※この作品はR-18です。

継母の連れ子が元カノだった、いまは僕の父親とヤってる   作:大中小太郎

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九夜目(後編)(挿絵追加)

 

 

――伊里戸水斗――

 

 

(なんだか、久しぶりな気がするな……)

 

僕こと、伊里戸水斗は、両手が映らない視界について、そう思った。

 

視覚と聴覚だけしかない浮遊霊状態だ。

どういう条件でこうなるのか、いまだに分からない。

ただ、前回の夢の終わり際にもこうなっていたから、こうなる予感はしていた。

 

(まあ、いいか。いまさら――)

 

例えば、また結女と父の情事を見ることになっても、いまさらだ。

この体では南さんとのセックスもできないけど、絶対の約束というわけじゃない。

 

場所が伊里戸家じゃなかったことも、落ち着いていられる理由の一つだ。

学校の図書室だった。

習慣のようなものだろうか? 僕は無意識のうちに、この図書室を居場所に選んだらしい。

図書室の幽霊……まるで学校の七不思議だな。なんて自嘲を抱く。

そうしていると、女子生徒の姿を見た。

 

(いさな……)

 

図書室の、いつもの窓際で、黙々とラノベを読んでいた。

その隣に、僕はいない。

いさなはときおり、図書室の出入り口に視線を配り、少し残念そうに本へ目を落とす。

見れば分かる。いつもなら図書室に来る僕が、今日は来ていないからだ。

前回は気まずい別れ方となったし、あれで嫌われたのではと思わせているかもしれない。

 

(でも、いさなを巻き込むよりは、いい……)

 

いさなには悪いけど、このままでいいのかもしれない。

あまり僕に関与すると、伊里戸家を中心に起きる淫らな夢に巻き込むかもしれない。

なにより、この夢の中では汚れてしまっている僕自身を、いさなに見られたくない。

 

ふと、思う。

もしかして、僕の身に起きている『透明化』とも言える現象は……

 

「っ!」

 

すると、図書室の扉が開かれる。僕の思考は中断された。

いさなが期待の表情で顔を上げたが、現れたのは僕じゃない。

僕にとっても、驚きの人物だった。

 

「結女さん?」

 

結女だった。

制服姿の結女は、心持ち現実の結女より美人に見える。

男を知ったからか、元が黒髪美少女だった結女に、高校生らしからぬ艶と気風を感じた。

 

「東頭さん……」

 

結女はいさなに目を留めて、次に図書室をざっと見回す。

結女が図書室に来ること自体は不自然じゃない、元から文学少女だ。

現実でも何度か図書室に足を運んでいるようだし、いさなとも接点があったようだ。

 

ただ、この夢の中においては意外だ。

そもそも夢の中なので、平日も祝日もないし、授業もない。

夢の中でその人がどこにいるかは、その人の心理に決定されると推測できる。

 

僕の夢は当初は伊里戸家で、家を出ると強く意識してからは、家以外の場所になった。

いさなが図書室にいるのも……まあ、僕という『親友』がいる、居心地のいい場所だからだろう。

そう考えると、結女は?

彼女の心は、伊里戸家で父とまぐわうことを中心としているのではなかったのか?

 

「水斗、ここに来てない?」

 

結女がいさなに問いかける。

僕の名前が彼女の口から出たことに、ありもしない体がビクッと跳ねる思いだった。

 

「水斗くんですか? 今日は来ていないみたいですけど」

「そう……」

 

結女は残念そうに思案する。

僕の姿は、やはり見えないらしい。

そのことに、僕はホッとする反面、結女の内心が気になっていた。

 

(僕を、探してた? 結女が? なんで……)

 

まさか、僕が家に帰らなくなったから心配になって探しに来たとでも言うのか?

いいや、ここは夢の中だ。そういう現実的な理由で行動するとは考えにくい。

当人に強い動機がなければ、誰かを探そうとはしないはずだ。

 

「お家じゃないんですか?」

 

いさなの言うことはもっともだが、僕はここにいるし、伊里戸家に帰る気はない。

 

「家には……いないと思う」

 

そして結女も、僕が家に不在なことは把握しているようだ。

いままでは、そもそも僕が伊里戸家にいるかいないかも、まるで意識してなかったくせに。

 

「まあいいわ、心当たりを探してみるから」

 

結女はそう言って踵を返し、図書室から出て行く。

なぜ僕を探しているのかを、説明することはなかった。

 

(結女……)

 

僕は結女を追おうとした。

視覚と聴覚だけの不自由な体だが、このときは僕の意思に応じてか、結女を追おうとする。

 

「あ……」

 

しかし、いさなの声を聞いて、その移動が止まった。

振り返ると、いさなは伸ばしかけた手を降ろしている。

 

(…………)

 

僕の胸中に迷いが生じる。

結女を追おうとしていたが、いさなを残していくことも気になった。

 

――結女か、いさなか。

 

その選択を問われるような、この状況は、自分の心理が表われたようにも見える。

現実で、いさなから告白されたときも――僕の胸中では、この選択が起きていなかったか。

 

いまだ僕の心で『恋人』の席に座っている、伊里戸結女か。

僕に正面から告白してくれた、東頭いさなか。

 

現実世界の僕は、ある意味で、結女を選んだ。

その必要もないのに、元恋人である結女を重んじて、いさなの告白を断ったから。

 

なら……この夢において、僕はどっちを選ぶ?

