シンデレラたちは止まれない! 作:私立聖白ビキニ女学院理事長
日曜日の昼下がり。
思いがけず珍しく半休となった私はちとせからのお誘いを受け、彼女の自宅を訪れていた。
相変わらず呆れるほど大きくて広い。
この規模にたった2人で暮らしているというのだから恐れ入る。
ちとせからは「魔法使いさんもいっしょに住まない?」と事あるごとに甘い誘惑をされているのだが、彼女の同居人が断固反対しているのと、プロデューサーと担当アイドルという立場上そうもいかないという事情もある。
インターホンを押す。
「………………………………………………………………どうぞ。チッ」
「『どうぞ』までが長過ぎん?それに舌打ちしたよな!?」
「気が短い男ですねおまえは。舌打ち?耳がおかしいのでは?ここではなく今すぐ耳鼻科へ行くのがよろしいかと」
ちとせの同居人、
「へーへーいつも通りのハリネズミ対応ですこと」
私にだけはこの態度である。
愛想こそないが見目麗しく、恵体ではないがスレンダーなプロポーションもまた美しい。
メイド服姿も実によく似合っている。
あとは本当に私に対する風当たりががマシになってくれればなあ。
そもそもがアイドルというものに対しての印象が良くない上に、ちとせと仲良くなってからはさらに険悪になってしまった。
私は心底仲良くなりたいのに。
担当アイドルを取っ替え引っ替えしているクズだと思われてるからなあ。
まあそんなのが大事な大事なちとせお嬢様に近付けば面白くはないのもわからないではない。
はいそこ、「その通りじゃん」とか言わない。
「本日は如何用ですか?」
「ちとせに呼ばれたもんでな。『日曜の午後をいっしょにゴロゴロ過ごしましょう』って」
証拠とばかりに通話アプリの履歴を見せる。
ゴロゴロ(意味深)。
「チッ」
「今のは明らかに舌打ちしたよな!?」
「してません。チッ」
「はあもういいや。じゃ」
もう彼女の方は見ず、私はちとせの部屋へと向かう。
ちとせとゴロゴロ(意味深)してこのウサを晴らそう。
と思ったのに。
進まないんだが。
「千夜」
「何か?」
「『何か?』じゃない。スーツの裾を掴んだ手を離せ。伸びるだろ」
「伸びたら燕尾服として着ればよいではありませんか」
「どこの社交界に来て行くんだよ。いいから離せ」
「よくないから離しません」
「は?どういうつもりだおまえ」
さすがに少々イラッとして彼女に向き直る。
「何が『よくない』って言うんだ」
「察しが悪い男ですね。これ以上お嬢様に近付くな、と言っている」
「『近付くな』も何も、担当アイドルにプロデューサーが近付かないのは無理だろ」
「ならば仕事上の付き合いだけにすればいいでしょう。こうしてプライベートでまで親しくするのはそれこそ問題があるのでは?」
ああ言えばこう言う奴だ。
「せっかくちとせから誘ってきてくれてるんだから」
「お前がそうさせているんでしょう」
「私がちとせから誘わざるを得なくしているっていうのか」
「ええ。でなければあの聡明で高潔なお嬢様がお前などに入れ込むはずがない」
ここで「真祖の
「私が今『そんなことなどしていない』って言っておまえは信じるのか?」
「いいえ?信じませんが」
しれっと言ってくれる。
「ではこれ以上の問答は不要だ。無駄だからな」
私は彼女の手を振りほどいて再度ちとせの部屋へと向かう。
付き合いきれない。
「待ちなさい」
今度は手首を掴まれる。
「いい加減しつこいぞ」
「お嬢様の部屋で何をするつもりだ」
「ナニをするんだが?」と返す心の余裕は今の私にはなかった。
正直ウンザリだ。
「さあな、ちとせに訊いてくれ」
「またいやらしいことをするつもりか?」
「そういう雰囲気になったらそうなるんじゃないのか?」
「私が『するな』と言ってもするのでしょうねお前は」
「おまえに止める権利があるのか?第一ちとせ本人が望んだことなのに」
「ならば私で我慢しろ」
「なに?」
耳を疑う。
今こいつは「自分としろ」とそう言ったのか。
手を振り払う。
「おまえがちとせの代わりになると?」
「そうだ」
正気か。
「お嬢様の豊満さには比肩すべくもないが、190人全員と関係を持っているぐらいだ、私のような粗末な肉体でもそれはそれで楽しめるのだろう?」
「自分を卑下するな。私はおまえの身体を『粗末』だなんて一度も思ったことはない。それとこれだけは言っておく。誰のことを揶揄したのかは知らんが、仲間を侮辱するのは許さん」
千夜を睨みつける。
さすがに今の発言は到底看過できるものではない。
「……不用意な発言でした。撤回の上謝罪する。お前にではなく、アイドルのみなさんにな」
とことん一言余計な奴だ。
「だが『お嬢様の代わりに私を使え』と言ったことには変更はない」
まだ言うか。
「ではこちらももう一度言おう。プロポーション云々ではなく、お前が私を満足させられるのか?テクニックも愛情もないお前が。ちとせとする気を失くすくらいに?寝言は寝て言え。言っておくがおまえにされても190人中ダントツで気持ち良くないからな」
