純性癖ナイツ 作:ひかりねこ
もう何度目かも分からないアナルメインなので苦手な方はご注意ください。でも書いてる私は楽しかったです。
フィアメッタには是非卵を産んでほしい気持ちがあったりしますが、特にそういう要素はありません。
その日、ロドスに珍しい来訪者がやって来た。
「や、久しぶりだね」
「ああ、久しぶりだねモスティマ。3カ月ぶりくらいか」
被っていたフードを取り払い、サルカズの角とサンクタの光輪を出しているのはモスティマだった。乗ってきた荒野移動用の車からヒョイと降り、ドクターの方へと歩み寄る。トランスポーターとしての長旅を感じさせない元気な足取りだった。
「わざわざロドスのお偉方に迎えてもらえるとは光栄だよ、ドクター閣下」
「あまり揶揄うのは止してくれ。
「へぇ~、それは嬉しいことを言ってくれるじゃないか。そう思わない、黎明破壊者さん?」
愉快そうに堕天使が笑った先には、これまで一言も発していない赤髪のリーベリの姿が。ただでさえ微妙にムスッとしていた顔つきが、珍妙な名前で呼ばれたことで明確に怒気を帯びた。
「ちょっとモスティマ、私をその名で呼ばないでって言ってるでしょ。ロドスでのコードネームはフィアメッタなのだから、規則に従ってちょうだい」
「そうは言ってもね、私はこっちの呼び名の方が慣れてる訳だし……ああ、そうでもないかも? この前は違ったよね、えっと確か──」
「モスティマ!」
今度こそ我慢の限界に達したフィアメッタはモスティマに掴みかかりそうな勢いだ。さすがにドクターが間に入って「まあまあ」と仲介して止める。この二人なりのじゃれ合いではあるけど、モスティマのギリギリな攻めっぷりにドクターは冷や冷やしっぱなしだ。
ともあれ、ラテラーノのトランスポーターを務めるモスティマと、そんな彼女の監視員であるフィアメッタが同時にロドスへやって来たのだった。経緯はあくまで偶然で、移動中のロドス本艦に気が付いたので補給がてら寄ったとか何とか。提案したのはモスティマの方らしい。
「しばらく各地を巡って疲れたし、装備や消耗品の補給もしておきたいからね。あまり長居はしないけどお世話になるよ」
「ああ、好きに使ってくれ。ロドスへお帰り、モスティマ、フィアメッタ」
その言葉にモスティマはケラケラと手を振って笑い、フィアメッタは小さく「……ただいま」と呟いたのだった。後者は、僅かに頬が赤いのにドクターは気付いたし、おそらくモスティマも分かった上で何も言わなかった。むしろ面白そうにニヤニヤと眺めている。
「あ、そうそう」
「なによ」
「私はロドスに滞在して勝手にどっか行く気は無いから、特に監視は不要だよ」
「それを決めるのはあなたじゃないでしょう?」
「うん、黎明破壊者さん次第だ。伝えることは伝えたから、それじゃあね」
ひらひらと手を振り去っていく自由なトランスポーター。残された二人は呼び止める言葉を持たず、微妙に重たい沈黙が場を支配した。何を話したものか互いに迷っているような、詰まった空気。
先に口火を切ったのはフィアメッタの方だった。
「そういう訳だから、しばらく滞在させてもらうわ。業務協力はするから用事があれば声を掛けてちょうだい、力になるわ」
「感謝するよ。モスティマには感謝しないとね」
「……なんでよ」
俄かに不機嫌さを隠そうともしなくなった彼女へ、ドクターはそっと近寄り抱き留めた。協定関係にしては踏み込み過ぎたスキンシップ、しかしフィアメッタは抵抗しない。むしろ身体を委ねるようにリラックスして力が抜けているほどだ。
「こうして無事に君と再会できたからね。安心したんだ、本当に」
「ふんっ……ならそういう事にしてあげる。私も、あなたに会いたかったから」
手を取ると相手の温もりを感じるように握り合う。数か月ぶりに触れ合う身体はどこまでも温かくて、安心感を覚えるもの。別れていた半身を見つけたような安堵が胸の中へと広がっていく。
もしこの場を見ている第三者がいれば、驚きながらドクターとフィアメッタの関係性を勘ぐることだろう。そして実際、その勘ぐりは何も間違っていない。この二人は恋人同士の関係なのだから。
◇
元々、ドクターとフィアメッタに大きな接点は無かった。
各地を移動するモスティマに付いて回るのが彼女の仕事なのだから当然の話だ。道が交わる機会はほとんどなく、あくまでもロドスにおける上司と部下程度の認識が全てだった。
その関係性が崩れたのは、『一度腰を据えて話をしてみたい』と願ったドクターが、ロドス内のバーにフィアメッタを誘ったのが切っ掛けだ。最初は難色を示した彼女をモスティマが無理やり送り出し、勧められるままにお酒を飲み始めて──そこからはもう、色々と凄かった。
「まったくもう! モスティマの大馬鹿は!」
ドン! と大きな音と共にグラスがテーブルに叩きつけられた。中に注がれたビールはほとんど飲み干されており、僅かに残った水滴がテーブルへ水痕を付ける。ドクターはといえば、ワインをゆっくり呷りながら「私の私物なんだけどな、そのグラス……」と小さく呟いた。
酒は人を正直にするというがフィアメッタはその典型だ。記憶を飛ばす訳じゃないし、面倒な絡み方もしない。しかし最初にドクターとバーで飲んだ時も、気付けばヒートアップして様々な愚痴やら何やらを思い切り吐き出して、朝になって真っ赤になりながら真っ青になる器用なことをしてのけた。
以来、フィアメッタは開き直って度々ドクターと飲むようになった。アルコールの力を借りて普段は秘めている様々な本音をぶちまける。なまじドクターが聞き上手で嫌な顔せず頷いてくれるから、彼女も話しやすかったのだろう。回数を重ねるごとに距離感が近づき、いつしか親密な関係になるのも自然な成り行きだった。
「ちょっと目を離した隙に何処かへ行って、散々探し回らせたと思ったら呑気にカフェでお茶してたのよ? しかも無駄に高いスイーツまで頼んじゃって、私にまで食べさせて無理やり割り勘にしてくるし……」
「それは災難だったね。でも、楽しい思い出じゃないか。友人と甘いものをシェアするのも良いものだ」