 

現実とは異なり父の女になっている、結女か。

現実と同じように心安らぐ女である、いさなか。

 

ここで結女を見送れば、なぜ僕を探しているのか分からなくなる。

ただ、ここにいさなを残していくと、二度とこの夢では会えなくなる気がする。

 

ほとんど直感だけど、これはそういう選択であるような気がした。

 

(僕は……)

 

僕の出した答えは――

 

 

○

 

 

――東頭いさな――

 

 

「この本、預ければよかったかな……」

 

私こと、東頭いさなは、水斗くんの本を手に呟いた。

 

図書室には私一人だけ。

水斗くんは来ていない。

 

夢の中であることは理解している。

だから水斗くんが姿を見せなくても、不自然というわけじゃない。

ただ、それでも、私の中で『嫌われたんじゃないだろうか』という焦りが生じる。

現実ならスマホで連絡すればいいんだけど、夢の中では十全に機能しないだろう。

 

(だとすると、この本を返す必要もないんだけど……)

 

夢の中で本を返すも返さないもない。

それでも、いま手にしているラノベ一冊が、妙に気になる。

どこかで囓った知識によると、夢の中の人や物は、その人の心理と何かしら関わりがある。

だとするとこの本が気になるのは、私の中で『水斗くんとの繋がりを象徴するもの』だからだ。

 

だから私は、この本を雑に扱うことができない。

結女さんに預けるということも、なぜかしたくない。

これは私が直接『面白かったです』と水斗くんに返して、お喋りするためのアイテムだから。

返す返さないというよりも、そういう心地よい時間を生み出すためのものだから。

 

「……うん、届けてあげましょう」

 

鞄に本を入れて図書室を後にする。

結女さんは水斗くんを探していたようだ。

家にはいないかもしれないけど、もしかしたらいるかもしれない。

居なかったときは、ご迷惑かもしれないけど、部屋で待たせてもらおう。

 

いまはとにかく、水斗くんに会いたい。

会って、また趣味の話をしたり、ちょっと性的な話題で困らせたりしてみたい。

なんなら、どうせ夢の中なら、現実よりも大胆なことをしてみるのもいいだろう。

そういう女の欲みたいなものに突き動かされながら、私は水斗くんの家を目指すのだった。

 

 

○

 

 

不意の雨だった。

夢の中でも天気は変わるらしい。

私は鞄を入れた本を胸の下に抱いて、水斗くんの家を目指す。

体が濡れるのは、別に構わなかった。

雨は別に冷たくないし、夢の中なら、ずぶ濡れになるというのも、滅多にできない体験だ。

 

(服、透けちゃったけど、大丈夫ですよね?)

 

ブレザーの下ではワイシャツが雨に濡れて、青い下着を透かしている。

今日に限って、ブレザーの下にベストを着ていない。

だいぶ色っぽい姿になっているだろうけど、それを水斗くんにお見せするのも悪くない。

好きな男の子が、自分の胸を意識して、視線を外したり外さなかったりする姿を見てみたい。

 

そんな劣情を抱きながら、私はやがて『伊里戸』の表札をかける家に到着した。

呼び鈴を押して、インターホンからの返事を待つ。

 

『はい、伊里戸です』

 

インターホンから聞こえた男性の声に、私は嬉々として呼び掛ける。

 

「あ、いさなです。その、水斗くんにお借りした本を返しに――」

『ああ、どうぞ。入って』

 

どうやら水斗くんは家にいたらしい。

結女さんは探していたようだけど、入れ違いになったんだろうか?

そう思いながら、私は玄関口の前に立つ。

すると、ちょうど玄関の扉が、内側から開かれた。

 

「えへへ、来ちゃいまし、た……」

 

出てきた男性に悪戯っぽく微笑んだ私は、目を丸くした。

 

――水斗くんではなかった。

 

インターホンから聞こえた声が、水斗くんによく似ていたから、勘違いしていた。

 

「いらっしゃい――東頭いさなちゃん、だったよね?」

 

私を出迎えたのは――水斗くんの、お父さんだった。

 

 

 

「すまないね、いさなちゃん。こんな雨の中、届け物なんかさせてしまって」

「いえ、気になさらないでください。こちらこそ、お風呂ありがとうございました」

 

出迎えたお父さんは、ずぶ濡れの私を見て、大慌てでタオルを提供した。

その後、用件を聞いて本を受け取ると、風呂に入って服を乾かすことを勧めた。

私は勢いに流されるように、風呂を借りることになった。

 

「外はこの雷雨だ。落ち着くまでゆっくりしていきなさい」

 

お父さんが目を配った家の外は、激しい雨風が吹いている。

台風の真っ只中といった様相だ。流石に、この状況で徒歩の帰宅は無理だろう。

親に車を出してもらうなり、取れる対処はありそうなものだけど、思いつかなかった。

 

「服、結女の部屋着だけど、小さかったかな?」

「っ!」

 

そう、私がいま身に付けているのは、結女さんの部屋着だ。

それもキャミソールとショートパンツというもので、胸も尻も無駄に大きな私には少し小さい。

 

「あははっ、そうですね、結女ちゃんは細いですから」

 

照れ臭い気分で笑う。

ほぼ見知らぬ男性の前で、露出の多い格好をしているのに、不思議とストレスじゃなかった。

むしろ、結女さんと比べて『太い』と思われていやしないかということを、気にしていた。

 

「……っ」

 

身じろぎする。

妙に体が火照る、肌が過敏で、動悸が早い。

目の前の男性――水斗くんのお父さんの視線が、羽毛で撫でられるようにすら感じる。

しかも、それに嫌悪感がない。

自分が男性を魅了している――そう考えると、一人前の女になれたような満足感すらあった。

もしかすると私は、無意識にそういう、女の性欲みたいなものを溜め込んでいたのだろうか?

 

「はい、ココアでよかったかな?」

「あ、ありがとうございますっ」

 

そんな私の胸中を知ってか知らずか、お父さんはコーヒーカップを差し出した。

受け取った私は、居間のソファーをお借りして、息を吹きかける。

 

(水斗くんの、お父さん……でした、よね?)