「それはどういう意味だ」
カッとなった千夜が詰め寄る。
「そのままの意味だ。私のことを好きでもなんでもないお前が見よう見まねで奉仕したところでビクともせんよ」
「大きく出たものですね。女であれば誰でも盛るサルのクセに」
「じゃあやってみろ。射精どころか勃起でもしたらお前の勝ち、金輪際ちとせには手を出さないと血判付きの誓約書でもなんでも書いてやる」
「言いましたね。その言葉、ゆめゆめ忘れないように」
「そこへ座りなさい」
ぞんざいに近くのスツールをあご先で示されて仕方なく腰掛ける。
「で?」
「『で?』ではない。さっさと脱いだらどうです?」
こいつ。
「勘違いするなよ千夜。これはおまえが望んだことだ。私は仕方なく付き合ってやっていることを忘れるな」
「……お前の言う通りですね」
千夜は無表情のまま膝を折り、私のズボンのベルトへと手を伸ばす。
無言でベルトを外すと、極めて作業的にファスナーを下ろす。
「……」
私が腰を浮かせてやると、一瞬の躊躇の後、雑にズボンとトランクスを一気に下ろした。
「……」
「なんだ、見てるだけか?」
「……わかっています」
そう言うと全く元気のない男性器をゴミを拾うように嫌々つまみ上げると、何の配慮もなく乱暴に握って上下に動かす。
「痛っ!」
「あっ!……申し訳ありません」
堪らず私が悲鳴を上げると、さすがに本当に悪いと思ったのか千夜が能面を外して謝罪した。
潤滑油なし膨張率ゼロのペニスをあんなに粗雑に扱われては、我慢できるものではない。
数分後。
千夜は黙々と微動だにしない私のペニスを全く同じ動きで擦り続けている。
「なあ」
「……なんです?」
「手袋が痛いんだが」
「手袋を脱いでお前のモノを直に触れと?」
眉間に深々とシワを寄せて訊き返してくる。
「痛くないとでも思ってるのか?そんな皮の手袋でただゴシゴシされて。私はマゾヒストじゃない」
「……はあ」
わざとらしく大仰に溜め息を吐いてみせる千夜。
そして引き千切るようにして両方の手袋を脱ぐとゴミ袋へと放り込む。
「何も捨てなくても」
「お前のモノを触った手袋を洗ってまた使えと?」
「さいですか。勝手にしろ」
言わなきゃよかった。
「言われなくてもそうします」
どすんとまた私の前に正座すると、今度は躊躇なしに素手でむんずとペニスを掴む。
こすこす。こすこす。
先程までよりかは感触自体ははるかにマシだが、素手になった分嫌悪感がさらに増したようで手コキは余計に下手になった。
「…………」
熱心に、というよりは無心で擦っているのだが、「痛い」と言わせてしまった手前大胆な動かし方もできず、完全に攻めあぐねている。
激しい手コキはカウパー然り潤滑油あってこそだということを忘れてはならない。
ローションを使うという知識もないだろうし、それを教える気もない。
さりとて唾液を垂らすなんて発想にも至るまい。
「ふあ~あ」
退屈過ぎて欠伸が出る。
こんな美少女に手コキされて暇を持て余すこととかある?
あるんだなあ、実際、ここに。
「もういいか?」
「『もういい』とは?射精するのですか?」
「勃起もしてないのになんで射精できるんだよ。『もう諦めがついたか』って訊いてるんだ」
「なぜ諦める必要が?」
「見ろよこの状況を。もう何十分もシコシコシコシコしてんのにピクリともしないだろ?これ以上やっても無駄だろ」
「まさかとは思いますがお前、身体に針などを刺して痛みで快楽を誤魔化しているのではないでしょうね?」
「してねーよ!じゃあ全裸になるから刺した跡があるかどうか確認しろよ!?」
「お前の全裸など見たくありません」
「なら言うなよ!ったく、フェラもしないんじゃどうにもなるわけないだろ」
私は会話の応酬は好きだが、あくまでそれはウィットに富んだもののことであって、このようなギスギスしたものではない。
「フェ……口淫すればいいのですか?」
「あ?」
「口淫すれば満足するのかと訊いているのです」
「フェラで1回射精するだけで満足するわけないだろ。ちとせと3Pを何回かしたことがあるんだ、それぐらいおまえだって知ってるだろ白々しい」
「ではどうしろと」
「『どうしろと』じゃねーよ!勃起もしないのにどうやって挿入だのセックスだのするんだよ!?で、フェラもしないのに勃つわけないだろっつってんの!!」
爆発した。
こいつが天然ではないことは百も承知だ。
わざとこちらを苛立たせる言い方をしているのだ。
普段ならわかる。
だがこれから勃起させて射精させて満足させなければならない相手にする態度ではない。
「なあ千夜、おまえは美人だしかわいいよ?おまえのファンやおまえと初めて会うような人間ならおまえとこういうシチュエーションになっただけで大興奮だろうさ。私だって今これだけおまえにムカついててもそれでもおまえのことをまだ美人だしかわいいと思う。でもな、それだけでこれ以上はもう無理だわ。このまま続けてても射精どころか勃起もしないよ」
