純性癖ナイツ 作:ひかりねこ
ここしばらく、うだるような熱さであった。
ロドス本艦の移動経路が砂漠地帯に差し掛かったのはあるだろう。暦的に夏に差し掛かり太陽が照る時期になったのも原因のはず。だが執務室が蒸し風呂のような熱さとなっている何よりの原因は、クーラーの故障に他ならない。
「熱い……暑いという域を超えて熱すぎるぞこれは……」
額に大汗、衣類をはだけた上半身にも汗を染み込ませながら何とか端末へと向き直る。しかし十秒としない内に身体は涼を求め出し、すぐ脇に置いたハンディファンを握ってしまった。それでまた片手が塞がるのだからこれじゃあ捗る仕事も捗らない。
恨むべきはこのタイミングで壊れたクーラーだろう。ピンポイントで私の部屋だけ機能不全となり、焦ってクロージャに修理を依頼したところ一週間ほど掛かると告げられた。絶望に天を仰ぎながら『諸々の機材や資料を持ち出すのも億劫なので一週間耐えよう』と決意したのだが、それが大いなる間違いだったのは初日で気付いた。
「はぁー……」
「ねぇドクターさ、さすがに移動したらどう? もう三日目でしょ、アンタの体力じゃ倒れちゃうよ」
滴る汗を拭いながら大きなため息をつくと、呆れ交じりの心配が飛んできた。あまりの熱気に誰も寄り付かなくなった執務室にわざわざやってくる
「君の方こそこんなことに付き合う必要ないだろう」
「付き合ってるつもりはないよ、たまには違ったことをしてインスピレーションを得たいだけ。でもこの暑さは堪えるね」
補助オペレーターのディピカは絵師を生業とする女性だ。「アシ」さんと呼ぶ謎の触手を使役したり、描いた絵が実体化したり、経歴に虚偽が混じっていたりもする非常に不可思議で謎の多い人物である。しかし少なくとも本人に変な気は無く、オペレーターをしながら絵を描く平穏な生活を送っている。
そんな芸術家気質の彼女は今、この異常熱気地帯と化した執務室とそこで過ごす私に焦点を当てていた。曰く「クリエイターは1カ月の内30日はスランプ」らしいが、そこから脱却すべく『普通と違う』状況を求めたようだ。
「でも、ドクターがその服を脱いでるのは珍しいね。いつも着てるからそれがアンタの本体かなって思ってた」
「ほ、本体って……まあそうだね、今は特例で脱いでるだけだから確かにレアかもしれない」
どんな時でも着込んでいるあの不審者全開な装いは、外出時は必ず着用するようケルシーから厳命されている防護服だ。なので普段から着込んでいるものの、今回はあまりの暑さゆえに執務室でのみほとんど脱ぎ切っているのだった。
そのため、上半身は肌着だけというだいぶ際どい恰好を女性の前で晒しているのだが……ディピカは気にする様子がない。むしろこちらに近寄って、覗き込むように見つめてくる。
「ふーん、そうなんだ。ならいつもは見れないドクターをじっくり観察させてもらおうかな」
ジロジロ、そんな擬音が聞こえてきそうなほど細部を観察されている。その視線に座りの悪さを感じてやり返すようにディピカへと目をやると、彼女もまた上着を脱いでかなりの薄着になっていた。
上着を払った黒いワンピース姿は白くて長い脚によく映えているが、肩回りや胸の上半分もしっかり露出して目のやり場に困る。さらに白い肌は暑さでしっとり汗ばみ、漂う女性の香りと共にいかんともしがたい魅力を放っていた。意外と長身なスタイルと合わさって思いがけず『イケナイもの』を見てしまった気分だ。
その罪悪感と気まずさに目線を上げると、ちょうどディピカの琥珀色をした瞳とぶつかった。真正面からマジマジと顔を見られてむずがゆい。
「なるほど……へぇ、意外と素敵な顔をしてるんだね。もっと陰険で暗い色をしてると思ってたよ」
「い、一応褒め言葉と受け取っとく」
いつもの彼女はどこか掴みどころが無くて、芸術家肌な側面もあるから人によっては近づきがたい雰囲気を持っている。もちろん、絵を描いてもらった人はとても──いっそオーバーなほど──褒め称えるのだが、かくいう私は依頼した事もない。
ただ、ここに来て段々とディピカの描く絵に興味が出てきた。この熱気に包まれた執務室で何らかのインスピレーションを得ようとする風変わりな絵師が、果たしてどのような色を選び、筆を執るのか。自分の知らない分野に対する好奇心がムクムクとかま首をもたげ上げる。
「どうかな、絵は描けそうなら完成品を私も見てみたいものだが」
「早々簡単には描けないから、結果を焦っちゃダメだよ。一を十にするより、まずゼロを一にする方がよっぽど難しいんだから」
「つまり、切っ掛け作りが最重要だと」
「そういうこと。でもま、あまり見てても邪魔になっちゃうからね。今日はこれくらいにしておくよ」
