シンデレラたちは止まれない! 作:私立聖白ビキニ女学院理事長
なんなんだ。
なんだっていうんだ。
こっちはもう二徹してるんだぞ?
たった一人で190人のアイドルを担当しつつその上無能な上司の尻拭い、使えない部下のフォローなどなどを並行して行ない、現場にも同行してるんだぞ?
それをなんだ!?
次から次から!
もう何本ちひろさん印のエナドリ飲んだか憶えてねーよ。
定時?
今日もそんなものはとっくに過ぎている。
そもそもそんなものは都市伝説だろ。
休みだっていつ以来もらっていないだろうか。
……
ひとえにアイドルたちへの愛で身体を突き動かしているが、それでもこうしてガタが来る時はどうしてもある。
私は不老不死ではない。
神でも機械でも疲れもすれば壊れもする。
人間ならなおさらだ。
今夜もお仕事お持ち帰りである。
数々のアイドルたちからのアプローチを泣く泣く断り、
私以外はブラック企業ではないらしく、巡回してきた警備員に追い出されてしまったのだ。
「♪」
会社の玄関先でSEが鳴り、スマホの画面を見ると通話アプリにメッセージがあった。
ふむ。
これはますます早く帰宅しなければならなくなったな。
「やあ」
玄関先に三角座りでうずくまっていた飛鳥が目深に被ったフードの先からわずかに顔を上げて短い挨拶をしてくる。
これまでも何度もあったことだ。
「『やあ』じゃないだろ」
「だったらなんだい?」
「『にゃあ』だろ?
「……にゃあ」
この場所で押し問答することのリスクを正しく理解している彼女は照れながら小声で言い直す。
暗闇の中でも顔が真っ赤になっているのがわかった。
鍵を開け、クイとあご先で促すと慣れた様子でするりと扉の向こうへと身体を滑り込ませた。
そこだけ見ると確かに猫みたいだな。
二宮飛鳥は宵っ張りだ。
深夜ラジオのヘビーリスナーでもあり、普段から夜更かしの常習犯である。
年齢が年齢だけに肌の健康などの心配もいらないのだろうが、それでもアイドルとしてはあまり褒められたことではない。
それに「年齢が年齢だけに」と言えば補導される危険性も高いので余計に気は抜けない。
が、本人曰く「夜の世界の住人」らしいので、生活態度の改善は見込めないとのことだ。
中二病、めんどくせえ。
だがまあご両親への上手い言い訳などは実に手慣れたもので、偉そうな口を叩くだけのことはある。
「シャワーだけでも浴びとくかあ」
長丁場になりそうな予感しかしないので身支度は整えておくに限る。
食事を摂る暇は……あるかなあ。
仕事しながら食えるようなものは何か……あったかなあ。
「飛鳥、おまえ風呂は?」
「いや」
短く答え、首を振る。
「ならおまえも来い。迷い猫は洗ってやらないとな」
そう言って彼女のパーカーの首根っこをむんずと掴む。
「なっ!?なにもいっしょに入る必要はないはずだ!どうせ中でいやらしいことをするつもりだろう!?」
「は?おまえ何言ってんの?」
双方動きを止める。
「?」
「するに決まってるだろ」
「やっぱりじゃないか!」
威嚇する猫のように「シャーッ!」となる飛鳥。
「つーか、ウチに来た時点でおまえ自身がそういう期待をしていなかったとは言わせん」
「うっ」
図星。
「じゃあ行こっか。な?」
「ちょっ、離せ!心の準備が!」
ズルズルズルズル……。
まずは普通にちゃんと洗う。
「まずは」って言うの、笑う所ね?
ちなみに我が家の風呂にはやたらと女性用のシャンプーやリンスやヘアパックやコンディショナーなんかがあって、脱衣所の棚がほぼそれらで埋まってしまっている。
おかげで洗剤やらなんやらは別の場所に置かざるを得なくなった。
まあ幸か不幸か物が少ないから置き場所には困らないけど。
で、なぜそうなったかというと、ウチに泊まったことがあるアイドルたちが次々に置いていくからだ。
最初は誰だったかなあ。
その行為は彼女たちの間で「ボトルキープ」と呼ばれ、楓や志乃たちともなると本当に酒の方も置いていっているのでまさにダブルミーニングとなっている。
上手いこと言いやがって!
私の「正妻」を自称するまゆは来る度にそれらの残量を確かめて「ふーん……」と言いながらこちらを見てくるのでめっちゃ怖いです助けてください。
飛鳥もボトルキープしている組なので、その山(森?)の中から器用に自分の物を抜き出す。
「おや、シャンプーがだいぶ少なくなってるな。把握してなかった、しまったな」
ボトルをシャバシャバと左右に揺らして口を尖らせる。
「前から間空いたからな」
「もっと頻繁に来て欲しいかい?」
閃いたのか試すような笑みを見せてくる。
「おう。来いよ」
即答。
「ボ、ボクだってそうしたかったのは山々だが、都合があったんだ!色々!」
くるりと背を向け、乱暴に着衣を脱ぎ始める飛鳥。
そうしたところで耳が真っ赤なのはバレちゃってるんだよなあ。
かわいい奴め。
「お、そのパンティいいな。スタイリッシュだけどちょいエロい」
「み、見ないでくれ!」
「だが断る(バァァァァァン)」
「なんだそのキメ顔は!」
黒と紫を基調にしたシンプルなデザインのサイズ小さ目。
実に私の好みだ。
……もしかしなくても私の好みの履いてきてくれた?
