【完結】【R18二次】白聖女と黒騎士【魔女狩り聖女】 作:村人JJ
『だいっ嫌いです......あなたなんか————っ 』
一度目は血を分け与えるように。
『私は抱けないんですか⁉︎』
二度目は想いをぶつけるように。
『あなたに許すのは——半分だけです!』
三度目は互いに愛を交わすように。
◆ ◇
密室に唇の触れ合う音が響く。初めは数秒の口付けに過ぎなかったが、二回、三回と繰り返すに連れて、より深く、もっと熱くと互いを求め合う。レーベンは左手をシスネの頭に回して一際強く唇を押しつけた。絹糸のような髪の撫で心地を堪能しながら、彼女の唇を存分に味わう。
「レーベ……んっ」
シスネが呼吸を求めて身を引くと、レーベンは少し間を置いてすぐに吸い付いた。息衝く時間さえ惜しかった。何度唇を重ねても飽きる微候はなく、男の獣心がその先を促してくる。
舌先で隙間をなぞってみたものの、シスネは口を開こうとしない。つんつんと入り口を叩くと伸びてきた舌に押し返された。一度レーベンの方から顔を離して、鼻先の触れ合う距離で見つめ合う。
「申し訳ない。焦り過ぎていたか?」
「そういうわけでは……その、初めてにしては、随分と積極的ですね」
慣れていませんか?と視線で訴えている。つい先刻に口吸いで失態を演じた手前、レーベンに先導されるのは不満のようだ。
「貴公に夢中なだけだ。それに、この性格で恋人を作れたと思うか?」
「それもそうですね」
判断が早い。
自分から言い出したことだが、こうも即断されると男としてはやはり辛い。
「貴公が初めてだから安心して欲しい。また不安にさせてしまったか?」
「……っ、ですから、私は不安になんか——」
「俺は不安だった」
シスネは色々と考え過ぎているようだが、不安に駆られたのはレーベンの方なのだ。蟠りを残さないためにも、行為に及ぶ前に白状することにした。
「俺では到底役不足ではないかと……レグルス殿のようには、やれないのではないかと」
我ながら女々しいことだと自嘲する。人伝てに噂を聞いたことしかなく、恋敵でもないはずのレグルスの影が、事あるごとに脳裏にチラつくのだ。彼のことを引きずっているのは、シスネではなくレーベンなのかもしれない。
「女性に経験の有無を問い質すものではありません。つい先程、注意したばかりですよね」
聞き分けの悪い子供を叱りつけるように額を指で小突かれる。それでも、シスネはレーベンに優しく微笑みかけて、
「レグルスは模範的な騎士でした。聖女と騎士に男女の関係を持ち込むような、不埒な真似に及ぶことはありませんでしたよ」
「——今の私とは違って」
レグルスとは聖女と騎士の関係であり、レーベンとは男女の関係である。つまりは、そういうことであり、
「それに、彼に伴侶がいたことも、私が初恋に敗れたこともお伝えしましたよね。浮気を持ちかけたとでも考えていたのですか?」
エイビスに刺されてしまいますよ、と苦笑と共に告げられた。あの時は死の瀬戸際で話を聞き遂げる余裕がなかったのだが、それ以上にレグルスという存在に目が眩んでいた。シスネの身も心も攫っていたのだろうと、生者では故人に及ばないと諦めに似た感情を抱いていた。
そんなレーベンのちっぽけな悩みを、シスネはお見通しだと言わんばかりに一笑に伏してしまって、
「——俺には貴公しかいない。今までも、この先もずっと」
途端に愛おしさが込み上げてきて、衝動に駆られてシスネを抱き寄せた。勢い任せに唇を奪おうとすると、人差し指を宛てがわれて制止される。
「待ってください。明かりを消していただけませんか」
「……今更ではないか?」
レーベンは上衣を娼館に置いてきてしまい、シスネに至っては下穿き一枚という過激な格好だ。既に裸を見せ合っているようなものだが、シスネは両腕で胸元を隠して、咎めるように睨みつけてくる。
「前にも言いましたよね。じろじろと見られるのも、恥ずかしいのも無理なんです」
さっきまでは自ら進んで装束を脱ぎ捨て、レーベンに乳房まで触らせていたはずなのに。
——見られたくないのなら何故わざわざ晒すのか。
かねてからの疑問が再燃したが、この場で口走るような失態は演じない。素直に従うのが無難だと学んではいたが、今回は引き下がることができなかった。下心がないといえば嘘になるが、それ以上に、
