純性癖ナイツ 作:ひかりねこ
推しキャラの妹が登場したので気合い入れて書きました。微妙に百合・アナル描写あり。『相思相愛アステシアと朝昼夜でエッチする話』のドクターとアステシアになりますが、たぶん読んでなくても大丈夫です。
頑張りすぎて30000文字を超えてしまったので今回は2つに分割しております。
「ドクター、折り入って話があるのだけどいいかしら?」
「ああ、なんだい」
「実は明日からしばらく朝起こしにいけなくなるの」
「えっ!?」
思わずペンを取り落としてしまったが、そんなことも気にならない。秘書にして隠れた恋人関係でもあるアステシアからの意外な言葉に動揺しっぱなしだった。
「えーっと、それはどういう……もしや毎朝来て
アステシアが朝起こしに来る際は、下世話な話だが性処理も頻繁に行ってもらっていた。本人も存外乗り気であるし、私にとって毎朝の楽しみだったのは今更言うまでもないことだが、やはり無理強いしていたのだろうか? 不安に駆られてしまうが、果たしてアステシアは首を横に振った。
「安心してちょうだい、嫌になったとかではないわ。だったらとっくの昔に止めているもの。ドクターにはまだ話してなかったかしら、明日から宿舎の隣人が来るの」
「隣人? ……ああ、なるほど、そういうことか」
そこまで言われてようやく思い当たる節があった。
占星術師にして前衛オペレーターのアステシア──本名をアステシア・ウビカというが、彼女にはエレナという双子の妹が存在する。そちらは神秘的な星占いとは真逆の科学技術方面へ進んだようで、あのライン生命に所属しているのだから驚きだ。しかし先日、私も多少関わったライン生命の大規模実験絡みのゴタゴタの結果、その妹さんがロドスへ外部派遣という名の長期滞在をする運びになったのだ。
たとえ双子の姉妹であってもプライバシーは必要ということで、慣例通り宿舎は分かれている。ただしそこは人事部および管理側の気遣いなのか、アステシアと隣室にする配慮を見せたらしい。
「ロドスの人たちの好意に甘えるのもどうかと思ったけれど、あんな事件があった後だから私もエレナの傍にいてあげたいの。ごめんなさいね、ドクター」
「いや、それを言うなら私はいつも君に負担をかけてばかりだ。すまないね」
「そうね、自分で起きられない誰かさんのせいで毎朝大変だし、秘書の仕事も大変よ。もっと見返りがあって然るべきじゃないかしら」
などとニコニコしながら語るものだから、「それは申し訳ございませんでした、善処させていただきます」と冗談含みに笑い合う。軽口を叩ける相手がいるだけで心の疲れがグッと楽になるものだ。
グーっと伸びをして身体の凝りをほぐしてリラックス。唐突なカミングアウトに心が大きくざわついたが、蓋を開けてみれば何てことはなくて安心した。
「事情は理解したよ。隣室の姉が毎朝男を起こしに行ったり、まして夜中は男の部屋に行ったり、招いたりしてると気付かれたら
「……ドクター、あまり直接的に表現されると恥ずかしいから止めてほしいのだけど……」
「君もそこは同じだろうに」
毎夜のように私の性欲を受け止めてくれて、愛らしく乱れる女性が誰なのか。分からないとは言わせない。
そんなつもりで放った言葉にアステシアは頬を膨らませてムスッとし、可愛いなぁと思って指でツンツンしたら先ほど落としたペンで手の甲を突かれた。痛い。
「分かった、私が悪かったから無言で突くのは止めてくれ。あと拾ってくれてありがとう」
「どういたしまして。素直に謝れば最初から許してあげたのに」
ともかく、とアステシアは言葉を繋げた。
「心配せずとも、あまり長いこと我慢を強いることにはならないから安心してちょうだい」
「へぇ。それは星が示した結果なのかい?」
「ええ、その通りよ。大丈夫、私の占いは当たるって、ドクターはよくご存じでしょう?」
「そうだな、信頼しているとも」
研究者という職業柄、神秘学に準ずる占星術といった代物に私は疎いしあまり信用してるとも言い難い。
それでもアステシアの語る言葉ならばと思えるのは、きっと惚れた弱みなのだろう。
◇
翌日、さっそく件の女性が執務室へやって来た。
「こんにちは、ライン生命所属、エレナ・ウビカ研究員です。ドクター、お会いできて光栄です。こちらではコードネームを使用するとのことで、私のことはアステジーニとお呼びください、簡単で覚えやすいですから」
「こちらこそよろしく頼むよ、アステジーニ」
第一印象は、「なるほどこれはライン生命の人間だ」というもの。まず装いからして、上品でお淑やかなアステシアと違って装備品がメカメカしいし超ミニスカートだしで活発な印象を受ける。表情も声も溌剌として元気いっぱいだが、顔の作りは驚くほど双子の姉と似通っていた。
私が顔を合わせるのはこれが初めてだが、アステジーニは以前アステシアと共にロドス本艦で