ちなみにデュオユニットであるダークイルミネイトの相方の
実にエロい。
とかなんとかムホムホ思い出していたら、いつの間にか飛鳥は浴室へと消えていた。
しまった、ボーッとし過ぎた。
「~♪」
なにやら小さく鼻歌を歌いつつ飛鳥は髪を洗っている。
エクステを外した彼女の髪はいわゆるボブカット程度の長さしかない。
幸いなことに我が家の風呂は一般家庭よりは幾分広めではあるのだが、それでも二人いっしょに入ると肘と肘がぶつかる程度には狭く感じる。
私は飛鳥が髪を洗っている間に自分は身体を洗いながら彼女のスレンダーなボディラインを眺めて楽しむ。
「……視線を感じるんだが」
「そりゃじっくり見てるからな」
「やれやれ、こんな貧相なプロポーションを見て楽しいものかね」
自嘲気味に飛鳥がつぶやく。
「『卑下するのは許さん』っていつも言ってるだろ。おまえの無駄のない洗練されたボディラインは私のお気に入りなんだからな」
「……そりゃどーも」
プイ、と顔を逸らしてまた洗髪作業に戻る。
何度たしなめてもこれだ。
コンプレックスなんて持つ必要一切ないのに。
ん?
こいつ、肯定して欲しくてわざと言ってるのか?
本当に素直じゃないなー。
「あーすかっ」
彼女が髪を流し終えたタイミングで背後から抱き締める。
「きゃっ!いきなり何をするんだ!」
飛鳥が素の声でかわいい悲鳴を上げる。
「んー?おまえの身体が本当に魅力的なのを証明してやろうと思って」
「そんなのどうやって証明しようと……あ」
抗議しようとした飛鳥は自分の臀部に当てられたモノに気付いて言葉に詰まる。
「どうした?言葉の続きは?」
私はここぞとばかりにさらに密着し、屹立した男根をぐいぐいと押し付ける。
「わかったから!もうわかったから!」
飛鳥は半狂乱で必死に身を
「証明できた?」
彼女のうなじをぞろりぞろりと舐め上げつつ両方の胸を揉みながら尋ねる。
吸い付くように私の手の平に馴染むいい胸だ。
「っ!っ!」
声を出さずに飛鳥が何度も首を縦に振る。
相変わらず敏感だなあ。
これも極力他人と関わらないようにしてきたからなのか?
「なあ飛鳥」
「な、んだい?」
「責任取ってくれるよな?」
「な、んの」
「おまえが『貧相』なんて卑下したその身体でこんなにも大興奮した愛棒のさ」
「最初からそのつもりだったくせによく言うよ」
胸をぐにぐにと揉みしだかれながらも彼女はニヒルな笑みを崩さなかった。
「で、どうなんだ?」
「どうもこうもないさ。ここに足を踏み入れた時からとっくに罠にかかっていたんだから。選択の余地があるのならぜひとも教えてもらいたいぐらいさ」
「れぷっ……ちゃくっ……じゅるっ……ぴちゃっ」
正面から両手首を掴んで浴室の壁に押し付け、飛鳥の唇を奪う。
シャワーのお湯は出しっぱなしだ。
「じゅるっ……ちゅぷちゅぷちゅぷっ……えれえれれぇっ……ちゅっ」
彼女の口を唇を押し付けて完全に塞ぎ、舌を深く差し込んで口内を蹂躙し尽くす。
ディープキスには応えてくれるが、飛鳥の方から求めてくることはほぼない。
性欲は人並みにあるはずだが、それを知られることはプライドが許さないのか、あくまで「求められたから応えた」というスタンスを貫いている。
だが私にはそれで十分だった。
応えてくれるだけで。
「時間をかけていていいのかい?仕事が溜まっているんだろう?」
「仕事も溜まっているがこっちの方も溜まってるんでね。おまえを朝までめちゃくちゃにしたいのは山々だがそれは近い内に実行するとして、今はこの一発に全身全霊を込めさせてもらうとするか」
そう言って痛いぐらいに血管を浮き立たせてそそり勃つ肉棒を見せつける。
視線をそこに落とした飛鳥の喉がごくりと鳴る。
「おまえの準備は万端のようだな」
ちゅぷり、と右手の中指を彼女の蜜壺に突き入れて掻き回す。
「単なる生理現象がそんなに嬉しいかい?」
「ああ嬉しいねえ。たっぷり感じてないとこうはならないからな」
引き抜いた指を目の前で開いて見せる。
そこには粘度の高い透明な糸の橋が二重三重にかかっていた。
「見せないでくれ。悪趣味だな」
ぷい、とふくれっ面で顔を背ける飛鳥。
「悪い悪い、焦らせ過ぎたな」
「焦れてなんかいな……いっ!」
不意打ちで剛直を一気に突き刺す。
左手は飛鳥の右の乳房を揉み、右手で彼女の左脚を持ち上げ、壁に押し付けてディープキスをしながら立位で挿入する。
たぬまゆレッスンのおかげで体幹も鍛えられているしだいぶ柔軟になってきたな。
「うぶっ!ちゅむっ!あっ!は、ああっ!ちゅぶっ!えるっ!」
愛撫とキスと挿入のタイミングを完全にシンクロさせ、快感の大波に飛鳥を飲み込んで翻弄する。
対抗できるテクニックの少ない彼女ではなす術なくされるがままになるしかない。
完全に二宮飛鳥を支配していた。
「……」
超至近距離で目が合う。
口内を舌で嬲られているので言葉を発せない代わりに睨みつけようとしているのだろうが、悦楽が大きすぎて視線が定まっていない。
「飛鳥ッ!締まるッ!」
「ボクがっ!あんっ!締めてるっ!わけじゃ!」
「いーや、おまえが締めてるんだ。おまえのヴァギナが私のペニスを咥え込んで『もっと欲しいもっと欲しい』って捕まえて離さないんだ」
「そんなっ!ことっ!あ、んんっ!」
「認めろ!飛鳥!気持ち良いと!もっと欲しいと!認めろ!」
ずぐんっ!ずぐんっ!ずぐんっ!じゅぐんっ!!