「すまない。薄暗い中でうまくやれる自信は無いのだが」
黒く変色した右の瞳を見せつけるようにして訴える。その意図を読み取ったシスネは苦虫を噛み潰したように顔を顰めた。
そう、中途半端に右目の視力を取り戻した結果、レーベンの左目はなかなか単独で遠近感を掴めずにいるのだ。日中でも階段の上り下りには神経を使い、夕闇の中で帰路に着く際には路傍の石にも注意が必要になる。聖性の恩恵にあずかれるようになったことで、身体が隻腕隻眼に戻ることを拒んでいるようだった。日常生活を送れる程度には慣れたが、繊細な作業には未だに聖性が不可欠なのだ。
ただでさえ半分に狭まった視界の中で、月光だけを頼りにシスネの局部に触れるのは困難を極めることだろう。うっかり触りすぎる程度なら平手打ちで済むだろうが、加減を誤って敏感な乳頭や陰部を傷つけでもしたら洒落にならない。女子の柔肌は腫物と思って触れるべし——レーベンの愛読していた官能書の教えである。
「それは……そう、かもしれませんが」
『半分しか許さない』などと豪語したばかりである。決まりが悪いのかシスネは言い淀むばかりで一向に目を合わせようとしない。レーベン相手にはいつまでも素直になれず、体面を保とうと意固地になってしまう。何彼に付けて主導権を握りたがるシスネの悪癖だった。
もっとも、この程度で愚痴を吐くようでは捻くれ者の相方など務まらない。
「どうしても、このままでは駄目だろうか」
欲を言えば明かりより聖性が欲しかったが、高望みが過ぎるというものだろう。シスネの機嫌を損ねないよう、許しを請うかたちで妥協を申し出る。
「顔も見えない暗がりの中で、手探りで貴公に触れるような真似はしたくない。もう一度言わせてもらうが、俺は貴公を手放したくないんだ」
「もっと貴公を見つめていたい。——シスネに、直に触れたい」
純粋な本心からの言葉だった。だからこそ、シスネはいつだってレーベンに心を揺さぶられる。あらぬ方向に逸らされていた黒い瞳が、ゆっくりと灰色の瞳に向き合い、
「……今夜は、月明かりが弱いようですね」
消え入るような声で紡がれた言葉だった。それが、彼女なりの精一杯の応え。
「勘違いしないでください。見られるのは本当に苦手なのです。自意識過剰な自覚はありますが、色々なことを考えてしまって——」
シスネは羞恥に顔を染めながらも胸元で交差させていた両腕をそっと解いた。柔肌に刻まれた無惨な傷跡が、丸みを帯びたなだらかな乳房が、固く隆起した桜色の乳首が、部屋の薄明りの下に晒される。
「だから、あなたが忘れさせてください」
「私も、あなた見てほしい。——レーベンに、触れられたい」
シスネは寝台に体を倒して、仰向けの姿勢で両腕を大きく広げた。普段の彼女からは考えられないほど大胆な誘いだった。極度の興奮状態に陥っているのか、あるいは——ついにレーベンに身も心も委ねたのか。
シスネを抱きたいという欲望が目の前で実現を果たして、レーベンの男性は天を衝くようにそそり勃つ。ズボンを押し上げる股間の膨らみにシスネは呆れ半分で苦笑いをこぼした。
「やっぱり趣味が悪過ぎますよ。こんな身体に興奮できるなんて、物好きにも程があります」
もう半分は自嘲だった。シスネの自己評価の低さは筋金入りであり、旧聖都の災厄を乗り越えた今でも自虐癖は治っていない。笑っているのは自身の傷痕か、それとも体型か。両方である事は想像に難くない。
今までは軽く聞き流してきたし、レーベンの方から胸も器も貧相だと揶揄したことさえあった。そのはずなのに、自分を卑下するシスネの姿に耐え難い痛みを感じてしまう。これも、惚れた弱みなのだろうか。
「どうかそんなことを言わないでくれないか」
気づいた時にはシスネの手を取って訴えていた。
「俺にとって、貴公は誰よりも美しい。初めて会った日からずっと見惚れている。一目惚れだった」
あまりにも直球すぎる口説き文句に、流石のシスネも顔を赤くして言葉を失った。反論させないように唇に吸い付き、半開きの口から舌を捩じ込んだ。唾液を交える水温を響かせながら、左手でシスネを胸板に押し付ける。
それほど身長に差のない二人である。密着すれば自ずと乳首が擦れ合い、布越しに陰部が接触する。そのまま身体が溶けて一体化するような感覚。シスネの体温や息遣いが直に伝わり、ゾクゾクとした快感が背筋を駆け巡る。レーベンは夢中で全身を擦り付けながらシスネの口内を弄った。
