純性癖ナイツ 作:ひかりねこ
>テキサスとの怠惰な同棲えっちをください
>テキサスの母性が垣間見える瞬間とかがあると助かります。加えて、チェリーニアと本名呼びであるともっと嬉しいです。あとゴムありからの最後はゴムなしフィニッシュだととても良いです
ドクターと二人でシラクーザにやって来たテキサスが数日間たっぷり交わる話です。
怠惰はたぶん爛れたの意味だろうと解釈しました。爛れ切った肉体関係が私は大好きです(自分語り)
シラクーザの雨季は長く、じっとりした空気が蔓延する。
湿度の高い空気が肌に纏わりつき、蒸し暑さからかいた汗が中々揮発してくれない。ただでさえ淀んだ空気はこのうえ不快感を増幅させ、空を覆う暗雲さながらのどんよりした心持が地を行く人々を支配するのだ。
「ここの雨は随分と重苦しいな……」
安アパートの二階に位置する一室で、ドクターは窓を見下ろしながら呟いた。雨が屋根を叩く音がうるさいほど響く。眼下には傘を差して足早に歩く人影がまばらに見え、誰も彼も自分の尻尾が濡れるのを嫌ってか、抱きかかえるように身体へ回している。ループスは尻尾が濡れるのが嫌なのだなと、今更ながら彼は思い出した。
「ふっ、もう嫌になったか? ロドスへ帰るならば構わないが」
そして、アンニュイに外を眺めるドクターを揶揄ったのは、黒髪にオレンジ色の瞳を持つループスの女性だ。シラクーザにおいてその容貌が示す人物──正確には"一族"はただ一つしかない。
かつてクルビアで栄華を誇り、最後はシラクーザの支配者に滅ぼされたテキサスの生き残り。彼女は今、アパートの小さなキッチンに立ち、エプロンを付けパスタを作っている真っ最中だった。
「いやいや、雨が嫌で逃げ帰ったなんて話をしたら、しばらくロドスは話題の種に困らないだろう。私だってせっかくの休暇旅行を三日でギブアップするつもりはないよ」
「そうか、なら別にいい。契約通り最後まで付き合うつもりだが、気が変わったら言ってくれ」
ぶっきらぼうで淡泊な物言いだった。ともすれば近寄りがたい雰囲気すら与える態度だったが、別に他意は無いことをドクターは知っている。テキサスという女性は無口だが根は優しい、でなければわざわざドクターのために昼食を作ってはくれないだろう。
──ドクターは現在、十日間の長期休暇兼シラクーザ観光旅行の真っ最中だ。
切っ掛け、と呼べるほどの劇的な理由はない。単にドクターとて人の子だから、激務を前にまとまった休みが欲しいと感じる時もあり、たまたま今回は羽を伸ばしたい気分だった。ちょうど仕事が一段落したタイミングを窺って休暇申請を出し、ケルシー他主要なロドスメンバーに受理された形となる。
行先としてシラクーザが選ばれたのは偶然だ。ロドスが例の新しい移動都市──ヌオバ・ウォルシーニの近くで補給作業をしていたから、せっかくならとお邪魔した形となる。これまた偶然にもペンギン急便のテキサスがロドスに居て、シラクーザの情勢に詳しいならと運送と護衛を頼んでみたら、あっさり引き受けてくれたのも大きい。
いや……ドクターとテキサスの関係を鑑みれば、彼女が簡単に首を縦に振ったのは当然と言えるかもしれなかった。
「そろそろできるぞ。ドクター、食器をテーブルへ運んでおいてくれ」
「ああ、分かった」
挽肉の焼けた香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。大皿に盛りつけられていくボロネーゼはシンプルながらも美味しそうで、思わずドクターはゴクリと喉を鳴らしてしまった。早く食べたい気持ちを抑えてフォークとコップを並べ、今か今かと待ちわびる。
「待たせたな、食べよう」
テーブルの上へ置かれた大皿には、たっぷり二人分のボロネーゼがまとめて乗っている。まさかこれが一人分という訳でも、あるいは同じ皿からそれぞれ取り分けるスタイルでもあるまい。不可解な装い方に首を傾げるドクターを横目に、エプロンを脱いだテキサスが寄ってくる。
「えっと……これは一体?」
「溜まっているのだろう?」
傍から見れば脈絡のない会話だった。質問の答えになっていないが、テキサスの視線の先には確かに膨らんだドクターの股間がある。彼が性的な欲求不満を抱えているのは一目瞭然で、それ自体は今更隠すような間柄でもなかった。
テキサスの細い指がズボンのチャックを下ろし、硬く屹立した一物を取り出した。剣を握っているとは思えない細指が裏筋を撫でると気持ちよさそうに跳ね、涙に似た先走りが溢れだす。とても今から食事とは思えない淫靡な光景。当然のように
「まあ、そうだけど……えっ、もしかして」
「私もちょうど昂っていたから、三大欲求の二つをまとめて満たすとしよう」
普段着である白黒を基調としたペンギン急便の制服をテキサスはスルリとはだけさせた。前のボタンは開けて藍色のお洒落なブラを見せつけ、ボトムスはストッキングごとショーツを下ろしてしまう。微かに聞こえた粘ついた音は既に彼女が股を濡らしている証拠だ。
そのまま、テキサスはごく自然な様子でドクターを椅子代わりに腰かけると、己の膣内へ一物を沈めていくのだった。
ぐぷぷぷぷっ……♡
「んっ……♡ ふー……♡ やはり大きいな」
「うぁ、やばいな、
細身でしなやかで、かつ鍛えられた肉体美を持つテキサスの膣内は非常によく締まる。肉竿を握り潰す気なのか疑うほど強烈な膣圧は痛みすら伴いそうだが、ゴム越しでも柔らかい膣襞がぴっちり絡みつくおかげで快感しか覚えない。ちょうど獣が甘噛みをして甘える様子を彷彿とさせる極上の具合だった。
子供を膝に乗せる要領でテキサスが座るものだから、ドクターの視界には彼女の後頭部しか映らない。艶やかな黒髪とループスの耳、シャンプーの良い香りはパスタの香りと合わせて、これでもかと性欲と食欲を刺激する。もちろん、膣内で甘責めされる一物の方は言うに及ばずだ。
二人はしばらく挿入したままの姿勢で停止する。ドクターは即座に射精しないよう必死で我慢し、テキサスは入れただけで軽くイったことを隠しもせず身体を震わせていた。
「慣れてきた、な……♡ ドクター、食べよう」
「あっ、ああ……」
唐突な性行為にすっかり忘れていたが、あくまで今はお昼時でこれから食事というタイミング。爛れた肉体関係に耽るのも良いが、せっかく作ってくれた料理はありがたく味わうべきだろう。
結合したまま皿へと手を伸ばすドクターだが、先にテキサスが皿とフォークを手に取った。クルクルとフォークへパスタを巻きつけ一口サイズにし、ドクターの口元へと運んでいく。
「食べづらいだろう? ほら、食べさせてやろう」
「すまないね、手間を掛けさせる」
「気にするな、私が乗っているせいだからな」
それならと、あーんと広げられた口へパスタが押し込まれた。よく焼き目を付けた挽肉が中心となる旨味が口いっぱいに広がって、頬もほころぶ美味しさだ。本人が「あまり自炊はする方じゃない」と予防線を張っていたのは何だったのかとドクターは思ってしまう。