「んあっ!ひぐっ!ふあっ!ちゅむっ!れるっ!ねぷっ!ああっ!」
「私は気持ち良いぞ!めちゃくちゃ気持ち良い!もっともっとおまえとしたい!おまえが好きだ!飛鳥!愛してる!」
「あぅんっ!こんな時に!ずるい!あっ!ああんっ!んんっ!ボクだって!」
「『ボクだって』?」
ピタリと動きを止める。
「しまった」という表情をする飛鳥。
何も言わないが彼女の膣内はきゅうきゅうと陰茎を締め付け、ヒダを絡み付けてくる。
「『ボクだって』?」
じゅぐ、と軽く一回だけ腰を前に進める。
「あぐうっ!」
それだけで全身に電流が走ったように飛鳥は感じてしまう。
「どうしても口にしたくないか」
強情だなあ。
仕方ない奴め。
「なら態度で示せ」
「っ!」
飛鳥は私のその言葉に飛び付き、身体でも文字通り飛び付いてきた。
立位だったものが駅弁スタイルになり、彼女から唇にむしゃぶりついてくる。
「れぷっ!ちゅぐっ!ちゃぷっ!えるっ!じゅぴっ!ぢゅるっ!」
自暴自棄になったというわけではないのだろうが、我武者羅に舌を絡めてくるではないか。
これも彼女なりの照れ隠しなのかもしれないが積極性が出たのはいいことだ。
私は浴室の壁を支えとして利用しつつ、飛鳥の両の内腿を持ち上げて振り子のように大きなモーションで肉棒を叩きつけ続ける。
「あぐっ!あふっ!ふぐっ!うぐっ!あ、っは!ぐうっ!がっ!」
快感の波に押し負け、飛鳥が唇を離して喘ぎ声を発する。
噛み付くようにして私の右肩に顎を乗せ、舌を突き出す。
蜜壺の閉まり具合が細かく頻繁になり、彼女が達するのが近いのがわかった。
じゅっぐずっぐじゅっぐずっぐじゅっぐずっぐ!
一定のリズムで腰を跳ね上げる。
どんどんどんどん、否応なしにボルテージを高めていく。
「も、もうっ!あっ!ダッ!ダメッ!ボク!もうっ!あっ!」
「いつでもイッていいぞ!いつでもイッていいぞ!おまえがイッたらすぐにたらふく
ずずっぽずずっぽずずっぽずずっぽずずっぽ!
じゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐ!
たぱんっ!たぱぱんっ!たぱんっ!たぱぱんっ!たぱんっ!たぱぱんっ!
「あっあっあっあっ!あっあっあっあっ!あっあっあっあっ!」
「飛鳥っ!おまえに
「ああああ~~~~~~~~~ッッ!!!!」
飛鳥の両脚がピーンと伸び、身体がL字型になる。
ぶるるっ!ぶるるっ!と彼女の腰から背骨にかけてが主に大きく震え、
「飛鳥あっ!
どっっっっぐ!!!!
陰嚢が急速に収束し、腰が砕けそうになるがなんとかもちこたえる。
私は今から全ての精子をこの女の
どぐっ!!どぐうっ!!どぐどぐっ!!ぶぎゅっ!!びゅぐっ!!びゅるっ!!びゅびゅーっ!!びゅびゅっ!!どっびゅっ!!
「あ、ああ、あ、あああ、あ……あ……
両脚を突っぱねたままで飛鳥が呆けたように報告する。
「ああ、
熱い吐息とともに耳元でねっとりと囁く。
「ぅ、あ……」
ずろり、と肉棒を彼女の
私はずい、と歩み寄り、壁に両手を突いて彼女の顔の前に精液と愛液でドロドロ状態のそれをぶら下げる。
「……」
飛鳥は虚ろな瞳でそれを見、次いで私の顔を見上げる。
「……」
私もそれに無言で返す。
「……しゃぷっ……じゅるっ……ずろっ……」
諦めたように両目を閉じ、グロテスクな男性器を口に含んで綺麗にし始めた飛鳥を見、胸が満たされる。
ああ、私はなんて幸せ者なんだ。
こんな幸福が他にあろうか。
「さてと、お仕事しますかね」
床の上に設置したミニデスクの上にノートPCを広げ、座布団の上に胡座をかく。
服装はTシャツとジャージの下だ。
ラフ極まりない。
私とて自宅の中でまでスーツではない。
ちなみにTシャツはライブグッズをいただいたものである。
「どうぞ。ご自由に」
私に背中合わせで座る飛鳥が不貞腐れた声を出す。
先程風呂の中で私に好き放題されたことがご不満らしい。
ひひひ。
かわいい奴め。
「これでも付けてろ」
足元に転がっていたものを拾い上げ、振り向きざまに飛鳥の頭部に装着する。
「なんだいこれは……って、ネコミミじゃないか。どうしてこんなものが?まさか……」
「邪推するな。みくが置いていったものだ。ちなみに各部屋に1つずつぐらい転がってる」
「みくか。キャラクターを徹底していて結構なことだね。プロ意識を感じるよ」
飛鳥は苦笑しつつそのまま私にこてんと背中を預けた。
外さんのかい。
「コーヒーが飲みたけりゃ好きなだけどうぞ」
タイピングしつつ顎先でキッチンのマシンを指し示す。
「あれは?いいものがあるじゃないか。いつの間にあんなものを?」
「あいが『いつでも飲めるように』って置いていった」
「なるほど。ここは訪れる度にどんどんアイドルたちに侵食されていくね」
くっくっ、と飛鳥は喉の奥で皮肉っぽく嗤う。
「おまえも何か置いていくか?……エクステとか」
「キミがそれを付けるのかい?なら置いて行くのもやぶさかではないけど」
「付けるかよ」
「案外似合うかもしれないよ?」
「毛量が不安になってきたらな」
まだまだ大丈夫だからな、お陰様で。
静かな室内にキータッチの音だけが響く。
明かりはデスクライトのみだ。
飛鳥は何をするわけでもなく、時々コーヒーを飲んだりスマホを操作したりイヤホンで音楽を聴いたりしている。
相変わらず背中合わせのままでこちらを向こうとはしない。
私が仕事をしているのを知っているのでその内容が目に入らないようにしているのだ。
年若いしこういうキャラではあるが、実にコンプライアンス意識もちゃんとしている。
……おかしいな。
集中できている割には能率が悪い。
気力も充実しているはずなのになぜだ。
どこかふわふわしている感覚がある。
「それにしても」
「ん?なに?」
不意に飛鳥が口を開いた。
「改めて見回すとキミの私物なんてほとんどなくて、アイドルたちが持ち込んだ物ばかりじゃないか」
「そうか?……そうかな」
なんだかボーッとする頭で周囲を見回す。
まゆ、
果ては
「……そうかも」
「娘のような年齢の、しかも現役トップアイドルたちを取っ替え引っ替え家に連れ込んでの酒池肉林とは、誰もが羨むご身分じゃないか」
「…………………………………………………………」
飛鳥にしてみればいつもの皮肉だったのだろう。
それが。
それなのに。
刺さってしまった。
いつもなら笑って受け流せるそれが。
流せなかった。
目の前がぐるり、と回った。
「お、おい、プロデューサー、そんなにもたれかかったら重いじゃないか」
飛鳥の声がやけに遠く聞こえる。
これは一体どうなってるんだ。
私は今飛鳥にもたれかかっているのか?
