※この作品はR-18です。

純性癖ナイツ   作:ひかりねこ

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性格も外見も倫理観もふわっとしてるドロシーが好きです。

もう少し早く書き上げるつもりが随分時間を掛けてしまいました。他者へ際限なく慈悲をつぎ込めるドロシーですけど、一度弱みを見せた相手にはとことん依存するのではという妄想を下に書きました。
私事で恐縮ですが、Twitterの方でお題箱を開設しました。良ければどうぞ(ただし進捗などはあまり期待しないでください)

アカウント:@0Qm9xJ3A9c6FTlv


ドロシーと共依存えっちする話

 ──自意識を自覚した瞬間、『夢』を見ているのだと気が付いた。

 

 何もない暗闇にポツンと一人で立っている。全身を隠す服装に顔すら隠すバイザーまで、全てが現実そのままだ。なのに夢と断じられるのは私の周囲に人の気配が一切なく、それどころか物や建物、草木の一本すら見当たらないからだ。

 ああ、またかとため息をつく。ここしばらく同じ夢を幾度も見てしまう。何もない虚無の空間に一人で放り出されるこの夢は、不安という名の闇が私を圧し潰さんとするのを、ただ静寂のみで主張してくる。あるいは過去の記憶が無い私の根源的なところに根ざす恐怖までもが、一緒に顕在化しているのかもしれなかった。

 

 憂鬱だ。こういう時は夢の中だろうとジッとして動かず、一秒でも早くこの静かな悪夢が終わるのを待つしかない。だけど最初は静かなこの悪夢が段々と騒々しく、残酷に変貌していくことを私はよく知っていた。

 

「……ほら、やって来た」

 

 雨音。怒号。爆発。剣戟。無数の足音。通信機のノイズ。血飛沫。

 人生の中で必ず聞く音もあれば、平穏な暮らしをしていれば絶対に聞かないだろう音まで。様々な音色が闇の中から私を苛み、『おまえの失敗を忘れるな』と口々にまくし立てる。やかましい、自分のミスなど誰より深く受け止めてる──などと言い返せる気概もなく、無言で夢から覚めるのを待っている。

 

『……ドクター……』

 

 このうえ私を呼ぶ声まで聞こえてくるとは。今度は何だ、恨み節をぶつけようという魂胆か?

 

『ドクター……ねぇ、ドクター……』

 

 こちらが無言であるのをいい事に、呼びかけはさらに強まっていく。さすがにうるさい、どうせ無駄なのは分かりきっているが、いっそここから走って逃げだしてしまおうか。

 しかし夢の中で四肢に力を込めた段階でようやく、この呼びかけが『夢』の声でないことに気が付いた。何故と問われても分からない。ただ、この包み込むような声色は私の知っている彼女(・・)のものであり、敵意など微塵も無いと気付けたから。

 

『ほら、ドクター、いい加減に起きた方がいいと思うわよ?』

 

 ハッキリと言葉が聞こえた途端、水底から急浮上するように『夢』からの離脱を果たしたのだった。

 

「あら、やっと起きたのね。随分とうなされているようだったから、心配したのよ?」

 

 視界に飛び込んできたのは部屋の天井──ではなく鮮やかな金髪の長髪だった。身体全体が何か柔らかいものに抱き留められている。鼻腔をくすぐる良い香りと、それに反するような化学薬品や機械の匂いもあって、ようやくここが誰の部屋(ラボ)であったか思い出せた。

 

「私は……いや、その前にか。すまないな、ドロシー」

「どういたしまして」

 

 気にしないでと柔和にほほ笑んだ彼女は、この研究室の主であるドロシー・フランクスその人だ。ライン生命の一部門で主任を務めるほどの才女でありながら、今は訳あってロドスで共同プロジェクトの責任者をやっている。

 そんなすごい人物が恥ずかし気もなく異性を抱きしめているのだが、ドロシーにとって何ら特別な事ではないらしい。むしろ増々ぎゅーっと抱きしめる力が強くなってきて、私の方が気恥ずかしさを覚えるほどだ。

 

「あー、その、そろそろ放してもらえると嬉しいのだが」

「ダメよ。寝ている間あんなに苦しそうだったのだから、もう少しだけあなたを庇護させてちょうだい」

 

 こうなったときのドロシーは頑固だ。なのでひとまず彼女のされるがままとなって力を抜いた。気恥ずかしいがしかし、抱擁による安心感は確かに私の心をリラックスさせるのに最適だった。

 チラリと壁の時計を見れば時刻は既に夜半に突入した頃合い。ドロシーの研究室に訪れたのが夕飯を摂り終えた後だから、そこそこ長く寝てしまったようだ。せっかく彼女の実験に協力しようと思っていたのに。

 

「ねぇ、ドクター……まだこの前のミスを気にしているの?」

 

 不意にドロシーが問いを投げかけてくる。欠片も責める色の無い慈愛に満ちたものだったのに私の身体はビクリと震えた。

 まだ抱きしめられた状態だというのに、私は両腕を回して自分からドロシーを抱き留めてぬくもりを求めた。そうでなければ、罪悪感で己の身体が呆気なく潰えてしまいそうだったから。

 

「……ああ、そうだよ。嗤ってくれて構わない、私はたった一度の失敗がトラウマになってしまったのだから」

「あの作戦はあなたのミスではないわ、他の人たちも口を揃えて言っていたじゃない。心を壊してしまいそうなほど気に病む必要はないのよ?」

 

 ──先日の作戦指揮において、私は初めて致命的な失敗を犯した。

 

 相手の出方を読み切っていたつもりだったが、それ以上に現場の状況を考慮しきれなかったのが致命的となった。私が把握しきれていなかった情報を元に敵はロドスの部隊を奇襲し、結果としてこちらは重傷者を多数出す甚大な被害を被ってしまう。最終的には何とか立て直して作戦は成功したものの、成果によって重傷者たちの怪我が完治するわけではない。少なくとも五人以上は生死の境を彷徨い、内一名は半月が経過した今でも意識不明となっている。

 