さて、何から話したものか。今日も秘書として私のすぐ近くに座るアステシアは微笑むだけで喋らない。アステジーニも意図的に姉を視線から外しているようだから、ここが公的な場と考えて遠慮しているのだろう。
「しかし、先日の一件は災難だったね。君たちも、ロドスのオペレーター達も、無事に帰還できて良かった」
「ありがとうございます。私も後から聞き及んだのですが、あのときボス──フェルディナンド元主任を拘束するよう統括に働きかけたのはドクターのお力だったとか。どうか礼を言わせてください」
「そうかしこまる必要はないさ。君たちが自分の成すべきことを必死に行ったのと同じように、私もまた自分ができる範囲で成せることを実施したにすぎない。無事に危険な実験を収束させ、被害者を出さなかったのは君たちの成果だよ」
「えへへ、そんなに褒められると照れちゃいますね……」
嬉しそうに相貌を崩す姿もやはり姉によく似ている。初対面ながら不思議な馴染み深さを覚えてしまう奇妙な感覚だった。
「君は随分とその上司を慕っていたと聞く。気を落とすなとはとても言えないが、ロドスで力になれることがあれば遠慮せず言ってほしい」
「ありがとうございます、でも大丈夫ですよ! そりゃあボスやあの実験に思う所はたっっっくさんありますけど、いつまでもクヨクヨしてはいられませんから!」
ハッキリ宣言した瞳に迷いは無かった。様々な陰謀に振り回されたというのに、無気力にならず活力を維持できるのも立派な才能だろう。
「いい返事だ。アステシアはこの件について心配いらないと話していたが、どうやら君のお姉さんはしっかり君のことを見てくれているようだね」
「えっ、姉さんが!?」
「ど、ドクター! そのことは黙っておくって約束でしょう……!」
片や目を見開きながらも嬉しそうに、片や羞恥に顔を赤くしつつも微笑んで。別々の道を歩んでいても互いを信頼し合える関係性というのは美しいものだ。代償にペチンとアステシアのでこぴんを受けた──バイザーがあるので腕にだけれど──が惜しくないとも。
「あっ、痛そう……」
「これくらい当然の罰よ。それからエレナ、ロドスはとても良いところだけど、だからといって羽目を外したりしないようにね」
「はーい、分かってますよー。姉さんは心配性なんだから、ライン生命所属の研究員として恥ずべきことはしないよ」
「ははは……どうか気楽に構えてくれ。第二の実家と思って、というには少々ロドスはお堅いが、きっと気に入ってくれると信じてる」
「ええ、もちろんです! 私たちの実家に比べればどんなところだって天国みたいな場所ですし──あっ、ヤバっ、では失礼しますねドクター! 他にも挨拶周りしたい人がいるので!」
早口で告げるとアステジーニはピューっと風のように走り去って行った。いったい何がヤバいのか、再びでこぴんの構えを見せたアステシアを見れば明白だ。
それにしても元気なオペレーターである。アステシアにそっくりな顔でよく笑いコロコロ表情が変わるのを見せられるのは心臓に悪いのだが。主にドキドキさせられる点で。
「まったくエレナは……ごめんなさい、落ち着きの無い妹で」
「構わないさ、アレだけの事を経験しておいて活力があるのは賞賛に値する」
「ありがとう、オペレーターとしては恥ずかしいけど、姉としては嬉しいわ」
それにしても、と腕をさすりながら私は呟く。
「随分と実家が嫌いなようだね。確かに君の専門と彼女の専門は正反対だから折り合いが悪いのは想像つくが」
「あの子の場合、両親とひと悶着以上のことがあったから仕方ないわ。大学に進学してからは一度も実家に戻って来てないし……親も親でそのことを心配すらしてないもの。私だってどうかと思うわ」
「なるほど、込み入った事情があるようだ。わざわざ改名した上で、本名をコードネームに設定しているのも一種の当てつけか」
それこそアステシアのように本名をコードネームにしているオペレーターはたくさんいる。しかしアステジーニは自ら名前を"エレナ"と変えたのに、そちらではなく本名を
「あの子が占星術や実家を嫌うのは当然よ。だけど、人前で必要以上に批判を続けるようなら私はそれを止めなければならないわ。ドクターも場合によっては注意してあげてちょうだい」
「分かったよ、任せてほしい。しかしまったく、アステジーニは幸せ者だな。君のようにこれだけ強く想ってくれる姉がいるのだから」
同時に、恋人に選ばれた私もまた幸せ者の一人であることは、今更彼女へ告げるまでもないだろう。
「ドクター、素直に喋ってくれるのはあなたの魅力だけど、不意打ちは照れるからやめてほしいわ……」
すっかり顔を赤くして俯いたアステシアを眺めていたい欲を振り切って、本日の仕事へと再び意識を戻すのだった。
◇
