ユキ「……うっ」
薄暗くなってきていた暗闇からユキはやっと
目を覚ました。
ユキ「ここ…は……?」
目を覚ましたユキの視界にはまだ暗さが
残っている。それだれ自らの意識を
刈り取ったバルムスの拳の重さを表して
いるのだろう。
そして、徐々に明るさとともに辺りが
色映えていく事により、ユキはぼんやり
とした頭ながらも自らの置かれている状況を
確認することができた。
ユキ「そう…でし…た…… 私は妖魔たちに
負けて……」
完全に明瞭さを取り戻したユキの目に映る
のは怪しく蠢めく肉壁。
明瞭に戻った頭の知識で、この場所は
妖魔たちが女を陵辱、調教するのに好んで
形成する空間の一つである事を認識した。
ユキ「くぅ!!」
ユキは身を捩らせ必死に体を動かそうと
努力したが、駄目だった。
どうやら手足に肉の触手のようなものが
巻きつき、錠となって自らの手足を肉壁に
拘束しているらしかった。
その触手錠はがっちりと固められ、とても
外せそうにない。
???「お目覚めですかな?ユキお嬢様」
ユキ「!」ビクッ
肉牢の奥から卑いやしい下卑声と共に一人の
老人が歩いてくる。
ユキにとっては忌々しい記憶をくすぐる声と
大嫌いな顔であった。
ユキ「……黒岩昭三さん。こんなところで
まさかあなたと会うとは思いませんでした。
私に対する妖魔の嫌がらせとしたら、効果
てきめんですね」
ユキは皮肉を込めて忌々しく目の前の老人に
言葉を吐き捨てた。
昭三「ヒッヒッヒ…。わしは嬉しゅう思いまする
ぞ、ユキお嬢様。今こうして長年の夢の第一歩を
踏み出せそうなのですからなぁ」
昭三は穢らわしく顔を歪めてほくそ笑む。
昭三は蜘蛛妖魔に取り憑かれているはずで
あるが、今は元の人間の姿だ。
自由に妖魔の姿と人間の姿を使い分ける
ことができるのだろう。
そんな様子の昭三を見て、ユキは嫌悪で
満ちた侮蔑の表情を露わにして昭三に
蔑みの声をかける。
ユキ「……仮にも退魔の家系の一派の当主で
ありながら、妖魔に魂を売り渡し、綾風本家の
次期当主に狼藉を働こうとは、黒岩家も堕ちる
ところまで堕ちたようですね。
いえ、元からですか?何せ我ら綾風の技術を
盗み出してそれをお金稼ぎの道具にするような
男ですものね。
全く、あなたのような一族が綾風から生まれる
なんて、家の恥そのものです」
ユキは心底見下した言葉を吐く。
それはユキの心情をよく表している。
この黒岩昭三からは幼少の頃から下卑た視線と
欲望を向けられていた事をユキは感じていた。
特に、ユキがコンプレックスを抱いている1つ
である巨きな胸に並々ならぬ欲情の目線を
感じとっており、ユキは幼い時からこの黒岩
昭三がトラウマになるほどに大嫌いなのだ。
そんなユキの攻撃的な蔑みの言葉を涼しい
顔で受け流しつつ、昭三は嫌な顔を崩さず
言葉を発した。
昭三「ヒヒッ、これは手厳しい。ですが、
ユキお嬢様はその妖魔に与した卑しいわしたち
に負け、今や囚われの身になっているのでは
ないですかな?
ヒッヒッヒ…!今のお嬢様はいわば熟した果実を
収穫されるのを待つだけの果樹。
そう、その巨きなお胸のようにのぅ!」
刹那、昭三は両手をバッと突き出し、ユキの
豊乳を巫女服の上から無遠慮に鷲掴みにする。
ユキ「うぐっ!?ひゃううううう!!」
掴まれたと同時にユキは背中をビクつかせ、
盛大に官能の吐息を漏らした。
昭三「ほほぅ…これは思っていた通り……
いや、想像以上の感触と質量感ですじゃ」
昭三は念願のユキの乳果を、夢叶う、といった
様子で興奮気味に揉みしだいた。
それは長年実らせていた果実を収穫し、よく吟味
するかのようだ。
ユキ「ふあぁ…!あぅっ!?や、やめっ!
やめなさ……はううううぅぅぅ!!」
ユキは体を捩り、昭三の手から逃れようとするも
自らの爆乳から伝わる確かな法悦にユキの身体は
感極まり、逃れる動きに力がない。
そんな様子を見た昭三は少し目を細め、意外、という
ように薄く、しかし大きな愉しみでユキをおちょくる。
昭三「ふむ、巨乳は感じにくいという話があったが、
それは迷信のようですなぁ。しかし、それでも驚き
ですぞ。
服の上からだと言うのに、ユキお嬢様がそこまで
お感じになられていられるとは。
ユキお嬢様にはその爆乳に恥じぬ、いや、見た目
以上に牝牛としての才覚がおありのようですなぁ。
ヒヒッ!」
ユキ「ひぃあっ!!ぶ、侮辱しているのですか…
ふあぁぁぁぁ!!」
昭三の嘲笑にユキは反発しようとするが、乳房を
揉まれ、嬌かしい声をあげる姿にはいつも見せる
勇ましさはない。
そして、その嬌声が表すようにユキは自らの身体の
昂ぶりに、内心で動揺していた。
ユキ(まさか…私ってこんなにお乳がいやらしく
感じてしまうだなんて……)
ユキ自身、薄っすらとした自覚は以前よりあった。
着替えをする時でも、胸が服に擦れてしまい時々
声をあげそうになったほどだ。
それがいざ、本格的な乳房の責めをされ、完全に
乳房が感じやすい事を自覚させられてしまい、
ユキは自身の巨きな胸に対して嫌悪に近い、
コンプレックスを抱く。
ユキ「い、いい加減に…してください……
うぅあ!」
昭三「ふむ、そうですな。ではお胸への
【お遊び】はここまでにして…」
昭三はユキの豊乳を揉みしだく手を止めた
かと思えばーー
ユキ「きゃああぁ!?」
バッと巫女服の胸元をはだけさせ、
豊かな乳果を露わにさせた。
昭三「おぉ…!何という……!」
そのあまりにも美しい双丘の実りに昭三は
ゴクリと唾を飲み込んだ。
ユキという名前のように白い肌色で彩られた
果実にちょこんと一粒の苺を乗せられたかの
ような巨きさに似合わぬ華奢な少女らしい
小柄で可愛らしい乳首。
その不釣り合いなニプルと乳房のバランスは
しかし、逆に見事なまでの美しさを表していた。
そして、それはユキの乳房の巨きさそのもの
にも言えた。
昭三「ふむ、お嬢様のかわいらしい華奢なお身体に
これほどまでに豊かなお胸がついていらっ
しゃるとは… 服ごしでも分かりましたが、
実物を目にして改めてこの昭三、感服いたし
ましたぞ。
優れた芸術というのはどこかに崩れがあるもの。
お嬢様のこの不釣り合いな巨乳はまさに崩れ
そのもの。芸術的な美しさというわけじゃな」
ユキ「くぅ…ば、バカにしているんですか…!?」
ユキはコンプレックスたる巨乳を露わにした
羞恥で顔を朱に染める。
昭三「バカに?まさか!これほどまでに完璧な
お胸を嘲るなどあるはずがございませぬでは
ないですか。
わしはお嬢様のお胸に改めて敬服の念を示した
だけでございます。
では改めて、お嬢様の生おっぱいの実食と
させていただきましょうか」
ユキ「ひっ!きゃうううぅぅ!!!」
ガシッと卑猥な手はユキの敏感な乳房に
掴みかかり、容赦なくグニュグニュと揉み
しだいた。
乱暴な手の動きだと言うのに、ユキは
官能的な声をあげて盛大に感じまくって
いる。
普通ならば痛がってもおかしくはないはず
の強引な触り方にもしっかりと快感として
感じている事から、ユキは乳が他とは一線を
画すほどの性感スポットである事を示して
しまっている。
一方、昭三の方も口をだらしなく垂らさせ、
手から大いに快感を脳へと伝達させていた。
そこからもまた、ユキの乳房は触感も
他と一線を画している事を如実に表して
いるのだろう。
昭三「やはり、想像してた通り……いや、
それ以上ですぞ。これほどまでの美味な果実に
舌鼓を打つのはユキお嬢様だけでござい
ましょうなぁ。いや、この場合は手鼓と言った方が
適当なのですかな? まぁ、そんな言葉あれば
ですがのう!ヒヒッ!」
ユキ「ひっひぃ!やめ…やめて…!それ以上
揉まないでぇ!!」
ユキは悲鳴をあげるように昭三に中断を願うが
当然そんな懇願を聞くはずなどない。
しかし、ユキの様子はどこか妙であった。
ユキの静止の願いは乳房から伝わる快感、羞恥
から、というものではない。
もっと別の【物】が滲み出てくるのを怖れて
いる。そして、【それ】を昭三に知られたく
ないという様子であった。
そんなユキの妙な様子に昭三は気付く様子は
ないが、それも時間の問題であろう。
昭三「ふぅむ。この手心地からして…ユキお嬢様
のお胸の大きさはGカップ……バスト差は25cm
を超えてそうですなあ。それもまだまだ成長しそう
なようで…… すぐにHカップになりそうですな。
どうですかな?お嬢様?私の見立ては合って
ございますかのぅ? ヒヒヒッ!」
ユキ「そ、そんなこと知りません…!!
それより…!揉むのをやめ……やぁ!
つよっ!…つよいいいいぃぃ!!」
ユキ(あぁ…まずい……!このままじゃ
出ちゃう……!この男に知られてしまう…!)
ユキは焦りから拘束から逃れようとする力を
更に一層強め、髪を振り乱しながら身体を
めちゃくちゃによじる。
しかし、肉壁の触手の拘束は力を奪われた
か弱き少女の力などものともしない。
しかも強く身体を捩る力が、そのまま
豊満な爆乳にブルブルと伝わり、その感触が
乳房を鷲掴みにする手を一層悦ばせてしまう
結果になる。
昭三「ヒヒヒヒヒッ!お嬢様はそんなにわしに
この乳牛のような爆乳を堪能してもらいたいの
ですかな?
そうアピールしなさんでも、これからじっくりと
この爆乳に相応しい牝牛に仕立ててあげま
しょうぞ!
まずは乳牛らしく【母乳】が出るようにする
かのぅ!」
ユキ「!!」ビクンッ!!
昭三の一言にユキが激しく身体を弾かせ、反応
した後ーー
ギュウウウウウ!!!
ユキ「きゃああああ!?」
昭三は乳房を揉む手を急に強く揉み潰した。
ユキ「いやあぁぁぁ!!!出るっ!出るっ!
出ちゃううううううう!!!!」
昭三「……む?」
プシャアアアアア!!!
昭三「な、なんじゃと!?」
ユキの絶叫の木霊と共に、豊満な乳の先端から
母乳が白い噴水のように噴き出してきた。
あまりの予想外の出来事に当の原因たる昭三
本人も目を見開き、仰天してしまう有様だ。
これこそが、ユキが先ほどから恐れていた
ものの正体であった。
ユキ「あ、あぁううぅぅぅ!!こんな…
ひどい…… うぅ……」
今まで誰にも、実の親にさえ秘密にしていた
ユキ最大のコンプレックスをよりにもよって
心底毛嫌いしていた卑男に知られてしまう
結果になってしまい、ユキは可愛い童顔を
子供のようにくしゃくしゃな泣き顔に変える
昭三「ユ、ユキお嬢様…!?まさか妊娠して
おられるのですか…!?」
驚きの事実のままに昭三がユキの受胎を疑う。
母乳が出ているのだから、当然の反応だろう。
ユキ「ち、ちがいます!妊娠なんかして
ません!」
昭三「ならその母乳は一体…!?」
ユキ「あ、あなたに話す必要はありません!」
気丈にユキは答えるが、くしゃくしゃな泣き顔
のままでは説得力は無い。
ユキ(うぅ……知られてしまった… ずっと
隠していた事をよりにもよってこの男に
知られるなんて……!)
ユキに母乳が出始めるようになったのは、
霊核を受け継ぎ、退魔の修行を積み始めてから
3年の月日が経った小学3年生に上がる前ぐらい
の時だ。
元々ユキの体質的にも母乳が出る特殊な体質
であったのだが、幼いユキに霊核の膨大な
霊力量を抑える事は難しかった。
その抑えられきれずにいた霊核の霊力は
ダムの壁に徐々に亀裂が入り、ある日突然
孔が開いて決壊したというように、
霊力が漏れ出して、それが母乳となって
溢れ出したのだ。
ユキは母乳が出て以来、誰にも告げずに
隠して来たので、ユキにはその事実を
知る由は無い。
昭三「そうですか…… まぁ、話したくないなら
話したくないで結構でございまする。
お嬢様のお乳からミルクを出させるように
改造する手間が省けましたからのぅ!」
昭三は驚愕も束の間、まるで掘り出し物を
見つけたみたいに顔を嬉々と綻ばせ
その醜い顔のままユキの乳首に口を近づけ
ジュボボボボボボ!
ユキ「ひっ!?ひぃ!!あきゃああぁうう!!」
乳首を口で包み込み、思い切り口を窄めて
吸い出した。
さらに乳房を鷲掴みにしていた手も更に
力を込め、まさしくミルクを搾り取るように
揉み潰す。
ブッシャアアアア!!
吸いと絞り、2つの乳搾りの行為は当然の
ようにユキの乳房から母乳を先ほどよりも
さらに強く噴出させた。
ユキ「ふああああぁぁぁ!!!」
その時、ユキは今まで感じたことのない
悦楽の衝撃を感じた。
全身が痙攣し、ビクビクと身体を反らし、
足の指が何度も折り伸びを繰り返し、
瞳孔は大きく開き、口からは舌をピンと
伸びて涎がポタポタと垂れる。
頭の中は快楽の波に飲まれ、思考する
事は出来ない。
純白可憐な少女はこの時、初めて
快感の頂点の景色を脳に焼いたのだ。
ユキ(な、何これぇ…!?お乳からすごい
衝撃が来て…頭真っ白になって……)
ユキが初めての絶頂に呻き味わう。
しかし、その絶頂の余韻に浸る暇なく
ジュボボボボ!!!
ユキ「はひいいいいいん!!?」
とめどない昭三の吸い付きにユキは次なる
法悦に身を悶絶させてしまう。
当の昭三本人は先ほどのようにユキに快楽を
与えるための責めをしているわけではない。
今の昭三の意識は思ってもみなかった
乳果汁の収穫に夢中で、ユキの母乳の味を
堪能することだけに身をやつしていた。
昭三「ふぅおっ!おぉう!美味い!
何と濃厚かつ飲みやすいミルクじゃ!!
これは生き返るわい!」
ユキ「いやああああ!!吸わないで…!
吸わないでええええええ!!!」
夢中でユキの母乳を吸い続ける昭三の様は
まさに醜い雄豚そのもの。人間としての尊厳
などかなぐり捨てた妖魔そのものだ。
その後も数分間も夢中でユキの母乳を吸い続け
やっと満足した昭三はユキの乳首から口を
離す。
昭三「ふぅ、いやはやわしとしたことが年甲斐
もなく少々ハッスルし過ぎてしまいましたな。
この昭三、ユキお嬢様のミルク、存分に堪能
させていただきましたぞ。
感想を述べさせていただきますと、一言。
完璧、それ以外に申し上げさせていただく言葉が
見つかりませぬな!
わしに寄生した妖魔の記憶にも、ユキお嬢様
のミルクほど素晴らしい母乳を飲んだことは
ないようですな。
妖魔の調教の一つである、母乳精製調教で
母乳を分泌できるようになった女性の
ミルクでも、これほど美味なミルクは
精製出来ませぬ。
北海道で有名な牧場の乳牛の作るミルクは
毎年170億円は売り上げているそう
ですが、お嬢様のお乳から出るミルクを
商品として売り出せば、その倍は売れそう
ですな!
全く、お嬢様は乳牛以上の家畜牝牛その
ものですな!ヒヒヒヒッ!」
ユキ「う、ううううううぅぅぅぅ!!!
よ、よくも……よくもぉ……!!
許しません……!綾風本家の次期当主
である私にこのような狼藉を働いた罪…
絶対償ってもらいますから…!
覚悟しなさい!!」
涙で頬をびっしょりと濡らし、敵意は
明確な憎悪へと昇華させ、ユキは昭三を
睨みつけた。
一族の大切な歴史そのものである霊核を
収める器としての自らの身体を牝牛
呼ばわりされる事にユキは悔しさと屈辱で
心の奥底から沸々と怒りが湧き上がって
いる。
そんなユキの憎悪という先ほどよりも一層
強い負の感情を受け…
昭三は、それに対して嘲笑するでもなく、
涼しく受け流すでもなく
どういうわけか神妙な面持ちを取った。
そして、遠い景色を見て、物思いに耽け
昔を懐かしむような、そんな口調でしゃべり
始めた。
昭三「……ユキお嬢様や。あなたは綾風
という日本有数の名家に産まれ、さぞや
甘やかされて育ってきたのでしょうなぁ。
そうでなければ、先ほどユキお嬢様が
放ったような言葉なんて出ますまい」
昭三の黄昏れの独り言のような言葉に
ユキは戸惑う。先ほどの…いつも見せて
いる下卑の、醜悪な欲情の顔とは違う、
綾風の使用人の頃からも見せた事のない
顔であったからだ。
ユキ「何を…!?あなたはどこまで綾風を
侮辱するおつもりなんですか!!
私が甘やかされて育って来たですって!?
あなたも仮にも綾風の使用人だったのならば
私がどのような思いで退魔の修行に励んで
来ていたのか見ていなかったのですか!?