 

以前、この家にお邪魔したとき、会って話した。

そのときはお母さんの由仁さんも一緒で、私を水斗くんの『元恋人』と勘違いしたようだった。

コミュ障の私にとっては、友達の親御さんなんて、赤の他人よりも厄介だ。

気心は知れていないのに、ないがしろにするわけにもいかず、社交性を求められる。

相性の悪い敵とエンカウントして、しかも逃げられない――そんな気分。

 

なのに、いまここにいるお父さんには、そんな緊張感が生じなかった。

 

(若々しいというか、水斗くんのお兄さんと言われても納得できるような……)

 

夢の中であるせいか、現実とは随分と容貌が違った。

三十後半のおじさまだったと記憶しているけど、それより十歳くらいは若く見える。

むしろ水斗くんが大人の魅力を得たようにも見えて、妙に緊張させられた。

それとも、これは私の夢だから、私にとっての理想の男性像が反映されているのかもしれない。

 

(お、落ち着いてくださいよ、私……っ)

 

見入ってしまう、どころじゃなかった。

体が明らかに反応している。

動悸が高鳴るだけじゃなく、異性を感じた体が熱くなってしまっている。

直裁に言うと、胸の先端や股の中心が鋭敏になり始めていた。

 

この夢だと敏感になることは、前回のオナニーで痛感していたけど……

まさか、水斗くんが相手ならいざ知らず、そのお父さんになんて……っ!

そんなんじゃない、私はそんな色情狂じゃなかったはずなのに……っ!!

 

「きゃっ!!」

 

落雷だった。

停電になり、視界が闇に包まれる。

 

「大丈夫かい? 怪我はないね」

「はい……」

 

暗闇の中、お父さんの声が優しく響く。

やけに近くから聞こえる。それに、私がいま顔を寄せている、逞しい弾力のあるものは……

 

「あっ♡ え? ふぁあ!?」

 

自分がお父さんに抱き付いていたことに気付いて、混乱の声を上げる。

近い、触れてる、温かくて力強い男性の胸板に、体をぴったりとくっつけている!

 

「お、おじさま!? す、すみませんっ! わ、私ってば、びっくりして……」

「いまのは大きかったね。停電してしまったみたいだが……熱っ」

 

周囲を見回したお父さんが、急に声を上げる。

見ればそのシャツには、私が取り落とした熱々のココアが掛かってしまっていた。

 

「ごめんなさい! すぐに拭きます!」

「ああ、いいんだよ。脱いだ方が早い」

 

私は慌てて布を探す。でもお父さんがそれを止めて、ワイシャツを脱ぎ捨てた。

上半身が肌着だけになったお父さんに、私は思わず惚けてしまう。

肌着には逞しい胸板や両肩が鮮明に浮かび、太い腕が露になっていた。

その節々に『男』を感じてしまって、私の中の『女』が勝手に興奮し始める。

 

「それよりも君だ。体に掛かっているじゃないか」

 

お父さんはそう言って、私の方を心配そうに見ていた。

確認すると、私の体にもココアが飛び散っている。

顔やら胸元やら、お腹や太股など、だいぶ広く汚れてしまった。

 

結女さんの服なのに……という申し訳なさなんて、抱いている余裕がない。

お父さんの視線が、私の全身を上から下までじっくり見ている――それを感じてしまっている。

なにより問題なのは、それを『心地いい』と思っていることだった。

 

「拭くよ。じっとして」

「あ……」

 

お父さんがハンカチを取り出した時点で、私は「自分で拭きます」と受け取るべきだった。

なぜか、そうするのを忘れていた。

なぜか、このまま彼の手に拭き取ってもらおうとしていた。

 

危険だ――と、脳裏の片隅から理性が訴える。

こんな薄着で、こんな状態の体を、異性に触れられる。

貞操とは別の危機感……自分がよくないことをしようとしているという危機感があった。

 

「ひゃぅん♡」

「おっと」

 

ハンカチが首筋に触れただけで、変な声が出てしまった。

触れたのはハンカチであり、触れられたのは首筋だったというのに――

昨夜の自慰で過敏な場所に触れたときよりも、鮮烈な快感が走っていた。

 

「すまない、痛かったかい?」

「いえ、大丈夫です……」

 

いつの間にか、思考力が麻痺していた。

言葉や肉体を操るものが、理性や思考ではなくなり、本能や欲求に操縦席を奪われている。

そうだと気付きながら、元の自分に戻る方法が分からず、そうしようという発想すら消えた。

 

「続けて、ください……♡」

 

気がつけば私は、たぶん潤んだ瞳で、お父さんを見上げていた。

 

ほんの少し、ほんの少しだけ……

そう、このくらい水斗くんにしているのと同じ、ちょっと性的なネタを振る程度のもの。

私は自分にそう思い込ませていた。

まったく別の人に、まったく別次元のことをしていると分かっていながら……

この人が、どんな風に私を触って、触られた私がどうなるのかを、知りたくなってしまった。

 

「んっ♡ ふぅ……」

 

顔や首筋を拭う父の手に、小さな声を零す。

ココアの飛び散ったリビングに、甘い香りと甘い声が広がっていく。

停電の暗がりで、お父さんの表情は見えないけど、興奮していることが呼吸で伝わった。

現実ならとても怖いことのはずなのに、このとき私は、そこに達成感を抱いていた。

私でも、男性を興奮させ、魅了することができるんだ! と、歓喜してさえいる。

 

「きゃあっ!?」

「おっと」

 

突然、窓の外で稲光が光ると同時に、落雷が轟いた。

庭に落ちたのではないかという轟音、思わず目の前のお父さんに手を伸ばす。

お父さんは応じるように私を抱き寄せ、頭を腕で覆い隠してくれていた。

 

「あ……」

「大丈夫だよ。すぐに収まるからね」

「は、はい……♡」

 