グイっとディピカが身を引いた途端、鼻腔に届いていた良い香りがスッと消えてしまう。同時に胸の鼓動が落ち着き始め、そこでやっと私はドキドキしていたことに気付いたのだった。
「じゃあねドクター、お仕事頑張って。あ、【アシ】さんは好きに使って良いからねー」
「あ、ああ、ありがとう……」
そうして私の手元には謎の触手ことアシさんが一本残され、暑い執務室に一人と一本で取り残されることになったのだった。
──ちなみに、アシさんは仕事の役にはあまり立たなかったが、触るとヒンヤリして気持ち良かったのは特筆しておく。あとハンディファンを持ってもらうにも便利だった。
◇
芸術家にとってスランプはいつだって隣人だ。
思うように描けない、描きたいものが見つからない、描けたのにできたものに納得いかない、初めに夢想した理念や意図が霧消してつまらない──様々な理由により『絵が描けず』、故にスランプに陥るのだ。
「はぁ、どうしようかなー……」
才能ある若き絵師として振舞うディピカもまた、世の芸術家の例に漏れず悩んでいた。
暑すぎる執務室から抜け出し、シャワーで軽く汗を流して自室のベッドに倒れ込む。空調の効いた室内は非常に過ごしやすく、ドクターの置かれた環境とは大違いだ。けれど頭の中は涼しさよりも、先ほど見たドクターの素顔に埋め尽くされていた。
「ドクターの顔を題材に描いてみるとか? 安直な気がする……でも題材としては良いよね、秘められた素顔って」
人の美醜にとやかく言う気は無いディピカだが、やはり芸術家として美しいものは好きだった。調和のとれた彫刻や、大自然が生み出した雄大な景色、あるいは日常の何気ない光景まで、美しさの潜む余地はどこにでもある。それらを見て、インスピレーションを貰い、心に生じた衝動に従い描き起こすのが絵師の使命だ。
その点で、ディピカの中でドクターの素顔は合格点の題材だった。普段は全身黒づくめの怪しい恰好をしているが、フードを外せば"美青年"の形容詞が相応しい姿をしている。肌着の下にうっすら見えた身体は想像より筋肉質で、ヒョロヒョロした優男の印象からやや外れているのも悪くない。
「顔で選ぶのもいやらしい気がしちゃうけど、他に良い題材も思いつかないし」
思い返せば思い返すだけディピカの中で良い題材として存在感を増してくる。じっくり覗き込んだおかげで、彼の瞳の色やまつ毛の長さ、鼻梁の立ち方から唇の瑞々しさまで分かっていた。忘れない内に筆を執って下書きでもして、それを取っ掛かりに作品を一つ作り出せそうなものなのだが……その前に、彼女の中で湧き上がる『別の衝動』があった。
「んっ……やだな、濡れてきちゃってる」
モゾモゾ動かした太ももの間からくちゅりと湿った音が響く。おそるおそる下着のクロッチ部分に指をやれば、そこにはあからさまに透明な液が付着していて。あっさり昂ってしまった身体にディピカは「はぁ」とため息をついた。
「性欲を芸術で発散するのが『昇華』だなんて、アタシには全然信じられないよ」
芸術家は皆そう、と一概には括れないが色に溺れる芸術家は案外多い。男性絵師なら裸婦画を描いている内に女体に溺れたり、女性であればモデルと懇ろな関係になってしまったり。テラの各地に生きた芸術家を調べてみれば、似たような話題はごまんと出てくるものだ。
そして色々と外れたところのあるディピカでも、人並みに性欲は持ち合わせている。取り分け先ほどまで雄の汗とフェロモンが充満した密室に居て、しかも思ったより整った顔をしっかり観察してきたのだ。恋愛感情は無くともエッチな気分にはなってしまう。
「んしょ……ちょっとやってスッキリしよ」
こういうとき、発生した性欲に逆らって絵に向き合っても良い事は何もない。むしろ余計に身体が発情して考えはまとまらず、完成した作品が信じられない駄作になるとディピカは知っていた。なのでさっさとオナニーで気持ちよくなって、リフレッシュした頭で筆を執るのが一番だ。
少女は黒いワンピースの下から同じ色のショーツを脱ぎ、下半身の布地を捲ると控えめに足を開いた。ぷっくりした割れ目とその上でそよぐ控えめな下生えが冷えた空気に擽られる。それから右手の指に唾液を塗すと、ゆっくり割れ目へと手を伸ばしていくのだった。
「んっ……あっ」
まずはそっと割れ目をなぞり始める。白く細い指がゆっくり動き、くちゅくちゅと愛液を塗すように上下に動いた。特に割れ目の上部に位置する最も敏感な
ねっとりした淫液が膣口から零れたら次の準備。片手で陰唇をくぱぁと開き、鮮やかな内部粘膜を外気に露出する。ヒクヒク震える膣口も、その上にちょこんと空いた尿道の穴まだ見える恥ずかしい恰好。誰もいない室内でも己の手で秘部を拡げる行為にディピカの頬が赤く染まった。
「ふぅ、良い感じに濡れてきたね……それじゃあ、指を入れて……んっ、あぅっ」