私は家の、退魔士としての、いいえ、
お父様の誇りである【弱き者を救う】、
そのために私は苦しい修行にも耐えて
頑張ってきたんです!!
綾風の当主とはまさに【弱きを救ける】
という信念の象徴で、綾風の次期当主は
私にとっての誇りそのものなんです!!」
昭三の言葉の意味の訳が分からなかった
ユキは昭三の意図を理解出来ないままに
激情をぶつける。
ユキは昭三が自らが誇りにしている綾風を
侮辱しているのだと思ったからだ。
昭三「……【弱きをたすける】、か…。
フフ… ユキお嬢様、あなたは弱き者を
【救う】、と申しましたな?
という事は【たすける】は命を救ける、
という意味で発したのですかな?
ヒヒ… ユキお嬢様、あなたは苦しい修行を
耐え抜いてきた、私にそれを見ていなかった
のか、とお話になりましたが、ならば私の
方からも申させていただきたい。
お嬢様は食べ物に困って飢え死にそうに
なった事があるのですかな?
愛する者が目の前で痩せ衰えて衰弱していく
様を見続けていく地獄を味わった
事があるのですかな?
本音を申させていただきますと、
恵まれた家と才覚に産まれ、何不自由なく…
とまでは申しませんが、それでも普通の
家庭よりよほど幸福に育ってきた世間知らずの
小娘がただの十数年しか生きてきていない
経験如きでわしに説法など説く筋合いなど
ない。
お嬢様こそ、身の程を弁えなさる事じゃな」
昭三の言葉には確かなる憎しみがこもって
いた。
しかし、年端がまだいかない少女には
言葉と憎しみをその通りに、端的に
捉える。そう、表面だけで、強い怒りの
激情を爆発させるのだ。
ユキ「それはどんな……どんな戯言なん
ですか!? そうなったのは全てあなたの
せいでしょう!!!
あなたが……私をずっと穢らわしい瞳で
見てきたからでしょう!!
果ては私の家の技術まで盗んで…!
悪用までして…!!
飢え死にそうになったのも……!
あなたのご家族が路頭に迷うことに
なったのも……!!
全てあなたの自業自得でしょうが!!!」
ユキも同じように憎しみを込めて
昭三に叫んだ。
ユキの立場からすれば当然と言えるだろう。
この男、黒岩昭三は幼いユキに欲情の
瞳を向け、果てはセクハラ的な言動も
行った事があった。家の大切な技術
だって盗んで悪用した。
その結果の追放で我が身に振りかかった
不幸を憎しむなど完全なる逆恨みでしか
ない。
……そう、ユキがそう感じるのは仕方が
ない。年端もいかない少女なのだから。
所詮は15歳ばかりの少女に過ぎないの
だから。
昭三「……クク。そうでしょうなぁ。
確かに、『自業自得』と言われても
仕方ないでしょうな……。
あぁ……ユキお嬢様や。あなたは
確かにお強い。
だからこそ、わしの…いや、『わしたち』
のような弱い者の事なんて分かりは
しませんよ。
こんな下卑に見えてもわしはユキお嬢様
には期待しておったのじゃ……
しかし、所詮ユキお嬢様もあなたのお家
の者たちと何ら変わらなかった。
……わしは別に、【救けて】欲しかった
わけじゃないのですじゃ。
ただ、ほんの少しだけでも【助けて】
欲しかっただけなんじゃよ…
そう…『あの頃』に、微々でも【助けて】
くださっていたら、あんな事にはーー」
昭三の【言葉】は確かに逆恨みと呼べる
かもしれない。
だが、その『
大半の者には分かるかもしれない。
もしかすると同情出来るかもしれない。
故にこの昭三は人情的に思えば【正しい】
と言えるだろう。
例え、正しいと言わずとしても【その言葉も
仕方ない】と十分に言っていいはずだ。
ユキ「えぇ…!私は……あなたたちのような
下種たちに… 妖魔などに与した心の弱い
外道たちに屈したりはいたしません!!」
だが、清純だからこそ、何も知らないから
こそ、……いいや、幼く、力も才覚もあり、
生まれも恵まれたこの綾風ユキという愚かな
少女には決して理解出来ないだろう。
そうだ。決して『事情』を知らないから、
なんかではない。
例え『事情』を知っていたとしてもこの愚かしい
綾風ユキは否定的な言葉を吐いていただろう。
『間接的とはいえ当事者』には違いないの
だから。
【
する事など出来ない。
昭三「……ヒヒ……… そんなですから、
わしはお嬢様の言う【
を信じる事が出来ないんですよ……」
昭三は先ほどの憎しみとは打って変わって、
寂しそうにボソリと呟くとーー
昭三「ならばお嬢様!お望み通りわしら弱者
の悪意を存分にその身に刻みつけてやり
ましょうぞ!!」
一瞬の寂しさは消え失せ、憎悪を再燃
させながら締めの責めを施すべく、
ある道具を取り出した。
それを見て、身体をビクつかせながらも
ユキは訝しげにその道具を見た。
ユキ「……?何ですか?それ…」
昭三「ヒヒ、お嬢様、これは【
申します。お嬢様をよりふさわしい牝牛
奴隷に……いや、乳オナホに変えるための
ものじゃよ」
ユキ「ま、にゅう…しん…?」
全く聞き慣れない言葉を聞き、ユキは
頭の中は疑問符でいっぱいだ。
形状を見ると、どうやら鍼のようでは
あるが、しかし鍼というにも異様に長い。
それこそ5寸ほどもあるのだ。
ユキが警戒を露わにしてその魔乳鍼を
見つめていたら昭三はまたもや聞き
慣れないワードを言い放つ。
昭三「ところで、お嬢様はニプル
ファックというものをご存知ですかな?」
ユキ「にぷる…ふぁっく…???
何なんですか?それ……」
当然ユキはそんなもの知るはずがない。
そもそもユキは清純な少女で性の知識にも
疎い。
胸を使った性行為の最もポピュラーな
パイズリだって知らない。
そんな彼女に昭三はニプルファックという
乳房を使う性行為では全くのマイナーかつ、
おぞましい内容を告げた
昭三「ヒヒヒ!勿論ユキお嬢様が知るはずが
ありませんですなぁ!
よろしい、ではこの昭三めが無知なユキお嬢様
にご教授しましょう!
ニプルファックとは、乳首の孔からチ○ポを
挿れ、乳の中を犯す性行為ですぞ!
そう、お嬢様の母乳を射したそのおっぱいの
孔を犯すということじゃよ!」
ユキ「っ!?!?!?!?」
昭三の告げた内容に、ユキは我が耳を
疑った。本当に聞き間違ったのかと
ユキは盛大に困惑する。
常人ならば当然の反応で、乳首に
男性の陰茎を入れるなど出来るわけが
ないと思ったからだ。
しかし、その望みのような空耳の
可能性はすぐに昭三の口から否定される。
昭三「まさに夢にまで見たプレイですぞ、
ユキお嬢様!
わしはそれはもう自分でも引いてしまう
ような乳好きでのう!
お嬢様のその芸術のような豊満なお乳を
是非わしのチ○ポで犯したいと思って
おりました……
ついに…ついに……!その夢が叶う時が
来たのじゃ!!」
ユキ「な、何バカな事を言ってるん
ですか!? 本当に妖魔に侵され頭を
狂わせたのですか!?
そんなもの!!お乳の穴に入るわけが
ないでしょ!?」
自分の耳から聞いた言葉が、本当に
空耳などではなかった事を昭三の
口から確認できたユキはあからさまに
慌てる様子を見て、口を大きく開けて
昭三を非難する。
しかし、昭三はニチャリと顔を歪め
ながら、手に持っている2本の魔乳鍼を
ユキに見せるように自らの胸前で掲げた。
昭三「ヒッヒッヒッ!だからこそ、この
魔乳鍼を使うのですよ。
この魔乳鍼の本来の目的は、調教対象の
女子の乳房の乳腺に妖気を流し込み、母乳を
出させるようにするもの…
なのじゃが、ユキお嬢様には必要ない
ですな。むしろ、それほどまでの天然美味な
奇跡のミルクを逆に穢しかねませんからのぅ。
じゃから、この魔乳鍼は特別性……
そう!お嬢様のミルクを糧にお胸を更に巨
きく!そして、乳管を拡げるのじゃ!
そう、お乳をわしのチ○ポで存分に犯せる
ようにのぅ!!」
昭三は高らかに宣言して、魔乳鍼を
乳首にあてがった
ユキ「ひ!ひぃ!?な、なにをするつもー」
ユキが恐怖に怯え、悲鳴を上げ切るより
前にーー
ズブズブズブ!!
ユキ「あきゃあああああああんん!!!」
魔乳鍼がユキの乳首から乳管の奥深くへと
一気に侵入した。
ユキ「おっ!!おぉぉ!?あぁぁぁ…!
あ!あ!……」
ブシュアアアアア!!!
ユキ「イクイクイク!イグゥぅぅぅ!!!
んああぁぁぁぁぁ!!!!」
瞬間、ユキは魔乳鍼と乳管の僅かな隙間から
ジェットのような圧縮母乳を噴き上げ、
人生二度目の盛大なエクスタシーを
味わった。
ユキ「あ……あぅ……はへ……!」
昭三「おやおや……あれほどまでに長い
鍼を完全に根元まで飲み込んだ事にも
驚きですのに、お嬢様、まさかお感じに
なられているのですかな?
ヒッヒッヒ…… あんな長い鍼を一気に
突き刺したのじゃから、普通は痛みを
感じるはずなんじゃが……
お嬢様はもしかして、マゾの才覚もあるの
ですかのぅ? ヒッヒッヒ!」
ユキ「お…お……!」
昭三の嘲笑にユキは反応する素ぶりすら
見せない。瞳は白目を剥き、舌はだらーっと
垂らし、更にその先端から涎も垂れている。
あまりにも強烈すぎた絶頂の快感にユキの
思考は軒並み奪われ、未だにエクスタシーの
余波から戻ってくることも叶わないのだ。
昭三「…ふむ、気持ち良すぎたあまりわしの
嘲りに言葉を返す余力すら無くなってしまった
ようですな。
まぁいい。その魔力鍼はこれからお嬢様の
ミルクを吸い取りながらゆっくりと肥大し、
なおかつ安全に乳管を拡げていくことじゃろう。
その過程で乳房も更に巨きくなり、乳腺の
活性も促し、更に大量に母乳も分泌される
じゃろうな。わし好みの乳にな!
1日もすれば、バストは100cmを超え、
母乳も今の倍は分泌し、わしのチ○ポが
乳首から入るぐらいに乳管も肥大されて
いるはず。それまで今しばらくのお別れ
です。
次会う時のその爆乳の成長ぶりを楽しみに
しておりますよ」
チリチリチリ…!
昭三の言葉通り魔乳鍼はゆっくり回転を
しながら、ほんの少しずつ肥大していこう
としていた。
昭三?「それにしても…」
その時、昭三の声のトーンが少し低くなり、
その姿形が寄生した妖魔の姿へと変わって
いく。
蜘蛛妖魔「本当ならこのままこやつのマ○コ
を味わいたいところなのじゃが、それは
バルムス様に断固として禁止されておる
しのぅ……
確かにワシもあのミドリカワってクソガキは
腹立たしくて仕方ないのじゃが、だからと
言ってこれだけの上物を手を出すなと言う
のは……」
昭三の意識が薄まり、蜘蛛妖魔の意識が顕在
してきた。
蜘蛛妖魔「ぐぬぅ… せめて見るだけなら……」
蜘蛛妖魔は薄汚い欲情のまま絶頂の余韻から
抜け出せぬままのユキの秘部を見るべく袴を
破こうと手を伸ばす。
しかし、その望みは怒りの思念により叶う
事はなかった。
バルムス「何をしてやがる?蜘蛛!!」
蜘蛛「ひっ!バ、バルムス様!!」
自らの主人であるバルムスの不機嫌極まり
思念により、蜘蛛妖魔は思わず体を震わせ
オドオドとした様子を見せる。
バルムス「その巫女女は特別丁重に扱えと
言ったはずだ? 肉体改造は良しにしても
そいつの一番大切なマ○コには一切の手を
出すなと!!」
蜘蛛「バ、バルムス様!滅相もござらぬ!
ワシはただ、こやつのマ○コがどんな具合が
ちょっと見てみようと……」
バルムス「バカヤロウがぁ!!お前は言葉の
意味すらも分からんのか!?
一切って言うのは!触る事はおろか!
見る事も!嗅いだり舐めたり!服を破るの
さえ禁止という事だ!!」
蜘蛛「そ、そんな!?別に見る事ぐらい
いいでは…」
バルムス「何だ?死にたいのか?貴様は?」
蜘蛛「ひぃっ!な、何でもありません!!
肉調教は終わりましたのでただいますぐに
そちらにお戻りします!!」
バルムス「あぁ。お前?分かっている
だろうな?お前を行かせたのはお前の宿主の
【黒岩昭三】の意識がそいつに歪んだ欲情と
憎悪を持っていたからこそだ。
見ての通りお前ではそいつの爆乳に陰茎を
挿れられるようにする事など、思いつきも
しなかっただろう?
全くそいつに手を出さずに綺麗なままで
置いておくのもあの緑川影明にイマイチ
苦しみを与えられんだろうからな。
もう一度だけ念を押しておいてやる…
もしその巫女女に手を出そうとした場合、
次は命は無いものと思え!いいな!?」
ブツン
バルムスのそう吐き捨て、思念を切った。
蜘蛛妖魔はバルムスのあまりの憎 怨嗟の
前に、ただ恐怖して服従する事しか
出来ないーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〜学園 1年A組〜
影明「え?今日HRなし?つーか、先生まだ
来てねーの?」
花岡蓮「マジですか!?やりましたなぁ!
同志、カゲカゲよ!これで今日も
澪ちゃん☆ここが大好きだよ☆トークが
出来ますぞ!!」
影明「あー…俺その手の話題は勘弁してほしい
んだよなぁ。やるなら【マジカルシャイン魔女
リリィなのは】の話しようず!
……って?“も"って何だ?"も"って」
男子校生B「あー、そういや影明は休んでた
から先生昨日も来てなかったの知らねーん
だったな」
影明「……え?それマジ?」
女子校生A「マジマジ!おかげで昨日は
先生の受け持つ科目は自習だったんだよー!
ま!想像通り皆自習なんかしてなくてずっと
しゃべってたり、携帯触ってたりしてた
けどね!」
影明(なるほど… 先生も退魔士でしかも
退魔士たちの指導者だから一昨日の事で
何か色々やってんだろうな…… でも)
影明「次の科目ちょうど先生の担当じゃん!
ラッキー!!じゃあ皆で談笑ターイムと
いきますか!!」
三木島叶「さんせー!さっすがカゲっち!
分かってるぅー!」
花岡蓮「同志カゲカゲよ!吾輩との談笑を
忘れてもらっては困りますぞ!!
我らはオタク同盟会!共に今週の【ピギィ!
感じちゃう☆悦楽戦隊アクメンジャー☆】の
感想を語り合いましょうぞ!!」
瞬「おい!うるさいぞ影明!自習なんだから
きっちり真面目に勉強しろよ!
ただでさえお前は成績低いのに!」
優「全く……」
瞬「はぁ、優、やっぱお前だけがクラスで
一番まともd」
優「皆は用意が悪いね。自習になった時の
ためにちゃんとトランプは用意しとかなく
ちゃ」ピラッ
石山「おっほ!さっすが優くん!優等生ぃ!」
影明「相変わらずちゃっかりしてんなぁ!
おい!!」
金谷希「紅藤くんって最初は絵に描いたような
真面目な優等生のイメージあったけど、案外
ノリ良いし、悪いよね笑」
優「さーさー、せっかくやるんだし賭けしよ、
賭け。その方が盛り上がるでしょ」
黒湯真司「おもしれえじゃねえか!よぅし…」
瞬「…………」
藤堂明隆「神崎、ほっとけあんなバカども
なんて。俺たちは俺たちでしっかり勉強に
励めばいいんだよ」
瞬「……そうだな。藤堂…」
藤堂明隆「じゃあ、まずは前の予習から始めるか」
一ノ瀬真希「お?ずるいぞー?私も混ぜてよね」
水無月楓「あ!神崎くん!私も!」
瞬「あ、水無月さん。やっぱりまともだな。
水無月さんは。…あそこの不良児たちと違って」
水無月「え、えへへ……//」
藤堂明隆「一ノ瀬はどういう風の吹き回しだよ。
お前はどっちかっていうと向こうの猿どもの
仲間だろうが」
一ノ瀬真希「うわひっど!藤堂くん仮にも
クラスの仲間を猿呼ばわりするのはどうなの
かなー?」
藤堂明隆「うっせ。学生の本分を忘れて騒ぐ事
しか出来ん連中なんて類人猿と変わらん」
一ノ瀬真希「うわ…辛辣ぅー……」
瞬(あれ?そういえば綾風さんも来てないな……
昨日の事で退魔関連の用事でも出来たのかな?)
--------------------
〜セイラサイド〜
セイラ「はぁ…!はぁ…!」
木原「ケケケケ!おら?どうした金髪シスター
さんよ?」
ユキが肉調教を受けている間、セイラも調教
を受けていた。
木原「ケケケケケ!そんなにケツ穴いじめ
られるのが気持ち良かったか?
キキッ!金髪ぅ?お前アナルS○Xの才能
あるんじゃないか?」
セイラが受けていた調教は【アナル責め】。
ユキと同じように霊力を封じられる首輪を
つけられ、抵抗の力を削がれたセイラは
今まで木原から良いようにケツ穴を責め
られていたのだ。
それを表すように、セイラの周りには
バイブや、アナルビーズなどの責め具が
肉床に散らばっている。
木原「ケッケッケ!夢だったんだよなぁ。
てめえみたいなお高くとまった生意気な
金髪女をバックでヒィヒィ言わせながら
盛大にぶち犯してやるのをな!
