※この作品はR-18です。

Beliefers   作:とある渓流にいるかわうそ

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いつになったらbeliefersの話の本題に入れるんだろ……




5話 過去の解決

「……というわけなんだ。だから、俺の言ったこと

そしてやった事は勿論許される事じゃないと思ってる。

だけど、俺はフミちゃんと仲直りしたいと思ってるんだ。

身勝手だと分かってるけど、どうか力を貸してほしい!」

 

全てを話し終えた神崎瞬は紅藤優に懇願する

 

それに対し、優は一つ質問した。

 

優「ふんふん… ちなみにやった事ってのは?」

 

瞬「え?そんなの…勝手にいなくなってしまった

事だ。急に引っ越しが決まったからさ。

フミちゃんからしたら俺がいきなり消えたような

ものだから、それも怒ってると思うんだ」

 

優「あ〜、なるほどね〜。う〜ん……」

 

そうして、優は頭を悩ませる。

しかし、その悩み方はどうしたら良いか、と言うより

どう言おうか、と考えてる風に瞬には見えた

 

やがて優は口を開く。

 

優「率直に言うとさ、僕には瞬が悪いようには

思えない。というか、何で瞬が悪いのか分からない。

そりゃ励まし方が悪かったとかってあるかも

しれないけど励ましてるんだから"善意"で瞬は

やったわけじゃない?

そこにそんなに罪悪感を感じる要素なんて

あるように思えない」

 

瞬は驚いた。優は自分が罪があると思っていた事を

あっけからんと[悪くない]と否定してきたのだ。

これには瞬も抗議の声をあげる

 

瞬「いやいや!確かに俺は善意で励ましたんだけど!

その結果フミちゃんが傷ついたんだから「傷ついた?

傷ついてたの間違いでしょ」」

 

しかし、優は瞬の抗議に更に抗議するように割って入る

 

優「単純に、お兄さんが死んで自分が辛いから

当たりやすい瞬に当たったってだけの話じゃない?

無理もないよ。その時はまだ小学3年生だもん。

大人だってそんな事が起きたら耐えられない人が

いたっておかしくないぐらいなのに、まだ小学3年

の子供にそんな悲劇、耐えられるわけがない。

誰かに八つ当たりしたってしょうがないでしょ?」

 

優「それに励まし方が悪いって言うのも僕には

しょうがないと思うけどね。その時は瞬だって

小学3年生だったんだもん。

何も声をかけずそっとした方が良かったと考えたり

もっと気の利いた事を言えるような歳じゃない。

そんな事、大人でも難しいのにその時の瞬に

慰め方を考えろなんて土台無理な話だよ。

 

だから、善意で必死に励まそうと頑張った瞬に

悪気を感じる必要はどこにも無いよ」

 

瞬「い、いや!でも」

 

瞬がまた抗議しようとするとそれを見透かしたか

のように優は言葉を紡ぐ

 

優「瞬は何でそんなに自分が悪いと思うの?

"妹"がその後すぐに死んだせい?」

 

瞬はすぐさまその問いに肯定しようとした。

しかし出ない。その肯定の言葉が。

そして言葉と共に思考そのものが蜘蛛の糸で

がんじがらめにされたかのように動く事をやめる

 

硬直した瞬を見て、優はため息を吐いて新たな

言葉を吐き出す

 

優「妹が死んだのは瞬のせいじゃない。

[学校]のせいだ。いじめられてる妹を

見て見ぬ振りをした[学校]のせいなんだ。

そして当時の親戚のせいでもある。

そんなクソッたれな親戚なら妹の

いじめに興味なんて示さないだろうから

瞬にも伝えたりなんかしないだろうからね」

 

瞬「そ、そうだ!だから俺が守らないといけ」

 

優「それは驕ってない?」

 

瞬は呆気に取られた。いきなり驕ってないかと

言われたからである。

まさに予想もしていない所からボールが飛んできて

直撃したかのようだ

 

優「いじめってね、周囲の人間が気づくのは難しいんだよ

テレビに出るいじめのニュースだって、いじめられた子が

自殺してから、いじめが発覚してるでしょ?

