※この作品はR-18です。

Beliefers   作:とある渓流にいるかわうそ

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やっとここまで来れたよお〜本当は4話あたりで
ここぐらいに突入したかったのだけど、倍くらい
かかりましたね。
次の僕の目指してる展開の当初の到達予想が
第10話ぐらいだったんですけど、こりゃ下手
したら行くまでに第15話超えちゃうかもね



8話 現れる異形【妖魔】

〜東京都 渋谷 廃工場〜

 

影明(おいおい…… マジかよ……現実か?これ…)

 

緑川影明は自分の眼に映す光景に対して、現実性を

疑ってしまう。

そう、まるで今この時だけ自分の目に異常が生じて、

本当の現実の物を映していないのではないかと

思うほどにだ。

何故なら、今、自分の眼に見えてるのはテレビや

映画の中でしか見たことのないような異形なのだから

常人なら自らのカメラ(目)が壊れていると考える

だろう。

実際、影明も何度も目を擦ったり、目をパチパチさせ

たりしている。

しかし、何度自分の目の不具合を疑い、それを改善

させるための行動を取ってみても、眼に映るのは

最初と変わらない異形の3体だ。

次第に影明はやはり自らの目は正常で、故に

眼に映す光景も現実で、あの3体の異形は

疑いようもない本物なのだと認識せざるを

得なくなった。

 

影明(……やっぱ、目の前のあいつらは本物の生物って

ことか…… だとすりゃどうすりゃいい?どうやったら

あの男の子を助けられる?)

 

目の前の光景が現実と認識した上で、次に影明が考える

のは、【異形に対する危険性】に基づく【男の子の救出

方法】だ。

影明は目の前の異形に関して何も知らない。どのような

事が出来るのか、身体能力はどれほどのものなのか、

まるで何も分からないのだ。

 

影明(けど……あいつらは絶対にやばい。まともに相手に

しても多分、ほぼ絶対に勝てない)

 

緑川影明はその生来のお人好し故にこれまで数多くの事件

に首を突っ込んで来た。

何ならヤクザやマフィアの本拠地にすら乗り込んだ事がある

ほどだ。

今まではその類稀なる身体能力と『異常とも言えるほどの

戦闘勘』によって、数々の修羅場を残るような外傷もなく

事なく、くぐり抜けてきた

そんな影明だが、いや、そうだからこそだろう。

 

【目の前の異形は今まで自分が潜り抜けてきた修羅場など

とは比較にならない脅威だ】

 

緑川影明の経験に基づく直感は事実をとても正確に判断

出来ていた。

 

故に、今捕らえられている男の子の救出もまた、緑川

影明の経験の中でも間違いなく1番と言えるほど至難を

極めている。

 

影明(今までは、がむしゃらに飛び出て、ぶん殴ったら

ほぼ相手は気絶してたけど、あいつらにはそんなことは

出来ねえ。不意をつくしかねえけど、まず救出を

成功させるには絶対にやらなくちゃいけない事が

ある。そのためには少しでも情報を集めねえと…)

 

そうだ。不意をつく。では不意をついて何をするか?

 

奴らの無力化をするのか?

ーーそんな事など出来るはずがない、むしろこちらが

奴らに無力化される。

 

男の子の救出をするのか?

ーー助けてる間にこちらも奴らに捕らえられるだろう

 

不意をついても、達成できない目的を行ったら

不意打ちという行為そのものが無駄になるのだ。

 

ならば不意をついて、何をするか。

 

緑川影明が考えていることは奴らの五感… つまり

感覚器官を一時的に奪い、助けて逃げる数秒の

時間を作るという事だ。

 

幸い、ちょうど食べ物が切れて、スーパーで買い物を

した帰りだったので、影明のぶら下げてるスーパー袋の

中に、食品が諸々入っている。

 

しかし、それにも限度はある。とてもでは無いが

奴らの五感全てを潰すといった事などはとても出来ない。

故に情報を集めなければならない。

人間は視覚に情報収集や探知の大部分を頼っているが、

奴らは未知の生物だ。人間と同じと考えるわけにはいかない

嗅覚が優れているのかもしれないし、聴力が優れているの

かもしれない。

もしかしたら熱を探知するといった事も出来るかもしれない

 

だからこそ潰すべき感覚器官を正確に見極めなければ

ならないのだ。

 

影明「やれやれ…こういう事は『優』の仕事なん

だけどなぁ…」

 

影明はうっかりボソッと独り言をこぼしてしまった事に

しまったとばかりに慌ててしまう。

しかし、奴らはこちらに気づいた様子はない。

影明はホッと胸を撫で下ろすと同時に

 

影明(特段聴力が優れてるって訳では無さそうだな…)

 

1つの情報を得る事に成功する。

 

犬の聴力は人間の4倍と言われており、1km離れた音をも

聞き取る事が出来ると言われている。

また、人間には聞き取れない高周波やわずかな音も犬は

聞き取れるという。

ならば、影明がついこぼした独り言に気付くはずなのだ

それに気付かないという事は少なくとも犬並みの聴力は

持っていない事は推察出来る

 

影明は改めて奴らの様子を伺う

 

バルムス「グハハハハ!早くヒカルの奴を無様に犯してやり

たいぜ!10年前のあいつの母親の事を言ってやった時の

奴を想像したら今からでも興奮してたまらんぜ!」

 

影明(さっきからバルムスって呼ばれてる真ん中のやつが

あの3人組のリーダー格で間違いなさそうだな。

あいつだけ他の2人とはプレッシャーが何か違うもんな)

 

蝙蝠型異形「ケケケケ!さすがバルムス様!考える事が

えげつないですね!俺はあの金髪シスターを早く犯して

やりたいですねー!」

 

影明(あいつの左隣の奴は蝙蝠っぽいな…確か蝙蝠って

超音波とか出して周囲の状況とかを探るって聞いた

事があるな…… 救出する際に1番厄介そうなのは

あいつっぽそうだな…)

 

蜘蛛型異形「ヒヒヒヒ!ワシはあの巫女服の女を犯して

やりたいわい!ああいう乳のでかい女は好みじゃ!」

 

影明(あいつは……何だ…?男の子の拘束状況と腕の

本数から見て、蜘蛛か?てゆー事は男の子を縛ってる

糸みたいなのはあいつのか?