自分の重心が把握できない。
やたらと重く感じるし、逆に羽根のように軽くも感じる。
おかしい。
何かがおかしい。
どこがどうおかしいのか上手く説明できないのだが、とにかくおかしいことだけはハッキリとわかる。
「『重い』と言ってるだろう!」
私の身体を飛鳥が押しのける。
「プロデューサー、キミ、泣いてるのかい?」
飛鳥が「心底驚いた」という表情でこちらを見ている。
「わたしが?」
ギギギ、と顔を横に動かしてPCのディスプレイを見ると、確かに私の目の下から垂れている水流があった。
ぽろぽろと涙滴がこぼれているのではなく、それはまさに細くとも水流だった。
「なんで……」
緩慢な動作で頬を触ってみる。
と、案の定指先が濡れる。
本当に私は涙を流していたのだ。
「あ……うわ……あ……ああ……あ……」
言葉にならない。
ありとあらゆる感情が渦巻く。
両目の下に爪を立てる。
「ああああああああああああああああああああ!!!!」
口から絶叫が
自分が自分でコントロールできない。
「プロデューサー!?どうしたというんだ一体!?」
飛鳥がひどく困惑している。
それはそうだろう。
飛鳥、本当にすまない。
でもどうにもできないんだごめん。
声がする。
頭の中で声がする。
そいつが、そいつらが一斉に責め立ててくる。
おまえはクズだ。
自分が育てたアイドルに手を出しているクズだ。
アイドルは会社の商品なのに。
アイドルはファンのための存在なのに。
おまえは全ての人を裏切っている。
ファンも、会社も、アイドルたち本人も。
190人全員に手を出しておいて愛だのなんだのとよく言えたものだ。
おまえはアイドルを性欲のはけ口にしているに過ぎない。
ファンが熱狂するアイドルを好き勝手にして悦に入っている傲慢な勘違い男だ。
いつか天罰が下るぞ。
誰かに刺されるかもなあ?
年端も行かない子に手を出し、さらにはその母親にも手を出している外道。
地獄へ落ちろ。
正直に白状すれば何度も考えたことがあった。
自分が「悪」だという自覚もある。
考えないようにしていたのではなく正当化していた。
いつもなら鼻で笑い飛ばせていたそれら全てが深々と突き刺さる。
弱った身体に、弱った心に突き刺さる。
やはり私はどうしようもないクズで外道だったのだ。
ごめん飛鳥。
ごめんみんな。
今まで本当にごめん。
だがそれを絶対に口にはできない。
してはならない。
してしまっては最後、彼女たちは全員「被害者」になってしまう。
こんな私のことを「好き」だと言ってくれる彼女たち、こんな私のことを「愛してる」と言ってくれる彼女たち、そんな彼女たちを貶めることなんて私にはできない。
この期に及んでなんと綺麗事だと笑わば笑え。
そこは私の最後の意地、最終防衛ラインなのだから。
「ボクがキミにひどいことを言ったから!ごめん!本当にごめん!ボクはどうしたらいい!?」
飛鳥はすっかり取り乱している。
私の両肩を掴んで必死に揺さぶる。
「おまえはわるくなんかない」
声を絞り出した。
絞り出せた。
「そんなことはない!ボクのせいだ!ボクが不用意に発した言葉のせいで!」
「ちがう。わるいのはぜんぶわたしだ」
「それこそ違う!子供っぽい嫉妬心からだったんだ!キミは悪くない!悪いのはボクだ!みんなキミに感謝してる!もちろんボクもだ!」
ありがとう飛鳥。
そんな嬉しいことを言ってくれるなんて。
「ありがとうあすか」
だから。
「かえってくれ」
「プロデューサー!?どうして!?」
「こんなわたしをこれいじょうみないでくれ」
頼む。
「あしたにはきっと、もとどおりになってるから」
だから。
「きょうはもうどうかかえってくれ」
そして忘れてくれると嬉しい。
虫がよすぎるのは百も承知だ。
「そんな!こんな状態をキミを独りになんてできるか!」
飛鳥は力いっぱいに私を抱き締めてくれた。
ああ。
だめだ。
そんなことをされたら。
「きらわないで」
言ってしまった。
なんでこの口は勝手に動いてしまうんだ。
「あすかにきらわれたくない」
「きらわないで」
「あすかのまえではどうどうとしたわたしでいたかったのに」
「こんな」
「きらわないで」
「きらわないであすか」
「ごめん」
「ほんとうにごめん」
「きらわないで」
口が止まらない。
言えば言うほど軽蔑されるのがわかっているのに。
涙も懇願も止まらない。
終わった。
完全に終わった。
なのに。
「嫌うもんか!」
「あす……か?」
「ボクがキミを嫌ったりなんかするものか!」
「あすか」
「セカイの誰もがキミを嫌ったとしても!ボクだけはキミを嫌わない!」
そんな。
そんなことを言ってもらえるなんて。
私におまえからそんなことを言ってもらう資格なんてあるのか。
ああダメだ。
本格的に思考能力が働かなくなってきてしまった。
「あすか、ありがとう……」
私の意識は彼女の唇によって自分の唇が塞がれたと同時にブラックアウトした。
翌朝デスクに突っ伏した私が目を覚ますと、飛鳥の姿はどこにもなかった。
私の懇願通りに昨夜の内に帰宅してくれたようだ。
ぶっきらぼうに見えるが本当によく気を遣える子だ。
と、同時に心底申し訳ない。
合わせる顔もないがそうも言っていられない。
このままどこかへ消えるわけにもいかないのだから。
私にはすべきことがある。
具体的には昨夜あのまま意識を失ったことによって手つかずのままの大型案件の始末とか。
果てしなく気が重いがいかなる理由があろうとも責任は取らなくてはならない。
出社時間にはまだ余裕があることを確認して支度をし、家を出ようとすると鍵がかかっていた。
飛鳥が施錠していて行ってくれたのか?