「どうだろう、美味いか?」
「すごく美味しいよ。テキサスの手料理を食べられるなんて光栄だ」
「大袈裟だな。業務外の範疇だが、これくらいは苦でもない」
言外に「いつでも手料理を振舞っていい」と語る姿は、イチャイチャする恋人じみたやり取りだった。ドクターは顔を赤くしてしまったが、テキサスは普段とあまり変わらない様子だ。これくらいの行為は何てこと無いとばかりにまたパスタを巻き取り、今度は自分の口へ運んでいく。わざわざフォークを使い分けてなどいなかった。
「あむ……ん、悪くないか。これならシラクーザ人に出しても怒られはしないな」
「あー、彼らは味にうるさいのだったか」
「私はクルビアの影響もあって軽度だが、多くのシラクーザ人は故郷の味に妥協を許さない」
「言われてみれば、一回食堂で騒ぎがあったな……」
ロドスへやって来た巨大ファミリーの元若旦那は、決して恐ろしい人物ではないが料理に関しては一つのアレンジも妥協も許さない厳格さを垣間見せてロドスキッチンを震え上がらせた。であればテキサスもまた、シラクーザ人の気質を少しくらい受け継いでいるのかもしれなかった。
シラクーザにおいて、"テキサス"の名が持つ意味は非常に重い。ましてや新都市を巡る闘争で中心人物となったテキサスことチェリーニア・テキサスはオペラの題材にされる程の人物だ。それだけの人物が手料理を振舞ってくれ、しかも身体まで許してくれる優越感は大いにドクターを満足させていた。
「ほら、もっと食べておけ」
「ありがとう」
「礼は不要だ」
パクパクと、テキサスに手ずから食べさせてもらう甘い昼食は続いていく。胃袋が満足していく一方で結合部は挿入したままほとんど動きがない。じっくり互いの熱を伝えあいながら、膣内がしっとり濡れていくのに任せるままだ。
食欲が満たされたことで段々と性欲の割合が大きくなってくる。極上の雌ループスが膝の上で膣を明け渡しているのに、まったくアプローチしないなど言語道断。弱火で煮込まれるような刺激も悪くないがガツンと快楽を貪りたい気分が勝り出す。
「テキサス、その……動いていいかな?」
「……好きにしろ」
返答は彼女らしい端的なもの。だけど『早く動いて気持ちよくしてくれ』という本音が短い言葉に詰まっていた。自分だけが求めているのではないと嬉しくなったドクターは、ゆっくりと腰を揺すり始めた。
ぬちゅ、ぐちゅ……♡ 湿った音が陰部から聞こえてくる。まだ食べている最中だから激しい動きはできないが、挿入された肉棒を小刻みに動かして僅かでも快感を拾い上げにいく。
「んっ……あっ♡ ドクター……♡」
テキサスの端正な顔が朱に染まり、セックスで気持ちよくなっているとアピールする。これから始まる性行為へと集中するため、ボロネーゼの皿とフォークは落とす前にテーブルへ置かれた。彼女自身も腰を揺すってドクターの硬いものを堪能しようと動き出す。
激しい突き上げはなかった。テキサスを背後から抱き留めたドクターが主導となり、ゆったり腰を使って肉槍と膣を擦る緩やかな刺激が続いていく。ガタガタと椅子が揺れて垂れ落ちた愛液が伝っていくが、どちらも気にする様子はない。腹を満たしたのだから、次は性欲を満たす番なのだ。
「あっ、っ♡ んっ……♡ 気持ち、いい……♡」
「自分から腰を振って、そんなに良いのかい?」
「んくっ、ふー……♡ ドクターとの行為は、いつも好きだ……♡」
そう言いながら振り向いたテキサスの瞳は快感に蕩け、甘えるような表情を惜しげもなく晒していた。いつもクールでカッコよく、時にはドクターを甘やかしてくれる彼女が見せる無防備な様子にドクターの方も興奮が止まらない。抑えていたはずのピストン運動が徐々に激しくなり、亀頭が子宮口をノックし始める。
とん、とん、とん……♡ とちゅん♡ ぐりっ……♡
「んあっ♡ 待て、そこは弱いから……♡」
などと申告されて止まるはずもなく、むしろ奥の弱点をゴリゴリ削ってあられもない嬌声をあげさせる。雨の日の昼下がり、まだ料理の良い香りが漂うリビングに艶やかな声が幾度となく響き渡った。飛沫と共に淫らな雌の匂いまで充溢しはじめ、頭をクラクラさせる媚香が性行為を加速させていく。
「テキサス……!」
「ドクター……♡」
どちらともなく舌を伸ばして睦ませていく。何度繰り返したか分からないディープキス、今回はさっきまで食べていたボロネーゼの味がした。夢中になって味わいながらキスの快楽へと没頭する。
大胆にドクターが腰を突き上げると、ごりゅ♡ と膣の最奥が抉られた。
腰を回すように動かすと焦らされた膣襞がゴムで覆われた竿へ必死に手を伸ばす。
少し休憩とドクターの動きが止まるとテキサスの方が我慢できずに腰を揺すり、ゆったりと快楽を貪り続けた。
「ぷはっ……♡ 気持ちいい、な……♡」
「ああ、私もだよ」
「まだ
「だいぶギリギリだけどすぐ
「遠慮しなくていい、まだ日はある。好きな時に付き合うさ」
「ありがとう、なら遠慮なく」
それならテキサスの優しさに甘えてしまおうと、ドクターはより強く腰を突き上げ始めた。空いた両手も胸へと這わせてブラの下へと滑り込ませる。着瘦せして小さく見えるが、テキサスの双丘は立派なサイズだ。手の平で覆えないサイズを揉み解して楽しみながら、時折乳首を引っ張って膣が締まるのを楽しんだ。
きゅうきゅうと吸い付く膣内はよく潤み、その内部で散々温められた肉槍はすっかり肥大している。亀頭が震え、精液が尿道を昇ってくる。既に我慢を止めたドクターは欲望に身を任せるまま、最後の仕上げに子宮口を思い切り叩いたのだった。
「──
「あっ……んくっ、んん……っ♡」
びゅるりと飛び出した精子がゴムに捕らえられ、白濁が勢いよく袋へと溜まっていく。ビクビク振動する一物を労わるように膣内は震え、膣襞が絡みつき、一緒に甘イキを堪能する。
直接種蒔きされてないが、テキサスはその熱さをゴム越しでも感じ取れた。もしこの熱い欲望の奔流を子宮で直に飲み干したらどうなってしまうのか──想像するだけでループスの身体が昂ぶり、耳と尻尾の毛がピンと逆立った。甘美な想像だが、それを我慢できる理性は残っている。
「ふー……思い切り射精してしまったよ。とても気持ち良かった」
「どういたしまして。ほら、残りも食べよう」
まだ少し残っているボロネーゼを手に取り、ドクターへと差し出すテキサス。既に冷めてしまっていたが、性的欲求を満たしてから食べさせてもらう味はいっそう美味しく感じられてしまうのだった。
◇
ドクターがシラクーザの観光旅行をするにあたり、真っ先に考慮されたのは誰を護衛に付けるかだ。
ファミリー構成員の小競り合いなど日常茶飯事、裏路地から死体が発見されない日の方が珍しい治安の悪さを持つのだから、ひ弱で目立つドクターを一人で行かせる訳にはいかない。さりとて個人的な旅行に大人数で付いていくのも本末転倒で、その際に候補に挙がったのがテキサスだった。