やべーな…逃げる時にあいつに糸とか吐かれたら距離が

離れてても捕まっちまうな…)

 

ショウ「………」

 

影明(男の子を見た感じだと、床とかに固定してるって

訳じゃ無さそうだな…

けど、簀巻きみたいに全身ぐるぐる巻きにされてるから

背負って逃げるってのは無理か…… 糸を切るような

時間とか無さそうだし、そもそも道具がねえ)

 

様子を見た影明は大体の情報をまとめ、思考を

巡らせていく

 

影明(あのリーダー格は多分だけど嗅覚もそんなに優れ

てるって訳じゃ無さそうだな。多分人間と同じように

目に頼ってると見て良さそうだな… だけど素のヤバさで

言ったら間違いなく奴だな…… 不意打ち1発目で潰す

のはあいつだな……

次はあの蜘蛛野郎か…… あいつは逃げる時に糸を射出

されないように長く足止めしねえといけねえな…

それか出させないようにする? としたら、使えそう

なのは【こいつら】か……

1番厄介そうなのはあの蝙蝠野郎だな…

もし本当に超音波とか出せるとしたらそんなもんの潰し

方なんて分かんねえしなぁ……

あいつが1番ヒョロそうで人間に近い体型してるから

一か八か本気で蹴ってみるか?うーん……)

 

影明の大方の取るべき行動は固まり、救出するための

準備を整えていく。

しかし、蝙蝠型異形に関してはまだ対応策が思い浮か

んでいない。

今浮かんでいる蝙蝠型異形に対する対策なんてほぼ博打だ

 

だが、蝙蝠型異形に対するしっかりとした対策を練って

いられない状況に事態は突入していく

 

蝙蝠型異形「ねえ?バルムス様?こいつの皮ぐらい

はいじまっても構わねえんじゃないですかぃ?」

 

ショウ「んぐっ!?」

 

蜘蛛型異形「そうじゃなあ、どこかしらちょっとぐらい

食っても罰なんて当たらんじゃろ?」

 

バルムス「バカ野郎が。そんな事してヒカルどもの怒り

に火をつけてしまえば、もしかしたら思いがけない

力を奴らが発揮するかもしれん。

そうなったら面倒だ。こいつには極力傷を負わせるな」

 

蝙蝠型異形「えー、バルムス様ちょっと慎重すぎや

しませんか?」

 

蜘蛛型異形「怒ったところでこっちには人質がいるん

じゃぞ?それに奴らがあんたに勝てるとは思えんがのう」

 

バルムス「それでも念には念を入れてだ。…ったく、

今回の『妖魔王』と言い、こいつらと言い…何で

『こうなんだろうな』… 頭が痛くなるぜ。

 

だが、そうだな。逃げられんとは思うが、念のために

こいつの両手両足は折っておくとするか」

 

ショウ「んーっ!んっー!!」

 

その言葉を聞いたショウは身をよじり、恐怖に顔を

引き攣らせる。

 

影明(やっべ…!あんまり悠長な事してらんねえ状況に

なってきやがった…! まだあの蝙蝠野郎の対策が思い

ついてねえけど、行くしかねえな……

 

だけど、どうやってあいつらの不意をつく?手下の異形

2人があそこにいられちゃ不意をつこうにもつけねえ…)

 

影明はショウを助けるために行動に移そうとするが、

肝心の救出劇の開始を行う事が出来ない。

この救出劇は不意打ちを行うという前提条件で行える事だ

ここで、普通に飛び出していっても、すぐに奴らに気づか

れ、影明はなす術もなく捕らえられるだろう。

 

影明(せめてあいつら全員を他の所に目を向かせられたら

いいんだけど…… お?【こいつ】は?)

 

冷や汗を流す影明に【それ】は現れた。

 

 

 

------------------------

 

 

バルムス「グハハハハ!悪いが、お前の手足を折らせて

もらうぜ? ま、こんな事になった不幸はあいつ、姫野

ヒカルの弟に産まれて来てしまった事を呪うんだな!」

 

ショウ「んむーー!!んんーーー!!」

(嫌だ…!助けて…!誰か!お姉さん!助けて!!)

 

蝙蝠型妖魔「ケケケケケ!見ろよ!あのガキの顔!

目に涙をためてみっともなく泣いてやがるぜ!」

 

蜘蛛型妖魔「ヒヒヒヒヒ!本当じゃのう!かわい

そうに!」

 

バルムス「そんじゃまあ、まずは腕から折るか」

 

バルムスはショウの手足を折るべくその丸太のような

剛腕を振り上げる

 

ショウ(誰か!誰か助けてええええええ!!)

 

まさに絶体絶命。今まさにバルムスの拳がショウの

腕に向けて振り下ろされるという時だった

 

 

カラッ!

 

 

僅かにだが、確かなる物音がバルムス達の背後から

聞こえた

 

バルムス「む!?誰だ!!」

 

当然バルムス達もその後に反応する

 

蜘蛛型妖魔「まさか…聖徒会ども、もう来て物陰に

潜んでおるのか?」

 

蝙蝠型妖魔「いや、ちがう……」

 

 

ネズミ「チューッチューッ」

 

 

物陰からネズミが出てくる。

 

蝙蝠型妖魔「何だ、ネズミかよ」

 

蜘蛛型妖魔「驚かせおって」

 

バルムス「まぁここは元は食品工場だったらしいからな

ネズミぐらい居るだろう」

 

妖魔の3体達はそのネズミをすこし呆れ気味に見ている。

この時、物音がしてから今まで3体ともがよそ見をして

いる時間は既に15秒を過ぎようとしていた。

 

だからこそ、妖魔達と同じように物音の方向を見なかった

ショウだけが妖魔達の背後に近づく【人物】に気が付いて

いた。

その【人物】はリーダーである妖魔のバルムスのすぐ後ろ

まで近づき……

 

「おい」

 

何と言葉をかけたのだ

 

バルムス「あ?」

 

突然後ろから声をかけられたバルムスは呆け気味に

後ろに振り向いた

 

ーーそれが人間の逆転劇の始まりとも知らずに……

 

後ろに振り向いたと同時にバルムスは目に何かを

かけられたのを感じた。

その刹那ーー

 

バルムス「う!?うぐああああああ!!!!」

 

バルムスの眼球に強烈な痛みが走り、その痛みに

たまらずバルムスは苦悶の声を上げる

そして、バルムスの視界は完全に奪われ、目の痛み

により周りの状況を把握することすら出来ない

 

影明「どうだ!!タマネギの汁に七味をたっぷり

混ぜ込んだ特性目潰しだぜ!!