なされるがままになっていたシスネも、やがておずおずと舌を差し出した。ねっとりと絡め合いながら唾液を垂らすと、こくり、と彼女の喉が鳴る。細い両腕はレーベンを突き放すことなく、ふわりと背中に回された。溢れた唾液が口元を汚すのも気に留めず、息が切れるまで互いの粘膜と口腔を貪り合った。
「俺は、物好きではない。シスネが好きなんだ」
名残惜しさに耐えながら口吸いを終えて、荒い息のまま想いを告げる。シスネの黒い瞳は涙で潤み、宝石のような輝きを放っていた。光に誘われる鴉ように、レーベンはそっと瞼に唇を落とす。その意図を汲み取ったシスネが泣き笑いを浮かべた。
「憧憬の証、ですか。こんな女を相手に……馬鹿ですよ。本当に」
「知っているのか」
「私だって昔は幼気な少女だったんです。思春期は人並みに恋に焦がれていましたよ」
官能書にしか記されてない雑学である事はシスネの名誉のために黙っておく。どのみち、それ以上の言葉は不要だった。レーベンへの返事は耳への口付け。夜の営みへの暗黙の誘い。
彼女の求めに応じるように、レーベンは左腕を伸ばして乳房を掌で包んだ。お世辞にも発育が良いとは言えず、指が埋まるような大きさもないが、女特有の確かな肉感を感じる。慎重に力を込めたつもりが、呻き声を伴いシスネの上体が跳ねた。
「痛かったか? 強過ぎただろうか」
「っ、大丈夫、です。慣れていないだけなので……その、続きを……」
シスネは両目をきつく瞑り、口元に運んだ右手の指を噛んだ。視覚を断つことは触覚を鋭敏にする気もしたが、確かな知識もないレーベンは下手に助言できない。恐る恐る愛撫を再開するほかなかった。丹念に乳房を揉みしだきながら、乳首をそっと指先で弾き、優しく摘み、くりくりと捏ね回す。
『下手くそが加減を間違えれば快感どころか拷問の如し』
御者の忠告が頭をよぎる。必死の形相で喘ぎを堪えるシスネは気持ち良くなっているのだろうか。素人の自分に気を遣って苦痛を押し殺しているのではないか。
「くっ……ふぅ、んっ」
くぐもった声からは判断がつかず、レーベンはなかなか次の行動に移れない。せめて少しでも痛みが和らげばと、左の乳房に顔を寄せて、べろりと舌で舐め上げた。
「あぁッ——」
喜悦の悲鳴が上がる。苦悶の声とは明らかに異なる、艶かしい声色だった。シスネは慌てて両手で口を塞いだが、レーベンは天啓を得た心地だった。
右胸を指で弄りながら、左胸にも愛撫を施し始める。乳輪をなぞるように舌を這わせてから、ぷっくりと膨らんだ乳首を口に含んだ。先端を舌先で何度も突き、ぺろぺろと舐め回した後に軽く歯を立てる。
「ん——あっ、レーベ、ン……レーベンっ」
シスネは譫言のようにレーベンを呼びながら、その後頭部を抱えて自ら胸に押し付ける。彼女の方から自分を求めているのだ。興奮に脳が痺れて、レーベンは甘噛みした乳首を強く吸い上げた。ちゅうちゅうと大袈裟に音を立てると一際大きな嬌声が上がる。シスネは体を捩らせながら、はしたなく内股を擦り合わせていた。レーベンも誘われるように下腹部へと手を伸ばす。
「っ、待ってください。駄目ですっ、やめて——」
濡れている。粗相したのかと紛う程に、下着がぐっしょりと水気を帯びている。左手を中に潜らせると粘性のある液体が指に纏わりついた。割れ目から絶え間なく溢れ続けている。
「貴公……」
「お願いですから何も言わないでください……」
レーベンが下穿きから手を引き抜くと、零れた愛液は股を伝って毛布にまで染みを生んだ。シスネは両手で顔を覆い、泣きそうに声を震わせる。
「あなたの言った通りです。体は性に正直な……いやらしい、穢い女なんです」
「こんなの、誰にも、見られたくなかったのに……」
脇腹が弱いだけではなかった。シスネは単なる擽ったがりではなく、体が刺激に敏感なのだ。数分足らずの胸への愛撫で下着を湿らせてしまうほどに。
それが、シスネの隠し続けてきた体の秘密。誰にも晒すことのなかった痴態。唯一人、目の当たりにしたレーベンは、
「貴公に穢いところなどない」
愛液に塗れた左手を掲げて、シスネに見せつけるようにして舐ってみせた。黒い瞳が愕然と見開かれる。
「何を考えているんですか⁉︎ そ、そんな穢い真似を——」
