ではなくても、マクギリス様はモードレッド卿が好きなのですか?」

 

ミニーニャの問いに、マクギリスは心浮き立つ様子で微笑んでいる。

 

「いつかお会いしたいと思っているんだ。お会いできたらサインが欲しい。記憶の継承もされているのであればアーサー王伝説裏話とかあれば是非聞かせて欲しい」

「意外ですね、閣下はモードレッド卿のファンだったのですか?」

 

 タムリンがそうにたずねると、うん、と、素直にマクギリスは頷いた。

 

「呪われた出生と、その境遇から独学で円卓の騎士にまで上り詰めた向上心とハングリー精神。なにより偉大なるアーサー王の伝説に終焉を齎す存在が、偉大でないはずがないだろう」

「ええ、まさにモードレッド卿は素晴らしい騎士です。ベルゼブブ様の騎士となられたあの方も、その実力、才幹を疑う者などいないでしょう。あの方のもとで働かせて頂いて光栄でした」

 

 アジュカ・ベルゼブブは近衛隊と呼ばれる私設武装集団を作り、自分や一族の身辺警護を行っている。

 幹部クラスには彼の眷属も数名入っていて、近衛隊の総長はモードレッドだった。

 

「そんな騎士のところにいた方がどうして当家の食客に?」

 

 スカサハはマクギリスたちが気にしていた疑問をタムリンへ投げかけた。

 

「モードレッド卿は私よりも後輩にあたるアイギスというベルゼブブ様が騎士のエルザ・スカート様にばかり、別働隊の指揮は任せてついには新設した部隊の隊長に任命された! それなのに古株である私には副将や後方支援をさせてばかりで一度もナンバーワンの立場にはして頂けなかった」

 

 タムリンは歯ぎしりしたい思いだった。その胸の内を語った。余程悔しかったのか、淡紅色の唇を噛みしめている。

 

「なるほど、だからやめた、と」

 

 タムリンはアジュカに仕えていても転生悪魔ではないので例え出奔しても、はぐれ悪魔にはならない。だが、彼なりに筋を通すつもりだったのかモードレッドには辞表を渡して去っていったのである。

 

 マクギリスはしばらく考えると、タムリンに一つの提案をした。

 

「話はわかった。であるならば、私としては君の一軍の将としての実力を見せてもらいたい。ちょうど五〇〇人の手下を要する盗賊がこの領地とその隣接する地帯に出没している。同数の五〇〇人の兵を貸し出すから、討伐してもらえないか?」

「お任せください! 鼠賊(そぞく)の相手など兵は二〇〇人もいれば充分です。さっそく鼠賊どもを一掃してみせましょう」

 

 タムリンが退室したあと、マクギリスはスカサハへ指示を出す。

 

「スカサハ、すぐにタムリンに貸すのとは別に私の精鋭部隊を集めてくれ」

「ああ、わかった」

「タムリンさんに任せるのではないのですか?」

 

 スカサハは気にした様子もなく、素直に指示に従い兵を用意するため彼女も退室していった。織姫は不思議そうにマクギリスに問いかけた。

 

「人には向き不向きというものがある。タムリンはなるほど優秀な騎士なのだろう。あのモードレッド卿が無能者を重用するはずがないからね。逆に言えばモードレッド卿が一部隊を率いる長とは頑なにしなかったということは、それ相応の理由があるはずなんだ。彼に隊長を任せられない理由がね」

 

 

 ◇◆◇

 

 

 果たしてマクギリスの読み通りの展開となった。兵を率いて意気揚々と攻め込んだタムリンであったが、副将であったときは大将の下で存分に発揮されていた知略や戦術的思考は自分が総大将になるとまるで発揮できず、盗賊相手には凡庸な指揮官以下の戦いしかできなかった。

 

 そして盗賊の策に陥れられてあわや全滅というところで……後から追ってきていたマクギリス率いる眷属と精鋭部隊が助けにきた。

 

「やはりこういう事態になったか。タムリンたちを救出してついでに盗賊どもを捕縛するぞ。抵抗するようなら討ち取っても構わん。私に続け!」

 