タマネギの汁の眼球破壊力を舐めんなよ!!」

 

そう高らかに宣言したのは緑川影明。彼は見事な

までに正確にバルムスの両目を潰す事に成功した

 

もちろん先ほどのネズミも彼によるものだ。

先にわざと音が聞こえるように離れたところに

石を投げつける。

当然物音を聞いた奴らは警戒し、物音の正体を

探るべく辺りの捜索を開始するだろう。

それを防ぐためのネズミだ。

物音が聞こえた辺りからネズミが出て来れば、

この食品工場だ。ネズミがいる事に疑問など

持たないし、物音もネズミのものだと納得する

だろう。

 

そうして見事に油断をした妖魔達は影明に

不意をつかせるには十分過ぎるほどの時間を

浪費してしまったのだ。

 

蝙蝠型妖魔「な!?バルムス様ぁ!?」

 

蜘蛛型妖魔「一体何ごと…!?」

 

手下の妖魔達もバルムスの苦悶に反応して振り向く

だが、蜘蛛型妖魔の方は既に手遅れだった。

 

影明「次はお前だ!!これでもくらいやがれ!」

 

蜘蛛型妖魔「ぬぐぅおお!?」

 

次に影明が浴びせたのは小麦粉の袋の中に1パック分の

卵を全て投げ込み、ドロドロに混ざり合った小麦粉と卵

の液体物だ。

それも一つではない、実に5つ以上の小麦粉の袋を袋ごと

蜘蛛型妖魔に浴びせた。

 

蜘蛛型妖魔「ぐっ!ぐおお!!ま、前が見えん!!

ぐうううう!?何かが!ワシの糸の射出口に

入って……!」

 

影明「いやー!無駄に小麦粉と卵買いすぎちまったのが

こんな所で役に立つなんてな!」

 

まさに小麦粉爆弾とも言える物を大量にまともにくらった

蜘蛛型妖魔の全身は小麦粉と卵の混ざったドロドロの液体

まみれとなり、糸の射出口にまでその液体が侵入してくる

 

結果、蜘蛛型妖魔は視界を奪われただけでなく、己の武器

である糸も封じられてしまった

 

蝙蝠型妖魔「くっくそ!クソガキがぁ!!」

 

影明「そらよ!!」

 

怒りのままに影明に飛びかかろうとした蝙蝠型妖魔に

影明は一気にスーパーで買ってきた残りのものを

袋ごとぶちまける

 

蝙蝠型妖魔「くぅ!小癪な!」

 

それにより、蝙蝠型妖魔は一瞬の視界と隙を奪われる

その一瞬のうちに

 

蝙蝠型妖魔「んなっ!?」

 

一瞬の奪われた視界が戻った時には影明は蝙蝠型妖魔

の目の前に跳躍してきていた

 

そしてーーー

 

影明「うりゃあ!!」

 

蝙蝠型妖魔「うげえええええええ!?」

 

影明は凄まじい飛び蹴りを蝙蝠型妖魔に繰り出した。

それを顔面に食らった蝙蝠型妖魔の顔面はへしゃげ、

ものすごい勢いで10m以上吹っ飛び、蝙蝠型妖魔は

壁に叩きつけられた。

蝙蝠型妖魔の叩きつけられた壁はうっすらとクレー

ターが出来上がる。

 

この結果に関して、まさに異常と言わざるを得ない。

貧弱そうとは言え、仮にも相手は妖魔である。

人間とは肉体の強度はまるべ比べ物にならない

頑強さを誇っているはずだ

そんな妖魔の顔がへしゃげたのだ。それどころか

蝙蝠型妖魔は10m以上という距離を派手に吹っ飛び、

叩きつけられた壁にはクレーターが出来たのだ。

この事から蝙蝠型妖魔の吹っ飛んだスピードは相当

な物だったことは容易に想像出来る。

 

この結果から、緑川影明の放った飛び蹴りは

【鉄製の扉にクレーターを作った文香の蹴り】すらも

凌ぐ常軌を逸した威力の蹴りだと断定出来るのだ。 

 

こんな威力の蹴りを放てる身体能力で今までは人間たち

を殴ったりしていたのだ。

【殴られた人間が一撃で気絶するのなんて当然だ】

むしろ、死者が今まで出なかった事の方が不思議と

言えるかもしれない。

まぁ、影明も自らの異常な身体能力は理解しているので

人間相手には本気で殴ったりとかはしていないのだが

 

蝙蝠型妖魔「カ、カカ…」

 

人間としてはあまりに桁違いな威力の蹴りをくらった

蝙蝠型妖魔は軽い脳震盪を起こし、呻き声をあげ

一時の間その場から全く身動き出来なくなる

 

影明「何だぁ?結構内心びびってたんだけど案外

大したことねーのか?

ま、いいや…… 早く男の子を助けてこっから

逃げ出そ!」

 

影明は急いでショウの元へと駆け寄り、その身体を

お姫様抱っこのように抱えた。

 

3体の妖魔はなおもその場で呻いて動かずにいる

 

影明「悪いな!拘束されてる糸とか切ってやる時間

とかねーからさ!このままだけど、許してくれな!」

 

ショウ「」コクッコクッ!

 

影明はその身体能力でヒョウを思わせるほどの

スピードでその場から逃げ出す。

 

しかし、物事はそう上手く行くものではない。

影明が廃工場の入り口の手前に差しかかる

ぐらいでーー

 

 

バルムス「まぁてええええ!!!

クソガキがあああああああ!!!」

 

 

 

リーダー格の妖魔であるバルムスの空気を揺らさん

ばかりの咆哮が影明達の耳をつんざく

 

影明「あーっくそっ!やっぱそう簡単には

行かねえか!」

 

バルムス「おい蜘蛛ぉ!!さっさと糸出してあの

クソガキを捕まえろ!!」

 

蜘蛛型妖魔「む、無理じゃ!あやつに浴びせかけ

られたドロドロとした液体が糸の射出口に入って

上手く糸を出せん!」

 

バルムス「ちぃっ!役立たずが!!」

 

そう言ってる間に影明は廃工場の入り口にたどり

着き、そのまま外へと飛び出して行った

 

バルムス「くそぅ!!逃してたまるか!!

おい!貴様ら!!あのクソガキを追うぞ!

 

あの野郎…!ただじゃ済まさねえ!!

必ず嬲り殺しにしてやる!!」

 

バルムスは身動きの取れない状態から回復した

手下の妖魔を叱咤し、怒りに目を煌々と輝かせ

手下の妖魔達を率いて緑川影明の追走に出る

のだったーー

 

 

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影明「くっそ!しまった!!カバン置いて

きちまった!まぁこの状況でカバンなんか

待てねえか……」

 

影明「携帯ポケットに入れてて良かったぁ…」

プルルルルル

 

影明「あ!もしもし!?優!?俺!今渋谷に

いるんだけど!!……しょうがねえだろ!?

男の子が連れ去られてたんだから!!

それより俺は今とんでもなくやべえ奴らに追わ

れてんだ!…… 違う!ヤクザなんかよりもっと

やばい奴らだ!!誇張なしで本物の化け物っつーか

異形? どっちでもいいや!とにかく人生の中で

本気で1番命がやばい状況なんだ!!今からひさ

言う場所にこの男の子置いて行くから男の子を

俺の代わりに助け出しにきてくれ!!……

俺?俺はあいつらを引きつけてから逃げるから!

