そして、放課後の部活の時間―。
ミモザは、ユイと一緒に特別教室棟に向かう。
特別教室棟の1階の最奥に、ガンプラバトル部の部室がある―。
リンスによってレズビアンに育てられてしまったミモザだが、両親のガンプラファイターの血も、確実に受け継いでいた。
とはいえ、ミモザがガンプラバトルを始めたのは、じつは
ユイと付き合い始めてから…
つまり、まだ
ガンプラバトル歴半年ほどの、素人ガンプラファイター
なのだ…。
そんなミモザがガンプラバトルを始めたきっかけは
ユイがガンプラファイターだった
からだ。
ユイも、ミモザが元ガンプラバトル世界チャンピオンのリンスの娘だと知って驚いたが、それ以上に驚いたのが
ミモザにガンプラバトルの経験が無い
ことだった。
元ガンプラバトル世界チャンピオンのリンスの娘であるミモザが、なぜ、ガンプラバトルをやったことがないのか?
答えは単純。
ガンプラバトルに興味がなかった
からだ。
しかし、両親が元ガンプラファイターなのに、なぜ、ミモザはガンプラバトルに興味がなかったのか―?
じつは、ガンプラバトルの世界チャンピオンになったのち、ランスと結婚したリンスは
ガンプラバトルから完全に引退
したのだ。
ランスも結婚後、引退こそせずとも、ガンプラバトルの表舞台に立つことはなかった。
ランスもリンスもガンプラバトルに関わらなかったので、ミモザもガンプラバトルの世界チャンピオンの娘といえども、ガンプラバトルに関わることもなければ、興味を持つこともなかったのだ。
しかし、ユイに誘われるかたちで、ミモザも15歳にしてガンプラバトルを始めたが、これは異例の遅さである。
というのも
早い者は幼稚園の頃から始めており、中学卒業時にはガンプラバトル歴10年という者もザラ
である。
高校のガンプラバトル部にいたっては
ガンプラバトル歴5年未満の者は入部お断り
なんて学校もあるほどだ。
じつは、空高も
ガンプラバトル歴5年未満の者は入部お断り
なのである。
なのに、ガンプラバトルを始めて半年足らずのミモザが、なぜ、空高ガンプラバトル部に入部できたのか…?
それは、ミモザに
異能の力
があったからだ。
ミモザの異能の力…
それは
射撃の絶対命中
というものだった。
ミモザの、その能力が判明したのは、ガンプラバトルアリーナ【ノーマン】での、
◇
ミモザがユイと付き合い始めて数日が経った夏休みのある日、ガンプラバトルアリーナ【ノーマン】に来たミモザとユイは、
しかし、
…が、さいわい、1台空いたので、すかさず、その台に座る―。
「じゃ、まずは、動かし方のおさらいね。」
と、ユイの指示どおりに操作するミモザ。
一通りのおさらいが終わったところで、ミモザは
「そろそろ、戦い方を教えてくれない?」
と言った。
「いいよ。」
とユイは、操作練習モードから戦闘練習モードに変更する。
すると、画面中央にザクIIが現れた。
「アイツを撃てばいいの?」
と訊くミモザに
「うん。
まずは、照準カーソルを相手にあわせる。」
と教えるユイ。
正面モニターの中央…ザクIIの右隣に、白い照準カーソルが表示される。
照準カーソルをあわせるため、ミモザは操縦桿を左に動かしてザクIIに合わせると、カーソルが赤色に変色した。
「カーソルが赤くなったでしょ。
ロックオン状態ってこと。
その状態で、発射ボタンを押すの。」
と言うユイの指示通りに、右手の親指で武器の発射ボタンを押すミモザ。
発射されたビームが、ザクIIに当たる。
画面には
LEVEL1 CLEAR
と、表示された。
「次は、動くわよ。」
と、ユイの言うとおり、ザクIIが右に移動する。
ミモザも、操縦桿を右に動かす。
カーソルがザクIIを捉え、赤くなる。
発射ボタンを押す。
放たれたビームがザクIIに当たる。
すると、ザクIIは、今度は左に動く。
ミモザも、操縦桿を左に動かす。
カーソルがザクIIを捉え、赤くなる。
発射ボタンを押す。
放たれたビームがザクIIに当たる。
次は、上に動く。
ミモザも、操縦桿を上に動かす。
カーソルがザクIIを捉え、赤くなる。
発射ボタンを押す。
放たれたビームがザクIIに当たる。
次は、下に動く。
ミモザも、操縦桿を下に動かす。
カーソルがザクIIを捉え、赤くなる。
発射ボタンを押す。
放たれたビームがザクIIに当たる。
これで、レベル2はクリアだ―。
レベルが上がるにつれて、ザクIIの動きも複雑化してくる。
しかし、ミモザが攻撃をはずすことはなかった。
「ウソでしょ!?
レベル7で命中率100%…!?」
と、驚くユイ。
「練習だもん。」
と、ミモザは意に介さなかったが
「練習でも、凄すぎよ…!!