それから二週間ほどが経過し、アステジーニはすっかりロドスへ馴染みってしまったようだ。
元々短期間ロドスに滞在していたわけだが、その間に顔なじみをしっかり作っていたのだろう。現在の長期滞在にあたって改めて挨拶周りをした結果、彼女は驚くほどスムーズに受け入れられていた。
とりわけエンジニア部が取り仕切る工房だったり、作戦活動の要点となる後方支援部に伝手が多かったようで、そちらに関わる人からは幾つもアステジーニの話を聞いた程だ。曰く、エネルギッシュでパワフルで、良い意味で研究員らしからぬ人間なのだとか。私も同感である。
なのでアステシアの妹がロドスでうまくやって行けるかどうか、そもそも心配すら不要だった。同時期に共同プロジェクトリーダーとしてライン生命からやって来たドロシー・フランクス氏との橋渡しすらやっているようで、まるで古参オペレーターだったかと錯覚しそうな活躍ぶりだ。
「ドクター、こんにちはー」
「おや、アステジーニか」
などと一人で昼食をつつきながら考えていたら、ちょうど噂のアステジーニその人がやって来た。手には昼食の載ったトレーを持っていて、人の少ない食堂を見渡しながら「ご一緒してよろしいですか?」と訊ねてくる。
「私で良ければもちろんどうぞ」
「ありがとうございます! いやー、実験に夢中になってたらお昼ご飯を食べ損ねちゃって……ドクターも同じですか?」
「ああ、書類をキリが良いところまで片付けようと考えていたらこんな時間だ。どれだけ
本日のアステシアは前衛オペレーターの訓練に参加するとのことで、秘書業務から外れていた。それならばと私は一人で──今更アステシア以外を秘書に付けるのも彼女に不義理な気がした──黙々と作業をしていたのだが、気が付けばお昼をとっくに過ぎている始末。慌てて食堂に駆け込んだ私は、一人寂しく隅っこで昼食を摂っていたのだ。
先ほどまで華の無い不審者が居ただけのテーブルだったのに、対面にアステジーニが着席した途端に驚くほど明るくなったように感じる。彼女の明朗で活発な雰囲気が光となって溢れているかのようだ。
「姉さんはドが付く真面目だからね~。いっそ石頭にも思えるくらいだよ、ドクターも苦労してるでしょ?」
「いやいや、私はとても助かってるよ。業務フローの作成も早いし、記憶力も抜群だ。少し教えたことをすぐに物にしてくれるから、いずれ私が要らなくなるかもって密かに考えてたりする」
「またまたー! 姉さんのことが好きだからってそんな持ち上げなくても大丈夫だよ」
そのまま二人して「ハハハ」と笑い合う……が、遅れて私はアステジーニが妙なことを口走ったことに気が付いた。
「……ん?」
「あれ? ドクターと姉さんって付き合ってますよね?」
「なっ、なんでそのことを、まさかアステシアが──」
「ふふっ、やっぱり。そうだろうと思ったんだー」
一拍置いてようやく、アステジーニにカマを掛けられたことに気が付いた。思わず「しまった」と口の中で呟いてしまう。このような心理戦、情報戦は私の得意分野であったはずなのに、とんだ失態だ。
やってしまったとマスクの下で蒼ざめる一方で、首尾よく求めた情報を引き出した妹リーベリはご満悦の表情だった。
「だって姉さん、ドクターのことを話すとき明らかに好き好きオーラ出してますし? 今まで見たことない『女』って顔してたら、そりゃあ察しも付いちゃうよ」
「……うまく隠し通せていたつもりだったのだがな」
「実際よく出来てたと思うよ? ロドスで色んな人と話してきたけど、ドクターと姉さんが仲が良いことを知ってる人はたくさんいても、浮いた話をする人は全然いなかったから。だからこれは、ひとえに姉さんをよく知る私だから見破れたことです、えへん!」
誇らしげにドヤァと笑われると反論する気にもなれなかった。これまで慎重に隠してきたことを一瞬で見破られたことに焦りを覚えるが、双子ゆえの事故として割り切る他ないか。
それで、と私は話を続けた。せめて主導権くらいは握っておきたいという儚い抵抗だった。
「できれば誰にも広めないでほしいのだが……何か見返りとか、いります?」
「いやいやまさか! 告げ口なんて狡い真似しないよ、したところで絶対気にもされないって」
「そうかなぁ……組織のトップが一個人と付き合ってるのは小さくないスキャンダルな気がするが」
「そんなことないよ、ボスだって主任ながら普通に結婚してご家族がいたし──」
今度はアステジーニの方が、「しまった」と口にする番だった。
「……すみません、ついボスのことを思い出してしまって。ロドスに来るにあたって、気にしないよう頑張ろうと思ったのにな」
「謝ることじゃない。ほとんど喧嘩別れのようになった元上司が気にかかるのは自然なことだ」