すまん!もうちょっと話せるような状況じゃなくな

ったてきた!!場所は……だ!!

いいか!?俺を助けに来ようとかすんなよ!?

今回のやつは本気でやべえから!!いいな!!」ピッ

 

ガラララッ!

 

影明「ごめんなっ!ここで身を潜めといてくれ!!

俺はあいつらを引きつけとくから!

そのうち助けが来るから!!じゃなっ!」

 

ピシャンッ!

 

影明「さぁーて!異形ども!追ってきやがれ!!」

 

 

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「「「ハァ……ハァ……!」」」

 

 

疾風のスピードでビル伝いを駆ける3人の少女

聖徒会メンバーの姫野ヒカル、セイラ・神無月、

綾風ユキ。

 

現在3人は妖魔に連れ去られたと思われる姫野

ヒカルの弟、姫野ショウの救出のため、渋谷

へと向かっていた。

 

渋谷は『ある事件』をきっかけに妖魔に占領され

今や妖魔にとっての日本支部とも言える場所へと

変貌を遂げてしまった、日本で最も危ない場所だ。

だからこそ、ショウが連れ去られるならその渋谷が

最も可能性が高いため、聖徒会メンバー3人は

渋谷に急行しているのだ。

 

ヒカル「ショウ…!ショウ……!!」

 

その中でもヒカルの焦りようは凄まじい。

それもそのはずだ、ヒカルの両親は既に

この世におらず、ヒカルには親戚もいない。

ショウはヒカルにとって最後で唯一の肉親なのだ。

ヒカルは両親が死んだとき、両親の遺志を受け継ぐ

事を決意し、退魔士となり、国の皆を守る事を

決意したのだ。それが、ヒカルの両親のしてきた事

なのだから。

そして、もう二度と自分の大切な者を失わないと、

守る事を誓ったのだ。

無力だった『あの頃』のようにならないように、

そのためにヒカルは退魔士になったのだ。

 

ショウはヒカルにとって何にも変える事の出来ない

希望と宝物そのものなのだ。

 

なのに、この体たらくだ。

 

ー私はショウをどんな事があっても必ず守ると

誓ったはずなのにー

 

いつショウが殺されてもおかしくはない状況に

陥ってしまっている。

 

ヒカルはショウまで失ってしまったらもう立ち上がる

事は出来ないだろう。

 

その事に対する恐怖と自分に対する不甲斐なさから

来る怒りが、ヒカルにこれまでにないほどに焦燥を

駆り立て、結果、間違いなくヒカル史上1番の

スピードを出していた。

そのスピードは他の2人の仲間

セイラ・神無月と綾風ユキすらも置いてきぼりに

してしまうほどだった。

 

セイラ「ヒカル!!少し飛ばし過ぎですわよ!」

 

そんなヒカルにセイラが苦言を言うが、

それに対してヒカルは鬼気迫る表情で言い返してくる

 

ヒカル「だってショウが妖魔に連れ去られたんだよ!?

今頃は怯えて動けないでいるかもしれない!

もしかしたら妖魔たちにいたぶられてるかもしれない!

ショウの命がかかってる一刻を争う状況なんだよ!?

それなのに急ぐな、なんて!

そんな悠長な事してられないよ!!」

 

その胸が張り裂けそうな様子で怒鳴るヒカルに

今度はユキが苦言を言う

 

ユキ「ですが今から行く渋谷は言わば妖魔の根城と

なってる所です!私たちですら敵わないような

強力な妖魔だっているかもしれません!はぐれて

しまったら危険です!!

気持ちは分かりますが、今のヒカルさんのスピード

には私たちも追いつけないんです!

それにそんなスピードを出したら体力の消耗が激しい

ですよ!今のスピードを維持したら妖魔と戦う時に

戦うだけの体力が残らないです!」

 

セイラ「それに、ショウが渋谷のどこにいるか分から

ない!いいえ!本当に渋谷にいるのかすらも不明瞭

ですわ!

ちゃんと体力の温存をしないと、ショウを探すだけでも

身体が持ちませんわよ!」

 

ヒカル「そう…だけど!それでも……!時間が遅くなれば

なるほど、ショウの身が危険になっていくことには

変わりない! 2人がついて来れないって言うなら

それでもいいよ!私1人だけでも行くから!」

 

セイラ「あぁもう!」

 

ユキとセイラの最もな意見にも耳を貸さず、ヒカルは

なおもスピードを増して渋谷へと進む。

ヒカルは完全に冷静さと判断力を失っていたのだ

そんなヒカルを1人にさせまいとセイラとユキも

スピードを上げるヒカルに合わせてスピードを

更に上げる。

2人とももう限界までスピードを出していたのにだ。

そして、それはヒカルも同じである。

まさしく3人は限界を超えるほどの力で夜を駆けている。

そんな状態を維持したら、渋谷に着く頃には体力は

底つき、まともに戦えるような状態にはなっていない

だろう。

セイラとユキ、いや、おそらくはヒカルもそんな事は

理解している。

しかし、ヒカルはそれでも溺愛する弟の危機を前に

一刻も早く救出したいという念がその自身にとって

危険なスピードを緩める事は出来ず、

セイラとユキも親友を放っておく事などは出来ない

ため、限界を超えてスピードを出す事を余儀なく

せざるを得なかった。

 

ヒカル「まもなく渋谷域に突入するよ!」

 

ついに3人は妖魔の領域、渋谷への入り口へと

辿り着こうという時

 

ユキ「っ!?待ってください!ヒカルさん!」

 

ユキが急に静止を呼びかけてくる。それに

セイラが反応する。

 

セイラ「どうしましたの!?ユキ!」

 

ユキ「あそこ!誰かが渋谷に入ろうとしています!」

 

 

 

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荒々しい呼吸で自転車を漕ぐ人影が2人ーー

 

紅藤優と神崎瞬が渋谷へと向かっていた。

 

緑川影明から救援の要請を受けた紅藤優は

その要請に応えるべく、準備をしていたのだが

あまりにも突然の事であったため、優自身も

かなり慌てていたので部屋で相当な物音を

立ててしまっていた。

そして、普段静かな優の部屋に不相応なほどの

物音が瞬の部屋にまで聞こえていたらしく、

優が準備を終えて部屋を出た時に、心配して

部屋まで見にきた神崎瞬と鉢合わせてしまう。

そこで事情を聞いた神崎瞬も紅藤優と共に

出かける準備を済ませ、今2人で渋谷に向かって

いた所だった。

 

優「ったく!影明のバカはいっつも急に無茶を

しだすんだから! そういう事は僕に連絡して

からやれって毎度言ってるのに!」

 

瞬「おいおい…!マジで渋谷方面なのか…!?