いや、それはない。
それなら私の手元に今こうして鍵があるはずがないのだから。
ならば昨夜の私が一度目を覚まして施錠したのか。
記憶はないが、実際そうとしか考えられない。
昨夜の私グッジョブ。
いや全然グッジョブじゃねーよ。
もっと失っちゃいけないものを失っちゃってるよ。
……はあ。
こんな所で溜め息を吐いていないでさっさと出社しよう。
そして
クビになるかそれよりは軽い処分を受けるだけで済むかどうかはまだわからないが、とにかく出社しないことには始まらない。
覚悟を決めろ。
仕事のことも、飛鳥のことも、他のアイドルたちとのことも。
いよいよ年貢の納め時が来たのかもしれない。
「君は気が早いな、そんな来年のことを今から。いや責任感が強いのは大変に結構なことだ。惚れ、コホン、見直したよ」
「……は?」
専務の執務室に入るなり大声で謝罪しつつ頭を下げた私は頭頂部に思いっきり疑問符を突き立てたまま顔を上げた。
オチとしてはこうだ。
私の後輩の新人女性プロデューサーが今年と来年の日付を打ち間違って私に渡したのだ。
なんという、なんという初歩的な。
私はやけに締め切りが早いので何度も彼女に確認したというのに。
進歩がなさ過ぎて頭痛がする。
とはいえ私は一命を取り留めたわけだ。
……飛鳥の好感度は致命傷だが。
エロ漫画とかなら後輩女性プロデューサーにおしおきエッチでもするのが王道なのだろうが、あいにく私には認めていない相手とセックスする趣味はない。
トレーナー姉妹やちひろさんや美城専務とは喜んでセックスするが、彼女とはお断りだ。
私は専務の執務室を辞したその足で後輩女性プロデューサーに説教し、同じミスを二度と犯さないようにと何度も何度も念を押した。
どっと疲れた。
疲れたが、今日も今日とて仕事に励まなくてはならない。
やるべきことは山積みだ。
その日、結局飛鳥の姿を見ることはなかった。
仕事の現場が同じにならなかったこともあるが、事務所でも顔を合わせることはなかった。
正直ほっとしなかったと言えば嘘になるがやはり会えないもどかしさの方がずっと強かった。
なるべく早く直接会って昨日のことを謝りたかったのに。
通話アプリのメッセージで済ませるのは人間としてどうかと思うわけで。
電話も一日中つながらなかったし。
夜。
遅い帰宅。
肉体的にはそんなでもなかったが、とにかく精神的に疲れ果ててしまっていたので今日も泣く泣く諸々のお誘いを断ってのお一人様だ。
いや、昨夜は飛鳥がいたわけだが。
独り寂しくチビチビと飲むか、それともさっさと寝てしまうか。
迷いつつキーを回す。
……開いてる?
もしや物盗りか?
背中に冷や汗が伝い降りる。
意を決し、玄関扉を勢い良く開け放って中へと滑り込む。
「誰だッ!?」
「やあ。『誰だ』とはご挨拶だな」
そこにいたのは誰あろう、本日姿を追い求め続けた二宮飛鳥その人だった。
なぜかネコミミとエプロンを身に着けて。
「飛鳥ぁ」
「なんだい、その情けない顔と声は」
全身から力が抜けた私は、へなへなとその場にへたり込んだ。
「なぜここにいるのか」とか「そのネコミミとエプロンは何だ?」とか、訊きたいことは色々あるが、まずは最優先でするべきことがある。
「飛鳥!昨夜は本当にすまなかった!情けないところばかり見せて申し訳ない!」
深々と頭を下げた。
図らずとも形式としては土下座になってしまったが、構うものか。
昨夜の醜態を思い出し、顔から火が出る思いだ。
都合よく寝て起きたら記憶を失っていたり異世界に転移でもしていればよかったかもしれないが、当然そうはいかなかった。
「忘れてくれ」とか「嫌わないでくれ」などと言う資格はない。
とにかく誠意を見せるのみだ。
「さて、なんのことだが。……と言ってあげたいところだが、残念ながらしっかりとボクの海馬には記憶として焼き付いているよ」
「だろうな」
「だが、あえてキミにこう言おう。『気にしていない』、とね」
「どうして」
そんなはずはなかろう。
あんなものを見せられて。
幻滅しないわけがない。
「現にボクがこうしてここに在ることでその証明にはならないかい?ところでいつまでそこでそうしているつもりかな。こちらに来て座るといい。もっともここはキミの自宅だけどね」
飛鳥はそう言ってウインクしてみせた。
食卓にはホットコーヒーと温かな料理の数々が並ぶ。
「こちらインスタント、冷凍食品、レトルトになります」
ネコミミエプロン姿の飛鳥がウェイターの真似を大仰にしてみせる。
「ボクに家庭的な才能を期待しないでくれ。今はまだ、ね。『それならどうしてこんな真似を?』って?してみたかったからさ」
いつになく饒舌な飛鳥。