その親だって自殺するまで自分の子供がいじめられてるのを

気づかないんだから。

 

だからこその先生がいるのに、奴らはいじめの事実を隠蔽

したんだ。

だから悪いのは学校と妹のクラスを担任していた先生だ」

 

優「だから、妹が自殺したのは瞬のせいじゃない。

瞬がその文香ちゃんと遊んでたのが原因なんかじゃない。

例え遊ばずに瞬が妹を見てたとしても、気づかなかっ

た可能性の方が大きいんだから」

 

瞬「な、何でそんな事言えるんだ…?」

 

優「小学1年生でも精神が未熟とは言え、悪知恵は

働くもんなのさ。どんなに幼いとは言え

"人間"である事には変わりないんだから。

幼くとも悪事を隠す程度の知恵は持っている。

 

ずっと見てたとしても、瞬が見きれないところで

妹をいじめる。

"人間"ってのは悪いと思う事を狡猾に隠そうとする

本能があるんだ。」

 

瞬「………」

 

優「だから、そんな人間たちの悪意にたった9歳

ぽっちのガキが立ち向かって守る義務があると

思うなんて思い上がってたんだって事」

 

優「だから瞬は悪くなんかないよ。あえて悪いと

言うとしたらーー」

 

優は瞬に顔を向け、真っ直ぐに言葉を放った

 

優「瞬が、周りの人間に頼らなかった事だ。

妹も、瞬や周りの人間に救いを求めなかった事だ。

 

その時には、文香ちゃんや文香ちゃんの両親、

お兄さんだっていたんだから。

 

頼って良いんだよ。辛かったら信頼出来る人に。

迷惑かけたくないからって1人で背負なくて

良いんだよ。

 

今、[瞬が僕を頼ってくれているみたいに]」

 

そう言い、優は瞬に優しい笑顔を向ける。

 

神崎瞬はーーその言葉であの時の自分が

救われたような気がした

 

妹を失い、自責の念に駆られていた幼い自分が

救われたような気がしたのだ。

 

こうして神崎瞬はかなり遅れて救済されたのだ。

もっと早く誰かがこんな事を言ってくれたら

違う未来があったのかもしれない

 

 

全く『世界』とは上手く出来ていないものであるーー

 

 

優「ま、話が脱線したのを元に戻して

ぶっちゃけ言うけどさ、どう考えても文香ちゃんの

方が悪いと思うんだよね」

 

神崎瞬はその言葉にもう抗議の声を返す事はない。

正気に戻った今の彼には、どちらの方が非があった

のか、そのぐらいは分かる

 

優「その様子だと、もう僕が言った意味はもう分かる

みたいだね。まぁ、普通に考えたらそうなるんだけど。

 

文香ちゃんの言った言葉はいくら小学3年生だった

とは言え、"言っちゃいけない言葉"だ

人の両親が死んだのは当然のような言葉はね。

特に瞬の事情を知っていたなら尚更だよ。

そんな事ぐらい、小学3年生にもなっていたなら

分からなきゃいけない事だ。

 

……けど、まぁさっきも言った通り、その時は

お兄さんが死んだから、そんな判断もつかないぐらい

気が沈んでいただけなんだと思う。

だから、正直瞬が気にしてた励ましの言葉関連は

おそらく大した事のないように思うんだ。

 

一応聞いておくけど、文香ちゃんって普段から超自己中

っていうような子ではなかったんだよね?」

 

瞬「あ、あぁ!フミちゃんはとっても優しかった。

そんな性格の女の子じゃない。」

 

それを聞き、だよね、と言ったような反応の後

優は議題を終わりへと導き始める

 

優「じゃあおそらくだけど、瞬がいきなりいなく

なった事の方がこたえたんじゃないかな?

もしかしたら瞬の妹の死も知っちゃったのかも

 

何とかしないといけないのは文香ちゃんの方かもね」

 

瞬「え? それってどういう事なんだ?」

 

優「文香ちゃんも瞬に対して強い罪悪感を感じてる

かもしれないって事」

 

その時、優の携帯が鳴り響く

 

 

 

---------

----

ーー

 

 

 

時は遡り、神崎瞬が天宮文香と別れた1時間後ーーー

 

「ひっく……えぐっ……」

 

狭い路地裏に女の子の鳴き声が囁く

 

消え入りそうな声でまるで空耳かと

疑うほどにか細い声で女の子は泣いている

 

