※この作品はR-18です。

朱き遺志に誘われて   作:東雲。

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エピローグ:新しい日常

 ―――七日後。

 ハンターは城塞高地の氷窟で氷狼竜ルナガロンと対峙していた。その傍らにはフィオレーネとアルロー。今回はハンターが二人を誘って狩りに赴いていた。

 ハンター達の連携により、ルナガロンは瀕死と言ってもいい状態にまで追い込まれている。ここに至るまでの戦闘で最も活躍したのは―――フィオレーネだった。

 

 ここ数日、フィオレーネは普段以上のパフォーマンスを発揮し続けていた。モンスターの攻撃を的確に躱し、得物である片手剣の対応力の高さをフルに活かしてモンスターを翻弄する。

 集中力を失いモンスターにボコボコにされていたのが嘘のような技の冴えで、フィオレーネは王国の剣に恥じぬ大立ち回りを見せていた。

 

「気炎ッ……万丈ォォ!」

 

 今もまた、裂帛の気合と共に放たれる盾によるアッパーカットが、ルナガロンの顎を強烈に打ち上げる。脳を揺さぶられ昏倒するルナガロンに間髪入れず追撃を叩き込む。

 

「やるなフィオレーネ! こりゃ俺も負けちゃいらんねえなぁ!」

 

 そして、フィオレーネが作った隙を見逃す二人ではない。アルローは銃槍(ガンランス)をルナガロンの首に突き刺し、そのまま竜撃砲を放つ。ハンターが剣斧(スラッシュアックス)を剣に変形させ、風を裂いて切り刻む。

 だが、ルナガロンも王域三公の一角。昏倒から復帰した直後にけたたましい咆哮を上げ、一度身を沈めたかと思うと、一直線にハンターへ向かって跳び、両手の爪を交叉させ斬りかかる。

 

 ――だが、ハンターはそれをこそ待っていた。

 

 稲妻を纏うが如くスパークする剣斧を身体の後ろに構え、タイミングを合わせて振り上げる。剣先とルナガロンの爪が接触した瞬間、強烈な爆発が剣斧から放たれた。

 指が弾け飛びそうな激痛に怯むルナガロンだが、ハンターの反撃はこれで終わりではない。剣そのものが稲光を放ちながら放たれる、旋風を伴う必殺の二連撃がルナガロンを襲う。

 

 それでもなお立ち上がるルナガロンに最後の一撃を叩き込もうとしたハンター―――の眼の前で、

 

「せいっ!」

 フィオレーネによる斬撃が喉笛を裂いてとどめを刺した。

 

 全ての力を使い果たし倒れ伏すルナガロンを見下ろし、心なしか不服げに火花を散らす自分の武器を背中に仕舞ったハンターは。

 

「………」

 

 『勝ったから、まあいいか』と思うことにした。

 

 

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 観測拠点エルガドに帰り着いた三人は、互いの健闘を称え合っていた。

 

「また、腕を上げたな『猛き炎』。最後の激突は実に痛快だったぜ!」

「ああ、貴殿の成長には本当に驚かされる。共に戦う盟友として、私も鼻が高いよ」

 

 ハンターは称賛を素直に受け取ってから、チッチェ姫にサイドターゲットの報告をしに行った。ハンターが居なくなったことで自然と話題の中心がフィオレーネに向く。

 

「お前も随分と調子が良いじゃねえか。何か良いことでもあったか?」

「ええ、ありました。おかげで全身に活力が漲っておりますとも」

 

 アルローは少し前のフィオレーネの不調を感づいていた。だが、今回の彼女の動きを見れば、それは一過性のものに過ぎなかったのだろうと考え直す。

 戦友の無事と成長に、アルローは内心安堵していた。

 

「ふーむ…言われてみるとなんか肌とかツヤツヤしてんな。潮風結構キツいってのによ」

「潮風を気にしたことはありませんが。ですが最近は――ええ、精力には困らないもので」

「滋養食か? メシそんな変わってたっけかなあ」

 