自分が抱擁されていることに気付いたとき、私は不思議と慌てなかった。

それ以上に、安心してしまっていた。

この人に抱かれていると、心の中が温かいものに満たされ、何の不安も不足も感じなくなる。

 

(おじさま……いい匂い……)

 

私は眠りこけるように、お父さんの胸板へ体を預けた。

胸板に当てた額から、鼓動を感じる。ドキドキしてくれている。

自分が女として見られていて、相手も男として反応しているのだと思うと、快感だった。

私の体で、男性の本能を刺激されてしまっているこの人を、『かわいい』と思い始めていた。

その反応を、もっと見てみたいとさえ、考えていた。

 

――思えばこのときにはもう、私は自分の中で、なにかの一線を越えてしまっていた。

まるで酒に酔ったように、裏人格に乗っ取られたかのように、自分の知る自分ではなくなってしまった。

 

「おじさま。もっと、強く。ぎゅってしてくださいませんか? 私、雷こわくて」

 

お父さんの目に映っている私の姿が、鏡で見ているように分かる。

頬を染めた女の子が、扇情的な薄着で、豊満な胸を視界に入れながら、潤んだ瞳で甘えている。

そんな私に、お父さんは妙に色っぽい微苦笑を浮かべた。

 

「いいけど、水斗に見られたら誤解されそうだな」

「水斗とは……恋人じゃありません。親友です」

 

――いま、それを言うのか。

私の中で、まだ抵抗を続けている部分が、そう訴える。

水斗くんに振られたのは事実、恋人でないのも、ただの親友なのも事実だ。

でも、この場面でそれを言うのは、意味がまったく違うだろう……と。

 

私なりの、水斗くんなりの、尊い約束でもあった『親友』という関係を。

こともあろうに、彼のお父さんを誘惑する文言に使うのか――と。

 

そんな良心の呵責は――

 

「そうだったね……でも、水斗には内緒にするんだよ?」

「はい……♡」

 

お父さんに抱きしめられた瞬間、どこかへ消え失せてしまった。

 

 

○

 

 

『――ごめん、君と付き合うことはできない』

 

最近、好きな男の子に振られてしまった。

納得はしている。

自分が、誰かの恋人として望まれるほど出来のいい人間ではないと、最初から分かっていた。

 

『君に落ち度はない。他の誰にも落ち度はない。これは僕の問題だ』

 

こちらの胸中によく気を配った断り文句だったのだろう。

傷はついたけど、浅かったように思えた。

 

その後のことにしても、『親友』という昨日までの立場を失わずに済んでいる。

失恋はしたけれど、終着点としては、恵まれた部類なんだと思っている。

 

『ごめん東頭、僕は、君を彼女にはできない』

 

でも、私だって……東頭いさなだって、人間だ。

矜持もあれば怒りも湧く、人間の女の子だ。

 

(悔しい)

 

冴えない女が気力を尽くした愛の告白を袖にされ、浮かぶ憎悪も無いとなぜ言える。

自分には女の魅力がなくて、あってもせいぜい胸くらいで、トータルで見れば落第なのだと。

そう突き付けられた女の誇りが上げた悲鳴を、私は心の奥底に押し隠して、忘れた。

 

――そういう、無意識の底へ追いやった感情が舞い戻ってくるのが、夢というもの。

体が火照るこの夢の中で、私は浅ましい感情に囚われる。

 

(この人を誘惑できたら……私、自分に少しは自信が持てるのかな?)

 

出会った瞬間、妙にセクシーな雰囲気に胸が高鳴った、水斗くんのお父さん。

好きな人と同じ血が流れる彼を興奮させられたら……

私は、あの日に得られなかったものを、少しだけ手に入れられる。

そんな邪悪な情念に突き動かされるまま、私は、お父さんの手を受け入れた。

 

「あっ♡ はぅ……っ♡」

 

お父さんは、私の身体を静かに撫で始めた。

髪、背中、肩――これといってエッチなところは触られていない。

でもその手付きは、外堀から埋めていくような、先に進めることを求める男性の訴えだった。

私はそれを、知らず甘い声を零しながら、受け入れる。

 

「んぁ……ふあ……♡」

 

信じられないくらい気持ちよかった。

発情した女の体は、ただ男の手というだけで、自分の指では得られない快感を得る。

所詮、人は動物なのであり、雌雄がある生き物で、彼はオスで自分はメスなのだと。

この夢の中では、そういう本質的な部分を、すんなり受け入れられた。

 

(止め、なきゃ……どこかで……)

 

こんなふうに手だけで感じさせられて、それで終わりなわけがない。

きっと、もっとすごいことをされてしまう。

それがわかっているのに、自分の体はお父さんの愛撫を甘受している。

もう少しだけ、いやずっとこのまま、お父さんに犬や猫のように可愛がられたい。

始めて性感を知ったときのような興奮が、私の正気を奪っていた。

 

(まるで、私の身体が、この人に、一目惚れしちゃったみたい……♡)

 

そんな自覚を抱きながら、私は口から官能の声を漏らす。

せめて、外の雷雨がかき消してくれることを願って。

 

「あっ♡ はぁ♡ んっ♡」

 

私が拒否しないのを確認して、お父さんの手が、徐々に撫でる範囲を広げてくる。

背中を撫でる手は腰から尻に近付き、肩を撫でる手は胸の方向へ行きたがっていた。

君の体を堪能したいと紳士的に訴える手付きに、子宮が騒がしくなる。

 

「はぁ……っ、はぁ……っ♡」

 

熱い吐息を吐き出しながら、私も少しずつ期待を高めていった。

やがて、彼の手がお尻に触れる。

 

「ひゃうん!?」

 

ビクン! と、思わず背筋が伸びて、体が震えた。

びっくりして、変な声が出たことを後悔した直後、

 