危険なガスが今も噴出していて街を歩くだけで

死の危険があるっていう…!

クソッ!この前特危だって言ったばかりなのに

何でそんな場所にあいつは行くんだよ!!」

 

優「それが影明だよ!あいつは誰かが困っていたら

そこが例え死ぬかもしれない危険な場所でも飛び

込んでいくようなお人好しの正義漢って奴なんだよ!

瞬だってあいつの性格はよく分かってるんじゃ

ないの?」

 

瞬「そりゃそうだけど…!5歳という幼い頃であいつ

とは別れたから、あいつも成長してそういう向こう

知らずな所も多少は直ってるかと思ってたんだよ!

あいつは昔とホントに全く変わってないな!」

 

優「あいつは今も昔もお人好しのバカって事だね!」

 

瞬「それにしても、ガスマスクとか無くてで大丈夫

なのか? いや、そんなものあるわけ無いと思うけど

街を歩くだけで命に危険なほどガスが充満してるよう

な場所に生身の身体で向かったら……」

 

優「いや、おそらくそれは大丈夫だ」

 

瞬「何でそんな事が言える?」

 

優「男の子というぐらいだから誘拐されたのは多分

子供だ。確かに渋谷は犯罪で身を隠すのにはうって

つけだけど、そんな危険なガスが立ち込める場所を

まだ免疫機能も大人に比べたら未熟な子供の誘拐

場所には指定しない。

つまり、誘拐犯は渋谷に子供を連れて行っても

安全だという確信が少なくともあったという事だ。

 

という事は、渋谷がそんな危険な状態である可能性は

ほぼ無いって言うことだよ。」

 

瞬「な、なるほど…… いや、でも!もしかしたら

ガスの充満していない所があって、誘拐犯はそれを

熟知してると言う可能性もあるじゃないか!

そいつらは普段から誘拐をしていて、渋谷の構造に

詳しいのかもしれないし……」

 

優「確かに、その可能性も捨て切れはしない。

けど、前々から僕はそもそも渋谷にガスが充満してる

なんていう事自体半信半疑だったんだよね。」

 

瞬「……?どういうことだ?」

 

優「事故が起きたのが今から10年前、という事は

10年間は渋谷のガス事故に対応する期間があった

という事。事故がいくら大規模だったとは言え

所詮はガスだ。放射能みたいに浄化に50年近く

かかるというような代物じゃない。

だけど、この10年で何か変わった事ってある?

渋谷のどこか一部は除去が済んで、復興に入って

いたっていいはすだ。

なのに、政府は今も渋谷の全域を立入禁止にして

いる。

 

だから、今回で確信出来た。

渋谷が封鎖になった理由は【ガスの流出】が原因

じゃない」

 

瞬「…というと……?」

 

優「それはーー「あなたたち!」」

 

優が確信めいた【何か】を言おうとした時、

聞き覚えのある声が響く。

 

瞬・優「んなっ!?」

 

そして、その声の主、いや、達は瞬と優の

少し離れた場所に空からいきなり降ってきた。

2人は自転車のブレーキをかけざるを得なかった

それなりに広い道路とは言え人が3人も立ち塞が

っている上、急に空から現れたのだ。

万が一にも轢いてしまうわけにはいかない。

幸い、3人はブレーキをかけきるには十分な距離の

場所で降り立ったので、瞬と優は危険なく

ブレーキをかける事が出来た。

 

2人が、3人の顔が認識できるちょうど手前付近で

止まると、2人はとても意外という風に目を丸く

させた。

 

瞬「き、君は…同じクラスの綾風ユキさん!?」

 

優「それに真ん中に立っているあなたは生徒会長

の姫野ヒカルさん。その隣のあなたは確か……

生徒会副会長のセイラ・神無月さんかな?」

 

2人が驚いているのは自分達も知っている学園の

生徒だからというのもあるが、それ以上に驚いて

いるのは彼女達の【格好】だ。

学園での生活の時のような制服ではない。

いや、ヒカルに関しては制服のような姿だが、

学園の制服とは細部が少し違った

それよりも異質なのはクラスメイトのユキと

副会長のセイラの服装だった

ユキは巫女服を、セイラは西洋で用いられていた

修道女のような服を身に包んでいたのだ

 

セイラ「あなたたち、この先がどこか知っていらし

てますの?いいえ、日本に住んでいらしてるなら

知らないはずがありませんわよね」

 

セイラが嗜めるように瞬たちに質問を投げかける。

それに続き、ユキが2人に話しかける

 

ユキ「この先は特別指定危険区域です。皆さんも習って

いると思いますが、危険なガスが立ちこめる死の

領域です。この先に進む事は命に関わります。

元の道に引き返してくれますか?」

 

ユキが優しく、しかし強くそう言い放った。実際は

渋谷にはガスなど噴出してはいないが、危険である

というのは間違いなかった。

退魔士としてその危険性を十分に理解している2人が

一般生徒である2人に引き返すように言うのは至極

当然の事である。

 

だが、2人もそれに素直に従うわけにはいかない

緑川影明は今その危険な場所にいて、救援の要請

を電話で求めてきたのだ。

親友がそんな危険な状況に置かれているのに、2人

もここで引き返すという訳にはいかない。

瞬が口を開く

 

瞬「もちろんそれは分かってるけど…友達がこの先の

危険区域に今いるんだ!さっき助けてくれって電話が

かかってきて… だから俺たちはこの先に行ってその

友達を助けに行かないといけないんだ!」

 

瞬が声高々に抗議した言葉に1番反応したのはユキ

だった。

 

ユキ「友達…?もしかして、緑川さんの事ですか!?」

 

瞬「あぁ、そうだ。綾風さんも同じクラスなら

知ってるだろ!?」

 

それを聞いたユキが明らかに狼狽した様子になる

同じようにそれを聞いていたヒカルとセイラは顔を

合わせ、その抗議に言葉を返した

 

ヒカル「分かったわ。君たちの友達の緑川君は必ず

こちらで助けるわ」

 

セイラ「えぇ、ですのであなたたちは早くここから

退避してくださいまし」

 

ヒカル「悪いけど、こっちもあんまり時間がないんだ。

私たちは早くこの先に行かないと、間に合わなくなる」

 

ユキ「ご、ごめんなさい!お二人はここでちゃんと

引き返してくださいね!さぁ!ヒカルさん!