 フィオレーネの言動に首を傾げるアルローだったが、二人とも立場ある者達だ。いつまでも雑談に時間を費やしてはいられない。

 

「――では教官、私は彼と共に提督に報告しに行きますので、これにて」

「お? おう、狩りに出るときはまた誘ってくれや! お前達と狩りに行く度に、俺はガンガン若返るからよ!」

 

 ハンターを呼び付け、指揮所へと向かっていくフィオレーネをアルローは軽く手を振って見送った。

 

 

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 騎士団指揮所の天幕の下で、フィオレーネはハンターを後ろに控えて提督ガレアスに狩猟の大筋を報告する。

 

「――以上が、ルナガロンの調査結果です。城塞高地周辺に少数のキュリアを確認しましたが、ルナガロンに接触している様子はありませんでした」

「ご苦労。現状、キュリアはルナガロンを避けていると見るべきか」

「フィオレーネお疲れぃ。…キュリア達も相手は選んでるのかもね。自分らを逆に従えてしまいそうな奴とは、もう付き合いたくないーってな感じで」

 

 思案するガレアスの横からバハリが割り込んでくる。口調は軽いがその内容を捨て置けるフィオレーネではなかった。

 

「確かに…。自分の都合で操ろうとして、逆に宿主の都合の良いように利用されるようでは意味が無い」

 

 フィオレーネが見解を口にすれば、ガレアスも懸念を零す。

 

「そうだな。メル・ゼナは共生関係を築けていたが、他の竜ではキュリア側が支配される可能性もある。キュリアはそれを本能的に察知している、というのか」

「ただそーなると、キュリアはモンスターの能力、もしくは脅威度合いを識別できてるってことになるぞ? ただでさえ謎だらけの生態だってのに、あんな蝶々みたいな身体のどこにそんな知能があるんだか」

「バハリ、それを調べるのが貴様の仕事だろうが」

「わかってるって。ちょっと愚痴っただけですよっと」

 

 隙あらば軽口を叩き始めるフィオレーネとバハリの間にハンターが割って入り、ガレアスが口を開く。

 

「今後のキュリアの活動次第ではそれも覆りかねない。キュリアの調査は継続して進めていかねばならんな。…『猛き炎』よ。貴殿の力を引き続き私達に貸してほしいが、頼めるか?」

 

 ハンターは即座に頷く。快い返事にガレアスは小さく笑みを浮かべ、大仰に頷いて返した。フィオレーネはそんなハンターの腕を取る。

 

「その返事が聞けて嬉しいよ。さあ、今日の疲れを癒そうじゃないか。貴殿の部屋で祝杯を上げよう!」

 

 若干強引にハンターの手を引きながら指揮所を出ていくフィオレーネの後ろ姿を、バハリとガレアスは眺めている。手を頭の後ろで組んだバハリが提督にちらりと視線を向けた。

 

「なんか、距離縮まったって感じしますねえ。思いません? 提督」

「ふむ、そうだな。仲良きことは美しき哉、というやつだな」

 

 まるで親のような温かい目線を去っていく二人に向けるガレアスの傍ら、バハリは少し苦笑していた。

 

(――あれ、そーゆー微笑ましい感じのモンかね? ま、なんでもいいか)

 

 

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 客人であるカムラの里のハンターの為に用意された船室。普段は開放的に開け放たれているが、今は扉も窓も閉め切ってカーテンを下ろし、外界から可能な限り途絶された空間を形成していた。

 その部屋の中にいるただ二人、ハンターとフィオレーネは腰に腕を回して恋人以上のディープキスを重ねていた。

 

「んっ♡ んぅうっ♡ はあっ♡ んくっ♡ ちゅっ♡ ぇるっ♡」

 

 ひとしきり唾液を交換した後、二人は少しだけ口を離す。興奮に頬を染めたフィオレーネの唇を伝う銀の糸は、彼女が口を開き直したことでぷつりと切れた。

 

「ぷはっ♡ …貴殿、先の報告で私がキュリアへの見解を述べた時、後ろで少し笑っていただろう? あれはどういう意味だ?」

 