ライン生命で起きた騒動の黒幕であるエネルギー課のフェルディナンド主任は現在、どのような手段か逃走を図り現在違法実験の容疑で指名手配中だ。とはいえ、移動都市の中に隠れ潜むことは難しく、であれば荒野に出て開拓者に紛れるしかないのだが……彼が実験の生贄に捧げようとした開拓者たちがきっと黙っていないだろう。おそらくはもう、生きてはいない。
しかし、そのような残酷な推論を目の前の研究者に告げる気にはなれなかった。
「でも、うちのボスが実験を強行したせいでロドスの方々まで巻き込んだのは事実ですから……ドクターからすれば嫌な相手になるのもしょうがないかなと」
「私たちが彼に義憤を抱くのと、君が敬愛する元上司にどのような想いを抱くかは全く関わりのないことだ。それを改めさせる権利など、私たちが持つはずもない。だけど敢えて言わせてもらうなら──今でも随分と慕っているんだね、君は」
大きなため息をついたアステジーニはフォークをぐさりと羽獣の肉に突き刺した。浮かんだ表情は怒りと悲しみがない交ぜとなった複雑なもの。私は特に急かすことなく彼女の言葉を待った。
「……姉さんから聞いたと思うけど、私って親とすっごい折り合いが悪くてね。どれだけ勉強で良い成績を取っても占星術に関わりが無ければ無価値も同然、しかも道具を平然と使い捨てる浪費家でさ。息苦しくておかしくなりそうで、大学入学から一人暮らしを始めて、やっと今の私を認めてくれたのがボスだったんだ」
「複雑な家庭環境だったようだね」
「うん。だからボスは第二の親みたいなものというか……いや、それにしてはとっても厳しかったけどね! 結果が出せなきゃ何度でも詰められるし連日残業は当たり前、もうやだ~ってなることもあったよ」
そんな風に過去を語るアステジーニの顔はどこまでも晴れやかで楽しそうだった。
「結局ボスは私を信じてくれなかったし、開拓者の命を平然と使い捨てる態度が大嫌いな私の両親みたいでさ……この人もそうなんだって失望した。でも楽しかった時間だって嘘じゃないから、今でも思い出しちゃうんだ」
「そうだね、嘘ではないとも。たった一度の失敗ですべてが裏返るわけではないのだから。胸を張って前に進んで、時にはこんなこともあったなぁと
「過去の無い私が言えた義理ではないけどね」、と重い空気にオチを付けるまでがセットのつもりだったのに、思いのほか真面目に私を見つめる瞳のせいで、冗談を口にすることはできなかった。
数回瞬き、考えを咀嚼するように数秒置いてから、アステジーニは微笑んだ。
「ずるいなぁ、そうやって相手が一番欲しい言葉をドクターは与えられるんだね。もしかして、姉さんも同じ手法で落としたりした?」
「失敬な、清く正しい付き合いの賜物と言ってくれ」
「どうだか。うん、でも姉さんが惚れる理由も分かる気がするよ。優しいっていうか、いざという時にドクターと話せればどんな難題だって解決できそうだもの」
「買い被りすぎ、と言いたいけど、そういう人間でありたいと常々願っているよ」
以前の職場や上司に対する複雑な心境をロドスでは誰にも相談できなかったのだろう。そりゃそうだ、彼を知っている人はごく少数で印象だって最悪に近いのだから。本人だって「その話はしたくないんだ」と誤魔化していたのを聞いたことがある。
けれど内心溜め込んだ想いを吐き出し、肯定されたことでやっとアステジーニは肩の荷が下りたようだった。
「でもそっか、もし姉さんとドクターが結婚までしたら、もしかしてお
「さ、さすがにまだ気が早いかな……そこまで考えてる訳じゃないから……」
「ダメです、大事な姉さんの心を奪った以上は最後まで責任取ってもらわないと! もし捨てるなんてことになったら、地の果てまで追いかけてこわーい実験に参加させちゃうかも、なんてね」
ほんの一瞬、アステジーニの目から光が消えたような気がして、ちっとも軽口には思えなかった……反射的にブルりと身体が震えたのは防衛本能だろうか。うん、捨てられるなら私の方がよっぽどありそうだけど、それはそれとして大事にしなければ。
「私のせいで
「ああ、任せてくれ」
「ならばよーし! じゃあねドクター、昼食ご一緒してくれてありがとう!」
ババババッと残像が見えそうな勢いで昼食を平らげたアステジーニは「ごちそうさまでした!」とトレイを下げて去って行った。先ほどまで真面目な話をしていたとは思えない変わり身っぷり、そして驚くようなスピード感に、時間の足りない研究員は大変なんだなと呆気に取られてしまうのだった。
◇
以降も特に日々に変化はなく、アステジーニがロドスへやって来てから一か月が経過した。
……訂正しよう、私にとっては大きな変化が一つある。結局アステシアとの性行為はこの一か月で皆無だった。時間が合わなかったり、姉妹水入らずの時間を優先してもらったりで、隙間時間での交わりすらしていない。本当に清く正しい付き合いに戻ってしまったのだ。