「私は怖くなったんだ。初めて自覚したよ、自分の作戦によって身近な人間が永遠に失われる可能性があるということを」

 

 当たり前のことを、なまじ優秀な指揮官としての素養に阻まれ意識してこなかった。

 今回の失態は情報の精査が甘いまま不完全な作戦を立てた指揮官(わたし)の落ち度で間違いないのに、誰も私を責めなかった。仕方なかった、相手が上手だった、自分がもっとしっかり見張りをするべきだった……怪我をした方に口々に慰められる始末。おまえが悪かったと責められた方が遥かに気は楽だった。

 だがこんな弱気な態度をロドスの誰に見せられるという? 私はドクターであり、指揮官であり、彼ら彼女らに頼られる存在なのだ。弱音を吐く前にまず改善策を用意し、次は絶対に同じミスをしないよう努めなければならない。こればかりはアーミヤやケルシーだろうと──むしろ彼女たちにこそ失望されたくないので隠したかった。

 

「誰にもこんな悩みは打ち明けられなかった……だからこうして、君にだけでも話せることがどれだけ救いになってることか」

「ええ、そうよ。あなたみたいな人を私は放っておけないの。助けてあげたい、幸せになってほしいって心から願ってるもの」

 

 ドロシーはオペレーター登録こそしているものの、あくまで外部協力者の立ち位置にすぎない。ロドス(身内)に今の醜態を晒したくない私にとっては逆に気兼ねする必要のない非常にありがたい存在だ。

 しかし何よりも救われているのは身内だの外部協力者だのを語る以前に、ドロシー自身が優しさを煮詰めたような女性である点だった。私の変化に気付いた彼女へ自虐も不安も全て吐き出した結果、底無しの善意に甘えてしまっている。

 

 たぶん、打算はあったのだ。

 

「きっと優しい君にならば何を話しても受け入れてもらえる、"ロドスのドクター"ではなく一個人として聞いてもらえる……それを承知した上で君に吐き出したのだから、私はズルい人間だよ」

「だけどね、私は嬉しかったのよ?」

 

 抱擁したままドロシーの蕩けるような甘い声が耳元で囁いた。蜜のようにドロリとして、毒のように滴りながら頭の隅々までしみ込んでいく。弱みを見せた私にとってあまりに抗いがたい魅力で、ドロシーから離れられなくなる。

 

「正しいことを正しいように行って、一度も間違えないなんて人は人間ではなくロボットだもの。ドクターはロボットではなく一人の人間で、私を弱みを見せても大丈夫と信じてくれたのが嬉しいの」

「……やめてくれ、そんなことを言われてしまうと、私はまた君に依存してしまう」

「ううん、それで構わないのよ。だってお互い様だもの」

 

 いつの間にかドロシーの顔が真正面にあった。ザラックらしからぬ大きな耳がピクリと動き、潤んだ瞳が私を見据える。何度見ても目が覚めるほどの美しい顔立ち、微かな呼吸音さえ聞こえる近さにドキリとさせられた。

 ああ、ダメだ。今すぐこの抱擁を振りほどいて立ち上がらなければいけないのに。慈愛に満ち満ちた才媛の手から離れることが恐ろしかった。ここならば情けない自分に苛立つことなく、肩にかかる重圧すら忘れることができるから。

 

「ね、ドクター……? 依存しているのは私も同じよ。だから一緒に支え合いましょう、私たちならきっと上手にできるわ」

「ドロシー、私は──」

 

 それ以上意味のある言葉を発することはできなかった。ふんわりとした唇に口を塞がれてしまったから。啄むような優しいキスが反論も、抵抗する意思も、何もかもを抜き去ってしまう。蕩けるような悦楽と安心感だけが身体中を駆け回った。

 

「ぷはっ……無粋なことを言ってはダメよ? ここは私とあなたの二人切りの世界なのだから、幸せになることを遠慮する必要はないの。ね、お願い」

 

 ようやく口づけが離れたとき、ドロシーの瞳は泣きそうになっていた。まるで私が感じている痛みにそのまま共感しているかのような、全てを理解していると言わんばかりの態度。もし私がもう少し正常であれば反感を覚えたかもしれないが、今の堕落した私には理解者が居てくれる事実が嬉しかったのだ。

 ドロシーは、他者の幸せを本気で願える善良な人物だ。時には己の身を削ってまで奉仕しようとする精神は危ういもので、倫理観すら投げ捨ててしまえるほど。

 

「また、前のように交わりましょう? 私とあなたの温もりで身体と心を暖めて、孤独を癒すの。優しくしても、荒々しくしても構わないわ。あなたが楽になってくれれば私も楽になるのだから」

 

 私自身その危険性は誰より理解していたつもりなのに──ひとたびハマってしまったが最後、もう抜け出すことは不可能だ。ソファへドロシーの身体を押し倒すと、瑞々しい唇を乱暴に奪ったのだった。

 

 ◇

 

 ──ドクターが優しい人なのは知っているわ。

 

 賢くて気さくでたまにお茶目で、色んな人から慕われているロドスの中核。私もライン生命からお引越しする前に評判は聞いていたけれど、実際に会話してみるとちょっと怪しい風貌が気にならないくらい愉快な人だったわ。あのサリアさんが信頼を寄せているという噂も本当みたいね。

 源石研究の第一人者で戦闘指揮の天才、けれど人間としてはどこか隙があるギャップに好感を持たれる……とか研究者らしくドクターを分析してみたりもしたけど、こういうのは無粋かしら。だけど理想の為に持てる力を尽くして頑張ろうとする姿は、私と似たもの同士だと思ったり。

 

 でもね、本当は気になっていたのよ? ドクターはとっても優しくてたくさんのオペレーターの相談にも乗ってあげるけど、あの人自身は誰に弱音を吐けるのかしらって。トップが部下に不安定な姿を見せるのは好ましくないのは私も主任だから分かっているし、でもアーミヤさんやケルシー医師には常に気を張っているようだったから。いつか爆発するんじゃないのかって不安があって、結局悪い予想は的中しちゃったわ。

 