一気にまくし立てた。
あ、千夜がびっくりしている。
私がキレたことよりも、「美人でかわいい」と言われたことに。
自分のこの態度でまだそう思ってもらえていたことが不思議なようだ。
千夜、みくびるな。
おまえに惚れてアイドルにしたのは他の誰でもない、この私だ。
「考えを改めます。口淫しなければこの先一歩も進まないことは認識しました」
「いや、だからもういいって」
「座ってください」
「なあ」
「座ってください」
「……はあ」
この女、頑固過ぎる。
私は溜め息とともに再度スツールに腰を下ろす。
「では……」
千夜が私の太ももの両側に手を置き、顔を近付ける。
「ちゅむっ」
まるで勃起していない状態なのだから、いきなりペニスの大部分を口内に含むことになる。
「……」
眉間のシワがすごい。
ちとせが隣にいない状態で独りで私に対して奉仕するのがそんなに嫌か。
私は内心で大きな大きな溜め息を吐く。
これまでの手コキなんかよりやはりフェラともなるとずっと気持ちいいが、この表情を見せられてしまっては萎える。
嫌がる女にイラマチオさせることに興奮を覚える男は多いと聞くが、私にはその性癖はない。
情事は相互コミュニケーションであるべきで、一方的なのは暴力と変わらない。
千夜、これまで確かに私はおまえに意にそぐわない仕事をいくつもさせてきた。
萌えに特化したものであったり、弾けたものであったり。
でもその時は散々文句を言ってはいても、最終的には仲間と笑い合っていたじゃないか。
その経験は悪いものだったか?
財産にはなっていないのか?
まだこんなにも私のことが嫌いか。
ちとせと仲がいいと言うだけで。
そんなにも。
「いつまでそうしてるつもりだ?口に入れただけで舐めもしゃぶりもせずに」
「……ぷあっ。口にしただけでおぞましいというのに舐めろ?しゃぶれ?冗談でしょう」
「それでよくもまあ『口淫する』なんて言えたもんだ」
私は呆れ果ててスマホを取り出して弄ることにした。
この期に及んでまだ覚悟が決まっていないのではどうにもならない。
それからまた数十分が経過した。
千夜は石化したようにしなびたペニスをただ口に含んだままだ。
と、そこへ。
「ねえ魔法使いさん、まぁだ?」
バスローブ姿のちとせが現れた。
「お嬢様!」
吐き出すようにして私のペニスから口を離すと、弾かれたように立ち上がり、慌てて口元を拭う。
「お嬢様!あの、これは!」
「あーいいのいいの。ぜーんぶ知ってるから」
「それはどういう」
「ね?」
ちとせが私に向かってウインクしてみせる。
それに私は手に持ったスマホを振って応える。
千夜が口に含むだけのフェラもどきをしている間、スマホでちとせとずっとやり取りしていたのだから当然だろう。
「お前!」
私をキッと睨む千夜。
「あら、私と魔法使いさんとの約束があるのを知っていてそれを邪魔し続けていたのは千夜ちゃんよね?あなたにこの人を怒る権利なんてあるのかしら?」
「そ、それは……」
両の拳を握り締め、やり場のない怒りに震える千夜。
「お嬢様!お嬢様はなぜそこまでこの男に入れ込むのですか!?こんな男のどこがそんなに!?」
「千夜ちゃん、『私の前であの人を悪く言うのはやめて』ってお願いしたわよね?」
「ぐっ……!」
千夜がちとせに詰め寄るも、出鼻をくじかれて鼻白む。
「はあ、何度言ったらわかってくれるのかしら。……ねえ、魔法使いさん?」
「ん?」
「千夜ちゃんにはもうアレを見せないとダメなんじゃないかしら?」
「いや、おまえアレはショックが大きすぎるだろう?さすがに危険だ」
「でもいつまでも隠し通せるものではないし、そうするべきでもないわ」
「それはそうだが……」
「アレ」というのはちとせに刻まれた
「……おまえと千夜の関係だ。最終的にはおまえの判断に任せる。そして私はどんな結果になろうとそれを肯定するよ」
「さっすが私の魔法使いさん!だから好きよ」
「待て、何の話をしている?」
自分を置いてけぼりにして交わされる不穏な会話に千夜が危険を察知して珍しく動揺を見せる。
「ねえ千夜ちゃん、これを見て」
「お嬢様?」
決意を込めた表情でちとせがバスローブの前を開く。
「んっ……!」
下腹に力を込めるちとせ。
するとそこには真紅の
「お嬢様!それは
青ざめた千夜がちとせの下腹部にすがりつく。
「ああなんておいたわしい!聡明で高潔なお嬢様のお美しいお身体にこのような!」
今にも泣き出しそうな表情の千夜。
「……お前か」
が、突然こちらを振り向いて私を睨みつける。
「お前か!?お前だな!私のお嬢様によくもこんな!お前と出会ってからお嬢様には悪影響しかなかった!挙げ句の果てにこんな!こんな!こんなこんなこんな!!お前のせいだ!何もかもお前のせいだ!お前さえいなければ!殺してやる!!私が今すぐこの場でお前を殺してやる!!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねえーっ!!!!」