まあ、アステシアに負担をかけないという意味では決して悪くない。毎度自分の馬鹿みたいな性欲を受け止めてもらうのは申し訳ないからだ。しかし以前は頻繁に行っていたセックスができず、
そしてもう一つ、アステジーニに私たちの関係が露見したことについてだが、アステシアは予想以上に冷静というか、むしろ予見していたような口ぶりだった。
「ええ、大丈夫よ、問題ないわ。あの子には遅かれ早かれバレてしまうことだったもの……心配しないで、それが原因で今の関係が終わることはないから」
不思議な確信と共に告げられてしまえば、私はそれ以上不安を口に出すことはできなかった。元よりアステジーニをよく知っている姉の言葉だ、考えがあってのことだろう。それを信じるしかない。
で、悶々としながら一か月を過ごし、そろそろ我慢の限界だなとなり始めた頃。いつも通りに業務を終えて片付けを行っていた際に、何気ない調子でアステシアが言ったのだ。
「今夜、私の部屋に来てもらうことはできるかしら?」
彼女の部屋に招かれるとはすなわち
だが、妹が隣室にいるからしばらく止めようと提案したのはアステシアの方だった。
「時間なら空いてるけど、大丈夫なのかい?」
「問題ないわ。エレナは今夜、工房の方で夜通し実験をするみたいだから。ドクターにいつまでも我慢させるのも悪いし、今がチャンスかしらって」
なるほど、理屈は通っている。隣室の妹は不在であり、元々もう片方の部屋は主が誰かも把握してないほど外勤が多いオペレーターの居室である。これならば誰に憚ることなく楽しむことができそうだ。
「嬉しいよ。よし、準備をしたらすぐ君の部屋に行こう」
「待っているわ」
即断即決。すぐに決断を下した私はさっさと片付けを終えて自室に戻ると、軽食を摂ったりシャワーを浴びたりして身支度を整えて。逸る気持ちを抑えながらアステシアの部屋へと赴いたのだった。
「どうぞ、ドクター」
ノックするとすぐに扉が開かれ内部へと招かれる。何度か踏み入ったことのある室内は相変わらず天文学の本や資材が目を引いて、とりわけ机の上の天球儀が印象的だ。なのに雑多な印象を受けないのは整理整頓がよく行き届いているからだろう。
しかし冷静な判断ができたのはここまでだった。夜、誰にも見られないプライベートな場所でアステシアと二人切りという状況。溜まりに溜まった欲望が爆発し、理性を吹き飛ばすには十分すぎる起爆剤だった。
身体が無意識の内に動き、そのままアステシアを抱き留めてしまう。柔らかな女体の感触とふわりと広がる良い香りが何だか懐かしい気がした。
「もう、そんなに我慢できなかったのかしら? ……こっちも大きくしちゃって、お腹に当たってるわよ」
既に下着の中で私の一物は巨大化を果たしており、ズボンごと押し上げ存在を主張していた。さらには膨らみをアステシアの下腹部に押し付け無理やりにでも胎内に入り込もうとアピールしているようだ。グイグイと力強く当たる度に彼女の口から熱いため息が零れ出て、その度に肉槍が伸びてしまう。
「情けないことにとっくに限界だったよ。君の方こそ、別に何ともなかったのかい?」
「そんなこと、ないわ。私だって寂しかったもの……ドクターに組み敷かれて犯される妄想をしたことも、何度かあるわ」
「それは」
絵にかいたような清楚で上品な女性の赤裸々な告白に興奮が収まらない。ああ、彼女も欲求を持った一人の人間なんだなと安心すると同時、私の中で眠る獣欲がムクムクと持ち上がってきた。このまま押し倒してレイプするかの如く犯し抜きたい、そんな恥ずべき欲求が。
しかし私の浅ましい欲望など占い師からすればお見通しなのだろう。スルリと抱擁から抜け出たアステシアは自分から白いベッドに横たわると、スルリとロングスカートを持ち上げた。スラリと伸びて艶やかな両足がさらけ出されるが、下着までは見せてくれない。じれったくて性欲を煽る格好を自ら取って、囁くのだ。
「今夜は、ドクターの好きなように犯してちょうだい」
「──ッ、君はそうやってッ……!」
どうして私をここまで甘やかしてしまうのか。これではもう我慢できないではないか。
紳士さという最後の仮面を脱ぎ捨てた私は、中途半端にズボンと下着を下ろした格好でアステシアに覆いかぶさる。最後の一線を隠していたスカートを容易に持ち上げ、両脚を開くと秘されていた白いショーツへガチガチに勃起した肉棒を擦りつけた。
今から君の大事なところを貫いてチンポケースにするぞ、これだけの質量が子宮まで圧迫するんだぞ──そう脅しているつもりなのにアステシアの秘所はジンワリと湿り気を増やしていた。私を見つめる瞳には熱が灯り始め、「まだ挿入しないのかしら?」と言外に訊ねてくる。
──もう無理だ、完全に理性が吹き飛んだ。
「ぁ──♡ 熱いのが、入ってっ♡ んぁ…………♡♡」
ズプン、ググググッ……!