 たった一度だけ、ドクターの指揮が失敗したの。

 

 偶然その作戦に参加していた私から見れば、あの作戦にドクターの非は無かったわ。あの人はいつも通り緻密な作戦を組み立てて、怪我人が出ないよう最大限気を払っていた。相手が予想を上回って大混乱が起きてもあの人は部隊をまとめて結果的には作戦を完遂しちゃったんだから。

 研究者は時に実験に失敗して貴重な資源や機材を台無しにしてしまうことはあるけど、誰かの命を背負うことはめ(・)っ(・)た(・)に(・)ないわ。だけど戦闘指揮は常に他人の命を背負って、傷付かないように頑張って、万が一には責任を取る覚悟で挑まなければならないなんて、私には想像もつかない重責よ。

 

「ねぇ、ドクター? あなたが抱えている悩みを、私に話してもらえないかしら? きっと力になってあげられるわ」

 

 だから、私はあの人に寄り添うことにしたの。だってそうでしょう? 誰にも共有できない悩みを抱えたまま、いつまでも孤独に重荷を背負い続けるなんて可哀想だもの。助けてあげたい、幸せになってほしいって心から願ったわ。

 ……ううん、告白すると本当はちょっと怖かった。『夢』を追い求めていたときのように、私の独り善がりに思われたらどうしようって。この人を心から救いたいと願っているのに、理解されずに拒絶されて、知った風な口を聞くなと憎まれたらどうしましょうと。

 

 そんな不安を抱えた私に対して、ドクターは、

 

「ありがとう……君の優しさに救われた気分だよ」

 

 まったく拒絶することなく私を受け入れてくれたから、助けたいと思っていたはずの私の方がドクターに助けられてしまったように感じたわ。ああ、私が抱いている気持ちは他者にとって余計なものではないんだなって、ようやく自信を持つことができたの。

 とはいえ、私は研究者であってカウンセラーではないから、どうやってドクターを慰めるか困ったわ。単に話を聞いてくれるだけで助かっているとドクターは笑ってたけど、きっとそれだけじゃ足りないもの。他にも良い手段が無いかと苦心して──男女が一つの部屋に二人きりという、特別な環境に気が付いた。

 

「ドロシー……ドロシー……!」

「──焦らなくていいわよ、私はドクターから逃げたりしないから」

 

 思考を打ち切るように、ソファに押し倒された体勢でドクターが必死に私を求めてくれる。冷静なこの人らしからぬ焦りと欲情の色は、逆説的にどれだけ強く求められているのか理解できちゃってゾクゾクするわ。

 頬や肩、腰回りは足まで色んなところが触れられる。ただ抱きしめるよりもっと直接的で、大胆で、性的な行い。まさぐるような手が身体を這いまわるけど嫌な感覚はちっとも無いの。あるのはただ、この行為でドクターの苦しみを緩和してあげられたら嬉しいなという願いだけ。

 

「あなたの好きなようにしてくれて構わないわ。気遣いや罪悪感は不要だもの」

 

 フードを外してさらけ出されたドクターの頭を撫でてあげながら、囁くように欲求を誘導してあげる。回数を重ねた今でもこの人は私に遠慮してしまうけど、そちらの方が私は嫌だから。今だけは優しさというドクターを守る鎧を脱ぎ捨ててほしいと思ってるわ。

 

「んっ……そう、上手よ」

 

 段々とドクターの手つきから躊躇いが無くなってきて、胸やお尻といった箇所まで刺激が届く。いつも研究ばかりしていて運動を疎かにしがちだけど、幸いなことに男性を喜ばせるのに十分な体型は維持できていたから、ドクターがいつも喜んでくれて嬉しいの。

 善いところをサワサワとくすぐられるように撫でられて。つぅとなぞるように足の上を動いた掌は私と違い強張った感触、首筋に唇を落とされた時は思わず声が漏れてしまったわ。恥ずかしかったけど、ドクターが満足そうだから我慢しない。

 

「耳も尻尾も、君は全身がふわふわして可愛いな」

「やぁ、そっちばかり触るのは反則よ……」

 

 でも、可愛いなんて囁かれながら耳や尻尾を撫でられてしまうと私の方が甘えているように錯覚しちゃうわ。子供の頃を思い出すような安心させられる刺激は、どちらが慰めているのか分からなくなってしまうもの。もっとしっかりしなきゃと思うのに、ドクターに頼るのも素敵だなと抵抗できない自分がいて。

 

「もっとたくさん触ってもいいかい?」

「もちろんよ。何でも受け入れてあげるから、ドクターの好きにしてちょうだい?」

「ありがとう」

 

 もう一度、今度はドクターの方からキスを求められて、舌先が口内へ入り込んできた。すっかり慣れてしまった深い口づけと舌の感触はとても心地よくて、病みつきになってしまいそうね。流し込まれる唾液と吐息がすごく熱くて体の中まで灼けてしまうんじゃないかと思っちゃうわ。

 それから一枚一枚丁寧に服を脱がされて、ドクターの前で無防備な自分を曝け出していく。気付けばブーツと下着だけの恥ずかしい姿にされているのに不安や恐れはちっとも無くて、心臓がどきどきなってるわ。微かな昂ぶりや興奮に身を委ねながら、ドクターのやりたいことをしっかり受け入れていくの。

 

 ジワジワと熱くなる下腹部は裂け目からトロリとした蜜を吐き出して、いつでもドクターを受け入れられるように準備を整えていく。他の女性を知らないのだけど、私ってどうも濡れやすいみたい。

 

 ──傍から見たら今の私は淫売の誹りを受けてしまうのかしら?