立てられた人差し指がそっと膣口へと滑り込む。きゅうきゅうと締め付ける狭い体内はディピカの指一本でもきつく締め上げ、本人でも少し戸惑う程度には動かし辛い。粒々と襞ひだで構成された
なので代わりに『あるもの』を入れるべく、締め上げに逆らって徐々に指を動かしていく。最初は根本から左右に動かして入口を拡げて、段々と前後につぽつぽ動かして胎内にスペースを確保する。
「あっ、んっ、んんっ……! はふ、もうちょ、い……ひゃっ♡」
思わず甲高い声が漏れたのは、ディピカの指先が期せずして良いところを擦り上げたからだ。陰核裏のザラザラした部分、俗にGスポットとも呼ばれる女性の弱点を指の腹が押し上げて、快感から逃げるように腰がグッと浮いてしまう。もちろんそれで快楽を逃がせるはずもなく、ぷしゃりと緩く愛液を吹いて甘い絶頂をまずは堪能してしまうのだった。
「ふぅー……ん、っと……これで十分、かな……?」
はぁ、はぁ、と熱い吐息が部屋に木霊し、豊かな胸が規則的に上下する。ちゅぽんっと音を立てて引き抜かれた指先は愛液でふやけ、すっかりベトベトになっていて。これだけ
そして、音もなくぬるりと現れたのはディピカがアシさんと呼ぶ触手たちである。毒々しい色をして、ぬらりと光る触手は人によって嫌悪感を覚える外観だ。けれどディピカは嫌がる素振りをおくびも見せず、触手の一本を掴むと先端をまだ絶頂冷めやらぬ割れ目へと近づけて──
「んっ、ふぅっ……【アシ】さんが入って、きたぁ……♡」
先ほど解した膣口の中へ躊躇なく侵入させ始めた。
ぬらっとして吸盤のある触手は細い先端でもそれなりに太く、根本に近づくにつれかなりのサイズに変貌していく。よって最初に自分の手で性器を慣らして、その後に本命の触手オナニーに耽るのがディピカのルーチンであった。
まずは痛くならないよう焦らずに触手を内部へと導いて、最奥まで先端が到達したのを確認する。そこで一度深呼吸して、触手を握っていた手を離すのだ。「最奥の場所は教えたから、後は好きに動いていいよ♡」、と。
ずるっ! ずるるるる……っ!
「ぉあ゛っ♡ いきなり、大きいやつ……だ♡」
アシさんはディピカが生み出したものだが、彼ら──あるいは彼女ら──にも意思はあるらしい。どういう原理となっているかはディピカのみぞ知るが、ともあれ今重要なのは『彼女の意思と無関係に触手は動く』の一点である。要するに勝手に動く肉ディルドも同然の異物を咥え込んだわけなので……
「ひぎゅっ♡ あ゛っ♡ ま、って……♡」
咄嗟に出た制止の声も、アシさん達に聞き入れてもらえるとは限らない。
ヌルヌルした触手は滑らかにディルドの膣内を往復し、不規則に配置された吸盤が膣襞をちゅうちゅうと吸いながら出たり入ったり。指や玩具では決して味わえない異物による
「あふっ、あっ♡ やばっ、またイき、そう……♡」
ほんの数往復でもう限界は近かった。ゾリゾリと削るように動かれる度、ディピカの視界は明滅して真っ白になりかける。頭の中は悩んでいた絵のことをすっかり忘却してピンク色の靄で満たされているようだ。
愛液をトロトロ零してシーツに淫猥な染みを映していく。時折ぷしゃりと飛沫が飛んではへりや床にまだら模様を残して、けれど満足せず触手の魔の手にされるがまま。そこへダメ押しとばかりに別の触手が乳首にまで伸びてきて、薄紅色の先っぽをキュッと摘まみ上げたのがトドメとなった。
「あ゛っ♡ もぅ、イっちゃう……!♡」
ディピカはあっさり二回目の頂きに連れて行かれ、開いた足の指先まで伸ばしながら法悦を愉しんでしまうのだった。
さっきシャワーを浴びたばかりの身体は既にうっすら汗ばみ始め、淫靡なフェロモンを醸し出しているかのよう。シーツの上に横たわる肢体を異性が見れば獣となって襲われても仕方ないエロチックさを放っている。もちろん、彼女の膣に今も刺さっているアシさんの異様に竦まなければ、の話だが。
「ふぅー……よし、あと一回。あと一回だけ思い切りイったらスッキリしそう。あんまり溺れてばっかじゃダメだよね、うん」
そしてまだ、ディピカ自身は満足してはいないようだった。指による慣らしで一回、アシさんを使った触手オナニーで一回、既に二回も絶頂を貪っているが満足するにはもう一押し。この次がもっと凄いと脳と身体が知っているから。
仰向けに横たわっていた少女絵師は身体を反転させると、四つん這いになって腰を高く持ち上げた。瑞々しく張りのある白い尻は触り心地も良さそうで、その中心で震えるピンク色の窄まりまできっちり美しい。もちろんアシさんの入ったままの秘部はそのままだった。
もしこの場に誰かいれば余すとこなく視姦される、いわば雄を誘う恥ずかしすぎる体勢。赤く染まったディピカの頬がさらに色濃くなって吐息に熱が籠り出す。
「さ、【アシ】さんたち……こっちの穴も犯してちょうだい」