ペンギン急便の一社員として働く彼女だが、実力は折り紙付きでロドスオペレーター登録もしてある。さらにシラクーザの情勢にも詳しくドクターとの付き合いも長いとなれば、まさにうってつけの人選だろう。実際、護衛の話が出た際も無口なループスは二つ返事で頷いている。
結局、テキサスは『ドクターのロドス・シラクーザ間の護送および現地での食料配達』という名目で契約を交わしてシラクーザへ共に来た。十日間という比較的短期の契約で、かつ業務として正式に報酬金が出る以上、
なのだが、しかし。実はドクターとテキサスは深い間柄にあり、まさかシラクーザの滞在先で爛れた性生活を送る気だったとは、誰も想像だにしなかったことだろう。
「んあ……もう朝か……」
──シラクーザへやって来てから五日目の朝。
この日は数日ぶりに雨脚が弱まっており、羽獣の囀りが何処からか聞こえる穏やかな夜明けだった。日光を浴びて目が覚めたドクターだが、すぐに股間の違和感に気が付く。朝勃ちした一物が、ぬるついた筒に覆われているような感触。視線を下にやればすぐに理由は判明した。
「テキサス……おはよう」
「んむっ、じゅるっ……♡ おはよ、ドクター。あむっ……♡」
違和感の原因であるテキサスは、ドクターの足元に蹲っておはようフェラの真っ最中だった。黒髪をかき上げながら手短に挨拶し、むしゃぶり付くように一物を咥えだす。よく見れば格好はドクターのシャツを一枚羽織っただけで下着すら付けておらず、昨晩の情事の痕が色濃く残った有り様だ。
テキサスの唾液が満遍なく肉竿へと塗りたくられ、朝日に照らされヌラヌラと妖しく光った。咥えるだけでも顎が疲れるレベルのサイズだったが、彼女は慣れた様子で咥え込んだり、あるいは舌先で裏筋を舐めるなどして刺激を続けた。
じゅるっ、じゅぽっ♡
ぢゅろろろ~……♡
まるで飴を舐めていると錯覚するほど積極的に、かつ美味しそうに口内で吸い上げる。
溢れる先走りを舌先で受けとめ、昨夜の精液と愛液がこびりついた一物を丹念に掃除しながら、朝一の濃厚な精液を搾り出そうと責め立てる。
ぐぽっ♡ じゅむっ♡ れろぉ……♡
しこしこ♡ かりっ……♡ じゅぽ、じゅるる……♡
「テキサス、それ……っ」
「はむっ、ふっ、
「うぐっ……!」
フェラの気持ち良さを訴えるドクターだったが、さらなる追い打ちとばかりに亀頭をしゃぶりながら喋られる。うねる舌先が言葉に合わせてチロチロと鈴口を撫で、吐息によって敏感な部分が嬲られる。
その間にも根本は輪を作った指で扱くように刺激され、時折歯で甘噛みして違う感触をアクセントに与えたり。ドクターの好みをよく知り尽くした、何度も身体を重ねている故の工夫が随所に凝らされている。
「もう出せそうか? 遠慮なく射精するといい」
積極的な朝勃ち処理ご奉仕フェラは強烈で、ドクターは既に腰砕けになりかけていた。相手が限界間際なのを察知したテキサスはぐっぽり根本まで咥え込み、両手でドクターの腰をがっしりホールドする。精液を一滴たりとも逃がさないと表明する飲み込みぶりは最後の一押しに十分だった。
びゅくっ、びゅるるる~……♡♡
「んぐっ……! あむっ、ごくっ……♡」
熱い精子の濁流がテキサスの喉を伝って流れ落ちる。呼吸すら封じられた苦しく不快な飲精のはずだが、どこか嬉しそうに飲んでいるのは気のせいじゃないだろう。
昨晩も一度ならず二度三度と吐精したはずなのだが、一晩寝ただけでドクターの精力はすっかり回復したようだ。信じられない量の精液が生産されては注ぎ込まれ、少しでもテキサスの中を染め上げるべく侵攻する。
「ごくっ、じゅるっ……♡ ぷはっ……まったく、君は途轍もない絶倫だな。危うく溺れ死ぬかと思った」
ようやく射精が終わり一滴残さず搾り取られた肉棒が口内から解放された。テキサスの唾液が糸のように伸び、朝日に輝いて淫靡なデコレーションの仕上げをする。
「……間抜けな死に方をせず良かった、と言うべきなのだろうか?」
「誰のせいだ。ドクターでなければ股間のこれを斬り落とすところだ」
「すまない、失言だったか」
「別に怒ってはいない」
半分本音であり、半分嘘なのだろう。ムスッとしたテキサスは頬を膨らませて何かを待っている様子だ。
きっといつもの仕上げを待っているのだろうと察したドクターは手を伸ばした。頭と両耳を撫で、白い喉を慎重に擦る。気持ちよさそうにオレンジ色の瞳が細められた。
「今朝もありがとう、非常に気持ち良かったよ。またよろしく頼むね」
「ん……もう少し撫でてくれたら、考えてやろう」
「分かった、満足するまで付き合うよ」
その後、テキサスがふやけきるまで三十分も撫で続けたドクターは、痛む両腕を擦りながら起き上がる羽目になるのだった。
◇
肉体関係を持ち始めた切っ掛けは、いわゆる『発情の解消』だった。
ループス含め一部の種族は発情期が存在し、特定期間中は精力的に交わることで子作りをする。さりとてその気の無い者まで発情に振り回されるのは好ましくなく、現代では抑制薬を用いて抑え込むのが主流だ。
ただ、テキサスがドクターと交わった際はタイミング悪く抑制薬が切れていたようで……なし崩し的に関係を持ってしまった二人だが、互いを憎からず思っていたのが功を奏して今の関係に至っている。
恋人ではない。しかし気軽に性交渉を行えるほどの情を抱いているのも確か。
故にこれは後腐れのないさっぱりした関係性で、悪い言い方をすればセフレになるのだろう。ベタベタし過ぎず適度な距離で、気楽な間柄は居心地の良さを維持するのに一役買っていた。いつでも止められる関係は、裏を返せば円満な関係性を持続している証明なのだから。
「ヌオバ・ウォルシーニは武器の個人所有を許さずファミリーの介入も無い街ではあるが、安全のためあまり私の傍から離れないでくれ」
「ああ、了解した。すまないが頼むよ」
激しいおはようフェラの後、朝食を摂り着替えたドクター達は新都市の街並みを散策していた。朝から続く曇り空はいつ雨が激しくなってもおかしくないが、現状では小雨程度だ。ドクターは傘を差しているが、テキサスは護衛の為に手ぶらだった。
「任せてくれ、身辺警護も仕事の内だ」
そう語るテキサスの服装はいつもと異なり黒と青を基調とした礼服の装いになっている。以前シラクーザへ帰還した際に若旦那から貰った代物だ。
在りし日のテキサス一族を象徴する礼服はやはりと言うか、ファミリーの気配をどことなく感じさせる。そのため本人はあまりこの服に袖を通すのを好んでいないが、ドクターから見ればよく似合っているのも事実な訳で。
「君のその恰好はとてもカッコイイな。いつにも増してピシッと決まっている」
「……そう言われるのは複雑だな。私はもう、シラクーザで付いて回るテキサスファミリーの話にうんざりしているんだが」
「あまり褒めない方が良かったかな? 私はどんな君でも魅力的だと思うが」
横断歩道に差し掛かった。信号が赤なので大人しく待機する。
幾台もの車が忙しなく眼前を通過し、エンジン音と水音を立てて去っていく。
