聖槍に選ばれたマクギリスはハーレム王になるそうです 作:生死郎
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バー・フロイラインにマクギリスが召喚されて、次いで彼の眷属やレラジェ領軍が魔法陣から転移してくる。ガシャンと施錠がする音に続き、床を踏み鳴らす無数の足音がこだまする。フロイラインの店内を虱潰しに踏破する。
しかし、神滅具の使い手マクギリス、そして彼の眷属たちが率先して戦うことで制圧していき、表通路、非常階段、あるいはスタッフルームに隠された隠し通路でさえも瞬く間に場内は制圧されていった。
響き渡る怒号と悲鳴、無数の足音が室内を駆け巡り、人々は次々と捕縛されていく。
「ざっと一〇〇体近く、か」
「ああ、ご苦労」
「我々の包囲を突破して逃亡した者たちの追撃も行っており、大半は捕らえることができましたが、瞬間移動で逃走した者もいるらしく、取り逃がした者を確認するためにも身元確認中です」
友子は姿勢を正してマクギリスに報告した。いつものフランクさも今は謹厳な鎧に覆われている。
「レラジェ領から拉致された人間たち、それ以外も商品とされていた女性たちの保護は完了しました。他の呪体や素材についても押収しました」
「ありがとう。
「彼女は太史局局員たちの遺体を取り返して、店にいた密猟者たちを殺していました。今は逃走した密猟者には大物もいるようで、逃がさないために追跡しています」
「そう、か」
戦闘では好戦的な顔を見せる霧葉は、密猟者への憎悪を殺意へと生化学反応を生じて変化していた。
「わかった。女たちはひとまず全員保護だ。手荒な真似はしないよう兵に徹底させろ。彼女らの身柄に安全を保障することで私達はこの土地で活動することを許可されたのだからな」
フロイラインがあるビルは東京都内ではあるがレラジェ領の外にあった。貴族の領地や冥界政府が管理している土地ではなかったため、日本の神仏たちと交渉して彼らに悪魔が行動することの許可を得たのだった。
悪魔が人間界で活動するためにこのような調整はよく行われており、領地の外で自分が自由に活動できるようにするため、悪魔によっては活躍拠点を確保するために金融・企業を架空名義で運用するということもある。
余談ではあるが京都駅周辺に高級ホテルを魔王サーゼクスは所有している。そのホテルの名前は「京都サーゼクスホテル」であることを知ったマクギリスは、人間界で自己主張が激しい企業名を付けている魔王の奇行に頭痛がした。
「ええ、わかっています。あの神からご不興を買うのは避けたいですからね」
友子も口元に微苦笑を湛えながら同意した。
「消耗している人もいるだろう。病院で待機しているしのぶや秋たちにも協力してもらってくれ」
「はいっ!」
「友子も残ってやることはないだろう。戦力が必要といっても眷属の人数は充分だ」
フロイラインへ襲撃に入ったマクギリスに同行した眷属は友子以外にスカサハ、ジャンヌ、オフェリア、カナヲ、ハリベルがいる。強力な異能者や魔獣が集まっていても制圧するには充分な戦力だった。
他の眷属はラティアとともに古龍級魔獣の捕獲に同行していたので今回は休息している者、別の仕事で同行していない者もいた。
「拠点に戻って保護した女たちを迎える準備をしておけ」
すでに兵たちがビルを包囲し、人海戦術で捜査を始めている。
友子が抜けても問題はないし、医師でもある彼女ならばしのぶたちとともに後方でも仕事はある。
きびきびと礼をすると友子は律動的な足取りで、部屋を出て行った。マクギリスはティアーユを保護していた部屋に入る。
ティアーユは既に放心状態から回復していたようで、ソファに座ってぼんやりとしている。
「ひ……! あ、貴方は……!?」
ドアが開いて竦んでいたがマクギリスの顔を見たことでティアーユはあからさまにほっとしたように息をついた。扇情的な衣装を着させられ、他の女性たちと同じように大型犬用のゲージに入れられていた。そして舞台に立たせられて欲望に爛れた視線に晒されたところを救ってくれたマクギリスの存在に安心を得られていた。
マクギリスはティアーユの質問に答えつつ、捕まっていた女性たちを救いに来たのだと説明をした。
「あ……。貴方は一体誰なのですか? 人間ではないですよね。……悪魔、ですか?」
