※この作品はR-18です。

春夏秋冬姉妹と御主人様な僕。   作:赤いUFO

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かなり飛ばし飛ばしです。



悟堂

 蝉の音が聴こえる夏の朝。

 部屋の中で男女が交わっていた。

 青年が桜色の髪を持つ美しい女性の身体を座った体勢で抱き締めながら、その乳房をしゃぶっている。

 

「はぁ……あぁ、良いぞ。もっと妾を味わっておくれ」

 

 青年──―朱季の頭を撫でながら、縁種という名の額に角が有る女性は満足そうに身体を委ねていた。

 乳房だけでなく、縁種の匂いを嗅ぎながら首筋や肩にも口を移動させる。

 しかし、

 段々とそれに飽きた縁種は身体を一度離して体勢を変える。

 

「こういうのは、好きじゃろう?」

 

 朱季の肉棒を胸で挟んで上下に動かしつつ、先端の亀頭を舌で転がす。

 

「っ……!」

 

 僅かに苦しそうな声を出しつつもそれを受け入れる朱季。

 

「そういうの……何処で覚えてくるんだよ?」

 

「ん? ほれ。最近近所に越してきた夫婦が居ったろう? そこで夫婦の営みを少しのう」

 

「お前な……」

 

 どうやらご近所夫婦の性事情に関して、目の前の神様には筒抜けらしい。

 その夫婦に申し訳ないやら、次に会った時にどんな顔をすれば良いのか悩むところだ。

 そう考えつつも、肉棒から伝わる縁種の乳房と舌の感触によってすぐに掻き消される。

 

「つ、あ……!」

 

「お主の我慢している顔は愛らしいのう。もっと攻めて、楽にしてやりたくなる」

 

 亀頭を吸う口の力と胸の圧迫を強くする。

 それに抗うことをせずにそのまま縁種の顔に射精した。

 顔に付いた精液を気にする事なく、縁種は一度体を離して朱季の上に跨がる。

 

「さぁ、妾を満足させておくれ。愛しい人や」

 

 言いながらゆっくりと下の口で朱季の肉棒を呑み込んでゆく。

 半分程肉棒を包まれた瞬間で既に射精しそうなのを堪える。

 ここ数ヶ月身体を重ねて確信したが、縁種は性欲がかなり強い。

 最初は慣れない事で朱季に任せてばかりだったが、そんな関係はすぐに逆転した。

 縁種の身体は魔性だ。

 まるで男から精気を貪り尽くす為にあるかのように全ての部位で精を搾り取ってくる。

 しかもその肉壺に一度入れてしまえば抜くのが億劫になる。

 ずっと精を吐き出して果てても構わないとすら思えるのだ。

 座った体勢だった朱季は縁種を押し倒してその奥を突き続ける。

 何度味わっても飽きる事の無い名器に思考は鈍化し、好物を有るだけ口に放り込むように、朱季は玉袋の中の精液を吐き出し続ける。

 

「縁種……えんじゅ……っ!?」

 

 温かい肉が朱季の肉棒を包み、腟内でうねり、奥に到達するタイミングで離すまい強く締めつけてくる。

 

「朱季……あっ!? またっ!!」

 

 何度目の射精と絶頂か分からぬまま、絡めていた指の力を抜いて息を吐く。

 まだ足りない。もっとこの女に溺れていたいと思う。

 

「悪い。これ以上は仕事に差し支えるから……」

 

「そうか……仕方ないのう……」

 

 二人は名残惜しそうに身体を離す。

 

「朝風呂に行こうか」

 

「あぁ。汗を流したいからなぁ」

 

 雇っている女中が日課として用意している筈の風呂に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 時代が明治になり、ただの小さな質屋だった店は大きな商会として規模を拡大させていった。

 今では質屋は一つの商いでしかなく、手広く商売を広げている。

 朱季達が住んでいるこの家は借金のカタに差し押さえた武家の元屋敷であり、客人を招く機会も増えたので購入した。

 

