※この作品はR-18です。

聖槍に選ばれたマクギリスはハーレム王になるそうです   作:生死郎

67 / 94
さあ、宴だ

 冥界上空、揺れる足場に密猟組合の凶手が苛立ち、失神呪文を足元へ放つ。

 

「おい!」

「は、はいっ!」

 

 凶手の鋭い声に怯えたように密猟組合の狩人が怯えた声を上げる。

 

「しっかり縛っていろ。起きるだろうが」

「わ、悪い……。だ、だけどようぅ、こんな大物を縛り上げるなんて俺には荷の重い仕事で……」

「ちっ、ビビリが」

 

 凶手は今回初めて仕事をともにする狩人の怯懦に苛立った。獲物を捕らえるために体の動きを封じる拘束魔法を使えるため狩人を呼んだのだが、何とも情けないと凶手は嘆いた。

 

 密猟組合とは世界中に数いる密猟者グループが集まってできたギルドだ。仕事に際してはグループ内の連絡網を用いて密猟者仲間を募集し、集まった密猟者グループと共同して大きな組織を作り、密猟行為を行う。

 巨大化した集団を悪魔が潰そうしても、状況が悪くなると分裂してハエのごとく逃げ回るため、悪魔も決定的な打撃を与えられないでいる。そのためマクギリスが以前密猟者たちを倒しても密猟組合を壊滅させることが出来なかった。

 そのためマクギリスは密猟組合討伐を蠅叩きと評していた。

 

「このグラビモスもデモンストレーションに使うんだ。しっかりしろ」

 

 凶手は硬い甲殻に覆われた鎧竜の上に狩人とともに乗って、冥界の上空を飛んでいた。目指すのは鎧竜を解き放つ予定の地域だ。

 

「かつて学者や魔法使いどもが完全なる支配が不可能と断定した魔物ども。その成功体の成果は極めて上々だ。命令通り指定した集落だけを滅ぼしてそこ以外に余計な破壊はせずに縄張りへ戻っていった」

「ラージャンもグラビモスも他の生物に従順になることはないだろう。まじない師たちはどうやって制御しているんだ?」

「やっていることは簡単だ。人間に従順な生物と魂を入れ替えてしまえばいいんだ。絶対遵守の契約(ギアス)をかけた使い魔と魂を交換すれば、従順な怪物どもの出来上がりだ」

 

 制作に関わっていた凶手は狩人の疑問に答える。使い魔を確保したのも凶手本人だった。

 知性の高い使い魔を利用すれば例えどんな実験であろうと、主人と命じれば、必ずやってくれる存在となっていた。

 

「人に従順なのだったらこいつに大人しくするよう命令すればいいんじゃないのか?」

「俺にこいつへの命令する権限はない。だから解き放てば予め仕込まれている命令通りに活動するだけだ。お前などあっという間に殺されるぞ」

 

 自分の悪趣味な冗句に怯える狩人を見て、凶手はやや苛立ちが治まった。強い魔力の気配を感じて凶手は

 

「お……あれは」

 

 命豊かな湿原地帯にいるラージャンとその付近にいる悪魔たちを凶手は見つけた。

 

「これは面白れぇ」

 

 凶手は三日月のような笑みを浮かべた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 マクギリスが眷属たちとともに魔王が手配した魔方陣を利用して転移した先には、美しい少女と若い男性が待ち受けていた。

 

「ごきげんよう。お久しぶりですね、マクギリスさん」

「ああ、久しぶりだな。ラティア」

 

 親しげながら、それでいてどこか冷たさを感じさせる声音の少女は、貴族的なドレスを着ている。

 

 毛先だけが青みがかった長い金髪、凍てついた星のような鋭利な眼差し、きゅっとくびれたウエスト、豊かに盛り上がっていつも大きく起伏しているような胸。冷厳な雰囲気のオーラの持ち主の名前は、ラティア・アスタロト。

 

 魔王アジュカ・ベルゼブブの姪にあたるアスタロト家分家の娘で、マクギリスの婚約者である。母親が大公アガレス家出身と家格も高いため分家の者といってもその地位は高く、アスタロト家の継承順位としては、次期当主ディオドラに次ぐ。ラティアは現在、冥界首都リリスの名門学校に通う学生だった。

 

 彼女の後に続く白い滅却師(クインシー)の衣装を着ているラテン系の若い男が、マクギリスがラティアへ紹介して彼女の女王(クイーン)となったアスキン・ナックルヴァールだ。

 

「久しぶりだな、大将」

「元気にやっているようだな、アスキン」

 

