~ひかり視点~
周りに用心しつつ、私とエルちゃんが人質のところまで少しずつ近づいていく。
「亜人たちの様子はどう、エルちゃん?」
「人質の周りに全員が集まっていて、やっぱり他にはいないみたい。」
私が周りを警戒しているので、エルちゃんはゆっくり歩きながらでも問題なく能力をフルに使えることができる。
「私たちには気づいていないみたいで、亜人たちは1階の奥の方にいるよ。」
反応があった地点をゆっくりと覗き込む。
どうやら奥は作業場だったらしく、かなりの広さだった。
そこには、3人の人たちを取り囲むように5体の亜人が今まさに襲い掛かろうとしていた。
見た目にはわからないけど、その中には私たちが追いかけていた亜人もいるだろう。
「へっへっへ、もう逃げ場はねえぜ。観念して、俺たちと一緒に楽しもうぜ~?」
「い、いや・・・・お願い・・・・助けてください。」
3人の人たちはいずれも女性のようだ。
攫われてからまだ襲われてはいないようだが、それも時間の問題だろう。
「もう余裕がないみたい。エルちゃん、一気に片をつけよう。私を亜人の真後ろに飛ばして。それと同時に私にシールドを展開してから、エルちゃんは私を援護して。」
「わかった。気を付けてね、ひかりちゃん。」
「もちろんだよ。それじゃ・・・・行くよ!!」
「うん!!」
私の合図と同時にエルちゃんが私の肩を手を置くと、一瞬にして亜人の背後に移動する。
「ん・・・・なん・・・・」
「はあ!!」
「ぎゃああああっっっ!!!」
それに合わせて斬撃を繰り出し、一体の亜人をすぐさま撃退した。
「な、なにが起きた!?いきなりやられたぞ!?」
「あ、お前はさっきの魔法戦士!?馬鹿な、つけられていたのか!?」
正面に立っていた亜人がさっき追いかけていた亜人だったようだ。
不意に出現した私に亜人全員が一気にパニックになる。
エルちゃんの能力を知らなければ、こういう不意打ちをすることもできる。
大抵の相手はパニックになって一時的に動きがストップしてしまう。
その隙を逃さず、一気に人質を救出に動く。
「こっちです、私の後ろに!!」
「は、はい!!」
女性たちを一度に抱えて亜人の包囲の輪を突破し、壁際まで移動する。
逃げ場はなくなってしまうが、今は女性たちを守るのが優先だ。
「この野郎、よくも邪魔をしやがったな!!そいつらをよこしやがれ!!」
「そんなことするわけないでしょ。あなた達こそ、さっさと諦めて帰りなさい。今なら、見逃してあげるわよ。」
「へ、そんなもったいないことするわけないだろ。ちょうどいいぜ、このままお前も俺たちの獲物になってもらおうか・・・・な!!」
私に向かって亜人がパンチを繰り出すが・・・・
ガキィィィィィィィン!!
「なに!なんだこれは!?」
私はそれニヤリとほほ笑んだ。
エルちゃんの展開したシールドは空間魔法を応用したものであり、物理的な破壊はほぼ不可能だ。
以前に試した時に私の全力を攻撃を繰り出したことがあるが、その時も破壊することができなかった。
その代わりに展開できるシールドはさほど大きくはなく、ある程度の大きさは操作できるがせいぜいが上半身が隠れるぐらいであり、形も円形の魔法陣から変化できない。
「くそ、シールドか!お前の魔法か?」
「さあ、どうかな?」
「ち・・・・ぎゃあ!!」
「なに・・・・うぎゃあっ!!」
私に意識が集中している間にエルちゃんが背後から奇襲を仕掛け、さらに2体の亜人を撃退する。
これで残りは2体だ。
どうやら進化した亜人もおらず、個々の強さも大したことはなさそうだ。
やはり罠ではなく、たまたま遭遇しただけだったようだ。
「もうこれまでのようですね。諦めて観念してください。」
私たちに挟まれ進退窮まった亜人2体に、エルちゃんが降伏勧告する。
「く、くそう・・・・こうなったらやけくそだあああああ!!」
自棄になった亜人たちがエルちゃんに突っ込んでいく。
「仕方ありませんね・・・・せい、はあ!!」
「「ぎゃああああ!!」」
それに慌てることなく、冷静に攻撃を繰り出し亜人を撃退するエルちゃん。
さすがに正面切って攻撃されても手こずるような相手でもなく、あっさりと決着がついた。
「よし、これで決着ね。エルちゃん、他に亜人はいないかな?」
「ん・・・・大丈夫みたい。近くに私たち以外は誰もいないみたい。」
エルちゃんの言葉に一安心し、女性たちに向き直す。
「大丈夫ですか?もう安心ですからね。」
「あ、貴方たちは?」
「私たちは魔法戦士です。貴方たちの友達から助けを受けて、助けにきました。」
「あ、あの子が?ありがとうございます。」
お礼の言葉を述べながら立ち上がる女性たち。
体に擦り傷や服に多少の汚れや破けている部分はあるが、命に別条はないようだ。
「ちょっと待っててくださいね。今、体や服の傷を治しますから。」
「ひかりちゃん、大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、今日はまだ『一回』しか使っていないから・・・・はあああああああ。」
手をかざし彼女たちに魔力を放つ。
それと同時に魔力の光が彼女たちを包み込み、服や体の汚れや損傷が見る見るうちに消えていく。
「こ、これは・・・・!?怪我や服の痛みが消えていく。」
数秒後には、彼女たちは元の綺麗な姿に戻っていた。
「凄い、これは貴方の魔法なんですか?」
「はい、私は回復魔法が得意なんですよ。」
より正確には私の『固有能力』によるものなのだが。
どんな怪我や物理的な損傷も元の状態に戻せるが、その代わりにどんな軽傷であっても一定の魔力を消費してしまう。
一回の使用につき私の総魔力の5%を消費してしまうので、普段はもっと大怪我をしている時などに使うのだが、今回はもう任務も終わりだしその前の消費もほとんどしていないので使っても問題ないと判断したのだ。
「さ、帰りましょうか。私たちが安全なところまで同行しますので。」
「あ、ありがとうござい・・・・」
「てめえら・・・・なにやってんだ?」
「「!!??」」
声をした方を振り向いてみると、そこには新たな亜人が何体も立っていたのだった。
~第15話・完~
徐々に、その瞬間が近づいております。