「いや……ドクターに褒めてもらえるのは嬉しい。価値など無いと思っていたこの服に、たった今少しばかり愛着が湧いた」
「なら良かった」
信号が青になった。二人並んで白線の上を歩くが、すれ違いざまに何度も視線を感じてドクターは居心地が悪そうだ。
「私だけ傘を差して、女性の君が雨に打たれている絵面はよくないか。ごもっともだね」
「気にするな、好きに思わせておけばいい。どうせこの服も濡れていいから選んだ程度のものだ」
「あっ、そういう理由だったんだ」
「……昨日散々付けられた痕を、隠す意味もあるがな」
瞬間、二人の脳内で昨夜の情事が生々しく蘇る。
何度も体位を変えながら交わって、その度にドクターはキスマークをテキサスへ落とした。首筋から足の先、割れ目や背中や太ももまで、マーキングしなかった場所が無い。最後の方はあまりに敏感になりすぎたテキサスが、キスされただけで甘イキしてたほどだ。
という経緯でテキサスの全身いたるところに赤い痕が残ってしまい、ギリギリまで肌を隠す服装にする必要があった。ドクターの方も普段の不審者じみた装いの下に、同じだけキスマークを付けられているのは二人だけの秘密だ。
秘め事を想起して赤くなってしまった両者だが、テキサスが先に咳払いして沈黙を打ち破った。
「こほん……それに、一度は殺人犯として法廷に立ったから顔が知られているのもある。『奴があのテキサスファミリーの生き残りか』、とな」
「ああ、そんなこともあったか……後から聞いて肝が冷えたよ」
「ふっ、心配してくれたのか?」
「かなりね。力になれなかったのが悔しかったよ」
「そうか、今ので私は満足だ」
あまり表情に変化は無いが、尻尾を振っている様子から上機嫌なのは間違いない。クールで無口だけどこういう側面が可愛いなと改めてドクターは思うのだった。
それから、ドクターとテキサスは新都市内を散策して周った。美味しいと評判のお店で昼食を食べ、まだ建築途中の新たなシンボルマークを遠目に眺めて、新設されたオペラ劇場にも足を運んだ。
「オペラか……私はあまりその手の素養が無いが、テキサスのお勧めはある?」
壁に貼られた宣伝ポスターの一枚一枚を眺めながらドクターが呟いた。
どれもこれも観衆の目を引くように派手な色遣いだったり、あるいは渋い装いを全面に出したりと工夫されてて眺めるだけで面白い。
初めての劇場に興味津々なドクターに反して、テキサスの方はあまり面白くなさそうだった。
「生憎だが私も詳しくないんだ」
「おや、残念だ」
「だが敢えて言うなら、『テキサスの死』は良かった」
「自分が主役だけど良いの?」
「あれはあれで悪くないさ。身内びいきかもしれないが、当事者ながら気に入った」
まあ何より、とテキサスは語る。
「他はファミリーに媚びを売るものや、ミズ・シチリアを無理やり美化する退屈なものばかりだ。この新都市でもまだ、その影響を脱するにはしばらくの時間がかかるだろう」
「政治的要素が芸術に結び付いているのか。確かに勘弁してほしいね」
「あれらを見るくらいなら龍門発のB級クソ映画を観る方がいくらか楽しめる」
ドクターは大きく笑った。近くの人間がギョッとして見つめてきても気にしない。
酷い言いようだが率直な評価だ。いっそのこと、今度テキサスを誘ってその手の映画を一緒に観るのも悪くないかもしれない。ロドスに戻ったら早速詳しい人間にお勧めを聞いてみようかなと考えるドクターだった。
「ここまで足を運んだが、どれか鑑賞するのか?」
「いや、君がそこまで言うなら止めておこう。買い物もしないとだからね」
「了解した。では帰るとしよう、私たちの家に」
──私たちの家。
たった十日程度の滞在先として選んだ安アパートだけど、テキサスは自然にそう思ってくれていた。恋人関係をすっ飛ばして夫婦のような同棲生活を送っていることに、本当に今更ながらドクターの胸は高鳴ってしまうのだった。
◇
七日目の夜。
この日も雨脚は弱く、都市内をゆっくり観光して周った後にレストランで夕食を食べて帰宅した。楽しい時間はあっという間とはよく言ったもので、既に休暇旅行も終盤に差し掛かっている。先にシャワーを浴びたドクターは現実を思い出して憂鬱そうに息を吐き、なんとなしに窓の外を眺めた。夜の闇の中でぼぅ……と輝く街灯は眠気を誘う催眠術のようだ。
夜が深まるのに比例して雨脚が少しずつ強まってきた。テキサスが好んで掛けているソラのレコードが雨粒の叩く音に押し負けそうだ。しかしウトウトしていたドクターは、むしろ今の方が子守唄みたいで良いなと感じている。
と、そこで風呂場へと続く扉が開いた。
「ドクター、あがったぞ……どうした、眠そうだな?」
タオルで頭を拭きながら黒髪のループスが出てきたが──彼女は下着一枚すら身に着けていない、完全な全裸であった。異性の前で晒していい姿を二段も三段も飛ばして、惜しげもなく白い裸体を見せびらかしていた。
濡れた柔肌に、ツンと上向いたピンク色の乳頭。つるりとしたお腹とお臍に、淡く翳った下生えと陰裂。スラリと伸びた脚部の爪先に至るまで、健康的な女体美を隠すことなく堂々と立っている。とんでもない光景はドクターを襲っていた睡魔もあっさり消え去るほどの衝撃だった。
「またそんな恰好で出てきて……風邪を引いてしまうよ」
「問題ない、それぐらいで倒れるほど柔ではないと言ったろう?」
実のところ、テキサスが全裸で風呂場から出てくるのは初めてではない。一日目に風呂場で交わってから直接ベッドインして以来、連日続けられていた。どうせこの後セックスするのだからという退廃的な理由であり、今ではすっかりドクターも慣れてしまっている。
だが、慣れはしても興奮するのはまた別問題で……こうして夜毎にテキサスの裸体を見る度、ドクターの一物は期待に打ち震えて硬くなってしまうのだ。
「また髪と尻尾を乾かしてもらいたい。頼めるか?」
「別に大丈夫だよ。君の裸を見てすっかり目が覚めた」
「性欲に忠実な男だな、君は……でもまあ、感謝する」
ドライヤーを用意したドクターは、椅子に座ったテキサスの髪の毛を丁寧に乾かしていく。長く艶のある髪は枝毛もなく、絹の如き手触りを感じさせる逸材だ。お湯に濡れたことでいっそう輝きを増している黒髪からはシャンプーの良い香りが強く漂い、これだけでドクターの理性をガリガリと削ってくる。
強温風、弱温風、冷風と順を追って髪を乾かし、最後に櫛を通して綺麗に梳けば完成だ。テキサスに教わったやり方通りに髪のケアを終えたドクターは、そのまま尻尾の方へと手を伸ばした。
「ん……そちらも、優しく頼む」
「任せてくれ」
水を吸って膨らんだ尻尾をタオルで挟むように拭くことで水気を絞り出す。その後はすっかり萎んだ尻尾へ髪と同じようにドライヤーを向け、丁寧に毛を乾かすのだ。こちらは最初から櫛を通しながら毛並みが丁寧に揃うよう意識して進めていく。
「ん……っ♡ あっ……」