テンションが高いと言うよりは落ち着かない様子だ。
「ありがたくいただくがね。昼から何も食ってないし」
「どうぞ。どうせ全てキミの家にあったものだ」
ニヤリと笑って飛鳥は両手を広げる。
「おまえも食いたいものがあったら食ってくれ」
私は本格炒めチャーハンをざらざらと胃へと流し込みながら言う。
「そうさせてもらうさ」
飛鳥は肩をすくめて答えると、カップヌードルミニにポットからお湯を注ぐ。
「なんだか新婚さんみたいだな」とか言ってみたかったのだが、これではどうにも絵にならない。
「で、そのネコミミなんなん?」
レンゲで彼女の頭部を指す。
「最初の質問がそれなのかい?」
呆れる飛鳥。
「エプロンの理由はわかったし、次はそれかなって」
ちなみにそのエプロンは
「どうやら猫にも帰巣本能があったらしい」
ここで「いやおまえちゃんと家あるだろ」などと言うつもりはない。
「いつでも帰って来てくれていい」
ずぞぞ、とカレーうどんを吸い込みつつ告げる。
あえて「帰る」という表現を使った。
飛鳥が「帰巣本能」と言ってくれたのだからそれの返礼の意味もある。
「え、うん」
あ、飛鳥が鳩が豆鉄砲を食らったような顔してる。
珍しい。
「そういやおまえどうやって中に入ったんだ?どこかの窓ガラスでも割れてるのか?」
「キミはボクを一体なんだと思ってるんだ」
溜め息を吐きつつ彼女は上着のポケットを探る。
「これは返しておかないとね」
チャリ、と音を立ててテーブルの上に置いたのは我が家の玄関扉の鍵だった。
「どういうことだ?」
その鍵なら確かに私の手元に今でもある。
「都会というのは便利だね。あんな時間でも営業している鍵屋がある」
ドヤ顔の飛鳥がスペアキーを指先でくるくると弄ぶ。
なるほどね。
私が眠っている間に合鍵を作って施錠してくれたのか。
「なんてことを」などという筋合いではない。
彼女の気遣いに感謝しかない。
「それはおまえが持ってろ」
「は?ええっ!?」
飛鳥の手元が狂い、カチャンと鍵がテーブルに落下する。
今日はつくづくレアな飛鳥が見られる日だな。
新たな国民の祝日か?
「いやっ、でもっ!……いいのかい?」
「『いつでも帰って来てくれていい』って言ったしな」
「キミが他のアイドルを連れ込んでいたらどうするんだ」
「おまえなら空気読むだろ。それに連れ込む予定がある時は連絡する」
すっかり冷めたブラックコーヒーを
「それでも……とは言え……」
やけに二の足を踏むな。
やはり気が引けるか。
それとも重すぎたか?
「そういやまゆにも渡してなかったな合鍵。ってことはおまえが初めてになるのか」
ポロッとつぶやく。
しまった。
他の女の子の名前を出さない方がよかったか?
「まゆにも?ボクが、初めて……」
私の言葉を反芻し、飛鳥は心ここにあらず、といった様子だ。
「いらないなら」
「いる!これはボクが預かっておくよ」
鍵に手を伸ばそうとするも、超高速で奪われてとても大切そうに胸に抱え込まれる。
なんとも突然の心変わりだこと。
なんだか妙な雰囲気のまま食事は終わり、言葉少なく後片付けを二人で行なった。
風呂に入りたかったが、満腹のままはよろしくなさそうなのでしばらく休憩してからにした。
「なあ飛鳥」
付かず離れずの位置でネコミミとエプロンを外して膝を抱えて三角座りしている飛鳥に声をかける。
「なんだいプロデューサー」
「もう一度だけ訊くが、おまえ本当に私に幻滅してないのか?私はどんな責任でも取るつもりだったんだが」
「くどいね。同じことを二度言わせないでくれ」
不機嫌そうに顔を上げる。
「ならいいんだが……」
本当にいいのか?
このままで。
どうにも気分が落ち着かない。
「そうだ」
何かを思いついたらしい。
「そんなに責任が取りたいのなら取ってもらおうじゃないか」
偽悪的な笑みで四つん這いでこちらににじり寄って来る。
「?」
嫌な予感。
「あ、あのー……飛鳥さん?」
「んー?」
飛鳥を見上げる。
「なんで私、膝枕されてるんですかねえ?」
そうなのだ。
なぜか今、私は床に仰向けになって正座の飛鳥に膝枕されて頭を撫でられていた。
「なにか不満でも?」
なんでこいつこんなにも穏やかな表情してるんだ?
記憶にないぞこんな顔。
「プロデューサー、キミはボクにとんでもないことをしてくれた」
「ハイ」
「ボクを女にしただけでは飽き足らず、今度は母性まで目覚めさせてしまった」
???
「おっしゃる意味がよく」
「ボクはあの時、すっかり弱りきったキミを見て幻滅するどころかこう思っていたんだ。『ああ、なんて愛おしい。ボクが
ねえ誰この人?
本当にあの孤高のクールアイドル二宮飛鳥?
