ぶっちゃけて言いますと、手早く決着をつけるための時短なんですが(笑)。
~白い亜人視点~
(聞いてひかりちゃん、この方法なら当てられるかもしれない。)
(いよいよ最後の攻撃に出るな、やはり最後はひかりの全力の一撃でくるか。)
エルシアの能力によってひかりを逃がすことができないと分かった段階で、2人にできることはもはやこれ以外にはなくなるだろうと読んでいた。
(ここが正念場だな、ここさえ凌げれば勝敗はほとんど決するだろう。)
とはいえ、向こうほどではないがこちらも余裕がなくなっているのは前にも言った通りだ。
ひかりの攻撃に対する対策ももちろん色々と考えたが、当たってしまえば一巻の終わりであるのはずっと変わりない。
(仮に俺が戦闘特化型に進化したとしても、それは変わらなかっただろう。)
それが使えなくなるように一気に追い込むこともできたが、対エルシア用の転移妨害障壁の展開に思ったよりも時間が掛かってしまった。
その前に追い込んでしまったらエルシアがもっと早く決断してひかりを逃がしてしまったかもしれない。
(それにあの障壁にも大きな欠陥がある。こちらとしても、それに気づかれる前に決着を急がないと。)
あの障壁はエルシアの魔力の波長に合わせて発動するタイプのものだ。
エルシアがあの障壁の外に何かを転移させようとするとそれに反応して内側にはじき返してしまう、いわばエルシアの転移能力特化の魔力障壁だ。
逆にいえば、それ以外の一切は何も反応せずに素通りさせてしまう。
あの障壁を突破するのは実は簡単で、普通に出て行くだけでOKであり、エルシア自身であっても魔力を抑えていれば普通に外に出て行けるのだ。
それによって地味に危ないのは飛行能力を使われることだった。
肉体を介しているので問題なく使える可能性があったし、飛ぶ方法がない俺たちは追跡も妨害もできない。
エルシアはともかくとして、ひかりの場合は安定感に難がある代わりに高速で飛行することができる。
勢いあまって屋根を突き破り飛び出してしまう可能性があるし、そのまま助けを呼びに行かれる可能性もないとは言えない。
魔法戦士相手にこちらから実験させるわけにもいかずどちらに転ぶかは五分五分だったが、幸いにも効果を発揮しその選択を取れそうもないのが幸いだった。
(あまり色々と付与すると色々と手間もかかるし展開時間も大幅に長くなったりする、そもそもそれをしているだけの時間もなかったというのも大きいが。)
考えている間に向こうもあれやこれやと作戦を話し合っている。
より用心してさらに小声で話しているのか、2人が何を話しているのか今回はさすがに聞こえなかった。
「よし・・・・それじゃあ、行くよエルちゃん!」
「うん、ひかりちゃん!!」
話がまとまったらしい。
「来るか・・・・もう気付いていると思うが、今回のことは全部お前らを罠にはめるための作戦だ。当然、お前らの能力に合わせた対策も用意している。どんな作戦を立てたのかは知らんが、容易に通じるとは思うなよ。」
「そんなことはわかっています。こうやって罠に嵌ってしまったのも、きっと私たちの経験不足が原因なんでしょう。しかし私たちだって私たちなりに経験を積んできました・・・・見つけましたよ、貴方に付け入る隙を。」
「なんだと?俺に隙が?」
ここに来てハッタリだろうかと思ったが、そうやって油断を誘うための挑発かもしれない。
いずれにしても、ここに来て気を緩めるわけにはいかない。
「面白い、俺に付け入る隙があるのかどうか見せてもらおうか!!」
その言葉とともに部下の亜人たちが周囲を囲む。
「行きます、はあああああっっっっ!!」
そこにエルシアが突っ込み、ひかりはその場で力を蓄え始めた。
「フウウウウウうぅぅぅぅぅ――――――――」
淡い光が体を包み込み、ひかりの剣がそれと共に力強く輝き始め大きな刃となっていく。
それは高密度の魔力であり、すでにかなりの魔力が蓄えられている。
(やはり前回使った巨大剣の生成か!!)