裏の業界を知っている側だったこともあり、ティアーユはマクギリスが人間ではないとわかったようだった。
「察しが良いな。私はレラジェ家が当主マクギリス・レラジェだ」
「お、お貴族様! 聖槍使いの、冥界の英雄……!」
「心配する必要はない。気を楽にしていい。これから他の女性たちと一緒に安全な場所へ送る。さあ、おいで」
マクギリスが悠然と微笑み、驚き、恐縮して、立ち上がったティアーユ。その拍子に毛布が落ちそうになり、豊かな胸が布の隙間からちらりと見えた。
顔に心情が表出しないように細心の注意を払いながらマクギリスは、ずり落ちた毛布をティアーユにかけなおす。
「この毛布は持って行きなさい。……辛かったな。もう大丈夫だ」
「あっ……。はいっ……!」
顔を真っ赤にしながらマクギリスを見つめるティアーユからまるで少女のような初々しさを感じ、マクギリスは引き寄せられる魅力を感じるのだった。
逃げ出した密猟者たちを追い討ちするのは霧葉以外にも彼女と同行するオフェリアとハリベルがいた。
霧葉が手に持つのは金属製の細長い武器だった。穂先が回転し、スライド式の柄も変形して、長さ二メートルほどの長槍へと姿を変える。二叉に分かれた穂先を持つ
「しつこい女だ! 失せろ!」
「あら、怖い怖い」
密猟者たちの放つ魔法によって、暗闇の空間を幾条もの光が飛び交う。魔法を躱した霧葉が突き出した
「お生憎さま!」
キン、と響く高い音が鳴る。霧葉の武器は、ただの槍ではない。呪術を収束させて撃ち出すための増幅器である。
それを霧葉の技量で使用すれば、強力な攻撃魔法を放つ魔術兵器と化す。放たれた魔法は容易く霧散して、霧葉が放った魔法によって密猟者たちの体液は一瞬で沸騰して蒸発。身体が内部から膨張して破裂した。
「あっははははははっ!」
仲間の凄惨な死に怯んだ者たちを霧葉が高らかに笑う。
(えげつない……)
(なんと苛烈な)
霧葉の様子にドン引きしつつ追撃としてオフェリアが魔法を放ち、ハリベルが波濤で真っ向から打ちのめす。
「流石は悪魔どもの眷属。配下じゃ相手にならないか」
「私は悪魔ではないけれどね」
霧葉は怯えた様子の密猟者へ槍を突き出した。しかし、槍が標的を迫る前に密猟者の肩を、後ろから掴んだ。そこにいたのは場違いな男。アロハシャツを着た、大柄で筋肉質な黒人。アロハシャツから伸びた腕が、黒光りする鋼鉄のようだった。
黒人は真っ白な歯を剥き出しにして笑う。
「よっとぉ、下がっていろ!」
部下を掴み、後方へ投げるようにして黒人は霧葉から庇った。
「ヒーーーハーーーーッッッ!!」
直後、霧葉が見たのは鋼鉄の拳。鉄塊と呼ぶに相応しいそれは霧葉の頭部をめがけて迫りくる。元
(……こいつは強い!)
霧葉だけでなくオフェリアやハリベルも眼前の黒人に警戒を強めた。
鉄腕と形容が相応しい戦闘用の義手とそれを使いこなす筋力。鉄腕の男は密猟者の中でもかなりの実力者だと判断した。
「逃がしてくれないってなら仕方ねえ……一人ずつきっちり息の根止めとかねえとなァ!」
ゲラゲラと笑いながら、鉄腕の男は拳を作ってボクシングのようなファイティングポーズをとる。
鉄腕の男によって守られた部下たちは遮二無二となって逃げ出した。事前に敷設した魔法陣まで辿り着ければ、転移することで助かる。そう信じて駆けだしていた。
霧葉は彼女が壊滅させてきた数ある密猟グループの中でも鉄腕の男が屈指の猛者である相手は一気呵成に攻めることを決意する。
霧葉が突き出した乙型呪装双叉槍の二本の刃が、互いに共鳴して、破壊的な音波を撒き散らす。
「霧豹・双月!」
魔力を増幅する槍が霧葉の魔力を増幅し、強力な攻撃魔法として撃ち出したのだ。
霧葉と同じくオフェリアとハリベルも彼女と同じく一気呵成に攻め立てる。
「
ハリベルは刀身から高速の水塊を撃ち出す。
「クッソがぁぁぁっ!!」
彼女たちの攻撃を鉄腕の男は鉄腕で防ぎ、あるいは回避する防戦一方となりつつ悪態を吐く。それでも攻撃からすべてを防ぎきることはできず、肩の肉は抉られ、脇や脚には裂傷が作られる。音撃は彼の全身を打ちつける。
「さっきから避けようとしてばかりで、どういうつもり?」
消極的な態度でありながら獲物を狙う肉食動物のような男の眼光に、霧葉は訝しむ。
「気を付けろ! こいつは何かを狙っている」