根本から櫛を通していると、どうしても尻尾の付け根部分に手や櫛が当たってしまう。そこはループスにとっての性感帯であり、可能な限り避けるのがマナーだ。しかしこの後セックスする以上、ドクターは気にせず──どころかわざと手を当て性感を高めている始末。テキサスも敢えて気付かない振りをして止めないのが恒例だった。
温風が尻尾に付着した水分を飛ばし、スーッと走った櫛が毛並みを整える。何度も繰り返される行為の間に、幾度も付け根をトントンと叩かれて、気付けばテキサスの座っている椅子には小さな水溜まりが出来ていた。
「よし、尻尾の方も乾いたよ。すっかり綺麗になった」
「はっ♡ あっ……♡ ドクター……♡」
最後の仕上げにポンポンと尻尾の付け根を叩くと、テキサスは甘い声を出して媚びるしかなかった。快感と期待に濡れそぼった膣口をひくつかせ、逞しい男根に貫いてもらう時を待ち望んでいる。あのテキサスが雄に縋る浅ましい雌の顔をしていることに、ドクターも背徳感が募っていく。
「今日はどうしてほしい?」
耳元で囁かれただけで白い女体がビクリと震えた。
自分から椅子の背もたれに手を付き上半身を倒すと、誘うように尻を持ち上げた。丸みを帯びた尻肉はもちろん、谷間の間に座するピンクの窄まりや、微かに開いて男を待ちわびる膣口まですっかり見えてしまう。高貴な獣が自分から交尾をおねだりする様を連想させる淫猥にして優美な姿だった。
「……後ろから、激しくしてほしい。獣のように私をレイプしてくれ」
「分かった」
手早くコンドームを装着したドクターが背後に立ち、細腰をしっかり掴んで挿入を開始した。
ぐぷっ、ぐちゅり……♡ 被膜に覆われた亀頭がよく濡れた膣内を穿り返し、開拓して、子宮口へと到達する。普段ならそこで一度止まってテキサスの身体を慣らすのだが、今回は
絡みつく膣襞を振り払いながら腰を引いて、押し込んで、また抜いて、貫いて。ピストン運動は繰り返される度に速度が上がり、蕩けた膣が奏でる水音も大きくなった。愛液がカリ首によって掻き出され、床や椅子へと飛び散ることで室内へ淫臭が立ち込める。
「んっ♡ あっ♡ あっ♡ ああっ♡」
どちゅん♡ どちゅん♡
パンッ♡ パンッ♡
恥じらいを捨てた喘ぎ声。くぐもった水音。腰を打ち据える破裂音。狭い室内に木霊して男女の理性を狂わせる。
キツくてよく伸びる膣内を擦り上げる度、テキサスは面白いように啼き声をあげた。さながら野生の獣を想起させるほど奔放に、後ろから雄に犯されているのを楽しんでいる。いつものクールでカッコイイ印象など投げ捨て、胸を揺らして舌を突き出しながら声が枯れ果てるまで喘ぎ続ける。辛抱できずにドクターはテキサスの両の果実を鷲掴みにした。
ぐにぃ♡ むに……っ♡
ぎゅぅッ♡
「あっ♡ 先っぽ引っ張るのっ♡ やめ、てっ♡」
雨音とレコードに混じって淫らな懇願が幅を利かせだす。止めてと訴えるテキサスは実に気持ちよさそうな
誰が見たって感じてるし歓迎してる。こんな誘い受けをされて素直に止める者など皆無だ。指先で乳首を潰し、引っ張り、ドクターは好きなだけ赤い柘榴を苛め倒した。コリコリした感触を楽しむ度に連動してテキサスは喉を震わせ、膣内をより強く締め上げ極上の具合となっていく。
もっとテキサスの身体を味わいたい──本能的な欲求に支配されたドクターは、胸を掴む両手をグッと引き上げた。倒されていた彼女の上半身も一緒に引っ張られ、胸板と背中を密着させた立ち
「ひぐっ♡ んっ♡ ああっ♡ どく、たぁ……♡ あむっ♡ ちゅるっ……♡」
甘やかな呼び声は途中からキスに塞がれ言葉にならなかった。女性らしい細腕がドクターの首へ回され、唇が強引に重ね合わされる。舌先をチロチロと舐め合いながら唾液を交換して性感を高めた。この間も挿入は止まっておらず、喘ぎ声は口内でくぐもった音となって立ち消える。
これ以上なく合わさった肌と舌は互いの温もりを最大限伝えてくれる。心臓の鼓動すら聞こえてきそうな密着具合はある種の安心感すらあった。男女の境界線が溶け落ち、本当に一心同体になっていると錯覚するほど、強く強く性器を結合させて……ドロドロに蕩けていく。
「ドクター♡ ドクター……♡ 君に弄ばれている烙印が欲しい……♡ 」
「テキサス……!」
「今は君が、優位なのだから……っ♡ 好きに弄んで、マーキングしてくれ♡」
時折テキサスが見せる被虐性は男心をくすぐるもので、『あなたのものにして♡』と誘われて奮い立たない雄などいない。ならばとドクターは抉るような角度で肉槍を突き込み続け、ひたすらテキサスの弱点を擦り続けた。入口付近、Gスポット、子宮口手前、ポルチオ──知る限りの膣内弱点を暴き立てながら、貪欲に片手を伸ばして茂みへ隠れたクリトリスをつねった。
「ひぎゅっ♡♡」
らしくない悲鳴と共にぷしゃぁ……♡ と潮が吹きこぼれた。これで乳首と陰核と膣の三点責め。一瞬で快感の許容量をオーバーしたテキサスの身体はビクビク絶頂しっぱなしで、これでもかとドクターの分身を締め上げて離さない。ぎゅむぎゅむと強烈な締め上げのせいでピストンすら力を籠めねば満足に動けぬほどだ。
どちゅ──! ぐちゅ……ん♡ 締まりすぎた膣内は
「んぐっ──あぁああ゛ああぁぁっ……♡♡」
グッと子宮を押し上げられ、強烈な絶頂を迎えるテキサス。そこへ追撃とばかりに首筋へドクターが強く吸い付き、鮮やかな赤いキスマークを残していく。雄が自分の雌だとマーキングするための行いはいよいよ被虐心を強く煽り、ビクンと電流で撃たれたみたく女体が跳ねた。
同時に、締まり過ぎた膣圧に屈した剛直が我慢しきれず精液を吐き出していく。装着したゴムのおかげで膣内射精こそ避けているが、膨らんでいくゴムの袋と精子の熱はやっぱりループスの性感を蝕んで。
ぶしゃっ、ぶしゅぅ♡
「っ、ダメだ、見ないでくれ……♡」
お漏らしを彷彿とさせる勢いで、白く太い潮吹きの奔流が割れ目から噴き出るのだった。
既に愛液溜まりができていた床はもちろん、椅子や太ももにまで垂れ落ちて雌の濃い匂いを充満させていく。あのテキサスが恥じらいながらも止められない潮吹き姿は見ているだけでも十分すぎる満足感で、大いに雄としての勝利を感じさせるものだった。
「はぁ、ふぅ……少し強すぎただろうか? 大丈夫かい?」
「いや……私は、問題ない。それよりもドクター──」
オレンジの瞳が、妖艶な流し目をドクターへと送る。
明らかに彼女は二回戦を誘っていた。
「レイプしろと頼んだのだから、一回戦で終わるのは片手落ちだろう? それともこれが君の限界だったか?」
「……言ってくれるじゃないか」
こんなに甘い、イチャラブ合意レイプなどあってたまるか。
内心でドクターは叫んでしまうが、煽られたのだから仕方ない。彼女が満足するまで徹底的に犯しつくすしかないだろうと、使用済みのゴムを外して新しいのを取り付ける。精液の入ったゴムはべちゃりと床へ落ち、テキサスの吹いた愛液と混じり合う。
「泣いて謝っても止めてあげないからね」
「望むところだ、ドクターこそ簡単に根を上げてくれるなよ」
