美季に渡された日記は明治に書かれた物である為、読むのが少し難しかったがどうにか内容は理解出来た。
日記の始めの部分は神門空との結婚生活に関する事。
あまり重要そうでない部分を流し読みしつつ日記を読み進める。
夫婦の結婚生活に翳りが見えてきた辺りまで進む。
結婚生活五年目で未だに子供を授かれない事。
それが過去の患った結核の病が原因なのではと噂されている事。
何よりも、夫である神門空が奉公人として雇っている少女と肉体関係にある事等。
この当時はまだ、神門と悟堂の間に子供が作れない事は認識されてなかったらしい。
夏織という女性が日記の中で神門空との間にいつまでも子供が出来ない事に深く悩んでいる事が綴られていた。
「……」
読めば読む程にこちらまで暗い気持ちになる。
ざっと読んでも結婚当初はそれなりに幸せであろう事が読み取れるのに、不倫を察知してからの心情を読むのが辛い。
何よりも心にくるのは、神門空の取っている行動が将来そのまま自分に当て嵌まるかと想像すると、お腹がキリキリと痛み、吐き気もするように思えた。
神門空の不倫が周囲に知れ渡ったのは、相手である桑木遊子の妊娠が発覚したのが始まりだったそう。
ちょうど海外から帰ってきた神門朱季も大激怒。
双子の弟である神門陸はとっくに家を出て、実子は空一人だったが、勘当にまで行きかけたらしい。
それを周囲の説得────むしろ跡取りが出来た事を喜ぶべきだと。
むしろ、結婚生活が五年経った今でも子供が出来ない夏織を責める声もあったという。
結局は押し切られる形で空と夏織の離婚。
悟堂夏織は母と一緒に神門の屋敷を出る事となった。
と言っても、母娘共々長らく神門の屋敷で生活していた為、商会関係者の家に身を寄せる形となった。
(まるで下賜されたみたいだ……)
そんな失礼な感想を自覚しながら四季は日記を読み進める。
この辺りになると、時折噂話などは聞くが、神門とは距離を置いていたらしい。
当然であはるが。
穏やかな日々が続く中で、夏織は商会の男性と心を通わせるようになっていった。
夏織はその男性と後に再婚。
相手方は実家とは折り合いが悪かったらしく、形だけの婿養子という事で話が纏まり、悟堂の姓が残る事となった。
空とはどれだけ望んでも出来なかった子を再婚後すぐに授かる事となる。
再婚した当初は自分はこを望めないと思っていた夏織は大層驚いたようだ。
悟堂夏織の子である娘はすくすくと育っていき、この辺りは成長日記に近かった。
夏織はもう直接的に神門と関わる事は無いだろうと思っていたようだ。
しかしある日に、夏織は神門朱季から文が届く。
その内容は、かつて夏織が弟のように可愛がっていた幼馴染み。
神門陸の訃報を知らせる内容だったのだ。
そこまで読んで四季は一旦日記を閉じた。
慣れない明治時代の日記を読むのに思った以上に時間がかかり、もう夜だったからた。
それに、ここから先を読むのが怖いという気持ちもある。
「読めば読むほど自分の先祖がやった事を知るのがキツい……」
ちょっと時間を置かないと呑み込める自信がない。
自分のヘタレ具合に辟易しつつ、日記を枕の横に置いた。
翌日の検査でも特に異常は見当たらず、四季の退院は問題なく許可された。
神門夫婦は四季の実母である澤木育美を訴える準備を淡々と進めているという。
それに対して、父である神門倫也が話をする。
「という訳で、裁判には四季にも来てもらう事になるが、大丈夫か? あんな母でも訴えるのが辛いならこっちで話を進めるが……」
「いえ、大丈夫です。母の事はちゃんと向き合わないと。これで最後でしょうし」
今回が本当に最後で、もう会うことがないように、徹底的にやっておきたいのが本音だった。
それとは別の問題だが、四季と倫也がよそよそしい。
四季からすれば今まで会ってこなかった親戚の人くらいの感覚であり、倫也からすれば、物心つくかつかないかくらいの頃から放置してた子供だ。
互いに距離を測り損ねてどう話せば良いのか分からない。
裁判に関しては大人達が話を詰めると言う事で、四季は病み上がりで休むように言われた。
集まっていた大部屋を出て自分の部屋に戻ろうとすると、少し離れた位置から夏海が見えた。
近づいて声をかけようとしたが、その前に向こうがこちらに気付く。
「な────」
夏海の名を呼ぼうとしたら、向こうは顔を逸らして慌てた様子で自室に入って行った。
まるで逃げるように。
「あれ?」
どうしたんだろう、と思っていると、後ろから秋葉が抱きついてきた。
「四〜季〜さ〜ま〜。退院おめでとうございますぅ」
にこにこと退院を祝う秋葉は、不思議そうに四季の身体に触れてきた。