セイラさん!早く行きましょう!」

 

ヒカル「うん!行こう!」

 

セイラ(やれやれですわ…ヒカルに続きユキまで無茶

をしそうですわね……)

 

3人は踵を返しその先に進もうとする。

 

瞬「ちょっ!まっーー?」

 

その様子に瞬が慌てて呼び止めようとするが、

さっきまで無言だった優がその呼びかけを手で

制し、実に奇怪な事を言い出した。

 

優「僕たちは、【君】の弟について知っている」

 

瞬「………は?」

 

そのあまりに場はずれで何の脈絡もないおかしな事を

優が言い出したのを聞き、瞬は本気で意味が分からない

とばかりに呆けた声を漏らした。

自分より遥かに頭が回り、便りになると思っている

優に対して、瞬は心の底から「こいつは何を言ってる

んだ?」と、そう思った

 

瞬「!!??」ブルッ!

 

だが、今まさに渋谷へ向かおうとしていた3人は足を止め

こちらを振り向いた。

特に真ん中の生徒会長、ヒカルは鬼の形相でこちらを

睨んでいた。

 

ヒカル「いま…何て言ったの?」

 

その迫力に瞬は身体中の毛穴が全て開ききるほどの

恐怖を感じ、全身がガタガタと震えるのを実感していた

瞬は一切言葉を発せないほどに緊張しているのに対し、

優は『平然』とそのヒカルの言葉に返す

 

優「……やっぱり、姫野さん、君だったか」

 

瞬「?????」

 

ヒカル「……どういう事?」

 

瞬には優の言いたい事がまるで分からなかった。

ヒカルはなおも敵意を最大限にまで高めた凶相で

優を睨み続けるも優はまるで物怖じせずに

つらつらとヒカルの問いに答える

 

優「さっき、瞬が言ったように僕たちは向こうの

危険区域に指定されている渋谷から影明からの救援

要請を受けて、行こうとしているんだけど、

影明が渋谷に入った理由は好奇心なんかじゃない。

ある男の子が連れ去られるのを偶然見かけたから

なんだ」

 

優の答えに瞬は別段驚くこともなく、耳を傾けている

その答えに関しては優から事情を聞いた時に知らされ

ていたからだ。

だからこそ瞬は混乱する。それが先ほどの発言との

繋がりがあるなんて全く思えないからだ。

故に瞬は疑問のままに優に問いかける

 

瞬「……ごめん、優の言いたい事が全く分からない。

影明が渋谷に入った理由がさっきの姫野さんの

弟さんに関して知っているという意味とどう関係

あるんだ?」

 

瞬の疑問に優は瞬に、そしてヒカルを筆頭とした

前方の少女たち3人にも発言するかのように

答える。

 

優「まず初めに綾風さんが「引き返せ」って言った事、

ここでこの3人がこの渋谷の関係者である可能性

が高い。渋谷と何の関係もないならば、「そっちに

行ったらダメ」とかっていうような言葉が出てくる

はずだ。

「命に関わる」とも言ったね。政府は具体的に

どのようなガスが充満しているのか、明らかに

していないというのに、綾風さんははっきりと

命に関わると言った。

渋谷に関して何らかの情報を知っているのは

明らかだろう」

 

瞬「……いや、言われてみればそうだけど、

そんな事綾風さんたちがこの先の渋谷に向かおうと

した時に分かることだけど……」

 

瞬が少し呆れ気味に言葉を返すと優は

それに対し肯定とその次の命題に関して述べる

 

優「確かに。瞬の言う通りその行動で彼女たちが

渋谷の関係者であることは確定した。

それなら瞬も彼女たちが渋谷の関係者だという風に

思っているなら、彼女たちの服装がおかしいとは

思わない?

関係者であるなら、ガスで汚染されている渋谷に

ガスマスクすらも持たないまま渋谷に行こうと

するなんてありえないって」

 

優にそう言われ、瞬は今更ながらに彼女たちの

装いがあまりにおかしい事に気がついた

渋谷が危険なガスで汚染された特別指定危険区域

に定められているのは日本のどこでも知っている

ことだ。

立入禁止ではあるが、もし仮に渋谷に行かなければ

ならない用事があるならば、例え関係者でなくとも

ガスマスクぐらいは準備してから渋谷に向かうだろう

それなのに、関係者であろう少女たち3人は防護服は

疎か、ガスマスクすらも装備している様子すらない。

彼女達の装いはまさに自殺行為であるし、とてもでは

ないが関係者とは思えないほどに異常であった

 

瞬「いや、待って、よくよく考えたら、綾風さんたち

が汚染区域で活動する事すらおかしくないか?」

 

瞬は更に、彼女たちが関係者であるという前提その

もの対する異常に気がついた。

その言葉の真意を汲むように優が言葉を続ける

 

優「そうだ。汚染区域の活動なんて学生がするような

領分じゃない。

そんな事は自衛隊やレスキュー隊と言った【大人の

プロ】がすることだ。

よしんば学生がするとしても、【高校以上】の、

自衛隊とかの訓練学校に行ってる生徒たちだろうね。

でも、彼女たちはこの間まで中学生だった。

義務教育の範疇である中学でそんな訓練するはずが

ない」

 

優は瞬の感じた矛盾をとても分かりやすく言葉に

した。

 

ヒカルたち3人も優の一連の洞察に苦虫を噛み

潰したような表情をする。

その顔だけでも、彼女たちが何らかの隠し事を

している事は十分に感じ取れる。

 

そこは追い討ちをかけるように優が洞察を

続ける

 

優「そして、神無月さんが腰あたりに身に付け

てるの拳銃だよね?しかも【コルトパイソン】

じゃない?それ」

 

優の指摘にセイラは心底驚愕してしまう。

図星なのだ。セイラ・神無月は銃で妖魔を

討ち倒す。

故に自らの武器である銃を身に付けてるのは

至極当然の事であった。

 

セイラ「な、何で分かりましたの!?」

 

セイラが驚きのままに理由を問うとこれまた

優は当然のように答える

 

優「まぁ……僕は『そういうのは少しばかり

見慣れてる』ってだけの事だよ。

それと明らかに【何か】と戦うつもりだね?」

 

優はまたしても彼女たちの【本当の目的】に

ついて遠からず当てにくる。

 

セイラ「…何故そんな事が言えますの…?」

 

優「銃の収納場所が目で見て分かる場所だから。

暗殺や不意打ち目的なら普通もっと気づかれない

場所に収納するはず。

そして、気づかれにくければにくい場所ほど銃を出す

のに手間取る。逆も然り。神無月さんの銃の収納

場所は目で見て分かる程度には銃の出し入れが

しやすくしないといけないっていう事の表れ。

つまり、一瞬の隙が命取りになる直接戦闘を

するつもりでいるって事だ。

それに、自衛で持つには【コルトパイソン】は

些か過剰火力すぎる。

【コルトパイソン】を持つってことはそれだけ

の火力が必要って事だ。

そこからも何かしらの戦闘をするつもりって事は

想像出来るよ」

 

セイラ(何て洞察力ですの…!?この男子生徒、

一体何者!?)