かくして男女の交わりは更なる盛り上がりを見せ、最終的には夜遅くまでひたすら交わり続けて──また翌日、おはようフェラで目を覚ますルーチンが続いているのだった。
◇
九日目は、ドクターのテンションが異常に低かった。
それも仕方ないことだろう。せっかく休暇中だというのに、緊急の事案が発生してドクターの端末に届いたのだ。おかげで朝から確認作業や手配に追われてしまい、休暇のはずがすっかり通常業務になってしまったのである。
「ぐぅぅ……テキサス、助けてくれー……」
「私には無理だ、諦めてくれ」
「ぐぬぬ……」
既に昼食も終えた昼下がりの時間帯。以前と同じく交わったまま食事を摂って体力回復したドクターだが、数時間も経たない内にもうエネルギー切れのようだ。簡易的な執務机に突っ伏して弱音を吐く姿はロドスのオペレーターには見せられない。
だからといってテキサスが手伝えることはない。あくまで彼女ができるには物流と身辺警護であり、組織運営の諸々は門外漢だし口を出すべき事でもない。細長いチョコ菓子を煙草のようにくゆらせ、テキサスファミリーの礼服を優雅に着こなしながら、だらりとベッドに腰かけている。
「私も普段はワーカホリック過ぎるほど頑張っているはずだが、この数日ですっかり
「辛そうだな」
「辛いよ、それはもうね。実質観光旅行最終日なのに、何が悲しくて業務に追われなければならないのか……」
明日は午前中の内にシラクーザを出発してロドス本艦へ戻る予定だ。なので今日は思い切り遊ぼうと思っていた矢先にこの仕打ち、さしものドクターでも心が折れる。元気が無いのも無理からぬことである。
嘆くドクターを一瞥したテキサスは、興味なさげにチョコ菓子を齧ってから、「それならば」と手を叩いた。何事かとドクターの視線がそちらを向く。
「仕事は手伝えないが、君の気力を補充することはできる」
「というと?」
「こっちへ来い」
ベッドに腰かけたまま自分の膝をポンポンと叩くテキサス。訝しみながらもドクターは素直に従い、彼女の元へと寄った──その瞬間、視界がぐるりと反転する。「うわっ!?」と声をあげた時にはもう、ベッドへ身体を投げ出して膝枕されていたのだった。
「て、テキサス……?」
「男性はこれで喜ぶと聞いたことがある。手伝えない代わりに少しでも癒せればと思ってな」
「ありがとう、テキサス。すごく嬉しいよ」
青いショートパンツと黒のストッキングに包まれた太ももは柔らかく、そこらの枕より遥かに安眠できてしまいそうだ。見上げれば彼女の持つ豊かな双丘と、ドクターを見つめる瞳を視線が合う。ニコリと僅かに微笑んだのは彼女なりのサービスなのだろうか。
「膝枕、か……」
「ドクターはされたことがないのか?」
「記憶が無いからね、まったく経験ゼロさ。普通は親にしてもらうものかな?」
「かもしれない。私は……いや、覚えていないな。あまり甘やかす両親では無かったから」
穏やかな語りと共にテキサスの手がドクターの頭を撫でた。いつものマスクは既に外しているから、さらりと指で髪が梳かれて額まで流れていく。まるで母親にあやされているような、本能的な安心感がドクターの胸に去来した。
「こうしていると……まるで君が、私の母親になったみたいだな……」
「面白い冗談を言うな」
「冗談じゃないさ、安心するというか……不思議なくらいリラックスできる」
「こんなに大きな子供がいた覚えは無いのだがな」
苦笑しながらもテキサスはドクターを撫でる手を止めなかった。それが増々ドクターに安心感を与えて、精神的な疲労を洗い流しているように感じる。彼女の目論見通り、膝枕は仕事疲れの癒しとなっていた。
上を見上げれば天井の木目と、美しいテキサスの顔がある。けれどそれ以上にドクターの気を引くのは、シャツと上着の中に押し込まれた大きな果実な訳で……奥に秘された柔らかさを想像して、ゴクリと喉を鳴らしてしまう。
「ドクター……失礼を承知で問うが、君の頭には性欲しか無いのか?」
「うぐっ……! それは、そのですね……はい」
邪な視線はとっくにお見通しだった。先ほどまでの優し気な目から一転、呆れたテキサスの視線が無慈悲に突き刺さる。今日まで何度も交わってきたせいで、性的欲求に素直になりすぎてるのは否めない。
はぁ、とため息をついたのはテキサスだった。「まったく仕方ない……」と呟くと、プチプチとシャツのボタンを外していく。胸を覆う深い青色のブラがずらされ、豊満な果実がぷるんとドクターの頭上に躍り出る。
「ほら、触りたいなら触ればいい」
「うぅ……ありがとうテキサス」
「君ともあろう人がそんな情けない顔をするな──んっ♡」
やはり呆れて苦笑を漏らすテキサスを横目に、ドクターはピンク色の先端を口に含んだ。母乳など出るはずも無いが、吸ってみると何故だか安らぎを覚えてしまう。気恥ずかしさは甘い吸い心地の前に一瞬で霧散した。
ちゅぱちゅぱと吸い上げ、時折歯を立てて甘噛みする。両手はしっかりと巨乳を揉み込み、贅沢な果実を余すところなく楽しんでいた。
「これだと子供どころか、赤ん坊だな……♡」
授乳する母親の気分とはこんなものなのかと、奇妙な感慨がテキサスの中に湧き上がる。しかし本当の赤ん坊なら胸を揉んだりしないだろうし、いやらしく吸ったりもしないだろう。何より子供に授乳して感じる母親の方がおかしいと、彼女は思わず笑ってしまった。
しかしながらドクターを甘やかしていると、優越感というか満足感に似た感情が湧き上がるのも事実だった。爛れた関係を楽しむ間柄だが、常の彼は付き合いも長い頼れる指揮官だ。そんな人物が何もかも投げ捨て夢中でおっぱいを吸っている。自身の
「んっ……♡」
お腹の奥が着火したみたいに熱い。股の奥からじっとりと熱い液体が溢れだす。憎からず思ってる男性の弱い姿をこれでもかと見せられて、ゾクゾクしたものが背筋を走った。このままだと、歯止めが利かなくなってしまう。
「……っ♡ ドクター、すまないがここまでだ」
「おわっ」
今も夢中で胸を吸うドクターの頭を引き剥がし、無理やり元の膝枕へと戻してしまう。急な行いにドクターは当惑気味だったが、ひとまずテキサスの意思に大人しく従った。その間にブラを直して服を整えられ、すっかり授乳行為の跡は隠された。
「君はまだ仕事が残っているのだから、自重するべきだろう」
「まあ……確かにその通りだ」
「あまり気落ちするな。優先順位は何事にも大事なことさ」
それからテキサスは、グッと上半身を屈めて顔を近づけた。整った顔立ちが目前に来たドクターの心拍数が急速に上がっていく。
「無事に仕事を終わらせたなら……今夜は、
「なっ……!?」
「心配するな、避妊薬は飲んでいる。だから……これを最後の思い出兼、ご褒美とするのはどうだろうか?」
問われるまでもない。テキサスだって聞くまでもないと分かっているだろう。
もちろんドクターの返答は決まっていたから、一も二もなく頷いた。バネ仕掛け玩具の如く跳ね上がると一目散に机に向かい、残してあった仕事へ全速力で取り組み出す。テキサスとの