矢のように飛びかかってきた千夜によって床に押し倒されてしたたかに後頭部を打ち付けた上に両手でものすごい力で首を絞められ、意識が遠のく。
「ぐうぅぅぅ……!」
「魔法使いさん!千夜!やめなさい!」
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねえーっ!!!!」
「千夜!!」
ちとせが千夜に駆け寄り、首筋を2本の指先で押さえる。
「あうっ!」
半狂乱だった千夜が気を失い、糸が切れた人形のように崩れ落ちる。
「ゲホッ!ゲハッ!」
喉元を押さえて私は激しく咳き込む。
喉に内出血のように千夜の指の跡が残っていた。
「魔法使いさん、平気?」
「……ああ、なんとかな。それにしても、予想以上の反応だったな」
「ええ、そうね。私はこのまま千夜ちゃんを寝かせるわ。悪いけど今日このあとは……」
「わかってる。とてもそんな気分じゃないからな。私も自宅で休むよ」
「ごめんなさいね。この埋め合わせは必ず」
「気にするな。元はと言えば私が招いた結果だ」
そう言いつつも、私の脳内によぎるのは数日後千夜に控えた大口の仕事のことだった。
かなり前から準備をして、先方に頼み込んで頼み込んで千夜を起用してもらったビッグプロジェクトだ。
このショックで穴を空けなければいいが……。
だがそれを口にはせず、そのまま私はちとせの家を辞した。
悪い予感ほど的中するものだ。
案の定千夜は翌日から心労によって伏せ、仕事を休むこととなった。
ちとせをしても「無理はさせられない」状態らしく、強制力を働かせて動かしたとしてもロクなことにならないそうだ。
そうして数日が経過し、危惧していた通りビッグプロジェクトはあえなくご破算となった。
私は会社の大会議室へと呼び出された。
大層ご立腹な相手先の社長自らが乗り込んで来て、「今回のプロジェクトの責任者を出せ」と吠えているそうだ。
「この度は大変なご迷惑をおかけいたしまして、誠に申し訳ございませんでした!」
誠心誠意、最大限の真心を込めて私は頭を下げて謝罪した。
「あ~ん?随分と上から声がするもんだなあ?」
が、相手には全く届かなかったようだ。
一番いい椅子にふんぞり返った社長が苦々しい声を発する。
……そういうことか。
躊躇なく私は両膝を床に突く。
「プロデューサーさん!?」
「
同席していたちひろが悲鳴のような声を上げるが、隣りの
専務は専務でキツく拳を握り締めていてくれるのが見て取れた。
「重ね重ね、非礼の数々をお詫び申し上げ」
床に額をこすり付ける私の後頭部に灼熱感が走った。
「ぐっ!」
次いで酸味のある香ばしい香りが周囲に漂う。
コーヒーをぶっかけられたか。
このためになけなしの有り金をはたいて高級スーツを仕立てたのだが、一瞬でダメになってしまったな。
「担当アイドルの不始末はプロデューサーである私の責任」
「本当だよ!」
「がっ!」
後頭部に激痛が走る。
今度は思い切り靴の踵で踏み付けられたらしい。
鼻孔の奥が熱く、鼻血が出たのがわかった。
「私がこっちの金髪巨乳がいいと言うのに貴様が貧相で無愛想なおかっぱをあまりにも推すものだからその目を信じて乗ってやったのにこのザマだ!何が『本当はかわいい』だ!何が『彼女にしかない魅力がたくさんある』だ!プロ意識のないクズではないか!」
踏み付けられた上にグリグリと踏みにじられる。
私は自分が今受けている屈辱よりも、千夜が罵倒されていることの方が悔しくてたまらなかった。
「貴様が哀れで仕方ないわ。なあ、どうしてそこまであんな小娘に入れ込む?何が貴様をそこまでさせる?」
私は顔を上げて社長を見た。
……つもりだったが、なにやら視界が赤い。
まあいいか。
「それは私が彼女に心底惚れ込んでいるからです。彼女は本当はとても愛らしく、彼女にしかない魅力をたくさん持っているからです」
「もういい!話にならん!敏腕プロデューサーという話だったが、目が曇りきっておるわ!こんな所にこれ以上もうおれん!帰らせてもらう!」
肩を怒らせ、ガニ股で社長は去って行った。
「プロデューサーさん!」
ちひろが慌てて駆け寄って来る。
「プロデューサーさん!目が!」
「え?そう言えばさっきから視界が赤いんですが」
「血圧が上がり過ぎて毛細血管が破裂したんだ。それに頭部から出血もしてるな。さっき踏まれたからか……いや、違うな、両のこめかみからの出血してるな。君、大丈夫なのか!?」
専務も心配してくれる。
「怒りを我慢し過ぎたからですよ!ああっ、爪が食い込んで手からも血がこんなに!って、プロデューサーさん!?」
「あれ……急に足が……目眩かな?はは、この程度でフラつくなんて私もひ弱になったもの」
そこで私の意識は途絶えた。