(やだ、胸……自分から、押し付けたみたいに……っ)

 

私の胸が、おじさまの胸板にぶつかって、肌着越しに乳首を刺激した。

その瞬間、頭の芯まで痺れるような快感に襲われてしまう。

夢の中だからか、目の前の彼が特別なのか、ただ触れ合うだけで快感が走り、全身に広がる。

 

「あぅ、ごめんなさい……はうっ♡ ふああ……!」

 

お父さんの手は私を胸の内に抱き寄せ、片手が明らかに尻を撫でていた。

自分の体が少しずつ攻略されていく感覚に、女の本能が歓喜している。

私はいま、男の人を魅了しているんだと。

失恋によって傷ついた女のプライドめいたものが、急速に満たされていく気がした。

 

「はうっ♡ み、耳ぃ……っ♡」

 

突然、耳の裏を舐められて、くすぐったさと快感が入り混じったものに目を剥いた。

 

「大丈夫、怖くなくなるように撫でてあげるからね」

 

あくまで雷に怯える女の子を宥めるというていで、お父さんは愛撫の継続を告げた。

 

(もう少し、もう少しだけ……っ♡)

 

私もまた、あくまで雷に怯えているだけという『てい』で――小さくコクリと頷いた。

お父さんの愛撫が、一段階ギアを上げた。

 

「やぁ♡ あっ♡ はぁ♡ んんっ♡」

 

首筋を指先でなぞられて、ゾクッとする快感が走る。

さらに唇と舌でも責められ、私は身悶えながら喘いだ。

 

(これっ、本当におかしくなるっ。女の体って、ここまで感じちゃうものだったんだ……っ)

 

体は本能に支配権を奪われ、自ら男の背に腕を回す。

お父さんの前で膝立ちになり、お尻に食い込む指を受け入れ、胸に埋まる顔を歓迎していた。

口から上がる声はどんどん高くなり、完全に、男に抱かれる女の嬌声になっていた。

 

「んむ!?」

 

キスされたと気付いたときにはもう遅く、唇から頭部全体に電流のような快感が走ると、

 

「ふぁぁぁぁ♡」

 

まるで溶けるように、私の身体を柔らかな絶頂が駆け抜けていった。

 

(私、いま、キスで……キスイキ? しちゃったの?)

 

ものの本で読んだような現象が自分に起きたと知って、衝撃と、異様な充実感を覚えた。

しかもお父さんは、更にキスと愛撫を繰り返し、同じ快感を次々と送り込んでくる。

 

「はぅ……あ、あっ♡ ん、はぁ♡」

 

快感が強すぎて、もはや呼吸すらままならない。

息苦しさに、意識が遠退いて、視界が白くぼやけていく。

お父さんとキスする口が、「くちゅ、じゅぷ」と音を立てる。

 

(ああっ♡ 胸っ、いつの間にか、触られて……っ♡)

 

多くの男性が物欲しそうに見る私のGカップは、いつの間にか彼の手中にあった。

片手が乳房を、片手がお尻を、口が唇を。三つの箇所から責められて、私は小刻みに達し続ける。

 

(こんなっ、こんな簡単にイかされちゃうなんて……っ♡ なにも言えないっ、断れないよぉ♡)

 

どこか適切なタイミングで止めさせようと思っていた私は、もう居ない。

自分の体が床に押し倒されたことにさえ、しばらく気づけなかった。

 

(ああ……これ、もう無理……もう、逃げられないんだ)

 

男性の前で仰向けになり、覆い被さられてしまった。

自分よりずっと大きくて分厚い体を重ねられ、体格差と体重差を思い知る。

こうなってしまったら、もう女は男に勝てないのだと。

だから、ここから先のことは、『仕方のないこと』なのだと、諦めてしまった。

 

「ふあああっ♡ あんっ♡ おじさまぁ♡ すごいっ♡」

 

仰向けにされた私に、お父さんがキスと愛撫と手淫をくれた。

耳に聞こえるのは彼の荒い吐息と、私の秘所から鳴るくちゅくちゅという甘い水音。

そちらに意識が集中して、もう雷の音すら聞こえない。

生じる快感は、雷なんかよりずっと強烈だった。

 

「いさなちゃん、可愛すぎるよ」

「そんな、私なんてっ♡」

「こんなに大きくて柔らかいおっぱいをしているのもいけない」

「ひゃうぅっ♡ それ、だめぇ……っ!」

 

お父さんは、私のシャツをたくしあげると、ノーブラの胸に吸い付いた。

ソックスを履くのも苦労させられる私の胸が、いま一糸もまとわず晒されている。

そこに男性の手が重なり、先端を口に含んでいく光景に、私は言いようもない興奮を覚えた。

 

「んんんっ♡」

 

男の人におっぱいを吸われてる。赤ん坊みたいに、捕食する獣みたいに。

怖いと同時に可愛らしすぎて、女の心と体が同時に締め付けられる。

 

(無理っ、もうどうなってもいい! この気持ちいいの逃がしたくない!)