 

 恋仲でもない相手に躊躇なく身体を委ね、股を濡らすなんておかしいと指摘する人もいるかもしれない。だけどね、違うのよ? 私にとって純潔や性行為は大した問題ではなくて、結果として一人でも多く救ってあげることが大事なの。身体を差し出すことで救える人がいるのなら、もったいぶるつもりは欠片も無いわ。

 ……だけど、初めてを捧げたときは少し辛かったのを覚えてる。こんな痛いことを毎回しないといけないのかと、ほんの一瞬だけ挫けそうになった私を支えてくれたのはドクターだった。本当は私の方が気遣ってあげるつもりだったのに、いつの間にか彼の方が私に優しくしてくれて。ああ、この人になら安心して自分を明け渡せると、心の底からやっと理解できたの。

 

「ドロシーの身体、どこもかしこも綺麗だ」

「まあ、嬉しいわ。ドクターもちゃーんと逞しくなってて素敵よ」

 

 お互いに褒め合いながら肌を合わせると、頭がふわふわして、心がポカポカしてきちゃう。昔から私の容姿を褒めてくれる人に出会ってきたけど、こんな気持ちになるのはドクターが初めて。もしかして、誰かを好きになるのってこういう感覚なのかしら?

 夢見心地の間にすっかり脱がされ下着だけとなり、人には見せられない恥ずかしい姿にされちゃったわ。せっかくだからと黒色の煽情的な下着を選んでしまったけれど、はしたない女と軽蔑されたらどうしましょう。

 

 何てことのない冗談みたいな思考。なのにチラリと通り過ぎた『ドクターに嫌われる可能性』はいやに私の心に圧し掛かって、ふわふわした気持ちを洗い流そうとする。

 

「うーん……」

「ドロシー?」

 

 ポツリと呟いた言葉にドクターが首を傾げた。私の在り方を認めてくれた人に拒否されてしまったら、ううん、それ以前にもしドクターが私を必要としなくなってしまったら……考えるだけでとても嫌。怖いわ。

 思いがけず自分の想像のせいで自爆して、床にぽっかりと穴が開いて落ちるかのような感覚。キュッと胸が締め付けられて、藻掻くようにドクターへ手を伸ばす。

 

「ねぇ、ドクター? 私、あなたを満足させてあげられてるかしら?」

 

 本当はドクターの心を軽くしてあげたい一心なのに、いつの間にか私の心が重たくなってしまってて。面倒くさい女と思われてしまったらどうしよう、本当はこちらの方が依存しているとバレてしまったら距離を取られてしまうのかしら。不安に塗れた吐露をぶつけられたドクターは、にっこり笑ってくれて──

 

「君のおかげでとても助かっている、満足しているよ」

「ああ、良かった──んっ、んん……!」

 

 安心したのもつかの間、ズブズブとドクターの硬くて逞しいのが私の中へ割り入って、思わず声が漏れてしまったの。

 他の男の人なんて知らないけど、きっと男性の中でも飛び切り大きいサイズのそれが、お腹の中を占有してる。怖くて不気味で泣きたいほど苦しい感覚のはずなのに、脈打つ硬さとこの人の体温が感じられて、不思議と身体が安心しちゃう。

 

 そのままドクターは上から挿入したままの姿勢で、私を抱きしめながら落ち着くのを待ってくれた。ちゃっかり頭を撫でられたり、耳を触られたりもしているけどされるがまま。ついつい好意に甘えて頭をもっと差し出せばドクターは無言のまま手を動かしてくれて、また心が暖かいもので満たされちゃう。

 まるで親に庇護されている子供みたい。でも、安心感が胸いっぱいに広がるのって、こんなに素敵なことだと改めて気付かされたわ。今まで私が助けようとした人たちは、この素敵な感覚を受け取ってくれたのかしら?

 

「大丈夫?」

「ええ、あなたのおかげですっかり平気よ。もう私の膣内(なか)に馴染んできちゃったわ」

 

 ドクターには何度も身体を委ねた仲だから、苦しいのは最初だけですぐ慣れてくる。むしろこれだけ大きなので串刺しにされているのに順応できるなんて女性の身体ってすごいのねと、他人事のように考えてしまう。もちろん、ドクターが焦らず待ってくれているからなのも重要な要因(ファクター)よ。

 ゆっくりと自分から腰を揺すって『もう準備はできたわ』とドクターにアピールしてあげる。たったそれだけの動作で中が擦れて甘い声が漏れてしまう。恥ずかしいけど、それでいいの。今の私はドクターに捧げられた、この一時だけでも楽しませてあげるための存在だから。

 

「それじゃあ動くよ」

「あっ……はぅ……」

 

 ぱちゅん、ぱちゅん。

 

 緩やかにドクターの腰が上下を始めて正常位での交わりが始まる。控えめな水音が私たちの結合部から響いて、つまりはそれだけ私の膣が潤んでいるということで。かーって顔が熱くなって火を噴きそうだわ。

 だけどそれ以上に、貪欲に快感を味わってる自分の身体の淫らさが恥ずかしくてならないの。まだまだドクターは本気で動いてない、こちらを気遣った状態なのに、すっかりドクター専用に開発された膣内は余さず気持ちいい感覚を拾おうとしてる。これ、本気で動かれたら大変なことになっちゃうわ。

 

「んっ、ふぅ……」

「気持ちいい?」

「ええ、とても素敵な感覚よ……♡ あなたの方こそ、どうなの?」

「言うまでもない。素晴らしい心地だ」

 

 まるで熾火(おきび)のように下腹部からジワジワと快感の熱が伝わってくる。ううん、身体に灯った熱と交わってより大きくなる様は共振と称するべきかしら。はしたない喘ぎ声が漏れてしまうのを止められなくて、けどドクターが喜んでくれているから嬉しくて、素直な悦楽へ身を委ねてしまいたくなる。

 手足をギュッとドクターへ絡めて逃がさないとばかりに抱きしめた。身体の芯まで繋がったまま、固い抱擁。まるで私とドクターの境界線が蕩けて無くなってしまったかのような一体感に、性器を擦られる快感以上の精神的な充足感で満たされて。まるで器に水を注がれるようにジワジワ快感が溜まっていって、それで──

 

「あっ……イっ、ちゃう……」

 