天宮文香「私って……何でいつもこうなのかなぁ……」

その少女の名は天宮文香。瞬の幼馴染の女の子である

 

文香「どうして……謝る事も出来ないんだろう……」

 

文香「何で……あんなひどい事言っちゃうんだろ……

シュン君は何も悪くないのに……

何で私は……昔も今もこうなのかなぁ……」

 

そして、女の子はまた泣き始める

 

 

 

 

 

 

「どーしたん?」

 

 

 

 

突如、隣で言葉をかけられた少女は

驚いて声のした方に顔を向ける

 

そこにいたのは

少年 緑川影明。

 

文香(こ、こいつ…!?)

 

文香はこの少年を知っていた。

無論、入学式にあんな派手な登場を果たした

浮世離れしているほどの美男子の男子生徒、

印象に残らない方がおかしい。

 

しかし、そうではないのだ。

天宮文香にとって強く印象づいてるのは

その名前ーー緑川影明という名前だ

 

ーこいつ、シュン君がよく話してた、

あの幼馴染の男の子だ!ー

 

その認識が生じるほぼ同時に『鋼鉄』のような

鋭い『蹴り』を緑川影明に浴びせる

 

しかし、緑川影明は予測していたように

軽やかに避けてしまう。

 

文香(かわした!?私の『蹴り』を!?)

 

天宮文香は驚愕する。

 

その驚きは当然といえるのだが、理由はまた後日

語ることとしよう。

 

影明「ったく、あぶねえな。何か暴力してくる

だろうなって思ってたからかわせたけど。

 

当たったら大怪我するとこだったじゃねえかよ」

 

文香「……あんた、さっきの聞いてた?」

 

影明「いんや、声が小さくて聞こえなかったよ。

啜り泣く声が聞こえたからここに来たんだよ」

 

文香「……そう、ならいい」

 

天宮文香はここを立ち去ろうとする

 

しかし、次の緑川影明の言葉で立ち去ろうとする

足を止めざるを得なくなった

 

影明「けど、お前が瞬の幼馴染の女の子だろうって

事は推察出来たぜ」

 

文香「…何でそんな事言えるわけ?」

 

影明「最初は勘。そしてお前の顔がちょっと

引くぐらいびっくりしていて、そのまま本気の

蹴りを放ってきたところで確信出来た」

 

文香「……チッ」

 

影明「しっかし〜?瞬の奴も最低だよなぁ〜。

幼馴染の女の子を泣かせてさ?

こりゃあいつの悪逆ぶりを皆に言いふらす

必要があるなぁ〜」

 

文香「っ!? や、やめて!!シュン君は

何も悪くない!!悪いのは全部私!!」

 

咄嗟に天宮文香は叫んだ。

そして、ハッと顔を強ばらせる。

ーー緑川影明のニヤニヤしながらこちらを

見る顔を見てだ

 

ー…はめられたー

 

影明「何だ何だ〜?瞬は悪くないってさ?

詳しく影明さん聞きたいな〜?」

 

文香「……言うわけないじゃん」

 

影明「あっそ。じゃあやっぱり神崎瞬は

今も幼馴染の女の子を泣かせるぐらい

過去鬼畜の所業をしてましたー!

って言うしかないなぁ〜?」

 

文香「……この外道が」

 

文香が影明を敵意を込めて睨む。

影明はそんな文香にコーラを手渡し、言った。

 

影明「いいから話してみろって。瞬の話とお前の

反応を察するに喧嘩してんだろ?そしてお前は仲直り

したいんじゃないの?」

 

文香「…そりゃ……したいけど……

私にそんな事思う権利なんて……」

 

影明「あーあー、しんみりしてんだろ?だから話せって。

誰かに話せば楽になれるかもしれねえよ?」

 

天宮文香は不思議な感覚に陥っていた。

何故か目の前の少年、緑川影明になら話しても

いいかな、と思ってしまう。

 

文香「……シュン君に話さないって約束出来る?」

 

影明「OKOK」

 

文香「………」

 

天宮文香はすぅと深呼吸するように息を吸い、

ゆっくりと過去を、天宮文香自身の顛末を

話し始めた。

 

 

 

---------

----ー

ーー

 

 

〜6年前、神崎瞬が引っ越した後〜

 