「どうせなら、どーんと綺羅びやかな洋館にでも住めば良かろうに」

 

「それ、お前が住みたいだけだろ」

 

 どうやら縁種は洋館に興味津々のようだが、朱季はやはりこういう日本屋敷の方が落ち着く。

 風呂上がりに屋敷の廊下を歩きながら今日の予定を頭の中で整理していると、朝から会いたくない人物が馴れ馴れしく話しかけてきた。

 

「よぉ、朱鬼」

 

「兄上……」

 

 実兄の顔を見て朱季は表情を消す。

 

「朝から風呂とは贅沢な事だ」

 

「……今日は予定がありますのでお話ならまた後日」

 

 帰るように促すが、向こうは聞いてくれないようだ。

 明治になる少し前に昔の家族が朱季を頼ってきた。

 朱季の兄は旧政府軍に与していたようだが、敗戦に次ぐ敗戦で隙を見て逃げたらしい。

 それはどうでも良く、実家は最終的に武家として立ち行かなくなり、朱季を探して援助を求めてきた。

 家から追い出した次男坊を頼ったのは本当に他のアテが無かったとの事。

 当時、商会がかなりの人手不足だった事もあり、雇い主という形で仕事を斡旋した。

 両親は元々欲が少なく、人並みの生活さえ出来れば良い、という人達なので、紹介した仕事をしながら、慎ましい生活を送っている。

 朱季が家を出た時にはまだ物心つくかどうかの弟とその後に産まれた妹もその手伝いをして過ごしている。

 問題は三門朱鬼だった頃のこの兄だ。

 

「待てよ。この間の話、ちゃんと考えてくれたのか?」

 

 要件はそれか、と内心面倒で息を吐く。

 元々気が強く、自分より下の者に高圧的な態度を取る兄に、朱季は借金の取り立てを頼んでいた。

 兄はそれなりに腕は立つものの、商会にはもっと腕の立つ者は幾らでも居る。

 その者達に兄がやり過ぎないように監視させながら取り立てを行わせていた。

 しかし、本人はその仕事に不満があるらしい。

 

「俺に、もっと大きな仕事を任せろよ。大丈夫だ。上手くやるって」

 

「兄上に商売は向きませんよ」

 

「お前に出来たんだ。俺に出来ねぇ訳ねぇだろ」

 

 離れて十年以上経つが、兄は子供の頃から何も変わらず大人になっていた。

 朱季の事も朱鬼の頃と同じに思っているのだろう。

 そんな人間に店を任せるつもりはないし、下に誰かを就かせるつもりもない。

 兄には商人としての蓄積が何も無いのだ。大きな商売など任せられる訳がない。

 本当ならさっさと解雇したいところだが、心情として出来ない理由があった。

 

「ガキが産まれて色々と入り用なんだ。今の給金じゃあ、やっていけねぇんだよ」

 

「……御両親と相談なさってください。私の方でも少しばかり色を付けさせて頂きますので」

 

 再会した時既に、兄は結婚していた。

 一年前に子供も授かっている。

 ここで朱季が放り出せば、妻子は路頭に迷う可能性がある。

 奥さんの方は前の戦で家族を亡くし、親戚とも連絡が取れず、頼るアテ無いらしいのだ。

 両親の方も金銭的な面で息子夫婦の世話を妬くのは難しいだろう。

 

「兄上も今日は仕事でしょう。私も忙しいので今日はもうお引取りを」

 

 まだ駄々をこねる兄を使用人を呼んで叩き出す。

 それを見ていた縁種は不愉快極まりないとばかりの表情をしていた。

 

「お主の兄は相も変わらず……良い気分じゃったのが台無しではないか」

 