それからは、不思議なほど二人の間で会話が無かった。ドクターは無言のまま集中して仕事へ向き合い、テキサスは昼寝をしたり黙って本を読んだりして時間を潰す。夕食の際も最低限の会話しか無かったのは、今夜の行為に対する期待が高まり過ぎた反動なのかもしれなかった。
何も喋らずとも心は一つ。通じ合っている気持ちが気恥ずかしくも嬉しくて、片方が笑えばもう片方もつられて笑みを返してしまう。初体験を迎える少年少女に似た昂ぶりが二人にはあった。
──そして、迎えた夜。
シャワーを浴びて身を清めた二人がベッドに隣同士で座った。ドクターは既にほぼ全裸の状態だが、一方でテキサスは昼と同じく礼服をしっかり着込んでいる。ダメ元で「着衣エッチしたいです」とお願いされたのをテキサスが聞き入れてくれた結果だった。
「普段と違うせいか、今夜は緊張するな……」
「テキサスにもそういう事があるとは」
「私だって人間だからな。それとドクター、この服でする代わりの条件を忘れたのか?」
ジト目で睨みつけられたドクターは、もちろん忘れていないと胸を張る。
「分かってるよ、チェリーニア。今ばかりはコードネームを忘れよう」
「ふっ、ならドクターと呼ぶこともできないな」
「あー、それは……まあ例外という事で」
誤魔化すように愛想笑いし、まずは挨拶代わりのキスを交わす。軽く舌を絡めて互いの味を確かめてから、ドクターの方からテキサスを押し倒す。着飾った彼女は、鋭利な美貌と合わせて触れ難い魅力を放っていた。今から手を付けることに罪悪感すら覚えそうだ。
「脱がすよ」
「ん……好きにしろ」
ぷいと視線を横に逸らされたのを片目に、まずは上着を外していく。昼間はテキサス自身が露わにした胸を、今度はドクターが手ずから暴いた。黒色に白の装飾が施された美麗なブラジャーを外し、散々味わった乳房が露出する。
ピンと立った蕾へ今すぐむしゃぶりつきたい欲求を堪え、さらにドクターは青のショートパンツを脱がした。黒いストッキングの奥にはブラと同じデザインのショーツがあり、じっとり湿っているのが微かに見て取れる。むわりと雌の匂いが立ち昇り、テキサスも期待しているのがドクターは嬉しかった。
足首を掴み大きく足を開かせる。いっそう雌の香りが強くなり、眼前の雄を誘惑する。
「破いてもいい?」
「請求書を送りつけて構わないなら」
「じゃあ破くよ」
ビリ、と音を立ててストッキングの股布部分が破かれた。しなやかな足を包む黒地はそのまま、秘すべき部分だけが無防備となって最後の砦を明かしたアンバランスな装い。性欲をそそる光景を前に、堪らずドクターは一物を握り込んだ。避妊具は当然付けて無い、今日は生エッチすると決まっている。
クロッチ部分をずらせばトロリと蕩けた膣口がお目見えした。鮮やかな赤色が目に眩しく、小さな穴が濡れ光りながらヒクヒク震えている。裏地部分は透明な液体で既にべっとり濡れており、指摘されたテキサスは耳まで真っ赤だ。何度も交わり潮吹き絶頂も見てきたのに、可愛らしい反応をする姿に更なる興奮を呼び起こされて、辛抱できずに亀頭を入口へと押し当てる。
「チェリーニア、生で
「ああ、来てくれ……ドクターの熱いのを、注いでほしい」
テキサスの誘い文句を皮切りに、正常位で切っ先が蜜壺の中へと埋まり始めた。ズブズブと膣内を掻き分けていくのだが、この時点で感触が大きく違う。ゴム有りでもキツイ締まりと膣襞の細かさは感じ取れていたが、ゴム無しはその比じゃない。
温かなゼリーの中に突っ込んだような、たくさんの子供の手にギュッと握り込まれているような、あるいは全方位から情熱的なキスをされているかのような──確実に言えるのは、ゴム無しとは比較にならないほど気持ちいいこと。
「っ、ぐぅぅ……っ!」
「うあ゛っ……これ、すごい……♡ ドクターの熱いのが、奥まで来てる……っ♡」
射精しないよう踏ん張るドクターだが、テキサスの方も同じだけ追い詰められていた。ゴム無し故に剛直の発する熱が直に感じ取れるうえ、浮き上がった血管の段差すらつぶさに感じ取れてしまう。侵入者を歓迎すべく膣襞が絡みつくのは良いのだが、ことごとくが一瞬で懐柔されて逆に気持ちよくされるのだ。
おかげで狭くて締まる膣内はこれでもかとうねり、複雑に肉棒を捕らえて離さない。奥へ奥へと引きずり込もうと蠕動して、竿もまた乗せられてると理解しながら最深部へと突き進む。
ぐちゅ……どちゅん♡
そして最後に待ち受ける、子宮口の輪っか部分に亀頭がピッタリ嵌まり込んだ時──キュッと輪っかが狭まって、亀頭を優しく締め上げるのだった。
「ぐっ、づぅ──!?」
最初、ドクターは何が起きているのか分からなかった。
自身の先端から何かが漏れ出している。では何かと問われれば、感覚的に粘り気のある体液に相違ないわけで。全身を駆け巡る恍惚感、一拍遅れてようやく自分が射精して精液をテキサスの子宮へ送り込んでいることに気が付いた。
自覚した途端、さらに射精の勢いは増した。挿入した直後に吐精したのを恥じる余裕もない。生エッチによる膣内射精はゴムへの無為な射精とは比較にならない快感で、組み敷いた女へ己の種を播いている認識が更なる快感を呼び起こす。
「ひぐっ♡♡ あついのが、お腹に出て……っ♡ っあ゛、~~~~……っ♡」
魂まで引きずり出される射精にドクターが酔いしれる一方で、テキサスもまた
顔を逸らしほっそりした喉まで見せるのけ反り絶頂。シーツが引き裂かれんばかりに掴まれる。今までゴム越しに感じていたドクターの雄汁が、ダイレクトに最も大事な
「はぁ……っ……」
「ふー……♡ ふー……♡ ん……っ♡」
ゴム無しセックスの快感は強烈だった。数えるのも億劫なくらい肢体を貪り合った二人が挿入しただけで呆気なく
一つに繋がってから僅かな時間でこれだけの性感を得られるなら、もしこのまま幾度も生セックスを繰り返せばどうなるのか──あまりに容易く想像できる未来絵図に、期待に胸が膨らむのを抑えられない。交わった視線はどちらも情欲に塗れ、誘い合っているようで。
「チェリーニア……」
「……まだ
それ以上をドクターは言わせなかった。キスで口を塞ぎながら両の手の平を合わせて指を絡め、シーツの上にテキサスを縫い付ける。射精直後なのにまだ硬さを保っている肉槍をゆっくり膣襞と擦り合わせて、さらに彼女を犯す意思を見せつけた。
まるで男性優位の格好だが、身体を開いて受け止めるテキサスの方が『ドクターを好きにさせている』といった余裕すら感じられた。昼のプレイがまだ尾を引いているせいで普段と違う包容力すら感じられてしまう。
「
「一度
「……ありがとう」
これは甘やかされているなと感じるドクターだった。どちらが優位か分かったものではないが、彼女なりの優しさに溺れてしまうべく腰を振り始める。どちらも絶頂直後で性器は敏感だから、恐る恐る引き抜いて。大丈夫そうだと判断したらまた奥へ戻すたどたどしい腰遣い。普段の激しい挿入と比べてあまりに穏やかで、なのに受け取る快感は遥かに上回っている。
