~白い亜人視点~
さらなるレベルアップと欲望を満たすため、俺は以前に魔法戦士を襲った街に戻ってきていた。
世界に魔力が流れ込む『時空の穴』と呼ばれる現象が引き起こされ、様々な影響を及ぼすようになって20数年。
亜人や魔法戦士の数は段々と増えてきているとはいえ、その数は決して多いとはいえない。
まして肉体から変異する亜人はまだしも、生体エネルギー(以下、魔力体と呼称)に影響を及ぼし魔法戦士にまでなれるようになる者はより少ない。
亜人による事件が頻発するようになっても、対応できる魔法戦士が少ないので、十分に対応できるものではなかった。
しかし人間側にとって不幸中の幸いで、この手の魔法的な存在にありがちな、魔力を伴わない武器や存在以外ではダメージを全く与えられないということはなかった。
ある程度は軽減されるが倒せないというほどではないので、レベルアップした亜人や魔族でもない限り、従来の警察などでも武装を強化するなどによってなんとか倒せることができていた。
また亜人も亜人で、思考が基本的に脳筋ぎみになるので、安全よりも手っ取り早さを優先し人の多い市街地や都市部に集まるようになる傾向が強い。
魔族も人間がより多いところから出現しやすいので、魔法戦士の戦力も基本的にそれらに重点的に振り分けられていた。
それゆえに、少し都市部から離れた地方の町ならば、警察にさえ気をつければ魔法戦士に遭遇する可能性はほとんどなかった。
幸か不幸か、知性と理性的な面が強化された俺はリスクを避けて、進化した時にいた街を離れ地方の町にて力を蓄えていた。
それゆえ、俺の侵食によって洗脳された一般人はかなりの数にのぼる。
その気になればこいつらを使って色々とできるだろうが、前述したような俺への対処法をされるようになるのは非常にまずいので、俺の存在はともかくとして、能力に関しては極力知られるようにしないといけない。
なので、侵食したやつらは何も知らずに日常生活を送っている。
俺が指令を飛ばさない限りは、そのまま何も知らないままだろう。
ついでに、たまたま出くわした何体かの亜人を倒しその力を奪ってやった。
こいつらならば倒してしまってもなんの問題もない。
しかもその内の一体は進化した亜人であり、その能力も奪うことができた。
直接的な戦闘能力でこそなかったが、とても便利な能力であったのでこれは予想外のラッキーであった。
それらをこなしつつ、力を蓄え一ヶ月あまり。
大幅なレベルアップこそなくなったものの、獲得した能力もあり並の魔法戦士ならば引けを取らないくらいの強さは手に入れた・・・・と思う。
何しろちゃんとした戦いを経験していないので、きちんとした強さを測りかねているのだ。
「作戦決行までに、少しは実戦を経験しておかないとな。まあ、それはそれとして・・・・まずはあいつらを見つけないことには何も始まらないな。」
亜人の姿から普段の人間形態へと姿を変え、俺はお目当ての二人の魔法戦士を探していた。
すでにある程度の目星はついているので、その場所へと向かっている。
本来は魔法戦士を探すといっても、普通は探すことなどほぼ不可能だ。
服などはともかく、あれだけ顔を丸出しでかつ特徴的な髪の色であれば簡単に探せそうなものだが、そうは問屋が卸さない。
彼女たち魔法戦士の衣装には、身体強化魔法の他に認識変換魔法というのが付与されている。
これは彼女たちへの認識を文字通り変えてしまうというもので、たとえその顔や髪の色をしっかり覚えていたとしても変身後の姿を見ても同一人物だと認識することができず、その逆もまた然りである。
その能力の隠蔽能力の強さは強靭であり、変身中の言葉から個人を特定する言葉をきちんと覚えることができない。
たとえ、彼女たち本人から「私たちは魔法戦士です」と言われたとしても、ぼんやりとしか理解できず、気をしっかりと持っておかないとそれを忘れてしまうのだ。
「普通なら探すことなどまず不可能だ・・・・普通ならな。」
だが、そんな能力にも致命的な弱点が存在し、それはある意味で俺の侵食に似た欠点であった。
それは『変身する瞬間、もしくは変身を解除する瞬間を目撃すると隠蔽能力は効果がなくなり、それ以後は耐性ができその相手には二度と通用しなくなる』というものであった。
それゆえに、魔法戦士たちは仲間や関係者以外にその瞬間を見られないように細心の注意を払う。
万が一にも見られた場合は、なんとか喋らないように頼み込み、相手がそれで脅迫などをしてきた時は、記憶を封じたり行動を制限するという強硬手段に出ることもあるとか。
その相手が亜人や魔族であった場合は、最優先討伐対象となり問答無用で殺されてしまう。
もちろん、仲間である魔法戦士たちや組織の関係者たちには変身を仲間たちの前で行って耐性をつけておく。
いざ救出の際に正体がわからないとなっては意味がない。
そして俺は前回、赤髪のツインテールの相方の変身が解除される瞬間を目撃しているが故に、そいつの正体を目撃し隠蔽魔法に対する耐性がついているのだ。
あいつらは俺たち全員を倒したと思いこんでいるので、身バレしているとは夢にも思っていないだろう。
あの時に背後から襲わなかったのは、あえて時間を空けることでそうやって油断を誘うためでもあったのだ。
「さすがに名前を名乗ることはなかったし、相方は変身したままだったから名前はわからないが、手掛かりは十分にある。」
魔法戦士特有の変質した水色の髪にショートボブの髪形、顔つきからして外国人であろうこともわかる。
それになんといっても、あの学生服である。
ぱっと見の外見年齢的に見ても、どこかの学校の生徒であるのは一目でわかる。
学生と魔法戦士のどちらを重点に生活しているのかは知らないが、普段は学生として過ごしいざとなれば魔法戦士として出動している生活をしているのは容易に想像できる。
ならば、前回遭遇した場所からそう遠くない学校から通っているはずだ。
そう結論づけた俺は、あの町から近くに存在する学校を片っ端からあたることにした。
そんなに数は多くないことから時間はかからないであろうと思っていたが・・・・
「ふっふっふ、まさかいきなり当たるとはな。」
見覚えのある制服をまとった女子学生を見つけ後をつけてみると、そこにたどり着いた。
『魔力研究学園機関』
「間違いない、この学園だ。」
予想以上に早く発見した俺は、思わず笑みがこぼれるのであった。
~第2話・完~
「なんで顔丸出しで活動していて顔バレしないんだ?」に対する、作中での自分なりの解釈です。
そういう設定ですので、魔法戦士たちに個別のコードネームは存在せず基本的に本名やあだ名で呼び合います。
さらに付け加えますと、この手の変身ヒロインのお約束である
「変身時の掛け声やポーズ」
「登場時等のキメ台詞」
「必殺技の名前」
等は基本的には存在しない、かなり地味な存在だったりします。