 縁種は朱季の兄を嫌っていた。

 会う度にあーだこーだと身勝手な要求をするのだから当然であるが。

 朱季と初めて会った時は汚れた野良の犬猫でも見るような視線だったが、兄を見る眼は道端にある汚物を見るような視線である。

 

「俺は商談に行くけど、縁種はどうする?」

 

「ん? あぁ。妾は留守番させてもらおうか。やはり最近どうも調子が出ぬ」

 

「そう」

 

 ここのところ縁種はあまり出歩かない。

 少し前まで朱季と一緒に商談に出て色々な助言をしてくれていたが、今は時折本当に辛そうな時がある。

 それと、以前より変化した事がもう一つ。

 

「済まぬが、今日も頼めるか?」

 

「帰りにな。八朔でいいか?」

 

「ん。頼む」

 

 あまり食べ物を口にしなかった縁種だが、最近は果物などを頻繁に摂るようになった。

 以前は稀に甘味を口にしたり、朱季が酒を飲めるようになってからはたまに付き合ってくれる事はあったが、積極的に食べ物を欲しがるのは出会ってからこれまでなかったのだが。

 

(食欲があるのは悪いことじゃないよな?)

 

 

 

 

 

 ──―縁種が妊娠していると判明する二週間前の日である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やってくれましたね、兄上……いえ、三門晴人」

 

 庭で複数の男性に取り押さえられている兄。

 それを小さな子を抱きながら不安そうに見ている兄の妻。そして三門の両親。

 朱季は額を押さえて息を吐く。

 

「うちの商品を横流しして、私達が気付かないと思いましたか? それと取り立てたお金も自分の懐に入れてましたね?」

 

 兄は、外国から輸入した商品を少ない数だが盗み、それを売り捌いていた事が発覚した。

 それと、取り立てて回収した金の何割かを自分の懐に入れ、完済した筈の者にまだ返済が終わってないと難癖を付けて取り立てを続行していた。

 その件で金を貸した者の何人かから相談を受けたのだ。

 部下を使って調査し、朱季以外には視えない縁種の力も借りた。

 その結果、兄の様々な問題が発覚したのだ

 呆れた眼で朱季は庭で押さえつけられている兄を見下ろす。

 

「ここまでやられたらウチの信用問題に関わります。もう庇い切れません。警察に突き出してください」

 

 朱季がそう部下に指示を出すと兄を立たせて警察まで連行させる。

 何か言いたそうに抵抗しているが、証拠はもう挙がってるし、今更兄のつまらない言い訳なんて聞く気は無かったので、口に布を噛ませて巻かせていた。

 それらが終わると、両親が怖ず怖ずと話しかけてくる。

 

「あの、朱鬼……私達は……?」

 

「……今回の件は兄の独断なのは知ってます。お二人はこれまで通り働いてくだされば結構です」

 

 その言葉を聞いて両親は胸を撫で下ろした。

 長男が仕出かした事で自分達にも連帯で罰が下るのを怖れていたのだ。

 その長男の処遇についてなので、一応呼んだだけだ。

 問題は──―。

 

「義姉上……」

 

 ようやく歩けるかどうかの娘を抱えていた義姉をどうするか、という話だ。

 朱季は両親に打診してみる。

 しかし、両親からの返答は芳しくなかった。

 

「あ、いや。これ以上住む者が増えても家では手狭だから。それにあまり余裕も……」

 

 息子の妻子の面倒を見るくらいの余裕はある筈だが、断るという事は、もしかしたら義姉と両親の仲はあまり良くないのかもしれない。

 あの長男には度々両親も手を焼いていたようだし。

 それに義理の娘と孫娘に金をかけるくらいなら、弟妹に使いたいと言ったところか。

 

「あの……」

 

 そこで娘を下ろした義姉が頭を下げてお願いをしてきた。

 

「図々しいお願いだとは承知しております。でももし叶うなら、私をこの家の下働きとして雇っていだたけませんか?」

 

「え?」

 

 突然の提案に朱季が目を丸くする。

 

「私、本当に行く宛がなくて……ここで雇ってくださると助かります。何でもしますので」

 

「こっちとしては人手が足りてないので助かりますが……良いんですか? その、周囲の目とか、色々」

 

 犯罪を犯した妻子として、周りから冷たい視線を送られるのは分かり切っている。

 それなら、ここを離れて新しい土地で心機一転した方が過ごしやすいのではないか? 