本当ならてめえのマ○コを開発して
やりたかったが、それは坊ちゃんに禁止
されていて手を出せねえ。
だから代わりにてめえのケツ穴をマ○コ並
に感じるように開発してやってるんだ。
ありがたく思えよ?」
セイラ「はぁ…!はぁ…!ゲスの責苦など
いくら受けようが苦痛にもなりませんわ…!
私は祖国、イギリスの誇り高き退魔シスター
であり、リゼラベルツン様の取り仕切る
聖マリア学園の誉高き聖徒会ですわ!
お前如き低俗妖魔に…!妖魔に魂を売った
汚らわしい盗撮魔などに私をどうにか
出来ると思ったら大間違いですわよ!」
木原の嘲りに毅然としてセイラは言葉を
返した。
そんなセイラの態度に木原は先ほどから
沸々と怒りが沸き起こってきていた。
子供の癇癪にも近いだろう。
何故なら自分がいくら凄惨に思える
責めをセイラに与えても、この少女の
心は強く、生意気な態度は依然変わらない。
初めは余裕だった木原も思い通りに
セイラがへこたれない様を見て、徐々に
余裕な態度は崩れていった。
だが、怒り、というのは自らの思惑の
不如意からではない。
それもあるが、木原はセイラの【態度】に
腹を立てているのだ。
それも【変わらない】どころか、【悪化】
しているのだから怒りは留まるところを
知らない。
木原「こ…このクソアマがぁ!囚われの
身のくせして粋がってんじゃねえ!!」
木原はイライラを実に言葉に表した。
その率直な物言いには、木原の程度の低さを
如実に表している。
セイラはその言葉と態度を受け、毅然と
心底【見下した】態度を隠そうともせずに
言葉に表す。
セイラ「囚われ…えぇ、確かにそうですわね。
“私を囚えていない"と、あなたはろくすっぽ
強がれない小心者の小物ですものね。
下級も下級、妖魔の中でも最底辺の三流以下
の雑魚妖魔などに魂を売り渡している時点で
あなたの程度も伺い知れるというもの。
きっとあなたのような隠れてコソコソと盗撮を
する浅ましいクズにはそんな最底辺の妖魔
にしか見向きもされなかったのでしょうね。
つくづくあなたたち2人はクズ同士お似合い
のコンビですわよ」
木原「ぐっ…!ぐぐ……!」
セイラ「そうでないと証明したければ、
この肉錠の拘束を解いてみなさいな。
まぁ、首輪をして力を出せない私に
すらこうして拘束する臆病者の小物に
そんな事は出来ないでしょうがね」
これはセイラの作戦で、あえて木原を煽る
事で、怒りで冷静さを失わせ、
自らの拘束を解かせることを狙っている
のだ。
しかし、作戦と綴ったが本音が入って
いないわけではない。
むしろセイラの挑発の言葉のほぼ全てが
本音そのものだ。
実際、木原に調教されればされるほど、
セイラは無意識に木原への侮蔑の感情を
高めていった。
3人の中でセイラが一番誇り高い性格だ。
なればこそ、このような力を封じる首輪
を用いて、その上拘束して身動きが出来
ない状態で一方的に攻められるのは
彼女の信条に照らし合わせば"卑劣"と
大いに侮蔑するべき事柄だろう。
ーー木原の怒りはまさに『そこ』なのだーー
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ー先輩!ここどうしたらいいんですかぁ?ー
ー先輩!今日飲みに行きましょうよ!ー
ーこんなに親身になって、教えてくれるの
上司の中じゃ先輩だけなんですよ!ー
ー私…優しい先輩の事が……ー
ーあぁ、あの無能で気持ち悪い………ー
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
木原「だまれ…!だまれっ、だまれっ!
だまれええええええ!!!」
セイラの思惑通り、木原は血管を
浮き上がらせるほどまでに激昂した。
まるで『トラウマ』を刺激されたかの
ように
木原「このアバズレがぁ!お高くとまり
やがって!! クズクズクズクズうるせえ
んだよ!! てめえ『ら』みたいなアバズレ
に…そんな事言われる筋合いはねえんだよ!」
セイラ「あら?図星?その反応は。
痛いところを突かれて品格も保てないの
かしら?
そんな見た目も性根も器も、何もかも貧相な
あなたに私を侮蔑するのは御門違いですわよ。
私は神にこの身を捧げ、御心に従って常に
己を律して生きてきましたのよ。
あなたなんかと私を較べることすらおこが
ましいと知りなさい!」
セイラは凄惨な調教を受けた後だというのに
気丈さで鋭い眼光を木原に向けた。
木原「くっ…!?」
木原は、その気高き瞳に怯む。
セイラはいかにも気品の高い立ち振る舞いと
容姿、そして性格の鋭さから睨めば常人はおろか
マフィアでさえガタガタとすくんでしまう。
絶対的優位者に立っている木原がおののく
のは、それほどまでにセイラの気高さが
すごいとほめるべきか、それとも
それほどまでに木原の小物ぶりがひどいと
揶揄するべきか。
だが、一つ確かなのは囚われのセイラと
責める木原とで、見た目でも優劣の立場は
明白なようであるが、その実、優劣関係は
全くの逆になってしまっているという事
だろう。
ーーしかし、セイラもまたユキと同様に、
いや、それ以上に誰にも知られたくはない
秘密があり、それこそが完璧に思えるセイラの
唯一の弱点。『妖魔』の血が流れている事実。
それを、木原に寄生した妖魔は見破っていたーー
蝙蝠妖魔「くくくくく…!言いたい放題散々
言いやがって…!
だがなぁ?俺はお前の秘密を知ってるん
だぜえ?」
セイラ「…なに?」
蝙蝠妖魔「俺は獲物の血を吸えば、そいつの
情報をある程度伺い知れる能力があってなぁ。
さっきお前をズタボロにしてやった時に
ついでにお前の血を傷口から舐めとったんだが
その時に感じたんだよ。
お前の中に巡る『邪気』をなぁ!」
セイラ「っ!!」ギリ…!
蝙蝠妖魔の暴露にセイラは侮蔑に満ちた顔を
憎しみによって歪め、明らかに敵意に満ちる
憎悪を見せた。
まるで自分の親を殺されたかの如く憎々しく
蝙蝠妖魔を見つめる様から、よほど自らの
『妖魔』の血を憎んでいるのだろう。
セイラ「……だったら、何ですの?」
セイラは不機嫌さを隠そうともせず目の前の
妖魔に強気に言葉を返した。
その態度がかえって蝙蝠妖魔の調子を昂じ
させる事となる。
蝙蝠妖魔「ケーッケッケッケッ!図星かぁ?
痛いところを突かれてますますご立腹ってか!
ケケケケ!じゃあお前が忌み嫌っているその
【妖魔】の血を呼び覚ましてやるよ!」
セイラの強まる憎悪を受け、自らの推察を
確信した蝙蝠妖魔は口をガバリと開け、
鋭い牙をセイラの目の前に露わにさせた。
セイラ「…ふんっ!言いましたわよね?
私にどのような責苦を行っても、私の
心は決して折ることなど出来ないと!」
おぞましい牙の歯並びをまざまざと
見せつけられてもセイラは怯むことなく
啖呵を返した。その様は実に見事と褒める
べきところであるが、今回は先ほどまでの
責苦とは勝手が違うものだ。
それを表すように蝙蝠妖魔はその啖呵を
聞いてむしろ嬉しそうに口元を釣り上げる。
蝙蝠妖魔「 ケッケッケ!そう強がっていら
れるのは今回こそ今のうちだけだぜ!
さあ…その呪われた血を解放してみせろ!」
セイラ「な、なに…?」
ガブリ!
セイラ「づっ!?ぅああああぁぁぁん!!」
蝙蝠妖魔は牙をセイラの肩に突き立てる。
セイラは肩に感じる大型ナイフを深々と
刺されたような激痛に思わず悲鳴をあげて
しまう。しかし、この下等妖魔の繰り出す
牙の本当に恐ろしいところはここからである。
セイラ「くぅっ!うぅん!?な、何!?
何かが流れ込んできて…!?ま、まさか!?」
激痛の中に何かが流れ込んでくる妖しさに
セイラは身に覚えがあるかのように肩を
すくめた。
そうして、一連の【目的物】を流し込んだ
蝙蝠妖魔は突き刺した牙をゆっくりとセイラの
肩から離した。
セイラ「貴様…!何を…何を流し込み
ましたの!?」
セイラは肩から流し込まれた【異物】の
正体を蝙蝠妖魔に問う。だが、セイラの
様子は先ほどまでと比べ明らかに慌て
ふためいており、セイラ自身はその異物の
正体に気づいていた。だが、セイラは自らの
秘密からその異物の正体を認めたくない。
だからこそ【問い】という現実逃避へと
走ったのだ。
そんなセイラの心情を見透かすように、
蝙蝠妖魔はゲタゲタとした実に耳障りな
笑い声をあげて、セイラにとって認めたく
ない絶望の言葉を告げる。
蝙蝠妖魔「ケッケッケ!俺の牙は特別でなぁ?
牙には高濃度の淫魔ウィルスが宿っている。
そいつをお前の肩から流し込んでやったのさ!」
セイラ「っ!!!!!」ギリギリギリィ!
セイラは想像していた最悪の物を流し込まれた
事を知り、鋭い目先を更に尖らせ、歯から血が
滲み出すほどに軋ませ、それを流し込んだ
目の前の妖魔に対する怨嗟を全身にたぎらせる。
【淫魔ウィルス】……それは妖魔が体内に宿す
細菌に近い超小型の妖魔である。
そのウィルスには男性と女性の双方とも感染し、
男性が患った場合は陰茎が常に勃起状態となり、
耐性が低い者は肥大化、異形化してしまう。
更に精巣と前立腺が異常促進され、
絶倫の精力を得る結果になるが、その代わり
として精力を発散する事が出来なければ
異常分泌される精力に身体が耐えられなくなり、
命を落とす結果となる。
一方で女性の方は性欲が異常促進され、色情狂の
ようになり、性行の事しか考えられない状態に
なるのだ。
セイラはこの淫魔ウィルスの被害者を見た事が
あるが、その様子は聞いていた通りまさに性行の
事しか考えられないS○X中毒のようであったのだ。
しかし、その事は重大な問題であるのに間違い
ないはずだが、セイラはそのことさえ些末で
あるかのように【ウィルスがもたらす自ら自身
の力に影響する】ことが問題であった。
セイラ「き、貴様…よく……も……う!うぐぅ!
がっ!がはっ!!あ、あぁ……だめっ!
力が……力がぁっ!あああああぁぁぁぁぁ!!!」
バサァッ!
淫魔ウィルスの影響は瞬く間にセイラの秘め
られて力に影響を与え、背中から毒々しい
紅色の翼が出現した。×××××××××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××
×-………!-××××××××××××××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××
その翼からはただの×妖気ではない×禍々しい
邪気が滲み出ている。
翼の気から分かるように、セイラの秘めた力
は×××普通の××妖魔×××ではない××××強大
×××な××
××××××××××××××××××××××××××××××
××××「ケッケッケ!ついに現しやがったな!
本性を!!その見事なまでの毒々しい紅色
……。なるほどなぁ、俺の見立て通り相当
高位な妖魔のようだな…。
ズタボロの雑巾のような状態だったくせに
俺が調教を始めようとした時には全快して
いたもんなぁ?
キッキッキ…!傑作だなぁ?それはさぞ
敬虔なシスター様が実は魔の血を引く
正真正銘の人外だったなんてなぁ!
お前たちが守る国民の奴らどもがこの事を
知ったらさぞ怖れ、忌み嫌うだろうなぁ!
まぁ、そんなお前は今からこの俺様によって
エロいエロいサッキュバスに成り果てるん
だけどなぁ!
キャーッキャッキャッキャッ!」××××××
××××××××××××××××××××××××××××××
×××「うっくぅ!よくも……私にこの身に流れる
おぞましい魔の力を引き出してくれましたわね…!
許し
××××××××××××××××××××××××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××
××××××××××××
「え?」××××××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××
××ーーその者は突如現れたーー××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××
××××「!?な、なんだおm×××××××××××
×ペチャ×ペチャ×ペチャン××××××××××××
××とても軽快な音が響いた×××××××××××
××ひどくケイカイなおとだ×××××××××××
××だって者の足下にまるいけど歪なにくの塊
が転がっているんだから××××××××××××××
まるいまるいとてもまるいこれだけギュッと
つめたまるい肉塊なんだから、セイラが聞いた
音が3つなわけない×××××××××××××××××
何十、なんびゃく、ナンゼンとなぐったに
ちがいない×××だけどその者があまりに早く
かんかくみじかくなぐったから音が重なって
3つしかキコエなかッタんだ×××××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××
×××「あ…あぁ…」×××××××××××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××
××ツヨキな女の子は薄く悲鳴をあげる××××
××事しかデキナイ××××××××××××××××××
××フツウナラ「何者」トシコウヲメグラセル
グライノコトハコノショウジョナラシテイル
ハズダガソレモナイ×××××××××××××××××
××××××××××××××××××××××××××××××
強気で敬虔で誇り高いセイラ・神無月の心の
内は×目の前の者に対する絶対的な恐怖のみ
でしか構成されていないのだ×××××××××××
×××××××××××××××××××××××××××××××××××××
-やはり、しょせん『『役立たず』の『出来損
ない』』か。
目の前の『コレ』の事すら碌に把握出来ないとは-
-しかし、想定外ではあったぞ。こんな
話は聞いてなかったのだがな-
その者はまるでセイラに聞かせるかのように
独り、しゃべる。
いや、本当に喋っているのか分からない。
その者の言葉は酷くノイズが走り、人語を
喋っているとは思えない、化け物のような
怨霊のような響きだ。
少なくとも耳はそれを言葉と認識する事は
出来ない。
なのに、意味のわからない音のようで
あるのに、何故かその者の言葉は
はっきりと意味が分かった。
矛盾しているようだが、分かるのだ。
耳はその意味を解していないが【頭】は
しっかりと意味を解している。
まるで頭が直接その者の言葉を聞き取って
いるかのようだ。
セイラは…………
セイラ(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い)
疑問などない。あるはずがない。
【そんな事を考える余裕などがあるわけが
ない】
ーー心は恐怖で支配されているーー
ーーセイラ・神無月を構成する全てが
恐怖で塗りつぶされているーー
今の彼女はただの恐怖という感情だ。
思考も、息も、誇りも、瞬きも、
身体機能、いや、【生きるという事に
必要な要素】すらも碌に作動出来ない。
何もかもを全て【目の前の存在に対して
絶望恐怖する】、と働かせるのだ
その者は目線をセイラの目に合わせ、
鼻が付くのではないかと思うほどに
顔を近づけ、目をじいっと見つめる。
まるでセイラの底の底まで見透すか
のように。
だというのに、セイラの方からは
どういうわけか深くフードを被った
その者の顔は全く見えない。
セイラが認識出来るのは今まさに自らの
全てを凍てつかせる絶対零度のような
碧い瞳だけだった。
セイラの脳内は恐怖しかない。
そう、【こんなに接近されているのに
恐怖の感情しかないのだ】
逃げようとする思考なんてものは無い。
それは、身体が拘束されているからでは
決してない。
これほどの恐怖の象徴がいるのだから、
生物としてならばその恐怖に基づいた
逃亡の危険アラームを脳内中に響き
渡らせるはずだ。
しかし、セイラの脳内は静かだ。
警報音どころか他の
存在しない、変わらない
しかし、それは何故と、問うほどの不思議な
事では無い。
自然界にだってその事象はあるのだから。
例えばナマケモノは外敵に襲われ、食べられて
いる最中でさえ一切の反撃をしない。
それは反撃する筋力すらないからだ。
それと同じだ。
【目の前の存在には反撃、いや、ありとあらゆる
行動や事象をしたところで全くどうにもならないと
セイラの本能が無駄と断定づけているのだ】
【セイラは感情ではない、本能レベルで目の前の
存在に対する抵抗を諦めているのだ】
永遠とも思える短い時間をされるがままに
その者に瞳を凝視された中、その者はやっと
言葉を続けた。
-なるほど。やはり『どこかに潜んでいるな』。
所詮『出来損ない』と期待していなかったが
中々どうして益ある情報を収穫させてくれた
ものだ-
その者は現出したセイラの紅い翼をじぃっと
見つめて話す。
まるで『それこそ』が己が言葉の何よりの
『証明』だと言うように。
-その力は厄介だ。俺の計画の邪魔になり
かねない。それは封じさせてもらう-
その言霊に触れたら身体の芯まで凍り、
氷像になるのでは無いかと思うほど、
酷く冷徹な響きでその【男】は語り
かけてきた。
セイラ「あ…あぁぁあ、な、、、た、、
なに………ぃ」
途切れ途切れではあるが、セイラは何かを
発する事はできた。
そして、その言葉は疑問であろう。
そう、彼女は今疑問を発しようとしたのだ。
それを見たその【男】も反応する。
-…ほう?抑えてやっているとは言え
これだけの殺気の中で何か言葉を発する
だけの胆力があると言うのか。
普通ならばこれだけで死ぬ方が珍しくないと
言うのに。
貴様如きがこの俺にビビらず、【恐怖】以外の
感情…いいや、要素をぶつける事が出来る
とはな。
なるほど、自らを【誇り高い】などと
のたまうだけの事はあるようだ。
褒美に貴様が知りたい質問に答えてやろう。
……【それ】を貴様が知る必要などない。
俺が誰なのかなど、言ったところで貴様程度に
理解できるわけもない。
そもそも、自らの情報を漏らすなどという
愚行をこの俺は犯したりはせん。
故に俺の事は全て忘れてもらう。
そうだな…『因果のまどろみの中に』…
とでも言っておこうか-
××××××ブツン××××××
×××××××××××××××××××××××××××××××××××××
〜学園 1-B〜
文香「もう3時限目なんだけど…」
女子校生A「え?フミフミどしたん?ぶあいそ
なオコオコ顔して」
文香「…逆に何なの?その変な言い方。別に
どうということないよ。ただ、HRで先生来るまで
自習って言って、もう3時限目になるじゃんって
思っただけ」
女子校生A「えー?別にいいじゃん!