片手でグッと割り拓いたのは秘すべき裏門の方だ。細やかな皺をヒクヒクさせる後孔へ触手の先端が柔らかくタッチし、愛液を塗りたくるように慣らしていく。前穴に入っている個体と比べれば遥かに細いが、本来排泄の為の穴であることを思えば十分な太さがあるだろう。
ディピカにとって二穴オナニーはこれが初めてではない。むしろ何度も良さを味わっているし、一時期は肛門メインの自慰にハマったことすらある。芸術家として未知なる刺激を求め、貪欲に刺激を求めた結果の開発済みアナルだ。
「んぐっ……おしりにも、つぷつぷって……きて、る……♡」
彼女自身も本音を言えば「お尻開発はちょっとやりすぎだったかなー……」と反省している節はあるが、それもアシさんによる二穴責めの快感の前では些細なことだ。
排泄孔を逆行して異物が入ってくる不快感に、肛門を擦られる微弱な気持ち良さが混じっていく。キツイ締め付けの
「んっ、ふぅ……♡ いいよ、もっと激しく、動いてちょうだい」
少女はさらに腰を高く持ち上げて、触手が肛門を弄りやすいように体勢を変えていく。じっくり丁寧に腸内を進んだ触手はS字結腸や子宮の裏をツンツンと刺激して、その度に可愛らしい嬌声が室内に木霊する。反射的に締まる膣口と尻穴がいっそう触手の凹凸を感じさせてまた気持ちよくなる無限ループだ。
グツグツと煮込まれていく鍋のように、体内に快感の熱が溜まっていく。とろりとした熾火のような快感を齎す尻穴の刺激が、激しい大火を想起させる膣内の快楽と合流してディピカの頭を白に染め上げて──最後の一押しを自分の口でおねだりした。
「思いっきり、引き抜いて……♡ やっ、あっ──あああ゛っっ♡」
ずぽっ♡ ずるるるるっ♡
前穴と後穴に潜り込んでいた触手たちが一斉に彼女の穴から抜け落ちていく。内部を埋めていた異形の熱と体積が一気に排出され、入口と出口を擦られる感覚は慣れていても腰が抜けるほどの衝撃。思い切り味わい尽くすディピカの腰はガクガク震えて、ぷしゃりと潮を吹きだしながらどうにか四つん這いを維持していた。
そして当然、アシさん達による責めは一回切りで終わらない。一度引き抜いたならまた潜り込むのが当然とばかりに奥へ進み、ディピカの許容ギリギリまで侵入したところでまたズルリと抜け出す。オナニーだが、自分では止められない責めにあっさりディピカは屈した。
「ダメ、またイく……っ! ちょ、ちょっと待って、ってば……ひゃあっ♡」
普段の落ち着いた様相は何処へやら、ディピカは二穴を貪るように犯され喘いだ。自分の意思と関係なしに嬌声が漏れて、イキ潮が溢れ、身体がビクビクと跳ね続ける。充血し赤く色づいた膣粘膜と肛門は大輪の花を想起させる美しさだが、それをディピカが気付くことは無い。
太さの違う触手が膣と肛門で連動して出入りを繰り返し、また次のタイミングでは交互に抜いて刺してを繰り返して、彼女を飽きさせない責めが継続される。ぐちゅぐちゅ、ぢゅぽぢゅぽと粘着質な水音が奏でられる度に女体は悶えて絶頂した。一度昇った高みから、ちっとも降りてこられない。
「はふっ、んあっ♡ あたま、バカになる……っ、も、何回、イってるのよアタシ……っ♡ ひぐっ♡」
あと一回のつもりがとんだ連続絶頂の嵐だ。けれどディピカの表情は苦しさよりも気持ち良さが勝っている。当然だ、そもそもこのオナニー自体初めじゃない以上、こうなるのは分かりきっていた。二穴をほじられ絶頂地獄に叩き落とされるのを『あと一回』とカウントしているのだから。
だから汚い声をあげてしまうのも、イきすぎて呼吸がおかしくなるのも、潮どころかお漏らしまで混じり出してるのも、情けない自分の姿に背徳的な興奮を抱くのも──全て彼女が求めたもので。生半可な刺激では物足りなくなった、芸術家としての
「んっ、ふぅ、あっ……そ、いえば……っ♡」
ふとディピカの脳裏を横切ったのは、こうしてオナニーしようと思い立った原因であるドクターの姿。珍しく"雄"を感じさせる格好に疼いてしまったのが始まりで。一度思い出したのを皮切りに、彼の端正な顔立ちやムッとした雄の香りまで鮮明に浮かび上がってしまって……マズいとディピカが気付いた時にはもう遅かった。
「イ゛ッ~~~~……っ、うぁ、あぁぁぁ……っ」
一際大きな絶頂の波に肢体が揺れる。びしゃびしゃと潮を吹き、四つん這いを維持できず身体全体がシーツの海に沈み込んだ。絶頂の余韻で動くことすらできないディピカは、豊かな胸部が自重で押し潰される息苦しさを感じながら動く事もままならない。
アシさん達も主人の満足を感じ取ったのか、先ほどまでの激しさと打って変わって慎重に穴から抜けていく。根本の方までべっとり付着した白濁は、どれだけ本気汁が分泌されたかこれ以上なく物語る。