「高価だけあって美味しかったけどね。次はちゃんと値段と財布を確認してからにしなさいってのよ、まったく」
愚痴りながらお酒をつぎ足し、さらに呷っていくのだが、言葉とは裏腹にフィアメッタはどこか楽しそうだった。友人に振り回されたけど嫌では無かったと、小さく浮かんだ微笑が物語る。きっと心の内にこっそりとその一幕を飾っているのだろう。
ドクターがフィアメッタに惚れ込んだのはこういう所だった。クールで謎めいて、少し怒りっぽいようにも思えるけれど、内面はどこまでも情熱的で友人想いだ。大切な存在の為に怒れるし努力できる人間は、非常に好感を覚える。抱いていた人間的な魅力が、段々と女性としての魅力へ切り替わるのも時間の問題だった。
加えてフィアメッタは──本人は決して認めたがらないが──中々の映画通だ。ロドスの映画愛好会も認めるほどに知識がある、しかもいわゆるクソ映画と呼ばれるものに対して。果たしてそれらの知識と、会うたびに変化している珍妙なコードネームとどう関係あるかは黙秘を貫かれたが……ともあれ、勧められたB級C級映画をドクターも楽しんで鑑賞したのだった。
「スイーツと言えば、この前例の映画を観たんだよ。ほら、あのケーキが怪物となって襲い掛かってくるやつ」
「あら、あなたも観たのね。まったく、とんだ時間の無駄だったわ。化け物って割にはファンシーすぎるしオチは食べて解決とか、どっちが化け物って話よ。そりゃあ『どんな形であれ食べ物を無駄にできない!』って台詞には同意するけども──」
こうして話を振ってみれば、実に渋々嫌そうな顔で細部までしっかり鑑賞済みの感想を語ってくれる。本人はアレコレ言って否定するが、どう見たって趣味の範疇を超えた理解度なのは間違いない。そういった、外見や性格からは正反対なギャップもまた、親しみを覚えさせて距離感を縮めてくれるのだ。
「──そういう訳だから、正直あまり良い映画とは言えなかったわね。ロドスでも面白くない映画を撮影する監督が居たはずだけど、ぶっちゃけあの人の作品レベルね」
長々と問題点や評価点──後者はほんの一割ほどだ──を語り合って、最後はそういう
「ははは、ニェンには今の評価は言わないでおくよ」
そうドクターが笑い飛ばした時、場の空気が僅かに冷えた。
「ちょっと、ドクター」
グイっとフィアメッタが身を乗り出す。相手を見つめる瞳は不機嫌そうな色を隠しもせずに睨んでいた。映画レビュー中も不機嫌ではあったが、あからさまな意思表示は嫉妬を少しも取り繕う気が無い。
これもいじらしい感情表現だと理解してるドクターは、特に焦りもせず彼女と正面から向き合った。
「久々に会った恋人の前で他の女の名前を出すのはどうかと思うけど」
「なるほど、一理あるかも。ちなみにモスティマは?」
「……私も名前を出したし、まあ許してあげるわ」
嫉妬を収めて席に着いたフィアメッタ。小さく「ごめんなさい」と呟くとグラスに残っていたビールを一気に飲み干した。酔いが回った頭は感じたことを素直に口へと乗せてしまう。
「面倒くさい女ね、私って。久々にあなたと会えて安心してるのに、その間に他の女に取られてないかつい不安になってしまうのよ。気付けばあなたまで、私の指から零れ落ちてしまうんじゃないかって……」
普段誰にも言わない本音の吐露。かつて大事に想っていた小隊が引き裂かれた事件は、彼女の胸に忘れられない怒りと喪失を刻み込んでいる。ドクターも理解しているから決してそれを責めたりしなかった。むしろこれだけ強く想ってくれることに感謝を告げたいほどだ。
「気にしないでくれ、お互い様さ。私だって君が他の男に取られてしまわないか、怖くて仕方ないんだから。何ならモスティマに持ってかれてしまうかも?」
「ちょっと、何よそれは」
心外そうにしながらも、どこか愉快そうにフィアメッタが文句を付けた。空っぽのグラスを揺らしたり回したり、所在なさげにしているのは奇妙な懸念への好奇心だろうか。
少し明るくなった様子に安心しながらドクターは言葉を続ける。
「モスティマは飄々として妖しい魅力があるからね。知ってるかい? ロドスでも女性ファンが多かったりするんだよ、彼女は」
「へぇ、そうなんだ。ふふ、なんだか信じられないわね。あんな掴みどころの無いやつのどこが良いのやら」
「とか言ってるけれど、君が友達思いなのはよく知っているからさ」
「安心してちょうだい、私これでも執念深い方だから。簡単に関係を忘れ去るなんて器用な真似、できっこないわ」
重苦しい溜息と共に吐き出された言葉は、どこまでも深い諦観と潔さ、それにある種の清々しさが交じり合っていた。フィアメッタはそんな自分を面倒くさい女と評したが、一方で長所になるのだとドクターは知っている。情の
だからこそ、自分を選んでくれた幸運をドクターは噛みしめた。ましてや性癖といった、より個人的な事情まで曝け出した後では尚更に。
「君のそういう所が私は好きだよ。正直言って愛想を尽かされてもおかしくないと思っていた」
「はぁ……確かにそうかもね。自分でも時々不思議になるもの、どうしてあなたみたいな変態を好きになってしまって、しかも関係を継続してるのかしらって」
珍しく困ったような愛想笑いを浮かべるフィアメッタ。苦草を百枚は噛み潰したような微妙な顔でドクターの発言に頷いている。無意識に動かしたお尻をどこか気に掛けている様子なのは気のせいではないだろう。
恋人である以上は、当然ながらヤることはヤるわけで。そこはフィアメッタも文句は無いし、むしろ望むところだった。彼女だって女の子なのだから、好きな相手と結ばれる行為にロマンチックな幻想の一つ二つは持っていた。
ただ、まあ……実際のところは幻想を遥かに超えた交わりしかないのだが。
「この際だから言わせてもらうけど、あなたちょっと異常よ? 女性のお尻が好きなだけならまだ理解はするわ、でもお尻どころか──えっと、その……」
「でも君だって好きじゃないか、アナルセックス」
「ちょっ、そんな直接言わないでよっ!」
せっかく言葉を濁そうとした努力が一瞬で無に帰してしまった。大慌てで誤魔化そうとするフィアメッタだけどもう遅い。彼女らの性行為がいつも後ろの穴で行われているのは事実なのだから、ドクターはむしろ恥ずかしげもなく堂々としていた。