 

優の洞察力にセイラは度肝を抜かされっぱなしだ。

いや、セイラだけではない。同じように隣で話を

聞いてきたヒカルとユキも驚きで目を見開いている

 

瞬「ごめん。水を差すようで悪いけど、さっきから

言ってる【コルトパイソン】って何なんだ?」

 

瞬がコソッと隣の優に対して聞く。

優も同じぐらいの声量で隣の瞬にだけ聞こえるように

その質問に答える

 

優「瞬に聞き馴染みがあるように言えばマグナムの

事だよ」

 

瞬「マ、マグナム!?」

 

瞬はその言葉にかなり驚く。

マグナムといえば、日本の警察が持つような拳銃とは

比べ物にならぬ火力を持った拳銃であり、それ故に

撃ったさいの反動も凄まじい代物だ。

訓練されていなければ成人した男性でも反動で肩が

外れてしまうほどだ。

そんな火力の拳銃をまだ15歳ばかりの少女が所持

してるというのはあまりにも不釣り合いのはずだ。

 

瞬「な、何でそんな物を持って…いや、さっきの

話を聞いたらまさか使ってるって事!?

マグナムなんて訓練されてなきゃ、いや、女性が

撃つことすら難しい代物のはずだろ!?」

 

優「うん。だからますます渋谷がガスの充満された

汚染地域と言うのには疑問が出てくるね。

いや、もう【答え】は出てるようなものか」

 

瞬「……え?」

 

瞬が疑問を投げかけるよりも早く優は目の前の

少女たちに核心に迫る言葉を話す

 

優「単刀直入に言わせてもらう。僕は渋谷がガス

の漏出で閉鎖されたわけでないことを知っている

 

影明が言ってた。【化け物】【異形】とね

 

君たちはその化け物たちを倒すために結成された

チームなんだろう?

それならばこちらと協力して欲しい。

それが姫野ヒカルさんの弟の情報を渡す条件だ」

 

ヒカル「なっ!?やっぱりショウについて何か

知ってるの!?」

 

優「うん。ちなみにそのショウ君の安全に

関しては多分大丈夫だと思うよ。

影明が電話をかけてきた時には既に影明が

そのショウ君って子を救出してた後だった

からね。

そして、その化け物どもからショウ君を

隠している。

僕はそのショウ君の【隠れ場所】を影明から

聞いて知っている

 

つまり、より正確に言うならそのショウ君の

【隠れ場所】がこちらが出す交換条件の情報だ」

 

ヒカル「!!!」

 

その言葉を聞き、ヒカルの顔は先ほどの鬼気迫る

表情からかなり顔を綻ばせた。

とりあえずショウの身が安全である事を確認出来た

ので、ひとまずは安心したのだろう。

 

瞬「いやいや、ちょっと待ってくれ。肝心なところ

が分かってない。そもそも優は何で影明が助けた

男の子がその姫野さんの弟だって事が分かったん

だよ?」

 

優「彼女たちの状態を見て?すごく汗だくでしょ?」

 

優にそう言われ、瞬は彼女たちの方を見たら、確かに

汗をたくさん流しており、幾許か疲弊している様子

だった。

 

優「あれだけ汗を流していると言うことは、つまり

それだけ急いでいたって事。

としたら、渋谷にそれほどの火急の用事があったか、

一刻を争う事態だったと言うことは想像出来る。

だから、影明が助けた男の子がもしかして

この姫野さんたちの中の誰かの関係者なのかなって

思ったんだ」

 

瞬「なるほど…いやでも急いでたってだけで

その男の子が姫野さんの弟だという事なんて

分からないんじゃないか?

ほら?俺たちが渋谷に入ろうとしてたから

慌てて止めに来たって可能性もあるし」

 

優「その可能性もあったけど、考えにくかった。

彼女たちは空から降り立ってきたんだ。

つまりそれだけの跳躍力とかなりの高所から着地出来る

身体能力を有してる事になる。

僕たちを止めに来たのだとしたら、かなり近場にいない

と僕たちが渋谷に入ろうとしてるところなんて見えない。

つまり、その身体能力なら近場から僕たちを止めにくる

だけならあそこまで体力を消耗するのはあまり

考えられない。

だから遠くから猛スピードで渋谷に走って来たんじゃ

ないかと思ったんだよ」

 

瞬「な、なるほど…。じゃあ姫野さんの弟だと分かった

理由は?」

 

優「それはぶっちゃけ勘。でも、綾風さんと神無月さん

が僕たちに注意喚起してる中、姫野さんだけ妙によそよそ

しかったからね。心ここにあらずと言うか。

妙に渋谷の方をチラチラ見てたり、喋った時も早く話を

終わらせたがっているように見えた。

だから男の子は姫野さんの弟なんじゃないかと思った

んだけど、まぁ、あまり確信は無かったよ。

 

だから、「君の弟を知ってる」って言ってカマかけて

みたんだよ。そしたら案の定真っ先に反応したのは

姫野さんだったけどね」

 

そこまで聞き、優の発言にも全て納得が行き、瞬は

改めて優がすごいと思った。

自分が彼女たちに猛抗議して間にも優は冷静に相手の

状況を視て、推察を組み立てていた。

やはり彼の洞察力は凄まじいものがある。

 

その説明を一緒に聞いていた少女たちも同じ感想だった

ようで

 

セイラ「全く……本当によく視ていらっしゃるのね…」

 

ユキ「はい。あなたのその洞察力には私も舌を巻いて

しまいました」

 

口々にそう言った感想を述べる

 

しかし、ヒカルだけは違う。

 

ヒカル「それで!ショウはどこにいるの!?お願い!

教えて!!」

 

ヒカルにとってはそんな事はどうでもよく、ショウ

を救出する事が何よりの先決なのだ

だが、その願いなど無下にするかの如く、優は冷徹

に返事を返す。

 

優「人の話を聞いてたのかな?教えて欲しかったら

まずはこっちに協力してくれって言ってるんだよ。

この際その化け物どもが何なのかはどうでもいい。

だけど、影明はおそらくそいつらに追われてる。

だからまずは影明を助ける事に協力して欲しい。

無事影明を助けられたらそのショウ君の居場所を

教えるよ」

 

ヒカル「そ、そんな!?お願い!!ショウは私に

残された唯一の肉親でたった1人の弟なの!!

ショウを助けたら必ず緑川君も助けに行くから!