「はぁ~~……すごかったけど、なんか悔しいかも」
アシさん達が抜けてぽっかり開いた雌穴を隠そうともせず、ディピカが呟いたのは文句であった。オナニー自体は満足した、もう大満足である。いつも以上に深い絶頂を味わった頭はこれ以上なく冴えている。
ただ、最後の最後に想起したドクターの素顔が強烈な絶頂のスパイスになったのが悔しかった。雄のフェロモンや汗の匂いを想像して完全にトリップしたのだ。恋愛感情がある訳では無いが、これでは彼を想って致したかのよう。非常に気持ち良い絶頂だっただけに、なんだか複雑な気分になるディピカだった。
それからいそいそと起き上がったディピカは、酷い有り様となったシーツから目を背けてスケッチブックを手に取った。ペンを手に取りサラサラと下書きを書き留めると、あーでもないこーでもないと頭を悩ませながら描き続けて、唐突にパタンとスケッチブックを閉じたのだった。
◇
「ドクターってさ、美しさは何だと思う?」
「また難しい質問をしてくるね……」
昨日の今日で罰ゲームのような暑さの執務室にまたやって来たディピカは、持ち込んだキャンパスから目を上げずに問いを投げてきた。ちょうどメールの返信が一段落した所だったので休憩がてら「そうだなぁ」と思索を巡らしてみる。
「それを見た時にハッとさせられるようなもの、とか? 景色でも人でも、美しいものは誰かを惹きつけるものだから」
「ありきたりだね、でも間違っては無いのかな。アタシも前にすごく美しい
「そうだったのか、初めて聞いたよ」
「うん、だって初めて話したからね」
しれっと彼女の根幹にまつわる話を聞かされながら、グーっと伸びをして仕事に戻る。視界の片隅では今もディピカが絵筆でキャンバスに何かを描いてる姿が見えた。ここに来た時「ドクターの仕事を題材にしてみたいと思うんだけど」とキャンパスを置かれた時は驚いたが、今のところ順調に進んでいるらしい。仕事してるだけの見どころのない場面の何が琴線に触れたかは分からない、ただちょっと気恥ずかしさはあった。
それにしても、ディピカはいったい何を描くつもりなのだろう。今のところ絵筆に含まれた色は青色しか見当たらない。この執務室に青色は無いのに、だ。不思議というか一抹の奇妙さを覚えるものの、まあ芸術家の夢想する"美"とは一般常識と異なるのもよくある事態である。
「万人が魅入る美しさを作るのは難しい、だけど一欠片でも近いものへ作品を昇華したい。アタシ達みたいな人種は結局、届かない理想を追いかけ続ける狂人なんだよね」
「ふむ……一度目指したものを諦めることはできないと」
「困ったことにね。しかも難儀なのがただ美しいだけじゃなくて、やっぱり心に響かないとダメなんだ。ましてや美しさそのものが、自分の持つ美しさを意識せず捨ててしまうなんて──美に対する冒涜だよ」
……残念ながら、私は芸術に明るい人間でないのでディピカの言葉を理解する事はできなかった。しかし彼女の言葉の中には何かに対する怒りと、そして譲れない一線の如き意思があるのは感じ取れた。きっとそれが、ディピカを絵描きたらしめる根幹なのだろう。
「ねぇ、ドクター。アンタも実は同じなんだよ?」
「同じ? 何がだい?」
急に言葉の矛先がこちらを向いた。アホっぽく復唱しかできない私へ、ディピカが妖しい笑みを浮かべた。眼鏡の奥にある瞳が爛々と輝き、昼間なのに暗がりに灯る誘蛾灯のようだ。失礼だが不気味さすら覚えて背筋に冷たいものが走った。
「アンタだって怪しいフードを外せば結構良い素材があるのに、まるで無頓着で気にしてない。そういうの、勿体ないってアタシは思う。しっかり自覚して磨くべきだよ」
「え、ああ……ありがとう? 褒められてるってことだよね」
「うん、そうだよ。だけど怒ってもいるんだけどね」
イマイチ要領を得ない回答だった。今までディピカとの会話で違和感を覚えた事は一度も無い。なのに今は、まるで眼前の女性が別の
「ほらドクター、この絵を見てよ。素材は良いのにあとちょっと足りないんだ……」
そしてディピカはキャンパスをこちらに向けると、青色の絵具しか使われてないはずの絵を私に見せつけて──
「おっと」
不意の立ち眩みに身体が揺れ、どうにか机に手を突いて支え直した。ここしばらく暑い中で仕事が続いていたから身体が疲れているのだろう。
……どうして立ち上がっていたのだっけ? そもそもいつ立ち上がった? まるで記憶に無い行動を思い出そうとして、そういえばもう一人この部屋にいたはずだと思い出す。
「そうだ、ディピカの絵を──」
「なーに、どうかしたの?」
「わっ」
呟いた言葉への返答は下から来た。思わず身じろぎして腰を机にぶつけてしまう。素肌が直接無機物に触れて非常に痛い。そこまで来てようやく、私は薄着どころか下着しか身に付けていないほぼ全裸となっていることに気が付いた。