 しばらく生活に困らないようこちらで援助すると提案するが、首を横に振って断られた。

 

「私一人ならともかく、娘を連れて新しい土地でやってゆく自信が無いのです」

 

「すみません。兄がこんな事になってしまい……」

 

 朱季の謝罪に義姉が言い辛そうな表情で髪を掻き上げる。

 袖の下に、幾つかの痣が見えた。それに気付いて慌てて隠す。

 

「あの人とはもうずっと……こうなって、ホッとしている自分がいます」

 

 兄夫婦の事を全く見ていなかった事実に朱季は眉間に皺を寄せた。

 

「あの人とは正式に離婚して旧姓に戻ろうと思ってます。朱季君の義姉で居るのも今日限りになるでしょう。ですから私の事は他の使用人と同じ扱いでお願いします、旦那様」

 

 切り替えるように呼び方を変える義姉。

 

「そう言えば、貴女の旧姓は何と言うのでしたっけ?」

 

「はい。悟堂……悟堂咲子でございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……くっ、あぁ……っ!?」

 

「頑張れ! もう少しだからっ!」

 

 朱季は縁種との子を取り上げている最中だった。

 周りからは視えない聞こえない触れない縁種の出産の準備を朱季一人でしなければいけなくなった。

 そもそも縁種が子を産める事自体が本人達にとって予想外であったのだが。

 朱季が周囲に出産に必要な事を訊いて回る際に、何故そんな事を訊くのかと不思議がられながら答えて貰った。

 

(しかも双子だってんだから……!)

 

 今は一人目を何とか取り出している最中である。

 縁種が産気付いてどれだけの時間が経ったのか。必死だった朱季にはもう判らない。

 それでもようやく一人目を取り上げた。

 産声を上げる男の子。

 何とか一人目を取り出せた事に安堵する。

 しかし、僅かに開かれたその瞳を見て、朱季は息を止めた。

 息子の瞳は自分と同じ朱色の瞳だったからだ。

 

「どう、した……? あき……」

 

「いや……それより産湯に浸からせて綺麗にするな。二人目は少し待ってくれ」

 

 へその緒を切った朱季が用意した湯で身体を洗う。

 洗い終わった子に縁種が手を伸ばす。

 

「妾にも抱かせておくれ……」

 

「あ、あぁ」

 

 縁種は触れられるのか判らず、恐る恐る手を近づける。

 

「あ……」

 

 その指が赤子に触れる、確かな感触と体温が伝わった。

 愛しそうに我が子を抱く縁種。

 

「もう一人も、取り出すぞ」

 

「頼む……」

 

 一人目を取り上げた自信からか。それとも別の理由か。

 二人目を取り出すのは思ったよりも時間がかからなかった。

 取り出したばかりの二人目の子に触れる縁種。

 

「じゃあ、へその緒を切るぞ」

 

 鋏で切る音がする。

 

「え……?」

 

 その声はどちらが出した物だったのか。

 へその緒を切ると、まるで二人目の子と縁種の関係が切れるように、その手は赤子の体を通り過ぎていった。

 

「そ、んな……」

 

 驚きよりも今にも泣き叫びそうに顔を歪める縁種。

 二人目の子供の瞳は黒色だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 産まれた双子の兄は空。弟は陸と名付けられた。

 今のところは二人はどこにも異常はないまま育っている。

 今は咲子が陸に乳をやっているのを背を向けて待っていた。

 

「すみません、咲子さん。陸の面倒を見て貰って」

 