 ドクターの硬いのが最奥(しきゅう)を突いた瞬間、快感の波が電流みたいに身体を駆け抜けたの。ぷしゃりと割れ目から潮が吹き出てドクターのお腹を濡らしてしまう。

 全然激しさのない、まるでキスするように優しい挿入だったのに、自分でも呆気ないと思えるほど簡単にイかされてしまったわ。これじゃあ本当に淫らな女と思われてしまいそう。でも絶頂の余韻に震える身体はぎゅーって膣内の硬いのを締め上げて射精を強請ってる。ふふ、ビクビク震える男根の様子が手に取るように分かっちゃって、恥ずかしいけど可愛らしい。

 

「はぁ、はぁ……ドクター……」

「イっちゃった?」

「……うん。ごめんなさい、私だけ勝手に」

「構わないよ。イってるときの君の顔はとても可愛かった」

「もう、恥ずかしいわ」

「すまない」

 

 だけど、とドクターは続けた。

 快楽と、見間違いでなければ不安に揺れる瞳と視線が合う。

 

「もっともっと、君に溺れてしまっていいだろうか?」

 

 遠慮がちに投げられた問いかけ。その言葉こそ私が一番待ち望んでいたものだから。

 歓喜に叫び出しそうな心をどうにか抑えて、努めて冷静に私は言った。

 

「ええ、もちろんよ。壊してしまうほど、ドクターの好きに抱いてもらって構わないわ」

 

 最後の枷を壊していいと甘く囁く。これでもう、ドクターは止まれない。私だって止まる気は無いわ。

 ドクターの返事は無い。けれど代わりにギュッと抱きしめられて──もうこの人から逃げられないのだと、悟ってしまった。

 

 ◇

 

 言ってしまえば、ドロシーは奉仕したがり体質な女性だ。

 自分のことを度外視した他者への貢献気質が非常に強い。身銭を切ったり、甘やかしたり、時には善意のまま恐ろしい実験を進めてみたり……あらゆる行いの裏には彼女なりの紛れもない善意があり、これらを達成するためのあらゆるハードルを苦に思わないタイプの人種である。

 

「っ、ドロシー……」

「遠慮しなくていいわ、ドクターも気持ちよく射精してしまいましょう? んっ、ちゅっ……じゅる……るっ」

 

 一般的に考えればドロシーは恵み与える側の、いわば上位者的立場である。それは若くしてライン生命の主任という高い位階に就いていることからも明確だ。しかし彼女に取って与えるものは何も金銭や物質的なものだけでなく、必要であれば男の足元に跪いて肉棒へ情熱的なキスをすることすら厭わなかった。

 壁に手を突き立っている私の足元で蹲踞の姿勢を取ったドロシーは、そそり立った肉棒へ頬ずりしながら五指で優しく握り込んだ。白磁のような細い白指は脈動する一物よりヒンヤリしていて気持ちいい。

 これだけでも十分な快感だったが、さらにドロシーは亀頭にキスを落として舌をカリ首へ這わせていく。先ほどまで彼女の膣内(なか)に収まっていたからカウパーも愛液もまだ乾いてないのに、まったくお構いなしに美味しそうにしゃぶってくれた。

 

「あむっ、じゅるっ、ちゅっ……れろっ」

 

 熱い口内へ迎え入れられると膣内とは違った狭くぬめぬめした感触が竿全体を覆い尽くした。窄まった口内で頬の内側が肉棒へと張り付き、まるでストローを吸い上げるように貪欲に精子を求めてくれる。時折先端を喉奥へと招きながら、舌先でクニクニと全体を舐めしゃぶって唾液のコーティングが塗せられて、ぐっぽぐっぽと卑猥な音を立てながら何度も口内を出入りする。

 誰に教わった訳でもないのにドロシーのフェラチオは完璧だった。きっと彼女の他者に対する献身気質が功を奏しているのだろう、どうすれば相手が気持ちよくなってくれるかをつぶさに観察して、即座に実行に移せる行動力がある。歯を当てず、舌を踊らせ、根本から先端まで裏筋をキッチリ責めながら、自分の口を一つの肉筒と見なして吞み込んでくれるご奉仕フェラは格別だ。

 

「ずっ、うぐっ……」

「んぐっ、むぅっ……はふっ、じゅぽっ、ふぅ……ほくらー(ドクター)、ひもひいいはひら(気持ちいいかしら)?」

 

 それに何より、美人で頭脳明晰で地位すら持っているドロシー・フランクスという才媛が、跪いて熱心に肉棒をしゃぶってくれるシチュエーションが最高だった。上目遣いで私を見上げて具合を聞く様子は己の全部をこちらに捧げているかのよう、もし『満足していない』とでも言えばより苛烈な責めで私を満足させようとしてくるだろう。下卑た快感だが、その優越感もまた堪らなくて悶えるような声をあげてしまう。

 とはいえ、これだけ私に寄り添い奉仕してくれる女性へ心にも無いことを告げるほど非道にもなれず。正直に「ああ、とても気持ちいいよ」と返してお礼代わりに耳を撫でた。ザラックながらコータスと見紛うほどの大きな耳は触れられるだけで快感が走るようで、最初の頃はあまり触れさせてくれなかったけど。今ではすっかり耳を撫でられ甘えるのが好きなようで、肉棒奉仕を続けながらうっとり目を細めてくれていた。

 

 じゅぽじゅぽ、じゅるり。ぐぽっ、れろーっ、じゅるるっ。

 ポタ、ポタ……くちゅり。

 

「んっ……あはっ、ドクターの、気持ちよさそうにビクビクしてる……とっても可愛いわ」

 

 口淫奉仕の卑猥な水音が何度も何度も耳朶を叩く。口から出てきた肉竿は解放感を味わう暇もなく根本から裏筋をじっくり撫でられ、手指でマッサージするように揉み込まれる。ドロシーの甘い唾液でコーティングされた一物はよく指を滑らせて痛みを一切感じさせなかった。

 けれどその裏で微かに聞こえるのは、しゃがみ込んだドロシーの秘部から垂れる愛液の音だ。先ほどまで剛直を挿入されていた秘穴は雄を求めて愛液(よだれ)を零し床に水溜まりを作っている。しかも彼女は片手で自分の秘部を弄っていて、奉仕しながら自身の熱を慰める淫らさまで私に明かしてくれているのだ。