自習は長ければ長い方がうちらもこうして気ままに
雑談できる時間長くなるんだし!」
文香「……自習って自分で習学するという意味で
あって、休みって意味じゃないけど」
女子校生A「そんな事言うんだったらフミフミ
ノート広げたらいいじゃん」
文香「や」
女子校生A「ね〜?第一フミフミのその見た目じゃ
言葉に説得力ないよー?」
文香「……そーね。じゃあ不良っぽいこと
しようかな」ガタッ
女子校生A「ふえ?いきなり立ってどしたん!?」
文香「シュンくんとこ行くの。どーせ先生
来ないでしょ。だったら一緒にいたいシュンくんの
とこの方がいい」
女子校生D「おー!フミっちいいねー!うちも
カゲっちの所に行くぅー!」
男子校生A「お!ずるいぞ!俺も行くぜ!」
男子校生B「俺もー!さっき休み時間の時Aクラスの
様子見た時、トランプとかUNO持ってきてたしな!」
男子校生C「何だそりゃ!それで向こう騒がしい
のか!あいつら絶対授業中もトランプで遊んでる
だろ笑」
男子校生E「確かに笑ずっと騒がしいもんなぁ」
女子校生A「……やっぱフミフミ見た目通り不真面目
じゃん」ガタッ、スタスタ
女子校生B「……ほんといやですわね。外部生徒
たちは。学園生徒としての嗜みを持ち合わせて
いないのかしら」
女子校生C「仕方ありません。所詮庶民風情の
劣等民たちですから。それに外部生徒はこの学園の
カモフラージュに過ぎません。
我ら退魔士の…ね」
男子校生F「ですが、僕としては未だに納得行き
ません。カモフラージュなら退魔とは無関係の
一般富豪の生徒たちで充分。
あのような愚民たちを栄えある我が学園に
招き入れるなんて、学園長は一体何を考えて
いるんですかね?
あのような愚行を犯す愚か者たちと比べられる
のは我慢なりませんね」
男子校生G「きっと、【姫野ヒカル】さんの
ような類稀な退魔の才能の持ち主を欲したの
でしょう。しかし、姫野ヒカルさんのような
立派な退魔の心と才能を持ち合わせている
方などそうはいませんでしょう。
この度の外部生徒編入に関する学園長の采配
は失敗でしたね」
女子校生E「えぇ…。しかし、こういう時は
生徒会のお三方がたがいらしていれば、この
ような愚行を犯す外部生徒たちを取り締まって
くださるのですがね…」
女子校生F「仕方ありません。妖魔の司令塔
クラスの【バルムス】を生徒会の皆様方は
討ち取ったのですから、相応の報告や後処理が
ございますのでしょう。
しかし昨日は来られていましたね…?」
女子校生G「きっと、討ち取ったばかりで『本部』
の処理が間に合わなかったのでしょう。
全く、誰のおかげで庶民たちの平和が守られて
いるのか、愚民どもにはもっと肝に銘じさせる
べきですわね」
---------------------
〜ヒカルサイド〜
ヒカル「うぅあ……」
黒岩源氏「クックックッ さすがの聖徒会長様
もこたえているようだな?」
ヒカルもユキやセイラと同じように調教を
受けていた。
ヒカルへの調教も中々凄惨なものであり、
尿道にチューブのような触手を入れられ
膀胱に媚薬効果のある体液を膨れるほどに
吐き出され、その触手の体液を尿として
放尿し、それを何重と繰り返させられて
いた。
度重なる尿道への責めと放尿を繰り返した
事により、媚薬妖液はヒカルの尿道全体に
細胞一つ残らず染み込まされ、今のヒカル
は放尿するだけで絶頂してしまうほどに
調教されていた。
ヒカル「はぁ…はぁ……うぅ……」
ヒカル(私……おしっこでイッてしまう
ような身体になって…… あぁ!私は…
退魔士なのに……!こんな無様に感じたら
ダメなのにぃ…!)
ヒカル(よりによって……バルムスに
良いようにされるなんて……!)
ヒカルはキッとバルムスを睨んだ。
その目には確かなる憎悪が宿っている。
しかし、それだけではなかった。
聖徒会のリーダーとしての誇り、
何より退魔士としてこの国の国民達を
守ろうという意志がヒカル個人の
憎悪をも超えて煌々と漲っている。
これこそが、この愛情深さがヒカルの
本当の強さなのだ。
そうだ、例え身体が屈服しても、心は
決して折れる事はない。
ヒカルの心にある正義の輝きはバルムスの
調教を確かに跳ね除けていた。
その瞳にバルムスも反応する。
いや、正しくは【黒岩源氏】がだ。
源氏「……クックック!気に入らねえ…
気に入らねえなぁ…その目はよ……
皆を救う事こそ、自分のエネルギーです
ってな瞳はよ」
その源氏の言葉は酷く違和感があった。
言葉そのものは怒りを表している。
しかし、声音にはまるで炎は灯っていない。
むしろ真反対、静かな水の流れのように
穏やかであった。
だからこそ、逆に源氏の言葉は不気味で
あった。
ヒカル「……あなた、本当に黒岩くん…?」
そんな源氏を見て、ヒカルの先ほどまでの
気高さに満ちた色は剥がれ落ち、代わりに
困惑のような感情が瞳の中を色付けて
占領していく。
源氏はそもそもヒカルに薄汚い欲情を
寄せており、ヒカルは何度もこの源氏に
セクハラされそうになったのだ。
しかし、どういうわけか今、目の前に
立っている黒岩源氏は薄汚い性の欲情も
無ければ、悪意も感じられなかった。
調教を施している最中にさえだ。
調教の内容は凄惨なものだったとは言え、
調教自体はマニュアル通りに淡々とこなす
いわば流れ作業のように感じられたのだ。
その調教を施していた源氏もどこか
上の空であり、そもそもヒカルに興味が
無いようにさえ思えた。
源氏「クククク… さて、そろそろ本気で
躾けてやるぜ」
そんな惑うヒカルに覇気が無いまま源氏は
次の調教を行うべく、ヒカルに手を伸ばした。
ヒカル「クゥッ!な、何!?今度は何を
するつもり!?」
あからさまに今までの尿道責めとは違う
調教を行おうとしている事を察したヒカルは
警戒を限界以上に高める。
それは今までの妖魔との死戦からの経験上
とヒカルが元々持っている天性からの勘
がそうさせたのだろう。かつてないほどの
ヒカルの警戒に見合うほどのおぞましい
調教を黒岩源氏は行おうと、伸びる手は
ヒカルの【ある場所】を目掛けて一直線に
向かっていく。
ズブリ
ヒカル「!?!?!?!?」
何かが入るような軽快な音と共に、ヒカルは
得も知れない不気味な感触を味わう。
そして、感触のした場所を見下ろすと同時に
感触は感じた事のない感覚となって
ヒカルを視覚と触覚と共に責めたてに来た。
ヒカル「ひ!ひぎぃ!?そ、そんな、
んぎひいいいいいぃ!!!!」
絶叫をあげるヒカル。当然だ。
【源氏の手がヒカルの腹の中に侵入している】
のだから。
だが、絶叫の成分は当然とは言えない。
下腹部に手を入れられたのだから悲鳴を
あげるべきはずだが、その絶叫には
苦悶が少量しかない。故に、その絶叫を
悲鳴と呼ぶには不適当である。
絶叫の大部分は、快感だ。
ヒカルは、下腹部に手を入れられ、苦しむ
以上に悦び、官能に酔ってしまっているのだ。
ヒカル「うぅあ!?何これ…!?どう
なって…!?」
腹に手を入れられるというおぞましい所業に
ついてもだが、それ以上に拷問にも近い調教を
受けているというのに、苦痛以上に湧き起こる
快感の方がヒカルを大きく動揺させ、困惑の
波へと思考を攫っていく。
それに源氏がヒカルが驚嘆している2つの
疑問を明確に察知して、答える。
源氏「ククク、面白いほどに想像通りに
戸惑ってやがるな?
今、こうしてお前の腹の中に手を入れている
のは本物の手じゃねえ。言うなれば、俺の右肩
から下だけが幽体離脱しているようなものか。
しかし、まるで本物のように感じるだろ?
これも妖魔の妖術の一つで、俺様が女を
辱める時に好んで使う高等術式だ。
というのも、この術は拷問用で使う
のが本来の使い方だが、今、お前を襲っている
のは途方もない快感のはずだ。
さっきまでの尿道に流し込んだ妖液の媚薬効果
は身体全体に及ぶほどの効果があるからな。
何度も俺様の妖液を流し込んでよく浸透させて
やったから、今お前の身体の感度は30倍は
くだらんだろうな」
表情はニヤけている。だが、やはり相変わらず
楽しくとも愉快とも無縁な抑揚のない話し方
である。
ヒカル「さ、30倍!?そ、そんな……!?
な、なんてことを、を!?おぉほ!!??」
絶望的な事実を告げられ頭がガツンと
ハンマーで殴られたほどのショックを
ヒカルは受けつつ、怒りを再燃させて
源氏を睨みつけようとする。
しかし、コツンと何かが下腹部の中心に
当たったかと思う感触と共に、ヒカルは
先ほどのショックをも上回る衝撃を
受け、その衝撃は電流のように身体中に
快美が駆け巡る。
ヒカル「んあああぁぁ!!ひぎぃ!?
な、何コレ……!?なにこれええええ!?」
まるで下腹部を爆弾で爆発させられたかの
ような衝撃快感。ヒカルは感じた事が無い
過剰快感に困惑と悦楽の悲鳴をあげることしか
出来ない。
源氏「フフフ…… どうだ?子宮を直接手で
触れられた体験は? 普通なら想像を絶する
苦痛だろうが、それも媚薬の効果で快感に
変わっているはずだ。特に膣は一番感度が
引き上げられてる。いわば快楽の爆弾という
ところか……
ほぅら?こうしたらもっと気持ち良くて
たまらないだろうが」
源氏は手で触れていた子宮をわしづかみに
して、今度はギュッとギュッと、もみしだく
ようにして責めたてに来た。
ヒカル「うぎっ!?うぎょおおおおおお!!」
あまりの強烈な責めに、ヒカルは痛烈な絶叫を
あげた。その叫び声には女性としての悲鳴
とは到底思えない汚い叫び声だ。膣から伝わる
衝撃に、ほんの少しも恥を気にする余裕が
ない事の表れだ。
ギュムッ!ギュムッ!ギュムッ!
ヒカル「やっ!めっえ!?ほぎょっ!?
んぎょほおおおおおお!!!!
ぼへええええええええ!!!!
おおおおおおおほほほおおおおおう!!!!」
続けて子宮をもみしだかれ、ヒカルは女として
どころか最早人語とすら思えないほどの凄まじい
叫び声へと変えた。
まるで膣にマシンガンを突っ込まれ、膣洞内で
乱射をされたかのような衝撃に、恥をかなぐり
捨てて、本能のままに無様に鳴き声をあげ続ける
事しか出来ない。
しかも、子宮に与えられる衝撃は苦痛では無い、
快美の電流なのだ。
拷問のような責め立てをなされているのに、
自らの身体はそれを悦びとして受け止め、
人の尊厳すらも捨て去ったような嬌声で
与えられる悦楽に応えてしまっている事実は
ヒカルを屈辱で覆い包み、一層自らの置かれている
状況の無様さをまざまざと感じさせられてしまう。
ヒカル「ひいいいいいいいあぁう!!!
くっくそおおおぉぉぉ!!悔しいいいぃぃぃ!
んほぼおおおおおおおおおおおうぅ!
こんな無様に感じさせられるなんてえぇぇぇ!!
うひいいぃぃぃぃぃぃ!!!」
源氏「どうだ?降参する気になったか?」
膣を揉みながら息も絶え絶えになるほどに
絶叫を続けるヒカルに降伏の意を問いかける。
しかし、血の気もよだつかという凄惨な陵辱
を受けても、姫野ヒカルの眼光は今も揺らぐ
事はない。
ヒカル「うっあぁぁぁ!!痴れ言を…!
ひぎぃ!! こんな程度……何とも無い!!
あひいいいいいいいん!!
はぁ…はぁあぅ! 身体が…どんなに快楽に
飲まれても……口がどんなに……あえい…でも!
うぅあん!!……心は決して思い通りにならない!
……私たちは…負けない!!折れるもんか!!」
身体はくねり、嬌声を漏らす。そんな無様さ
すらかき消してしまうほどに強くヒカルは
言い放った。
例え身体が快楽に悦べども、口が
淫らに狂える嬌声を吐き出し続けども、
正義の鋼の心は変形は疎か、凹む事すらない。
故に眼は変わらない。眼は心そのものだ。
トップ退魔士たちのリーダーの目の煌りは
一切変わらぬ強靭な退魔の精神力を目の前の
妖魔に鋭く突き刺し続ける。
源氏「………」
そんなヒカルに対し源氏は、バルムスは……
やはり無気力に見つめていた。
嘲るでもなく、怒りに震えるでもなく、幽霊
のようにぼんやりと見つめている。
ズボリ
ヒカル「うっ!?……はぁ…はぁ………?」
源氏は突然膣を責めていた凶手を止めた
だけでなく、そのままヒカルの体内から
手を引き抜いた。
唐突の責苦の中断にヒカルは訝しげに
源氏を見つめる。
まるでその事を嵐の前の静けさ、という
ように、心に恐怖を少し宿し、源氏の
次の言葉、もしくは出る行動に最大の
警戒をする。
だが、源氏が言い放った言葉はあまりにも
予測し得ない、意外な言葉だった。
源氏「……やっぱり、どうやっても興が
乗らねえな」
ため息を吐きながら、源氏は無関心に一言
話す。
ヒカル「…なんだって……?」
もちろんヒカルは疑問を投げ返す。
しかし、その疑問の声は純粋なものだ。
警戒や恐怖が微塵も混ざっていない、
正真正銘【分からない】のみの感情だ。
今までの調教の合間の源氏の覇気のなさ、
そして先ほどの言葉ととも覇気が完全に
なくなった事から、【興が乗らない】と
いう言葉は正真正銘、源氏とバルムスの
本音と察した。
あれほど自分に執着してきていたのに、今は
同化している2人が本当に自分に完全に興味が
なくなっているのだと感じたのだ。
その無気力な態度がかえって不気味さを
込み上げさせてくる。
源氏「……俺はな、お前をずっと手篭めに
してやろうと思ってきたんだ」
そんな訳が分からない、と頭を混乱させる
ヒカルを見てか、今の状況とは関係ない、
しかしヒカルの心の内を見透かしたのように
源氏は突拍子もなく話した。
ヒカル「……いきなり何?」
源氏「中等部の頃に初めてお前と知り合って
以来、お前をな、ずっとぶち犯してやりてぇと
思っていた。ヒカル、お前の事がタイプ
だったから、性的に欲情していたから、
当時からアイドル的人気のお前を手篭めに
すれば俺様の不良としての箔がつくから…
お前は、俺のお気に入りだった」
ヒカル「……うん、そんな事知ってた
「そう思っていた」
………?」
源氏「だが高等部に上がって、【あいつ】に
出会ってから、つい先ほどの時にそれは
違うって事を確信した。
とんでもねえ、真逆だったんだ。
姫野ヒカル、俺はてめえが気に入らなかった
んだ。
人気があったから僻んでいたのか?
誰からも尊敬されてたから胸糞悪かったのか?
それとも単にお前に欲情していただけなのか?
答えは全部違う。
俺は、お前の曲がった事が嫌いっていう正義さが
嫌いだったんだ。
弱い人たちを助けたいって言う姿勢が嫌いだった。
俺はお前を否定したかったんだ」
源氏は昔を思い出しながら自らを振り返って
いるかのように話してくる。
不意に、源氏の様子が変わる。おだやかな昔語り
から怨念がこもる語り口調に変わる。
源氏「だからこそ、あの【緑川影明】は
気に入らねえ!てめえ以上にあいつは
腹が立って仕方ねえんだよ!!
誰か困ってたら助けずにはいられない!
そのためなら自らを省みないほどだ!
そう……!あの時お前たちを助けて俺を
屋上から落とした時のように…!
自らの命すらも!!
愚か過ぎて……腹が立つんだよ!!
『俺を嘲笑ってるみたいで…!』
やるせなくなってくるんだよ!!」
源氏「…お前が先ほど俺に向けて啖呵を
切った時も、何も思わなかった。
いつもならば、嗜虐心が沸いて、もっと
泣かせてやろうとでも思っていたんだろうがな。
だが、お前がいくら反抗しても、憎しみを
向けてきても、「あぁ、そうか」としか
思えなかった。
いや…… たった一つ感じ続けていた事があった。
お前が苦悶の声を上げ続けるたびに……
「あぁ、これが【緑川】だったら良かったのに」
そう思ったんだ」
静かだが、強烈な憎悪をたぎらせる???は
あまりにも【不気味】であった。
どう【不気味】なのか?
ヒカル「…お、お前は……なんなの?
ねえ…?どっちなの?
黒岩くん?それともバルムス?
【何者】なの?お前は…!?」
表情を強張らせ、ヒカルは目の前の
【
いられなかった。
???「くっくくく…… 俺たちは本当に
相性がいい…。まるで生涯の親友を得たような
気持ちだ。あの【緑川影明】への怒りは
俺たちを強く結び付けている…!」
ヒカル(まさか……黒岩くんはバルムスと同調
以上に【一体化】し始めているの…!?