そのプロデューサーと取引先の社長のやり取りを、会議室の外からずっと見ていた人影があった。
千夜は気が進まない様子だったが、ちとせに脇をしっかりと抱えられ、前を向かされていた。
ここに来るのは嫌で嫌で仕方なかったが、主人の命には逆らえない。
プロデューサーが深々と土下座をした。
「ハッ、ザマはない。なんて無様な姿だ」
千夜がその姿を鼻で笑ってみせる。
「あなた、それが本心からの言葉なら心底軽蔑するわ。誰のためにあの人はああしているのかしらね」
「……私の、せいです」
「そうね。ならあなたにはあの人から一瞬たりとも目を離さない義務がある。そうよね?」
「はい……」
全てを見透かす主人の前に、千夜の虚勢は脆くも崩れ去った。
プロデューサーが煮えたぎったコーヒーを頭に浴びせられた。
「!」
千夜の表情が変わる。
「……」
ちとせは無言を貫いているが、千夜の腕を掴む手の力が強くなったのが彼女にはわかった。
プロデューサーが土下座している後頭部を踏み付けられ、踏みにじられる。
「あいつ!」
千夜が会議室へ飛び込んで行こうとするが、ちとせに止められる。
「お嬢様!なぜ止めるのです!あいつが!」
「我慢なさい」
「どうして!?お嬢様はなんとも思わないのですか!?」
「私が……なんとも思っていないと思うのあなたは?」
「っ!」
千夜は見た。
彼女の腕を掴んでいる方ではないちとせの手を。
それはコンクリートの壁を掴み、割り砕いていた。
その指先の爪は長く、硬く、毒々しく、人ならざる異様を放っていた。
「お嬢様……」
「しっかりとその目に焼き付けなさい。あの人のすることの全部を。しっかりとその耳で受け止めなさい。あの人の言うことの全部を」
『それは私が彼女に心底惚れ込んでいるからです。彼女は本当はとても愛らしく、彼女にしかない魅力をたくさん持っているからです』
プロデューサーの晴れやかな表情、晴れやかな声音。
紙も服装も乱れ、血とコーヒーと靴底の泥で汚れていたが、その言葉は澄み切って聴こえた。
ざあっ。
千夜の心に一陣の突風が吹き抜けた。
「………………」
言葉にならない。
できない。
この感情は一体何だ?
胸が、苦しい。
「千夜ちゃん、あなた、愛してしまったわね?」
「私が?……誰を?」
主人が何を言ったのか理解できなかった。
「あなたが、魔法使いさんをよ」
「私が、あの男を、愛した?そんなこと、ありえません」
千夜は引きつった表情で首を左右に振る。
「認めなさい」
「認めません。真実ではないのですから。認められません」
「これでも認めないと言うの?」
「あっ!お嬢様、何を!?」
ちとせの手が千夜のスカートの奥のショーツのさらに奥の秘部に伸びる。
ぴちゅっ。
引き抜かれたちとせの指先は確かに愛液で濡れていた。
「汗や失禁だなんて言わないわよね?」
「そ、それは」
「なら自分で味わってみなさい。あの人を愛した証拠を」
「うっ……ちゅぷ……れるっ……」
口の中に指を突っ込まれ、自らの愛液を舐めさせられる。
確かにそれは汗でも小水でもなかった。
『もういい!話にならん!敏腕プロデューサーという話だったが、目が曇りきっておるわ!こんな所にはもうおれん!帰らせてもらう!』
取引先の社長が大股でふたりの方へと近付いてきた。
それを見てちとせは放心状態の千夜を角の向こう側へと隠す。
「ん?おまえは?」
社長がちとせの姿を見つける。
「こんにちは」
「おお、君か。おお、おお、こうして実物を間近で見るとその類まれな美しさを実感できるな。やはりあのちんちくりんなんかよりずっといいわな。どうだ?今夜俺と」
「ごめんなさい。あいにく予定は空いてないの」
キィィィィィン。
ちとせの瞳が妖しい光を放つ。
「そ、そうか。また今度な」
社長はなにやらフラフラとした足取りで去って行った。
「残念。あなたにはもう『今度』はないの」
「千夜ちゃんもういいわ。こっちへ来て」
「はい……」
重い足取りで千夜が戻って来る。
『それは私が彼女に心底惚れ込んでいるからです。彼女は本当はとても愛らしく、彼女にしかない魅力をたくさん持っているからです』
プロデューサーが社長に言った言葉が彼女の脳内に何度も反響していた。
あの男はまだ、これだけの事態を引き起こしてなお、自分に対してそんな風に想っているのか。
理解できない。
全く理解できない。
そして自分は主が言うように、本当にあの男を愛してしまったのだろうか。
そんなはずがない。
そんなはずが。
『プロデューサーさん!?』
ちひろの悲鳴が聞こえ、そちらを向くと、まさにプロデューサーが崩れ落ちる瞬間だった。
「ああああああああ!!!!」
千夜は声にならない叫び声を上げながら、気付いた時には彼の元へと駆け出していた。
血だらけの頭部で気を失っているプロデューサーにすがり付き、抱き締める。
「この男の面倒は私が看る!誰も触るな!!」
両目から熱い涙を流しながら宣言する。
その時千夜は実感した。