幼い天宮文香は走る。

大好きな彼の元へ走る。

 

文香(私……シュン君にひどい事言っちゃった…)

 

天宮文香の目には涙が浮かんでいる。

 

兄の死から1週間、ようやく落ち着いた文香は

兄が死んだ時、大好きな神崎瞬にとんでもない事を

言ってしまったのを思い出した。

幼さ故に、心に思ってない事を口走ってしまった。

 

ーシュン君の両親が死んだのはシュン君のせいなんて

全然思ってなんかいないー

 

ーシュン君が非情だなんて全然思ってないー

 

ーシュン君の妹、恵美ちゃんがシュン君の

せいで死ぬなんて全然思ってないー

 

天宮文香の心は後悔と不安に苛まれていた

怒っているのは間違いない。

実際は神崎瞬はこの件で怒ってなどはいなかったが、

天宮文香の心はそう確信してならなかった。

人の両親の侮辱にも等しい事を言い放ってしまったのだ。

怒ってないと思うなどと、その方が考えられないだろう

 

ーもし…もし……許してくれなかったらどうしようー

 

さっきからずっとこの言葉が頭と心を支配する。

恐怖と不安が天宮文香の全てを覆わんとする。

 

ーシュン君にまでいなくなられちゃったら

私…私……!ー

 

そうなってしまえば、天宮文香の決定的な何かが

崩れてしまうだろう。

だからこそ彼女は謝ればきっと許してくれると

思うしかないのだ。

か細い希望に縋り付くしかないのだ

 

 

そして、彼女の希望は消え失せ、絶望しか存在しない

空間へと彼女はたどり着いた

 

 

 

親戚「いや〜、先生!こっちとしても助かりましたよ〜

あのクソガキをこの家から追い出せただけでなく、

金までもらえるとは!この金でこの家もリフォームして、

もっと住みやすくなりそうです!

 

あぁ、いえいえ!こっちとしては本当に助かってるんです

ってば!クソガキどもの妹が死んでくれて!

生きてる時は本当に鬱陶しくて仕方のねえクソガキども

でしたが、今こうして[家のリフォーム代]になってくれた

んですから!

 

えぇ、えぇ、勿論ですよ!クソガキが死んだ理由を

そちらに追求しない、黙ってるだけで500万も金を

もらえるんですからね!

 

これこそ終わりよければ全て良し、って奴ですな!」

 

 

 

 

天宮文香の思考が止まる。

頭の中は真っ白に染まりゆく。

 

ーこいつは、いま、こいつは何を言ってたんだ?ー

 

 

 

親戚「何だこのガキ!!」

 

その声で天宮文香の思考は再び色づいていく。

気付くとそのクソ野郎の脚に飛び掛かっていた。

思考が戻ったと同時に天宮文香は声そのものが

焼き焦げるのではないかと思わせるほどの

憤怒の激情の絶叫をあげる

 

文香「さっきの電話は何!?

恵美ちゃんを殺したの!?シュン君に何かしたの!?

答えて!!答えろ!!答え次第じゃ絶対あなたを

許さない!!」

 

親戚「あぁ?こいつ瞬のクソガキと仲良かった

女のクソガキじゃねえか

 

別に何もしてねーよ。あのガキの妹が学校のいじめで

自殺して、小学校から隠蔽工作のため、この事を

明るみに出さねえことに了承しただけだ。

小学校側からの多額の金と引き換えにな

 

全く笑いが止まらねえぜ!邪魔でしかなかったクソガキ

共の妹が金に変わって死んでくれて、瞬の奴も隠蔽工作の

一環でどっか遠いところに引っ越してくれたからな!

 

ひとつだけ惜しいことと言えばあのクソガキも死ななかった

事か!あいつも死ねば俺の金に変わってくれてたってのによ!

ぎゃはははははは!」

 

ー……こいつは人間なの?ー

 

ー……こんな奴が、本当にシュン君とほんの微量とはいえ

同じ血が通っている親族だとでも言うの?ー

 

ー……違うー

 

ーこんなクズと……あんなに優しいシュン君が同じなはずが

ない!!ー

 

文香「死ね!死ね!!呪われろ!!地獄に落ちろぉ!!

お前みたいなクズ!お前みたいなクズなんか!

 

返して!恵美ちゃんを返して!