潤み始めてはいるものの、完全には解れていない膣内へ無理やり剛直をねじ込んでいく。少し硬さの残る内部は久しぶりの侵入者にビックリしたように蠕動しており、よく知っているはずの雄の形を思い出すのに必死である。応急処置とばかりに肉棒へ絡み付き時間稼ぎを試みる膣肉を強引に掻き分けると、まずは挨拶代わりに子宮口へ亀頭でキスを落とした。
どちゅん……っ! グリグリグリ……♡
「はぅっ……♡ 子宮が、あんっ♡ 潰されてる……♡」
ベロキスのように何度も入口の輪っか部分をツンツンしたり、力を籠めてグリグリ圧し潰すように刺激する。傷つけないよう丁寧に、けれどアステシアに最大の快楽が伝わるよう執拗な子宮愛撫。ねっとりとした責めは久方ぶりの性行為で火照った身体には強すぎたようで、これだけで膣内がぎゅーっと締まってぷしゃりと緩めの潮が吹き出た。お腹にかかった温かな水流は彼女の絶頂をこれ以上なく示している。
「ごめん、なさいっ♡ 私だけ先にイっちゃう、なんて……♡」
「謝らなくていい。君が気持ちよくなった分だけ私もそうさせてもらうから」
ここまではいわば猶予期間だ。かなり時間を空けたことで誰が主人か忘れてしまったアステシアの身体を慣らしただけ。それが証拠にやっと膣内は慌てて私の一物の形に変わり始めており、極上の膣襞たちは『忘れていて申し訳ありませんでした♡』と謝罪しようと愛液を滲ませながら我先に吸い付いてきた。
もちろん、散々我慢させられた後なのだからこの程度の謝罪で許すはずもなく。二度と忘れられないように刻み込んでやろうと陰茎を引きずり出してから──最後の良心が私にストップをかけた。
「たぶん今夜は乱暴に抱き潰してしまうかもしれないから──」
嫌なら今のうちに言ってくれ、そう続けようとした言葉は唇を塞がれ音にならなかった。瑞々しい女性の唇、そして口内へ侵入してくる柔らかく熱い舌。くちゅくちゅと唾液ごと交わり合いながら舌性交が続けられ、貪るようにキスを交わして吸い合った。
膣内にも負けない気持ち良さ、そして熱さがあった。中途半端につながった状態で行うベロキスは気持ちよくて、背徳的で、ずっと続けばいいのにと願ってしまうほどなのに。気が付けば銀の橋が惜しむように唇を繋ぎ、蕩けた顔のアステシアが私を見上げていた。
「ぷはっ……♡ ふふっ、何か言いかけてたかしら? 最初に言ったでしょう、あなたの好きなように犯してちょうだいって♡」
「…………──ふーっ……」
大きく深呼吸を一つ。
それからアステシアの細い腰をガッシリと掴むと、一切の容赦を捨てて腰を最奥まで突き込んだ。
どちゅんと重い水音が室内に響き、一拍遅れてアステシアの頭が快楽信号を受け取り白い喉が震えた。
「っーーーー~~~~♡♡ あっ♡ あっ♡♡ あんっ♡ 奥、強いっ♡」
普段の落ち着いた声色からは想像が付かないほどの嬌声が耳朶を叩く。可愛らしい声を持つリーベリの女性が、私の手により恥も外聞もなく喘いでいる事実に堪らなく興奮を煽られて、次のピストン運動はさらに激しさを増した。この時点でパートナーへの気遣いは完全に頭から飛んでいる。
カリ首で膣襞の一つ一つをやすりがけのようにゾリゾリとこそぎ、肉槍が抜け落ちる寸前まできゅーっと追従する膣口を竿全体のストロークで容赦なく苛め抜く。ずるるるるっ、と亀頭の先端ギリギリまで抜いた後、一気に腰を戻して最奥まで叩くと割れ目は嬉しそうにイキ潮をまき散らした。愛液と潮にコーティングされた肉棒はギラギラとした輝きと共に滑りを良くし、肉のぶつかる音を立てながら膣内全体を擦り上げる。
ぱんっ! ぱんっ! ぱんっ!
「あっ、んんっ♡ はぅ♡ んっ、くぅ……♡ ふーっ♡ ふーっ♡ ──んぐっ、だめ、あぁっ♡♡」
アステシアの
「もっと動くよ」
「待って、いまイってるから──♡!」
当然待たない。好きに犯していいと許可は貰ったのだから。
じっくり時間を掛けながら腰を引いた。
あたかも最速を競うようなペースで奥へと突き込んだ。
正反対にズルリと勢いよく抜くこともあれば、ねちっこい腰遣いでジワジワ挿入することもあった。
アステシアの膣内をどう味わいも私の自由だった。思いつくまま貪っていいし、その度に可愛らしい嬌声で悦びを示してくれる。男としての満足感は相当なものだった。
「ドクター……♡ どくたぁ♡ これ、おかしくなって、んあっ♡♡」
責めれば責めるだけ肉壺は服従を示して剛直をもてなしてくれた。そのせいで立ち昇ってきた射精欲を前にして私は一瞬だけ迷った。我慢してもう少しアステシアがイき狂う様を鑑賞するか、あるいはさっさと自分も気持ちよくなるか。答えは即座に出た。
「一度、
「うん、好きに、してぇ……♡」
精巣からせり上がってくるものに素直になる。射精の予兆を受け取った竿全体がさらに膨らみ、亀頭の入口がぷっくりと開き始めた。敏感に主の変化を感じ取った膣内もしっかり精液を受け止めようと奥への道を開き『どう
