神門四季は逸る気持ちを抑えながら車の運転に集中していた。
今の彼は運転に全神経を集中してないと事故ってしまいそうな程に焦っている。
なんとか目的の場所に着き、駐車場に車を置くと、急いで建物の中に入る。
受付を済ませて、目的の部屋の前まで来た。
そこには夏海の家族が揃っていた。
秋葉が口を尖らせて抗議する。
「
「ごめんなさい。これでも急いで来たんですけど」
四季が縁種を殺害して数年。
なんと、夏海の妊娠が発覚した。
四季も夏海もまだ大学生。だがそれ以上に、神門と悟堂の間に子を設けられた事に関係者各所に衝撃が走った。
そこからあれやこれやと説明に奔走。
怒涛の日々が訪れ、神門が既に盤石ではないと周囲に知られるきっかけとなった。
「四季君……」
「お義父さ、んんっ!?」
夏海の父である今井和良に肩を掴まれると四季は痛そうに声を出す。
「娘……君にとっては将来の妻の初出産だ。それに遅刻するなんて、将来の夫としての心構えが足りないんじゃないかい?」
「……はい。そこら辺は弁解のしようもなく……」
元プロテニス選手の全力の握力を肩に受ける四季。
今井和良からの四季の印象は決して良くない。
なんせ、初対面で会った時は付き合っているとか。結婚報告もすっ飛ばしていきなり妊娠報告をする事になったのだ。
夏海の口からその報告を受けた際に、問答無用でぶっ飛ばされた。
たまにしか会えないとはいえ、大事な娘を学生身分で妊娠させた上に、せっかく入った大学も辞める羽目になったのだ。父親からして良い感情など抱きようもない。
夏海が止めに入らなかったら、もっと殴られて顔の痣が今も残っていたかもしれない。
和良は諦めた様子で息を吐く。
「そんなに忙しいのかい」
「まぁ、はい……」
神様の加護が無くなった神門。
同時にそれは財閥の後継者は神門の血縁である必要は無くなったと解釈されたのだ。
だから今の四季は神門を継ぐ候補者の一人でしかない。
父である神門倫也は息子である四季を推してるが、高校まで一般家庭かそれ以下の環境で育った四季を推す人間は意外にも少ない。
だから四季は大学生として経済を学ぶ傍ら、経営の危うい子会社の立て直しに奔走して周囲を納得させる実績を積む必要があった。
冬雪が秘書としてフォローしてくれてるからなんとかなっているが、今も眼に隈が出来てるくらいに忙しい。
「四季様。早く分娩室へ。あの子も待ってます」
「はい!」
冬雪に促されて、途中からでも立ち会いをする。
看護師に言われるままに着替えて立ち会うと、夏海が痛そうに叫んでいるのが聞こえた。
「いたいいたいっ!? 死ぬ死ぬ! これ死ぬって!!」
「大丈夫です! ほら! 少しずつ産まれてますよ!」
産婦人科医の先生がそう励ましながら徐々に子供を取り出していた。
その光景に圧倒されていると、ここまで指示し、案内してくれた看護師さんが背中を叩いてくる。
「なにボーっとしてるんですか! 早く奥さん手でも握って励ましてあげてください!」
「は、はいぃ!!」
まだ結婚してないとかまだ夫婦じゃないとかそんな反論はまったく頭に浮かばずに早歩きで夏海のところまで駆け寄ってその手を握る。
「夏海! ごめんね遅れて!!」
「しき……?」
「うん! 来たよ!」
「こない、かとおも……つ〜っ!?」
「来るよ! 頑張れ頑張って!!」
手を握ってそんな事しか言えない自分が不甲斐ない。
そこからの事は緊張し過ぎていたのかよく覚えてない。
看護師さんや夏海の言われるままに水分補給を手伝ったり、一緒に呼吸したりと役に立っているんだかそうじゃないんだか判らない時間が過ぎる。
そして────。
「おめでとうございます。元気な男の子ですよ!」
四季が分娩室に入って凡そ三時間。一時間半遅れたので、夏海は四時間半程の時間で息子が出産された。
看護師さんが赤子に付いた血を拭いてくれて。
声を上げて泣く赤ン坊を夏海が抱く。
ホッとしたように夏海が赤ちゃんを抱いていると、先生が教えてくれた。
「思ったより早く出産が終わって良かったです。一般的には五時間から八時間。人によっては、丸一日かかる出産もありますから」
「丸一日!?」
「はい。もちろん。もっと短い時間でお産を終える方もいらっしゃいますが」
驚愕している四季に先生が頷く。
「四季も、抱っこしてあげて」
夏海に言われて、四季は躊躇いながら我が子を腕に抱く。
「あ……」
その体温を感じて、目尻が熱くなって、雫が赤子に落ちる。
きっとあの時に、あの神様を殺してなかったら、今日この瞬間に我が子が生まれてくる事はなかったのだ。
ずっと怖かった。
神様をこの手で殺めたのに、何も変わってないと思う度に罪悪感で吐いてしまいそうだった。
自分のした事に意味が無かったと何年も怯えた。
やり方は他にもきっとあった。
そう思うともう動けなくなりそうだった。
だけど今は。