シュン君を返せ!返せええええええええ!!!」

 

天宮文香は目の前のクズに憎悪となって呪詛を

吐き出す。

その様はまるで地獄からやって来た鬼のようだ。

 

親戚「うるせえ!俺のせいじゃねえつってんだろ!

クソガキの妹が自殺したのは!!

 

大体瞬の奴がどっか行ったのはお前のせいでも

あるんだぜ?」

 

文香「……え?」

 

その言葉に天宮文香は膠着した。

先程の憎悪は嘘みたいに霧散し、

虚無だけが文香の心に残る

 

親戚「あのクソガキ、妹が自殺した日、何だか

落ち込んでたぜ?

そんで、妹の自殺を知った時、ずっと「俺のせいだ」

と泣き喚いていたぜ?

それはもう壊れたラジカセのようにな?

 

ま、だからあいつの引っ越しもスムーズにいったんだがよ。

あいつに引っ越しの話したら二つ返事で頷きやがったぜ?

 

「フミちゃんの言う通り、俺は非情で疫病神だから

フミちゃんをこれ以上傷つけたくないから

その話、受けます」ってよ!

 

てめえ何か瞬のクソガキに言ったんだろ?

でなきゃあ「フミちゃんごめんね」なんて

言葉出ねえもんな!

狂ったように言ってたぜ?あのガキは笑」

 

文香「あ…ああぁぁ……ああぁぁぁぁ……」

 

天宮文香の心にもう一つ、絶望が覆いかぶさる

 

一つはこの家にやって来て、親戚の話を聞いた時だ

その話で、妹の恵美は死に、大好きな神崎瞬も

もういない事を知ったからだ。

 

その絶望は目の前のクズへの憤怒と憎悪で

上塗りする事によって何とか心を誤魔化す

事が出来た。

 

しかし、今突きつけられた2つ目の絶望は

どうしようもなかった。

あの時、自分が言った心無い言葉で神崎瞬

がいなくなってしまったという事実は

どうする事も出来ない。

異議を唱える事など出来ない。

 

ーーだってその事実はどこにも訂正する余地

など微塵もない本当なのだからー

 

憤怒と憎悪のメッキは簡単に剥がれ落ち、

下塗りの絶望がまた襲いくる。

 

2つの絶望の黒は合わさり

 

ー私のせいで全て失ったんだー

 

漆黒の絶望へと変貌する。

 

"自業自得"

 

この絶望の前では天宮文香に救いなど

差し伸べられるはずがない

 

親戚「ま、分かったらさっさと帰りな!

あーあー、さっき電話で喋ってた事、

誰かに言いたかったら言ってもいいぜ?

 

他人のガキのお前の言うことなんざ

誰も[信用]しねえだろうがな笑」

 

そう言葉を残し、笑いながら親戚は

家の中へと戻っていった。

 

文香「ごめんなさい……ごめんなさい……

ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

後には、絶望に魅入られて心が漆黒色になった

天宮文香の泣き崩れる姿しか残っていないーーー

 

 

 

 

その後、天宮文香は周りの大人達に必死に

神崎瞬の妹の死の真実を訴えた。

 

親に、友達に、警察にも言った。

 

しかし、誰も小学3年生の少女の言葉など

信用はしなかった。

 

当たり前だ。

 

誰でもない神崎瞬達、兄妹の親代わりであった

親戚がその真実を否定しているのだから。

 

小学校もいじめの真実を認めるはずがない

 

いじめの当事者達も事実を認めるわけがない

 

結果、真実は虚実に、虚実は真実となった。

 

 

ー……クソだ…大人なんて全員クソだ!ー

 

 

その結末は天宮文香の心を荒ませた。

 

こうして、神崎瞬が天宮文香の元を去った後

天宮文香は荒れに荒れた。

 

中学に上がる頃には綺麗だったサラサラした

黒の髪は手入れが施されていないボサボサな

茶髪となり

暴力の概念すら知らないような清楚な

お嬢様は毎日喧嘩に明け暮れる筋金入りの

不良へと変貌を遂げてしまっていた。

 

ついに文香の親達も手がつけられなくなる。

それでも両親は見捨てられず、日本有数の名家である

コネを最大に活用して聖マリア学園へと天宮文香を

入学させたのだ。

それはまさに両親の最後の更生の希望であった。

 