 

 ──それが呼び水となって、贅沢にも先ほどの性器同士の交わりが想起されていく。

 

 口よりもっと熱くて、緻密な襞の織りなす複雑繊細な心地よさ。よく濡れそぼった穴は一切の抵抗なく自由にピストンすることができて、最奥の子宮口は亀頭がくる度キスするように迎え入れてくれる。腰を深く突き込んだ際には互いの下生えが絡み合ってはクリトリスを刺激して不規則に締め付けるのだ。

 ああ、なんて贅沢で不誠実な行いだろうか。今も眼下ではドロシーが必死に私の一物を鎮めようとしているのに、それとは全然違う快楽を思い出して己自身を大きくしている。すっかりこなれた口舌奉仕は極上だったが、やはり本物の性交には敵わないと思い知らされる。

 

 肉棒から脳へと届く快楽信号に加え、情交を想像したことによる精神的な興奮でさらに昂ぶりは跳ね上がる。一度自覚した途端にぶるりと身体が震えて急速に精子が昇ってきた。思えばさっきはドロシーが先に絶頂してしまった訳だから、とっくに私の身体は我慢の限界だったようだ。

 

「ドロシー、そろそろ……!」

「いいわよ、好きな時に射精(だ)してちょうだい。あなたのミルク、全部飲んであげるから」

 

 ふふっと笑いながら肉竿を舌で弄ぶ様はまるでアイスキャンディーを舐める少女のようだ。交わった視線の先では金の瞳が情欲と慈愛に満ちていて、どこまでも利他的な本質を露わにする。恭しく先端の鈴口にキスを落としたドロシーは、あーんと口を開くと喉奥まで亀頭を迎えてしまい──それが最後の合図となった。

 

「射精(で)るッ……!」

 

 びゅくっ、びゅるっ……!

 

 壁に両手をついたままドロシーの口へ突き込み、白い欲望を彼女の中へと注いでいく。噴出したマグマのようなそれは粘り気を纏って執拗に喉奥を犯して我先にと流れ込んだ。途轍もない解放感と快感に意識が飛びそうになるのをグッと堪えて両足に力を入れる。まだまだいくらでも精液を吐き出せそうだ。

 一方で男の下卑た欲望を一身で受け止めるドロシーは、いつのまにかこちらの腰へ両手を回してガッチリとホールドしていた。口内を蹂躙されて苦しいだろう、不快だろう、なのに一滴たりとも逃がさないと宣するごとく竿の根本までピッタリ吸い付いて精子を飲み込んで。自分の身を顧みない献身はいっそ破滅願望にも思えてしまい、いっそう射精の勢いが強くなった。

 

 そして最後の一滴が出終えた後、苦しそうに呼吸をしながらゴクンと喉を鳴らす姿が堪らなく妖艶だった。

 

「ハァ、ふぅ……ごちそうさま、美味しかったわ。私のフェラチオ、満足してもらえたかしら?」

「ああ、最高だったよ。ありがとうドロシー」

「どういたしまして」

 

 などと言葉を交わす間も先端から零れた残り汁を丁寧に舐めとってくれている。いったいどこまで奉仕すれば気が済むのか、まったく彼女の底が見えない。ただただ私を甘やかし快感に浸らせる意思に身体は正直に悦んで、すぐに二回戦目に移るべく一物は巨大に膨らみ始めた。

 ドロシーもすぐに気付いたようで、屹立した剛直を両手であやして撫でながら私の耳元で妖しく囁く。

 

「あら、もう我慢できなくなっちゃったの? ふふ、ドクターはどんな風に私を求めてみたいのかしら? 優しくしても、激しくでも構わないわ。望むなら恋人がするような砂糖たっぷりのものでも、女性を女性と思わない無理やり系でもいいから──」

「ドロシー」

 

 淀みなく私の欲望を叶えようとしてくれる女性の名前を呼んだ。立ち上がった彼女は私より少しだけ背が低くて、スラリとした美しい身体がピタリとこちらに寄せられる。押し当てられる豊かな膨らみを揉みしだきたいのを堪えて口を開いた。

 

「無理はしなくていいよ。君に甘えさせてもらっているだけで私は十分救われているんだ。だからどうか、あまり自分を追い込むような行いは止めてくれ。冗談でも悲しくなってしまう」

「……でも、ドクターはそれで悦んでくれてるわ。今更やめてしまって、ドクターが求めてくれなくなったら私は……」

「耳が痛いな」

 

 どの口がと言われれば何も否定できないけれど。

 私だってドロシーに依存してしまっている自覚はあるのだ。それこそ今更、彼女が離れてしまったら耐えられるとは思えない。すっかりこのザラックの女性に夢中でズブズブだった。

 そして私の自意識過剰でなければ、ドロシーもまたこちらに依存している。ありのままの自分を認めた上で求められることが嬉しいのだろう。かつて開拓者たちに拒絶された経験を持つからこそ、いっそう自身の夢や願望を肯定してくれる相手に飢えているから。

 

「心配せずとも私は君の傍から離れない──離れられないんだ。情けないけど、君自身に嫌だと言われても」

 

 まるで傷の舐め合いだ。互いに弱みを曝け出せる相手へ依存し合って抜け出せない。たちの悪いことに今の関係性が居心地よくて、両者の需要に一致するから止める気すら起きないのだ。不健全な共依存関係はこの上なく快適な揺り籠として私たちを包んでいる。

 

「だからその……あまり自分を軽視しないでほしい。そこまでせずとも君は十分に優しくて魅力的な人だと私は知っているよ」

「ありがとう、ドクター……とっても嬉しいわ。本当は怖いのよ。もしかしたらみんな、あなたでさえ、私を拒んで離れて行ってしまうんじゃないかって……想像したら震えが止まらないの」

 

 言葉通り、こちらへもたれかかるドロシーの身体は微かに震えていた。

 

「私はただみんなに幸せになってもらいたいだけなのに──ねぇ、お願いドクター。私があなたを支えてあげるから、あなたも私の支えになってくれる?」

「もちろんだよ」

 