ああ、自分は本当にこの男を愛してしまったのだと。
(ここはちとせの家……か?だがこんな部屋は見たことがない)
意識が浮上した私は顔を動かして周囲を確かめたが、まるで見覚えがなかった。
まだ後頭部には鈍痛がかすかに残っている気がする。
「気が付きましたか。ここは私の部屋です」
「……千夜?」
声がした方に視線を動かすと、私が寝かされたベッドの足元の椅子に見慣れたメイド服姿の少女がいた。
「殺風景でしょう?お嬢様以外を初めて通しましたし、お前が見覚えがないのも当たり前です」
心なしか彼女の雰囲気が柔らかい気がするが、きっと気のせいだろう。
私は彼女に嫌われているからな。
ははは……。
「私はあれからどれぐらい寝ていた?」
「丸一日といったところです。日頃の疲労も出たようですね」
「そりゃ大変だ。仕事に戻らないと」
身を起こそうとする。
「莫迦かお前は!」
すっ飛んできた千夜にベッドに戻された。
「ち、千夜?」
「……まだ、寝ているべきです。仕事の方はちひろさんや専務、それにお前のスケジュールを把握、管理しているまゆさんや
「そうか、みんなには本当に苦労をかける」
「みんなやりたくてやっているのだから問題ないでしょう」
「やっぱり千夜、おまえ、なんかおかしくないか?それともそれも何か私に対する新手の嫌味なのか?」
「ちがっ!……違います」
「?……お、おう」
焦って否定しようとする千夜の態度に激しく違和感を覚える。
沈黙が訪れる。
「私は」
「ん?」
「私はお前が私に好意を向けても、今までそれを全否定してきました」
「ソウダネ」
「それは今までお前を誤解していたからです」
「そうなの?」
「はい。私がお前を嫌っているからこそわざとそういう素振りを見せたりしているのだと。生意気な女をやり込めてやりたいのだと。そんな風に考えていました」
「あー……まあ私の日頃の行ないがな?しょうがないな!」
「ですが、お前は本当に私のことをずっと想っていてくれたのですね」
「そりゃお前をスカウトしたのは私だし……ってほんとどうしたんだ急に」
「見ていました。私がしでかした取引先の社長とのやり取りを」
「うえぇ!?あれ見てたの!?恥っず……」
「恥ずかしくなんてありません!……あれを見て、私はお前に対する認識を改めたのですから」
「だったらあれも無駄じゃなかったのかな。いや、むしろ怪我の功名か、はは」
再びの沈黙。
「なあ千夜」
「はい」
「私をお前の2番目にしてくれないか?」
「2番目?」
「うん。1番はちとせでいいんだ。でもそのずーっとずーーっと下でいいから、おまえの2番目になりたいんだ。直接笑顔を見せてくれなくてもいい。遠くからちとせに向ける笑顔を眺めることを許してくれないか?それだけでいいんだ」
「ばかですね、お前は」
笑った。
千夜が。
こんなにも近くで。
私に、私だけに。
笑ってくれた。
「なぜ泣くのです」
「えっ!?うわ、ほんとだ、なんで泣いてるんだ私!恥ず!恥っず!」
泡を食って両袖で交互に目尻を拭う。
なんてことだ。
「……なのにそこはそんなになっている」
千夜のジト目の先は。
ギンギンに愚息が勃起していた。
「あー最低だ私って!せっかくこんないい雰囲気に初めてなったのに!ブチ壊しだよ!」
頭を抱える。
「あの時、手淫しても口淫してもそうはならなかったのに」
「だってさー、あの時は特にさー……」
「……口淫、しましょうか?」
「えっ」
「ですから、口淫を」
「嫌じゃないのか?」
「嫌ではありません、もう今は」
して欲しい。
今すぐして欲しい。
愚息もそれを期待して早くも先走り液を分泌させ始めている。
が。
その前に。
「あの、千夜、その、さ」
「何でしょう。言ってみてください」
「キス、したい」
「そうでしたね。自分のものを口淫した直後の唇と接吻するのは男性としては嫌でしょう。気が回りませんでした」
千夜が頭を下げる。
「いやいや!そんなにかしこまらないでくれ!私が気にし過ぎているだけだから!」
「お前の望むままに。……そう言えば」
「ん?」
「『お前』はやめた方がいいでしょうか」
「なんで?」
「これまでは不信感もあり、そう呼んでいましたが、誤解が解けた以上そのままはどうかと」
「とは言ってもなあ。急にみんなのいる前で変えたら勘繰られるだろ」
「私は一向に構いませんが」
「おまえはどこの拳法の達人だ」
「?」
「いや、こっちの話だ。で、おまえ自身は変えたいのか?」
「あまりにも『お前』と言い慣れてしまっているのでなかなかすぐにとはいかないでしょうが、徐々に」
「そうな。じゃあ試しに言ってみてくれよ?プロデュー」
「旦那様」
「……は?」
「旦那様」
「いやいや!いやいやいやいや!いきなり過ぎるだろ!なんで急に!?」
「こちらはご指導ご鞭撻をいただく立場である上に、お嬢様の想い人でもあるですから当然でしょう」
「なんかめっちゃ照れる。そう呼びたいのか?」
「はい」
即答!