 

こうして、天宮文香は聖マリア学園の入学式、

緑川影明の口上により大好きだった幼馴染と

運命的な再会を果たしたのだった。

 

 

ーー

ーーーーー

---------ー

 

 

 

文香「でも……私なんて今さら許してくれる

はずがない……」

 

全てを話し終えた天宮文香は膝に顔をうずめ

泣き始める。

 

文香「シュン君が話しかけてくれた時……

本当は飛び上がるぐらい嬉しかったの……

 

でも見てよ?今の私の格好……

あの時シュン君の幼馴染だったお嬢様の

天宮文香はもういない……

 

今の私は自分の犯した罪に耐えきれず

周りに当たり散らした結果、誰からも

疎まれる手のつけられない不良……

 

それにシュン君にあの時の事責められる

って思ってしまったら拒絶しちゃった…」

 

そうして天宮文香は押し入れにしまって

いた本心を吐露していく

 

文香「シュン君に……ちゃんとごめんなさい

って、謝りたい……

 

でも、シュン君に嫌われたくないよぉ……

シュン君に今の私を見て欲しくないよぉ……

シュン君に拒絶されたくないよぉ……

 

シュン君にまで見捨てられちゃったら……

私……私……!」

 

その姿には他を威圧する札付きの不良の

面影はどこにもない。

指1本だけで折れてしまいそうなか細い

哀れな少女の姿だ。

 

そんな、そんな弱々しい彼女に対して

指1本で折れそうな棒に対して

彼、緑川影明は

「最低のクズじゃん、お前」

情け無用のハンマーで容赦なく叩きに出る。  

 

文香「う…ううぅ……ううううぅぅぅぅ」

 

天宮文香の涙は加速する。

そりゃ当然だ。糸のような棒に対し、

緑川影明はハンマーのような辛辣な言葉で

へし折ったのだ。

しかし、続けて放つ緑川影明の言葉は天宮文香の

予想していたものとは異なるものだった

 

影明「お前さっきから自分の都合ばっかじゃん。

悪いと思ってんならさっさと謝れよ。

謝らないと瞬に対して失礼だろ?」

 

文香「……え?」

 

天宮文香は困惑する。

てっきり過去の自分の行いに関して責められると

思ったからだ。

しかし、緑川影明はそんな話の素振りすら全く

出さず、謝る事だけを口にして来た

勿論の事、文香はその困惑を言葉にする

 

文香「そ、そっち? 私が過去にした事に関しては

何も言う事ないの?」

 

影明「んー?瞬の両親が死んだのは当然だーみたいな事

言った事か? まー、確かにそいつもひどいけどさ、

言っちまったもんは仕方ねーんじゃね?過去は変えようが

ないし。それに関して何も罪悪感感じてねえんなら

最低を超える救いようのねえクズだけど、ちゃんと反省

してんだろ? ならそれに関しては何にも。

 

まぁ、ものの弾みでとんでもねーこと言っちまう事も

あるだろ。」

 

緑川影明はあっけからんとそう言った。

 

天宮文香はその様子に何故だかは分からないが

少しホッとしてしまう自分がいる事に気づく

 

ーじゃあ、最低のクズってのは一体何のこと指してー

 

天宮文香がそう思考したと同時にその答えが返ってくる

 

影明「だからさ、俺が言ってんのはお前の都合ばっか

って事に関してだよ

何?お前が謝らない事で瞬がずっとその事で苦しむとか

って考えらんねえの?

そんな事すらお前は考えに至らないのかよ?

 

だから最低のクズって言ってんだよ俺は。

 

こんな自分見て欲しくない〜、とか

見捨てられたくない〜、とか

自分の都合しか考えられない最低のクズってな

 

だから謝れってんだよ。相手のために。

瞬のために。

 

確かに怖いのは分かる。

嫌われたくないとか、見捨てて欲しくないってのは

分かる。

でもそんな事は謝った後でどうするか考えろ。

 

お前ここで誠心誠意謝れなきゃ一生クズのまんまだぞ?