 アスキンは現状、ラティア唯一の眷属であるアジュカは彼女の護衛も兼ねていた。

 上級悪魔の王(キング)はどこかに赴くときに女王(クイーン)か騎士(ナイト)のどちらか、あるいは両方をつき従えていることが慣習になっている。

 

「今日はわたくしの協力して頂きありがとうございます。正直、わたくしとアスキンだけでは不安でした」

「構わないよ。ラージャンが出没するという場所は聴いている。早速行くとしようか」

 

 マクギリスたちはアスタロト家の寄子の領地にある原生林へ向かった。開墾されていない土地だが水を豊富にたたえた湿原、その水源がある山肌に生えた鬱蒼とした森があり、魔物が生息できる環境揃っていた。

 

 超攻撃的生物と冥界でも恐れられる魔獣ラージャンの暴走を制して、できれば眷属にしたいと望むラティアだが生きたまま捕らえるということができる余裕がなければ全力を持って滅ぼすことになる。

 

「麒麟の角を食べる……? なぜ食べるのですか」

「ラージャンには電気ウナギのように発電器官があるんだ。たがそれは休眠状態になっているから、麒麟の角を摂取することで発電器官を活性化させているらしい」

 

 眷属から疑問が出れば、マクギリスと頼光が答える。危険な魔獣で調査も進んでいるとは言い難いので、生態に詳しくないことも珍しくない。

 

「ドラゴンと同等の戦闘力を持つと言われる魔獣を欲しがるとは、魔王ベルゼブブもそうだが酔狂な趣味だ」

「酔狂と言われては返す言葉もないわね。付き合わせてしまってごめんなさい」

「気にしていない。私たちがフォローするから頑張ってくれ」

 

 ただ討伐するのではなく眷属と迎えたいと思うのであれば、ラティアが魔獣を制して自分を主と認めさせなければ無理に眷属としても、はぐれ悪魔となってしまう。

 

 悪魔の駒(イーヴィル・ピース)で眷属を作り出すときに、良識ある悪魔には交渉、取引等を行い転生させるのだが、中には本人の意思を無視して無理矢理に転生させて眷属にする悪魔もいた。

 実力で反抗を許さず従わせるか、心を折って従わせるか。王にそれらが出来なければ叛逆されて逃亡されたり、眷属に殺されたりすることになる。

 

 ラティアは自分の眷属にする以上、自分を認めさせて契約することを目的とすることにマクギリスは反対しなかった。

 

「ラティア、実戦の経験は? レーティングゲームの模擬戦闘とかでもいい」

「一応、魔法での戦い方はお父様の僧侶(ビショップ)に手ほどきを受けていますが、経験はありません。」

「学校へ通っている普通の学生だし、別段おかしくはないな。経験に乏しいからこそ私が力を貸すのだからな」

「ええ、ありがとう。頼りにしています」

 

 マクギリスとラティアが話しているときである。金の毛並みの魔獣を見かけて臨戦態勢に移ったときだ。

 

「ZIGYAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

 耳をつんざくほどの咆哮が轟いて巨大な硬い外殻に覆われた鎧竜が飛来してくる。

 

「おかしいな……いてはいけない生き物が見える気がする」

 

 兵士(ポーン)の栗花落(つゆり)カナヲは戸惑い、呟くがそれでも刀をに手を伸ばして既に抜刀している。

 

 凄まじい音圧の咆哮とともに鎧竜が口から熱線を放射した。

 

 マクギリスの僧侶(ビショップ)・井上(いのうえ)織姫(おりひめ)が盾舜六花(しゅんしゅんりっか)で攻撃を拒絶する盾となる三天結盾を展開して防ぎきった。

 

「幻覚ではなくて本物! 本物の鎧竜グラビモスだ!!」

 

 鎧の覇者を相手に女王(クイーン)のスカサハは朱槍を構える。

 

 ラティアは驚愕し、マクギリスも流石に瞠目した。

 グラビモスの咆哮に応じるように雄叫びが大気を震わせた。そちらに視線を向ければ、巨躯の魔獣がいた。

 側頭部からは悪魔の如き角が伸び、筋骨隆々の肉体は荒々しい黒毛に覆われている。その表情は修羅のごとく険しく、炯々と光る赤い瞳。超攻撃的生物、金獅子ラージャン。

 

 天災のごとき魔物とドラゴンに囲まれる事態に、マクギリスの意識は戦闘技術者としての思考にシフトして、手元には聖槍を出現させた。左右を見なくとも眷属たちも臨戦態勢に入っていたし、アスキンが既にラティアを守るために前に出ていた。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 ラージャンとグラビモスは散々暴れた後、マクギリスたちによって討滅された。彼らはその後、アスタロト家の寄子が持つ城へ帰還した。