しかも目を輝かせおって。
別人すぎる。
「そっちはおいおい、二人っきりとかちとせと3人の時にな?」
「……はい」
残念そうだ!
「まあ今はまだ『お前』のままでもいいじゃないか!私は嫌いじゃないぞ!むしろ好きだ!」
「ですが
気にしてたのォ!?
そんな独占欲見せてくれちゃうのォ!?
「千夜っ!」
辛抱堪らず千夜の細い身体を抱き締める。
「お前、急に」
千夜が抱き締め返してくれながら苦笑する。
「悪い。でもおまえがかわいすぎるのも悪い」
「私などがかわいいはずが」
「そんなことを言う唇はこうだ」
自分の唇で千夜の唇を塞ぐ。
「んっ……ちゅくっ……えるっ……ぴちゅっ」
彼女の唇は薄めだが、それでもやっぱりちゃんと女の子らしく弾力があってツヤツヤだ。
「ちゅるっ……ぺるっ……くちゅっ……くちゅっ……れるっ」
いつまでも味わっていたくなる。
なにしろ二人っきりでのキスは初めてで、心を開いてくれてからのキスなのだからなおさらだ。
「千夜……千夜……」
「は……ん……そんなにがっつかなくても私はどこにも行きません。それにこれからいくらでもできますから」
「本当に?してくれる?」
「ええ、お前が望むならいつでも」
「やった!でも今ももっとしたい」
「ふふ、どうぞ」
千夜の柔らかな微笑みに脳が痺れる。
私たちは唇がふやけるぐらい、舌が疲れるぐらいキスをした。
「どうしますか?まずは口淫いたしましょうか?」
「千夜、もう
「わかりました」
するすると千夜がメイド服を脱いでいく。
が、途中で止まってこちら向く。
「もしや、メイド服のままの方が良かったということは?」
「それはまた今度な!今は裸同士でしよう!な?」
「かしこまりました」
そんなこんなで全裸になった千夜がベッドに横たわり、両手で胸を隠す。
「なんで胸を隠すんだ?」
「私の胸など見ても面白くないでしょう。胸はお気になさらず挿入を」
「見せて」
「ですが」
「見せて?」
「……」
渋々千夜は胸元をガードしていた両手をどける。
私はその両手首を持ち、じっくりと彼女の乳房を眺める。
「だから言ったでしょう。『面白くない』と」
「綺麗だ」
花の蜜に誘われる蝶のように私は乳房の先端の蕾に口を付ける。
「んっ!」
ぴくり、と千夜の身体が跳ね、その振動で小ぶりな胸もふるふると揺れる。
「胸が小さい女性は敏感」などという都市伝説の真偽は定かではないが、少なくとも彼女はとても敏感だった。
夢中で乳首を吸い、舌先でぴんぴんと弾く。
その度に小さく声を上げる千夜が愛おしくてたまらなかった。
「あの、そろそろ」
息を荒くした千夜が私を促す。
このままだと胸への愛撫だけで達してしまうと危惧したのだろうか。
私はそれにうなずく。
正直私の方も千夜とつながりたくてウズウズしていたのだから。
ちゅくり。
鈴口を膣口にあてがう。
千夜を顔を見ると小さくうなずいてくれた。
彼女とセックスするのはもちろん初めてではないが、これまでは必ずちとせもいた。
変な話だが、一対一は初めてなのだ。
「千夜、初めてだな」
「そうですね。……どうぞ、来てください」
「おまえが好きだ。愛してる」
じゅぷんっ。
一気に根本まで突き込む。
「は、あぁっ!……ふっ、うっ、く」
まるで破瓜の時のように千夜が歯を食いしばる。
私は私で歯を食いしばり、あまりの気持ち良さにそのまま放ってしまわないようにするのに必死だった。
「危なかった」
「私もです」
私たちは正直に告白し合い、見つめ合い、思わず吹き出して、また見つめ合ってからキスをする。
「ちゅくっ……にゅるっ……れりっ……ぺちゅっ……ぴちゃあ……ねりゅっ……くちゅっ」
挿入したまま途絶えることなくキスを続ける。
下は性器同士でつながり、上は唇と舌とでつながり、まるで輪になったかのようだった。
きつく抱き締め合ってはいても、キスしながらの激しい腰遣いは安定しにくく、なかなかに難しい。
すると、それを察してくれたのか千夜が私の腰に両脚をクロスする形で絡めてきてくれた。
彼女はいわゆる「だいしゅきホールド」なんて代物は知識として持ってはいないだろうが、私のことを想って結果的にこうなったのだ。
「こうすれば外れそうになる心配もないでしょう」
「ありがとう千夜。おまえのその心遣いがとても嬉しいよ」
そしてまた唇を合わせ、舌を存分に絡ませ合う。
ばちゅんっ!ばちゅんっ!ばちゅんっ!ばちゅんっ!