レベル7で命中率100%見たの、初めてだわ…!!」
と、驚くユイ。
「マジで?」
と、ミモザも驚く。
「なら…ちょっと記録を作ってみようかな?」
と、自信に満ちた笑みを浮かべるミモザ。
「う…うん…!!」
と、ミモザを見守ることにするユイ…。
結果―。
「やったわッ☆」
と喜ぶミモザと…
「ウソでしょ…★」
と驚愕するユイ…。
なんと、ミモザの射撃は
のだ―!!
「おい…あの女の子、スゲぇぞ!?」
「シュミレーターとはいえ、射撃練習レベル10で命中率が100%だってよ…!!」
「マジかッ!?」
いつの間にか、ミモザが使っているシュミレーターのまわりには、
「し…失礼しましたぁ〜。」
◇
イートインスペースに来た、ミモザとユイ―。
「それにしても、本当に凄いよ、ミモザ。
と、ミモザを称えるユイ。
「そんなこと言われても、私はユイに教えられたとおりの事をしただけよ…。」
と、ユイから射撃の腕を称賛されても、イマイチ実感のわかないミモザ…。
「言われたとおりにしただけで、あそこまでできないわよ…。
もしかして…
ザクの動きが止まって見えた
とか…?」
と、妙なことを訊くユイに
「そんなわけないでしょ★」
と答えるミモザ。
「てゆうか、何、それ?」
と訊くミモザ。
「そういう人がいるのよ。
そういう人を、私達は
『ニュータイプ』
とか
『カテゴリーF』
って呼んでいるんだけどね…。」
「『ニュータイプ』?
『カテゴリーF』…?」
と、ユイの言葉に、首を傾げるミモザ…。
□
ビビッ島で、ここ数年
『ニュータイプ』
や
『カテゴリーF』
と呼ばれる人達が増えている。
『ニュータイプ』
とは
ガンプラバトルで、相手の動きが止まって見える人間
のことをいい…
一方
『カテゴリーF』
とは
『ニュータイプ』ほどではないが、ガンプラバトルにおいて、何らかの異能の力を発現させる人間
のことをいう。
ただ、『カテゴリーF』は『ニュータイプ』と異なり、ガンプラバトルで相手の動きが止まって見えるということは無い。
それでも、一般のガンプラファイターにとって、脅威の存在だ。
なお、『カテゴリーF』の『F』とは『フェイク (FAKE)』の頭文字であり、本来は【機動新世紀ガンダムX】に登場する『ニュータイプのなりそこない』を意味する、一種の差別用語である。
しかし、『ニュータイプ』も『カテゴリーF』も、なぜ、そんなことが起きるのか、原因は誰にもわからない…。
一説には、プラフスキー粒子が、人体に何らかの影響をあたえているのではないかと言われている…。
□
「私はイヤね…。
『ニュータイプ』
とか
『カテゴリーF』
って呼ばれるの…。」
と、『ニュータイプ』や『カテゴリーF』と呼ばれることを拒否するミモザ。
「どうして?」
と訊いてくるユイに
「人間じゃないみたいだもん。」
とミモザは答え、オレンジジュースを飲む。
実際、ミモザのように、『ニュータイプ』や『カテゴリーF』の人が、そう呼ばれるのを嫌う者もいる。
「わかったわ。
私はミモザのことを『ニュータイプ』とか『カテゴリーF』って呼ばない。
でも、ミモザのその能力は、頼りにさせてもらうわ。」
と言うユイ。
「どういうこと?」
と訊くミモザを
「今から、実戦に行かない?」
と、ガンプラバトルに誘うユイ。
「まぁ…いいけど…★」
と、ユイの誘いに乗るミモザ。
練習で見せた、射撃命中率100%を、実戦で披露するわけだ。
こうして、ミモザはガンプラファイターとしての道を歩み始めた―。
◇
ユイとともに空高に入学し、一緒にガンプラバトル部に入部しようとしたが…
ガンプラバトル歴5年未満の者は入部お断りルール
が、ミモザの入部の壁となった…。
この時、ミモザの入部を認めさせるために、ユイは大胆な行動に出た。
ミモザの母親は、かつて『蒼空の隼』と呼ばれた、ガンプラバトルの元世界チャンピオンであること…
そして、ミモザが『射撃絶対命中』という能力を持った『カテゴリーF』であること…
その2点だけでも、空高ガンプラバトル部に必要な人材であるということを、ユイは熱弁した。
それでも、顧問のミリアは入部は認めなかった。
そこで、ユイは
『ミモザと部長が対戦して、ミモザが勝ったら入部を認める』
という条件を出した。
そこまで言うのならば…とミリアは、部長のキャロルとミモザを対戦させることにした―。
結果は、ミモザの勝利に終わったわけだが、実際には、紙一重の勝利だった。
いくら『射撃絶対命中』という能力を持った『カテゴリーF』であっても
ガンプラの操縦技量そのものは素人以下
なので、相手からの攻撃の回避や防御がまったくできていないのだ…。
それでも、キャロルに勝てたのは大金星だった。
ミリアも、ミモザの入部を認めざるをえなかった。
こうして、ミモザは空高のガンプラバトル部に入部できたのだ―。