その姿を確認した俺は、侵食による学園への影響力を強めつつエルシアの情報を集め始めた。
フルネームはエルシア・クロンメリン、某国から留学生としてやってきたらしい。
ただ、手に入れた資料には大雑把な情報しか書かれておらず細かい経歴には謎の部分も多い。
そもそも、魔法戦士はどこの国でも希少な存在なので、手元に置いておきたいはずである。
それなのに留学が許されるということは、何か深い事情があるのであろう。
ちなみに、魔法戦士だけに限らず亜人に関しても日本での誕生比率はどこの国よりも突出して高く、その技術もかなり高い水準にある。
「まあ、俺にとってはどうでもいいことではあるが。」
一応、何かのネタに使えるかもしれないので調べてはみるが、資料にも記載されていないしプライベートに関わることなので、かなり深い関係者でもないとわからないであろうから、あくまでもついでレベルだ。
それよりも大事なのは、エルシアと一緒にいたもう一人の魔法戦士だ。
「天月ひかり。エルシアのルームメイトで同じように、魔力体に影響を受けた少女か。」
正体がわかっていたのでエルシアの方を優先して探していたが、メインターゲットはエルシアの相方だ。
まだ経験不足気味ではあったが、彼女の有する強大な魔力は凄まじかった。
単純な魔力だけで言えばあの赤い魔女をも上回っていたと思われ、年齢から考えてもまだまだ成長する余地も十分にある。
いずれは歴戦の魔法戦士として、亜人や魔族などの人々に仇なす者たちにとって相当な脅威となるであろう。
しかし同時に、その膨大な魔力は亜人たちの格好の標的としても狙われやすくもある。
「だからこそ、十分な経験を積む前にあの女を手元に置いておきたいものだ。おそらくは、一緒にいた赤髪のツインテールの天月ひかりという女があの時の魔法戦士だとは思うのだが・・・・。」
いかんせん彼女の認識変換魔法に対する耐性ができていないので、はっきりとは断定できない。
それどころか、無意識の内にそれを否定しようとさえしている。
これもまた魔法の隠蔽効果の一環であろう、なかなかに強靭なガードだ。
「まあ、それはエルシアを追跡すればいずれはわかることか。」
前述したように、この魔法は変身の瞬間さえ見てしまえば効果はなくなってしまう。
それは個人を認識できていれば距離は関係なく、どんな遠距離でも有効なのだ。
あの二人はコンビで活動していたので、エルシアの方を尾行していれば、いずれは変身の瞬間を目撃できるであろう。
「そうとなれば、まずは『マーキング』をしておくか。」
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翌日、確認した公園とは別の場所の物陰に隠れて二人を待ち構えていた。
寮に住んでいてルームメイトである場合、登校する時間も道もほとんど一緒なので待ち伏せしやすくて助かる。
基本的に真面目な性格であることも相まって、昨日とほとんど同じ時間に登校してきた。
「ふああ・・・・、今日はちょっと眠いね。」
「もう、今日は午後の授業がないんだから、授業中に寝たりしたらダメだよひかりちゃん。」
「わかってるよ~。でもさ、今日の夜も『行かなきゃ』いけないから、結局は仮眠をとるしかなくて何もできないのが残念だよね。」
「その辺はしょうがないよ。その代わり、この前に申請したお休みが取れそうなんだから頑張ろうよ。」
今日の夜に行かなきゃいけないというのは、魔法戦士としての任務のことだろうか?
だとしたらタイミングがいいな。
「は~い・・・・ようし、お休みを取るためにも、今日も頑張ろうね、エルちゃん!」
「ふふふ、はいはい・・・・。」
談笑しつつこちらに向かってくる二人。
よし・・・・今だ!