なのだが、好き勝手貪られる前提の雌の期待通りに運ぶのは面白くないと感じてしまって、半分ほど一物を引き抜いた。ショーツ越しにも分かるほどぷっくり膨らんだクリトリスの裏側、俗にGスポットと呼ばれるザラザラした部分に狙いを定めると、そちらへ向けて射精したのだった。
「ぁっ♡ 熱いのが、たくさん出てるわ……♡ んっ、だめっ♡ 弱いところに精子当てられて、イっちゃう♡♡」
実に一か月ぶりのマトモな射精は筆舌に尽くしがたい快感だった。精液をびゅーっと吐き出す暴力的な快感に一瞬だけ我を忘れるほどで、呆けて開きっぱなしの口から涎が垂れていたことに気が付いた。けれどアステシアはそんな私の様子に気付かないほど絶頂を甘受しており、弱点へ放射される精子の感触に蕩けていた。
思うまま射精させてもらった後に抜け落ちた竿は愛液と精液に塗れ、ホカホカと湯気を放っているようだ。汚れてしまったそれを拭うように純白のショーツに押し付けると、即座に硬さと太さを取り戻していく。
禁欲で溜まった性欲によって早打ちとなってしまったが、その分だけ次弾はいくらでも用意できた。萎えることを知らない性欲に忠実となってアステシアへ命令する。
「アステシア、うつ伏せになって」
「分かった、わ……」
まだ絶頂の余韻が抜けず身体を震わせながら、枕に顔を埋めて健気に私へ背中とお尻を向けてくれた。リーベリの青い尾羽の下にあるお尻はシミ一つない綺麗なもので、適度な大きさと張りを保って柔らかそう。白桃のごときお尻を不躾にグイっと掴み左右に開けば、ピンク色をした綺麗な菊皺も、先ほど出された精液を吐き出す陰裂も隠せない。
上からのしかかり覆いかぶさる寝バックの姿勢。切っ先を膣口へあてがうといやらしい音がこれでもかと聞こえてくる。今度こそ組み敷いて強姦してるような体勢になると、じっくり味わるように腰を沈めたのだった。
◇
「うぅ、腰が痛いわ……ドクターがあんなに激しく求めるから」
「すまなかった、つい自制が利かなくなってしまって」
結局それから何度も交わり、射精して、しばらく肌を重ねられなかった鬱憤を晴らすように肉欲に耽った。ようやく気が済んだ時には酷いことになっていて、アステシアは口と前後の穴から精液を零しながら胸へパイズリ射精をされていたのである。精液塗れのままドッとベッドへ倒れ込んだ姿は間違いなくレイプ事後の光景にしか思えなかったほどだ。
ただしそれも全部同意の上でやってるわけで。終わった後は順番にシャワーを浴びて、ベッドシーツを取り換えて、一緒に横になってしまえば激しい行為の残り香なんてアッサリ吹き飛んでしまうのだ。
「私も剣を振るうために体力を付けている方だけど、ドクターにはいつも泣かされちゃうわ。むしろどうしてこれだけ性行為を続けられるのに体力が無いのかしら?」
「うーん、私にも分からないな……ご飯とデザートは別腹というが、そんな感じだろうか?」
「対アステシア・ウビカのときだけ体力お化けになる──絶対あり得ないと言い切れないのが恐ろしいわ」
冗談みたいな仮説を大真面目に検討する恋人の顔が愛おしかった。たぶん難しいことは一切なく、恋人相手にだけはハッスルするという男なら当然の理屈でしかないのだが。毎回猛りをぶつけてしまい、受け入れてくれる彼女には感謝しかなかった。
「っと、普段ならこのまま寝て朝早くに出るところだけど、今日はもう戻らないとダメか。アステジーニと鉢合わせでもしたら大変だ」
そもそもアステシアの妹相手にこの爛れた関係が露呈するのは避けておきたい。さっさと服を着替えて戻る準備を進める私を見ながら、当のアステシアは隣室を隔てる壁を見つめてクスッと笑う。
「焦らなくても大丈夫よ、エレナと出くわすことは絶対に無いから」
「……やけに確信を持って言うね。正直私は不安なのだが」
「平気よ、信じてちょうだい」
最近のアステシアは、というよりアステジーニに関することについては、有無を言わさず私を説得することが増えている気がした。別に不快感はない。ただ理由をはぐらかされているのは少し寂しいなと思う程度だ。もしかしたら──と脳裏を過ぎる考えもあったが、さすがに荒唐無稽だろう。
ともあれ、ピロートークもそこそこに私はそそくさと去って行った。誰にも見つからず自室に戻った後は、性交後の疲労感が一気に押し寄せて泥のように眠ってしまったのだった。
◇
以降、しばらくの禁欲期間は何だったのかというくらい、私たちは元の関係に戻りつつあった。
さすがに朝起こしに来てくれることはまだない。しかし数日に一回のペースでアステジーニが夜に自室を空けることがあり、その日に限って私たちは逢瀬を重ねていた。
ただ、一つだけ疑問なのは常にアステシアの部屋でセックスしていることだ。最初こそ大した疑問を持たなかったが、常に彼女の部屋でとなるとさすがに違和感を覚える。より安全を取るなら私の部屋に来てもらう方が良いだろうに、アステシアはそれを言いださなかった。荒唐無稽に思えた私の考えが、段々と補強されていく。
「失礼しまーす! 大型実験の認可を頂きに来ましたー!」
