~ひかり視点~
「ぐわああああああああっっっっ!!」
エルちゃんの斬撃に亜人は断末魔の叫びをあげた。
息絶えた亜人はその場に倒れこみ、動かなくなる。
「よし、これで5体目!順調だね、エルちゃん。」
「うん、このまま一気にいくよ。」
私たちは亜人の攻撃に対し、最近編み出したフォーメーションで対抗していた。
フォーメーションとはいっても別に複雑なものではない。
互いに背中合わせになって死角を減らし、エルちゃんが主に攻撃を担当し、私がサポートするというものだ。
エルちゃんがシールドで攻撃を防ぎつつ攻撃を放ち、たまに私をテレポートで飛ばして敵を不意打ちで攻撃したりする。
いくら警戒しているといっても、互いに激しい攻撃の最中に繰り出されるとそうそう回避できるものではない。
能力を使いまくるのでエルちゃんの魔力をかなり消費してしまうが、私が無事である限りはすぐに全回復できる。
だからこそ、私はあくまでサポートに徹して極力消費しないようにする。
私が無事ならいくらでも戦えるが、私の魔力が尽きてしまうとこのフォーメーションは成立しなくなってしまう。
「ちい、やはり一筋縄ではいかないようだな。あっという間に5体もやられてしまうとは。」
「このままじゃ全滅しちゃうわよ?もうすぐ応援の魔法戦士も来るし、早く逃げちゃった方が良いわよ。」
「な、なんだと!?」
私の言葉に亜人たちに動揺が広がる。
私たちの持っている仕事用のスマホには、万が一のための機能が搭載されている。
GPS発信機はもちろんのこと、ONにしておくと一定時間ごとに緊急アラームが組織に発信されたりする機能もある。
それに加えて、今回はトーコ先生に亜人を追っていることやここの場所を伝えているので応援が到着するのも普通よりも早いはずだ。
亜人たちの強さを正確に把握できたことに加えて数も減ってきたので、焦り始める亜人たちには対照的に私たちには余裕が生まれてくる。
「お前ら落ち着け!相手の言葉にそんな簡単に惑わされんな!」
リーダーが部下を落ち着けようと叱りつけるが、心に生まれた動揺はそう簡単に消えることはない。
その隙を逃すことなく、さらにエルちゃんが亜人たちに攻撃を加える。
「せい、はあ!!」
「くう、この!!そう簡単にやられてたまるかっての!!」
エルちゃんの斬撃を防御しつつ反撃の機会を伺っているが、いくら強化されているといっても『進化』してもいない通常の亜人単体では防御するだけで精一杯だ。
さっきは動揺してエルちゃんは攻撃を食らってしまったが、冷静に対処すれば大した脅威ではない。
「なめてんじゃねえぜ、こっちにも亜人の意地があらあっ!!」
そこに別の亜人2体が援護に入ってくる。
「く、なんの!!」
その攻撃をシールドで防御しつつ、新たな亜人の攻撃にも対応するエルちゃん。
さすがに3体同時だとかなり厳しいようだ。
通常の亜人の場合、普通の魔法戦士でも3体ぐらいまでは同時に相手にでき、私達のように『覚醒』にまで至り、さらにこれがみらいさんのような攻撃特化の能力持ちだと、一気に10体以上は倒せるようになる。
残念ながら私やエルちゃんは防御や支援系のためにそんなことはできないが、それでも5体ぐらいまでは互角以上には渡り合える。
しかしここの亜人は単体ではそこまで驚異ではないが、3体ぐらいだとほぼ互角にまで持ち込まれてしまう。
つまりはそれだけの人間を襲ったということであり、しかもそれが21体もいるとなると、一体どれだけの人間が犠牲になったのであろうか?
(でもその割には、そんな情報は一切入ってきていない。よほど慎重に立ち回っていたということなの?)