ハリベルの警句も遅すぎた。鉄腕の男は獰猛な笑みを浮かべながら、
「遅せぇよ、充分に
鉄腕の男の両腕が光ったと思えば、霧葉の知覚を超える速度で何かが迫った。直感で何かが来るとわかったけれども避けれなかった。
霧葉の脳が派手に揺れ、神経がパニックを起こし、意識が途絶える。近くの塀に激突し、突き破り、地面に顔を打ちつけたところで、霧葉は意識を取り戻した。
「……がっ……く……やってくれたわね……」
眩暈で視界がグルグルと回る。頭が割れそうに痛み、吐き気がした。
油断した。敵に、
横目に見ればハリベルもオフェリアも同じように吹き飛ばれていた。
「すげえ、まだ生きてる!」
ゲラゲラと笑いながら、鉄腕の男は霧葉を見下している。先程男に負わせた肩や脇や脚の怪我は癒えていた。
「どういうこと? 今の攻撃には魔力をまったく消費していないように見えるけれど」
大規模攻撃があったにも関わらず、鉄腕の男から魔力の消耗が見られなかったことに霧葉は胡乱げに彼を見ている。
「それが俺の
「そう、情報開示、ご苦労様。満足?」
うなりを立てて槍の穂先がななめに落ちてくると柄はピタリと構えられた。霧葉だけれではない立ち上がったハリベルとオフェリアも戦う意志を見せる。
「我らがやることには変わらない」
ハリベルの姿は先ほどから変わり、下半身は細いプレートを並べてスカートのようになり、上半身は水着のような姿に変わり、武器も右腕を包むような大剣となり、その剣の意匠は鮫を想起させた。そして彼女が発する魔力も増強している。
「ふぁあっははははは!! 殴って、砕いて、皆殺しだぁ!」
前線で戦う霧葉とハリベル、そして後衛から彼女らをフォローしつつ攻撃をするオフェリア。
回避に専念していたのはあくまで力を溜めるためだった鉄腕の男も鉄拳を振るい、霧葉たちへ対抗する。躱わして、攻撃、チャージ、
基本性能が他の密猟者たちと違い過ぎる。鉄腕の男はむしろプロの戦闘屋だった。技術も魔術も薬も機械も使えるものは何でも使い、ひたすら戦闘に特化した肉体を作り上げた者。
強力な魔獣やドラゴンも打ち据え、邪魔する者を破壊することを目的としてた破壊者だった。
霧葉が槍を構えて飛び出す。行動は豹のように軽快、稲妻のごとく霧葉の腕から白光が噴出したが、ズドン、と重くて硬い塊が霧葉の腹に突き刺さった。
「がっ……!」
口から内臓が飛び打悲愴な衝撃に身体が痙攣し、さらに後頭部に衝撃。それはパンチというよりも、鉄球を振り下ろして骨を叩き割るのに近い行為。頭蓋骨が歪むかと思うような痛みに悶えながら、身体を翻す。
ハリベルたちが念話通信で会話をする。
(戦況はよくないな、これはかなり不味い状況だ)
(戦闘で与えた
(このままでは相手に逃げられますね)
(こいつを逃すなんて論外。力のある密猟グループのリーダーでもこの男は最強格。こいつを討ち取らなければ、密猟者どもはまた組織立って行動するようになる)
霧葉が見逃すべきではないと言い切る。ハリベルたちとしても主の命令を実行するためには鉄腕の男を逃がすことはできない。
(あなたの魔眼は使えるのではなくて?)
(どうでしょうか。神器の力が魔眼による瞳術も対象にとる可能性もあります)
眼光・視線のみで外界や他者へ干渉する幻怪無比な性能から、魔眼は強力だがそれが神器によって跳ね返されるリスクもオフェリアが考慮するのは当然である。
「オラオラァ! どうしたどうしたぁ!」
男の鉄拳を霧葉は魔槍で払い、勢いそのままに穂先で斬りつける。
「お前のことは知っているぞ。太史局の仲間を三〇人殺したんだよなぁ? その
「……いいえ、私が殺したのは三一人よ」
鉄腕の男をひとなでした霧葉の視線には、日本刀の刃先を思わせる光があった。
「あぁ?」
胡乱げな鉄腕の男は声を上げるが、霧葉はそれには答えない。自分が殺めた同胞には身ごもっていた女性がいたことを、教えるつもりがなかった。
(落ち着いて、霧葉。攻め手がないわけじゃありません)
オフェリアが霧葉とハリベルに会話を伝えながら、魔法で彼女らをフォローしている。
鉄腕の男は攻撃を跳ね返すたびに負傷は癒えているにも関わらず、部下を庇って迎撃した際に霧葉から受けた負傷が未だに癒えていないことに気づいた。
(おそらくは跳ね返すには限定条件がある!)