「んんっ!んんっ!んんっ!んんっ!!」
フックがあるのをいいことに私は無我夢中でピストン運動を繰り返し、その度に千夜は下唇を噛んで嬌声を押し殺す。
「聴かせて、千夜の声」
彼女の喉笛を何度も舐め上げては吸い付く。
「で、ですが」
「聴かせて?聴きたい」
じゅくりっ!
「んあんっ!」
不意に大きくねじり込むと、たまらずこれまでにはないボリュームの声が出た。
「かわいい」
「かわいくなど」
じゅぐんっ!じゅぐんっ!じゅぐじゅぐんっ!!
「んあんっ!んっ!あっ!んあっ!ああんっ!」
「やっぱりかわいい」
「……なんとでも」
頬をわずかに朱に染めてそっぽを向いてしまう。
「かわいい!かわいい!千夜はかわいい!」
ぱぱんっ!ぱぱぱんっ!ぱぱんっ!ごりごりぐりゅんっ!
「んん~~~ああーっ!」
千夜が白い喉を反らし、彼女の
「千夜、そろそろ」
「はい」
私は一度抜くつもりで言ったのに、何を思ったのか彼女はさらに両脚の力を強くした。
「このままだと、おまえの
「ええ、ですからそのように」
「いいのか?」
「くどいですよ。断る理由はありません」
「千夜!千夜!千夜っ!千夜っ!」
じゅっぽずっぽじゅっぽずっぽぬぷぬぷじゅぶじゅぷっ!
ラストスパートをかける。
「あっあっあっあっあんっあんっあんっあぁっ!」
「千夜おっ!!」
じゅぐりゅんっ!
「ああーーーーーっ!!」
どっぷ!びゅぐびゅぐ!どぴゅるびゅるびゅびゅ!びゅっ!びゅびゅびゅっ!びゅびゅーっ!!
千夜の初めての心からの絶頂声を聴き、私も一気に限界を突破して彼女の
びゅびゅっ!びゅびゅっ!びゅびゅっ!
「あ……あ……あ……」
まだまだ続く射精に、彼女はさらに両脚を堅く閉じることでザーメンの外への流出を防ごうとしていた。
「千夜……とてもとても素敵だった」
「はい……これが心通わせる者同士の本当の性交なのですね」
終わりの見えない射精を続けながら、私たちはもう一度唇を重ねた。
「える……れぇる……ぺりゅっ……ちゃぽっ……ちゅぽっ……れえっ」
あれからも何度も何度も数え切れないぐらい抱き締め合い、キスし合いながらセックスをして、さすがに一区切りということで今、千夜はそれはもう丹念に丁寧にお掃除フェラをしてくれている。
「そろそろいいかしら?」
コンコンと、扉をノックする音が聞こえ、にゅっとちとせが顔を出した。
「ちとせ」
「お嬢様」
「あら千夜ちゃん、もう慌てて離れたりしないのね?」
「はい。まだ旦那様のものを綺麗にしきれておりませんので。……ちゅっ」
「へぇ~、『旦那様』ねぇ?」
ちとせがニヤニヤしながら私たちを見てくる。
「違うんだこれは。なっ、千夜?」
「違いません。……ぺるっ」
「千夜~」
「あはは、いいじゃない。私は素敵だと思うわよ?」
「そうかぁ?露骨すぎやせんか?」
それからしばらく我々は歓談に興じた。
「時にお嬢様、ひとつお尋ねしたいことが」
「なぁに、千夜ちゃん」
「人間と人間の間に
「千夜ちゃんもしかして欲しいの?私のがうらやましいの?」
「可能なのですか?」
ちとせの問いには答えず、千夜は憮然として質問を繰り返す。
「あはっ、あははははははっ!千夜ちゃんがこんな面白い子だったなんて!ずっといっしょにいたのに知らなかったわ!あははっ!」
笑い転げるちとせ。
「おいちとせ、それぐらいにしといてやれよ。千夜涙目だぞ」
「あー笑ったー……」
目尻の涙を人差し指の第二関節で拭うちとせ。
「真祖の私にすらできたんだから、人間同士でもできるかもね?この世は想像もできなかったことが起こるものよ?」
そう言ってちとせはキュートにウインクしてみせる。
「いいことを聞きました。お嬢様ありがとうございます。では早速続きをするとしましょう」
言うが早いか、千夜は私を押し倒して上に跨る。
「さあ、私にも
「嘘ォ!?」
「嘘ではありません。さあもうお掃除の時間は終わりです。早く硬くして私の
「あははははははっ!お腹痛い~!」
「千夜ー!ちとせ~っ!」
それがここに来て急に大きく変化した。
なにやらさらに複雑化した気もするが、やっとしっくり来たような気もする。
欠けていたピースが埋まり、我々3人は1つになった。
強く堅く結ばれたつながりは、これから先どんな困難が襲ってきてもビクともしないだろう。
黒と白が混ざれば灰色になるのではない。
赤になるのだ。
そう、我々3人の誓いの絆のように。
千夜からPへは「お前」で、Pから千夜へは「おまえ」。