個人的には彼女たちの性格的に、こういう攻撃的には使わない気もしますが。
~エルシア視点~
ひかりちゃんにリーダーを転移させることに成功した。
私たちが編み出した戦法でもかなり攻撃型であり、初見では防ぐことはほぼ不可能だ。
転移させるのには相手の了承を得る必要はないので、こうやってこちらに都合のいい場所に転移させて攻撃を食らわせる。
防御も回避もままならず、相手がよほどの格上でもない限りはその一撃でお終いだ。
相手が格上であっても発動そのものは防ぐことはできないので、最後の手段として相手を無理やり遠くに転移させて戦闘を回避するということにも使える。
触れた瞬間に発動できるので、相手は常にこちらに触れられないように注意しなければならならず、転移させなくてもそれ自体が牽制にもなる。
ただし転移させるには触れるのが絶対条件なので、ある程度のダメージを受けることは覚悟しなくてはいけない。
もっとも、それはひかりちゃんが無事である限りはすぐに回復できるので、余裕がある内は問題なく使える。
リーダーの亜人は直前に気付いたようだが、対応するまでには至らなかった。
転移した瞬間にひかりちゃんの斬撃を受け、リーダーの亜人は少しだけ動いたかと思うと完全に倒れこみ、身動き一つとらなくなった。
「やった、リーダーを倒した!もうこれまでですよ、亜人の皆さん。逃げるなら今の内です。」
残った亜人にそう呼びかけるが、向こうはその場で立ったまま動かない。
「へへへ・・・・。」
それどころか、笑みさえ浮かべている者もいる。
(・・・・?どういうこと?彼らといいリーダーといい一体・・・・?)
実はリーダーを転移させる直前、リーダーが笑ったように見えたのだ。
転移させる瞬間だったので止めることはできなかったが、事切れる直前にもひかりちゃんに向けて笑みを浮かべていたように見えた。
(リーダーがやられれば動揺してもおかしくないはず・・・・どうしてこんなにも落ち着いてるの?)
ほとんどなくなっていた疑問が再び大きくなり、ひとまずひかりちゃんの元に駆け寄ろうとした瞬間――――
ボウンッッッッ!!
大きな音と共に周囲に煙が立ち込める。
(これは・・・・亜人たちが逃げる時に使ったのと同じ煙幕!?)
一気に煙が建物の中に充満し、数メートル先も見えなくなってしまった。
「ケホ・・・・ケホ・・・・ひかりちゃん、大丈夫!?」
「うん、私は大丈夫。そっちに向かうからひかりちゃんは動かないで。」
空間把握能力は発動できなくても、私の能力の副作用の一つとして周辺の気配を感知しやすくなっている。
互いに動き回るよりも、私からひかりちゃんの方に向かう方が確実だ。
ひかりちゃんのすぐ側まで駆け寄ると、離れないようにひかりちゃんの手を繋ぐ。
「あ、エルちゃん。亜人たちの方はどうなってるかな?」
「ん・・と・・・・向こうも私たちを見失っているみたい。」
私たちはおろか自分たちの状況も把握できないのに煙幕を張ったのだろうか?
リーダーがやられて大勢が不利になったから、逃げるために煙幕を張ったのだろうか?それとも――――?
「とにかく、このままここにいちゃまずいよ。この廃工場から避難しないと、次に亜人たちがなにを仕掛けてくるかわからないから。」
「そうだね・・・・でも、変な亜人だったね。自分がやられたっていうのに、勝ち誇ったような笑みを浮かべて。」
「ひかりちゃんも見たの?実は私も転移させる直前に笑っているのを見たの。それに、周りの亜人たちも慌てずに笑みを浮かべていたし。」
私の中で大きくなってきた疑念はますます強くなっていく。
(ここにいるのは危険だ、一刻も早く脱出しないと。)
建物の構造はぼんやりとわかるから、一番近い壁に向かって強引に突き破ってでも急がないと。
あるいは空を飛んで一気に飛び出す方が早いかもしれない。
屋根があるので突き破る際には多少の痛みはあるだろうが、今はそれよりも急いで脱出する方が先決だ。
そう考えてひかりちゃんと共に脱出しようとした瞬間――――
ガチャリ
金属音と共に手首に何かをはめられた様な違和感を感じた。
不意に自分の手首を見てみると、金属質な何かが手首にはめられていたのだ。
「こ、これは一体何?」
「エルちゃん!エルちゃんも!?」
見れば、ひかりちゃんの手首にも同じものがはめられていた。
手錠よりもやや太い金属質な手錠というより、飾りっ気の一切ないブレスレットのようなもの。
ただ、私のが水色のラインが入っているのに対してひかりちゃんは赤色だ。
まるで、私たちの魔力の髪色に合わせたかのような・・・・。
『腕輪が対象に装着されました、魔力を吸収します。』
私たちが行動を起こすより先に、手錠の方から声が流れる。
それと共に、体の中なら魔力が少しだけなくなっているのを感じた。
「魔力が吸収される!?急いで外さないと・・・・」
このまま魔力が吸収され続けるとまずいので、急いで取り外そうとすると・・・・
『吸収が完了しました、対消滅します。』
ボウンッッッッ!!
「「きゃっっ!?」」
再び機械音声が流れたと同時に、腕輪が爆発して消滅した。
少しだけ衝撃が来たが大したことはなく、吸収された魔力も大した量ではない。
(爆発する前に『吸収は完了した』と言ったけど、吸収された量は1割にもはるかに満たなかった。あんな程度じゃあまり意味はないはずなのに・・・・。)
ひかりちゃんは『5回』ほど能力を使って消耗しているがまだまだ余裕があるし、私の魔力はひかりちゃんによって回復して間もないのでほとんど消耗していない。
こういったものは大抵は装着し続けている限りは吸収し続けるという、継続型の魔具のはずなのだが。
「エルちゃん、大丈夫?何も変わりない?」
「うん、私は大丈夫。ひかりちゃんは大丈夫?」
「私も変わりないよ。今のは一体、なんだったんだろう?」
2人で先ほどの腕輪について話していると、やがて煙幕が切れて視界がはっきりしてきた。
するとそこには――――
「ふっふっふ・・・・。」
「「っっ!?」」
全身を真っ白にした亜人が新たに立っていたのだった・・・・。
~第18話・完~
というわけで、魔法戦士無双の終了です。
先に言っとくと、もう少し善戦はしますがほぼ掌の上状態です。