抗議の声を遮るように、指先に愛液を広げて眼前に近づけてやった。シスネは真っ赤になって口元を抑える。レーベンは躊躇うことなく二本指を口に含んだ。味や匂いなどよく分からなかったが不思議と興奮を誘われた。
「これが貴公の味なのだな。何というか、その、興奮する」
「〜〜〜〜っこの変態! 恥ずかしいことを言わないでくさい」
怒らせてしまったのかもしれないが、泣かれるよりは余程いい。シスネは泣き顔も美しいが、普段の無愛想な仏頂面や、憎らしい薄笑いの方がよく似合う。
何より、穢いのは自分の方なのだ。そのことを示してみせるように、レーベンは下穿きごとズボンを脱ぎ去った。
解放された男性器が力いっぱい反り勃ちシスネの視線を釘付けにする。品定めのように凝視されるのは男といえども恥ずかしい。とはいえ、シスネにばかり恥をかかせるわけにはいかないから、
「いやらしいのは俺の方だ。もうずっとこの有様なんだが 」
「貴公が褥を濡らすのを見て……その、勃ってしまったんだ」
獣欲に塗れた己の本性を暴露する。
宛ら失禁のように愛液を漏らすシスネに、レーベンはかつて無いほどに欲情した。羞恥に耐えかねて涙する彼女を肴に男性器を勃起させていたのだ。一歩間違えればその場で自慰行為を始めていただろう。
あられもないシスネの姿を自分だけが独占できるという事実。仄暗い悦びが心に芽生え、もっと見たいとさえ願ってしまった。醜い下心を懺悔するようにレーベンは平伏して頭を下げた。
「貴公の思い悩む姿に発情するような穢い男だが、失望させてしまっただろうか」
誠心誠意を尽くしたはずだったが、彼の行動はやはり常識離れしていた。いきなり男性器を露出させたかと思えば、全裸のまま土下座を始めたのだ。傍目には間抜けにしか見えないその姿にシスネは堪らず噴き出した。
「卑怯ですよ……いつもいつも、あなたは私を笑い死にさせるつもりですか?」
レーベンは疑問符を浮かべながら首を傾げたが、至って真面目なその姿勢が尚更滑稽に映り、シスネは羞恥心を置き去りにしてけらけらと笑う。清々しい気分だった。生まれついての劣等感を払拭された心地だった。平常心が息を吹き返して、奥底に秘めていた劣情に灯が宿る。
「失望なんて……そんなの、今更ではないですか」
「あなたが穢いことくらい、私はとっくに知っていますよ」
シスネは僅かに腰を浮かせて、湿り気を帯びた下穿きに手を掛ける。灰色の瞳が見守る中、恥じらいながらも迷いのない手つきで一気に脚から抜き去った。レーベンと二人揃って、一糸纏わぬ生まれたままの姿を晒し合う。
「——綺麗だ」
「どこを見て言っているんですか……」
しなやかな内腿の奥から覗く秘丘。薄らと生えた白い茂みはたっぷりの愛液でぬらぬらと輝いている。その秘裂に細指が添えられたと思えば、ゆっくりと左右にこじ開けられた。
純白の雪原に真っ赤な蕾が開花する。花弁の深奥からは止めどなく蜜が溢れ、曝け出された花芯をしとどに濡らす。入り口にはヒダ状の粘膜が、純潔を貫いた聖女の証が露出している。憑かれたように見入ってしまうレーベンに、シスネは甘い声音で誘いかけた。
「こんな体ですから、もう受け入れる準備はできています」
「あなたが望めば、今すぐにでも……ヤれますよ?」
俄には信じ難い光景だった。シスネが自ら処女膜を見せつけて、レーベンに挿入を強請っている。心臓が破裂寸前まで高鳴ったが、僅かな違和感から一線を踏み留まった。
前戯が不十分な状態での挿入は女に苦痛をもたらす。そのくらの常識はレーベンでも知っている。いくら濡れやすい体質とはいえ、シスネの提案はあまりにも性急に過ぎた。
「流石に早過ぎるのではないか? もう少し慣らしておかないと辛いだろう」
「一方的に愛されるのは性に合いません。それに、辛いのはあなたの方では?」
シスネは妖艶に微笑んでみせると、唐突に細腕を伸ばしてレーベンの陰茎を躊躇なく掴んだ。
「何を————っ⁉︎」
そのまましゅこしゅこと上下に動かしながら、空いた片手も睾丸に添えて皮袋を優しく撫で擦る。すぐ射精しないように加減された手つきだった。自分で処理するのとは桁違いの刺激に、快楽を司る中枢が悲鳴をあげる。陰茎がびくびくと痙攣して先端から先走りが迸った。
「ほら、こんなに膨らませてしまって。もう射精してしまう寸前ではないですか」