ショウの居場所教えてぇ!!」

 

ヒカルは悲痛に優に頼むも、優はそのヒカルの

悲痛さに情をかけず、冷酷に淡々と話す

 

優「……率直に言わせてもらうけど、僕は君たち

の事をそんなに信用していない。

そのショウ君を助けたら君たちはそのまま帰る

かもしれないって思ってる。

そうでなくとも、まずはショウ君を家に送り

届けてから救出に向かうっていうこともするかも

しれないとも思ってる。

今の状況的に考えたら、一番危ないのは影明だ。

奴らは隠されたショウ君の居場所を聞き出そうと

死に物狂いで影明を捕らえようとしているはず。

僕としては影明の方を優先してもらいたい」

 

ヒカル「そ、そんなぁ……」

 

ヒカルは目に見えて表情を暗くさせる。

そんな様子を見ていた周囲は瞬も含めて

口々に優を嗜める

 

瞬「おい、優。別に先にショウ君って子を救出

してからでもいいんじゃないか?

隠れ場所は知ってるんだろ?だったらショウ君

を助けるなんてすぐのことじゃないか。

綾風さんたちだってショウ君を助けたらすぐに

影明の事も助けてくれるさ」

 

セイラ「あなたの発言は私たちを侮辱している

のかしら?

あなたがたの友達は必ず助けますわ!

それが私たちの役割ですし、私たちはそんな風に

心が穢れてなどいませんわ!」

 

その中でも特にユキは怒気をこめて抗議する

 

ユキ「ふざけないでください!!ショウ君を

助けたら私たちが役目は終わったというように

緑川さんを助けずに帰るですって!!?

そんな事、絶対致しません!!!

緑川さんは必ず助けます!!例えヒカルさんが

先にショウ君を安全な場所に避難させようとしても

私がそんなことさせません!!

いいえ!私だけでも緑川さんを助けに行きます!!」

 

その迫力は先ほどの剣を突き立てるほどの怒気を

込めた迫力を出したヒカルに勝るかもしれないほど

だった。

ヒカルとセイラはユキのそんな様子にとても驚く。

それもそうだろう、ユキは普段はおっとりとしており

誰に対しても優しく、物腰柔らかであり、

優しい雰囲気を纏うお嬢様なのだ。

そんなユキが今まで見た事もないほどに怒り狂っている

だが、ヒカルとセイラは驚きつつも内心は納得が

いっていた

 

ヒカル(ユキちゃん……完全にゾッコンだね)

 

セイラ(こんなに怒るユキは初めて見ますわね…

よほどその緑川さんの事を気に入らしていますのね)

 

そんなユキの怒気をもどこ吹く風とばかりに優は

全く動じない

 

優「……どうだかね」プルルルルッ

 

その時優の携帯から着信音が響く

優はすぐさま電話に取り出し、相手を確認してから

電話に出た。

 

優「もしもし、かっぺー?上手くいった?

……何だって?……なるほど、確かにまずい状況だ。

だけど、逆にチャンスかもしれない。

……うん。それはね、そいつらを倒せそうな人たちが

今そばにいるんだ。……本当だ。だから今から言う

場所にそいつらを誘導できる?

……気持ちは分かるけど文句言うなよ。それに、

見つかってしまった以上普通に逃げていたっていずれ

捕まる。それなら僕の言ったところに誘導してそいつら

を倒した方がよほど助かる可能性が高いと思うけどな

……うん。それじゃあ頼むよ。それじゃまた後で」ピッ

 

 

瞬「何だ?どうしたんだ?かっぺーの名前が出たように

思うけど?」

 

瞬がそう尋ねると、優はそれに答えるような形で急ぎで

説明をする。

 

優「ごめん。状況が変わった。やっぱりショウ君の

救出を先決にする。

実はショウ君は既にかっぺーに電話して助けに行って

もらってたんだ。

さっきその救出した電話がかかってきたんだけど、

どうやら今影明の言っていた化け物どもに追われてる

みたいだ」

 

その発言にこの場にいる全員がいたようにどよめきだす

 

瞬「は、はあああ!?お前かっぺーにも電話してたの

かよ!?いや、それよりも化け物どもに追われてる

って!?」

 

ヒカル「そ、そんな!?ショウ!!」

 

セイラ「とてもまずい状況ですわね…!」

 

ユキ「早く助けに行かないと!!」

 

そのどよめきの中、優は冷静に少女たちに向けて

話す

 

優「うん。だからかっぺーに頼んで奴らをこの

近くに誘導してもらう事にした。姫野さんたちは

身を潜んで奴らに不意打ちをかけて倒してもらい

たい。」

 

ユキ「誘き寄せるって…!?そんな悠長なこと

していたらそのかっぺーくんもショウ君も

妖魔に捕まってしまいます!!」

 

優「妖魔って言うの?その化け物ども。

まぁ別にいい。誘き寄せる方が助けられる可能性

はずっと高いはずだ。自転車で街を闇雲に走り

回られるのを探す方が救出に向かうのに時間が

かかる。何より、そんな事をしている間に

いずれかっペーの体力が尽きて奴らに捕まるだろう。

それよりは、かっぺーの方からこっちに来て

もらったほうが遥かに現実的だ」

 

優の最もな意見にその場の者たちは全員一様に

納得をした。

 

優「さあ、あまり悠長な事をしていられない。

かっぺーにはこの場所の方の渋谷の入り口方面に

まで来てもらう予定だ。

時間にしたら大体5分くらいと言っていた。

僕たちも急いでそこまで行って身を潜めて

その妖魔どもとやらを待ち構えよう」

 

こうして3人の美少女退魔士たちと一般男子生徒

たちの共同戦線は幕を開けるーー

 

 

 

 

 




あかん!また想像以上に長くなっちまった!まだ
予定の半分ぐらいしか書けてねーよー!
てことで、申し訳ないですが次回に持ち越しです



『異常とも言えるほどの戦闘勘』
端的に影明君の秘密に関与しています
まぁ、あんまり詳しい事は言えないっす

『優』
実は影明君の無茶に、勝平君と優君も結構
付き合わされています。
で、後ほどの聖徒会メンバーとのやり取りでも
分かるように優君が色々と作戦を立てたり、
敵を洞察してました。
いわゆる参謀って役割ですね

更に言うと、優の素性にも関わってたりします

『妖魔王』
この言葉にも含みかあります。原作ではヴェゼルが
妖魔王でしたが、果たして今回はどうでしょうねぇ

あ!ヴェゼルさんも出ますよ!もちろん!

『こうなんだろうな』
はっきりと言うわけにはいかないですが、実は
これとても重要事を指しています

『ある事件』
これは近いうちに明かされます

『あの頃』
上記のある事件が起きた時のことを指してます

『平然』
これは度々出てくる優君の素性が関係しています
彼の過去を思えば、こんなことぐらいで動じる
ことなんてありえませんね


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