「夏海、この子を産んでくれてありがとう。そして……生まれてきてくれてありがとう」
「は〜い。夏生く〜ん! じーじですよ〜!」
(爺馬鹿)
(爺馬鹿だー)
(爺馬鹿です)
「爺馬鹿」
四季と秋葉と春花の三人がメロメロになって孫を抱き上げてる和良を内心で思った事を実娘の夏海だけが口に出して呆れている。
新生児の夏生が生まれて数日、毎日のように来てこんな感じらしい。
夏生を秋葉が抱きかかえるタイミングで夏海が四季に話しかける。
「四季はどう?」
「任されてる仕事の方はぼちぼちかなー。勉強しなきゃいけない事がいっぱいで」
「そっちじゃなくて、大学の方だよ。ちゃんと行ってるの?」
「単位は落としてないよ」
休む事はあるが、単位はちゃんと考えている。
「そうじゃなくて。せっかくのキャンパスライフなんだから、ちょっとは楽しんでも良いと思う」
「いやそれは……」
夏海も大変だろうに。
そんな中で自分だけ大学生活を謳歌する程、四季は面の皮が厚くない。
どう返すか悩む四季に夏海が微笑む。
「アタシはもう楽しめないし。誰かさんのせいで」
(あ。これ一生イジられるやつだ)
これからもこの事でなにかと言われるのを覚悟する。
四季自身も子供が生まれるのを望みつつ、何処かで悟堂と子供が出来る訳ないと思っていた。
それで毎晩とはまではいかなくても、頻繁にそういう事をしていたのだ。
頻度は少ないとはいえ、他の姉妹とも。
他の姉妹が先に子供が出来なかったのは幸いだった。
夏海の妊娠が発覚してからは、特別な薬でどうにか性欲を抑えている状況だった。
あまり長期的に服用し続けるのも良くないらしいが、悟堂と子供が作れるようになった以上、現状薬に頼る他ない。
「頑張ってね。パパ」
夏生を抱いた夏海が赤子の手で四季の背中を叩いた。
それから時間も流れ、夏海も退院して生活が落ち着いてきた頃。
「は……アン、四季……夏生の、分……無くなっちゃう、からぁ……」
「ごめんね。夏海の身体、久々だから……」
母乳を吸う四季をやめさせる夏海。
ずっと薬で抑え、我慢していた性欲をぶつけるように四季は夏海を求める。
乳房を揉み、腕や脚を舐め、身体ありゆる箇所を攻めた。
「うん。アタシも久し振りに、四季が欲しい」
夏海の方もまた、四季を求める。
自分から口づけをし、舌を這わせ、今は肉棒を咥えていた。
「ここをこうされるの好きだよね」
亀頭を手の平で包んで揉みながら、竿の裏の部分を吸ったり舐めたりしながら上下を移動させる。
何度味わっても飽きない刺激に四季は肉棒に力を入れて耐える。
四季のペニスから口を離すと視線を合わせてくる。
「夏海……?」
「四季、ありがとね」
突然お礼を言われて瞬きした。
「神門と悟堂の呪いを解いてくれて。そのおかげであの子が生まれた。だからもう気にしなくていいよ。これで良かったんだよ、きっと」
そう言って手を伸ばし、頭から頬を撫でてくる。
撫でてくれる感触に身を委ねていると、夏海が口に咥えたゴムを被せてくる。
夏海の妊娠が判ってから、こうしてコンドームを使うようになった。
「きて……」
「うん」
促されて夏海の膣内に肉棒を挿入する。
子供を産んで、より肉棒を包み込むか感覚が増したような気がする。
締めてくる肉壁に母性のようなモノを感じるというか。
手を握って腰を動かして肉棒を夏海の奥へと打ち付ける。
「しき、激し……ね」
「久々だけど……! 夏海の膣内……すごく、イイ!!」
夏海が身動ぎし、腰をくねらせる度に以前より艶っぽさが増している気がする。
それが余計に昂らせる。
「四季ぃ……キス、して……」
首に腕を回してくる夏海の期待に答えるように体を密着させて唇を重ねる。
動く度に小さいがベッドが軋む音がなる。
ペニスが何度も出し入れされ、子宮の入口を突く。
そして。
「ん……っ!?」
四季が射精する。
しかし、吐き出された精液は子宮まで行かず、コンドームの中に収まった。
ペニスの脈動を終えると夏海が不満そうに息を吐いた。
「物足りない……」
二人で息子の寝顔を眺めながら過ごす。
そうしていると夏海が自身の不安を吐露した。
「この子が大きくなって、その、さ……自分の性欲に苦しむ時がきたらどうする?」
もう悟堂という逃げ道は存在しない。
この子が将来、神門の性欲に振り回される時は必ずくる。
「それまでには……少しでも解決策を考えないとね」
四季が神門の立場にしがみつくのもそれが理由だった。
今服用してる薬だとまだ色々と問題がある。
データ取りの意味も込めて服用を続けるがもっと根本的な解決はいつか必要になるだろう。
四季は息子の頭を撫でた。
「頑張るから……ね?」
やることは山積みだが、今はこの幸せに浸っていたかった。
次回から秋の章に入ります。
お姉ちゃん復活。
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