「いいえ、構いませんよ。陸坊ちゃまは手がかからない子ですから。ですが旦那様、空坊ちゃまは本当に良いのですか?」

 

「……大丈夫です。空の面倒は他の人が見てくれてますから。子供三人の面倒を見るのは大変でしょう」

 

「それはそうですが」

 

 心配そうに訊いてくる咲子に朱季は取り繕った笑みを浮かべて返す。

 突然双子を連れてきた朱季に周りは予想以上に大きな反応を示した。

 今まで女っ気が無いと思われていたのに、急に双子の赤子を連れてきたのだ。周囲の反応は当然だろう。

 双子は遊郭の女との子供だの、実は隠れて女を囲っていただのと屋敷の中で噂されているが、朱季は双子の母親に対して沈黙を貫いている。

 

 弟の陸は悟堂咲子に乳母として面倒を見て貰っているが、だからこそ兄の空の方に縁種が放したがらず、朱季ですら中々触らせて貰えずにいる。

 そこでお昼寝をしていた咲子の娘である夏織が目を覚ます。

 

「おかーさん? だなさまぁ?」

 

 ふぁ〜、と欠伸をして目を擦る夏織に咲子が頭を撫でる。

 夏織が陸を見ると、満面の笑顔になった。

 陸の肌に触れる夏織。

 

「じゃあ私は仕事に行くので、後は宜しくお願いします」

 

 そう言って息子を任せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空と陸が産まれて五年の月日が経った。

 子供達は現在、庭で遊んでいる。

 

「やった! わたしの勝ち!」

 

「またぁ」

 

「夏織ちゃん強いよ……」

 

 独楽で遊んでいる三人は本当の姉弟のようだ。

 同じ屋敷で過ごしている内に、年上である夏織を中心に纏まっている。

 時折喧嘩をする事もあるが、概ね仲が良い。

 何度目かの独楽の縄を巻いている最中に、空の手が止まった。

 

「ゴメン。ぼく、そろそろ行かないと」

 

「また?」

 

「空、いつもなにしてんだよ〜」

 

 不思議そうに首を傾げる夏織と不満そうに唇を尖らせる陸。

 空はもう一度謝って庭を離れる。

 屋敷の奥へと向かい、朱季と空だけが入る事の許された部屋の前に立つ。

 

「母上。しつれいします」

 

 襖を開けると、双子の母である縁種が待っていた。

 

「良く来たのう空。さ、入っておくれ」

 

「はい」

 

 母の部屋に入り、用意された机に向き合う。

 

「さて。昨日は何処まで進めたか」

 

「この頁までですね」

 

「あぁ、そうじゃったかな。では始めよう」

 

 そこから空が将来商会を継ぐ為の勉強が始まる。

 字の読み書きや計算。その他商売のイロハなど。

 かつて朱季に教えた縁種は教える者としては優秀だった。

 そして空も教わる者として真摯に勉学に励む。

 一通りの課題を終えたところで空が縁種を見上げる。

 

「? どうした、空」

 

「母上。母上はどうして陸をこの部屋に呼ばないのですか? 弟は、母上に会えなくて寂しがっております」

 

 教材を捲っていた手が止まる。

 息子の質問に縁種は哀しそうに遠い目をする。

 

「空。妾の額にある角を見よ。視ての通り、母は人の者ではない。妾の存在を視るには特別な資質が必要なのじゃ」

 

「ししつ……」

 

「空にはまだ難しいかもしれんなぁ。妾も空と同じようにあの子を抱いて、乳を与え、自分の手で育ててやりたかった。しかし、その資質を父から受け継いだのは、空だけじゃった」

 

 縁種が空を後ろから抱き締める。

 

「だからどうか、空は母の傍を離れないでおくれ。そして兄として弟を守っておやり。その為の知識は妾が全て与えよう」

 