 

 村落を襲い、土地に災いをもたらす魔獣たちは、生きた天災とも言える。本来は上級悪魔が眷属と軍を率いて長い戦いを経て倒すほどの脅威。

それを少人数で討滅したことで城下町では、領民たちが彼らを讃えて討伐祝いの祭りを行っていた。

 

 話題のマクギリスたちは、滞在するために提供された屋敷にいた。そしてマクギリスはお好み焼きを焼いていた。

 疲れ果てたラティアが「お好み焼きを食べたい」と呟いていたことを聴いていたマクギリスは、屋敷に戻って風呂に入り身を清めた後、材料を集めさせて作ることにした。

 

 眷属たちにも振る舞うことになり、そうなると人数が多いため織姫や頼光も一緒に焼くことになった。

慮外の事態だったが戦いを生き抜いたことを彼らだけで祝う、ささやかな宴だった。

 

 マクギリスはラティアとアスキンのために焼くことにした。皿に盛られたお好み焼きから立ち上る香ばしい匂いに、ラティアとアスキンは思わず顔を綻ばせる。

 

「あなたも疲れているのにわがまま言ってごめんなさい」

「気にするな。私も久しぶりに食べたかったからね。それに、普段はこうしてラティアと会って話す機会も少ないからこうして食べながら話すのは楽しい」

 

 そう言いつつ、マクギリスはホットプレートで次の一枚を焼いていた。

 

「会う機会少なくて寂しいんだったら、ボスはさっさと大将のところへ嫁入りしてもいいんじゃないか? 貴族の社会じゃ珍しいってわけでもないのだろう」

「それだとラティアには学生生活も中途半端に終わってしまうだろう。悪魔の寿命から考えれば数年の違いなど大したことがないからな」

 

 ラティアの目の前に皿を置く。

 

「さあ、宴だ。頑張ったあとの食事は最高だぞ」

 

 ラティアは取り分けられてお好み焼きを口に入れ、「美味しい」と声を上げた。

 カリッと香ばしく焼かれた表面と、ふわりと柔らかい中身。脂が乗った豚肉の柔らかな味。小麦の香ばしい味など混ざった味わいを堪能する。

 

「すっご、店で食べているみたいだ! 大将はこんなクオリティで作れるのか」

 

 アスキンも舌鼓を打ち気に入ったようだ。

 

「お好み焼き作るのが上手な知人がいて、その知人に技を教えてもらったんだ」

 

 しかし、とマクギリスは言いつつ見事なコテ捌きでお好み焼きをひっくり返した。

 

「魔獣たちに施された呪印がまさか人間のものだとはな」

 

 ラティアとアスキンの分を焼き、自分の分も食べながら先程までの戦いで得た情報をもとに考えていた。

 

「ええ、あの式の構築は紛れもなく人間による魔術でした」

 

 そう言いつつマクギリスの隣にオフェリアが座ると、彼はオフェリアに焼いたばかりのお好み焼きを切り分けて皿に盛った。次の具材はシーフードだ。

 

「あの呪印はどんな効果があるんだ?」

「獲物につける印みたいなものだと思います。つまり、印をつけて自分のものだと宣言するのです」

 

 オフェリアはソースでお好み焼に自分の名前を書いて見せた。

 

「自分の力は効き易く、他からの力は受けにくくすることができます。魔術の手法としてはよくあるものです」

 

オフェリアはプリプリとした小さなエビとイカの旨みに頷きながら、「美味しい」と感想を漏らす。

 

「呪印がもたらす術は首輪として機能して、魔獣を従えてもいるのでしょう。これで与えた命令に従わせていたのかと」

 

 オフェリアの分析の成果を訊きながら、マクギリスは自分の分に取り分けたお好み焼きを皿に盛りつける。

 

「人間が容易には入ることが叶わない冥界に、人間の魔術を施された魔獣が暴れていたということは冥界の何者かが手引きしたことになる……か」

「ただの魔獣討伐、あわよくば眷属にできないか等と考えていましたが、問題は思ったよりも深刻なようね。……これでは、また当分あなたとはお会いすることが難しくなるのでしょう」

 

 ラティアが憂いたように嘆息を吐いた。




ラティア・アスタロト:父は魔王ベルゼブブの兄弟。母はアガレス大公家出身のエリート。
1話時点で言われていたがついに登場。原作では出番が少ないからほぼオリキャラ。
眷属がアスキン以外モンハンキャラだったらアスキンのストレスが半端なさそうです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。