「確かに私の趣味なのは間違いないけどね。だけど『より確実に避妊ができるならその方がいい』とか『意外とお尻も気持ちいいわね』と言ったのは君の──」
「い、言ってないから! 確かに前半は認めるけど、後半に覚えはないわ! よりによってお尻が好きだなんて、勝手に断言しないでくれる!?」
信じられないくらい顔を真っ赤にして否定する姿は、すなわち羞恥の記憶をちゃんと覚えていることの裏返しだ。何度も後孔で交わり絶頂した姿を見られてしまった羞恥と絶望感が刻み込まれているから、躍起になって誤魔化してしまう。ましてフィアメッタのような矜持の高い強気な女性にとっては尚更だろう。
でもそういう相手だからこそ、普通は使わない方の穴で乱れる場面を見てみたいと思うもので……必死に取り繕おうとするほど、ドクターの嗜虐心に火を付けているのだ。
「そうか……ごめんね、私はいつも君が嫌がる行為を繰り返していた訳だ。すまなかったよ、この通りだ」
「えっ、あっ、えっと、別にそこまで言ったつもりじゃないわよ……」
わざとらしいほどしおらしく『性癖に付き合わせて悪かった』と謝罪されたフィアメッタは、逆にたじたじである。額に手をやって「これじゃ私の方が悪者みたいじゃない」などと小さく呟いている。
結局フィアメッタはどうしようかと目線を泳がせ「うーん……」と悩みに悩んだ末、先ほどよりも大きな溜息を吐いたのだった。
「ラテラーノの宗教的には、むやみに産めよ増やせよするより避妊が推奨されることもあるし、その一環でまあその……お尻での性行為があるのだって知ってたわ。ただ、まさかドクターまでそっちの気があるとは思わなかっただけ」
「つまり絶対に嫌って訳では無いと?」
「………………まあ、そういうことになるわ」
渋々、本当に仕方なくと言った調子で白状した。『あーあ、認めてしまった』という後悔がこれでもかと表情に出ていて、普段のクールな装いは何処にもない。ドクターからすれば、そのような顔もまた綺麗で可愛いと思っているのだが、言えば照れ隠しで怒られそうだ。
「なるほど、よく分かったよ。なら君がアナルセックスを好きだと認めてくれるまで頑張らないとね」
「はぁ、結局そういう話になるのね。ドクター、私があなたのパートナーで無ければとっくに破局してるわよ?」
「感謝してるさ、君で良かったと」
「口が上手いわね、私もそれで落とされたのだから文句も言い辛いし」
性癖の不一致はカップルが別れる主原因になり得るものだ。それでも別れる素振りも見せない辺り……本当はもう答えが出ているのだけど、ドクターは指摘しない。もちろんフィアメッタが認めることもない。
フィアメッタは「少し待ってなさい」と立ち上がった。真っ直ぐ立った姿にさっきまでの酔いは見受けられない。
「どうせ今晩もするんでしょう?
「分かった。楽しみに待ってるよ」
「…………ええ、私もよ。癪だけどね」
ともあれ、久々の逢瀬であり、肌を重ねるわけだから。お互いを寂しく思っていた感情に嘘は無い。共に飲んでいる間もこの時間を待ち遠しく感じていたから。
この時ばかりは僅かばかり笑みを浮かべて、フィアメッタは一度退室したのだった。
◇
──私の周囲って、どうして変人ばかりなのかしら?
因果、運命、そういう星の下に生まれた、苦難の道……思いつくままに単語を列挙してみると、公証人役場の老人たちが付けてくる面白くもないコードネームみたいね。さすがにゲンナリするのでこれくらいで切り上げましょう。
ともあれ、何故だか変人が本当に多い。付き合いの長いモスティマは今更言うに及ばず、友人のレミュアンも怪我をしてなお元気すぎて困るくらい。アンドアインの奴に至っては思考を割いてやる事すら癇に障るし、恩師のパトリツィオ殿だってまあ、サンクタらしく中々破天荒だし。そういえば月替わりのコードネームの発案者もあの人だったわね……頭が痛くなってくるわ。
そんな交友関係の中で、ドクターは比較的まともな人間だと信じていた。私の愚痴に付き合ってくれるし、変なコードネームを名付けたりもしない。外見は不審者だけどそれ以外は何処までも真っ当な指揮官かつ上司をしてるから、気付けばこっちの方から惹かれたりしていたのに。
「……不思議だわ、男の人ってどうして胸が好きなのかしら?」
「本能的なものだ、勘弁してくれ」
これだけでも高まっているのを感じたのに、ドクターはすぐ胸へと手をやると遠慮なく触ってきた。グニグニって捏ねるみたいに揉まれて、気持ちいいようなそうでもないような刺激が走る。キャミとブラ越しの鈍い感覚が逆に強すぎなくてちょうどいい。
「んっ……手付き、やらしいわよ……っ……」
自分で認めたくないけど、私は平均より胸が大きい方だ。まだ小さい頃はシャツや下着のサイズを変えることが何度もあったし、たまにモスティマやレミュアンから羨むように見られてたのは気付いてた。でも大きくたって邪魔なだけ、重いし揺れるし肩は凝るしで良いことなんざ一つもないの。ましてや名前も知らない男たちから下賤な視線をこれでもかと浴びるのは最悪の一言ね。
唯一この無駄な巨乳が役だっていると感じるのは、こうしてドクターが揉んでいる時だけ。彼が喜んでくれているのは何だかんだ嬉しいし、それだけ夢中になっているのが誇らしい。他の男と違って普段は一切下世話な目で見てこないから、逆に触ることを許せてしまう。
でも、ただ胸を揉まれてるだけってのも反応に困るわね。久々の再会なのだからもっと彼を求めてしまいたい。たまには私も悪戯してみようかしら。
「あのドクターも所詮は男の人なのね……ほら、早くベッドへ行きましょう? いつまでも立ったままなんて、私はゴメンよ」
「ああ、すまない──っ!?」
手を引いてベッドへ連れて行こうとするドクターへ不意打ちでキスをする。触れた唇は少しカサカサしてたけど、好きな相手とのキスはそんなことが気にならないほど幸せで。自分からするのは恥ずかしいと思いながら、おずおずと舌を差し出した。
「あむっ、ちゅっ……んむ、はふっ……」