「すごく驚いてるね、変なの」
「いや、そのいつの間に……というより、どうして私は脱いで」
「まあ細かいことはいいでしょ。ほら、もっとアンタの身体をよく見せてよ。絵を描くには緻密な観察はもちろん、五感で対象を感じるのだって重要なんだから」
などと言いながら、ディピカのヒンヤリした両手が足の上を這い上る。脛から始まり膝、太もも、さらに股間近くまでじっくり舐め回すような手つきだ。くすぐったさを感じるものの、何故か私は抵抗する気が湧かなかった。むしろディピカの妖しい手付きと瞳に魅了されたかのように、この急な触れ合いを受け入れ始めている始末。
「ふむふむ……見た目だけじゃなくて、中身も思ったよりガッチリしてるんだね」
「医療部に勧められて、最近はトレーニングもしてるから……」
「なるほど。触り心地もいいし肌も綺麗で、体臭も全然しない。女の子が羨ましがる身体だよ」
ペタペタとまさぐるように掌が動く。胸元は首回りにまで手が伸びたと思えば、手足の指先までじっくり観察されている。まるで自分が精巧な模型となり、愛好家にこれでもかと眺められているかのよう。早く仕事に戻らないといけない焦りが徐々に小さくなり、この奇妙な触れ合いにどことない満足感すら覚え始めていた。
真意は不明だし何故この状況になっているかもまるで分からない。だがディピカはあくまで絵描きとして身体を調べているようだから、とりあえず被写体として終わるまで大人しくしていよう──と考え始めた矢先に、ディピカの手は男の急所へと伸びていた。
「あれ、ここが硬くなってる。もしかしてドクター、アタシに触られて興奮したんだ?」
「あー、その……すまない。女性に触られてるから反射でつい」
仕方ないだろう、良い匂いのする美人がこの至近距離で肌をまさぐっているのだ。これで勃起しない方が男として失礼だ、と頭の中で弁明しつつ、気恥ずかしさでいっぱいだった。
例えるなら神聖な儀式を私欲でぶち壊したような罪悪感。この異常な状況に文句を言う資格だってあるはずだが、それよりもディピカの邪魔をしたことに申し訳なさを覚える自分がいた。
「ううん、むしろ好都合だよ。ドクターの全部を見たかったからね……」
だがディピカは気にせず笑うと、指先でそっと一物を撫ぜた。下着越しに細い指先が触れるほんの一撫でに背筋へゾクゾクした電流が走る。僅かな接触だけで肉棒はもう一回り膨らんで、自分の雄らしさを必死に絵描きへアピールした。
「ディピカ──」
「ドクターの全部、アタシに見せてよ。お礼にアタシの身体も見ていいからさ」
衣擦れの音と共に、スルリとディピカのワンピースが床へ落ちた。その下を着飾るのは白い肌によく映える黒の下着だ。妖しい雰囲気によく似合った妖艶なブラとショーツにゴクリと喉を鳴らしてしまう。想像よりも肉付きの良い身体は十分異性を誘うに適した女体であった。
それからディピカは私の下着に手を掛けると、ズルリと躊躇なく脱がせてしまう。すっかり膨らんだ一物が彼女の眼前にさらけ出された。
「ほら、ドクターのここも……って、へぇ、随分大きいんだね」
「そ、そうなのか。私も他人と比べたことは無いけど……」
「アタシだって初めてみたよ。でも本で見たよりずっと大きいし……何よりすっごくグロテスクだ。ドクターの綺麗な身体にこんなのが着いてるだなんて、アンバランスな生き物だね」
指先でツンツンと亀頭に触れられ、「うっ」と情けない声が漏れた。異常な状況なのに肉体は性欲に素直だ。ディピカという美人に愚息を弄られ、眺められていることに快感を覚えてしまっている。
止めてくれと口は言おうとして、しかし言葉が出ない。それを良いことにディピカは先っぽからカリ首、根本に至るまでじっくり観察して触れてくる。冷たい指先が繊細に肉幹の上を走る度にうっすら快感が走ってしまう。
「うっ、ぐ……ディピカ、それは」
「気持ちいいの? ドクターでも性行為はやっぱり感じちゃうんだね。でも仕方ないよ、生命なら当然生殖の機会は逃さないもの」
ディピカは下を向いているはずなのに、なぜか耳元から囁きが聞こえてくる。
意味の分からない事象に頭は混乱し続けてるのに、快感だけは素直に脳へ伝わってきた。
「雄が雌を組み敷いて、次代に種を繋げてく。そのためにこんなに硬くて立派なおちんちんがドクターに付いてるなら──醜さこそが機能美足りうるのかな?」
などと呟いて一人納得してるディピカに構っている余裕はない。彼女の指は先端から根本までじっくり扱くように動き始め、さらに亀頭をチロチロと舌で舐め始めた。味わうまでが観察の一種とでも言うかのように、先走りを零すペニスを嫌そうな素振りも見せず舐め上げる。
