※この作品はR-18です。

聖槍に選ばれたマクギリスはハーレム王になるそうです   作:生死郎

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今回はジークフリートたち英雄派視点の閑話です。
時系列は前話のラージャンたちとの戦いと同じ時期です。

下記、活動報告で募集依頼をしています。
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理想は口約束で作れるようなものじゃないよ

 都内某所

 

 そこは生化学ごみ処理施設である。細菌やバクテリアで様々な廃棄物を分解する。巨大な処理タンク群。無機質な地下墓地(カタコンベ)のような空間。

 この施設の職員も知るものは少ないが、ごみ処理施設には地下室があった。打ちっ放しコンクリートの空間には人が住めるように改装されていた。

 この地下室は元々、焼却炉用ボイラーの発電室だった。施設の改装で地下室が閉鎖されたとき、図面の記載から抜け落ちた。そのため、ここは忘れ去られた場所となった。

 

 ジークフリートは所定の経路でごみ処理施設の内部を歩いている。これは魔術的な効果があり、この効力のためジークフリートは施設の職員たちに観られることがなく、また防犯システムが反応することなく、彼は目的の地下空間へ辿り着いた。

 

「久しぶりだな、ジーク」

「……随分と機嫌が良さそうだな、曹操」

 

 カウチに身を横たえていた友人───曹操は起き上がると軽く手を上げて迎えた。

 

 曹操はいつもの制服の上から漢服を羽織る着こなしとは異なるファッションで、どことなく中華風の個性的なトップスで、鍛えられ筋肉が発達した二の腕が露わにしている。

 

 ジークフリートも戦士としての装束ではなくバイカラーカーディガンとシャツに着替えている。

 彼は曹操のカウチの横に置いてあるギターケースを見た。

 

「それが手に入れた零式突撃降魔双槍(ファングツァーン)か」

「ああ、別名ではそう呼ばれている」

 

 ジークフリートが話題を投げれば曹操が微笑み、その話題に乗っかった。

 ギターケースを開けてみれば、そこギターは入っておらず代わりに二本の短槍を無理やり接合したような奇妙な形の黒槍が収まっていた。

 

「これが魔槍の冥餓狼(めいがろう)だ」

 

 曹操が手元で弄び、演武のように動き、冥餓狼(めいがろう)を構えて見せる。

 お気に入りの玩具を見せびらかす子供のようだった。

 

「ああ、超カッコイイよ」

 

 抑揚なし超棒読みでジークフリートは曹操を褒めながら、冷蔵庫から缶ビールとサラミを取り出して勝手にくつろぎ始めた。

 

「それが魔力や霊力も無効化する槍か、使い手の力も無力化してしまうとは生きている者じゃ使えるのは、魔力や霊力が完全にゼロなお前くらいだ」

 

 一般人でも僅かでももっている力を全く持たない代わりに異常な身体能力と感覚器官を持つ。

 まるで何かを失った代償で生じた虚無の洞のような身体。それが曹操の肉体だった。

 

 ジークフリートも彼のような人間をほかに知らない。ジークフリートの様子に嘆息を吐いて、曹操は冥餓狼(めいがろう)を仕舞った。

 

「密猟者狩りの調査、お疲れ様」

「ああ、だが、相手を見つけることはできなかった申し訳ない」

 

 ジークフリートは曹操からの要請で、最近起きている密猟者たちが連続で殺害されている事件を調査していた。

 密猟組合に属する有力な密猟者グループが壊滅されることで、曹操たちは取引を行うことが難しくなっていた。

 

「レネ・ブロワたちのグループを壊滅させられたのは痛手だったな」

 

 ジークフリートはその場にいながら、彼らの壊滅を防げなかったことを悔いていた。

 

「奴らはやり手だったからね。他にも探しているが難しいな。前回依頼した奴らは、密漁しようとしたキメラが逃げ出して返り討ちにあって全滅してしまった」

「何やっているんだ、そいつらは……」

 

 曹操の話にジークフリートは呆れてしまう。密猟組合の密猟者にも玉石混交であり、腕の立つ者が急激に減り買い手であった曹操たちや、彼らと同じ組織に属する旧魔王派たちも困る事態に陥っている。

 

 現在旧魔王派と取引がある者たちは優秀な密猟者たちであるようで、密猟した魔獣を改造して兵器として作り出して、旧魔王派に売りさばくため、旧魔王派と内通した上級悪魔からあてがわれた土地で兵器のデモンストレーションを行っていた。