はしたないかな、という懸念は全く問題にならなかった。迎えこまれた舌は即座にドクターの舌に絡めとられて、交尾するみたいにペロペロと絡み合う。しつこいくらいに口内をなぞり、唾液を絡めて交換して、ディープキスに没頭してしまう。ただ唇を合わせているだけなのに、呆れるほど幸せだった。
「んっ、ふぅ……ぷはっ……ドクター、もう一度キスして……」
「ああ、もちろん」
今度は自分から腕を回して、こんなに甘えるなんて自分らしくない。自覚はあるのに口が勝手におねだりしてしまう。もっとドクターと触れ合いたい、キスを交わして気持ちを確かめ合いたい。溢れる気持ちに嘘を付けないまま、理性も本能も同じ方を向いて目の前の人を求めていた。
息を整えて、目を瞑りながら、とにかくキスを続けた。呼吸が苦しくなってもお構いなし、いっそ重たいほどの感情をキスだけでぶつけていく。ドクターがどんな性癖だろうと、結局私は自分の気持ちに嘘は付けないのね。
「……ありがと、我が儘を聞いてくれて嬉しかったわ」
「これくらい我が儘の内にも入らないさ、もっと好きに言ってくれ」
「あなたのそういう所……やっぱり好きよ」
変に誤魔化さずに断言してくれる態度が好ましかった。誰かさん達はいつも肝心なところをぼかして本心を誤魔化してばかりだから、飾り気のない率直な好意が胸に響く。こういう人だから好きになってしまったのかな、きっとそうに違いないわね。
長い長いキスを終えて、今度こそドクターに手を引かれてベッドへと連れて行かれた。ポスンと仰向けに寝転がって、シャツのボタンをプチプチと外されて。ああ、これからドクターに抱かれるんだなと奇妙な感慨を覚えたまま、胸を隠す下着が露わになった。
「可愛い下着だ、大人っぽい黒でよく似合ってるよ」
「……気に入ってもらえたなら嬉しいわ」
わざわざ言うつもりは無いけど、さっき準備を終えた際にオシャレなのを選んで着けてきた。だから褒めてくれて素直に嬉しい。頬が緩んでいるのが自分でも分かってしまって、気恥ずかしさでつい視線を逸らしてしまう。ドクターの手が頬に伸びて、真っ直ぐ上へ向き直された。
「せっかくの機会なんだ、顔をもっと見せてほしいな」
「好きにしなさいよ。私だって、あなたの我が儘を聞いてあげる度量はあるから」
「ありがとう、嬉しいよ」
ニコリと笑ったドクターの顔は驚くほど可愛い気のあるカッコよさで、お腹の方が反射的にきゅっと鳴った。私ってこんなにチョロい女だったかしら? と思うけど別段悪い気はしない。好きになった相手が素敵に越したことはないんだから。
燃えるような熱が身体を巡りだす内に、ドクターの片手がブラをズラし迫ってきた。無駄に揺れる乳房を揉んで、口で乳首へと吸い付く姿は赤ちゃんみたい。母性なんて私とは無縁と思っていたけど意外と悪くないというか……ドクターをあやしてるみたいで、嫌いじゃないかも。
「ふふっ、そんなに私のおっぱい美味しいの? 別に母乳なんて出やしないのに」
「こんな巨乳に顔を埋めたくならない男はいないさ」
「へぇ、そうなんだ。参考までに覚えておくわ、止めはしないから好きにしなさい」
ちゅぱちゅぱ音を立てて胸を吸われる度に奇妙な快感が昇ってくる。私のより大きな手は何度も感触を確かめるみたいに揉んでくるけど、痛みは全然感じなかった。今の関係になった直後からドクターは常に私の身体を気遣ってくれている。
子供みたいにむしゃぶりつく傍ら、ドクターの片手がスカートの中へ忍び込んできた。ショーツの上から撫で擦るように手が動く。ビリッとした刺激に思わず足を閉じそうになるけど、ドクターの膝が間に割り込むから閉じられない。手のひら全体で陰部を擦られる内にぐちゅぐちゅと湿った音が微かに聞こえてきた。
……これ、やっぱり恥ずかしいわね。
「~~~~……っ」
「濡れてきてるね。おまんこ丁寧に擦られるの気持ちいい?」
気持ちいい。あなたにされるだけで、一度も貫かれたことすらない割れ目が寂しく疼いてしまうのよ。
だけどもうこれだけ濡らしているのを認めたくなくて、つい反抗的に睨みつけてしまう。素直になれない自分が恨めしいけど、ドクターは気にする様子もなく手のひらを下へと進めた。この後何をされるのか察した身体が、お尻の奥をキュッと窄めたけれど──
「さてと、こっちはどうかな?」
「ひぐっ──!」
ツンツンと指でアナルをノックされた途端に情けない悲鳴が漏れてしまった。
ショーツの布地越しに表面を弄られているだけなのに、冗談みたいな快感が背筋を駆け抜ける。誇張抜きに頭が真っ白になるほどの刺激量。さっき擦られた性器部分とは比較にならない気持ち良さは、それだけ如実に……その、私のアナルが、開発されてしまった証拠。
これがドクターのどうしようもない変態性で、変人である証明。
重度のお尻好きでアナルマニア、性器には目もくれずにお尻ばっかり開発してくるとんでもない人だと知ったのは、初めて肌を重ねた日のことだった。
「ほんっとうに、あなたってお尻が好きよね? どういう趣味してるのよ」
「需要と供給の一致さ」
「下らない言い訳は止してちょうだい……んお゛っ!」
憎まれ口を叩いたお返しとばかりに指先で肛門を押し込まれて、あまりに汚い嬌声が零れた。こんな下品な声なんて聞いてほしくないのに、ドクターはそれこそ楽しみとばかりに責めてくる。窄まりを撫でて突いて押し込んでと、呆れるほど低俗でいやらしい動きはどうしようもない快感を私へ叩きつけてきた。
確かに、お尻での性行為は万が一にも妊娠の心配はない。たとえ避妊具を付けたって膣内で破けてしまうリスクを考えれば、最初からそちらを使わないのは一つの安全策でしょうね。私も子供を授かるつもりは、まだ無いのだし。その点ではドクターのお尻趣味にも理解を示せた。
でも誤算だったのは、想像以上にドクターがお尻好きだったこと。そのせいで来る日も来る日もアナルセックスを強要されて、今ではすっかり性感帯に仕立て上げられてる。しかも厄介なことに、こんな身体にしておきながら『君もアナルセックスが好きだよね?』と聞いてくる始末。まったく! 誰のせいでこうなったというのよ!