 盗賊の頭目は聖槍を携えて前線を駆けるマクギリスの威風に瞠目して、あっ──と口の中で叫んだきり、驚愕にあえぐ。

 

「あの目に映すだけで全身が燃え尽きてしまいそうになるほどの聖なるオーラを帯びた槍……まさかレラジェ侯マクギリス様では!?」

 

 盗賊の頭目はマクギリスを見ると部下たちにも戦うことをやめさせて平伏してしまった。そうして武器を捨てた頭目がマクギリスに近づいてきた。眷属や兵たちは警戒しているが彼が内包する魔力の多さからしても、マクギリスを害することは無理だと判断していても警戒は怠らなかった。

 

「やはりレラジェ侯爵様だ! このたびはレラジェ侯爵様の領地だと知らずに無礼なことをして申し訳ありません!この通り降伏いたしますので、私は首を斬るなり、役所に送るなり好きにしてください。しかし部下だけは見逃していただけないでしょうか?」

 

意外にも丁寧で礼節を心得ていそうな頭目にマクギリスは興味を抱いた。

 

「なにやらただの盗賊というわけではなさそうだな。何か事情があるのか? 話してみろ」

「私の生まれた村は貧しく、村長も残忍な気性でして……私達は朝から晩まで奴隷よりも酷い扱いで働かされました。役所に訴えても村長は官吏に賄賂を掴ませてグル。村長が領主の親族ということもあって話すら聞いてくれません。逆に私達を反乱分子であると取り締まる始末。さらには苦しめられている村民同士でも密告を推奨すること互いに監視させていました。……もう生きてゆくには領地を逃げ出して盗賊になるしかなかったのです」

「何と酷い奴らだ! 元は魔王に仕える騎士としてそんな村長も役人も許せない!」

 

 頭目の話を訊いたタムリンは頬を激情で赤らめ、激怒していた。その様子は汚職に手を染めて圧制を強いる者たちへ心底怒っているのだとマクギリスはわかり、タムリンは指揮官としては不合格ではあるが、性根のほうはくさっていないのだと知った。

 

「事情はわかった。……話は変わるが我が領地は急激に発展したせいで人手不足が深刻でね、盗賊をやれるくらい体力のある者がいれば非常に助かるのだが……どうだろう? 盗賊などやめて我が領地に移住するというのはどうだ? 今回の戦闘では幸い死者は出ていないからどうとでも取り繕える」

「ほ、本当ですか!? ありがとうございます、レラジェ侯爵様!」

 

 盗賊の頭目は感激して泣きながらマクギリスに感謝して、何度も頭を下げた。

 事後処理を部下に任せてマクギリスはタムリンも連れて屋敷へと帰還した。メイドにコーヒーを用意させて、食客希望の妖精騎士に話しかける。

 

「さてタムリン、盗賊の討伐依頼は特殊な形ではあったが無事に終わって良かったと言いたいところだが、私の言いたいことは分かるね」

「────っ!」

 

 タムリンは蒼白な顔で呻いた。さっき、盗賊退治で盗賊たちに劣勢を強いられてあわや壊滅しかけたことが、頭に蘇らせたのだ。

 

「君は戦術的構想力が優れていても人を統べる統率力は平均以下だ。モードレッド卿は君以上に君の長所も欠点も理解していたのだろう。だからこそ副将や後方支援を任せても、隊長職を任せなかった」

「それでは……モードレッド卿は私を信頼していなかったわけではなくて……」

「君のことを思ってなのか、ただの適材適所な人事かは分からないが信頼していたのは確かだろう。そもそも信頼しない相手を副将に任ずるはずがないだろう」

「なんということだ……私は、間違っていた……」

 

 と、タムリンは喘ぎながらいった。

 

「どうする? 君は食客……つまりここを出るも残るも君の自由だ。自在にし賜え」

「私は……戻ります! 軍に復帰したいのではありません、私を信頼してくれた騎士に謝らなければ私は私を許せない!」

「そうか。しかしモードレッド卿の下の戻るのも費用はかかるだろう。短い間だったとはいえ客人の旅立ちだ。これは私の気持ちだ」

 