「あの瞬間、細胞レベルで
あ、やっぱ飛鳥だわ。
「あー焦った。このまま授乳手コキでもされるのかと思った」
「キミがお望みなら。知識だけならあるよ。もっともボクの胸のサイズでは首が疲れるかもしれないけどね」
「『自分の身体を卑下するな』っつったろ」
「……」
おい、そんなに露骨に頬を染めるな。
「うむっ!」
唐突に飛鳥に唇を奪われた。
顎を持ち上げられて上を向かされ、まるで人工呼吸のようにディープキスをされる。
「んぶっ!ちゅるっ!れるれるれるれるれえっ!ちゅくちゅくちゅくっ!」
息ができない。
「……ぷあっ!あ、飛鳥!?」
やっと解放されて慌てて上半身を起こす。
「楔は抜かれ、枷は外された。この身を拘束するモノはもう何もない」
彼女は私の左手を取り、ファスナーを下ろした自らのズボンの中へと導く。
そこはパンティの上からハッキリとわかるほどもうぐっしょりと濡れそぼっていた。
「責任、取ってくれるんだろう?」
「ベッドじゃなくて悪いな」
「なに、ロケ先の旅館で慣れたものさ」
床に敷いた布団の上に横たえた飛鳥に詫びると、彼女はそう返してくれた。
それもそうか。
そう考えると本当に売れっ子アイドルという仕事は様々な経験をするものだ。
私は根っからの布団派である。
ベッド特有の宙に浮いたブロック感がどうにも落ち着かないのだ。
クイーンサイズのベッドであればその心配はないのだろうが、そんなものはこの家に置くことは不可能だ。
「どの体位で」
そこまで言った段階で下から飛鳥に両手を絡め取られ、正面からの恋人つなぎになる。
こうなると必然的に最初の体位は決まったようなものだ。
「ふふっ」
「してやったり」と微笑む飛鳥。
「おまえ、それ母性と言うより甘えてないか?」
「……まだよくわからないな。無理もないさ、ボクのこの
恋人つなぎの状態で器用に肩をすくめる。
「まあそっちはおいおいな」
私は仰向けの彼女の上に体重をかけないようにして覆い被さり、硬くなっている乳首を口に含む。
「はっ、んんっ!」
敏感な飛鳥はそれだけでぶるりと全身を震わせるが、私は構わず唇で挟んだり軽く歯を立てたりして楽しむ。
「ぴりぴり、する」
「ははは、そんなことでは将来赤ん坊におっぱいなんてあげられないぞ?」
意地悪く彼女の目を直視しつつ舌先で乳首の先端をれろれろと弄ぶ。
「んっ!くっ!……赤ん坊が、そんな、テクニックを駆使したり、するものか」
「一理ある」
最後に大きく「ちゅっ!」と音を立てて吸い上げると、私は身を起こす。
「そろそろ
勃起がすごすぎてペニスがさっきから痛いぐらいだ。
先走り汁が極上の獲物を前にした獰猛な肉食獣の涎のように尿道口から滴り落ちている。
「すごい……」
思わず飛鳥の目が点になる。
「こ、このままでちゃんと
それでも誤魔化すように挑発してくる。
「心配するな。おまえの
くちゅり、と亀頭の先端を蜜壺の入り口にあてがう。
「安心したよ」
強がる飛鳥。
「なら結構!」
ずぐり、と一気に腰を前へと進める。
「はぁぁんっ!」
両目を堅く閉じ、飛鳥が嬌声を放つ。
「硬、いっ……!」
挿入しただけで軽く達したか。
「少し休むか?」
「悪い冗談だ。遠慮はボクへの侮辱だと判断する」
目尻に涙を浮かべつつもこちらを睨んでくる。
「ならば存分に動かせてもらうとしよう」
じゅぐり。
突き込む。
「っぐっ!」
飛鳥が苦しげに身を
すぐに快感だけにしてやる。
ずぐりっ!ずぐりっ!ずぐりっ!ずぐりっ!
「はあっ!あっ!うあっ!んはっ!」
ぢゅぐぢゅぐぢゅぐぢゅぐぢゅぐぢゅぐ!
「んっんっんっんっんっんっ!」
ずっぐずっぐずっぐずっぐずっぐずっぐ!
「あっあっあっあっあっあっ!」
両手が塞がっている上に腰が浮いている状態では挿入されている側にできることは少ない。
シチュエーションに憧れたのだろうが判断を誤ったな。
さすがにまだまだ若い。
たんたんたんたんぱんぱんぱんぱん!
ぱんぱんぱんぱんたんたんたんたん!
「あんっ!あんっ!あんっ!あんっ!」
なすがまま、されるがまま。
フィニッシュだ。
ぢゅぐりゅんっ!
トドメの一撃を最奥にねじ込む。
「んああああーーーーっ!!!!」
あっけなく飛鳥が絶頂を迎える。
意気込みは立派だったが私相手にセックスで主導権を握ろうなどとは早すぎる。
さて、私はまだイッてないのだがどうするか。
一度抜いて馬乗りパイズリでも……などと考えていると。
がしっ。
「お?」
飛鳥がピンと伸びていた両脚を私の腰に絡め、その上ぎゅっと抱き締めてきた。
「……どこへ行こうと言うんだい?」
荒い息で尋ねてくる。
「いやどこにも行く気はないが」
「そういうことではないよ。ボクの
「一度抜こうかと」
「許さない」
「は?」
「キミはずっとボクの
そう言うと、飛鳥は痛みを覚えるぐらいにさらに強くしがみついてくる。
どぐっ!どぴゅっ!びゅぐっ!びゅるっ!
強制的にザーメンを一気に搾り取られた。
「飛鳥、おまえ」
「……いつまでも甘えっぱなしのボクじゃない。どんなに不格好でも、泥臭くても、キミに喰らいついてみせる」
揺らがない瞳。
「どこへも行かない。おまえの本気、受け取った」
「飛鳥!飛鳥飛鳥飛鳥飛鳥飛鳥ァッ!!」
「プロデューサー!プロデューサー!プロデューサー!」
いわゆるだいしゅきホールドのまま、滅茶苦茶に腰を叩きつける。
彼女の秘部は大量の精液と愛液で溢れ返り、言語化不可能な水音を立てる。
もう幾度飛鳥の
私たちは一度も抱擁を解かず、結合を解かず、激しく舌を絡ませ合い、それに疲れたら唇を離してさらに密着し、口寂しくなったらまたディープキスを再開しては
びゅぐっ!どきゅっ!びゅっぐ!どっく!どっぴゅ!びゅるっ!どぐっ!