 即答する。安心したようにドロシーの瞳が潤み、金髪が揺れて胸板に額が擦りつけられた。まるで少女が親に甘えるようだなと、場違いにも感じてしまう。

 

「じゃあドクター、たくさん証明してちょうだい。あなたにとって私が必要であることを、私があなたの助けになってあげられていることを。この場で、今すぐ、壊れるほどに」

「君が望むのであれば」

 

 肉体関係だけが相手の癒しになるわけではない。しかし男女間の物理的な繋がりがこの上なく充足感と安心感を与えてくれるのもまた、何度も交わった中で了承済みのことだった。

 縋りつくドロシーを優しく引き離すと後ろ向きにして壁へ手を突かせた。ちょうど立ちバックの姿勢となり、半脱ぎとなった服の合間から見える背中やお尻がよく見える。シミ一つない白い素肌に金の長髪が掛かり、長くてふわふわした尻尾が与えられる喜悦を目前にして嬉しそうに揺れていた。

 

「……君は本当に、どこをとっても綺麗だな」

 

 先ほども放った言葉を改めて実感しながら、ドロシーのお尻を揉んでみた。スベスベしていて、弾力があり掌を押し返してくる。割り開いてみれば不浄の窄まりとは思えない美しさをした菊門と、その下で潤みながら男を待つ割れ目までつぶさに観察できた。

 つい好奇心に負けてつぅと尻の谷間から前へ向かって指をなぞってみる。尻肉に挟まれる感触を過ぎて、複雑な皺を形成する後孔を引っ掻きながら、ぷにぷにして柔らかい陰裂を楽しんで、最後は整えられた下生えに隠れた陰核(じゃくてん)をコリコリと刺激してみる。

 

「あんっ、お尻まで触っちゃだめよ……変な気分になってしまうわ」

 

 くすぐったそうに身をくねらすドロシーの動きはあまりに淫靡だった。このまま後ろを貫いたとしても、きっと彼女は受け入れてくれるのだろうが……好奇心を押し殺して、膣口へいきり立った切っ先を押し当てた。

 壁に手を突き、スラリと長い脚に支えられた丸いお尻を私へ向ける姿は、野を生きる高貴な獣が交尾を切望している雰囲気すら感じさせた。既に前戯など不要なほどよく濡れた割れ目は勝手にクパクパ開いて待ちかねている有様だから。

 

「挿入(い)れるよ」

「ええ、どうぞ……んっ、あぁっ」

 

 ずぶずぶと二度目の挿入。彼女の性格を表すように柔くふわふわした膣内を、襞を掻き分けながら進んでいく。しっかり濡れた内部は一切の摩擦を感じさせず、蠢く肉筒がスムーズに男の象徴を一番大事な部分へと導いた。

 コツンと当たった先は先ほども触れた子宮口だ。けれど今度は後ろから挿入しているから少し違う角度で当たっていて、微妙な差がまた違った快感を齎してくる。ドロシーもどうやら同じらしく、柔らかな声音を出す喉からは熱い溜息ばかりが零れていた。

 

「あんっ、あぁ……さっきよりもっと、硬くて大きくなってるのが分かるわ……」

「苦しくない?」

「平気よ、むしろすごく気持ちいいくらいだもの。好きに私の身体を使ってもらって構わないわ、ドクター」

 

 こちらを誘う流し目のなんと淫らで美しいことか。その目に魅了されてしまった私は、ドロシーの上半身へ手を伸ばすと胸を触りながらしっかりと抱きかかえた。『これから本気で君を貪る』という無言の意思表示に、食べられる側のザラックは嬉しそうに身体を委ねて従った。もう、我慢の限界だ。

 ばちゅん! 大きな音を立てながら腰と尻肉がぶつかり合う。続けて二度、三度と連続して打擲(ちょうちゃく)音が室内に響き渡った。まるでスパンキングを彷彿とさせる激しい音を奏でながら目いっぱい腰を振り、彼女の膣内(なか)を堪能する。

 

「あっ、はふっ……あんっ。奥、こすれてっ、んんっ」

 

 羞恥心が勝るせいかドロシーの嬌声はいつも控えめだけど、声音には十分すぎるほど「感じています♡」という感情が籠っていた。それが嬉しくて、私がちゃんとドロシーを満足させてあげられていることが誇らしくて、いっそう激しくピストンを続ける。するとお返しとばかりに膣内がうねって締まり射精を強請るように甘えてくるのだから堪らない。

 責めて、責められての無限に続く快楽地獄。互いに相手を気持ちよくさせようと努力して、結果的に自分まで気持ちよくなる共依存関係。今の我々を表すような性行為に没頭し、悩みも不安もすべてが片隅へと追いやられた。

 

「んむ──っ!?」

 

 ごりゅっ、と陰核の裏側を亀頭が擦り上げた。他よりザラザラしたその部位はまさしくドロシーの泣き所(スイートスポット)に他ならず、ほんの一瞬の刺激だけでビクリと大きく身体が震えた。開かれた両足が尻尾共々ピンと伸ばされ、次いでぷしゃりと愛液が迸る。射精のように激しい潮吹きがびゅーっと壁に打ち付けられては床へと垂れ落ち、さらに大きな水溜まりとなって彼女を羞恥へ誘った。

 

「やだっ、こんなの、おかしくなっちゃうから──ひゃうっ! んむっ!? じゅるっ、あむっ……」

 

 お漏らしじみた潮吹きを恥じらって俯いた頭を上げさせて、そのまま無遠慮に唇まで奪ってしまう。ついさっきまで熱心に肉棒へ奉仕していたことなど気にならない。むしろほんの一瞬の間にドロシーの蜜ですっかり口内は清掃されており、ちっとも嫌悪感は覚えなかった。

 たとえ情欲に塗れた潮吹きをしようとも、瞳が快楽に蕩けて頬が笑っていようとも、ドロシーは変わらず美しかった。その想いを欠片でも伝えたいと願いながら情熱的に舌を動かし、睦み合わせていく。別の生き物みたく動く赤い舌がドロシーの柔い舌を見つけ、捕らえて、屈服させるように吸い上げた。

 

 ちゅむ、じゅる……れろっ、くちゅ。

 ばちん! ばちゅん!