 そう言ってマクギリスは旅費とするには余りある金をタムリンに渡した。

 

「手厚くご支援いただき、重ね重ねありがとうございます。このタムリン、決してこの恩義を忘れはしません」

 

 タムリンが去ったあと、オフェリアが言った。

 

「良かったのですか、マクギリス。逃した魚は大きいですよ」

「逃がしたわけじゃないよ、オフェリア。まあ、逃がした形ではあるが、もっと大切なものはちゃんと掴めたさ」

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 魔王ベルゼブブの領地に再び足を運びタムリンはモードレッドに面会した。戦場を駆けるとき身に着ける紅と白銀の重厚な鎧と兜も今は外しており、二〇歳にも満たない美しい金髪の少女の姿でいた。

 

「モ、モードレッド卿! 私は……」

「おい、タムリン! 長期休暇から帰って来たならちょうどいい、新兵どもを調練してこい!血のションベン出るまでしごいてやれ」

「きゅ、休暇? 私はモードレッド卿に辞職願を提出しましたが……」

「あぁん? なんのことか分からんな。俺がマスターに渡したのはお前の溜まった有給休暇を消化するための休暇届だ。辞職願なんざ、知らねぇな。休暇は終わりだったな。じゃあ、とっとと働いてもらうぞ」

 

 上官の義侠心に、タムリンは涙を流し、深々と頭を下げた。涙を流すが礼は言わなかった。恩に報いるには言葉を尽くすのではなく、行動で示す。それが騎士としての節義だったからだ。

 

「聖槍の担い手マクギリスか。英雄などという、たいそうなあだ名が不相応なハリボテ野郎でもなさそうだな」

 

 モードレッドは当然ながらタムリンがマクギリスのもとへ行っていたことは知っている。だからこそ、彼女は縁があればいつかマクギリスとは会ってみたいと考えていた。




アジュカ・ベルゼブブ
現役魔王にして現悪魔世界における『超越者』の一人。「悪魔の駒」の開発者らしく悪魔世界の外にある優秀な人材、
興味深い対象を眷属にしたがる。サーゼクスと同じく神器所有者が眷属にいないのは外道爺対策である。

クレオパトラ
出典:女神転生
駒:女王
古代プトレマイオス朝エジプト王国のファラオであるクレオパトラ7世の化身たる鬼女。
エジプト神族の総代だったが追放されて神霊から鬼女へ零落する。
アジュカとの戦いで敗れた彼女は自害しようとするが、アジュカに止められてそのまま眷属になった。ちなみに現在はアジュカの第3夫人である。
ファイナルヌードの使用はレーティングゲームでも大人気な名場面。


クシャルダオラ
出典:モンハン
駒:戦車
龍王に匹敵すると讃えられるほどの元ドラゴンの転生悪魔。風を操る力があり、嵐や竜巻を起こす。
アジュカの乗り物代わりになったり、雑魚散らしを任されたりすることが多い。


イビルジョー
出典:モンハン
駒:戦車
極めて危険な元邪竜の転生悪魔。凶暴性と貪欲な食欲で暴れるので先発で投入して大暴れすることが得意。


モードレッド
出典:Fate
駒:騎士
アーサー王伝説における円卓の騎士の1人にして、不義の息子『モードレッド』のクローン。
メフィストフェレスが理事を務める灰色の魔術師に所属する魔術師が、英霊モードレッドの魂の情報をもとに作り出した。
鎧や兜はオリジナルのモードレッドのものを模したレプリカだが、王剣『クラレント』は本物。


タムリン
出典:女神転生
魔王ベルゼブブに仕える武官。本作のクーフーリンはFateのほうなので顔はクーフーリンと似ていない。

ウルトラセブン21Xさんに応募して頂きましたモードレッドを、一部設定を変えて登場させて頂きました。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=309848&uid=283656
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