長い、長い射精。
「飛鳥」
「プロデューサー」
一瞬見つめ合ったあと、またディープキス。
「れるっ……ちゅく……えれっ……じゅるっ……ちゅぷっ……ちゅぴっ……はもっ」
舌を絡めながらもまだ射精は続いていた。
「……こんなにも満たされた気持ちは初めてだよ」
飛鳥が柔らかく笑う。
その表情からは確かに母性のようなものが伝わってくる。
「プロデューサー」
「なんだ?」
「もう一度、いや、何度でも言うよ」
「うん」
「ボクはキミを絶対に嫌わない。見捨てない。たとえキミがどんなに汚れようと、堕ちようとも」
なぜだ。
「疑問に思うかい?」
頷く。
「逆に訊くけど、なぜボクはそう思わない、そんなことは言わないと考えるんだい?つまらない思い込みだ。くだらない決め付けだ。キミはまだまだボクのことを知らなさすぎる。ボクのことをもっと知ろうとするべきだ」
その通りだ。
献身的な飛鳥。
甘える飛鳥。
母性的な飛鳥。
嫉妬する飛鳥。
特別になりたがる飛鳥。
ゼロから突如発生したものではない。
彼女の中に種子として存在したからこそそれらは発芽したのだ。
「おまえの言う通りだ。私はすっかり二宮飛鳥の全てを知り尽くした気になっていた。なんという不遜、なんという傲慢だ」
普段アイドルたちに向かって「無限の可能性」だのと御高説をぶっているのはどこのどいつだというのか。
それがなんたるザマだ。
自分こそが井の中の蛙であることを知らずにどの面を下げて。
まさかこんな形で啓蒙されようとは。
「飛鳥」
「ああ」
「おまえを心から尊敬する。そして、愛している」
「ボクたちはとっくに共犯者なんだ。虚飾にまみれた言葉は要らない。カタチで示してくれないか」
「もちろん。喜んで」
私は今度はこちらから飛鳥にキスをし、舌を深く絡め、じっくりと体重をかけて彼女の奥の奥までペニスを押し込んで動かし始めた。
飛鳥が欲しい。
もっと欲しい。
もっともっと欲しい。
「とはいえ」
「ん?」
あれからさらに何度も何度もセックスを重ねた事後、お掃除フェラをしてくれながら飛鳥が話し始めた。
「ボクの中の極小の可能性を引き出してきたのはいつだってキミさ」
「それは……そうだな」
昨日今日といいところなし過ぎて自分で認めるのが
「つい昨日までは嫌悪感を感じていた行為に今では愛おしさすら感じてしまっているのがその証拠だろう」
自分で言って恥ずかしくなったのか、飛鳥は両目を閉じて亀頭をぱっくりと咥え込んで話すのをやめてしまった。
朱に染まった目の下がかわいい。
私はできる限りの優しさで彼女の髪を撫でる。
飛鳥はそれを以前のように払い除けたりしようとせず、照れたように眉間にシワを寄せて口内奉仕を続けてくれた。
「おまえは『言葉なんて要らない』って言うけどさ」
「……」
両目を開き、視線だけで私に続きを促す飛鳥。
「やっぱり言いたいよ。おまえに『好きだ』って。『おまえを愛してる』って」
「……ぷあっ。言いたければ言えばいいさ。ボクがなんと言おうとね。しつこくしつこく言い続ければもしかすると根負けして黙って受け入れるようになるかもしれないよ?」
「はっはーん」
「な、なんだいその目は!?」
「おまえ、さては照れ隠しだな?」
「なっ、何を根拠に!?まったく、キミという人間の妄想癖は度し難いな!滑稽だ!とんだ道化だ!」
「わかったわかった。言葉なんか要らないからおまえのそれがかわいい照れ隠しだったことを証明してやろうな」
「ま、待て!待ってくれ!どうしてまたペニスがこんなに硬くなってるんだ!ボクはイキすぎていてもう」
「問答無用!」
飛鳥を押し倒す。
「きゃっ!待って!待ってってば!あっ!ああーーーーーんっ!」
それからまためちゃくちゃセックスして可愛い姿をいっぱい見たし、可愛い声や言葉もたくさん聞いた。
「鍵はかけたか?」
「ああ、もちろん」
なんやかんやそんなこんなで時間ギリギリまでくんずほぐれつ乳繰り合っていたせいで同伴出勤することになってしまった。
飛鳥が早速合鍵を使いたそうにしていたので玄関の施錠は任せた。
「失くすなよ?」
「なくしたりするもんか」
大事そうに手の中にそれを握り込む。
可愛い奴め。
「『ただいま』って言える相手ができたのか」
そんな姿を見て思わずそんなことを口走ってしまった。
「!」
飛鳥は目を丸くする。
「あ、はは、変なことを言っちまったな。忘れてくれ」
「それ、ボクも言っていいかな」
「『ただいま』をか?」
「うん」
「おまえにはおまえの……いいよ。いつでも言いに来い」
「ありがとう。……ただし、ボクはここを逃げ場所や隠れ家にするつもりはないよ」
「と、言うと?」
「キミのもとに還るんだ」
「嬉しいことを言ってくれる」
私は胸がいっぱいになるのを実感した。
「じゃあ今は『いってらっしゃい』かな?」
「何を言ってるんだ。こう言うに決まってるだろう。『さあ、往こうか』」
サービス精神旺盛にポーズまでつけてくれた。
「それだ」
私たちは笑い合い、小さくキスを交わして自宅をあとにする。
「ただいま」と「おかえり」を言うために。
そして家主もまた迷い人だった。
その家が迷い
これから二人でそうしていけばいい。
大いに迷いながら。
迷走の果てに何があるか。
それは誰にもまだわからないけれど、きっと二人なら大丈夫。
ふたり旅は始まったばかり。
飛鳥特有の言葉遊び要素はあえて極力減らし、プライベート感を存分に感じさせることを目指しました。