 

私は思わずお父さんの頭をかき抱いて、懇願した。

 

「おじさま……っ♡ もっと、強く……」

 

そんなことを口走ることへの羞恥心すら、もう機能していなかった。

 

「いいのかい? こうかな?」

「あああああっ!?」

 

乳首を甘噛みされて、私は悲鳴じみた声を上げてしまう。

 

「ああ、すごいよ、いさなちゃん。胸、とても感じやすいんだね、すごく興奮するよ」

 

興奮すると言われたことが、また私の身体を喜ばせた。

満たされていく。水斗くんに振られた心が、獲得できなかった男を手に入れて、満たされていく。

それが私をより敏感に、そして淫乱にした。

 

「おじさま……そんなに、興奮してくださるなら……」

 

私は両足を広げ、両手で自分の太腿を押さえながら、言葉を紡ぐ。

 

「私の、こと……」

 

おじさまがごくりと唾を飲み込む音が聞こえてくる。

 

水を差すように――落雷があった。

 

(…………)

 

そのとき――なぜかは分からないけど、水斗くんの顔が思い浮かんだ。

すると私は、なぜかは分からないけど、こんなことしちゃいけない気がした。

 

「あ、待って!」

 

私は無意識のうちに、お父さんを突き飛ばした。

 

「いさなちゃん?」

 

驚くお父さんに、私は体を庇いながらお詫びする。

やっぱりできない。

体が欲していたとしても、彼は水斗くんのお父さんで、結女ちゃんのお父さんでもある。

だから肉体関係はダメなんだと、忘れていた倫理観がいまさらのように騒ぎ出した。

 

「ごめんなさい、私、やっぱりこんなことダメ……」

「どうしてだい?」

「それは……私、前に水斗くんに……」

 

私は彼の息子である水斗くんと何があったかを、ざっと話した。

 

「そうか……それは、切ない恋だったね」

 

微笑んでくれたおじさまに、私は拍子抜けした。

てっきり、ここまで誘っておいて! と激怒されるかと思った。

 

「こんなおじさんじゃ、息子の代わりにはならないか」

「っ、違います! おじさまは素敵です! ただ、私が――」

 

私は必死に、自分が断る理由を言語化する。

 

「水斗くんの代わりになんて、したくなくて……いましたら私、そう思っちゃうから……」

 

そう、そうなのだ。

 

――水斗くんにではなく、お父さんに悪いから。

ここで快感に流されるのは、代替品にするようで失礼だから。

自分に悪戯をした男に、私はなぜか、そんな誠意を尽くそうとしていた。

 

「そうか。息子より僕のことを気にしてくれたのか。君は本当にいい子だね」

「おじさま……」

 

お父さんに頭を撫でられた私は、泣きそうな気分で微笑む。

優しい人なんだ――と、理解した。

男性の本能に流されはしても、人間的な長所もちゃんとあるのだと。

 

(もし、水斗くんより先に、この人と会ってたら……)

 

彼が水斗くんの父親でなければ、出会い方が違えば、素直に魅力的だと思えただろう。

もしかしたら、本当に好きになっていたかもしれない。

 

そんなことを考えていたら――もう一度、雷が鳴った。

身を竦めた私が見たお父さんの顔は、少し怖かった。

 

「おじ、さま?」

「大丈夫だよ、いさなちゃん」

「きゃっ」

 

お父さんは私をお姫様抱っこで持ち上げると、急にリビングを出てどこかへ向かう。

 

「お、おじさまっ? どこに――」

「いいかい、いさなちゃんは何も悪くない。たとえ水斗の代わりにしたとしても、僕は嬉しい」

 

お父さんが向かった先は、寝室だった。

私はそこに投げるように放り出されて、服を脱ぎだしたおじさまに目を丸くする。

 

「おじさま、私、ちゃんと断って……」

 

私の身体に震えが走る。

 

「ああ、その通りだ。でもごめんね、僕はもう我慢できそうにない」

「だ、だめっ! おじさまっ、待ってください!」

 

下着一枚になったおじさまが、私の手を掴んでベットに押し付ける。

 

「君だって体はその気じゃないか。こんなエッチな子を、男が逃がすと思ったのかい」

 

確かに、お父さんの裸を見て、私の体は相変わらず勝手に欲情している。

女はレイプされると防衛のため濡れてしまうというけど、これはそれと似て非なるものだ。

もっと単純に――魅力的に感じる男性から強く求められて、女の本能が歓喜してしまっている。

 

「安心しなさい。君は何も悪くない。ただ、友達のお父さんに襲われてしまうだけだからね」

「おじ、さま……そんな……」

 

私は震えながら、お父さんの顔を見詰めた。

相反する心と体で揺れ動く天秤が、『言い訳』を準備されたことで、傾けられてしまった。

 

「んんっ♡ やめて……おじさまぁ……っ」

 

そして唇を奪われ、もう逃げられないのだと悟る。

だとしても、水斗くんを好きだった女として、抵抗を止めることはできない。

その抵抗が、実質ただのポーズであることは、私よりもお父さんの方が、よく理解していた。

 

「いさなちゃん……もうこんなに濡れてるじゃないか」

「ああっ!?」

 

お父さんは私の短パンとショーツを丸ごと引き抜いた後、強引に足を開いた。

私はそのことよりも、お父さんが取り出したペニスに目を奪われる。

 

「っっっ♡」

「はは、そんなに見入って。やっぱり欲しがってくれてるんだね」

「だめっ! おじさまっ、止めてください!」

 

私の抵抗を無視して、お父さんは肉棒を私の股にあてがう。

 

「ひうううっ♡」

 

たったそれだけで、全身が快感に打ち震える。

男性の欲の象徴が触れただけで、私の身体は感極まっていた。

私の身体、こんなに男の人とセックスしたがってたんだ……っ!