それからもう一つ、これは明るい話題となるが、アステジーニとの距離感がグッと近づいたように思える。自分の姉が付き合っているという安心感からなのか、良い意味で遠慮が無くなったというか。それこそ男家族に甘えるような振る舞いが多くなって私としても嬉しい限りだ。
ただ、時折妙な振る舞いを見せることがある。私の方をジッと見つめたと思えば恥ずかしそうに視線を逸らしたり、姉と私を見比べて怪訝そうな顔をしてみたり。いまいち理由が分からなかったが、特段指摘はせずに気にしないこととした。
などなど、腑に落ちないことや嬉しいことに囲まれながら毎日の業務を続けていく。時にはアステシアの服を着て彼女のフリをしたアステジーニがやって来るいたずら──稚拙すぎて一瞬で見破れた──を受けたり、源石関連の問題で大真面目に講義をしてみたこともある。二人の
新たな乗員を受け入れてもロドスは何も変わらず前に進むだけ。乗組員である私もその例にまったく漏れることは無い。むしろ日々にもう少し彩が増えて、ちょっと爛れた関係が抑えめになって、この程度の差異に過ぎなかった。
「今夜も空いているから、ドクターがその気なら来てくれて構わないわ」
そして業務終わりにアステシアからそっと耳打ちされた回数も、気が付けば両手の指では足りなくなっていたのである。
相変わらず逢瀬の場所は彼女の部屋で固定であり、隣室のアステジーニは実験のために部屋を空けているのが前提だ。こっそり訪問した私はアステシアを好き勝手に犯したり、時には攻守交替して情けない射精をさせられたり。仲良く性行為を楽しんだ後は身支度を整えて自室に戻るのが慣例となっている。
──今夜もアステシアの部屋に招かれた私は、挨拶もそこそこに彼女を抱いていた。
「
「んっ……ふぅ……ドクターのが、子宮まで届いてる……」
今日は対面座位で繋がっていて、互いに服を脱いでいるから肌がよく密着する。素晴らしくたわわで柔らかい巨峰も、しなやかな筋肉で覆われつつも女性らしさを失わない細腕も、丁寧に整えられた青色の茂みまで、どこだろうと触れ放題だ。
欲望に任せて腰を打ち付けるのも好きだが、こうしてゆったり交じり合うのも悪くない。吐息や体温が絡み合って男女の境界線が溶け落ちていくような、不思議で退廃的な一体感が違った興奮を齎してくれるのだ。
交わり始めてから既に一時間が経過するが、どちらも絶頂まではいかず淡い刺激を楽しみ合っている。時折キスをしたり、他愛のない雑談をしてみたり、無言のまま身体を触り合ったりと。その最中にアステシアがそっと耳元へ口を寄せた。
「ねぇ、ドクター。あなたはエレナのことが好きかしら?」
緩々と痙攣する膣内の感触を味わっていたのに、不意打ちの質問に驚いた一物がビクリと跳ねた。内部の良いとこを擦られたアステシアが「んっ♡」と声をあげる。
「好きか嫌いかでいえば間違いなく好きだが……もしや浮気を疑われてるのかい?」
「違うわ。だけど聞かせて、単純な好悪の感情ではなくて、あなたはエレナを恋愛対象として好きになれる?」
あまりにも現実味の無い問いかけだった。浮気を疑われていて、カマを掛けられていると言われる方がまだ信じられる。自分の男が他の女を好きかなんて、こんなことをアステシアが確認するメリットなど皆無だ。
混乱する私を真正面から彼女は見た。星の煌めきが輝く神秘的な瞳がこちらを見据えて返答を待っている。ゴクリと唾を呑み込んだ私は、意を決して口を開いた。
「好きにはなれるだろう。けれどこうして君がいる以上、それは決して実らない感情だ。恋愛感情にまで持ち込まないと断言する」
「なるほど、あくまで私がいるからダメと認識していると。嬉しいわ、強く想ってもらえるのは恋人冥利に尽きるもの」
でもそれなら、とアステシアは続けた。
「私の許可があれば、その限りではないということね?」
「…………君は、まさか」
「失礼するわね、んっ、っ……♡」
にゅぽんと音を立てながら肉の杭が引き抜かれ、スラリと背の高いアステシアが床へと降り立つ。彼女は迷いなく自身の端末を手に取ると誰か宛てに電話をかけて、普段と変わらない調子で言った。
「エレナ、私の部屋へ来てちょうだい。三人でしっかり話し合いをしましょう?」
次の瞬間、ガタンと大きな音が隣室──アステジーニの部屋から聞こえてきた。防音性の高い壁だが、よほど大きな音なら聞こえてしまうことはある。だけどそれよりもまず、この時間はアステジーニが居ないはずだとアステシアは言っており……しかし焦ったような物音は人がいることを雄弁に伝えてくる。
ここに来てようやく私はアステシアの目的を察した。
いや、敢えて言うなら最初から可能性として考慮はしていたのだ。けれど、それあけはあり得ないと思い頭から振り払ってきたのに。ドンピシャで正解だったとは誰が想像できようか。
「アステシア……君は妹が私たちに嘘をついていたことに、最初から気が付いていたんだね?」
「ええ、そうよ。エレナはずっと、私たちの行為を覗いていたわ」
何でもない事のようにアステシアが肯定した途端、部屋の扉が開いた。
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