 

 一瞬の間を置いて魔法陣の中から霧が突如噴き出して、そこからローブを纏う魔法使いの青年が現れた。

 

「ようやく買えた奴らの質は悪い。やはり程度の低い業者では捕らえることができる者もたかが知れている」

 

 話は聞いていたようで、魔法使いの青年はジークフリートと曹操の会話に入ってきている。

 

 自分の不満を見せつけるように彼は霧の奥から、拘束されている男女を一人ずつ出現させた。

 

「放せ! 俺はただこの能力で好きに暴れていただけだ!」

「わたしは女なのよ! こんな扱いをされて許されるわけがない。男のくせに! ふざけんなよ、訴えてやる! クソオスども訴えてやる!」

 

 二〇代後半頃の強面の男が悪態をつき、四〇代を過ぎた女がわめいていた。

 

「こいつらは自分の神器(セイクリッド・ギア)を欲望のままに使うだけで、堕天使に見つかって粛清されることが目に見えていた」

 

 男は筋力増強させる神器を使って素手で殺害することを好む、残忍な連続殺人鬼(シリアルキラー)であり、自身の能力によって他者を蹂躙して、嬲り殺しにすることに快楽を見出す危険人物。

 

 四〇代過ぎた女は精神支配能力の神器によって、年下の美男や若い金持ち十数人を洗脳して自分に侍らせ、搾取していた。

 

「こんなのが役に立つのか? ゲオルク」

「まあ、使い道がないわけじゃない。呪具か、改造か……」

 

 思案するように剣呑な言葉を呟くゲオルクと呼ばれた魔法使いの男は、ジークフリートとともに男女の罵詈雑言を聞き流している。

 

「ああ、使い方については後で話そう。そいつらは元へ戻していいぞ」

「ああ」

「それと、彼女を連れてきてくれ」

「わかった」

 

 曹操の願いにそう言って応じたゲオルクは霧に拘束された男女を取り込み、本人もまた霧の中へ消えていった。

 ───結局、囚われた男女の言葉には誰も耳を傾けていなかった。

 

 柱のように立ち昇る霧の中にゲオルクが消えたあと、若い女が霧の奥から現れた。

 

(ほう)

 

 珍しくジークフリートは女の美貌に感嘆をする。

 黒髪のハーフツインと黒調のゴシックファッションの女には、その白蝋に似た顔や、しなしなとか細い肢体に、妙に男を悶々とさせる肉感的な翳があった。

 

「彼女が新たに仲間となったヘルヴォールだ。仲良くしてくれ」

 

 女の濡れた黒い花のような眼がジークフリートを見る。

 

「ヘルヴォールです。彼の妻でございます。以後お見知りおきを」

 

 ジークフリートは本気でブッたまげた。曹操は困ったように頭を掻いている。

 

「つ、つまぁ!? え、曹操、君は結婚したのか!?」

「俺は普通に仲間になろうと誘ったら、その代わりに私の夫になれって言われて」

「なったのか」

「なった」

 

 そういうことだった。

 途方に暮れるジークフリートに対して、妙に照れて口数が減る曹操の代わりにヘルヴォールが話し始める。

 

 彼女は実力を私兵として利用していた犯罪組織は曹操がよって滅ぼされた。組織に縛られていても報復する義理もない彼女はその時点で自由の身となった。

 

「自由になったので私は家族というものを作ってみたくなったんですよ。愛というもので成り立ち、互いを無償で助け合い、奉仕する。……そんな関係性があるのか確かめたかったんです。なので手始めに夫を作ってみました」

「───そうなのか」

 

 ジークフリートは何と言えば良いか分からなかった。友人の慶事であるのだから祝おうと思うのだが、奇妙な焦燥感が胸中に燻った。

 

「……?」

 

 自分でもよくわからない情動を不思議に思うジークフリートに、ヘルヴォールはさらに話す。

 

「旦那様からあなたの話を訊いてひとつ試したいことがあったんです」

「え?」

 

 迅雷の勢いを以て、ヘルヴォールの魔剣はジークフリートの脳天へ振り下ろされていった。

 亜空間から神速の抜刀でディルヴィングをもって迫る魔剣と打ち合った。

 恐ろしい圧力をかけられたジークフリートの足元の床が割れた。

 

「どういうつもりかな? 友人の細君と言えど笑えないジョークじゃないか」

「すみません。初代ヘルヴォールが持っていたという魔剣(ディルヴィング)を所持していると訊いたので技量を確かめたかったのです」

 