(それならばひとつ心当たりがある。試してみないか?)
(乗ったわ。ハリベル、教えてくださる?)
仲間との打ち合わせを終えて霧葉は
鉄腕の男は悟った。霧葉が死んでも退かない意志であると。
二人は同時に前進した。男が右腕を大きく振りかぶったのを見て、霧葉もそれに合わせる。正面からの全力攻撃。鋼鉄の腕を、霧葉は
金属同士が高速でぶつかり合う異音。その瞬間、男の右腕が弾き飛ばされた。巨体がよろめきながら後退。握られた拳にはひび割れがあり、男の顔が驚愕に歪む。
「解放が……できねぇ!」
ひび割れた右の拳と同じく、握っていた左の拳が麻痺して空いていた。鉄腕の男はすぐに神器の特性を見抜かれたと察した。
霧葉と激突した瞬間、オフェリアが魔法で男の手を麻痺させた。決死の覚悟で前進してくる相手をしたため、僅か意識に隙が生まれてしまった。
拳が割れて怯んだ隙を霧葉は見逃さない。
霧葉が突き出した乙型呪装双叉槍の二本の刃が、キンと響く。発動するのは冷却魔術だった。魔力によって強制的に目標内部の水分を蒸発させ、その気化熱で相手の体温を奪う術式だ。
両腕が瞬く間に凍結して神器の力を使えなくなった男へ突進して、霧葉は男諸共に川へ落ちていった。
◇◆◇
川から岸へ辿り着けた霧葉はそこで力尽きて倒れた。密猟者たちに制裁を与え、亡くなった同胞たちの遺体を回収。供養するのもマクギリスに依頼してある。自分がやるべきことをやったという安堵と疲労で
最後くらい彼の夢を見たかった、霧葉はふと考えた。
マクギリス・レラジェと再会して彼に取引を持ちかけて、同胞の遺体を回収すること、憎い密猟者たちを報いを受けさせる計画を準備していた頃。霧葉の心は限界に達していた。
だがそれを表に出すことはできなかった。自分が殺めた同胞の遺体はまだ商品として闇市場に出回り、仇敵たちに報復を果たさなければ罰と贖いは終わらないと思っていたからである。
それでも耐えきれなくなり感情を押し殺したように嗚咽を漏らした少女がいて、彼女に温かいコーヒーを渡して、じっくり話を聞いていた男がいて。
ただそれだけの、有り触れた話である。
「こんなところで寝るもんじゃない」
マクギリスが豪奢な黄金の前髪をかきあげて霧葉を見下ろしていた。
「レラジェ卿……?」
本当にマクギリス・レラジェの夢だ。ようやく、すべてが終わったのだ。抱えているこの感情になんと名前を付ければいいのか霧葉にはわからなかったが、最後に彼の夢を見れたことは本当に嬉しかった。
「すべて片づけたのであれば、霧葉の旅はこれで終わりだな。それじゃあ、お帰り。旅が終えたならばちゃんと帰ってきてくれないと、困る」
優しい言葉に自然と霧葉の口元が綻んだ。
「そうね。じゃあ、取引だったし、そろそろ帰ろうかしら。レラジェ卿のもとへ……帰れるならば本当に良かったのに……」
幸せな夢に霧葉は素直な心情を口にした。
「よし、帰ろう」
「帰るって……どこによ」
「君を眷属として迎え入れると言ったのだから、君の帰る場所は私のところだ」
そう言ってマクギリスは霧葉を軽く抱え上げた。えっ、と驚いている霧葉を抱えたまま歩き出した。
……これは夢だったはずなのに。
「え……? 夢じゃ、ない……?」
「夢であるものかよ。さあ、帰ろう」
「お、下ろして! 私では重荷に」
「断る」
マクギリスの答えはにべもない。
「私と取引をしたのだから、霧葉を諦めない。一人で歩けるところは歩けばいいし、疲れたとき、ダメな時は私が担いで運ぶので心配するな。重荷などではない。重荷であるものか」
「閣下はずるいわね。なんで傷心のとき一気に距離を詰めてくるのかしら」
「接近戦には自信があるほうなのでな」
「───ッ!」
霧葉はついに観念したかのように担がれるままに大人しくなった。
「レ……レラジェ卿。……ただい…ま帰りました」
「ああ、お帰り」
上手く書けなくて悩んでいた霧葉加入イベントを書けてスカッとした!
囚われた女性たちとのエロも書きたいけれども、何人選ぶかは検討中です。
あともしかするとアンケートのキャラのうち何人かは元からマクギリスのもとにいたキャラということになるかもしれません。
m9( ゜д゜) 次回、霧葉のエロ回!