ああなると刃を振るわなければその場から大きく動けないので隙だらけになるのだが、あの魔力自体が強烈すぎて並の亜人では触れただけで消滅してしまう。
俺でさえも無傷では済まないだろう。
(何度見てもあの魔力は圧倒的だぜ、あれだけ消耗させてもまだあんな巨大な剣を作れるんだからとんでもねえな。)
巨大剣の生成が完了するまでもう少しかかるだろう。
その間にもエルシアが亜人の一体を斬り倒していた。
「は、やあ!!」
「くう、この、ぐうっ!!」
ひかりの能力によって回復しているので、エルシアは全快状態のままだ。
残った亜人だけでは荷が重いだろう。
(確実に決めるならひかりの攻撃の瞬間に俺を任意の地点の転移させるだろう。だがそれは影武者を攻撃するのを見て確認しているので、予測はできている。)
触れられなければ心配はないので距離さえ取っていれば問題はない。
(今はひかりはほとんど動けない、ならばエルシアさえ倒してしまえればなんとかなるか?いや、さすがにそれくらいは向こうもわかっているはず。)
ひかりは動けなくなったが、その代わりに触れるどころか近づくことさえできなくなっている。
その間は一時的にエルシアはそちらを気にする必要がなくなるので、自身の転移はできないがシールドは自身に集中させることができるのだ。
いくら動きを読ませないようにしてもエルシアのシールドは鉄壁なので、守りを固められてはどうしようもない。
現にエルシアのシールドはさっきから2つともエルシアの側に展開されており、こちらの攻撃は全く通らなくなった。
エルシア自身に展開されている場合に限り、シールドは半自動的にエルシアを防御するように展開される。
その間はエルシアは防御を気にしなくてもいいので、攻撃に集中している。
(問題なのは俺に対してあいつらがどんな対策を施したかだ。いずれにしてもエルシアが俺をひかりの側に転移させるということには変わりないだろう。触られなければ大丈夫なはずだが・・・・ん?『
様々な可能性を考えた中で、俺は『その可能性』に至った。
(なるほど、もしそうだとするなら見事にはまってしまっただろうな。だがそれに気づくことができたなら、いくらでも対策はとれる。)
思わずニンマリしそうになったが、気づかれたと思われたらまずいので必死に表情を引き締めた。
そして俺は、近くにいた亜人にその作戦を実行するために指示を出した。
(万が一のために用意しておくものだな・・・・さあて、いくぞ!)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
~ひかり視点~
私が作った巨大剣の生成が終わり、エルちゃんに目配せしてそのことを伝えた。
生成が完了してからあまり時間を置いてしまうと余計に魔力を消費してしまうので、なるべく早く使わないといけない。
(こうやって魔力を自身の中で使っているとようやくわかってくる。これを使ってしまうと、もう私の中には最低限の魔力しか残されず能力の方は使えなくなってしまうと。)
巨大剣の生成を終えた段階で、これを使わなかったとしてもこの分の魔力は消費されてしまう。
いずれにしても、この一撃がお互いにとっての勝敗を左右するだろう。
私たちにとってはミスは許されず、どれだけ他の亜人を倒せても白い亜人を倒せなければ何の意味もない。
逆に言えば、白い亜人さえ倒せれば後はどうにでもなる。
(私にできることはエルちゃんが白い亜人を転移させる瞬間を待つだけだ・・・・!)
目で合図を送ったことによりエルちゃんも転移させるタイミングを図っているはず。
シールドで防御を固めつつ白い亜人との距離を少しづつ縮めている。
「へ、近づかせるかよ!」
側にいた亜人が攻撃を仕掛けるが、シールドに攻撃を阻まれ弾き飛ばされる。
「ぐわあっ!!」
そのまま後ろにあった積み上がった木箱に叩きつけられた。
エルちゃんのシールドを突破できず、他の亜人たちは仕掛けなくなってきた。
段々と白い亜人との距離が縮まっていく。
透明化に加えて何かの仕掛けによって気配が読めなくなる方法があるので、油断はできないが。
「へ、何をするのか見え見えだぜ。そう簡単に近寄らせるかよ!!」
ボウンッッ!!
エルちゃんの狙いを読んでいた白い亜人がまたしても煙幕を焚いて視界を防いだ。
「どうだ、俺の動きが見えるかな?」
姿が見えなくなったが透明にはなっているだろう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
それに対して慌てることもなく、ゆっくり目をつぶって剣を下ろし自然体の状態で構える。
シールドも解除して『空間把握』を発動させたのだ。
相手の攻撃に対してシールドの自動防御がちゃんと働くかわからないので、それならば相手の位置を正確に把握できるように集中した方が良いという判断だ。
(白い亜人は必ず自分で攻撃してくるはず、その瞬間こそがエルちゃんが言ったタイミングの狙いどころ!!)