 息子を抱く腕は震え、頭には母の涙が落ちる。

 空には母の言っていることが半分も理解出来ていない。

 思ったのは、自分が弟を守らなければいけないという事。

 そして、母の涙を止める為に頑張らなければいけない事。

 

「はい。母上」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋敷に戻った朱季が見たのは、広い庭で遊んでいる陸と夏織だった。

 朱季が呼ぶ前に子供達の方が先に気付いた。

 

「父上!」

 

 走って近付き、抱きついてきた。

 年々重くなる息子に感動しながら質問する。

 

「空はどうした? 一緒に遊んでたんじゃないのか?」

 

 空の名前を出すと、陸は不機嫌そうに顔を背けた。

 

「空のやつ、また途中で抜けちゃったんだ。勉強の時間だからって」

 

「そうか」

 

 遊んでいる途中で兄が抜けた事に不満な陸は頬を膨らませる。

 縁種によって決められた時間に勉強を課せられている空。

 それは、子供にちゃんと勉強をさせたい親心と自分が触れ合える子供である空との時間を持ちたいという縁種の想いだろう。

 

(でももう少し、子供同士の時間を大事にさせてやりたいな)

 

 縁種はあまり空と離れるのを快く思わないだろうが、その分は朱季が相手をすれば良いだろう。

 幸い、もうすぐ大きな仕事も終わり、しばらく時間に余裕が出来る。

 朱季と陸の話が一段落すると、夏織が出迎えの挨拶をした。

 

「おかえりなさいませ、旦那さま」

 

「うん。夏織ちゃんも、いつも息子達と遊んでくれてありがとうね。あ、これ。御得意先から貰ったびすけっとっていう洋菓子だけど、良かったら」

 

 そう言って小さな缶に入ったびすけっとを渡す。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 ちゃんとお礼や挨拶が出来て、しっかりした子だな、と感心する。

 きっと悟堂咲子の教育が良いのだろう。

 

「父上! 俺には!」

 

「後で空と一緒にな」

 

 父親の言葉に陸はちぇっと唇を尖らせる。

 そこで娘を迎えに来た咲子が現れた。

 

「おかえりなさいませ、旦那様」

 

「はい。ただいま」

 

 そこで咲子が娘が手にしているびすけっとの缶を見る。

 

「お母さん。旦那さまからお菓子をいただきました! 後で一緒に食べましょう!」

 

「申し訳ありません、旦那様。夏織、ちゃんとお礼は言った?」

 

「はい! もちろん!」

 

「夏織ちゃんはとても礼儀正しい子ですよ。咲子さんの躾が良いのでしょうね」

 

「そんな。私から見ればまだまだお転婆で」

 

 そんな世間話もすぐに打ち切る。

 

「旦那様。湯浴みの準備は出来ておりますが。先にお食事になさいますか?」

 

「いや、風呂から入ります。暑い季節だから汗を流したい」

 

「分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋敷で働いている女の使用人達が休憩の時間に噂話で花を咲かせている。

 

「ねぇ。あの悟堂さんと旦那様、仲が良く見えない?」

 

「坊ちゃま達の乳母として任されていた人でしょ? そりゃあ、旦那様も心をお許しになっているでしょうよ」

 

「なら、あの噂は本当なのかしら?」

 

「噂?」

 

「旦那様が悟堂さんを妻に迎えるって噂」

 

「え!? でも、悟堂さんって確か、旦那様のお兄さんの奥さんだった人でしょう?」

 

「そうだけど。でも、坊ちゃま達の母親の事も旦那様は今も口を噤んでいらっしゃるでしょう? それに犯罪を犯した兄の妻を近くに。ましてや乳母として子供達の面倒を見させるものかしら?」

 

「どういう事?」

 

「だ〜か〜ら〜! もしかしたら坊ちゃま達の本当の母親は、悟堂さんなんじゃないかって噂されてるの!」

 

「えぇっ!?」

 