 

「だめぇ♡ おじさま、お願いします。私、これ、ぜったいおかしくなるっ♡」

 

自分が自分ではなくなる予感に震えて懇願する。

 

「ああ、おかしくなれっ、いさな!」

 

直後、私の中におじさまが入ると同時に、暴力的な快感の雷が落ちた。

 

「ふわあああああっ♡」

 

私は絶頂を迎えると共に、目の前で火花が散るような錯覚を覚えた。

破瓜の痛みなんてない、下腹部に存在感はあっても異物感はない。

初めて受け入れるはずなのに、まるでお互いこれを前提に作られたかのように、

私の膣は、この人の陰茎を、ぴったりと包み込んでしまった。

 

「おおおっ、凄いっ、締まるぅ……っ」

「おじさまぁ……これ、うそぉ……痛くない……すごいぃ♡」

 

私の身体は、別の人格に操られているように、メスの本能で動き出す。

快感に身をよじり、腰が動く。

すると腰の内側にある肉棒が擦れ、それがまた快感電流をばらまく。

それにみをよじり、腰が動いて――エンドレスだった。

 

「ふあああっ♡ あんっ♡」

 

お父さんの動きに合わせて腰がくねり、一番気持ちよくなる角度を作り出す。

彼だけでなく、私自身によって、二重に快楽を与えられている。

二重だった快感は、やがて和音のように一致して、より鮮烈に全身へ浸透していった。

 

「あああんっ♡ おじさまっ♡ これっ、これこわいっ♡ 感じすぎてこわいのぉっ♡」

 

私の口から、獣のような嬌声が上がったのは、そのせいだ。

もうダメだ、口も体も思考さえも言うことを利かない。

秒ごとに増す悦楽に知性が溶かされ、幼児のように曖昧な思考で、目の前の快感に叫ぶだけ。

 

「いいぞいさなちゃん……君は最高だよ……っ!」

「んおっ♡ はげしっ、おじさま激しいよぉっ♡」

 

お父さんが一層激しく動く。

子宮口まで突き上げられ、脳天にまで衝撃が走る。

聞いてない。自分の体が、初体験でこんなに感じて乱れる女だったなんて聞いてない!

 

「あああああっ♡ イクッ♡ またイっちゃいますぅ♡」

 

二度目の絶頂を迎えた瞬間、私の意識は一瞬飛んだ。

 

「いい締め付けだ……でも、まだまだ続くからねっ」

「そんなっ♡ むりぃ♡ こんなの続いたら、死んじゃうっ♡」

「大丈夫、女の子はすごく感じると皆そう言うんだ」

 

お父さんはセックスに熟達しているらしく、私の身体をあっさり手玉に取ってしまった。

 

「ふあああっ♡ うそっ、もうっ、もうまたイっちゃうぅぅぅ♡♡♡」

 

同じ体位で腰を動かしあっただけなのに、もう三度目のオーガズム。

一回だけで思考が弾け飛ぶ絶頂を、念入りに止めを刺すように三度も見舞われ、視界が明滅する。

 

「はあっ♡ あっ♡ あ……」

 

小休止なのか、お父さんが動きを止めた。

優しく頭を抱かれて、安心させられる。

安心した結果、私は自分の体の本音を聞いた。

どうして止めちゃうの? ――と。

それがバレたかのように、おじさまは私の身体を横向きにして、また動き出す。

 

「ふあっ♡ やっ♡ 当たるとこっ、変わって♡ 感じ方、変わってるぅ♡」

 

同じくらい気持ちいいのに、色が違うように感じ方が違う。

 

「慣れてきたみたいだね。いさなちゃんはエッチの才能がある」

 

そんな褒め言葉は初めて聞いたけど、いま一番嬉しい褒め言葉だったかもしれない。

 

「あああっ♡ おじさまぁ♡ せめて、せめてゆっくりぃ♡」

 

私の嬌声が寝室に木霊する。

外で降っている雷雨の音が、もう聞こえなくなっていた。

 

○

 

十数分くらい経っただろうか?

 

「ああ♡ おじさまっ♡ もっと♡ もっとしてぇ♡」

 

私は自分からおねだりするくらい、おじさまとのセックスに夢中になっていた。

もう、残っていない。

こうなる前に、こうなることを避けようとしていた理由が、全て快感に溶けてしまった。

 

「ああああっ♡ こんなっ♡ 獣みたいなっ♡」

「いいんだよ。人間は動物なんだっ、交尾のときはこうなっていいんだ!」

 

私はベットで四つん這いになり、バックで最奥を突かれている。

 

「おっぱいぃ♡ おっぱいもぉだめぇ♡ 溶けちゃうっ、おじさまの手で溶けちゃうぅ♡」

 

背中から覆い被さるお父さんの手が、私の胸をずっと楽しげに揉み続けていた。

好きなんだ、私の胸を、大好きになってくれたんだ――と、喜んでいる自分がいる。

 

「こんな大きなおっぱい、男が揉まないわけないだろっ。気持ちいいよ、おじさんの手が幸せだ」

「おじさま、気持ちいいの? なら……ふああっ♡」

 

火傷したように過敏になった私の乳房は、指一本ずつの動きえ如実に感じてしまう。

たったこれだけの時間、体を重ねただけで、私はそれ以前とは別人になってしまった。

 

「いさな。一生忘れられないくらい、たくさんイかせてあげるからなっ」

 

お父さんが、私を虜にするために全力になっている。

いつの間にか呼び捨てにされている。

水斗くんに告白するとき、彼とこうなれたらと思っていたことが、全て叶ってしまった。

それは、相手が水斗くんではないことを忘れてしまうくらいに、充足感を与えてくれた。

 

「ひぁぁぁうぅぅぅ♡ 気持ちいいっ♡ なんでこんなっ♡ どんどん気持ちよくなるのぉ!?」

 

私は幼児かというくらい鳴き声を上げて、もう両手じゃ数えられなくなった絶頂を迎える。

 

「イクほどっ、感じやすくなりゅ♡ イクまでの時間っ、短くなってるぅ♡ イクの、強くなるのぉっ♡」

 

絶頂の間隔が短くなる。

快感が強くなっていく。

淫らになっていく。恥知らずになっていく。女になっていく。メスになっていく。

それらに、幸福感を覚えるように……なってしまった。

 

「あああっ♡ イクっ♡ またイクっ♡ あへぇ……♡」

 

私が十数回目の絶頂を味わった頃、お父さんも射精していた。

男の人のの精液が、私の中で、自分の愛液と混ざり合っている。

子供ができるかもしれない――そう考えても、私の胸に生まれるのは悦びだけだった。

 