「良く伸びて柔らかいお尻の穴だ……ちょっと湿ってきてるね。もしかして、自分でアナニーしてた?」
「んなっ……!? そ、そんな訳ないでしょう!?」
信じられない、なんてデリカシーの無いことを聞くのよ。自由奔放なサンクタだってここまでトチ狂ったことを聞きはしないわよ。
そうよ、ありえない。いくらロドスを離れてドクターと会えない寂しい期間が長引いたからって、彼のことを想って一人でお尻を弄るなんてする訳ないわ。ましてや毎晩毎晩、ドクターの逞しいを想像してお尻を慰めるはしたない真似、してる訳ないじゃない。
「そっか、なるほどね。だけど、ほら──」
「ぅぐっ……! ~~~~……っ!」
太くてゴツゴツした指がアナルの表面を直接撫でた。ぶるりと身体が震えたのは気持ち悪いからで、決して気持ちいいからじゃない。そう自分に言い聞かせている間にも、皺を伸ばすように指先が表面をこね回して──お尻の中へと無遠慮に押し
しかもこれ、2本揃えて挿入されてる? 愛液と唾液を潤滑剤にして、ぬるりと排泄器官へ侵入してきてる……お尻を締めて抵抗したいのに、全然力が入らない……
「美味しそうに指を2本も飲み込んじゃった。こんな簡単にほぐれるお尻、しっかりケアしてないと維持できないよね?」
「耳元で、囁かないで……!」
逆流してくる圧迫感に息苦しさを覚える。早く抜いてほしいと願うのに、躾けられた肛門はドクターへ媚びを売って、意思と正反対に直腸の奥へと招き入れてしまう。気付けば足を開いてドクターが挿入しやすい体勢になってて、あまりの羞恥に両手で顔を覆い隠した。
「ほら、顔を隠さないで。お尻で感じてるフィアメッタの可愛い表情を見たいんだ」
「み、見るな、ばかぁ……」
もうやだ、本当に無理だから勘弁してほしい。当たり前にお尻で受け入れてしまってる、どうしようもない顔なんて見ないで。文句を付けたいのに言葉は一つも出なくて、あっさりドクターに手を退かされた。慰めるみたいに唇を重ねてきて、お尻の
「ちゅっ、あむっ……ひぐっ、んんっ!」
「ここが弱点なのは変わってないね」
直腸の中で2本の指がバラバラに動いて感じるところを探ってくる。もう何度もドクターへお尻を明け渡したせいで、すっかり感じるところはバレてしまってた。敏感なポイントを指で撫でられたり、突かれたりする度に濁った声を出してしまう。お尻の方からもねちょねちょした淫らな音が聞こえてきた。
「うーん、やっぱりアナニーしてたよね。自分で開発してないとここまで気持ちよくなれないでしょう」
「だから、してないって……あ゛っ!? っ、言ってるでしょ……!」
「フィアメッタ」
急にドクターの雰囲気が変わった。名前を呼ばれただけでビクリとなる。
変態だけど優しい様子だったのが、虚偽を許さない怖い目をしていた。修羅場をいくつも潜り抜けてきた私でも背筋がゾッとしてしまう。それだけ本気で、彼は本当の答えを望んでいる。普段なら下らな過ぎて笑ってしまうけど、今ばかりは全く笑い飛ばせない。
「正直に話してほしいな。私たちの間柄なんだから、隠し事は無しだ。別にどんな君だろうと決して軽蔑しないし、このまま嘘をつくなら気持ちよくしてあげないよ?」
「ひあっ! やっ、お尻ズポズポするのは……あれ……?」
指をギリギリまで引き抜いてから、また最奥まで突っ込まれる。そのたった一度だけの往復による刺激が途方もなく気持ちよくて……自分の肛門がいかに性器へと作り変えられてるのか、嫌でも実感させられる。もう後戻りできないところまで、アナルが性感帯だと教え込まれている。
なのにドクターはたった一度の往復以降、指を一切動かしてくれなかった。焦らすように肛門を広げたり、直腸内で指を動かす程度。さっきまで弄ってた弱点にも触れないせいで、弱火で炙られるような快感だけがムズムズと広がっていく。
やだ、もっとしてほしい──違う、それじゃ私がお尻プレイをねだる変態みたいじゃない!