エルちゃんが転移させるところを注視しつつ、その瞬間を私は待ち続ける。
――――――――そしてその瞬間は来た
「ウオラアアアアアアアアッッッッ!!」
煙幕が切れ始めたと同時に白い亜人がエルちゃんの背後から攻撃を仕掛けた!!
私たちと同じように白い亜人は直接的な物理攻撃しかできない。
その上でエルちゃんに触れられないように攻撃するには背後からしかない。
ドガアアアアッッ!!
「クウウウウ・・・・!!」
背後からのパンチをまともに食らってしまったが、接近してくるタイミングを把握していたエルちゃんは気合を入れることによってそれを何とか耐えきったようだ。
「どうだ、真後ろからなら俺に触れることはできないだろ。このままこれを連続で繰り出して消耗させてやるぜ。」
勝ち誇ったように笑う亜人――――――――それに対して、エルちゃんもまた笑みを浮かべた。
「そう、来ると思ってましたよ。来ると分かって構えていたのか、大した痛みはありませんでしたね。」
「なんだと、強がりを言いやがって。手で触れることができなければ、転移させることなんてできねえだろうが。」
「たしかにこのままでは触れることはできませんね、
「なんだと、どういう・・・・」
「ハアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!」
亜人の疑問は声になることもなく光に包まれるとともに、私は躊躇うことなく巨大剣を振り下ろした。
それと同時に亜人は出現した、その振り下ろされた刃の目の前に。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!」
それを防御することも回避することできず、その刃をまともに食らった白い亜人は真っ二つになってしまった。
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「ハア・・・・ハア・・・・ハア・・・・ハア・・・・」
かつてないほど魔力を消費したせいで息が上がってしまう。
本来なら自己回復能力ですぐに回復するのだが、腕輪の副作用もあるかもしれないがそれすら遅れるほど魔力を消費してしまっているということだ。
「はあ・・・・はあ・・・・やった・・・・。」
刃を振り下ろした場所を見てみれば、白い亜人が真っ二つになった状態で床に倒れていた。
どう見ても絶命しているのは明白であり、もはや身動き一つしない。
倒れた先を見てみると、今の一撃で巻き込まれたのか他の亜人が3体ほど倒れていた。
「ひかりちゃん、大丈夫!?」
「うん・・・・大丈夫。こんなに魔力を消費したことなかったから、かなり疲れちゃったけど。でも、エルちゃんの作戦がうまくいってよかった。」
エルちゃんの考えた作戦の基本そのものはさっき使ったものと変わらないけど、無防備を装って『空間把握』を使い相手の攻撃の瞬間を正確に把握しておき、わざと攻撃を受けると同時に私のところに転移させるというものだ。
エルちゃんの転移は手に触れなくても
エルちゃんが使う場合は自分から触れに行くので私もよく勘違いしてしまうし、当のエルちゃん自身も『自分で触れなければ発動しない』と思いこんでしまいがちだ。
手で触れる時ほど正確な場所に飛ばしづらいので、こうやって任意の地点に飛ばす場合はある程度集中する必要がある。
本来の使い方は相手に触れさせた上でどこか遠くに飛ばして相手の戦力を確実に削り取る時などに使うが、
今は外に飛ばすことができないのでこの方法をエルちゃんがとっさに思い付いたのだ。
「これでリーダーはいなくなったわけだね。さあて、後はあなた達だけだよ。」
半分くらいは倒していたのはわかっていたが、改めて数えてみれば残りは5・6体ほどにまで数を減らしていた。
「後は私がやるよ、ひかりちゃんは休んでいて。」
並の亜人よりも強化されているとはいえ、一対一なら大したことはない。
エルちゃんの能力で連携を取らせないようにすれば問題なく全員倒せるはずだ。
「さあ、貴方たちのボスは倒しましたよ。逃げるなら今の内――――」
「――――だと思ったか?」
「「ッッッッ!!!」」
その声と同時に、白い亜人が姿を表した。
エルちゃんの背後に――――
~第23話・完~
何処に触れていても発動できるというのは、私独自の解釈によるものです。