水曜日の夜―。
ミモザは電車に乗って、バイト先であるカフェ【クスクス】に向かう。
ミモザが住んでいるビビッ島東部の都市アスマンから【クスクス】があるビビッ島中部の島都ノブリスまでは、電車で30分―。
駅から徒歩数分で、【クスクス】に着く―。
更衣室で、店の制服に着替えるミモザ。
「ところでミモザ。」
と、同じく、着替えている、ミモザより背の低い少女が、ミモザに話しかける。
彼女の名はビビ。
ビビッ島の島都ノブリスにある大陸高校の2年生で、【クスクス】のバイトリーダーだ。
「今日から、新しい子が入ってくる。
新人教育は、お前に任せるぞ。」
と言うビビ。
「はいはい★」
と答えるミモザ。
ビビはバイトリーダーなのだが、性格的に、新人教育には向いていない…。
なので、ミモザも、仕事はビビからというよりも、自力で覚えた…。
しかし、仕事はきっちりとやっている。
客からも人気があり、中には
あきらかにビビを目当てに来る男性客もいる
くらいだ…。
・
さて、着替え終わって、タイムカードを打つため、ビビと一緒に事務室に行くと、
「おぉ、ビビにミモザ。
紹介するよ。
今日からウチで働くことになった
クレア
だ。
仲良くてやってくれ。」
と、ミモザとビビにクレアを紹介する
「はじめましてじゃけん!!
クレアというけん!!
よろしくおねがいするけん!!」
と、自己紹介するクレア。
(
と、顔をしかめるビビ。
▽
今から200年前、ビビッ島はG国に征服されてG国の領土となり、七尾人達は南ビビッ島―通称・七尾島に追いやられた。
そうした過去のせいで、現在のビビッ島の島民であるG国人と七尾人は、今でも基本的に対立関係にある…。
▽
しかし、ミモザは
その証拠に、ミモザの彼女のユイは七尾人である。
しかし、ビビは七尾人を毛嫌いしている、典型的な
「私はビビ。
こっちはミモザ。」
と、ビビがクレアにミモザを紹介する。
「よろしくね、クレア☆」
「こちらこそ☆」
と、握手をするミモザとクレア。
「じゃ、さっきも言ったけど、新入りの教育、頼むな。」
と、ビビは事務室から出ていった…。
「じゃ、仕事を教えてあげるわ☆」
と、ミモザの新人教育が始まった―。
接客の仕方―。
注文のとり方―。
レジの打ち方―。
…と、基本的な仕事を教えていくミモザ。
「じゃ、実戦よ!!」
と、クレアを連れて、事務室から出て行くミモザ―。
◇
午後9時―。
クレアのバイト初日は終わった。
七尾人の新人に顔をしかめる客もいたが、大きなトラブルもなかった―。
ロッカーで着替えていると…
「ミモザさん…
ノーブラじゃけぇッ!?」
と、上着を脱ぎ、上半身裸になったミモザを見て、顔を真っ赤にするクレア。
「さわってもいいよ♡」
と言うミモザだったが
「悪いけんど…
それはちょっと…。
そういうのは、いくら女の子同士でも、よくないと思うけん…。」
と言うクレア。
「私も、こればかりはクレアに同意だな。
お前の、そういうところが理解できん。」
と言うビビに、ミモザも反論できなかった…。
「あっ…!!」
と、ミモザが着替えている最中、GPベースを落としてしまった。
「えっ?
ミモザさん、ガンプラバトル、するけん?」
と訊くクレア。
「まあね。
まだ、始めたばかりなんだけど…
クレアもするの?」
と訊くミモザに
「はい☆
幼稚園の頃
からけん☆」
と、笑顔で言うクレア。
「えっ…!?
幼稚園の頃からって…?
