一頻りキスを終えたあと川崎は畳まさっていた布団を広げてその上に仰向けに寝転ぶと、一度長い深呼吸をしてから両足の膝を立ててゆっくりと足を左右に広げた。
俺はそんな川崎を見つめながらふと考える。本当にこのまま彼女と致してしまって良いのだろうかと。
川崎はこうして自分の全てをさらけ出しているのに、俺はどうだ、彼女に対して真摯であるだろうか。
…………否、俺は川崎に何も明かしていない。自分の本当の気持ちも考えも、何も。
こんなのフェアじゃない。今すぐに止めるべきだ。今ならまだ…………
って、これもう詰んでるだろ。今更後戻りなんて出来ないし、仮にここで止めたとしても、俺たちの関係は終わりだ。後に続くはずもない。
全部俺の不甲斐なさが招いた結果だ。結局俺は昔から何も変われてない。舌先三寸で人間関係をやり過ごし、それでいて自分には甘く、挙げ句の果てに大事な場面で逃げ出してしまう始末。
あの夜の喪失感を忘れたのか。俺に視線を向けてくれた二人の女の子のことを忘れたのか。そんな二人に背を向けて逃げ去った愚か者の姿を忘れたのか。
「・・・・・どうかした?」
隣に横たわる川崎の声にハッとする。どうやら気付かぬ内に瞑目してしまっていたらしい。このまま逝けていたらどれだけ楽だったろうか。
「ん・・・・いや、な」
どう言葉を返して良いか分からずに、俺は曖昧な返事をして返す。……… そら見ろ、変われてない。
ほ………んと…………情けねぇ………………。
「・・・・・ああ、そうだよね」
川崎は少し考える素振りを見せた後おもむろに身体を起すと俺の肩に手を置いて自分が横たわっていた布団目掛けて俺の身体を押し倒しにかかってきた。
「へっ?」
咄嗟のことに反応出来ず俺は彼女の成すがまま布団に倒れこむ。彼女は俺の肩の横に手を突いて俺の身体の上に覆い被さる。
また同じことの繰り返しか? また俺は彼女にされるがままに身を任せるのか?
「ここまで来てあんたに甘えるとか、そんなのフェアじゃないよね」
川崎が俺の耳元に顔を近付けて囁く。
「・・・・え?」
彼女の言葉がしっかり自分の耳に届いていたのにも関わらず、俺は聞き返してしまう。
「自分でさっき言ったのにね。自分が蒔いた種は自分で何とかするってさ」
川崎はそう言いながら自身の腰の位置を調整して俺の股の辺りに狙いを定める。彼女の動きには一片の迷いもない。
「あんただけに責任は押し付けない。・・・押し付けてたまるもんか」
川崎は自身の性器と俺の肉棒の先をピタリと合わせると瞼を強く閉じた。
「ごめんね。比企谷」
そう一言謝罪の言葉を告げてから川崎は腰を落として俺の肉棒を自身の膣内にねじ込んだ。
「んうっっっ!! ・・・ううっ・・・!」
川崎の辛そうな声が部屋の中に響く。彼女は喉を鳴らして苦しそうに悶える。
「川崎・・・っ!」
川崎の名前を口にするもその声は届いていないようだ。俺の肉棒を膣内に受け入れた川崎は部屋の天井を見上げたまま微動だにしない。
しかし唯一、彼女の膣だけは俺の肉棒をきつくきつく締め上げる。
肉棒に感じる圧迫感は手で握ってもらった時よりも遥かにきつく感じる。川崎のソコがトロけているように見えたのは気のせいだったのだろうか。
「ちょっ・・・ちょっと待って・・・ぅぐっ」
川崎が身体を俺に預けてきた。彼女の顔が俺の真横に落ちてきて、彼女の上半身が俺の上半身と重なる。
多少の息苦しさを感じるも、恐らく川崎が感じているものの方が圧倒的に大きいのだろう。
だからといってそんな彼女にかける言葉が見つからない俺は彼女の横腹に手をやって彼女の身体を支えてやることしか出来ない。
それからしばらくの間、彼女の荒い息づかいだけが部屋の中に木霊した。
俺が何も言わないから川崎に決断をさせてしまった。
本来であれば俺が制止すべき状況だったのに、欲望に負けて彼女の決断を受け入れてしまった。
彼女からの謝罪の言葉なんて聞きたくなかった。謝るべきは俺の方なのに。
「・・・・何て顔してんのさ」
「・・・お前・・・・」
あまりの不甲斐なさに俺が言葉を失っていると間近にある彼女の顔がこちらを向いた。
「あたしは大丈夫・・・だからあんたはそんな顔しなくていいんだよ」
額に汗を垂らしながらそう言うが、彼女の顔色は全く穏やかではない。
「何でお前は・・・そこまで・・・・」
「は? ・・・またそれ聞く? ・・・これで何回目さ」
その質問に俺は沈黙で返す。何度答えを示されても理解が追い付かない。彼女の話を聞いていないとかそういうレベルの次元ではない。ただひたすらに理解出来ないのだ。
「あんたさ・・・ここに来てからずーっと困った顔してるよね」
「・・・・・」
「そりゃさ、あたしに原因があるのは分かるよ。ちょっと一方的過ぎたもんね」
「・・・・・」
「でもさ、本当は別に原因があるんじゃないの? そんな顔になる理由がさ・・・」
「・・・それは」
どうしてそんなことが言えるんだ? さして近しい仲でなかったお前が、どうして他に原因があるだなんて言えるんだ?
一体お前に俺の何が見えているというんだ?
「・・・・・めかなぁ・・・?」
「え・・・?」
川崎の発した声はとても弱々しいものだった為に、言葉の全てを聞き取ることが出来なかった。これまで聞いたことのない彼女のそんな声を聞いて、何故だか分からないがドキリとしてしまう。
「・・・あたしじゃあ、ダメかなぁ・・・?」
「あ・・・う・・・」
いや、本当は最初から全て聞こえていたのかもしれない。
彼女の、川崎の心からの言葉を俺は受け取る自信が無かったのかもしれない。
「あたし・・・ずっとあんたのことが好きだったんだよぉ・・・・」
川崎のその嘆きは、大人びた彼女の見た目からは想像も付かないほど幼く感じた。