 

 口づけに夢中な間も腰の動きは一切緩めなかった。優しくも情熱的なキスの傍ら、それこそ強姦しているような激しさでとにかくドロシーが感じる場所を責め立てる。加えて片手は胸に伸ばし、ふかふかでもっちりしたパンのごとき双丘をこれ見よがしに揉みしだいては先端の赤い突起を指で捏ねた。どこもかしこも触り心地が良くて、極上の女体だ。

 ぷしゃり、今度は控えめに潮吹きが始まり足元が濡れていく。さっきと違い弱点を責めた訳ではないから常態で感度が高められた結果だろう。どこを触られてもしっかり性感帯となってしまった身体は男を悦ばせるのに十分すぎる痴態を見せてくれた。

 

「ドロシー……ドロシー……!」

「あむっ、ドクター……!」

 

 キスを交わして互いを何度も呼び合って、眼前の相手を強く強く求めてしまう。離れられない、離れたくない。情けない自分をも肯定してくれるドロシーを大切にしたいし、支えになって欲しいと願った彼女を支えてあげたいと心から思う。

 だから私はドロシーの両手を後ろへ引っ張り掴むと、ラストスパートとばかりに激しく腰を動かした。ずるりと肉竿が抜け落ち、時間を巻き戻すように再び奥へと舞い戻る。ゴツゴツした肉棒が、愛液に塗れたカリ首が、今か今かと射精を待ち望んでカウパーを零す亀頭が、一丸となって極上の雌穴を食らい尽くす。

 

「ひゃっ、あんっ! はげしっ、どくたぁ、お腹が無くなっちゃい、そうっ……!」

「たくさん、好きなだけイってくれ……っ!」

 

 急なペースアップに乱されているドロシーだが、一物を蜜壺に突っ込んでいる私もそれほど余裕はない。隠しているようだが、小刻みに何度も絶頂しているドロシーの膣内はよく締まって纏わりついてくるのだ。隙間なくピッチリと襞に覆われ、けれど激しい挿入行為で引き剥がされての繰り返し。まるで麻薬のように過剰な快楽物質をこれでもかと脳髄へ送り込まれているのだ。

 もう無理だ。これ以上は我慢などできない。

 既に精子は発射準備万端で、ドロシーの一番大切なところを白く染め上げる準備が整っていた。避妊すべきという常識的なブレーキすら煩わしい。いやむしろ、孕ませてしまえば一生彼女を傍に置けるのではないかという、最低で最高の考えすら頭に浮かんでいた。

 

 この考えを実行に移して良いものか──迷う私の葛藤を見透かしたかのようにドロシーは微笑んだ。

 

「私の膣内で、精子をいーっぱいぴゅっぴゅっして良いからね……もしあなたとの赤ちゃんができても、ちゃんと面倒見てあげるから」

「っ、ドロシー!」

 

 何故バレたとか、本気で言っているのかとか、色んな考えが口をついて出ようとした。けど本能は理性の具枠を容易く封じ込め、雄として雌へ種付けすることだけを優先してしまう。何よりその言葉を喜んでいる私がいて、もはやこの共依存を抜け出すのは不可能と悟ったから。

 

「ぐっ、射精(で)るっ……!」

 

 びゅるっ! びゅるるるるるっ! びゅーっ、びゅっ……!

 

「あっ、ん゛~~~っ!」

 

 深く深く腰を密着させた果てに、ドロシーの隠された子供部屋へと欲望の限りをぶちまけた。

 美人で優れた雌へ精子を注げる快感は何度味わっても格別のものだ。まして女性の方から迎え腰とばかりに下半身を押し付け、より深いところで射精を受けようとしている姿はこれ以上なく興奮を煽ってくる。既にして二回目の射精で、十分な量を子宮へ注ぎ込んでいるはずなのに、今この瞬間も絶え間なく精子が増産されているのが分かってしまうほどだ。

 射精の脈動を味わうドロシーの首筋へ顔を埋め、彼女の髪と香りすら堪能しながらキスマークを付けていく。射精しながら愛しい女性へマーキングを行えるのは格別だった。首筋に付けた赤い痕に満足感を抱きながら、最後の一滴まで絞り出すように子袋へと注入した。

 

「お腹、あなたの精液でタプタプにされちゃったわ……ずっしり重くて、孕ませようって熱がこれでもかと伝わってきてる」

 

 そして、ようやく射精を終えた一物が膣内で小さくなり始めた頃、ドロシーは愛おしそうにお腹を撫でながら喜びを露わにした。精を解き放った後特有の冷静さがとんでもない事をしてしまったと嘯くが、それでも後悔だけは無かった。

 

「ドロシー、その──」

「平気よドクター、今日はちゃんと安全な日だから。それとももしかして、本当に私を妊娠させられなくて残念だったかしら?」

「だからといって、必ず大丈夫なわけではないだろう」

 

 当たり前の常識として膣内射精(なかだし)なんてリスクの塊だ。安全日だからと気軽にやっていい行いでは断じて無いのだけれども。

 

「それでも、君を一人には絶対しないよ。だから頼む、君も私を置いていかないでくれ……」

「私の方こそ、どうかお願い──あなただけは私を憎まないで。ずっと支えて、安心させてほしいの」

 

 自然に手が強く握られ恋人繋ぎとなる。お互いに痛いほどの握り込みは、何があっても離れてほしくない心情の現れなのだろうか。むしろ望むところだ、この共依存関係が終わらない以上の福音は無いのだから。

 固く結ばれた掌はそのまま、私はドロシーと再び口づけを交わしていく。膣内から零れた精液と愛液が抜け落ちた肉竿をコーティングし、床の水溜まりへポタポタと落ちた。淫臭立ち込める卑猥な場で、しかしこれ以上なく神聖な儀式であるかのように、どこまでも強く互いに心を縛り付けていくのだった。

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