「本当に刺されたんですかー? こんなすぐに退院出来るなんてちょっとじゃなく異常ですよー」
「そう、ですよね……僕にもよく分かりませんが……」
どうして刺された傷が完治したのか、四季にも分からないのだから仕方ない。
思い当たる節が無いわけではないが────。
心配と疑問から考え込む秋葉に四季が別の話を振る。
「それより、秋葉さん」
「はい〜?」
「今、夏海と目が合ったら逃げられちゃったんですけど。なにか知ってますか?」
「
唇に指を当てて、少し考える秋葉。
そこから一歩下がってポンと手を叩く。
「あぁほら。今回、四季様が夏ちゃんを庇って怪我なさったでしょう〜? それで冬姉にもすごく怒られましたしぃ。何より、護衛対象の四季様を守れなくて顔を合わせづらいのではぁ」
想像ですけどねー、と締め括る秋葉。
そんな事は、と反論しようとしたが、秋葉に言っても仕方ない事だと思い留まる。
「ボクの方からフォロー入れておきますかぁ?」
「いえ。僕の方から話します。というか、話さないと」
「そぉですかぁ? ならお願いしますねー」
秋葉が離れていくと夏海の部屋の前まで移動する。
軽くノックをした。
「夏海、ちょっといい?」
一分くらい間が空いた後にドアが開く。
彼女は気まずそうな顔で四季を見たり視線を逸らしたりしていた。
「な、に……? 四季?」
「うん。話がしたくて。入っていい? それとも僕の部屋に来る?」
「大丈夫……」
少しだけ怯えたように見えるが、部屋の中に入れてもらえた。
「話って?」
だが、やはり緊張している様子だ。
その態度に四季は調子を狂わされる。
「今回、あの人がやった事で冬雪さんに怒られたって聞いて。その、ごめん……」
「……どうして、謝るの?」
「どうしてって……」
震える声で夏海は自分の腕を掴んで話す。
「守るのはアタシの役目なのに……!」
役割を取られた子供のように不安げな表情。
次に発せられた言葉は四季にとって意外な物だった。
「それに、四季はアタシを助けた事を後悔してるんでしょう?」
「へ?」
どうしてそうなるのか四季には分からない。
夏海が両手の指を絡ませると、その仕草が不謹慎にも可愛いなあっと思った。
「だって、最悪って……」
「はい?」
そんな事をいつ言っただろうと本気で考えて首をかしげる。
「病院で、目を覚ました時に、アタシを見て、最悪って……」
「ん?」
病院で目を覚ました時。
(あの時、誰か居たっけ?)
記憶が曖昧で誰が居たのかすらよく覚えていなかった。
そもそも────。
「そんなこと言ったっけ?」
「言ったよ。言った……」
「ごめん、覚えてない。だからさ、その言葉も夏海を意識して言った事じゃ無い筈だよ」
いや本当に。なんでそんな事をいったのかまったく覚えてないのだ。
あの時の事で後悔してる事といえば、母親と会った事くらいか。
「だから、夏海はなにも気に病まなくていいんだよ」
その言葉に安堵したのか、夏海は目を閉じて息を吐く。
倒れ込むように、夏海は自分の頭を四季の胸に預けてきた。
「よかった……嫌われたのかと思った……」
「……僕が夏海を嫌うことなんてないよ。だって────」
そこから先を口にして良いのか迷い、口を噤む。
それを口にすれば、過去の、先祖の過ちと重なる気がして。
誤魔化すように、夏海をベッドに押し倒す。
「あ……」
「夏海、したい……」
正直、病院で寝て過ごした時間を含めてかなり溜まっていた。
それが夏海と二人きりになって我慢できなくなっている。
好き勝手求める事に嫌悪感を抱きながらも拒絶されないという事実に安堵していた。
そのまま唇を重ねて舌を絡ませた後に顔を離した夏海の方から提案する。
「うん。替わって」
嬉しそうにはにかんだ夏海が上下を入れ替えてきた。
スボンのジッパーを下ろすと、中から肉棒を取り出し、フェラを始める。
「たった数日だけど、すごく久しぶりな気がする」
竿の部分を指で撫でるように動かす。
それがマッサージのようで気持ち良かった。
ある程度大きかった肉棒は更に大きさと硬さが増す。
「すぐに気持ち良くして、楽にしてあげるね」
口いっぱいに四季の肉棒を咥えてくれる。
「んっ……ん……」
動く舌の感触と先端に当たる喉の震えが心地良かった。
喉を鳴らす度に肉棒が刺激されてこのまま射精してしまいそうだった。
手の甲を噛んで我慢している四季に気付く。
「ふぃーほ……はひへ……」
そう言って目を細める夏海。
亀頭のエラをアイスクリームを舐めるように舌を動かすと、堪らず射精してしまう。
「うっ!?」
噴き上がるマグマのような熱い白濁液が、夏海の口を汚す。
それを咀嚼しながら飲み込む。