じゃ…
クレアって…
ガンプラバトル歴10年…?」
と驚くミモザ。
「ミモザさん。
よかったら、今度の土曜日にでも、ガンプラバトルをやらんけん?」
と訊くクレア。
「いいけど…
でも、クレアって、どこに住んでるの?」
と訊くミモザに
「ブルービーチじゃけん。」
と言うクレア。
「ブルービーチか…。」
と、考え込むミモザ。
ブルービーチといえば、ビビッ島の南西部にある港町だが、ミモザが住んでいるのはビビッ島の東部だ。
ミモザが住んでいる街からブルービーチまでは、だいたい、急行電車で1時間ほどだ。
時間はともかく、行き帰りの電車代は、高校生には少々キツい出費だ…。
だが、せっかくのお誘いだ。
無下に断るのも失礼だろう。
「わかった☆」
と、ミモザはクレアからの誘いを承諾した。
「10年選手と『カテゴリーF』だけどド素人か…。
面白い対戦になりそうだな★」
と言うビビ。
「えっ?
ミモザさんって、『カテゴリーF』なんじゃけん?」
と訊くクレア。
「そういうふうに言われるのって、あんまり好きじゃないんだけどね…。」
と言うミモザ。
「どんな能力を持っとるけん?」
と訊くクレアに
「射撃が絶対に当たる能力
なんだけどね…。」
と答えてしまうミモザ…。
(バカッ★
もうすぐ、ビビッ島ガンプラバトル大会だというのに、今日会ったばかりのクレアに自らの秘密をバラすヤツがあるかッ!!)
と、ミモザにあきれるビビ…。
もっとも、大会のレギュレーションからすると、ミモザとクレアが対戦することになるのは決勝大会だ。
しかし、ミモザの実力を考えると、ミモザとクレアが決勝大会で顔を合わせる可能性は低いだろう…。
(なら、秘密をバラしても、とくに問題は無さそうだな★)
と、ビビは思った―。
◇
翌日の、大空高校の昼休み―。
ミモザとユイは、いつものように、非常階段の最上階の踊り場で昼食を食べる―。
「ユイ。
今度の土曜日、空いてる?」
と訊くミモザ。
「金曜の夕方から日曜の夜まで、私はミモザと一緒よ♡」
と言うユイ。
「あのね…
昨日、バイトで新しい娘が入ってきてね…
その娘、七尾人のクレアって娘なんだけど…
土曜日に、その娘とガンプラバトルをやろうって話になってね。」
と言うミモザ。
「そのクレアって人と、どこで対戦するの?」
と訊くユイに
「ブルービーチ…。」
と答えるミモザ…。
「ミモザ…
そこ…
どこにあるか知ってる?」
と、あきれるユイ…。
「う…うん…★」
と、うなだれるミモザ…。
「でも、私がついて行っていいの?」
と訊くユイに
「1人で行くのもアレだし…。」
と言うミモザ。
「そうだよね…。
それにしても、もうすぐビビッ島ガンプラバトル大会なのに、ミモザを誘うって…
もしかして…
それ…
誘われたんじゃなくて
スパーリング相手にされた
んじゃないの?」
という、ユイの指摘に
「そ…そんな…!?」
と驚くミモザ。
「ま、ブルービーチに住んでる人だったら、大会で対戦することもないし、手の内を明かしても、問題ないわね。」
と言うユイ。
「どういうこと?」
と訊くミモザに
「ビビッ島ガンプラバトル大会は
ビビッ島の南地区、中央区、東地区に分かれて行われる
の。
この
3つの地区の優勝チームと、七尾島の優勝チームによる4チームで決勝大会が行われる
の。」
と、ガンプラバトル大会のレギュレーションを教えるユイ。
なお、クレアが住むブルービーチは南地区だ。
「そうね…。
ミモザをスパーリング相手にするなんて、許せないわ!!
私と一緒に、そのクレアって人を返り討ちにしてやりましょ!!」
と言うユイ。
「う…うん…★
ありがと…★」
と答えるミモザだったが…
(たぶん…
そんなつもりで私を誘ったとは思えないのよね…。)
と思うのだった…。