 

それに、謝る事はお前のためでもあるだろ?」

 

文香「……私のため?」

 

天宮文香が訝しげに首をかしげると

緑川影明が質問する。

 

影明「お前、瞬の事どう思うよ? 俺はあいつは

すげえ善いやつだと思う。

 

……先に言っとくけど、俺はホモじゃないからな?」

 

その問いに文香は食い気味に反応する

 

文香「そ、そんなの決まってる!!

シュン君はすっごく優しくて!かっこよくて!

誰よりも善い人なんだよ!」

 

その答えに影明は更に問いを投げかける

 

影明「そうか。じゃあ、そういう善い奴に"クズ"って

お似合いだと思う?善い奴の隣にクズとか居ていいと思う?」

 

文香「っ……そ、それは……」

 

影明「俺は善い奴にクズは関わっちゃいけないと思う。

お前もそう思うんなら、お前は最低のクズから脱却しなきゃ

いけないわけだ。悪いと自覚してる事をちゃんと謝らねえ

クズからな。

じゃなきゃあ、関わる事すら許されないって事だよ。

善い奴に、クズはふさわしくねえからな。

 

だけど謝るのは何よりも瞬のために謝れ。

あいつの事本当に思ってんなら自分のためじゃなく

瞬のためだけに謝れ。

それが"誠心誠意"謝るって事だ。

 

そうやってちゃんと最低のクズを脱却したら

その後に自分のために動けばいいだろ?

 

仲直りしたいです、ってな!」

 

そう言った時、緑川影明は太陽のような笑顔を見せる

 

天宮文香はその笑顔を見て、不思議と心が前に動いた

ように思えた。

前に進む、勇気が湧き上がってくるように感じるのだ。

 

ーこいつ…きっと励まそうとしてくれてたんだー

 

天宮文香は昔のようなにひっとした笑いをして

緑川影明に言葉を返す。

 

文香「あんた……シュン君が言うように筋金入りの

お人好しだね。

会って間もない他人相手にお節介焼き過ぎだよ」

 

影明「そーかな?俺は『当然』のように思えるん

だけどな」

 

文香「……私、シュン君に許してもらえるかな?」

 

影明「知らん、そんな事。つーか許してもらえるかな

なんて今の段階で言うな」

 

文香「うん…そうだね。ともかくシュン君のために

精一杯謝って、許してもらえるかはその後だよね」

 

影明「そーそー。ま、ちゃんと謝った後なら俺も

仲直りするの手伝ってやるよ」

 

文香「……やっぱ、あんたお人好しだよ」

 

天宮文香はまた昔の笑顔でにひひっと笑うのだったーー

 

ーー

-----

---------

 

 

優「なるほど、これまた半端なくグッドタイミングな

時によくぞフォローしてくれたね……

 

いや、こっちの話だよ。うん、うん。分かった。

じゃあ明日学園の屋上でーーー

 

OK。それじゃ」

 

ピッと優は携帯の通話を切る

 

瞬「何か結構話し込んでたみたいだけど、一体相手は

誰だったんだ?」

 

優「ごめん、内緒。それよりもうこんな時間だ。

僕は今日はこの辺で部屋にお暇するよ」

 

瞬の疑問をはぐらかし、優は少し不自然なように

急に部屋に戻ると言い出した。

瞬は少し違和感を感じたが、確かにすっかり夜も

遅くなってしまったので、気にせず別れを優に伝えた。

 

去り際優が瞬の方を振り返り、言葉にする

 

優「明日、上手く話せたらいいね」

 

瞬「あぁ、頑張るよ」

 

優「うん、じゃあおやすみ」

 

瞬「おやすみ」

 

そんなやり取りを最後にして、紅藤優は今度こそ

部屋へと戻った。

 

神崎瞬は優との相談で明日天宮文香ともう一度話す

決心をしていたのだった。

 

そうして、幼馴染の天宮文香とちゃんと話す決意を

胸に、神崎瞬は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『鋼鉄』『蹴り』…まさに読んで字の如しって奴です。伏線ってほど
でも無いのですが、後にフミフミの不良時代のエピソードが出てくる
ので、その時にこの単語にちなんだ異名とかが出てきます

『当然』…ここには端的に緑川影明の『歪み』の一部が現れてますね
これはかなり後で分かってくると思います。


今回はかなり『』少なかったな〜。

次でキャラまとめもして何とか僕の中での
プロローグ的な部分を終わらせたいな…
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