だけど小さな埋め火はジワジワと身体を火照らせて止まらない。いくら必死に誤魔化して、本心から目を背けても、理性の奥にある秘められた本能はより強い快感を望んでしまってて……
「してた、わよ……」
「ん?」
既に堰を切った言葉の奔流は止められそうになかった。
「してたって言ったの! あなたのことを想って毎晩、お尻でオナニーしてました! ほら、これで満足かしら!?」
このまま消え去ってしまいたい程の羞恥に囚われるけど、吐いた言葉はもう取り返せない。いつもモスティマに隠れてこっそり、ドクターとのアナルでの逢瀬を思い出しては自慰に耽っていた記憶が蘇る。
自分の指では細すぎて全然満足できなくて、いつも彼の太くて逞しいのを想像してた。昂ぶりを鎮められず、直接お尻へ
意地を張って素直になれない自分が嫌だった。だけど、だからって彼の前でこんな告白する気はなかったのに……羞恥と絶望感に涙がジワリと溢れてくる。止めたいのに止まってくれない、どうしちゃったのよ。
「ごめんねフィア、教えてくれてありがとう」
「誰のせいだと思ってるのよ、バカ……」
「離れていても想ってくれて嬉しかったよ」
今更優しさぶって涙を拭っても遅いのよ。さりげなく愛称で呼んで点数稼ぎをしても無駄なんだから。仮にも恋人にこんな仕打ちをしでかすなんて、そう簡単に許してあげるつもりはない。
「すまなかったよ、どうすれば許してもらえるだろうか?」
ほら、ドクターだってこう言ってるわ。
ならもう、素直に自分の欲求を白状してしまう。これは私からドクターへの謝罪要求であって、はしたないおねだりとは違うんだから。何を言ってもこちらに分があると知っている。
「……私のことを、離れていた時間の分だけ徹底的に愛しなさい」
「それで良いのかい?」
「やり方はあなたに任せるから……ドクターの考える一番の方法で、愛情を伝えてちょうだい」
「分かった」
一も二も無くドクターは頷いてくれた。すごく嬉しそうな表情に『あーあ、言ってしまったわ』と今更ながら思ってしまう。結局これだとドクターが得するだけじゃない。自覚はある、でも後悔は無かった。だって私も、ドクターからされる事は何でも嬉しいのだから。たとえそれが、アブノーマルな交わりだろうとも。
「指、抜くよ」
「んっ……ああっ!」
お尻に挿入されっぱなしだった指がにゅぽんと出てきた。唐突に
「フィア、キスをさせてほしいな」
「好きにしなさいよ……んっ」
もう一度ドクターとキスをしたけど、今度は舌を合わせる前に離れていってしまった。寂しい、会えなかった分だけたくさんキスして埋め合わせてほしい。ドクターだって同じ気持ちだと信じてたのに、彼の頭はどんどん下へと降りていき──私の鼠径部のところでピタリと止まった。
まさか、と察した時には遅かった。ドクターの口がアナルへと近づいて、伸ばされた舌がペロリと皺を舐め上げた。嘘でしょ、信じられない。いくら綺麗にしてきたからって、そこは汚いところなのに!
「ひっ、やっ、だめっ! そこは汚い、からぁ……っ」
「汚くないさ、とても綺麗だよ。フィアのお尻ならいくらだってキスできる」
「こっ、この変態……ひぅ、んあっ!」
憎まれ口を叩いてもお構いなし。犬みたいにペロペロと肛門を舐め上げてきて、プライドとか無いのかしら? これがロドスの誇るドクターだなんて聞いて呆れるわ。でも一番呆れてしまうのは、それで感じてしまう私自身だった。
いわゆる
お尻の周囲を円形に動いてかと思えば、かと思えば舌先を尖らせて内部へ侵入しようとしたり。
さっきまで指を咥え込んでいたアナルは柔らかい舌を容易く受け入れ、いとも容易く広げられてしまう。
すっかり蕩けてほぐされた後孔を貫かれたい欲求が広がってきて──
「れろっ、んむっ。フィアは気持ちいい?」
「し、知らないわよ……ひゃうっ!」
だけど何より幸福に感じてしまったのは、不浄の穴を躊躇いなくドクターが愛してくれたこと。私だってドクターに同じことをしろと言われたら躊躇ってしまうのに、彼は奴隷でもやらない奉仕を嬉しそうにしてくれる。いくらそういう性癖だとしても、身体の隅々まで愛してくれるほど私のことが好きなんだと、羞恥の中に確かな喜びを感じていた。
はぁ、お尻を舐められて嬉しく感じるなんて、もう言い訳の余地も無いわね。すっかりドクターに開発され、染め上げられたことで私も変態にされてしまった。でもまあ……今だけは、伝わる快感と愛情へ正直になってもいいのかしら。
「ねぇ、ドクター……そろそろ良いでしょ?」
「ん、何がだい?」
お尻を舐めながら聞き返された。絶対分かってる癖に、こういう所は本当に性格が悪いんだから。いつものドクターとは大違いの鬼畜っぷりね。
このまま何も言わなければ、ドクターはいつまでもアナル愛撫を続ける気なのかしら。ほんの少しだけ興味が湧いたけど、身体の方はもう昂って限界だった。一秒でも早く、いつも想像していた太いのを挿入して欲しくてたまらない。力の抜けた両足でドクターを振り払うと、うつ伏せになって微かにお尻をあげた。
ああ、ついに自分から誘ってしまったわ。羞恥で熱くなった顔は火が噴き出そうで、鎮火の為に枕へ思い切り顔を埋めた。この状態でドクターの顔、まともに見れるわけないじゃない。
「……いいんだね?」
「早くしなさいよ、あなただってもう我慢できないのでしょう?」
ドクターへ向けた言葉は自分にもそっくりそのまま当てはまるもの。不浄の穴は性行為に使う場所じゃないとか、そんな部位で感じる自分が恥ずかしいとか、否定の言葉が浮かんできては肛門性交の期待を前に立ち消える。もはやどんな言葉で誤魔化すのも不可能なくらい、これから与えられる快楽を待ち望んでしまっていた。
いよいよドクターの腰がお尻に擦りつけられて、大きく膨らんだ硬い感触が伝わってくる。ぬるりとしたローションが垂らされ皺の一本一本まで馴染ませるように硬い感触が前後した。これだけで既に気持ちいい、枕の下でくぐもった喘ぎ声が止まらない。
「それじゃあ、フィアのお尻を犯すよ」
「…………来て」
そうして私は、ドクターへ自分からお尻を差し出した。寝バックの姿勢で腰を上げてるから、前も後ろも全部見られてる。突き刺すような視線に肌がゾワリとなった。
硬い感触が肛門表面に触れると、すぐに狙いを定めてぐーっと内部へ侵入してくる。異物が逆流する感覚はどうにも苦手なままだけど、一方で掘削されることによる奇妙な快感が走るのも否定できない。すごく気持ちいい訳じゃないけど、ドクターと一つになれてる感触が幸福感を与えてくれる。
直腸を陰茎が突き進む度に、ぐちゅ、ぐぽっ……とお尻から下品でいやらしい音が出てしまう。何度聞いても一向に慣れない淫猥な水音、必死に目を閉じて聞こえないふりをしていたら、不意にぐちん! と音が鳴った。いつの間にか私のお尻に、ドクターの腰が密着している。
あんなに大きいのが収まっただけあって、すごい圧迫感ね。
「全部
「んっ……平気、よ」