影明くんへの強烈な執着が、2人の存在
そのものを同一にしているの…!?」
2人の【影明】への執着心は憑依、同調すらも
凌駕し、まさに【同じ】存在のものになり始めて
いた。
【黒岩源氏】と【バルムス】という2つの存在の
境界線が細く、薄くなり、混ざり始めてしまって
いる。
このままいけば、2人という存在は完全に溶け合い
1つの存在として生まれ変わってしまう。
ヒカルにはそう感じてしまうほど、2人の影明への
妄執が同調していると、不気味に感じているのだ。
ヒカル(これじゃあ…影明くんが危ない…!)
ヒカルは憎悪を向けられている当人の影明の
身を危惧する。
実は、ヒカルもユキに劣らぬほど思い入れが
あるのだ。
ただ、ユキのような恋慕ではない。
影明は何よりも大切な自らの弟を命をかけて
救ってくれた恩人だ。
ヒカルは影明に多大な恩と感謝を感じている
のだ。
ヒカル「やめろ…!影明くんには手を出すな…!
責めるなら私だけにして!!」
正義感が強いヒカルは当然のように影明への
手出しをやめるように嘆願した。
しかもヒカルは先ほどの凄惨な陵辱を受けたにも
関わらず、そのためならば自らへの調教も
構わない、と言うほどだ。
もっとも、最早影明への復讐の事しか考えて
いない黒岩たちがそんな嘆願に耳を貸すはずが
ない。
バルムス「バカが。そんな戯言を叶えてやる
とでも思ったか? もうてめえのことなんざ
どうでもいいんだよ。
……てめえの膀胱に細工は完了した。
必要最低限の準備は出来ただろう。
本当はもっとてめえに分かりやすい変化を
もたらしてやる方がいいんだろうが……
やっぱりどうやってもやる気が起きねえわ。
まぁ、なあに安心しろ。明日学園生徒どもの
前で盛大に犯してやる。奴を苦しめるためにな?
明日を楽しみにでもしているんだな」
すっかり興味が失せたようにバルムスは
ヒカルにその言葉を最後にスゴスゴと
肉部屋の扉に向かい始めた。
ヒカル「くっ!待て!バルムス!!
待てええええええ!!」
ヒカルの虚しい静止の声はバルムスの
扉を閉める、ガチャリという音で
完全にシャットアウトされてしまったーー
------------------
〜学園〜
影明「おいおい…まさかの4時限目で終了
しちったよ」
勝平「しかもずっと自習だったな……」
影明「マジどうしたんだろうなー?」
影明たちは帰路に着くべく、学園の廊下を
歩いていた。周りも同じく帰路に着こうと
する学園生で賑わっている。
時刻は12時ちょっと過ぎ。影明の言葉通りに
授業が4時限目で終了したのである。
しかも4時間ずっと自習だった。
当初、思わぬ自由時間を得られたと大喜びの
影明たちも言いようのない不気味さで
早く帰れた、と喜ぶ気にはなれなかった。
【何も知らない】のであれば、素直に喜んで
いたのかもしれない。
しかし、影明たちは【知っている】。
妖魔を、退魔士を、、、この学園の本当の目的を。
そして、一昨日の晩に信じられないような体験を
したばかりなのだ。
否応なしにでも一昨日の事件が関係している
のではないかと勘ぐってしまう。
優「さてね…まぁ昨日影明があんな状態だった
から、やらなきゃいけない事後処理とかを
出来なかったから、今日やってる…とか
そんなのかもよ?」
勝平「あ〜、確かに!それだ!やっぱ優あったま
いぃ〜!」
優「いや、ただの推測だし。にしても瞬置いてって
良かったの?」
影明「だって瞬の奴クラスメイトの水無月さんと
話し込んでたじゃんかよ。長くなりそうだったし
待ってられるかっての」
勝平「……ありゃ話し込んでるというよりも、
向こうから一方的に話し続けられてるって
かんじだけどな」
優の推測で合点が言ったと勝平は不安そうな
顔を綻ばせる。
対して、優の表情は変わらない。緊張とも
喜びとも違う表情だ。
影明も表情が変わらなかった。いつもは
ウザいほどにテンションが高いのに、
今は驚くほどに静かだ。
まるで、何かを感じ取っているかの
ようなーー
「ねえ…あれって……」
きっかけはどよめいた周りのクラスメイトの
グループの一人が発した密かな一言であった。
影明「ん…」
勝平「…!?あれって!」
優「…ふむ」
周りの学園生徒たちの視線の先に
突如どよめき出した理由の人物が
こちらへと歩いてきていた。
???「はぁ…はぁ…」
勝平「おいおいおい… あれってユキちゃん
じゃねーか!」
息を切らしながらこちらへ歩いて来ていた
何と、今日欠席していたはずの綾風ユキで
あった。
これが今学園にどよめきをもたらしている
原因となり得ていた。
そこらの一般学園生徒なら皆が皆一様に
反応などは見せなかったであろう。
しかし、ユキは美貌やスタイル、日本有数の
名家のお嬢様であること。
何より、中等部時代から学園の顔である生徒会
に所属していたので、人気や知名度は学園中に
知れ渡っている。
その上ユキは学園きっての優等生としても
有名だ。
そんな人気絶頂で優等生の鏡のような
ユキが昼過ぎという大遅刻どころではない
時間に現れたのだから、学園生徒たちの間に
驚きが大きく渦巻くのにも無理はない。
勝平「ふぅ、安心したな。やっぱり優の
読み通り事後処理で忙しかったんだろうな!
しっかし、ユキちゃんも真面目だな…
もう昼過ぎでも学園に来るなんてよ……
俺なら絶対来ねーわ」
勝平が呑気にも安堵している。
そんな勝平をよそに、影明はツカツカと
ユキの方へと足早に歩み出した。
勝平「って?おいちょっと?影明さーん?」
影明が無言でユキの方へと歩み寄り出した
ので、勝平が目を丸くして足早に歩き出した
影明に呼びかけた。
???「はぁ…はぁ…!急がなければ…!」
息を絶え絶えにして、歩いているユキは
辛そうであった。
見た目にはどこもおかしい点はないが
手で肩をおさえている。
その奇怪さがより一層周りの視線を集めて
いる。
「綾風さん」
突然ユキを呼びかけた声に反応して辛そうに
視線を声の方向に集中すると、ユキが重そうに
身体を引きずってでも学園に来た目的の
人間がいた。
緑川影明である。
???「み、緑川さん!?」
ユキは突然の影明の登場につい驚いた。
実際は十分に声をかけられる前でも視認出来る
距離に影明たちはいたのだが、『昨晩』の
影響で今のユキは身体に相当な疲労と
ダメージが蓄積されており、影明に声を
かけられるまで気づく事が出来なかったのだ。
???「緑川さん… いえ、ちょうど良かった
です。実は私はあなたをーー」
素早く切り替えてユキが影明に自らの目的を
話そうとするが、その前にーー
影明「ぬああああぁぁぁぁぁ!!??
そ、そうだぁ!?しまっとぅああああああ
ああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ユキ:ビクン!?
突然に影明大きく声を張り上げて、あから
さまに頭を抱えて慌てる様子を見せる。
予想できない行動にユキはまたもや驚き
に引き戻される。
ユキが何が何だか分からない、という表情
をしているのにも構わず、影明はおおっぴら
に騒ぎ立てる。
影明「や!やべえええええええ!!!
そういや俺昨日の大怪我の事について今日
の朝から詳しく話すように呼び出し喰らって
たんだったわあぁ!!!
うわあぁぁぁぁ!!やっべ!!ががが学園長
怒ってるかもしれんぞ!!
俺ただでさえ目ぇ付けられてるのに
これ以上何かやらかしたらマジで退学に
なっちまう!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる影明に周囲の
学園生徒たちのどよめきは…何と引いて
いっていた。
内容がはっきり分かるほどに騒ぎ叫んで
いたためだ。
周囲の学園生徒達の反応が一様に
「あぁ、またこいつはやらかしたのか…」
と言った哀れみの顔に変わっていっている。
緑川影明は外部生ながらも知名度だけなら
ヒカル、セイラ、ユキの学園のマドンナたち
をも上回るほどの有名人だ。
そのため、学園で影明を知らない人間は
いない。
影明のトラブルメーカーぶりはこの場にいる
全員がすべからく知っているのだ。
影明「あ、綾風さん…!もしかして俺が
来ねえから学園長に直接呼び出しに
来るように頼まれて来た…?」
大声ではないが、ここでも影明は
あえて周りに聞こえやすいような
ハキハキとした声でユキに尋ねた。
???「え?そ、それは…」
ユキは唐突に影明に疑問を投げかけられた
ので、反応が遅れてしまい、言葉に詰まる。
そしてまたもや影明はユキが何かを
言う前に騒ぎ立てた。
影明「うわあああぁぁぁぁ!!やっぱりか
あぁぁぁ!! しっかも学園長カンカン
だって!? すぐに学園長室に来いって!?
うわぁぁぁ……行きたくねぇ……マジで(泣)」
涙声をこぼして、影明はがっくりと項垂れる。
その一連のやり取りを見ていた周囲の学園生徒
たちはすっかりと抜かれ、明らかに周囲の
人数も減っていた。
女子校生H「綾風さん…お疲れ様…。生徒会の
お仕事で色々忙しいだろうに大変だね…」
男子校生H「ホントごめんな…。そこのバカに
代わって謝るよ…」
気づけば数名の学園生徒たちがユキのそばに
近寄って同情の言葉までかけてくる。
影明「おまっ!バカは余計じゃい!」
同情の声のうちの一つに影明は本気めに少し
イラッとしたのか、抗議の声を一言あげた。
だが、それに返ってくるのは無数の非難の
声であった。
黒湯真司「るっせえ!!お前は毎回毎回迷惑
かけすぎなんだよ!!面倒かけられる方の
身にもなってみろ!」
三木島叶「そーだよカゲッち!ユキりんは
カゲっちと違って品行方正で成績だって
優秀の文武両道の優等生な正真正銘のお嬢様
なんだよ!!」
金谷希「そーそー!劣等生の影明くんが
綾風さんより優れてる所と言ったら運動神経
ぐらいでしょ!?生徒会の仕事で忙しい
綾風さんにわざわざ迎えに来させてしまった
事をちょっとぐらいは申し訳ないって思いなよ!」
影明「れ、れっとーせい…!?」
花岡蓮「カゲカゲ氏……流石の吾輩もこれは
弁護し切れませんぞ……」
錦野晴人「そうだな。学園のマドンナの綾風さん
にひどいことしたら学園中の皆を敵に回すぞ?
特に男をな」
一ノ瀬真希「分かったら誠心誠意ごめんなさい
って思って、以降は少し自分の行動を改める
ことだね。影明くん!」
影明「……え?何これ?俺ここまで言われなきゃ
ダメなんか?
自分、泣いていいっすか?」うるうる
影明は無数の非難の嵐に、本気で涙が出そうに
なっている。
黒瀬明日菜「綾風さんの涙に価値あっても影明
くんの涙には価値ないからね。
さ、皆とっとと帰ろー!」
その女子生徒の声で場は解散となり、
周囲の人間たちは徐々に散り散りに
なり始めていった。
男子校生A「はぁ〜…全く心配して損したぜ」
男子校生F「あぁ…、何てことだ。外部生徒
は外部生徒でもこれほどまでの愚か者が
我らの学園に入学してくるなんて…
これでは我が校の評判は悪化して
してしまいます…」
女子校生C「頭が痛くなりますね……本当、
今回の外部生の編入は失敗です…」
一ノ瀬真希「そういや、藤堂くんいないなぁ」
黒瀬明日菜「あぁ、あのヤンキー風ガリ勉君?
それだったら影明くんが騒ぎ出した瞬間に
興味失くしたように帰っていってたよ」
一ノ瀬真希「えぇ〜…ホント藤堂くんその辺
はっきりしてるなぁ…」
勝平「……はぁ〜〜〜〜。何やってんだよ
あいつは……。ホントバカなんだから…
おい、優。あいつ置いて俺たちだけさっさと
帰ろうぜ」
優「……んっ!うぉほん!」
勝平の呆れ声を発するのに対し、優は何故か
咳き込んだ。
それはわざとらしく、影明の耳に入る程度の
声量だった。
割と真面目に凹んでいた影明はそれを聞いて
ハッとして勝平たちの方に顔を向けた。
影明「は、ははは…!ははははははははは
ーーーーーー!!! 勝平くぅーん!!
すっぐるくぅぅぅぅーーーん!!
君たちも学園長室に来るようにだってええ!!」
勝平「……は!?何でだよ!?」
影明の言葉を聞いた勝平はすぐさま抗議の声を
あげた。
影明「あー…それは…… っ! お前たちも俺と
関係あるからだってぅぇぇぇ!!!れーんたーいぃ
せーきにーんんんだってよおおおおお!!
わっはっはっはっはっはっはーーーーー!!
ざまああああああ!!こうなりゃお前たちも
道連れだ!! 心の親友として、俺と一緒に
誅されたまええええええい!!!」
勝平「は、はああああぁ!?いやざっけんな!?
俺たち関係ねーし!?何で俺たちまで罰され
なきゃなんねーんだよ!! 優!お前も抗議
しろよ!」
優「…はぁ〜〜〜。いや、無駄だよ勝平。
僕たちも呼ばれてる以上行かなきゃダメみたいだ。
ここで拒否ったらそれこそ罰されるよ……
【だよね?綾風さん】」
勝平の助力の要請にまたもやわざとらしくため息
をついて否定し、ユキにも『その事』を確認する。
???「……はい。学園長は緑川さんに加え、
石山さんと紅藤さんにも事後聴取に参る事を
お望みになられています」
ユキも『意』を汲み取って、肯定の反応を取る。
勝平「うっそだろ!?そりゃねえよぉ〜ユキ
ちゃあぁぁん…! ………はぁ、しゃあねぇか…」
優とユキの言葉で観念したのか、勝平はがっくり
と項垂れた
男子校生B「お疲れさん!かっぺいくん!」
女子校生A「頑張ってね〜♪」
他人事として、笑みを浮かべるクラスメイトたちに
勝平は盛大にイラッとするのであった。
--------------------
学園生徒たちと別れ、ユキに連れられ【ある場所】
へと向かう影明たち。
もう周囲には学園生徒たちはおらず、この空間には
影明たちしかいない。
勝平「ったく……影明、てめえが忘れていた
せいで俺たちまで……」
勝平はいまだにブツクサと文句を言っていた。
まだ【学園長室】に行くものだと思っている
ようだった。
勝平「ホンット、てめえがバカなせいでよぉ…
今度、何か奢れよ?影明。」
それを見かねた優が勝平を嗜める。
優「いやいや、今回おバカなのは勝平の
方だと思うけど?」
勝平「……あ?」
優「気づいてないの勝平だけだよ。
どこに向かってるのか、まだ分かんないの?」
勝平「はあ?そりゃお前……ってあれ?
そういや学園長室ってこっちだったか?」
優に指摘されて、ようやく行き先の相違に
気がついた勝平。
それと同時に疑問も湧き出してくる。
まだ【真意】に気づいていないからだ。
???「…着きました」
勝平「え?ここって…」
ユキがそう言って立ち止まった場所に勝平は
驚く。
何故ならそこは先日赴いた秘密の場所、
【ヴァルハラ】への隠し入り口の前だったからだ。
???「さぁ、手早く中に入りましょう」
影明「そうだな」
優「誰かに見られる前にね」
勝平「…え?……え??」
勝平のみが狼狽していたが、ユキが素早く
隠し入り口の扉を開き、ヴァルハラ内へと
入って入り口を閉じた。
???「……緑川さん。先ほどはお気遣い
いただき、ありがとうございます」
影明「いいよいいよ。あんまし妖魔とか
こういうことバレねー方がいいんだろ?」
???「そうですね。それと、申し遅れて
しまいすみません。私はユキお嬢様では
ありません。名を【ミユキ】と申します。
ユキお嬢様の妹とお思いください」
影明「……え!?綾風さんじゃねーの!?
マッジか……綾風さんと瓜二つ過ぎて気付
かんかったわ…」
ミユキ「それはそれが目的なところも…
あぁ、いえ、失言でした」
優「…? 妹と言う割には綾風さんの
事は"お嬢様"って呼ぶんだね」
ミユキ「……私にはお嬢様ほどの退魔の
才能が無く、下の娘でありますので…
使用人という形で綾風家にお世話になって
おります」
優「……ふーん」
ミユキは自らの素性をごまかして説明する。
本当の事を話すとなると、かなりややこしい
話になってしまうし、そもそも自らの影武者や
代理という役割上、他人に知られる訳には
いかないからだ。自らの存在については
影明たちよりユキとずっと面識のある、
ヒカルやセイラにさえ隠しているほどにだ。
勝平「…なぁ、マジでどういうことなんだ?」
全く状況が飲み込めない勝平が疑問符を
いっぱいにして尋ねてくる。
それに対し、影明と優がそれぞれ答えた。
影明「いや、お前なぁ…… このミユキちゃん
ってのと会う前に4時限目で授業終わった上、
ずっと自習だったの変だよな、って話してた
じゃん」
勝平「お、おう…」
優「そんなところにだよ?昨日普通に元気
そうだったのに今日休んでた綾風さんが
昼に、しかも辛そうに学校に来てたら
【妖魔】関係で何かあったんだなって
察せない?」
勝平「あーいや…確かに……いやでも!
影明がいきなり騒ぎ出してそこまで
考えつくに至らなかったんだよ!」
優「あれは影明が気を利かせたんだよ。
あんなところでバカ正直に【妖魔】の
事なんて話せないし、場所を移そうにも
ユキちゃんは人気だから絶対周囲の人間
の誰かしらが付いてくるでしょ?