「まだだよ、いさなっ。僕がもっと、気持ちよくしてやるからな!」

「おじさま、待ってぇ♡ わたひ、さっき、気絶して――」

「ごめんね、僕とのセックスはそこからが本番なんだ」

「そんなっ♡ ほんとに死んじゃ、ああああああああっっっ♡♡♡」

 

私はまたベットに愛液を放って絶叫する。

お父さんが、奥様と寝るためのベットを、私がマーキングしてる。

水斗くんが暮らしている家の中で、水斗くんのお父さんとセックスしている。

顔から火が出るほど恥ずかしいはずの行為に、私は危険な優越感を抱いてしまった。

 

「おおっ♡ んおっ♡ おおっおおおっ♡」

 

自分の口から出る獣みたいな声すら、水の中みたいに遠くに聞こえた。

 

「いさな、今度は一緒にイこう」

 

そんな中、おじさまの声だけは、明瞭に聞こえた。

まるでそれだけが福音であるかのように、私はおじさまの声に従順になっていた。

 

「はひっ♡ はいっ♡ イきますっ♡ わたしと一緒にぃっ♡」

 

お父さんが腰を振る速度を上げていく。

たびたび頭に走っていた白閃光が数を増す。

なにか後遺症が残るんじゃないかってくらいの快感が怖い。

それでも、たとえ壊れてしまっても、このまま最後まで昇天したい。

女だけがたどり着ける快楽の境地みたいなところに、このまま辿り着きたい。

 

「イクっ♡イグっ♡ おじさまぁ♡ 好きぃ♡ 大好きですっ♡」

「僕も好きだっ! いさな、いさな、僕のものになるんだ!!」

 

お父さんが私の身体を強く抱きしめてくれる。

その瞬間、私は今までで一番激しい雷鳴が轟くのを感じた。

もちろん天気じゃない。おじさまのセックスで、私の心身が生まれ変わらされた音。

 

「あああああぁぁぁぁぁっっっっっ♡ いくぅぅぅぅぅっっっっっ♡♡♡」

 

女がセックスで完全に征服される瞬間を、我が身で体験した。

 

そこから先は、どんな体位で、どんなことをしたのかも、よく思い出せない。

体の状態が分からなくなるほど、快感と絶頂の嵐に振り回される木の葉となった。

 

やがて、夢が終わる。

夢から覚める直前に認識できたのは、雷雨が上がっていたこと。

仰向けになったカエルみたいな姿勢でびくびくと震える、私の体。

 

「この本は、まだ君に預けておくよ――また、返しに来るんだよ?」

 

そして、お父さんに囁かれた言葉と、枕元に置かれた一冊のラノベ。

またこの家を訪れる『口実』を与えられたのだと、朦朧とする意識が理解した。

 

大事に持ってきたはずの本が、どんな表紙でどんなタイトルだったのか、もう思い出せなかった。

 

 

○

 

 

――伊里戸水斗――

 

 

そうして……僕は彼女の姿を見ていた。

相変わらず、触れることも声を掛けることもできない体で。

彼女の姿を――結女の後ろ姿を、追っていた。

 

図書室で、僕は結女を追うことを選んだ。

僕を探しているらしい結女を、その尋ね人である僕が、見えない姿で尾行した。

図書室に残したいさなが、その後どこに行ったのかは、知るよしもない。

 

(結女は、なんで僕を、探してるんだ……)

 

何度目かの疑問を抱く。

結女は図書室を出た後、校内を漫然と歩き回っていた。

教室を過ぎるたびに、誰かを探すように覗き込んで、隅々まで。

そこまでして、なぜ僕を探しているのか。

こうして後をつけることで、いつか結女がその胸中を独白するときを待っていた。

口にするかどうかも分からない独り言を、やけに期待していた。

 

「…………」

 

そんな僕の望みに反して、結女はなにも言わない。

僕が背後霊のように追従しているのだから、どこへ行っても見つからなくて当然だ。

そう考えると、ひどく性格の悪いことをしている。

かくれんぼの中で鬼の背後に立つとか、そういう可愛いものじゃない。

『僕を求めて歩き回る結女の姿』を、もっと見ていたかったのだ。

結女がそうしていること自体が、どこか快感で、今日まで損なわれてきた僕の自尊心が満たされる気がした。

 

「……っ!」

 

結女に手を伸ばして、しかしその手を引っ込める。

経験上、この状態の僕は誰にも触れられない。だから結女の肩に触れても、気付かれはしない。

でも、万が一、結女に触れた瞬間に浮遊霊ではなくなったら?

もし、結女が振り返って、僕を発見してしまったら?

 

(なんで、それが……こんなに、嫌なんだ?)

 

自問して、ぼんやりとした答えを得る。

見られたくない――今日までのことで明らかになった卑しい僕を、知られたくない。

僕は、せめて結女の中だけでも、『この夢には登場しない人物』でいたがっているのだ。

そのくせ、いま結女が僕をどう思っているのか知りたいから、こうして後を追っている。

 

(なんだよ、僕は……これじゃただのストーカーじゃないか)

 

自嘲しながら、僕はこの時間に浸っていた。

あれほど僕を忘れた結女が、僕ではなく父と関係した結女が、いまは僕を探してさまよっている。

そんな光景に、昏い優越感を味わうことが、止められない。

 

だから結女を呼び止めない、存在を訴える努力もしない。

いつしか降り始めた雷雨が、いつの間にか降り止むまでずっと――

僕はただ、結女を見続けていた。

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

描写が長引いたので、前後編に分けて同日更新です。

扱うキャラが増えてきてページ数が膨らんできたけど、
いさなのGカップを描写するためなら惜しくないぜ。
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