それがまた気持ち良くて堪らない。他人の指が裏筋を走る感覚も、舌先でペロペロと亀頭にキスを落とされるのも刺激が強すぎる。緩い刺激でも気を抜けば射精しそうになる中、気合で暴発だけは我慢していたのだが、
「うん、ドクターの形は大体分かったかな。後は……よいしょっと」
「デ、ディピカ!? づっ、ぐぅ……!」
彼女の膣内に一物が迎え入れられた瞬間、いとも簡単に堤防は決壊した。
ショーツのクロッチ部分をずらし、自分から男根を秘部で咥え込んだディピカ。うねる膣襞がグニグニと一物を包み込みながら歓迎し、あまりに複雑かつぷりぷりした内部に歓待された結果、即座に射精へと導かれてしまった。極上の女体に包まれながらの射精は意識が飛びそうなほど気持ちいい。
あまりに情けない射精をした一方、前戯も無しにペニスを受け入れたディピカに苦しそうな様子は無かった。むしろ上気した頬は結合したことへの興奮を如実に表しているほどで。呆気なく吐精したこちらを嘲るでもなく「これが射精なんだ……」と興味深そうな様子である。
「アンタの熱がアタシのお腹に広がってる……もし今日のアタシが危険日だったら、ドクターとの子供を孕んでたかもしれないのかな」
「も、もしそうなったら──」
言おうとしたその先を、ディピカは指先でそっと制した。赤いフレームの眼鏡越しに視線が交わる。
「それより、アタシはもう少し性行為を楽しみたいな。世の芸術家が耽ってやまない秘め事、美しい生命を生み出すための最初の一歩、あるいはこれ自体が一種の美と呼べるものなのか──」
確かめてみたいから、もっと交わってみない?
耳元で妖しく囁かれてしまったら、もう理性の歯止めなど利くはずも無かった。
この状況への疑問や、ディピカと交わることへの不自然さが頭から抜け落ちる。ただ彼女を組み敷いて、自分の種をその胎へぶちまけて、あわよくば孕ませたい。そういう暴力的な欲求に導かれるまま、ディピカを執務机に押し倒した。乱暴にブラを剥ぎ取り、ふるりと美乳が揺れる様を見ながら腰を掴む。
「いつも深い黒で隠してるドクターが、自分の色でアタシを染め上げようとする……ふふ、意外と興奮してくるね」
「ディピカ……っ!」
「いいよ、アタシのことをちゃんと見て……もっとその色で染め上げてみせてよ」
誘い文句に対して、激しく腰を振る事で答えとした。
ばちゅん! と荒々しい水音が執務室に響いた。思えばすんなり異物を受け入れた事ともあり、ディピカは最初から準備万端だったらしい。なら遠慮はいらないとばかりにピストン運動を開始する。暑い室内に、熱い吐息が僅かに響いて。
ばちゅん! バチン! ぐちゅ! どちゅん!
「やっ、あぅ♡ すご、ケダモノみたい……アンタの中に、こんな野生みたいな乱暴さが、っ♡ あるなんて」
「君がそんな風に! 誘うからっ!」
箍の外れた勢いのまま、性欲が命じるところを目指して律動を繰り返す。
粘ついた水音はディピカの愛液で、そこにお互いの汗が交じり合って床へと零れていく。この熱気の中で性行為だなんて正気じゃない。下手をすれば死んでしまう。本能が警鐘を鳴らし続けているのに止まれない。むしろ危険だからこそ、生殖本能がいっそう燃え上ると言わんばかりに股間はいきり勃っていた。
しかも、一突きごとにディピカが可愛い反応を見せてくれるのだ。絵描きらしく不思議な価値観と、どこか空恐ろしい雰囲気を漂わせていたはずの彼女でも、雄に性器をねじ込まれてしまえばただの善がり狂う雌になってしまう。知的さの象徴たる眼鏡でも隠し切れない淫蕩さが堪らなくそそられる。
「あっ♡ んっ♡ ふぅ、んあっ♡ ちょ、激しすぎ、だって……♡」
文句を言われても聞く耳持たない。そもそも誘ってきたのはディピカの方だからと言い訳して犯す動きを続行した。みっちり詰まった膣襞を掻き分け、子宮口を亀頭で乱暴に突き上げて、Gスポットをグリグリ押して潮を吹かせて。神秘的な女性を俗へと落とす作業に没頭する。
「そ、そっちがその気なら……アタシにだって考えがあるんだからね」
「うおっ!?」
にゅるり、そんな擬音と共に竿の根本に巻き付いてきたのは怪しい触手ことアシさんだった。射精を強制的に我慢させるように根本を締め上げ、ディピカの柔らかくもよく締まる膣内とは別種の刺激を与えてくる。
さらに責め手はそれだけに留まらず膣内の裏側、お尻側に位置する膣壁の奥にナニカを感じた。直腸の中で蠢き腸壁越しに一物を撫ぜ刺激しようとしてくるそれは、よく見れば彼女のお尻から侵入したアシさんであった。
「君はっ! アナルまで開発済みなのか!?」
「仕方ない、って……だって気になったんだものっ、あうっ♡」
あまりにも淫乱にすぎる、淫蕩にすぎる。あっさり尻穴を使った二穴責めを自分から受け入れて、表情はちっとも苦しそうでない。むしろ気持ち良さに蕩け切った普段と違う顔色を覗かせている有様で、ディピカがどれだけアシさんによる二穴責めを重ねてきたか否が応でも分かってしまう。