「すごっ、うねって……!」
「んっ、あっ……♡ ゴム一枚無いだけで、こんなにドクターのが感じ取れるなんて……♡」
ぱちゅん、ぱちゅんと控えめな水音が木霊する。
快感の許容値を上回らないよう、すぐに絶頂してこの時間を終わらせないよう、慎重に交わっているというのに。ただ動かすだけでドクターは射精欲がこみ上げるのを抑えられなかった。ねっとり纏わりつく膣襞も、真ん中ほどで一際強く締め上げる膣圧も、コリコリした子宮口の感触も、余さず感じ取れるせいだ。
雄の
「ドクター……♡ 私も、気持ちいい……♡」
艶やかな告白はせめてもの情けなのだろうか。これで終われぬとばかりにドクターはいっそう強く腰を押し込むが、それとて快楽を増大させるだけの自滅的な一手にすぎず。らしからぬ悪手はあっさりと彼を敗北へと導いてしまった。
「ごめんっ、もう
びゅくっ! びゅるるる~~っ♡♡ びゅっ、びゅるっ♡
強烈な射精快感に獣じみた咆哮が響き、二度目の射精がテキサスの中で迸った。グツグツと煮え滾る白いマグマが再び子宮の中を蹂躙し、胎内へ己の遺伝子を刻み込もうと暴れ回る。内側からべっとりと白濁で染め上げ自身だけの雌だとアピールしているようだ。
子宮の方もやはり余さず精子を飲み干し、卵子も用意されていないのに結びつきを望んでしまう。孕むはずが無いのに孕まされると誤認しかねない勢いに、きゅっと子宮が縮こまって熱い熱を発していた。
「ふぐっ、んっ♡ 二回目なのに、すごい量だ……♡」
「すまない、私ばかり先にイってしまうとは」
「私だって何度も達しているさ。だが、気にしてると言うのなら──」
縫い留められていたテキサスが起き上がり、今度はドクターを押し倒して上へ乗った。騎乗位で膝立ちとなったテキサスは自身の指で割れ目を開くと、愛液と精液の混合ジュースがトロトロと零れ落ちた。真下にある、少し萎んだ一物が淫靡にデコレートされて俄かに活力を取り戻す。
「今度は私から責めてみよう。ドクターもまだまだできるだろう」
「もちろん。今度はすぐ射精しないようにするさ」
「その意気だ。せっかくの特別な逢瀬だ、楽しむとしよう」
テキサスの細腰が沈んでいき、愛液に塗れた肉の剣が鞘へと納められていく。労わるように飲み込まれた先はさらなる快楽
だけど、まあ。
「たまにはそれも、いいかもな」
「どうした?」
「いいや、何でもない。たくさん気持ちよくなろう、チェリーニア」
「言われずともそのつもりだ」
チュッと口付けを交わしてキスハメしながら、搾精騎乗位が始まった──
◇
これが最終日だからと、朝のギリギリまで二人は積極的に睦み合った。
騎乗位でドクターは何度も吐精を促され、子宮に収まり切らなくなった精子が膣から泡を立てて滑り落ちた。テキサスも負けずと快楽を貪り何度も絶頂して、派手に潮吹きしては彼のお腹を濡らしてしまう。最後の方は尿道が緩んで違うものが漏れていたかもしれないが、今更気にする事ではない。
「んあっ♡ ああっ♡ ……もっと、ドクターが欲しい……♡」
びしょ濡れになった衣類は乱雑に脱ぎ捨てられた。今度は後背位で激しく交わったり、寝バックで寝ながらゆったりキスをしてみたり。お掃除フェラをしてもらった直後に素股で肉棒を汚した時はテキサスも呆れ気味で、代わりに足を抱えての立位ハメは彼女も大いに気に入ったようだ。耳や尻尾を撫でられ、乳頭を弄られては何度も絶頂していた。
最後は対面側位で緩々と繋がっていたはずなのだが、そこで二人とも意識が途絶えて、気付けば朝日が眩しい時間帯となっていた。繋がったまま風呂場へ行き、カピカピの肌を順番に洗い流す内に我慢できなくなって立ち
「はぁ……まだ
「いやぁ、自分でもどうかと思うくらいやり過ぎてしまった。このシーツはもうダメだな……」
愛液と精子と汗と涎と、様々な体液で汚れ切ったシーツはもはや残せるものじゃない。責任もって処分して弁償しなければと考えながら、ドクター達は帰り支度を始めていた。天気は生憎の雨だが、換気のために大きく窓を開け放つ。雨音に混じって朝の喧噪が耳に届いた。
「これでシラクーザともお別れか……」
「名残惜しいのか?」
「そりゃあね。こんなに充実した日々は久しぶりだったよ」
「随分と爛れていたがな……実のところ、私はあまり惜しいと感じていないんだ」
チラリと窓の外を見やったテキサスが小さく言った。
汚れてしまった礼服を乱雑に袋へ詰め込みながら、珍しく口数多めに語る。
「あまりシラクーザが好きではないし、過去にまつわる因縁や
「そうか……だとすれば、君に護衛を頼んだのは余計な苦労を掛けさせてしまったか」
「すまない、言い方が悪かった。ドクターが謝る話ではないし、どうか謝らないでくれ。むしろ他の誰でもなく、私に頼んでくれたことを感謝してるんだ」
スーツケースへ衣類を仕舞いこんだテキサスが立ち上がる。見慣れたペンギン急便の装いはドクターに安心感を与えたが、テキサスにとっても同じ意味を持っているらしかった。
「ドクターと二人切りで過ごした十日間は楽しかった。シラクーザへの悪感情を忘れてしまいそうな程にな。感謝する」
「私もすごく楽しかったよ。君が居てくれて本当に良かった、ありがとう」
「礼を言うのは私の方だ」
微かに笑ったテキサスは、「そうだ」とスーツケースを蹴った。
「あの礼服、すっかり汚されてしまったな。私としてはこれを言い訳に捨てるつもりだったが──」
「いやいや、そんな勿体ないことしないでくれ」
「ふっ、そうだと思った。クリーニング代と、破いたストッキングの替えは君に請求させてもらうぞ」
「もちろん」
「ドクターのせいで私も少しばかり愛着が湧いたからな、たまには着てやっても良い」
彼女にとってあの衣装は捨て去ったはずの過去を象徴する代物だった。だけどドクターが望むのなら、たまには着ても良いと思ってしまえる。そんな自分が気恥ずかしいのか、テキサスは頬を赤くして目を逸らした。
「……今度は、あの服が大した意味を持たない土地に行きたいものだな」
無意識に口を衝いて出た言葉にドクターは耳ざとく反応した。
「つまり、またテキサスを誘ってもいいと?」
「…………言わせるな」
「嬉しいよ。頑張ってまた長期休暇を取れるようにしないとな」
荷物の入れ忘れが無いか確認し、最後に十日間世話になったアパートを見渡した。
シンプルな家具しか用意されていない殺風景な安アパート。ここでテキサスと同棲し、爛れた生活を続けていたのだ。つくづくとんでもない観光旅行をしてしまったと思うドクターであった。
「それじゃあ、ロドスへ帰ろうか。もう少しだけよろしく頼むよ、テキサス」
「ああ、任せておけ。ドクター」
最後にそっとキスをして、二人は安アパートを後にしたのだった。
──帰還の途中、我慢できずカーセックスに耽ったせいで予定合流時刻に遅刻しかけたのは、また別の話である。
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