そうなったら秘密のヴァルハラにおちおち
移動も出来ない。
だから影明があぁ言って周囲の皆に
しょうもない事だって思わせて人払い
したんだよ」
勝平「な、なるほど…」
影明「ったくさぁ……付き合い一番長いの
お前なのに、俺の考えが通じなかったのは
ちょっとショックだったぞ?」
勝平「……面目ねえ…」
素直に勝平は反省の意思を示した。
影明「まぁ、今はそれはいいわな。
それより、ここなら誰にも聞かれる
心配もねーだろ?
そろそろミユキちゃんが俺らの所に来た
理由を教えてくれね?」
影明は早く本題に入ろうとミユキに催促
するが、ミユキはそれにまだ否定の意思を
示した。
ミユキ「いいえ… 奥へうかがいましょう。
そこで、学園長もお待ちしているはずです」
影明「学園長……」
優「…なるほど、これは僕たちの想像以上に
厄介な事になってるかもしれないね」
学園長という言葉を聞いた影明たちは緊張を
更に高めた。
先日会ったアテネはこの退魔施設の最高
責任者なのだ。そうそうの事では直接
出て来ない。
そのアテネが昨日会ったばかりにも関わらず
わざわざ影明たちを待っているというの
だから、事態は只事ではない事を想像させた
からだ。
勝平「……俺ちょっと寒気して来た…」
勝平も事態の深刻さを想像出来たのか
ビクビクし始めている。
影明「…じゃあ勝平は戻るか?」
それを見た影明も勝平に心配そうに
問いた。だが、その影明の心配に勝平は
力強く否定で返した。
勝平「バーッカ!今までお前に付き合って
どんだけやべえ事件に首突っ込んだと
思ってんだ! 今更だろうが!」
強気にニヒルに笑む勝平。
影明「…いいねぇ、流石勝平よ!」
優「そう来なくちゃね」
その言葉と笑みを受けて影明と優もまた
ニヒルな笑みで勝平に返した。
そうして笑い合う3人の間に男の絆があった。
この笑顔は様々な事件に首を突っ込んできた
悪ガキの無茶とそれを起因にして降りかかって
きた苦難の数々。それを共に切り抜けて来た
悪友としての長年培ってきた友情なのだ。
ミユキ「…さぁ、皆さん。参りましょう」
そしてミユキの言葉で3人は改めて覚悟を
決めたのだった。
「遅かったじゃん」
先ほどの場所からヴァルハラ内の昨日の医療
施設とは別の一室に案内された影明たちは
入室一番にその一言で出迎えられた。
それは影明たちもよく知る女の子だ。
影明「……いや、何で先にお前らいるんだよ!」
ツッコミ気味に疑問を投げかけた相手は
神崎瞬と天宮文香であった。
文香「私だけハブってコソコソしようと
したってそうはいかないから!
シュンくんが絡んでるなら私も問答無用で
関わらせてもらうから!」
瞬「悪いな、影明。お前の話……いや、その前に
先にこの子と会ってさ」
そう言って後ろからヒョコっと出てきたのは
一昨日影明が命がけで救出した気弱そうな
少年、姫野ヒカルの弟、【姫野ショウ】だった。
姫野ショウ「み、皆さん、一昨日は助けていただき
ありがとうございました!おかげで命を救われ
ました!」
ショウは一昨日言えなかったお礼の言葉を改めて
影明たちに申した。
影明「えー!何でお前いますのん!?ドユコト!?」
優「……いや、そのショウ君って子がいるのに
お姉さんである姫野さんがいない。……神無月さん
と綾風さんもね。
3人ともここで待っているのかと思ってたけど
弟であるショウ君がいるって事は相当まずい事に
なってるって事だ。
3人の身に何かあったんだね?」
優が場の状態から大まかな事態を推測し、
ショウに確認する。
ショウ「は!はい!そうなんです!お姉さん、
昨日学園に行ったっきり帰ってきてないので
何かあったんじゃないかって心配で…!」
ショウは優の問いかけにこくこくと肯定して
頷く。
優の様子とショウの言葉に少しおどけていた
影明も一気に真剣になる。
瞬「影明たちが騒ぎを起こす前、このショウ君
が言った事をさっき聞いてさ。
そこで影明が騒ぎ出したのを聞いて、俺たちは
一足先にこのヴァルハラに来させてもらってた」
文香「私はシュン君と帰るつもりで一緒にいた
から、無理矢理シュン君に付いてきたの」
勝平「いや、一緒に帰るって……瞬は寮生活
だから家すぐそこ」
文香「あ?」
勝平「ぎょえ!」
影明「結局いつものメンバーが勢揃いか……
ま、ぶっちゃけ心強いわ。ありがとな。
それで、学園長は一体どこにいるんだ?」
瞬「その前に…さっき優が綾風さんもって
言ってたけど、なら隣にいるその子は
何なんだ? どう見ても綾風さんに見える
んだけど…」
ミユキ「あぁ、申し訳ありません。失念
していました。私は……」
瞬の問いにミユキは先ほど影明した説明と
同様の説明をする。もちろん本当の素性は
隠したままでだ。
文香「へぇ…… まるでドッペルゲンガー
みたいだね…… 瓜二つ過ぎでしょ…」
ミユキの説明を受けてなお、あまりに
似ているために文香は軽く驚いていた。
無理もない。同一人物と言えるほどに
ミユキはユキに似ているのだ。
文香の言葉通りドッペルゲンガーと
言われても違和感がないほどだ。
アテネ「皆さん、お揃いのようですね」
そうして、影明たちが話していたら
アテネが姿を見せた。
影明「あ、学園長!ご無沙汰してます!」
それを見た影明はいやに、ピシッとした
挨拶をした。
瞬「え?か、影明……何かいやにちゃんと
してるな…」
普段だらしなさそうにしている影明が
ハキハキと学園長に挨拶しているのを
見て、いつも一緒にいる瞬は少し訝しげに
目を丸くさせる。
隣でその事を聞いていた優がこそっと瞬に
耳打ちする。
優「この前アテネ学園長に対して無礼
極まりない態度を取ってしまったから
気を遣ってるんだと思うよ」
瞬「あー……」
瞬は優の推察に大きく納得した。
それが推察、ではなくむしろそれに違い
ないとばかりに。
アテネ「ミユキさん、ここに皆さんを
連れてきてくださり、ご苦労でした」
ミユキ「いいえ、とんでもありません。
リゼラベルツン様のお役に立てたのなら
光栄至極でございます。
それにしてもリゼラベルツン様、まさか
私の事をご存知であられたとは……
もしや、私の事は最初からご看破されて
いらしたのでしょうか?」
ミユキが日本トップクラスの名家の令嬢に
恥じぬ優雅な礼儀作法で退魔士最高の偉人、
アテネにお辞儀をする。
アテネはミユキの辞儀、いや、ミユキの質問
対して悪戯っぽい微笑みを向けた。
それを見たミユキも"かなわない"とばかりに
苦い微笑みで応対した。
アテネ「さて、あまり無駄話をする時間的
余裕もありません。……なので、率直に
単刀直入に言います」
昨日の一貫してつかみどころのない無表情
な様子であったアテネが厳かな様子で
真剣な物言いで話し出したので、影明たちも
息を呑んで、次のアテネの言葉を待った。
そして、影明たちの想像通り、アテネは
身の毛のよだつ脅威を言葉に紡ぐ。
アテネ「……昨晩、影明くんが倒したはずの
バルムスとその配下たちが復活し、聖徒会の
皆さんが交戦し、おそらくは敗れました。
……明日にでも、妖魔王が率いる妖魔の軍勢
がこの学園に攻め込んでくるでしょう」
影明「…は!?」
瞬「うそ!?」
文香「…マジか」
優「………」
勝平「うっそだろ…」
ショウ「………」ギュッ
それぞれが様々な反応を取る。
中でも、一番驚愕した影明がその
勢いのままにアテネに詰め寄って
聞き返してくる。
影明「いやいやいやいや!?バルムスゥ!?
あいつはあの時完全に像の槍に串刺しに
なって死んだはずだって!!あ、すみません!
あんな状態から生き返れるはずがないと思うの
ですが…!?」
アテネ「…説明が些か不十分でしたね。
実は昨晩妖魔王と名乗る妖魔がヒカルさん
たちに布告してきたのです。
その妖魔はテレパスという妖術の中でも
高位に位置する術を用いて布告を
してきました。
テレパスを使えたのは過去近年では同じく
妖魔王のヴェゼルのみ。故に妖魔王と
名乗るだけの実力がある事は決して
その妖魔の驕りなどではないでしょう
…そうですね?ミユキさん」
アテネがミユキに確認すると、ミユキも
同意するように頷く。
ミユキ「はい、間違いないと思います。
直接ヴェゼルと交戦した事のあるお館様
がおっしゃった事ですので。
そうでなければ、私にユキお嬢様の出撃を
阻止するようにお命じなさらないはず
です」
アテネ「それほどに強大な妖魔ならば
バルムスを蘇らせる事も可能と考え
られます」
影明「……それは参りましたね…。
えと、それで……姫野さんたちは
どうなったのでしょうか?
もしかして殺されたとか……」
アテネの説明に驚きを隠せないながらも
一応の納得を影明はするが、同時に
敗れたと聞いたヒカルたちの心配を
露わにする。
ミユキ「…いえ、それはないと思います。
ユキお嬢様の霊力は感じます。
少なくとも死んではいないはずです」
影明「……そうか、それはよか「ただ」?」
影明が安心したように息を吐く、その前に
ミユキは不穏な様子で安堵の息を遮る。
ミユキ「ユキお嬢様の霊核の霊力が小さく
なっていくのを感じます……。」
その言葉と共に、表情が乏しかったミユキの
表情が急にけわしくなる。眉間に皺を寄せ、
明らかに苦渋に満ちる顔をしたのだ。
その顔に"生きている"という言葉には
含まれない深刻な事情がある事を
鋭く瞬は察する。
瞬は今でこそ影明たちや文香を初めとした
友人に囲まれて幸せな生活を送っているが
この聖マリア学園に来るまでは不幸が連続した
悲劇場の毎日を過ごしていたのだ。
誰よりもこのような悲しみや苦しみの顔には
敏感であるし、そんな顔の裏の事情の程度にも
鋭敏であるのだ。
瞬「……その意味って、尋ねてもいい事
なのかな?」
だからこそ瞬には自然とミユキを気遣う
言葉を口に出来たのだ。
瞬には
痛みをよく理解しているから。
勝平「ん?どういう事だ?普通に話して
くれねーとこま」
ガツン!!
勝平「いってえ!!?な、何すんだ瞬てめ」
ドッゴン!!!
勝平「グボア!?」
せっかくの瞬の見事な計らいを無に帰す
ような勝平の空気の読めない発言を拳骨で
瞬は未然に防ぎ、なおも止めない勝平に
瞬の拳骨以上に文香の強烈な腹膝蹴りで
トドメを刺した。
文香「ゴラ?せっかくシュンくんが
すっごい気遣いを見せてくれたのに
それを何まるごと無駄にしてくれよう
としてんの?
あぁコラ?その空気読めない口と
知能が低い言葉しか生み出せない
脳みそごと顔面潰してやろうか???」
洒落にならない状態の勝平を髪を掴んで
顔を自らの目の前に持ってきてメンチを
切る文香。
かつて『打折姫』とまで謳われた最強不良の
メンチは所詮はただのチャラ男に過ぎない
勝平を震え上がらせる。
勝平「ひぅ…ふ、文香さま……ぐふっ
……本気で洒落になってない威力だって
……げふっマジで内臓全部飛び出るかと
思ったんですけど……
鋼鉄の扉がへしゃげるような蹴りを人に
向けてやっちゃダメだろ……」
瀕死に近い重症状態の勝平が息も絶え絶えに
文香に抗議する。
文香「そんなこと、言われなくてもあたしが
一番分かってるから。ちゃんと手抜いてるし。
3年前だったかな?
ケンカの時放った本気の蹴り『見て』、
自分でも引いちゃったしね」
勝平「……え?さっきので本気じゃなかった
んか? つーか…ケンカ…あれ以上の蹴りを
人に向けて放ったんか…!?」
文香「いや、幸いにも誰かを本気で蹴った事は
ないよ。でも……あの時より3年、おそらくは
成長したからあの時よりも威力が上がってるで
だろうあたしの蹴りをあんたの顔で試すのも
悪くないかも?
ふふ…これをまさしく一石二鳥って言うん
だろね。あたしの蹴りの成長ぶりと本気で
人を蹴ったらどうなるか……
2ついっぺんに実験出来るんだから」
勝平「ひっ!?」
文香「さぁ?どうする?【一時】黙るか、
【永遠】黙るか。好きな方選んでいいよ」
勝平「…もうしゃべりましぇん…」
文香「フンッ」
涙腺が崩壊したのかと思うほどに涙で
びっしょりと頬を濡らしてガクガクと
文香の意思に頷く勝平を鼻を鳴らして
文香は解放した。
影明(こえぇ……)
瞬(…マジでフミちゃんだけは怒らせ
ないようにしないと……)
ショウ「ふえぇ…」ぶるぶる
あまりの迫力に男性陣はすっかり青ざめて
しまっている。
そんな中、アテネだけは変わらず無表情の
ままだ。
退魔士のトップを張るだけあって、文香の
迫力にも恐れる様子は微塵も見せない。
ミユキ「えと…よろしいでしょうか……?」
文香の迫力に、さしもの無表情なミユキも少し
青ざめている。
影明「あ、あーあぁあぁあぁ!!だ、大丈夫
でござりまする!!うちの者が余計なご迷惑を
おかけして誠にすみませんねぇ!!」
ミユキの問いかけに我に返った影明が場を
和ませようとあえておどけ気味で返事をする。
しかし、1人、逆効果だったようで影明は再び
恐怖に引き戻らされる。
文香「うちの者?は?それあたしの事
言ってんの?」
影明「…へ!?い、いやぁ!!ちがいますよ!
いやだなぁ!!ky発言した石山くんに対して
言ってるに決まってるじゃないですか!!」
勝平:コクコク!!
影明の言葉に不満を持った文香の迫力に影明は
ビビりながら誤魔化す。
その誤魔化しに対して勝平も激しく首を縦に
振って同意の意を示す。
瞬「ちょ!ちょっと!フミちゃん!!いい加減
にしなよ!ミユキさんも怖がってるじゃ
ないか!」
文香「あっ!……ご、ごめん!ごめんね…
シュンくん」ビクッ
瞬の注意に文香は迫力を嘘みたいに霧散させ、
一転してビクりとしながら素直さを見せる。
瞬「はぁ、フミちゃんが俺のことを想っての
行動だってのは分かるけど、あんまり皆を
怖がらせないように…ね?」
文香「う、うん!ありがとう!シュンくうん//」
瞬の優しい言葉に文香はトロンとした甘い表情
を見せて素直に頷いた。
文香「えと、ミユキちゃん…だっけ?
ごめんね?怖がらせちゃって」
ミユキ「い、いえ…」
そして、文香はミユキにも素直に謝った。
影明(こ、こんのやろおおおお〜!!)
勝平(クソアマァ…!!)
自分たちと瞬とのあまりの対応の差に
影明も勝平も内心怒り最大に不服にする。
ミユキ「えっと……すみません。改めて
霊核の事についてお話ししたいのですが
よろしいでしょうか?」
勝平(え!?)
瞬「え?あ、あぁ。ミユキさんが良いの
なら、ぜひ」
ミユキ「はい。実はあまり話しては
いけないのですが、このような事態ですし、
皆さんには知っておくべきだと思いますから」
勝平(……何それ?じゃあ俺ただの蹴られ損
ビビらされ損じゃね?)