本当はあんまり平気じゃない。何度受け入れても規格外の巨根を迎え入れるのは苦しい。お腹が破裂するんじゃないかと錯覚しそうだ。お尻に栓をされている違和感と圧迫感に泣きそうで、食いしばった歯の隙間から荒い呼気が漏れ出るのを必死に我慢する。
これだけなら、アナルセックスなんて二度とやらないと誓って終わりだ。気持ち良さの欠片もない、苦しいだけのプレイ。なのに今でも受け入れてしまっているのは……つまり、その、我慢した分だけすごいのが来るわけで。
「フィアのお尻、入口はすっごいキツイのに中はふわふわで温かい……ツルツルの腸襞が吸い付いてきてるのが分かるよ」
「そ、そんなことわざわざ言わなくても、んっ……いい、から……」
何が悲しくて自分のアナルの具合を聞かされなければならないのか。でもドクターは本当に気持ちよさそうな様子で、戸惑いや呆れとは別に『私で気持ちよくなってくれてるんだ』って悦びがジワリと胸に広がった。好きな人が喜んでくれてるのは、やっぱり嬉しい。
ゆっくりとドクターが腰を揺すると、長い竿や亀頭が直腸に当たって微弱な快感が生まれた。腰の奥から燃え上ってきた熾火が、身体中へ伝播して快感として認識される。私、お尻で感じてるんだなとこの時点で分からされてしまうけど、本番はこの程度じゃないと知ってるから。
「そろそろ慣れてきたかな? 抜いていくから、力を抜いて」
ついに来た。覚悟を決めて深呼吸、指示通りに身体の力を抜いて──肉竿が、直腸からズルリと引きずり出された。
「ん゛ぐっ!? んお゛──ぁああ゛ああああ゛~~~っ」
お尻が爆発したんじゃないかと思う程、大きすぎる快感が頭の中で弾けた。
ドクターが抜け落ちていくのと一緒に内蔵まで引きずり出されたんじゃないかと錯覚するほど、重く強い衝撃。お手洗いで味わう解放感、爽快感を何倍にも煮詰めて凝縮した暴力的な快感が駆け抜ける。さっきまで直腸を埋めていた異物が消えた落差と、子供の頃から植え付けられる原始的な心地よさは強烈の一言だ。
……認めたくないけど、こうしてお尻から抜かれる瞬間は本当に気持ちいい。女性として終わっている喘ぎ声が漏れたことすら忘却の彼方に追いやられる。力の抜けた割れ目からは尿か潮かも分からない液体が吹き散らされて、絶頂したことをこれでもかとドクターに教えていて、いっそ死にたくなる。
「すごいイきっぷりだ、そんなに気持ち良かった?」
「~~~~っ、気持ち良かった、わよっ……! 見れば分かるでしょう!?」
「ごめんごめん、フィアはいつも素直じゃないけど本当はお尻を穿られるのが大好きだもんね」
直球の発言に「何を勝手なことを」と言い返したい。
「たった一回引き抜かれるだけでこれなんだもの」
でも、ドクターの言う通り。呆気なくアナル絶頂した姿を晒しながら、お尻なんて気持ちよくないと意地を張れるほど太々しくなれないわよ。せめてもの抵抗にシーツを強く掴んで、顔を見られないよう突っ伏した。その間にもまたさっきの甘美な衝撃を味わいたいと心の奥底で願ってしまうから、本当に救えない。
きっとドクターには私の意地も本心もお見通しよね。上から体重を掛けられ、もう完全に逃げられない姿勢で再び腰が突きこまれた。ぐぽりと、ぐちゅりと、卑猥な音を立てながら剛直が逆流する苦しい感覚は、これから与えられる快感への助走なんだ。
「自分から腰を振ってしまって、可愛いな。尾羽と太ももまでプルプルしてるよ」
「ぐっ、んん゛っ……ぉ゛っ、ああ゛っ……!」
グリグリ……ごちゅん!
後ろの穴が割り拓かれて、またドクターのが直腸へと収まった。さっきの絶頂で内部が締まったせいかカリ首の凹凸や灼けた鉄じみた体温まで感じられてしまう。その感覚を咀嚼して次の気持ち良さへと変換する前に、もうドクターは腰を後ろへと引いていた。
「っ゛ぐっ、ぅう゛! ──っあぁ゛! あ゛っ! あ゛ぁっ!」
お尻の穴が捲れ上がる。吸い付いた腸襞が丸ごと外へと引きずり出されそう。身体の奥底が内側から外側へ反転しかねない恐怖は、破滅的な快感すら伴っていた。日常で馴染み深い排泄快楽を無理やり体験させられる背徳感。アナルの淵を逞しいので抉られる度に濁声が飛び出し、どうしようもなく性器へ成り下がった自分のお尻を自覚してしまう。
「──っ゛、ぐぅ……んお゛っ! あぐっ!」
鈍い水音が響く度に、私の奥底が圧迫されて息が詰まる。
軽快な水音が響く度に、浅ましい快感を拾ってはしたない嬌声が出た。
男根が律動する度に地獄と天国を僅かなスパンで往復させられて、頭が真っ白に、なっていく……自分の目的も、信念も、何もかもが朧気になって、ただドクターとの
「お゛っ! お゛っ! おあ゛っ! あ゛っ!」
「フィアメッタ……!」
気付けば、直腸を貫かれる苦しさすら気持ち良さに変換されていた。こうなると逃げ場がない。ドクターから与えられる全部が快感に直結して、頭が馬鹿になるほど快楽漬けに落とされて。危険な薬に手を染める人間はこんな心地なのかしらと、場違いな思考が現実逃避気味に過ぎった。
ぷしゃりと割れ目から液体を噴き出したのは何度目なのか、もう自分でも分からない。絶頂した回数を数えるのは5回目くらいでアホらしくなって止めた。足の間に広がるシーツは目も当てられない惨事よね、きっと。憂鬱だけど、そんな気持ちすら極大の快感に塗り潰される。
「フィア、体勢を……」
「えっ──きゃっ、ちょっと……!」
ぐるりと視界が反転して、いつの間にか視界には天井の白が広がっていた。背中には変わらずドクターの感触があるけど、今度は乗られているのではなく乗っている。ちょうど仰向けになったドクターの上に、同じ姿勢で寝転がっている状態。
それでもお尻は繋がったままで、何事も無かったようにズンズンと突いては抜いてを繰り返してくる。感じすぎてみっともない顔を隠したいのに、深い絶頂を享受しすぎて腕の一本もまともに動かせない。
「……その、重くない、かしら?」
「いいや、全然。むしろ軽すぎて心配になるくらいだ」
「そう……ありがとう」
即答してくれるところは、とても気遣いのできる人だと思えるのに。
どうして性癖はこんなに残念なのだろうとこっそり嘆きながら、ドクターにお尻を突かれるに任せていた。今度は下から上へ叩きつける調子だから、まだ一度も精液を注がれたことが無い子宮まで裏から刺激される。女としての性感まで刺激されてまた身体が高まって、もはや気持ちいいのが常態にされていた。
「んっ……胸まで、触るなんて……あ゛っ、ぉぐっ……!」
身体が沿って強調された胸元へドクターの手が伸びる。手の平が覆いかぶさり、指を沈めて揉みながら乳首までクニクニと刺激してきて、堪らず喘ぎ声が漏れちゃって。しかも片手は早々に胸を離れると、割れ目の上部にある陰核にまで触れてきて……皮を剥かれただけでビリッと電流が走った。
お尻と、胸と、陰核の三点責め。とっくに快感の許容値なんて超えている。頭を逸らして喉を曝け出しながら、どうしようもなく喘ぎ続けるしか許されない。許してと泣き叫びたいのに、言葉にならない叫びしか出てこない。
ぐちゅん! ぐちん!