そう考えると、私はここにいる亜人たちの異様さに強さとは別の不気味さを覚えた。
亜人というのは基本的に脳筋思考になってしまい、考えるよりも先に手が出てしまいがちだ。
前回の赤い亜人たちも私をおびき寄せるために罠を仕掛けたが、罠自体はシンプルであり緑の亜人の能力頼りの面が強かった。
エルちゃんがついてくる可能性を考慮に入れておらず、私の『能力』についても調べていなかった。
それでも亜人たちの中ではかなり慎重に立ち回っていた方だろう。
私という存在を知らなければ、そういったことをしなかった可能性もあった。
「おらおらおらあ!!あっちの応援には行かせねえぜ!!」
なんとかしてエルちゃんの支援に入りたいところだが、向こうもこっちのフォーメーションを理解してきたのか、同時に3体が襲撃をかけてくる。
一度に多くが襲ってこれないのかせいぜいが3体止まりで、それ自体は今言ったように互角レベルだが数で言えば向こうの方が圧倒的で、まだ16体も残っている。
精神的に余裕が出てきたとはいえ、数に関しては向こうが圧倒的に優位なのは依然として変わらない。
このまま消耗戦になってしまうと不利なのは明らかなので、ここは一気に大勢を決してしまいたいところだ。
「エルちゃん。このままじゃまずいから、勝負をかけるよ!!」
「っっ・・・・!わかった・・・・はあっっ!!」
私の言葉から真意をくみ取ったエルちゃんが取り囲んだ亜人の包囲を強引に突破し、突撃をかける。
「こ、こいつ・・・・強引に突破なんかして、一体何を・・・・は、狙いはリーダーか!!」
亜人たちも気づいたようだ。
周りの亜人を無視して、一気にリーダーと呼ばれる亜人に向けて突撃をかけたのである。
亜人としての異質さを引き上げているのは間違いなくこのリーダーの存在が大きい。
普段するはずもない強くなるための行動を亜人がしたというのも、知性が強化されたっぽいリーダーが指示したのであろう。
逆に言えば、こいつさえ倒してしまえば後はちょっと強いだけのただの亜人と化すだろう。
「ふふふ、当然そう来るよな。それを読んでいないとでも思っているのか?」
そう攻めてくるのをリーダーも読んでいたのか、最初からずっと出てくることなく数体の亜人によって守りを固めている。
見た目的には他の亜人と変わりないが、後ろで守りを固めているおかげで比較的わかりやすい。
「馬鹿が、やらせると思うか!!」
「どきなさい、はぁぁ・・・・くうっっ・・・・せえええい!!」
突撃を止めようとする亜人の攻撃を食らいつつも、それらも強引に突破して一気にリーダーに肉薄する。
「ほう、なかなかやるじゃないか。だが、こうやって後ろで構えている俺が他の亜人よりも弱いとでも思っているの・・・・か!?」
ガキィィィィィン!!!
私たちもそいつが弱いなどと都合よくは思っていない、むしろ強くて当然ぐらいの認識ぐらいの方がちょうどいいぐらいだ。
案の定、突破からの斬撃をいともたやすく受け止めるリーダー。
「バカめ、突出したせいで孤立無援になってしまったぞ。このまま痛めつけてやる!」
その言葉にニヤリとエルちゃんは笑った。
「そう思いますか?こうなってしまうのも予想の内です。ひかりちゃん!!」
エルちゃんの言葉に合わせて、私はその場で剣を構え思い切り振りぬこうとする。
もちろんそこには誰もいないので、今のままではただ空振りに終わってしまうのだが・・・・。
「なんだと?一体どういう・・・・ま、まさか!?」
「こういう・・・・ことです!!」
リーダーが意図に気付いたようだが、少し遅かった。
エルちゃんがそいつの体に手を当て、次の瞬間にはリーダーの姿が消えていた。
「リーダー、一体どこへ・・・・?」
「ここだよ・・・・ハァァァァッッ!!」
姿を消したリーダーは、次の瞬間には私の目の前に現れていた。
エルちゃんの能力は触れたモノを瞬間移動させる。
それは生物であろうと可能だし、敵であろうとも問題なく任意の地点に移動できる。
私はそれが分かっていたからこそ、その場でリーダーが出現する地点で刃を振り下ろしたのだ。
他の亜人はその意図に全く気付けなかったのでその場で棒立ちし、リーダーは直前に気付くことはできたが、防御するまでには至らなかった。
「ギャアアアアアアアアアアッッッッ!!」
モロに食らったリーダーは絶叫し、その場に倒れ伏した。
「ち、ちくしょう・・・・油断しちまった・・・・ぜ・・・・へへ。」
「?」
そして亜人が事切れた・・・・その直前。
何故かその亜人がニヤリと笑ったのだ。
(今のは一体・・・・?)
その次の瞬間――――辺りが突如として、煙に包まれたのだった。
~第17話・完~
フォーメーションはオリジナルです。
2人の固有能力を書いている内に「こうすれば強くね?」と思ってやらせてみました。
もっとも、これを披露していられるのも今の内だけですがね(ゲスい笑い)