ミユキ「霊核というのは、綾風が先祖代々
受け継いできた、巨大な霊力の塊のような
秘宝です。そして霊核は当代ごとの
綾風当主がその身体に受け継ぎ、代を歴る
ごとに霊核の霊力は増大するのです。
今は綾風次期当主のユキお嬢様が受け継ぎ
そのお身体に霊核を宿しているのですが…
その霊核の霊力がすり減っているのを感じ
ます」
ミユキ「これは、ユキお嬢様自身のお命
とは関係のない事です。ユキお嬢様の
お命が危うければ、お嬢様ご自身の
霊力は減るのは当然ですが、霊核は
それ自体が一つの存在です。
ですので、仮にお嬢様のお命が無くなった
としても霊核は健在なのです。
……ですので、霊核の霊力が減っている
という事は、それは【霊核】そのものに
何らかの干渉をなされている、ということ
です」
瞬「……?話の筋が見えないな……。
綾風さんの無事以上にその霊核について
問題があるの?」
瞬はその霊核の問題がミユキの苦渋への
繋がりが見えてこないため、疑問が
頭の中で広がる。
影明は『黙っている』
ミユキ「……私自身はお嬢様のご無事の
方が大切です。ですが、【本家】は
そうでないでしょう。
仮にお嬢様を妖魔から救い出せたとしても
霊核を傷つけたお嬢様にお館様は何を
するか……
お館様や本家にとって大事なのは【霊核】
だけですから…」
瞬「…その、先ほどから言っている【お館様】
って言うのはおそらくは綾風さんのお父さん
の事なんだと思うんだけど……
お父さんなんだから、【霊核】なんてものより
実の娘である綾風さんの方が大事だと思うん
だけど…」
瞬の至極真っ当な意見に対して、ミユキは真っ向
からそれを否定する。
ミユキ「いいえ、【霊核】は800年以上続く綾風の
歴史そのもの。そして、その【霊核】こそが綾風が
現代まで退魔の頂点に君臨し続けられてきた力
そのものであり、源泉。故に【霊核】こそが綾風の
象徴そのもの。霊核に傷をつけるということは
綾風家の看板に泥を塗る事と同意味、ましてや
失うなどという事は綾風家の瓦解そのものである
とお館様はお考えになっていられるでしょう。
現に、綾風家は先祖が遺してきた【霊核】に頼り
切っています。【霊核】に何かあれば、綾風家は
自分たちの影響力を世に与えられなくなるでしょう。
だからこそ、お館様にとってはお嬢様など、霊核
のための器としてしか捉えていないでしょう。
お嬢様が死んだとしても霊核さえ無事なら
それでいい。また誰かに受け継がせれば良い。
そう、【私】などに…」
ミユキは苦々しく唇を噛み表情を強張らせる。
これこそがミユキの苦慮であった。
ユキを助けられなければ、妖魔の事だ。
妖魔は人間の女性を苗床にして繁殖する
生き物だ。その上、邪悪。
孕み袋、もしくは肉奴隷にされるか…
しかもユキは退魔士としては最上であるため
霊力を最上の馳走とする妖魔にとっては
食い物としてもユキは最上と言える。
間違いなく死ぬよりも酷い目に遭わされる
だろう。
しかし、仮に妖魔からユキを救い出せたと
としても、先ほどのミユキの言葉のように
霊核を何よりも大事とする綾風本家は
霊核に傷をつけたユキを間違いなく処罰
するだろう。
そう、ミユキが最後言葉にしたように
下手をすれば使い捨てられ、命を
取られてしまう危険があるのだ。
瞬「そんなバカな…… 綾風さんは実の娘
なんだぞ…!?」
その説明を受けてなお、瞬は信じられ
ないとばかりに首を横に振った。
文香「……あり得ない。いくら何でも
胸糞過ぎるんだけど」
勝平「んなバカな…人の事何だと思って
やがるんだよ!?」
他も同様に不満の声が上がる。文香は
家がお嬢様と言え、しっかりと親の愛情を
受けてきた。
勝平も裕福とは言えないが、普通に親の愛
を受けて育ってきている。
瞬も死ぬ前の両親が自分を愛していてくれて
いた事はしっかりと記憶している。
世間一般では親の愛を受けて育つのが普通
なので、そんな一般的に育ってきた瞬たちに
とってはミユキの発言は理解に苦しむ内容
であった。
影明「…なるほどな」
しかし、影明のみが静かに一言納得する。
瞬「いやいや!「なるほどな」じゃねーよ!
何あっさりと頷いてんだよ!?」
あまりにもあっさりとした様子の影明に
対して、瞬は感情を露わにして怒鳴った。
しかし、影明はそんな瞬に冷静に返事を
する。
影明「…あり得ねえ話でもねーだろ。
この前の首相公邸での宴会のニュースでも
あっただろ? ニュースでは首相の長男が
主催者で、親に黙って勝手に行ったって
報道してたけど……
あり得ねえだろ。いくら実の息子だから
って、警備の重い首相公邸に大人数を
ゾロゾロと通すわけねえ。
だからあれって、総理大臣が主催者で
その事が世間にバレるとヤバいから自分の
長男のせいって事にして実の息子を売ったん
だよ。
ソースは秘密だが『信用できるところ』
だから間違いねえ。
……ま、こんな風に偉い地位や上流階級の
お家の大人は簡単に身内を売り渡せるぐらい
には威厳と肩書きが大事なんだよ。
自分の家族すら【他人】で、自分こそ至上で
一番かわいいんだ。
『綾風家って、この日本じゃ政財界ともに、
裏の世界でもトップの重鎮様なんだろ?』
じゃあ、十分素質あると俺は思うけどな」
瞬「……え!?首相公邸の宴会騒動って
そうなのか!?」
優「さらっと爆弾発言したねえ…。その情報
と証拠を持って週刊社にでも行ったら飛び
上がって喜びそう」
それまでじっと静聴していた優が急に
しゃべりだした。
そしておもむろにミユキに質問した。
優「……綾風さんの安否とかはとりあえず
置いといて、そもそも僕は聞きたいんだけど。
その事って、どうやって知ったの?
綾風さんたちは昨晩から帰ってきていないん
でしょ?
じゃあ、その事を知り得る方法なんて僕には
無いように思える。
その情報は本当に信用出来るんだよね?」
ミユキ「あ、えと……それは……」
優の発言にミユキは少し慌てた様子で
言葉に詰まる。
『その様子を優は見逃さなかった。』
ミユキ「この子が…私に教えに来てくれたん
です」
そう言いながらミユキは背後から鳥のような
霊を出現させる。
影明「…?何だそれ?」
ミユキ「この子は斑鳩という、霊獣を模した
式神です。おそらくはお嬢様がやられる前に
この子を飛ばして私に伝えるように遣いに
出したのでしょう」
ミユキの周りをパタパタと飛ぶ斑鳩は
神々しさがあり、ミユキの言う霊獣の
式神という説得力を確かに持っている
ように思える。
優「……なるほど。まぁいいや。
それで、僕たちをここに呼んだ理由は
まだあるんですよね? そろそろ
お話お願い出来ませんか?」
更に、おもむろに話を進めようと
優がアテネに振った。
瞬「いや!?ちょっと待てよ!!」
そんな優に瞬は待ったをかける
優「なに?」
瞬「なに?じゃねーよ!?綾風さんの
件をそんなあっさりと終わらせるなよ!
綾風さんたちの安否とか、父親のこと
とかをさ!」
優「……じゃあなに?それを話して
いたら綾風さんたちは救かって、
お父さんとも和解出来てハッピー、に
なるとでも思ってるの?」
瞬「いや、そんな事思ってないけど…」
優「けどなに?じゃあそんな事を話して
いるだけ無駄だ。事実として分かって
いるのは、綾風さんたちは負けて、
妖魔たちに捕まった。そしてその妖魔たち
が明日にでもこっちに攻めてくるって
事。
ならさっさと事態を前に進めて、逃げるなり
対策を練るなりする方がよっぽど有意義
でしょ」
優は冷静に瞬に話したつもりだ。
だが、その中の言葉の一つが瞬の心に
怒りの灯火をつける
瞬「無駄?無駄ってなんだよ…!?
綾風さんやミユキさんの苦悩が無駄だ
って言いたいのか!?
父親に道具扱いされてる綾風さんは
どうでもいいと!?
何でそんなあっさり出来るんだよ!?
お前には人情ってものがないのか!?
人の心を持って…」ガツン
怒りのままに優に捲し立てる瞬を
殴って止めたのは影明だった。
文香「ちょっ!あんた…!」
大事な瞬を殴った影明に対し、文香は
怒りを露わにするが、影明は構わず
しゃべりだした。
影明「あのな、瞬。優はそのミユキちゃん
の思いや綾風さんのことを無駄とか
どうでもいいなんて言ってねえだろが。
それを感極まって、【話す行為】が
無駄だって言ってんだよ。
綾風さんらを助けたいからこそ、
もっと【有意義な行為】を取れって
言ってるんだよ。
実際優の言う通りだろ?俺たちが綾風さん
の家の問題についてとやかく話したところで
どうにもならない。
【話】に華を咲かせたところで、【結果】には
花は咲かない。むしろ咲かせられるかも
しれない【花】を枯らすだけだ。
だから、本当に綾風さんさんらを助けたいなら
人情として話すんじゃなくて、じゃあどうする
かってのを話すべきなんじゃねーのか?」
そして影明は悪っぽい、しかし太陽の
ような笑顔で瞬に笑ってみせた。
瞬「…そう…だな。影明の言う通り、ここで
話し込んだって事態が好転したりしない
もんな。
優、ごめん。カッとして」
優「いーよ、別に。分かってくれたならさ。
それよりも僕の言うより影明が言った方が
すんなりと納得する事の方がちょっと
ショックだけどねえ」
影明に諭された瞬は納得したように怒りを
収めた。
そう、優の言葉通りに、『歪み故に矛を
収められるのだ。』
文香「……あんたって、顔だけイケメン
じゃなくて、内面も実は結構かっこいいん
だね……。シュンくんには敵わないけど」
勝平「ホントになぁ。いつもこうなら
女性に超人気の王子様のようにモテるん
だろうになぁ……。
はぁ〜、もったいね」
影明「コラそこ!影明くんの陰口を
つぶやくんじゃないっての!」
優「はいはい、説得してくれた影明には
感謝するけど、雑談を始めたら本末転倒
でしょ?
さぁ、学園長。話の続きをお願いします」
優は話を強引に戻し、アテネに言葉を
促した。
アテネ「はい。……ですが、あなたたちの
思いを無碍にするようで申し訳ないのですが。
……あなたたちには今日中にこの学園から
逃げて欲しいのです。なるべく遠くへ。
特に影明くんには」
アテネの言葉にした事は先ほどまでの影明
たちとの会話とは裏腹に、学園から逃げ出す
お願いだった。しかも、遠くと言う言葉から
影明達を特別気にかけているのが分かる。
瞬「…え?何故ですか?」
当然瞬は困惑するが、アテネは至極当然の
理論で言葉を返す。
アテネ「何故って、当然でしょう?あなた
たちは何故妖魔をどうにか出来ると思って
いるのでしょうか?
前の晩に現れた妖魔の事で、でしょうか?
セイラさんとユキさんがあっさりと
倒したのを見たから自分たちでもどうにか
出来るとでも勘違いしているのでしょうか?
妖魔は普通の生物とは肉体の頑強さ
そのものがまるで違います。下等妖魔でも
銃弾を肉体に受けても易々と弾き返して
しまうほどなのです。
妖魔に有効打を与えられるのは霊力とそれで
練り出す聖気のみ。つまりは退魔士でしか
対抗が出来ないのです。
そもそも銃や爆弾などで対抗できるなら
現代に退魔士なんてものはいません。
武装した軍で十分と言うことですからね。
そんな軍でも敵わぬ化け物どもを相手に
従軍経験さえも無いようなただの高校生の
あなたたちに何が出来ると言うのです?」
淡々とアテネは事実を述べていく。
しかし、瞬はなおも食い下がる。
瞬「いや、でも!学園長がいるじゃない
ですか!アテネ学園長は退魔の祖と
呼ばれる一族で、退魔士たちの頂点に
たつお方なんでしょう!?
なら俺たちも学園長のサポートぐらいは
出来るつもりです!」
アテネ「…ふむ。そう来ましたか。
これも先に告げておくべきでしたね…。
私はもうじきに動けなくなります。
実は転生してからまだ身体に慣れて
いなくて、定期的に身体の調整を
しなければならないのです。
その調整期間の時にまさか攻め込まれる
事になろうとは……
私が万全ならば妖魔たちにも遅れを
取らなかったでしょうが……
全く、天に見放されたのでしょうか」
アテネの淡々と事実を告げる。しかし、
語気にはどこか歯噛みするような悔しさ
がこもっていた。
そんなアテネの言葉に大きく動揺した
のは瞬…ではなく、ミユキだった。
ミユキ「そ、そんな!?学園長様が
戦えないなんて…!!」
アテネ「本当に申し訳ないです…。
更には、一昨日のショウくんが
連れ去られた時より、ヒカルさん達
とは別で捜索に出た琴音さんがいまだに
戻って来てはいません。
おそらくはヒカルさんたちより先に
妖魔の手に堕ちたものと思われます。
唯一良いと思われるところは復活した
バルムスたちはおそらくまだ本調子では
ないだろうという事です。
妖魔王の力がいくら強大であろうと、
一度死した妖魔たちがそう簡単に完全に
力を取り戻せるとは思いません。
……おそらくは誰か人間の体に憑依した
のではないかと思います。
憑依、人間に化けるのは妖魔の常套手段
ですから。
憑依すれば人間の生気を吸って力もより
取り戻しやすいですしね」
アテネは見解を口にしていく。
そんなアテネにミユキはなおも食い
下がる。
ミユキ「で、でも!学園には他にも
退魔士が在籍していらっしゃいます!
その方たちと共に戦えば妖魔たちも
撃退出来るのではないでしょうか!?」
そんなミユキの希望とも言える言葉に
残酷にアテネは否定した。
アテネ「……ヒカルさん、セイラさん、
ユキさんが3人がかりで敗れた妖魔王に
並の、いいえ、まだ育成中の未熟な
退魔士たちに勝てるとでも?
ヒカルさんたち3人は現段階で既に
現代最強と謳われるほどの退魔士たち
です。
その実力は1人で国の軍隊どころか、退魔士の
戦闘部隊で構成される軍1つにすら匹敵する
レベル。特にヒカルさんはその軍ですら
完全に上回るほどなのです。
戦闘の内訳までは分かりませんが、聖徒会
の3人を降した妖魔王と戦っても勝ち目は
ないでしょう。いいえ、配下はともかく
まだ力を取り戻していないバルムスにさえ
歯が立たないでしょう」
ミユキ「そ、そんな……」
ミユキは絶望したように顔をうつむかせる。
そんなミユキを見て、無表情ながらも声音に
哀色を灯らせてアテネはミユキを気遣う言葉
をかけた。
アテネ「……ミユキさん。あなたが綾風本家
ではなく、私に情報を伝え、頼ったのは先ほど
ご自身が語ったように、綾風本家がユキさんを
処分する事を恐れての事ですね?
…あなたの気持ちは分かります。私もどうにか
してあげたい。いいえ、私自身の気持ちとしても
彼女たちは救いたい。私が目覚めた時に1番最初に
友人となった人たちですから…
『本部』にもこの事を伝達しましたが、おそらく
は期待出来ないでしょう。
奴等は明日攻めて来るのですから。どんなに早く
見積もっても最低でも3日…… もしかすると
1週間以上かかるかもしれません。
本当にごめんなさい。お力になれず……」
表情にこそ出ていないが、沈痛にしゃべる
アテネとどうにもならない現実に打ちのめ
されるミユキ。
瞬はとっくに黙り込んでしまっていた。
正直、アテネの言葉通りだったのだ。
もちろん、自分たちでは妖魔に勝てる
とは微塵も思ってはいなかったが、こちら
には最強と目されるアテネがいる。
そして、ここは退魔士の養成学校であり、
妖魔との戦闘前線基地だから退魔士たちが
他にもいると思っていた。
そして、妖魔たちの知能の低さを見て、
心のどこかで妖魔を侮っていたのだ。
アテネや他の退魔士と共に戦えば
あんな知能の低い化け物なんかには
負けない、と。
だがアテネは戦えず、他の退魔士は
並の妖魔をたおせるかどうかと言った
ところ。しかもここにいるのは成熟前の
未熟な学生退魔士たちだ。
あの時、妖魔を一撃であっさりと倒せて
いたのはセイラとユキが最強の退魔士
だったからこそで、そんな2人でも敗れて
しまった妖魔王に学生の退魔士が
勝つことなんて到底出来ないことは
瞬にだって分かる。
瞬はいかに自分が浅慮だったかを思い
知らされた。
アテネが影明へと向き、言い放つ。
アテネ「ご理解いただけたと思います。
だからここから早くお逃げなさい。
特に影明くん。あなたが一番危険です。
復活したバルムスはまるで悪鬼の如く
あなたに怨念を募らせていると伺って
います。
…ただの人間のあなたに倒された事が
よほど悔しいのでしょう。
奴らにあなたが捕まれば、地獄以上の
地獄を見せられるのは間違いありません。
……なるべく遠くへ逃げるのです。
奴らの手が届かない場所へ。
いずれ『本部』からも助けが来ます。
それまで、奴らから逃げ延びてください」
アテネが学園長らしからぬ態度で影明に
対してお願いをする。
その言葉には、退魔士としての、守るべき
弱者を守るという矜持が込められていた。
そんな願いに対して影明はーー
影明「うん……ごめんなさい。いやです!」
あっけからんとするほど清々しい笑顔で
その願いを断った。
そして、続けざまに言葉を紡いでいく。
影明「俺はここで残って戦いますよ!
せっかくここで友達作って、色んな
奴らと仲良くなったし、何より瞬とも
再会出来た場所なんだ!
妖魔なんぞに奪われてたまるかってんだ!
つーか、それ以前に綾風さんらを見捨てる
とか出来るわけねー!
せめて、彼女たちを救い出してみせます!」
影明は『自信に満ち溢れた様子』でそう宣言
してみせた。
当然のようにアテネはそれを止めに入る。
アテネ「影明くん…!?あなたは何を言っ
てるんですか!?私の話を聞いていたの
ですか!?
妖魔は普通の人間が勝てるような存在
じゃない! しかもヒカルさんたちで
さえ敗れるほどの強大な妖魔王まで
いるのですよ!?
そんな相手に、戦えるわけがない
でしょう!
それに、先ほど告げたはずです!
バルムスが異常なまでにあなたを
憎んでいると!
そんなバルムスに捕まれば影明くん!
この世の地獄と呼ぶのすら生ぬるい
苦しみを与えられるのは間違いありません!」
無表情なアテネの顔が明らかに
驚きと焦りの色が映えている。
普段何を考えているのかが分からない
ほどの表情に抑揚がないアテネが
このような顔をするのだから、
相当に慌てているのだ。
影明「申し訳ないんですけど、学園長。
俺は逆にその事って『チャンス』って
思います。
言い換えたらバルムスは俺に怒り狂ってる
わけでしょ?
だったら賢明で優れるバルムスに隙が
出来るんじゃ無いかと思いますけどね!
それに、バルムスは俺が戦った時より
弱体化もしてるんですよね?
だったらワンチャン倒せるかもしれない
ですしね!」
そんなアテネの様子にも気圧されず、
ニッカリと笑う影明にアテネは
怒りを灯して怒鳴り始める。
アテネ「あなたは何を楽観視してるの
ですか!? 弱体化してるなら倒せる
かもしれない!? 相手は最上等クラスの
強大な妖魔ですよ!? 弱体化していても
並の退魔士すら凌ぐほどの力を持った
化け物には変わらない!