「「きゃあ!!」」
正面への注意が緩くなった一瞬を見計らって、路地から飛び出して二人にぶつかる。
あたかもこちらが急いでいて、思わずぶつかってしまったかのように見せかけて。
「うわ、すみません!急いでいたもので。お怪我はありませんか?」
「あ、はい・・・・大丈夫です。こちらも前を見てなかったので。」
「私も大丈夫です。」
「それならよかったです。さ、手をどうぞ。」
「すいません。」
「はい。」
差し出した手になんの疑問も抱かずに握り返し、立ち上がる二人。
それに少しだけ魔力を込める。
「ん・・・・?」
「あれ・・・・?」
一瞬だけ静電気のようなものが走り、小さな声を出すひかりとエルシア。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ。なんでもないです。」
「はい、静電気が走っただけですから。」
「そうですか・・・・すいません。急いでいますのでこれで!」
それ以上の詮索をされる前に、足早にその場を走り去る。
接触はできた、後は今夜を待つだけだな。
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その日の夜遅く――――
俺はかつて、赤い亜人たちと共に二人の魔法戦士を襲ったビル街へとやって来ていた。
わざわざここまで来たのは、エルシアたちに動きがあったからである。
「この近くだな。どうやらビルの屋上まで昇っていくようだが・・・・。」
なぜ姿の見えない二人の動きを掴めているのかといえば、朝に接触した際に二人に侵食をしたからである。
といっても、ほんの少しだけ魔力を送り込んだだけであり、それだけでは洗脳などできるはずもない。
というよりも、何の準備もしていないのに侵食を強行しても抵抗されてしまい耐性ができてしまうだけである。
今回は、彼女たちに何の影響も及ぼさず、俺がそれを感知して居場所を探るための発信機代わりに魔力を送り込んだのだ。
夜にどこかに行くと話していたので、彼女たちが動き出したのに合わせて俺も後を追いかけたら、ここにたどり着いた。
とあるビルに入っていくのを確認すると、俺は距離をとって少し離れた他のビルの屋上へ向かった。
あまり近くのビルだと、他の魔法戦士たちがいた場合はそれに見つかってしまう可能性もある。
「さてと、この辺なら問題なかろう。あの二人は・・・・お、屋上に出てきたな。」
こちらのビルの方がはるかに高いので、問題なく二人を視認できる。
普通の人間なら豆粒ほどにしか見えないだろうが、亜人でありかつレベルアップもしている俺なら、問題なく識別可能だ。
たどり着いた二人は周囲に人気がないかを確認している。
さすがに日が変わろうかという時間帯なので人気は全くない。
時間をかけて屋上一帯を見回った直後、二人を光が包み込んだ。
「おお、これは!間違いない・・・・魔力の光だ。」
ここからでもかすかに感じるほどの魔力の光。
それに二人が包まれた次の瞬間、魔法戦士の衣装をまとった姿に変わっていた。
「ふ、ふっふっふっふっふ・・・・は~~~~はっはっはっはっは!!やったぞ、ついにその瞬間を目撃したぞ!」
予想通り、天月ひかりがエルシアの相方であった。
それを認識できた瞬間、あの時の襲った魔法戦士がひかりの姿と認識できるようになった。
「なるほど、一度でも認識してしまうと過去の記憶も認識できるようになるのか。これは知らなかったな。」
記憶の認識を確認している間に、二人を包んでいた光は消えていた。
それと同時に、二人は屋上から他のビルへと飛び移り、どこかへと去っていった。
「近くで亜人が暴れていたから、そこへ行ったのだろうな。まあ、俺にとってはそれはどうでもいいことだが。」
変身を見届け二人の魔法戦士の正体をしっかり掴んだことこそ、最大の収穫だ。
「今日のところはこれで十分だ。まだ何の準備もできていないしな。」
目標をしっかりと見定めることができた俺は、彼女たちを罠にはめるべく知恵を巡らせるのであった。
~第4話・完~
ちょっとずつですが進み始めております。
いまだにエロは皆無ですが、もう少しお待ちください。