 そう言って彼女はディルフィングを見ている。ジークフリートも得心がいった。

 北欧神話に登場する女戦士ヘルヴォールとは、オーディンが先祖の英雄を父に持ち、その父から魔剣ディルフィングを譲り受けていた。

 

「それにしても不意討ちとは人が悪い。というか、曹操。お前も止めたらどうだ?」

「悪いな、彼女にやりたいようにやらせたかったんだ。それに、俺が止めなかった理由もわかるだろう?」

 

 そう言って曹操はジークフリートの手元を指さす。ディルフィングを持っている右手ではない、ヘルヴォールの腹を何度も刺した左手に持ったダインスレイブを、である。

 

「驚いたな、怪我がまったく残っていないとは」

 

 お互いに剣を修めながら、ヘルヴォールの傷が残らない腹部をジークフリートは興味深く見ている。

 

「それが君の神器(セイクリッド・ギア)の能力か?」

「ええ、聖母の抱擁(スーパー・リジュビネーション)、自分自身だけを治す回復系神器です」

 

 回復力を発揮する神器に知見を持つジークフリートでも、まるで怪我を負わなかったと錯覚するほどの回復力を持つ神器を彼は初めて見た。

 

 ヘルヴォールは自分の腹部を撫でる。白磁のようなすべすべの肌だ。彼女は恍惚として表情になる。

 

「あなたの迷いのない刺突。とても良いわ! きっとあなたと殺し合いすれば、私はワクワクを得られると思う!」

「思っていてもやらないでくれよ」

「勿論です、旦那様。私は血に飢えた獣ではありません」

「そうであることを願うよ」

 

 女豹のように妖しくひかる女に、ジークフリートは強者と認めたが故の高揚とともに、同胞となることへの危機感を覚えた。

 

「さあて、これでお互いに実力を把握することが出来ただろう? ゲオルグも誘ってみんなで食事に行こうじゃないか。新参者の歓迎会だ。寿司に行こう、回らないところだ」

 

 曹操は楽しげに言うと先に部屋の入り口へ歩き出す。ジークフリートは隣を歩くヘルヴォールに言う。

 

「ヘルヴォール、君はさっき理想の家族を求めていると言っていましたが、理想は口約束で作れるようなものじゃないよ」

 

 そう言ってジークフリートは自分がまさかこんなことを口にするとはと意外に思った。それでも言いたいことがやめようとは思わない。

 

「君は曹操との間にそういう家族を感じられているんですか?」

「ええ、勿論。ふと疲れた時にさりげなく水を分けてくれたり、自分が疲れたからだと休憩を取ろうとしてくれたり、私も旦那様が落ち込んだ時にそっと寄り添うと、これが家族なんだなと心が温かくなります」

 

 ジークフリートはヘルヴォールが暖かい家族を手に入れることができたのは、たまたま婿にした相手が良かったからで、他のどの男も同じではないし、また、同じようなことは言ってはいけないと自分たちのグループの新参者へ忠告するのだった。




■曹操
聖槍を持たずに生まれたら天与の暴君(ゴリラ)になっていた。ボツ案としてはカンピオーネになるというのもあった。
好きなキャラクターだけど、彼の言葉遣いに自信がないので変だったらごめんなさい。

■ヘルヴォール
北欧神話の女戦士ヘルヴォールの魂を受け継ぐ美女。黒髪のハーフツインと黒調のゴシックファッション(地雷系ファッション)、白蝋に似た顔、肉感的でしなしなとか細い肢体、濡れた黒い花のような眼。
生きるか死ぬかの戦いをしている時、生を実感できる性癖の持ち主。イッセーがおっぱいを好きでたまらないように、ヘルヴォールにとってのそれが命を懸けた闘争である。最近は好きなものに曹操が入った。曹操への想いはすさまじく、彼と結婚生活を続けるに相応しい女性になることを努めている。
状態変化系神器(セイクリッド・ギア)『聖母の抱擁(スーパー・リジュビネーション)』の所持者。対象がどんな種族でも回復させることが可能な聖母の微笑と正反対に、自分自身だけを治す回復系神器。

ジャンヌとヘラクレスが英雄派から抜けたこと、メインキャラが多くなることの調整でオリキャラ英雄派を追加したいので、ヘルヴォールはその第一号です。皆さんから応募いただいた案もキャラ作りの参考とさせていただきます。
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