 そうした噂話を面白可笑しく脚色して楽しむ使用人達。

 彼女達からすれば、噂が本当でも出鱈目でも良い、ただ一時の戯れである。

 しかし口に出す以上、誰かに聞かれる事は当然あるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 子供達を寝かしつけた後、朱季は縁種の部屋へと向かっていた。

 

「入るぞ」

 

 そう言って襖を開けると、部屋の隅で縮こまって座っている。

 その姿は何か落ち込んでるように見えた

 

「どうした?」

 

 少し間を置いた後に、縁種は朱季を見上げる。

 

「……朱季。お主は、あの女を妻にするつもりなのか?」

 

「は?」

 

 訳が分からず首を傾げる。

 

「あの女って誰だよ」

 

「……悟堂とかいう小娘じゃ」

 

「咲子さんの事か? ねぇよ。あの人は今でも俺の中では義姉上でしかない」

 

 心外だと長く息を吐く。

 朱季にとって悟堂咲子はその関係が解消されようと義姉であり、子供達の面倒を見てくれた恩人である。

 それ以上の感情を寄せた事はない。

 

「本当か?」

 

「なんでそんな話になってんだよ」

 

「使用人達が話しておったのだ。お主が悟堂を妻に迎えるつもりだと」

 

「そんな事実はない。根も葉もない噂じゃないか」

 

「最近は妾の相手もあまりしてくれぬではないか……」

 

「ここ最近は本当に忙しかったんだ。悪いとは思って──―」

 

 そこまで言うと、縁種が朱季に不意打ちで唇を重ねてくる。

 舌を絡ませ、唾液が混じる。

 唇を離すと潤んだ目で縁種が朱季を見ている。

 縁種をゆっくりと抱きしめてから囁く。

 

「お前が一番綺麗だよ、縁種」

 

 緋袴の帯を緩めて落とす。

 僅かに開いている股に手を入れて女性器を撫でる。

 

「ん、あう……ひゃっ!?」

 

 壁に背中を付けていた縁種の体がずり落ちていき、畳に倒れていく。

 秘部に触れていた手を離す。

 

「濡れんの早いな……」

 

「し、しかたあるまい……! 久しいのだか、らぁっ!?」

 

 もう一度秘部に触れ、下の口から腟内に指を入れる。

 グチュグチュと音がなり、腟内の肉を指で弄ぶ。

 反対の手が縁種の乳房を掴んだ。

 

「ん、はぁ……! 良いぞ、朱季! もっと、もっじゃっ!!」

 

 刺激が強くなり、恍惚とした表情を見せる縁種。

 しかし余裕が続いたのはそこまでだった。

 朱季は縁種の角を舐め始める。

 

「あ、やっ!? つのは……っ!?」

 

「最近は攻められっぱなしだからな。悪いけど、こっちも弄られてもらうわ」

 

「ま、まて! 角は反則じゃと……いひぃっ!?」

 

 軽く歯を立てるとそれだけで余裕のない声が上がる。

 同時に、乳首をつねり、腟内の弱いところを強く押すと、絶頂を堪えきれなくなった。

 

「そんな、いっぺんにせめられたら、おかしく……ハァ、アンっ!? んん……っ! ア、ア、アッ!? イクッ!! ダメッ!? あぁあああああっ!?」

 

 愛撫だけで達した縁種の腟内から愛液が噴き出た。

 肩で息をする縁種のうつ伏せに倒して、尻を上げさせる。

 肉棒が当たり、縁種が弱々しく腰を動かして抵抗する。

 

「まて……達したばかりじゃろうが……っ!」

 

「文句は受け付けねぇよっ!」

 

 トロトロになった縁種の腟内に遠慮なく肉棒を打ち込んだ。

 

「あうっ!? お主のが、下りた子袋に当たってぇ!?」

 

 縁種の腕を引いて腰を振り、縁種の肉壺を荒らす。

 その締め付けはやはり最高で、少しでも気を抜けばあっという間に果てそうだった。

 