ゴクンと喉を鳴らした後に小さく咳き込んだ。
「すごく濃かった……それに量も」
「溜まってたから」
「うん」
上半身を起こしてシャツの下から手を忍ばせて胸を揉む。
「あ、ちょっと……!」
ブラの上からこうして触れるだけで背を反る程に反応してきた。
「ビックリした?」
「それも、あるけど。昨日から、ずっと嫌われたんじゃないかって気が気じゃなかったから。違うって分かって安心して……んっ!?」
少し揉み方を変えただけで強く反応してくれる。
四季は夏海のシャツを捲り、腕を背中に回してブラを外す。
「あ……四季……」
露わになった乳房を赤ん坊が甘えるように吸い付いてくる。
反対の胸を揉み、もう片方の手で尻肉を撫でてきた。
触り心地の良い肉付きをしている夏海の身体を貪る。
「四季……もう、元に戻って……」
お尻の割れ目に当たっていた四季の肉棒がむくむくと勃起してくる。
「夏海の
「うん。もちろん。でも、ひとつだけお願いしていい?」
「なに?」
夏海は自分の腕を四季の首の後ろに回す。
「ぎゅって、して欲しいの。ダメ?」
その小さなお願いに四季は笑みを浮かべる。
「いいよ。いいに決まってる」
「よかったぁ……」
心の底から安堵した夏海は肉棒を掴むと腰を落としていく。
「あつ……!」
先端が膣口に触れただけで滾っているのが分かる。
ゆっくりと腰を落として肉棒を自分の膣内へと迎え入れた。
「はいっ……たぁ……っ!?」
まるで初めてのようなウブな反応。
夏海は腰を動かし始める。
肉棒が膣内の肉壁に擦られ、四季が動くと子宮口に到達する。
「うんっ……あ、いぃ……んっ!? 四、季ぃ……っ!?」
夏海が四季の顔を舐めてきた。
お互いに強く抱き合ったまま、思い思いに腰を動かす。
「ハァ……四季、すき……っ!」
交わっている最中にうわ言のように繰り返す。
「僕も、好きだよ……」
「え? あ、うぅうううぅあはぁっ!?」
それがトリガーになったかのように、四季は夏海の膣内に射精した。
「四季、いまの……あんっ!?」
射精を終えると体勢を変え、下にした夏海の片脚を持ち上げて広がった股間に肉棒を打ちつける。
「夏海、好き! 僕は……っ!?」
堰を切った何度も好きと繰り返す。
片脚を下ろすと、四季は夏海に覆い被さると、真正面から視線を合わせた。
「好きだよ夏海。君が、一番……」
言ってはいけない事を言ってしまった。
その後悔をまだ意識しないように、四季は夏海の唇を塞いだ。
行為を終えて同じベッドで休んでいると、夏海が指を絡ませてくる。
「四季……さっきのは……」
聞き間違いではないのかと確認するような不安な顔での問いだった。
「本気、のつもりだよ……その、ご────」
「嬉しい……やっと言ってくれたぁ……」
甘えるように夏海は四季の胸板にすりすりと顔を寄せてくる。
嘘にしたくないと思った。
寄せてくれる好意にも、自分の気持ちも、裏切りたくないと思ってしまった。
自分の胸板に擦り寄る夏海の頭を抱く。
(なにか、考えないと……)
少女は、両親と共に連れられてやって来た屋敷。
今日は、母が昔お世話になった人が亡くなった御葬式だと言う。
両親────とりわけ母にくっついていると、ある家族が話しかけてきた。
「お久しぶりです、空様」
「久しぶり。夏織さん」
頭を下げる両親。
頭を上げると母が、目の前の夫婦がこの屋敷の主だと説明されるが、少女にはいまいち理解出来ない。
そこで相手の奥さんが一歩前に出て少女と母を交互に見る。
「御出産なさったと聞いてましたが、本当だったんですねぇ。ここに居た時は全然作れなかったのに。それとも、やっぱり意図的に作らなかったんですか?」
「遊子! やめなさい!」
奥さんの言葉に夫の方が注意すると、面白く無さそうに下がる。
「すまない、夏織さん」
「いえ。お気になさらずに」
すると相手側の夫が少女に視線を向けた。
それに気付いて母が少女に挨拶するように促す。
「ご、悟堂夏音です!」
失礼にならないようにと、しかし緊張から勢い良く頭を下げた。
「しっかり者の娘さんですね。ほら、空也。お前も挨拶なさい」
「は〜い」
父親に言われて後ろにいた少年が前に出る。
夏音は初めて少年をちゃんと視界に入れた。
「あ────」
その少年を一目見た瞬間に高鳴った胸の鼓動。
自分より倍近く離れた年の少年。
彼を見て、頬が熱くなる。
「神門空也だ。よろしくな、夏音ちゃん」
そう頭を撫でてくる年上の少年。
たったそれだけ。
なのに、まだ五歳の悟堂夏音は、神門空也に恋をしたのだ。
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