だったらもう、組み伏せて自分のものだとマーキングするしかないではないか。美しさとか、生殖のための機能美だとか、あるいは彼女の芸術の為だとか──そんなお為ごかしは必要ない。ただ己の欲求に従って、普段のストレスをぶつけるようにパンパンと音を立てて腰を振った。
「あっ♡ あ゛ぅっ♡ ま、た、はげしっ、く……♡」
「お尻からも精液搾り取ろうとするくせに、根本を締めて射精させないとか……そんなに長く楽しみたいのか!」
理不尽な、怒りというにも稚拙な感情を思うままにぶつけていく。普段なら絶対にしない乱暴で感情任せな、相手のことを思いやらない行為。裸の自分をそのまま見せつけ、受け入れてもらおうとする行為は一種の解放感を伴っていた。
ギュッと締まる膣内の感触はそのまま、直腸にも触手が埋まったことでいっそうきつくなった膣襞が肉竿に絡みついて離れない。一突きするごとにぎゅーっと絡まり、抜こうとすれば哀願するように密着して『ちゅぽんっ♡』と淫靡な音を奏でる。よく見れば肛門でも触手は前後に動いており、さらに両胸すら触手の先端に苛められていて。
「くそっ、もう
「ふ、ふふっ、教えてちょうだい、アンタの生の色を……♡」
その言葉に誘われるまま、一際深くまで亀頭を突きこんだ。気が付けば竿の根本に巻き付いていた触手は居なくなり、精液をせき止めるものは何もない。ならばと抑え込まれた雄の欲求は一気に銃口へと殺到して──
びゅくっ♡ びゅるるるるるっ♡ びゅーっ!
「ひゃっ、ああぁっ♡ すご、これが本当の
「ふー……ふー……」
精液を吐き出すと同時にいっそう締まった膣内に導かれるまま、一滴残らずの勢いでディピカの子宮目掛けて射精していく。自分の絶頂と同時に彼女も一緒に気持ちよくなってくれたことに満足感を覚え、荒い息を吐いて呼吸を整える。その間も絵描きは陶然とした表情で、自分のお腹を擦りながら愉快そうに笑っていた。
◇
「ドクター、大丈夫? こんな所で寝落ちしたら熱中症で運ばれちゃうよ?」
「……はっ!? デ、ディピカ? あれ、私はいったい……」
「もう、寝落ちした記憶も無いの? 疲れすぎてるなら休んだ方が良いと思うよ」
気が付いた時、私は執務机の上に突っ伏して眠っていた。身体を起こせばもちろん服は着ているし、ディピカだっていつも通りの装いだ。大慌てで時計を見れば覚えてる時間から十分程度しか経っていない。これはどういうことだ?
「ディピカ、これはどういう……私たちはさっきまで……」
「さっきまで? ごめんね、何の話か分からないけどアンタは私の絵を見ようとした直前に寝ちゃったから。起こそうか迷ったけど、やっぱ起こした方が安全かなって」
「あ、ああ……そうだったのか、すまない」
話が噛み合わない。さっきまで私は我も忘れてディピカと交わっていて、それは十分程度じゃとても足りない時間だったはず。だが明らかにディピカは自覚が無いようだし、私の身体も二回は射精した気怠さを感じない。本当にあの体験のすべてが夢幻であったようだ。
「それよりほら、今度こそちゃんと見なよ。アンタをモチーフに描いたんだから、まずは見てもらうのが筋だと思うから」
釈然としない面持ちのまま、促されてディピカのキャンパスへ目をやるとそこには、
「これは私、か? しかも何で裸?」
全裸で立派にポーズを決める、どこからどう見ても私の絵があった。
青色しか使って無かったように思えるのに、その描写は精緻かつ大胆で、しかも不自然のない色使い。実は私が気付かぬ内に様々な絵の具を使い分けていたのだろうか。
「ほら、裸婦画ってあるでしょう、アレの男性版だよ。でもドクターも罪だよね、いつも隠してるフードの下にこんな肉体美を隠してるんだから」
「ま、まあ最近はトレーニングも頑張ってはいるが……」
絵そのものは素晴らしい。だがあからさまに自分の裸を題材にされるのはさすがに恥ずかしかった。しかもじっくり観察すればするほど、筋肉の付き方からほくろの位置まで完璧に再現されているのが見て取れる。オペレーター達がディピカの絵を絶賛するのも頷ける出来栄えだ。
「……アレ、でもどうしてこんなに正確な描写が出来てるんだ? 上はともかく下を見せた覚えは無いが」
「ふふっ、それは秘密。想像力は時に現実にも勝るスパイスになるんだ……ホントだよ?」
最後にそんな怪しい言葉を言い残して、ディピカはさっさと立ち去ってしまうのだった。
──後日この絵画の情報がどこかで漏れ、私も含めた壮絶な争奪戦がロドスで繰り広げられたのだが、それはまた別の話だ。
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