「ハァ……! 良いぞ、朱季っ!? 妾を、もっとぉ!!」

 

 その声と肉が、朱季を快楽の沼へと沈めようとする。

 しかし、縁種より早くは果てまいと歯を食いしばっていた。

 奥へ辿り着く度に亀頭を子宮口が一瞬だけ掴み、うねる肉壁が常に竿を刺激してくる。

 そんな中で朱季は前体重を乗せて縁種の腟奥を突いた。

 

「ハンッ!? 気持ちイイッ!? わらわは、もう──―っ!? イィイイイイッ!?」

 

 どちらが先に達したのか、朱季は射精し、縁種は腟内を強く締めつけて達した。

 

「ハァ、ハァ……」

 

 精液を注ぎ込んだ朱季は肉棒を抜く。

 肩で息をする縁種に触れようとするか、その前に彼女の方から朱季の肉棒に触れてきた。

 

「まさか、これだけで終わりと思うまいな?」

 

 ふふふっと笑みを浮かべる縁種。

 それはとても淫靡で、男を支配する笑みだった。

 

「ここ最近はご無沙汰じゃったしのう……帳尻を合わせてもらわねば」

 

 そう言って縁種は朱季の肉棒に口を近づけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨夜、朱季との時間を楽しんだ縁種は機嫌良く屋敷の中を歩いていた。

 鼻歌まじりに歩いていた縁種は双子の弟、陸の姿を発見する。

 

「思えば、空ばかり気にかけて陸の事を蔑ろにしてしまっていたか……」

 

 陸は縁種の事を存在を知覚出来ない。

 だから陸には縁種の事を教えてもいないし、知覚出来る空ばかり構ってしまった。

 なら今日は陸を中心に子供達を見ていようと決める。

 朝早くに早足で何処かに向かう陸。

 その先には、洗濯物を洗っている悟堂咲子がいた。

 

「あの……」

 

「どうしましたか、陸坊ちゃま」

 

 笑顔で返す咲子に陸は少し迷い、間を置いてから質問をする。

 

「咲子さんが、俺と空の本当の母上だという噂は本当ですか?」

 

 その質問に咲子が目を丸くした。

 

「使用人達がそう話しているのを聞いて……」

 

 噂話を陸も聞き、一晩悩んで咲子に問い質した。

 しかし、当然ながら咲子は首を横に振る。

 

「いえ。そのような事は誓ってありません。ただの根も葉もないに噂でございます、坊ちゃま」

 

 それを聞いていた縁種がその通りだと頷く。

 陸は残念そうに肩を落とす。

 

「そう、ですか……」

 

「陸坊ちゃま?」

 

「俺、ずっと母上が居なくて。もしも母上が居たなら、咲子さんみたいな人が良いなってずっと思ってて」

 

 落ち込む陸に迷った後に咲子は小さく微笑む。

 

「お恥ずかしながら、私も、お二人の事を我が子のように思っておりますよ」

 

 その言葉に陸は驚いた顔になる。

 それから泣きそうな表情をした。

 

「抱きしめて貰っても良いですか?」

 

「えぇ、もちろん」

 

 咲子の腕が陸に伸びる。

 そのやり取りを聞いていた縁種が駆け足で二人に近付いて叫ぶ。

 

「陸! お主の母はここにおる! お主は妾と朱季の──―」

 

 そう叫んで陸を後ろから抱こうとするが、その腕は空を切るだけでら決して我が子に触れる事はなかった。

 そうして代わりに咲子の腕が陸を体を包む。

 

「母上……!」

 

 感極まった様子で陸は咲子の抱擁を受け入れた。

 それを見ていた縁種は言いようのない敗北感を覚えて後退り、悟堂咲子の顔を強い憎悪の眼で睨みつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




縁種の結末はヒロインのルートによって変える予定。

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