 男はフィオレーネの外套を脱がしながら、「どの口が言うのかと思った」と話す。フィオレーネは男の手に逆らわず、得意げな笑みを浮かべながらされるがままに衣服を手放していく。

 

「何のことやら。私(・)は(・)キ(・)ュ(・)リ(・)ア(・)の(・)後(・)遺(・)症(・)に(・)よ(・)り(・)、不(・)定(・)期(・)に(・)男(・)の(・)精(・)液(・)を(・)求(・)め(・)る(・)よ(・)う(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)。貴(・)殿(・)は(・)そ(・)の(・)事(・)情(・)を(・)知(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)が(・)た(・)め(・)に(・)、私(・)に(・)付(・)き(・)合(・)っ(・)て(・)く(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)…だろう?」

 

 王国騎士用の軽装鎧を外し、下着姿のまま飄々と言い放つフィオレーネに、ハンターは「強かだな」と返す。

 

「強かでもなければ、女だてらに騎士は務まらないとも。まあ今は――騎士の立場は忘れさせてもらおうか?」

 

 軽快に言いながら、フィオレーネはハンターの腰部鎧の隙間に手を差し込む。既に充血した肉棒の感触が布越しに手に伝わり、フィオレーネの目の色が変わる。

 

「狩りの後は、身体が昂ぶるものだ。今までは柔軟や自己鍛錬で発散していたが…もうそれらでは発散なんて出来そうもないな…♡」

 

 フィオレーネの手がインナーの中にまで潜り込み、緩やかに肉棒を擦る。快感を与えるためではなく、興奮を煽り立てる為に加減された手淫が、男の吐息を荒げさせる。

 

「さあ、今日も好きなだけ私を味わってくれ…♡ 遠慮はいらない。その分私も、貴殿を味わうのだからな♡」

 

 甘ったるい声が男の耳元で囁かれる。すっかり肉交の甘露に味をしめたフィオレーネに、ハンターは「三日前にしたばかりだろうに」と呟く。

 

「その三日でここまで張り詰めている貴殿も貴殿だと思うがな? ほら、貴殿の精嚢もこんなに重い♡ さぞかし溜め込んでいると見えるぞ♡」

 

 うっとりと細めた目で男の顔を見つめながら、フィオレーネは男の陰嚢を指で持ち上げる。指にかかる重さは、あの日と全く変わらない確かな質量を感じさせた。

 

 フィオレーネはニマリと笑ってハンターを伴いベッドへ向かう。ゆるく手を引かれながら、『いつかバレやしないだろうか』と一瞬ハンターは思ったが、口にはしない。考えてみれば別にやましいことはないのだし、結局はこの関係をハンター自身も望んでいるのだから。

 

 ベッドの前までハンターを連れてきた下着姿のフィオレーネは、ハンターから手を離してベッドに倒れ込む。狩猟の間に綺麗に洗濯・乾燥されたシーツは太陽の香りをフィオレーネの鼻に届けるが、その中に微かに残ったハンターの匂いを感じ取る。

 愛しい人に全身を包まれている感慨に、フィオレーネは少女のように無邪気な笑みを浮かべる。しかし、自分を見ている男の視線に気付いたフィオレーネが、まるで腹を見せるガルクのようにごろりと寝転がって見せたその表情は――淫猥な欲望に満ちた雌のそれだった。

 

「さて、貴殿。――どうする?」

 

 今しがた人の逸物を苛つかせておきながら『どうする』とは。内心苦笑しながらハンターはベッドの上のフィオレーネに覆いかぶさる。衣服を荒っぽく脱ぎ捨て、己の武器をフィオレーネに見せつけながら。

 

「好きに、させてもらう」

「…♡」




本作は以上にて完結となります。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。

余談
ルームサービス君とフカシギには口止め料(マタタビ)を渡して退室してもらってます。

2022/08/15追記
(案の定)サンブレイクアップデート第一弾によりルナガロンの傀異化が追加されましたが、本作はアップデート前の世界なので問題ありません。
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