「…って、何だ、ありゃあ…!?」
と、ジム・キグナスの姿を見て驚くメルチェ…。
〈どうした?
空を飛ぶジムが、そんなに珍しいか?》
と、ヒョウガからの通信が入った。
「その声は、さっきの…!?」
〈その声…
メルチェといったか…!?》
「あぁッ!!
黄金の荒鷲
の孫娘のメルチェだ…ッ!!」
◆
通信機から聞こえてきた
黄金の荒鷲…。
▽
2年前―
一人の男が、76年の生涯を閉じた…。
彼の名はテツゾウ。
元ガンプラファイターであった…。
テツゾウがガンプラバトルの世界に足を踏み入れたのは、もう30を過ぎた頃だった。
やけにデビューが遅いが、テツゾウが30代の頃に、ガンプラバトルが始まったのだ。
つまり、テツゾウは
ガンプラバトル創生期
の頃のガンプラファイターなのだ―。
テツゾウの愛機はデルタガンダムだった。
黄金色の機体を煌めかせながら、ウェイブライダー形態で戦うバトルスタイルから、いつしか、テツゾウは
金色の荒鷲
と呼ばれるようになった。
しかし、その頃がテツゾウの絶頂期だった…。
月日は流れ…
テツゾウに、孫娘のメルチェが生まれた。
メルチェがガンプラファイターになろうとしたきっかけは、祖父テツゾウの影響だった。
テツゾウは連日、ガンプラバトルに興味をもったメルチェを、ガンプラバトルアリーナに連れて行った。
その頃のテツゾウは、現役のシニアガンプラファイターだったが、還暦を過ぎ、年齢からくる衰えで、かつてのような戦いはできなかった…。
年老いた体に、もはや、デルタガンダムのような高機動の
孫娘が見ている前で連敗を重ねるテツゾウは、次第にシニア仲間達からも嘲笑され、そして、罵倒されるようになっていった…。
晩年のテツゾウは
過去の栄光にしがみついているだけの老害ガンプラファイター
でしかなかった…。
そんなテツゾウの姿を見て育ったメルチェは、2年前、テツゾウが世を去った時…
テツゾウの栄光を継ぐ
決意をしたのだった。
だから、メルチェの
ヒョウガがテツゾウのことを知ったのは、10歳の頃―。
とあるガンプラバトルアリーナで見た、ガンプラバトルがきっかけだった。
そのバトルは、シニアガンプラファイター同士の対戦だったが、デルタガンダムが、ジンの重斬刀でメッタ斬りにされていた。
それを見たヒョウガは、あきれていた…。
なにしろ、デルタガンダムよりも、はるかに性能が下回るジンに、デルタガンダムが負けているのだから…。
見物客達も、デルタガンダムが負けていることに、ブーイングをおくっていた。
試合後、コクピットルームから出てきた、デルタガンダムのファイターが、孫娘であろう女の子と一緒に帰っていくのを、ヒョウガは見ていた―。
▽
(そうか…。
あの時の女の子が…)
今、自分が戦っている相手だ―。
右手に持つマシンガンで、
なお、ヒョウガは、ジム・キグナスのマシンガンをビーム兵器に設定を変更しているため、マシンガンの銃口からは、ピンク色のビームが放たれる。
しかし、高速で飛び去る
「メルチェ。
君は知っているのか?
君の祖父が」
〈言うなッ!!
じいちゃんは、黄金の荒鷲なんだッ!!
じいちゃんの悪口を言うヤツは許さないぞッ!!》
(やはりな…。
知らないはずはないか…。)
「今の発言を許せとは言わん…。
ならば…
黄金の荒鷲の孫娘の実力を見せてもらう…ッ!!」
と
◇
メルチェも、テツゾウがどんな人だったのか知っている…。
幼少の頃から、テツゾウの敗北を、何度も見てきた…。
▽
「また負けちまった…★」
と、いつものように、笑いながらコクピットルームから出てくるテツゾウ…。
なぜ、負けたのに笑うのか?
どうして、勝てないのに、ガンプラバトルを続けるのか?
まだ、物心ついたばかりのメルチェでも、負けてもガンプラバトルを続けるテツゾウに、疑問をもっていた…。
ある日、ガンプラバトルアリーナからの帰り道―。
メルチェは
「じいちゃんは、どうして勝てないのに、ガンプラバトルをするの?」
と、テツゾウに訊いた。
「そりゃ…
好き
だからじゃ☆」
と答えたテツゾウ。
「好きだったら、負けてもいいの?」
と訊くメルチェに
「あぁ☆
好きじゃからな☆」
と、笑顔で答えるテツゾウ。
しかし、メルチェには、テツゾウの言うことが理解できなかった…。
むしろ、自分の好きなことなら、私は負けたくない…
…というのが、メルチェの考えだった。
「勝っても負けても楽しいのがガンプラバトル
じゃ☆」
と、笑うテツゾウ。
そうかもしれない…。
でも、やっぱり、勝ちたい…。
負けて
勝って、みんなと笑いあいたい―。
それが、メルチェの考えだった―。
▽
今にして思えば、テツゾウはテツゾウなりに
ガンプラバトルの楽しさ
というのを教えてくれたんだと思う。
ただ、やり方がまずかっただけだ…。
だから、メルチェは
テツゾウのことを悪く言うヤツは許せない
のだ―。
◆
一方、地上の西の森の中では―。
「タイミングを見計らって、援護射撃って言われてもなぁ…★」
と、ジャブが空を見上げて愚痴っていた…。
ジャブの
全身を紫色に塗った、ユニコーンモードのユニコーンガンダムである。
イッキからは、タイミングを見計らって援護射撃を…と言われているのだが、撃ちたくても、空を高速で飛び回る
しかも、ジャブは、射撃はそれほど得意ではない…。
だが、ジャブの敵は
空ではなく、地上にいた…。
レーダーが、敵機を捉えた。
「2時方向…
高度50メートル…
機種…トムリアット・ブルーサンダー…!?」
ユニコーンガンダムのレーダーが捉えたのは、リコのトムリアット・ブルーサンダーだった。
さいわい、
(あれだったら、オレでもヤれる…ッ☆)
と、ビームマグナムをかまえる
「
くらえッ!!」
と、ロングライフルを撃とうとしたら…
◇
高度50メートルを飛び、地上にいるであろう、青銅側の3機目の
リコの
バックパックの側面には、大口径連装砲が装備されている―。
青銅側の3機目の
どこかに隠れているのだろうが、隠れているとしたら、川の向こうの森の中だろう。
そこ以外に、隠れる場所など無いからだ。
隠れている本人は、上手く隠れていると思っているのだろうが、捜す側からすれば、居場所を教えているようなものである。
ただ、森は広いので、正確な居場所を突き止めるのは難しい。
そういう時は
向こうから出て来てもらう。
案の定―
鳴り響くロックオン警報―!!
どうやら、真正面にいるようだ。
正面モニターに、敵機のデータが表示される。
【機体名】
ユニコーンガンダム
【ベースキット】
1/144 HG ユニコーンガンダム
【種別】
汎用型モビルスーツ
【属性】
陸
【ファイター】
ジャブ
【戦場適応】
宇宙戦 ◎
空中戦 ✕
地上戦 ◯
水中戦 △
【得意戦術】
射撃戦 ◯
接近戦 ◯
ジャブの名を見て、怒りに燃えるリコ。
さっき、自分のことを『小学生』だと
周囲は火の海と化した―!!