涙と涎で顔はぐちゃぐちゃ。叫びすぎて喉が痛い。お尻は擦れすぎて痛まないのが不思議なほどで、ギュッと摘ままれた陰核は鋭すぎる感覚をこれでもかと届けてくる。
「フィア……すごい可愛いよ」
「やめて……こんな私、見ないでぇ……」
やっと絞り出せたのは弱弱しい懇願。まったくらしくないわ。でも仕方ないじゃない、こんなのでも好きになってしまったのだから。今更遅すぎるけど、綺麗な自分を見てほしいと思うのは自然なことよ。はぁ、誰のせいでこんな目に遭ってるのかって話でもあるんだけどね。
下から突き上げるドクターの腰遣いが徐々に大きく、大胆になり始めた。これは知ってるわ、彼が射精しそうな合図。私のアナルを使って一滴まで無駄なく注ぐために力を溜めている状態で、射精がもう近いことを意味していた。ラストスパートを前に思わず身体が震えた。
「私もそろそろ限界だ……!」
「いい、わよっ……! 私のお腹に、たくさん注いでっ……!」
万が一もあるから前に注いでもらうことは出来ないけど、やっぱりドクターの愛情を身体の奥で受け止めたいから。
顔から火を噴けるほどの羞恥の甲斐あってか、ムクムクとドクターの硬いのが膨らんだ。直腸の一番奥に亀頭がぐっぽりハマって、私の一番奥の奥を明け渡しながらその時を待ち──
「
熱い白濁の奔流が、お尻の中で爆発した。
体温なんてそう変わらないはずなのに、何故だか精液と剛直ははっきり分かるほど熱く煮え滾っている。生殖の為でなく単に快感を貪るためだけに流し込まれる精子の熱さ。腸内を遡ってくる感触も、ドクドク脈打ちながら精液を送り出す肉の槍も、噛みしめた直腸からつぶさに感じ取れてしまった。
「んっ……ふぅっ……あぁっ」
私と違う温度がお腹の奥で広がっていく。感触自体は別に気持ちよくないけど、ドクターが私を想って射精したと思うと途端に充足感に打ち震えてしまう。妊娠するはずもない排泄器官を夢中で犯して、その先へ精子を流し込む無為な行為。そりゃあドクターにとっては性癖なのでしょうけど、互いに愛が無ければ成立しないプレイなのも事実だから。
「きゅうきゅう締め付けてくる。中に射精されてフィアもイったんだね」
「ええ、そうよ……悪いかしら?」
「まさか。むしろ嬉しいよ」
つい口が悪くなってしまったのも気にされず、頭を撫でられながら唇が合わせられる。激しい行為とはうって変わって穏やかな触れ合いに、ようやく身体を休められると安堵しながら、未だに萎える様子のない肉棒に辟易してしまうのだった。
◇
その後、追加で三回もフィアメッタのアナルへ射精したことで、ようやくドクターとの交わりは済んだ。
最後に一物を抜かれた時など粘着質な音を立てながら大量の精子が溢れだしてきて、さすがにフィアメッタも呆れを通り越した引いた程だ。これだけの精豪っぷり、仮に子宮へ余さず注がれていたら確実に妊娠していたことだろう。
「はぁ……結局あなたのペースにされちゃったわね。いつもこうだわ、情けない」
「それでも付き合ってくれるフィアが私は大好きだがね」
「はいはい、感謝するわ。私もドクターのことが大好きよー」
ベッドに横に寝そべりながら軽口を叩く。半ば冗談じみた物言いだったが、発言自体はどこまでも本心から来るものだった。惚れた要因は色々あるし、逆に恋も冷めるような性癖をぶつけられたばかりだけど、フィアメッタの情はこれくらいでは欠片も冷める気配が無い。
「アナルセックス、やっぱり好きだよね。気持ちよかったでしょ?」
「………………うん」
認めたくないけど、行為が終わった後はいつも頷いてしまうフィアメッタだった。
これだから普段ドクターに揶揄われ、躍起になって否定する羽目になってしまうのだが……それも込みで、何となく楽しいと彼女が感じてしまうのも事実だ。惚れた弱みなのだろうかとぼんやり考える。
「なら良かった。だけどもし、その……いつか子供が欲しくなったら、必ず責任は取るから」
「ええ、分かってるわよ。だけど安心してちょうだい、まだそのつもりはないから」
「……それもそれで、少し寂しい話だけどね」
「仕方ないでしょ、やり残してることが山ほどあるんだから。身重になるのは困るのよ」
代わりに、とフィアメッタは囁く。
「お尻でのエッチには、好きなだけ付き合ってあげるから……これでお互い様よね」
「ああ、そうだな。私にとっては至れり尽くせりだよ。ありがとう、フィアメッタ」
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