そんな奴を相手にただの高校生である
あなたに勝ち目など微塵もありません!!
自惚れるのも大概にしなさい!!」
フーッフーッと、声を荒げ怒鳴りつける
アテネ。その紅目には影明を本気で憂う
水気を宿していた。
退魔士の長として、無用な犠牲を出したく
ないという思いを如実に表していた。
しかし、影明は『別に無謀なのでは無い。』
影明「あっはは!心配なのは分かりますよ!
でもあいつらは俺に夢中ですg」ゴン
影明が何かを言おうとするその前に、
すぐるによって軽く腹を殴られる事によって
遮られた。
そして、そのまま優が宣言する。
優「悪いですけど、僕も影明に賛成です。
正直学園長の言う通りに逃げたとして、
とても逃げ切れるとは思えないです。
バルムスってのは影明に怨念をたぎらせる
ほどに憎んでいるのでしょう?
憎しみの執念ってのは凄まじいものです。
それが妖魔という化け物となればなおさら
逃げ切れるとは思えない。
そして、ここを乗っ取られてしまえば、
それこそお終いじゃないでしょうか。
ここには退魔の最先端技術が組み込まれた
施設が詰まっているそうじゃないですか。
そんなところを明け渡したら、ますます
奴らに対抗する術が無くなってしまう。
だからこそ、命をかけてでもここを死守
するべきだと僕は考えますけどね」
アテネ「紅藤くん…!?あなたまで…!」
賛同の追撃は止まらない。
瞬「……申し訳ないですが、俺も学園長
の言葉は聞けません。影明がやるってなら
俺だってやらせてもらいます。
俺だって綾風さんたちを見捨てられない。
優の言う通り、逃げても無駄で、どうせ
死ぬのなら…
僅かな可能性にかけて戦って死んだ方が
マシです」
文香「……悪いね。シュンくんがそう言う
ならあたしもここに残らせてもらうから。
学園長さんの言う事であろうと関係ない
から」
勝平「……マジか。まっ、なら俺も付き
合わせてもらうっかなぁ〜!」
アテネ「あ、あなたたち…!?冷静になって
ください!! 高校生にどうにかなる相手
だと本気で思っているんですか!?
無駄死にをするような真似はやめて
ください!!」
アテネは悲鳴のように影明たちの意志に
静止をかけるが、影明たちの意志は固い。
影明「無駄ですってば!学園長!
俺たち3人ってば小学や中学でも有名な
悪ガキ3トリオだったんですからね!
それはもう色んな事件起こしてきました
から! ヤクザの事務所にも突撃した事
ありますし!
更には瞬や天宮も相当な悪ガキです!
だから学園長がどんなに制止しても
俺たちは止まりませんよ!
それに、学園長はじきに動けなくなっ
ちゃうんでしょ〜?
じゃあどの道学園長には俺たちを止める
ことは出来ませんね!」
アテネ「………」
アテネは沈痛な表情を浮かべる。
もう何を言っても無駄だと悟ったからだ。
アテネ「この……大馬鹿者たちが!!
もうどうなっても知りません!
私には責任を…取れませんからね!」
目尻に涙を浮かべ、アテネはそっぽを向いて
しまった。
優「さて、こうしてはいられない。まずは
【ミユキさん、実は怪しいって思っている
人間がいるんだ。その人間を調べてきて
欲しい】」
優はおもむろにミユキに言葉を投げかけた。
その言葉にショックで俯いていたミユキも
反応する。
ミユキ「え?……いえ、はい。承知いたし
ました。こうなれば、私も緑川さんたちに
お付き合いいたします」
ミユキは一転して決意のこめた目つきへと
変える。
頼みの綱である学園には妖魔と戦えるだけの
戦力がない。かと言って綾風本家に頼る訳
にはいかない、絶望的な状況に違いはないが
影明たちの士気を見て、そこに僅かながらの
希望を見出したのだ。
故にミユキの決意とはやるだけやって、ダメ
ならばその時は潔く諦める、という覚悟で
あった。
優「ありがとう。ちなみに調べてきて欲しい
のは【木原貞雄】っていう用務員。
昨日の会話では今日は出勤だったらしいのに
今日来ていない。
まぁ、たまたまかもしれないけど、この
タイミングで見過ごせない。
まずはこの人を調べてきてくれないかい?」
ミユキ「分かりました。綾風の名にかけて、
必ずや敵の情報を少しでも掴んでみせます。
それでは、皆さんもお気をつけて」
そう言うと、ミユキは足早に扉へと向かい、
今の部屋から出て行った。
そして、扉が閉まると同時に優は抜き足で
素早く音を立てないように扉に向かい、
扉に対して耳を当てる。
瞬「……?何してるんだ?」
瞬はもちろん突然の奇怪な優の動きに
首を傾げる。
しばらくして、そっと扉から耳を離した。
優「……うん、行ったようだね。じゃあ、
そろそろぶっちゃけた話をしよっかね」
振り返った優は先ほどの緊迫した顔とは
打って変わったにこやかな笑顔であった。
この緊迫した空気の中ではあまりにも
不釣り合いな顔に瞬は大きく戸惑う。
それはもちろん文香もであった。
しかし、影明と勝平は違う。
影明の顔は先ほどと変わらぬ自信に
満ちた表情をしており、勝平は待って
ました!とばかりに悪っぽく顔をにやけ
させる。
勝平「……そうだよな。何の勝算も無いのに
優、おめえがあんな事言い出すわけねー
もんな」
影明「しっかし、何でまた本当の事を言わずに
はぐらかしたんだよ?」
優「そりゃ、あのミユキちゃんって子が
信用出来ないからに決まってるでしょ?
だっからてっきとうな事を言ってこっから
出て行ってもらったんじゃないかぁ♪」
3人はまるで打ち合わせをしたかの
ように笑い合う。
そんな3人の様子に瞬、文香、ショウ、そして
アテネまでもが激しく困惑する。
瞬「本当の事…?……信用できない……?
ご、ごめん。何のこと言ってるのかさっぱりだ」
瞬は困惑のままに優に質問を投げかける。
優「ん?あー。まぁ、ミユキちゃんに関しては
言葉通りだけど、本当の事っていうのは……
一か八かで戦おうとしてるんじゃ無いって事。
むしろ、間違いなく奴らに勝てるとまで
僕は思ってる」
瞬「…え!?」
文香「うそ」
ショウ「そ、そうなんですか!?」
アテネ「な、何を言ってるんですか!?
私、本当に紅藤くんが何を言ってる
のか理解出来ないですよ!?」
普段冷静で謙虚な優のあまりの自信
に溢れる言葉に瞬は疎か、文香やショウ
も度肝を抜かれる。
特にアテネはあまりの言葉の自信に、
意味すらも分からない様子であった。
優「……学園長は言いましたね?
奴らには、普通の銃火器など効かないと」
アテネ「え、えぇ。そうです。だからこそ
妖魔には武装した軍隊ですら通用しない。
退魔士でしか対抗出来ないんです!」
アテネは先ほどの怒りがまだ残っている
のか、かなり興奮気味に話す。
優「ふふ……学園長は些か【只の人】を
無意識ながらも見下していませんかね?」
アテネ「……はい?」
優「退魔士こそが、裏の世界の頂点だと。
妖魔を唯一倒せるからこそ、退魔士
はこの世界で一番世界の事について知って
いるものと勘違いしていませんかね?」
アテネ「……まぁ、否定はしません。
しかし、だからと言って私たちは退魔の
力を持たない人間より優れているとは思って
いませんよ。
むしろ、特別な力を持っているからこそ
一般の人間たちを守るのが退魔士の責務と
思っています」
アテネは全てでは無いが、概ね肯定を意思を
示した。
そんなにアテネに優はポツリと一言話す。
優「【無知とは罪】だ」
アテネ「……え?」
優が突拍子もない事を突然言い出したため
アテネは間の抜けた疑問の言葉をつい
口にしてしまう。
それに対して、優はその言葉を説明する
かのようにしゃべりだした。
優「常識ってものは変わるって事です。
自らが優れた者であると、良し悪しや
驕る驕らず関係なく、それを
頭の片隅に持っているだけで足元を
掬われるんですよ。この世界は。
自分は人類の守護者だなどと、世界の
理でも識っているつもりでいるならば
なおさらです。
確かにアテネ学園長を初めとした
退魔士たちは誰よりも世界の裏側に
ついて知っているのでしょう。
だけど【裏側】があるように、世界
にも【表側】がある。
裏側だけがこの世の全てと思っている
ならば、そいつは愚か者ですよ。
事実としてそちらの世界の事柄の方が
世界にとっては重要で僕らの世界の
事柄は世界にとって取るに足らない
どうでもいい知識なのかもしれない。
しかし、そんな【どうでもいいような情報】で
戦いは命運を分けてしまうものなのです。
だから、どのような情報であれ、戦場では
【知らず】は罪、そして【知ろうとせず】は
それ以上の大罪って意味です」
アテネ「………」
アテネは思わず、目を見張った。
この紅藤優の言葉は適当ではない、
奇妙な説得力を感じたからだ。
まるで、何十年も戦い続けてきた歴戦の兵士
のように感じてしまったのだ。
文香と瞬、ショウも同じだ。
同じ高校生とは思えぬ優の妙な迫力に
生唾を飲み込んで、聞き入ることしか
出来ないでいる。
アテネ「……それでは、何故ミユキさんにも
お話ししなかったのでしょうか?」
そんな不思議な迫力にぐうの音も出なくなった
アテネは代わりとばかりに出て行ったミユキ
の事を質問した。
優「さっきも言ったように、あの子は僕は
信用するに足りないと考えているからです。
僕が霊核云々でミユキさんに尋ねた時、彼女
ちょっと言葉を詰まらせましたよね?
その後式神でしたっけ?…を、出して伝達
してくれた旨を伝えてくれたわけですが、
その事で何故言葉を詰まらせるのでしょうか?
別に説明がややこしい訳じゃない。
【○○○が伝えてくれたんです】って一言
言うだけで十分伝わる簡単な説明です。
だから、そうではない【要素】があったという
ことです。
それが何なのかまでは分からないですが、
いえ、だからこそ考え得る【最悪】なパターンで
行動させてもらっただけの事です」
瞬「……【最悪】なパターン?」
瞬は優の言葉を訝しげに問い返してきた。
しかし、その言葉の意味を優が答える
前に、アテネが正答を言葉にする。
アテネ「……なるほど、ミユキさんを
【妖魔の手先】と疑ってるのですね」
アテネの言葉に優は頷いた。
瞬「…え!?」
優「当然ですね。いや、別に言葉を
少し濁したからって、彼女が【クロ】と
断言してるわけではないのですがね。
しかし、その可能性がないわけではない。
疑わしきは排除…とまではいきませんが
遠ざけるぐらいのことはね。
これから話す『肝心な情報』を聞かせない
程度の事はしますよ」
アテネ「……」ふむ
アテネはコクリと頷く。
アテネにはミユキが敵ではない事は勿論
分かっている。
しかし、その事を説明するには【ミユキの
本当の素性】について話さなければならない。
ミユキの本当の【役目】や【誕生】の事など、
それは綾風家の問題であり、最高機密と言っても
過言ではない事柄だからだ。
ならば、【名誉】よりも【秘匿】を取った方が
ミユキとしても、そしてユキにも良いと結論を
出したのだ。
優「だから、心にもない事を言って【戦う意思】
ってのも示したんです。
【命をかけてでも死守すべき】?
ハハッ!……バカも休み休み言えってんですよ。
学園長の言う通り、勝てない戦いをするなど
愚か者の骨頂ですよ!
【学園を占領されるのがまずい】?
それはそうだけど、勝てもしないのに戦っても
無駄死にして占領されるだけでしょう!
【孫子】は言った。算多きは勝ち、算少なきは
勝たずと
故に、勝算が0の状態では勝つ事など不可能
と結論している。
でも、あそこで逃げるって言えば仮に彼女が
敵だったとしたら、その事が妖魔に伝わり、
【今確定している情報が変わる】かもしれない。
そうなればこちらの勝算が狂う。
ま、あくまでミユキちゃんが敵ってのは
可能性の話なんだけどね」
アテネ「……なるほど」
アテネは納得したように強く頷いた。
ならばあの時の無謀としか思えない影明たちの
発言も道理には適っている。
だが、肝心なところが分からない。
普通の人間にはどうやっても勝てない妖魔に
【確実に勝てるとまで豪語出来る勝算】とは
何なのか、だ。
勝平「ま、俺は疑いすぎじゃねって思うけどな〜」
影明「そーそー。学園長が戦えないって聞いた時の
ミユキちゃんの悲痛な顔は流石に演技出来ない
だろって思うしなぁ」
瞬「いくらなんでも酷くないか…?」
3人は口々に不満の声を上げる。
優「僕は演技出来ないなんて思わない。
怪しければ排する。理由も理屈も無いのに
そう簡単には信じないね」
それを優はバッサリと言い放った。
ショウ「そ、そんなぁ……」
文香「うーわ……性格悪っ」
あまりの言い草にショウは目を潤ませて
優の言葉に辛辣そうに肩を震わせる。
瞬も非難を多分に含んだ目でジトっと
見つめている。
ヤンチャな文香も流石に引いてしまう
ほどだ。
文香の言葉になんとーー
優「ぷっ…くすくす!性格悪っかぁ〜」
とても奇妙な事に、優はくすくすと笑い
始めた。
その言葉がおかしいというような様子で
文香「……は?」
ショウ「?……!?」
瞬「………!?!?」
【知らない】3人は戸惑いを隠せない。
無理もない。当然であろう。
性格悪い、という言葉のどこにおかしさが
あるというのか。
優の心ない言葉に対して放った、性格悪い
という言葉は的を射ているはずだ。
故に、状況におかしさはない。
それに対する性格が悪いという表現は
まさにぴったりという感想が最も適切
だというほどに、おかしさなどどこにも
存在しないはずなのだ。
だというのに優は笑う。
紅藤優は"おかしいな"、と笑う。
おかしくくすくすと笑う紅藤優に逆に
寒気を覚えるほど、奇妙に満ちて3人は
絶句している。
そうだ、状況にもそれに対する言葉にも
おかしさなどはない。
だからこそ、おかしいのは『紅藤優』なのだ。
……いや、訂正するべきかもしれない。
『紅藤優』は【
言葉にも訂正するべきかもしれない。
【厳密には優の言葉に対して放った言葉は
適切だが】
勝平「……性格、悪いなぁ……。こいつを
知ったら『そんな言葉、生温い』って
多分思えるぜ?」
瞬「……?」
文香「何それ?どういう意味……?」
【『紅藤優』自身を指す言葉としては
『足りない』のだと】
【知らない】、3人は確かに【知らない】のだ。
【知っている】ならば今の影明と勝平のように
苦笑いをしているはずだ。
だからこそ、確かに【知らないは罪】と言える
かもしれない。
何故かと?そんなものは決まっている。
【負けること】とは【終わり】を意味するのだ。
試合だとか、ゲームだとかではない。
【本当の争かいで負けること】とは【全てを
失う】という事に直結する【大罪】に違いない。
影明「ぶっちゃけさ、この中で誰が一番やばい
って思う? 強さとか色々ひっくるめてさ」
瞬「……?そりゃ一番やばいって思うのは
影明じゃないか?次点でフミちゃんかと
思うけど」
影明は予想通りの回答に鼻で笑ってしまう。
影明「だろーな。バルムスも、妖魔だって
そう思ってるだろうなあ」
勝平「俺はな?影明。ぶっちゃけあの時の
ヒカルちゃん、セイラちゃん、ユキちゃんを
見た上でだ。この中だけでなくヒカルちゃん
たち3人を含めてもなお、【優が一番やばい、
そんでそれ以上にえげつねえ】って思うぜ」
瞬「……は?いや本気で意味わからん……」
影明「言葉通りだよ。確かに信じにくい
だろうけどさ。
……『紅藤優』はかつて黒い悪魔、それを
略すのと、『紅藤優』自身を掛けて『
と呼ばれてたんだ。
……『黒悪』に比べれば俺なんてかわいい
もんだぜ。
だからこそ、俺を憎んで俺に執着するであろう
奴らは【命取り】だ」
優「そうだね。……孫子はこう言った。
勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、
敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求むと。
要は【勝敗は戦う前に既に決定している】
という事だ。
奴らは『今の表の戦場』を【知らない】。
そして、『
戦う前から【勝った】と大いに侮ってるだろう。
瞬たちにも見せてあげるよ。『黒悪』を。
『黒悪』を侮った者が『どうなるか』を」
『2つの事柄』を【知らない】妖魔は負ける
だろう。
そう、【知らない】から妖魔は負けるのだ。
争かいに負ければ全てを失う。【大罪】だ。
ならば【知らない】が負けを確定させて
いるのだから、【無知は罪】という言葉に
間違ってるところなどどこにもないはずだーーーー
6ヶ月?もかかってしまい申し訳ありません。
陵辱シーンはユキちゃんしかはっきりと書けません
でした。というか、そんなに深くも書けてませんね…
やっぱり陵辱シーンは苦手だ… 書いてて可哀想に
なってきますしね。男ならいくら苦しもうが
どうでも良いのですけれど。
次回か次々回ぐらいでついに作者御用達万能キャラ
かつ推しキャラの紅藤くんが活躍します!
「こいつ本当に主人公の味方サイドか……?」
って思わせるほどにえっぐい奴なので閲覧注意かも…
予想外:
いや、セイラさんのところで黒幕さん出す気
なかったんですよ!!
もっと温めておくつもりだったんですよ!
決してどうしても出したくなったからという
わけではないです!
ただ、セイラさんの設定的にと黒幕さんの
『今の状況』的に慎重な黒幕さんが『アレ』を
見過ごすわけがないと思ってしまって……
気づけば黒幕さんが勝手にでしゃばって来て
ました……