先程とは打って変わって、火が付いたシスネは艶かしい声で蠱惑を続ける。漏れ出した粘液を右手に塗り付けて、レーベンの目の前で舌を這わせた。さらに白い細指を唇から差し込み、くちゅくちゅと卑猥な音を立ててしゃぶってみせる。仕返しを兼ねたシスネなりの挑発だった。言うまでもなく効果は敵面であり、レーベンの興奮は最高潮に到達する。
「っ……俺のことは、いい。女は痛みを伴うらしいじゃないか。これ以上、貴公に負担を負わせたくないんだ」
昂りを鎮めるのに心血を注ぎながら、シスネの両肩を掴んで制止するように懇願した。気遣いを受ける資格など己には無いのだ。それよりも、今はただ彼女の体を案じたかった。どうか自分のために無茶をするような真似は慎んでくれないかと。——結論を言えば、とんでもない思い違いだった。
「ああ、もう……じれったい!」
漆黒の双眸が鋭く吊り上がり、業を煮やしたシスネが声を荒げる。先走りで滑る陰茎をぎゅっと握り締め、そのまま自身の膣口に先端を添え当てた。粘膜と粘液が直に擦れて、ぐちゅりと淫らな音が響く。
一度しか言いませんよ、と前置きしたうえで、シスネもレーベンに倣って己の罪を懺悔する。
「私は痛みに強いんです。どんなに激しい色事にも耐えられると言ったでしょう?」
「見縊らないでください。あなたの欲望くらい、全部受け止めてみせますから!」
聖女と騎士は男女の関係ではない。いったいどのような面構えで、シスネはそんな御高説を垂れていたのだろうか。相方の騎士と唇を重ねて、唾液を絡ませて、裸を晒して、愛撫を交わして、陰部を擦り合わせている。もはや彼女は聖女ではない、淫乱な売女も同然だ。
苦難の末に聖性を取り戻したというのに何もかもが台無しである。シスネは聖女の誇りを踏み躙り、後ろ足で泥を掛けたのだ。今までの積み重ねを自ら無に帰すという愚行。それでも、清貧たる聖女の身には到底許されない、禁じられた望みを持ってしまったから——
「初めては——指ではなくて、あなたが欲しいんです!」
この騎士が、欲しいと。
「……すまない」
「許しません。どれだけ女に恥をかかせるつもりですか」
「誠に申し訳ない」
「その定常句は前回が最後です。もう忘れましたか?」
「ああ、そういえばそうだった」
許しを請うのが間違いだったのだ。
ずっと、不安に囚われていた。全て自分の独り善がりではないかと。シスネは自分のことなど求めていないのではないかと。確証を得られない不安に怯え続けて、挿入を目前に迎えてなお尻込みしていたのだ。
どこまでも不甲斐のない、小心者だと呆れられたことだろう。それでも、彼女がここまで背中を押してくれた以上、恥の上塗りはできないから。レーベンは一切着飾ることのない本心からの望みを口にする。
「今すぐシスネが欲しい。優しくできるか分からないが、どうか挿れさせてくれないか」
返事の代わりは口付けだった。両頬に白い手が添えられて、唇にがぶりと歯を立てられる。噛み跡からは一筋の鮮血。シスネは赤い雫を舌で舐め取り、唾液と混ぜてレーベンに口移しをする。口内を生暖かい感触に満たされて、じわりと鉄の味が広がった。
途端に視界が明瞭になり、力無く垂れていた片腕が持ち上がる。聖性を使われたことを理解するより早く、レーベンはシスネを抱きしめていた。全身で彼女を愛したかった。右腕に素肌の温もりを感じながら抱擁の心地に酔い痴れる。シスネは首筋に顔を埋めて、耳元でそっと囁いた。
「あなたの全部を、私にください」
7/27挿絵を追加しました。ご許可をくださった甲乙様に感謝いたします。
なお、抱き枕カバーを買うと今ならセットでマウスパッドがついてくる模様。
考案者(甲乙氏)曰く、「平らで使いやすく機能美を追求した作品」。
【挿絵表示】
シスネの属性は?
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ドS
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ドM
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ハイブリッド
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